七句会のみなさま
第二十六回の七句会にご参加いただきたいへんありがとうございました。
今回の選句結果をご報告いたします。
4 点句
(038) 秋の日や古仏微笑む万葉路 豊
(047) 古戦場 熱き血潮か曼珠沙華 小野寺
3 点句
(012) 柿の実に五重塔を透かし見る 深瀬
(043) 祖谷渓や千尋の谷底に秋 橋本
(057) 仏壇の朱盆にふたつ青蜜柑 深瀬
2 点句
(014) さんま刺し 旧交の宴 湯割り酒 中津川
(019) 佐渡の海山路に映える柿一つ 秋元
(021) 故郷 (ふるさと) の 宅配待てり 熟し柿 吉良
(031) 落ち鮎を焼いて故郷を語りけり。 小野寺
(049) 朽ち果てて落葉降りつむ墓標かな 豊
(050) 暁 (あかつき) に古都の甍を 紅葉舞ひ 小野寺
(054) 終活の本棚前に秋の暮れ 深瀬
(055) 杣道 (そまみち) に野仏の居り秋時雨 小野寺
(056) 忍びよる 金木犀の 芳しさ 志方
(058) 亡き朋はヴィオロン弾くや画のなかに 小野寺
(062) みつめれば遠い想い出青蜜柑 深瀬
(067) 戦さ場のすすきの海に月のぼり 小野寺
(076) 征きてなほ 祖国護るや 彼岸花 小野寺
下記に、選句表に、各句の右側に作者名、および、その下に選んだ人の名前
とコメント (追番付き、順不同、敬称略。) を付したものを添付します。
次回については、来年1 月中旬ころにご連絡したいと思っていますので、よ
ろしくお願いいたします。やり方、等について、ご意見がありましたら、ご連
絡をいただきたく、よろしくお願いいたします。
事務方から、以下、ご連絡、ご依頼です。
(1) 選句参加者
今回の選句には、下記の12名が参加しました。
秋岡さん、秋元さん、小野寺さん、吉良さん、志方さん、治部さん、中津川
さん、橋本さん、森杜瑯さん、柳町さん、豊さん、深瀬。
(2) 今回の句会の結果を踏まえた自句自解、感想、等の募集について
今回の句会の選句結果を踏まえて、各自、表明しておきたいこともあるので
はないかと思いますので、自句自解、感想、等、なんでも結構ですので、募り
たいと思います。一応、期限としては12月8 日とし、事務方にメールでいただ
き、それを七句会の下記のweb に掲載することにしたいと思います。
http://nanaku-haiku.blogspot.jp/
これまで、句会の後、勉強会としての集まりを企画していましたが、参加者
が少ないこともあり、改めることにしました。集まっての勉強会も適宜、行い
たいとは思っていますが、よろしくお願いします。
2018.11.19
代表 橋口侯之介 (休会中)
顧問 豊 宣光
事務方 深瀬久敬
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1.兼題 秋の食べ物
(001) 暑さ去り鍋が恋しき夕景色 秋元
(002) べたら市 せり声高く 街灯り 吉良
(003) 天高く食の戻るを願ふなり 橋本
1 深瀬 「天高く馬肥ゆる秋」は、本来、逞しくなった馬に
乗った匈奴が攻め込んで来るのを警鐘するものだったそうで
す。体重がなかなか減らないのも問題 (私です) ですが、増
えないのも気がかりだと思います。
(004) 輝ける柿の実あおぐ老夫婦 深瀬
いつも熟すのを楽しみに待っていると、いつのま
にか鳥のえじきになってしまい、美味しく食べた
ことがない!!
(005) 富有柿 熟す間もなく 鳥のもの 柳町
(006) 生け垣の赤き南天鳥が喰い 秋元
(007) 釜の蓋取れば湯気立つ栗御飯 豊
1 志方 秋の味覚の美味しさが上手い表現ですね
(008) べったらの 香る夜店や 江戸の町 吉良
(009) 鱗雲恙 (つつが) なき日や里の柿 小野寺
1 橋本
(010) 雨戸閉め 帰り待つ家 炊くおでん 中津川
(011) 軒先きの実生の葡萄色づきぬ 秋元
1 小野寺 種から育てた葡萄には特別な愛着があるのでしょう。
軒先の蔓の先に葡萄の実が色をつけ、それは確かに季節の移
りかわりも教えてくれるのでしょう。
(012) 柿の実に五重塔を透かし見る 深瀬
1 中津川 たわわな実の間から塔がちらちら見えるのでしょう。
秋の果物は何と言っても柿が代表なんですね
2 秋元
3 秋岡 なぜかしら塔の傍には柿の木があり実がたわわにな
っています。 "透かし見る" というのは面白い表現だと思い
ました。
(013) べったらの 歯ごたえ旨し 酒すする 吉良
(014) さんま刺し 旧交の宴 湯割り酒 中津川
1 森杜瑯
2 橋本 秋刀魚も酒も旨いでしょう
(015) 妻亡くし鍋が得意と友の言ふ 深瀬
1 秋岡 妻を亡くされどれくらいの時間が過ぎたのでしょう
か。一区切りついた気分なのでしょうか。
(016) 松茸や ただよう湯の香 老舗宿 中津川
1 治部 土瓶蒸しなのでしょういいですね。何年もご無沙汰
しています。老舗宿とあるので、ここで香っているのは温泉
なのでしょうか。俳句的には土瓶蒸しであってほしいのです
が。
(017) 栗の飯 夕餉の匂い 妻の声 小野寺
1 治部 仲の良さが伝わります。栗ご飯の匂いはたまりませ
ん。秋ですね。
(018) 黄色実の花の様なる枝垂れ柿 橋本
1 秋元
(019) 佐渡の海山路に映える柿一つ 秋元
1 吉良 海の青と柿の色の対比が美しい。
2 小野寺 佐渡の海が見える山路に柿の木はあり秋の陽を浴び
て柿は海の藍と対照的に鮮やかな色を際立たせています。
(020) 鍋で煮るおでん待つ間のひとりごと 深瀬
1 豊 一人鍋のおでんを前に、どんな「ひとりごと」をつ
ぶやいているのでしょうか。「おでん待つ間」が微妙な心理
を現しています。
(021) 故郷 (ふるさと) の 宅配待てり 熟し柿 吉良
1 中津川
2 秋岡 都会ではなかなか美味しい熟し柿を作るのは難しい
ですね。陽当たりのいい、空気のいい田舎でないとやっぱり
駄目ですね。
(022) 廃屋の 柿の実落ちて 鳥の声 中津川
(023) 公園の屋台のおでん味深め 深瀬
(024) 柿の葉や貼り絵で飛び立つ赤い鳥 治部
1 深瀬 「貼り絵で飛び立つ」という表現に驚きました。赤
い柿の葉っぱが飛んでいる様子が立体的に目に見えるように
感じました。
(025) 柿食へば少年時代の里想ふ 橋本
(026) カボスの香 豊後の光り 部屋満ちる 吉良
(027) 里山の枯れ木にたわわ次郎柿 秋元
(028) 新蕎麦を江戸より続く老舗にて 豊
1 治部 食べたんでしょうね。羨ましい。新蕎麦は香りが何
とも言えないですよね。老舗では特にうまく感じるのは何故
でしょうか。
(029) 廃屋の庭の柿の実夕陽受け 深瀬
(030) 感謝して とどいた新米 塩むすび 中津川
1 治部 新米のおむすびは塩だけでうまいです。語順を逆に
すると感謝の気持ちがより伝わると思います。
(031) 落ち鮎を焼いて故郷を語りけり。 小野寺
1 吉良 落ちアユを焼いて食べてみたいものです。
2 治部 故郷でも鮎が取れるのでしょうね。秋の鮎を焼くと
思い出すのでしょう。語る仲間がいることも伝わります。
2.兼題 秋の旅行
(032) 富士浮かぶ 羽衣の松 秋澄みて 中津川
(033) 四方より虫鳴く声や露天風呂 豊
1 柳町
(034) 秋風のわくら葉祓い敷く小径 橋本
そらかみやこか
(035) 秋の旅宇宙か京都か思案する 治部
(036) 鳥わたる 加賀の酒へと 新幹線 中津川
1 志方 加賀の酒のうまさは格別みたいですね
(037) 散りばめし朱き実映える花水木 橋本
1 志方
(038) 秋の日や古仏微笑む万葉路 豊
1 柳町
2 橋本
3 深瀬 万葉のおもむきに溢れる古代の道をゆっくり歩いて、
しみじみとした感じになっている様子が伝わってきました。
4 小野寺 万葉の里を散策する秋の日 時の流れを生きてきた
仏も微笑んでいるのでしょう。ほのぼのとした感慨を思い起
こします。
(039) 黄葉 (もみじ) 愛で今日は雪舞ふ北の旅 橋本
1 小野寺 昨日は紅葉を愛でて秋を楽しんでいたのに今日は粉
雪の舞う北の街と男の独り旅もなかなかいいですね。
(040) 湯の煙 孫にひかれて 身を沈め 柳町
1 深瀬 わたしたち世代もこういう境遇になってきたのか、
とやや戸惑いの気持ちにもなりましたが、三世代、四世代の
家族で旅行をたのしむのもすてきかなと感じました。
あきさめのろてんでせとを
(041) 秋雨の露天風呂で瀬戸を一望す 治部
(042) もみじ浮く 硫黄の匂い 露店の湯 中津川
(043) 祖谷渓や千尋の谷底に秋 橋本
1 中津川 祖谷に向かう道やかづら橋を思い出しました
2 吉良 谷の底の紅葉の美しさが日本画のように目に浮かび
ます。
3 豊 祖谷渓は四国・徳島県の観光名所です。作者はそこ
を旅したのでしょう。「谷底に秋」の表現がうまいです。
(044) 風冷えて のぞくお釜や 秋蔵王 中津川
(045) 竹の春旅に出るかとさんざめく 治部
1 中津川 竹の緑と紅葉狩りへの期待が良く表されている様に
思います
(046) 霜月や 照葉の明り 宿の窓 柳町
3.雑詠、無季語
(047) 古戦場 熱き血潮か曼珠沙華 小野寺
1 森杜瑯
2 中津川 彼岸花が古の武将への鎮魂でしょうか
3 橋本 発想に感心します。秋の旅の句ではないのかな
4 秋岡 古戦場に咲く曼珠沙華は確かにそう見えますね。
(048) 秋の雲空にあざやか筆づかい 深瀬
1 志方 秋の雲の色彩が筆使いという上手い表現見事
(049) 朽ち果てて落葉降りつむ墓標かな 豊
1 森杜瑯
2 吉良 落ち葉の美しさがモノの憐れさを一層引き立てた句
です。
(050) 暁 (あかつき) に古都の甍を 紅葉舞ひ 小野寺
1 柳町
2 秋元
(051) 秋の声しずかに睨む仁王像 深瀬
1 豊 「秋の声」はどういう声でしょうか。紅葉した寺を
見に来た観光客のにぎやかな声かもしれません。それを、山
門の仁王像が「静かにしろ」とにらんでいるわけです。
(052) 雲淡く 滲んだ紅に コスモスが 志方
(053) 破れ寺 (やれでら) に柿の木のあり鳶の声 小野寺
(054) 終活の本棚前に秋の暮れ 深瀬
1 橋本 一寸寂しくなりますが
2 秋岡 小生も整理しなくては、整理しなくてはと思いなが
ら終日暮らしています。
(055) 杣道 (そまみち) に野仏の居り秋時雨 小野寺
1 治部 こんなにも細く険しい道にも野仏がいた。秋らしい
発見が伝わります。
2 秋元
(056) 忍びよる 金木犀の 芳しさ 志方
1 森杜瑯
2 橋本 忍びよるが新鮮です
(057) 仏壇の朱盆にふたつ青蜜柑 深瀬
1 中津川 色の対比がリアルです
2 吉良 朱と緑の色の対比がよい。画の素材になりますね。
3 豊 朱盆に青蜜柑という色の取り合わせがきれいです。
(058) 亡き朋はヴィオロン弾くや画のなかに 小野寺
1 深瀬 亡き朋が描いたヴィオロンの絵を前に、感慨にふけ
っている様子が伝わってきました。ヴィオロンというとポー
ル・ヴェルレーヌの秋の歌 (落葉) 、上田敏訳「秋の日の
ヴィオロンの ためいきの ひたぶるに 身にしみて うら
悲し~」が想起されます。駒東の授業で暗唱させたのか?
2 志方 逝きし朋への惜別がしみじみとかんじられます。
(059) 鬼子母神 真っ赤に染めし 紅葉手かな 杜瑯
(060) 風さやか 案山子傾く 刈穂かな 志方
1 小野寺 秋も深いあぜみちに稲穂がたわわに実り田んぼを守
ってきた案山子にさやかに風がそよぎ心地よい田園の風景で
す。
(061) 秋蝶の破れし翅に陽は翳り 小野寺
1 秋元
(062) みつめれば遠い想い出青蜜柑 深瀬
1 治部 青蜜柑を見つめている作者が面白い。どんな思い出
があったのかなぁ。
2 秋岡 小学生の時の秋の遠足では必ず親が初物のまだ甘く
ない青蜜柑を用意してくれました。遠い思い出です。
(063) 老い桜 野分に耐えて 冬がまた 志方
1 森杜瑯
(064) 天高く鰯雲超え朋は逝き 小野寺
1 柳町
(065) 甘酒を 若ぶる二人 夢と待つ 杜瑯
(066) 人形に変身ツールつけまかな 深瀬
(067) 戦さ場のすすきの海に月のぼり 小野寺
1 豊 古戦場の秋のさびれた風景の感じがよく出ています。
2 深瀬 先日、大学の同級生数人で、一面すすきの仙石原草
原に行ってきました。すすきはなにか不気味な感じもします
が、なにか強くひきつけられます。古戦場、すすき、月と揃
うと、人間存在のはかなさを突きつけられる感じです。
(068) よみがえる 内股老婆 長き夜 杜瑯
(069) 曇天を雁飛びたちぬ北の海 小野寺
1 吉良 雁が曇天の中を決意したように旅立つ様子がうまく
描写されている。
(070) 終活のネット解約秋の夜 深瀬
(071) 朝露に 空の茜を きらきらと 志方
(072) 朝露に山茶花の華 小鳥来る。 小野寺
(073) 老夫婦手を取り合いて菊日和 豊
(074) 新盆に 絵筆携え朋の声 小野寺
1 中津川
(075) 交差点人込み縫うや秋の風 深瀬
(076) 征きてなほ 祖国護るや 彼岸花 小野寺
1 柳町
2 深瀬 「征きてなほ」の意味するところがよく分からない
のですが、墓地の近辺に咲き乱れる真っ赤な彼岸花 (曼珠沙
華) が、逝ったあの世の人も、この世の人も見守ってくれて
いる、といった感じかなと思いました。
(077) タワマンの窓辺過ぎ行く秋の風 深瀬
(078) 逆上がり出来たと叫ぶ 孫の秋 小野寺
1 吉良 微笑ましい句です。
(079) 秋の声どこに向かうか身改む 深瀬
(080) 移りゆく 車窓に刻む 薄かな 志方
1 小野寺 旅の車窓の向こうを薄の群れが流れてゆく薄は己の
生命の儚さも乗せて流れていくようでもあります。
(081) 銀漢の澄みたる夜半に百舌が鳴き 小野寺
(082) 秋風や 前行く友を 息で追い 杜瑯
(083) 終活の手順を思案秋の朝 深瀬
(084) 奥津城は時雨 (しぐれ) て紅葉敷きつめし 小野寺
1 志方
(085) 夜長かな合わぬ眼鏡で読書する 治部
1 豊 秋の夜長は読書に向いています。本好きの作者は、
合わない眼鏡をかけてでも読みたいのでしょう。
(086) 石仏に翅たたみおり秋の蝶 小野寺
1 秋元
(087) 地下街を行き交う人に秋深む 深瀬
1 豊 何でもない風景を詠んだ句ですが、飾り立てた表現
ではない素直なところがいいです。「秋深む」が効いていま
す。
(088) 百舌啼きて銀漢の闇鎮まれリ 小野寺
1 志方 百舌鳥と銀漢の対比の妙
(089) スマホ持ち人それぞれの電車内 深瀬
(090) 潮騒に 鎮魂願う 浜千鳥 志方
1 小野寺 浜千鳥が遊ぶ海辺にたつと潮騒の音がまるで幾多の
生命を奪った海に対峙した、鎮魂の読経のようでもあり浜千
鳥はさながら読経につられて一心に祈りをささげる己の心の
心象風景でもあるのでしょうか。
(091) 朱 (あけ) に染め古都の日暮れを雁発ちぬ 小野寺
1 秋元
(092) 腹回りうきわ付きねと妻の言ふ 深瀬
1 橋本 ユーモアたっぷりですね
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