七句会
第二十四回ネット句会参加各位
第二十四回の選句結果を踏まえて、感想や自句自解、等をおよせいただき、
たいへんありがとうございました。
およせいただいたものを、名前順に、ほぼそのまままとめてお届けすること
にします。今後のやり方に、ご意見、等ありましたら、よろしくお願いします。
七句会のweb http://nanaku-haiku.blogspot.jp/ にも掲載してあります。
今後とも、よろしくお願いいたします。
深瀬 (事務方)
(1) 小野寺さんの自句自解
030 夢一夜越え帰し峰に山桜
長い長い険しい山の尾根を越えてきた、ふと振り向いた峰の遥か向こうの眼
下には満開の山桜が咲いていた。深山にひっそりと咲くのはソメイヨシノでは
なく 山桜でなければならなかったのです。
019 鳥啼きて春愁の湖(うみ)暮れにけり
遠くで鳥の鳴く声がして 春の湖を夜の帳(とばり)が降りてくる 鳥の声
は一瞬 静寂を支配し、春の憂いを誘います。
062 菜の花や群青の海光りをり。
群青色の荒海を背景に 菜の花の黄色がまるで眩い光の様で、群青と美しい
対比をみせ一服の絵のような光景でした。
076 奥津城を風しのび哭き春の月
訪れる人もない山寺の荒れ果てた墓石群を風が偲び泣くように音を立て流れ
そこに春の月があがり、所業無常の響きを発しておりました。
079 花衣 ほつれし髪の風に揺れ
花見のための友禅の和装の人の、黒髪がなまめかしく 風に揺れておりまし
た。志方さんの素直な感想とご理解に 感服です。
104 荒城の堀 埋めつくし花筏
信州の名城 松本城の堀を埋め尽くす花筏が風に揺れて動くさまは息を呑む
光景でした。戦国時代からの名城は深志城とも呼ばれ明治新政府に組みして会
津征伐に向かいました。城の桜は古城の怒涛の時代を生き抜いてきた生き証人
でもあり、花筏は古城の戦乱の歴史を彷彿とさせました。
(2) 中津川さんの感想
今回の「春 愁」は難しい題でした。その中で豊さんの6点句は読み返すと
なるほど素晴らしいと思いました。まさに秋岡さんが書かれている「いつまで
こんな句が読めればいいですね」に同感でした。
私の句では「卒業や はかまの列に 夢が起ち」が3 点をいただきました。
学生さんが学校の門を楽しげに話しながら出てきたのを見ていて、そのまま詠
んだものです。
時事ネタもたまにはチャレンジと思い「アイドルが 夢をこわして 春の終
」「春議会 官僚の雄 夢くづし」を作りましたが、まだまだですね。
(3) 豊さんの自句自解
(023) 頬杖の少女は春の愁ひかな
テーブルの上に頬杖をついて窓の外をぼんやりと眺めている少女。何か悩み
事でもあるのか、それともただの気まぐれな のか。思春期の少女の微妙な心
理と春愁を結びつけた句です。
まさかこんなにたくさん票が入るとは思いませんでした。皆さんまだ純粋な
感性を持っておられるようで、 うれしいです。
(044) 鯉のぼり少年の夢大空へ
鯉のぼりは男の子の節句の象徴。高く泳ぐ鯉のぼりを見上げる少年は、さら
にその上の空高く大きな夢を広げています。秋岡さんの鑑賞は、まさにその通
りです。
(050) 春光や何を夢見る新生児
窓から差し込む春の光が、べービーベッドに眠っている生まれたばかりの赤
ちゃんに注いでいます。まだ汚れのない赤ちゃんは、どんな清らかな夢を見て
いるのでしょうか。
春の光と新生児の清らかさを詠んだのですが、うまく伝わらなかったようで
す。
(068) 風の色青くなりゆく五月かな
五月は新緑の季節です。したがって、この「 青」 は、ブルーではなく、青葉
の青、緑です。新緑の林を吹き抜けてくる風は、きっと若葉の青色に染まって
いるに違いない。5月という季節の新鮮さを表現したつもりだったのですが。
(4) 深瀬の自句自解
・眠れずの老ひの春愁ながき夜
・七十路の朝餉にむせて春愁ふ
・既視感も老ひて違和感春愁ふ
・春愁ふ青さ無縁の老境地
最近、自身の老化の進み具合を実感することがしばしばあります。老化現象
と正面から向き合っているつもりですが、他の人がかなり若々しい句を詠んで
いるので、自分がややおかしいのか、などと不安を感じたりもしています。
・ぼけた夢めざめ安堵の妻ふつう
家内は身近なバロメータです。少し年下なので頼りになる感じです。
・人を見て隠れる夢の胸騒ぎ
無意識になにかよくないことをしているのかもしれないなどと心配になりま
した。
・夢のなかに入りませんかと陽水は
井上揚水の歌の歌詞は、なにか独特な雰囲気があると思います。
・両岸の桜に舟の夢ごこち
目黒川は両岸に桜が満開になります。その間を舟で行ったらどういう風景な
のか想像してみました。
・山桜朝日に映えて夢つづき
本居宣長の和歌を参考に、朝になってもまだ夢の世界のようだ、というつも
りです。
・夢問われ笑ひごまかす老ひの春
本当は、しっかり答えたいところです。
・時ながれ昭和平成夢に消え
天皇の生前退位が話題ですが、年号というのも時代を象徴しているのかもし
れません。
「七十年という時間を生きて」
・七十年ふりかえみれば夢のごと
・七十年夢のまた夢歩みけり
・時奔流先端もがき七十年
・飲み込まる時の津波に追いつかれ
時間というのは、不思議に感じます。重力によって時空が曲がるとか、存在
の根源にあるものなのでしょうか。
・既視感になにか不穏の散り桜
老化のせいか、満開の桜をみても、以前ほど感激しないみたいです。
・花筏笑顔たたえる目黒川
・普段着でベッド寝ころぶ春嬉し
ふとんなどかけずに寝っころがれるというのは、開放的気持ちになれます。
・新緑のひかりまばゆき日比谷かな
日比谷図書館の中からみる日比谷公園の樹木の新緑の輝きはすばらしいです。
・ドア開けて新緑とびこむ朝静か
日当たりのよくないマンションなので、朝、新聞を取り出すためにドアを開
けたときの外の朝日に輝いているさまは、ほんとうに新鮮に感じます。
・懸案の片づき窓に忘れ雪
人生いろいろな課題にぶつかりますが、その一つがやれやれやっと解決した
と思って、窓の外をみたら春の雪が舞っていたという風情です。
・忘れ雪木窓の桟にひかり積む
木製の窓の桟というのにノスタルジーを感じて作ってみました。
・軒先の鉢の草の芽ひかり受け
あまり陽のあたらない軒先に置いてある鉢植えにも、春とともに陽がさして
くるという様子です。
・がん告知帰路に草の芽ひかりおり
終わりかける命とこれからが伸び盛りの命を対比してみました。3 歳の孫を
みているとつくづく感じます。
・草の芽に紅きくちびる女子高生
最近の女子中高生は、かなり口紅を塗っている感じです。それと芽生えたば
かりの草の緑の取り合わせがおもしろいかと思ったのですが。
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