七句会
第二十三回ネット句会参加各位
第二十三回の選句結果を踏まえて、感想や自句自解、等をおよせいただき、
たいへんありがとうございました。
およせいただいたものを、名前順に、ほぼそのまままとめてお届けすること
にします。今後のやり方に、ご意見、等ありましたら、よろしくお願いします。
七句会のweb http://nanaku-haiku.blogspot.jp/ にも掲載してあります。
今後とも、よろしくお願いいたします。
深瀬 (事務方)
(1) 小野寺さんの自句自解
1 001)氷雪の 彼方を 北斗 回りけり。
凍てついた雪の 厳冬の原野の夜空を 北斗七星が正確に回りゆく、壮大な
大自然の運行に身が引き締まる思いで心打たれます。
豊さんのこの句の感想に大変エンカレッジされました。
2 009降る雪を耐えて生命(いのち)の紅き薔薇
降り積もる雪をものともせず、凜として健気に咲く 深紅の薔薇は燃える生
命の輝きそのものです。
秋岡さんの評伝の様に期せずして白い雪と紅い薔薇は寒さに耐えて咲く生命
の不思議なコントラストになりました。
3 011 見送りの駅舎の祖父に 雪は降り
13歳で故郷三陸の釜石を後にしました。
旧い田舎の駅舎の片隅で見送りの祖父は手をふり、粉雪が舞っておりました
。走りゆく列車の窓から涙にくれながら手を振りましたがそれが祖父との今生
の別れとなりました。
吉良さんのご指摘通り、自分も又これが大好きだった祖父との最後の姿と予
感して泣いたのだと思います。
4 036)雪止みぬ 古都眠らせて 寒の月
夜半に降りやんだ雪は静寂の中で古都を眠らせ中天には煌々と白い月が輝い
ておりました。
秋元さんのご指摘の様に雪の静寂を表現したかったのは確かですがが。
5 038)降る雪や 泣いて故郷を出でにけり
降りしきる雪を眺めるとふと突然に13の歳に泣いて故郷を離れた折の涙でゆ
がんだ列車の窓をよぎる雪景色が鮮烈に蘇ってきます。
豊さんの感想は正にその通りで感服です。
6 040雪の原 凍鶴(いてづる)啼きて夕日落つ
雪原の夕暮れ時 一面の白い雪と丹頂鶴の赤のコントラストが美しく鶴が一
声 啼き やがて荘厳な落日は 一切を包み込み 息を呑む風景でした。
吉良さんの感想のとおりです。
7 048 選に掲載されてませんでしたがこれは橋本さんと深瀬さんが選んでく
れた二点句でした。
星月夜 板戸の街は 雪の中
降り続いた雪がやみ 海沿いの板戸の旧い街はすっぽりと雪に覆われ不思議
な静寂の中で 深い夜空には月も星も輝いておりました。
これは全く深瀬さんの読みの通りで感服しました。
8 No.5 群青に 粉雪舞ひて 海は暮れ
この句は柳町さんから賛同をいただきましたが小生の長い付き合いの友人か
ら一番いいといっていただき自分でも想いがあったもので自解します。
これは 少年のころの三陸釜石の海の冬の景色です。
群青色の蒼い海のいろを残したまま、鉛色の重い空は夕焼けさえも通さずに
群青の蒼と粉雪の白がまじりあったまま、やがて夜の帳のなかに昏くなって
ゆきます。
釜石を思いだすとき 不思議に寂しい重い雪雲の心象風景となります。
万感の少年時代の原風景を想いを込めて切りとったもので気負いもてらいも
感傷もなく、ふと出てきたおもいを淡々と紡いでみたものです。
9 夜明け前 漢(おとこ)の夢に 雪は積む。
この2年の間に大切な友人達を3人癌で失いました。
自分自身も昨年偶然から前立腺の癌が発見され一時は動揺しましたが、家族
と友人、信頼の医師達によって手術が成功し復帰できました。
復帰してみて 自分は生かされているとおもいました。
人の生命を分けるものは 運命ではないかと思うようにもなりました。
雪の中で深紅の薔薇に己の命を重ねあわせたり大雪の日に 田舎で手を振っ
て送り出してくれた祖父の想いに心をはせるのは 亡くなっていった友人達の
無念の想いに 寄り添おうという無意識の行動かもしれません。
釜石の片田舎の駅舎から私を送り出してくれた祖父はわずか一年後に危篤の
知らせをうけましたが勉学を頑張れ帰るに及ばずという手紙を残してこの世を
さりました。
この句は自分自身へ夢をもっていきるという矜持でもあります。
無作為に選句してくださるなかで群馬の森さんが、009 降る雪を耐えて生命
の紅き薔薇とこの句を選んでくださった事が素直に嬉しいとおもいました。
森さんからいただいたメールに男は夢とチャレンジという言葉をいただきま
したが 私も全く同感です。
この歳になってなお 日夜海外の鉄鋼業務に従事し絵画と 俳句に没頭でき
ることの幸せを感じております。
077 夢に向け 初の日の出を 飲み干して
という森さんの豪快な句に 乾杯です。
以上 多少自句自解から逸脱したところもありますがご容赦ください。
句の会を通じて、語りあえる友人ができましたことも感謝しておりま
す。
(2) 森さん
医師が、癌などの不治の病になってしまうほど、落胆することはありません
。予後、すなわち、後どのくらい現世にいられるのか、を知っているからです
。先月も、非常に優秀な肺癌専門医師が50歳で、膵臓癌のために逝去しました
。また、私の2年上の脳腫瘍専門医師が肺癌で逝去しました。
天命がいつ各個人にくだるかは、判りません。 天命が下るまで、「夢とch
allenge 」と「若手の育成」の精神を持って生きていきたいものです。
その意味で、私の俳句には「夢」などの言葉が多く出てくるのです。
(3) 豊さんの自句自解その他
○降る雪や肩を寄せ合ひ二人酒
こたつの中で恋人と肩を寄せ合いながら雪見酒を楽しんでいる。その艶っぽ
さを読んだのですが、うまく伝わらなかったようです。
○手袋をスマートホンの指が脱ぎ
手袋をしたままではスマートホンの操作はしにくい。そこで手袋を脱いでL
INEの文字を打ったけれど、寒さで指がかじかんでうまく打てない。最近の
若者の姿を皮肉ったのですが、やはりわかりにくかったですね。
今回の選句を見て、皆さんがどういう句を好むのかわかったような気がしま
した。イメージが具体的で、言葉使いが素直なもの、ということでしょうか。
また、吉良さん宮澤さんなど、皆さんの鑑賞文もなかなか深いものがあって
、よかったです。
(4) 深瀬の自句自解
・雪積みし汽車ほえきたり上野駅
子供のころ、両親の故郷である秋田から親戚の人が上京してきたとき、上野
駅に出迎えに行きました。上野駅はかつては東北地方の玄関口でした。
・しんしんと降り積む雪夜ひとり酒
雪の降る夜の静けさは、神秘的に感じます。
・雪の朝救急車の音ひとりお茶
救急車の音には、やや胸騒ぎを覚えますが、いつまで他人事で済ませられる
か、気になることがあります。
・雪帽子すましほほえむ地蔵かな
お地蔵さんはかつては身近にあったように思います。いろいろな表情の顔が
あるのがおもしろいと感じます。
・雪原を狩人と犬獲物追ひ
ブリューゲルの絵「雪中の狩人」をイメージして作りました。
・雪原の鉄路消えゆく地平線
テレビで見た北海道の雪の原野を走る線路を思い出して。北海道の鉄道の存
続もたいへんそうです。
・夜空から湧き出る雪に吸い込まれ
夜空から雪が舞い降りてくるのを見上げたときの印象です。
・山や河降り積む雪の静かさや
雪景色の静けさを思って作りました。蕪村の絵も少し参考になった感じです
。
・雪解けの陽やまぶしけりビルの窓
・残雪に街路まぶしき日本橋
(上2 句) 東京に雪が降った日の翌日に日本橋で見た光景です。
・残雪にしかばねの山夕陽燃え
ノルマンディー上陸作戦のドキュメンタリーを見ていたので、作って見まし
た。203 高地とかインパール作戦とか、兵士は消耗品のようです。どうしてこ
ういう悲惨が繰り返されるのか不思議です。
・雪が降るアダモの歌や耳の奥
「想い出の小川」とか、なつかしく想いだします。
・いらだてる心の隅にのこり雪
最近、団塊の世代で切れる人が多いそうです。自戒も込めて作りました。
・吹雪くなか犬ぞり吠えてひた走る
グリーンランド犬は、どんな吹雪の中でも走ることが使命みたいです。
・天国の入試気になる老いの冬
・入試落ち駅のベンチに佇めり
・受験終え母とフルーツセピア色
(上3 句) 受験、入試を俳句に読むのは難しいと感じました。
・一月も終わり消えゆく去年の日々
一月は、年が改まったという新鮮さがありますが、すぐに消えます。
・静かさや時間の止まる三が日
・三が日ひかりも音も別世界
・木立越しスーパームーンの三が日
・七十路の自転車漕ぎし三が日
(上4 句) 今年のお正月三が日の実感です。日本の三が日はよいと思います
。自転車で北品川の方まで行きました。本当は羽田まで行きたかったのですが
、年のせいか残念でした。
・熊撃ちて猟師合掌陽のひかり
命の循環のような感じです。作りすぎの感じもします。
・風呂出ればテレビに笑ふ妻の声
私は録画したドキュメンタリーのようなものしか見ないので、うらやましい
とも感じます。
・笛ひびく工事現場の時雨れかな
工事現場の緊張感のようなものを感じてもらえたらと思いました。
・時雨れ聞き老後のゆとり妻に問ひ
妻になんとかなるとか言われると安心します。
・柵越しに手をふる園児母を待ち
近くの保育園の前を通ったとき手を振られました。夕方だったので、なにか
さみしい気持ちになりました。自分の子供のころの体験とも重なりました。
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