2019年3月17日日曜日

七句会 第二十七回目のネット句会 選句を踏まえた自句自解です。

 七句会のみなさま                          
                                   
 第二十七回の選句結果を踏まえて、感想や自句自解、等をおよせいただき、
たいへんありがとうございました。                   
 およせいただいたものを、名前順に、ほぼそのまままとめてお届けすること
にします。今後のやり方に、ご意見、等ありましたら、よろしくお願いします。  
                                
 七句会のweb  http://nanaku-haiku.blogspot.jp/ にも掲載してあります。
  今後とも、よろしくお願いいたします。                
  深瀬 (事務方)                            


1.小野寺さんの自句自解
・残照の苫屋に淡く冬の影       (066)
 初冬の夕暮れ時 薄明りの中に夕餉の煙がたなびく苫屋はあり冬の落日を前
にして ほのかな一幅の墨絵のような風景でした。
・星冴えて森羅万象回りけり      (087)
 月のない真冬の夜更 深いしじまの中で星々が煌煌と輝き夜空の壮大なパノ
ラマは 人知を遥かに超えたダイナミックな自然の運行の正確さを肌でひしひ
しと感じさせてくれました。
・ふるさとは霙(霙)の彼方寒椿    (097)
  豊さんのご指摘通りです。霙が降る中に凜として紅く咲く見事な寒椿は、遠
い三陸釜石の少年時代の記憶に刷り込まれた 鮮やかな情景として蘇ってくる
のでした。
・寒椿雪の重みを凌ぎをり       (057)
  冬の朝 降りしきる雪の中で 紅い寒椿は雪の重みに耐えてひっそりと 紅
い花弁を主張し健気に咲いておりました。
・冬枯れの野にけぶりたち鳶の声    (063)
 荒涼とした荒れ野にたちのぼる煙は 京の斎場のあだし野にあがる焼き場の
煙を連想させ鳶の声は人の世の無常と儚さを一層かきたてるものがありました。
・くれないに燃ゆる椿に雪が舞ひ    (080)
 深瀬さんの感想の通りです。深紅の鮮やかな椿に真っ白な粉雪がやはらかく
舞い落ちて降りかかり絵巻ものをみる情景でした。
・雪の原 雄叫び聴くや 衣川     (095)
 桑子さんの感想の通りです。一面の銀世界の衣川の古戦場は少年の頃に連れ
てゆかれた盛夏の衣川の情景が思い起こされ芭蕉の句
   夏草や兵どもが夢のあと
の句と重なり 源の義経無念の終焉の地は滅びゆく武者達の雄叫びが怨霊とな
り耳殻の奥に聞こえてくるようでもありました。

2.中津川さんの自句自解
  はからずも5点句一つと4点句二つという結果に驚いています。
  早春という兼題についてはまず春の季語のうち早春に該当するものをいくつ
か選んで考えあるいは想像してみました。
・朝ひかる 通学路(みち)に 薄氷
  小学校時代に田んぼの横の路を歩いて通い、薄い氷を割って遊びながら行っ
たことを思い出しました。
・リュック背に 川の薫りと 猫柳
  田舎の川沿いの道をウォーキングしていた時に見た猫柳と春の川が草木の芽
吹きを促しているような感じがして「川の薫り」という表現を用いました。
・春浅し ダウンコートで受験生
  多くの受験生が風邪をひかない様にダウンの厚いコートで会場に向かう様子
を書いてみました。
・だみ声や 自動車(くるま)の下に 猫の恋
  毎年のように春先に自分の車の下で猫が大声で相手にアピールするのを思い
だした句です。猫の声の表現が思い浮かばず結局「ダミ声」としました。
  昭和平成の兼題は季語に苦労しました。
・秋たかし 昭和五輪の飛行雲
  東京オリンピックの開会式の様子が思い浮かびスムースに出てきました。
・リストラを バブルはじけて 暮れに知る
  平成11年12月に退職勧奨された苦い思い出です。
・平成の 最後と 我も参賀人
  平成最後の正月一般参賀に行こうと思ったのですが、人出が多く結局止めた
のですが。

3.豊さんの自句自解
・早春の山河の大気肺清め
 早春の山河には新たな息吹を発する新鮮さがあります。その新鮮な空気を肺
いっぱいに吸い込んで、自分の気持ちも爽やかに蘇ったのです。 
・庭の木の蕾ふくらむ春浅し 
 「 春浅し」 がよくなかったようです。「 早春」 という題にこだわりすぎまし
た。せめて「 庭の木の蕾ふくらむ二月かな」 ぐらいにすべきだったかもしれま
せん。
・東京に大雪ありし昭和かな 
 子どものころ昭和30何年かに、東京に大雪が降ったと記憶しています。ま
た、昭和の東京の大雪と言えば二・二六事件が有名です。
・梅開く終わる平成惜しみつつ 
 まもなく終わる平成を読み込みたくてこんな句になりました。
・雪解けの土の中より緑の芽
 雪が解けて春が近づいている感じを出したかったのですが、ちょっと平凡す
ぎました。
・お水取り待つ夜静かな二月堂 
 東大寺二月堂のお水取りは、古都奈良に春を呼ぶ行事として知られています
。その夜はたくさんの人で賑わうのですが、ふだんの二月堂は観光客の数はそ
れほど多くありません。

4.深瀬の自句自解
・早春の芭蕉碑囲む団塊団
  1 月下旬、散歩の集まりで清澄公園近くの芭蕉庵跡を見学しました。江戸時
代の雰囲気が少し分かった感じでした。
・早春のあたたかき陽に老ひみつめ
・早春の浅き眠りに老ひ深む
  最近、老化現象のせいか熟睡感がなく、昼間、ぼんやりしていることが多く
なりました。両方足すと7 点で、同様の傾向があるのかと安心しました。
・早春に地球壊れる予感して
  最近、世界中から極端な異常気象のニュースがあふれています。トランプ米
大統領の傍若無人もあり、なにか配になってきます。
・昭和史に二二六の雪の朝
  二二六事件は、日中・太平洋戦争に突き進む大きな取っかかりになった感じ
がします。昭和天皇の怒りが勝ったようですが、社会全体の流れは変わらなか
ったということだと思います。
・昭和には人間天皇帽子振り
  現人神から象徴天皇への転換をどう引き受けるのか、新天皇にも引き継がれ
る課題だと思います。国民の受け止め方も様々のように感じます。
・団塊も昭和とともに過去完了
  私たち団塊の世代は、廃墟からの戦後復興のなかを「みんなでがんばろう」
とひたすら生きてきましたが、バブル崩壊頃から様相が一変した感じがします。
・平成の三・一一山河哭く
  津波の被害だけなら、もう少し諦めもあったと思いますが、原発被害にはな
にか救いようのない暗さを感じさせられます。
・平成後米中の谷底見えず
  米国と中国というなにか新興と伝統の両極端の国家が対立しているようで、
不気味さを感じます。
・平成後女系か途絶土俵際
  天皇には側室を認めるべきでは、とは言えないですし、医療技術の進歩に頼
っては、とも表立っては言えない感じです。
・アナクロの天皇?首相?家長職
  日本の戦後民主主義は付け焼刃なのかとか、少し気になります。
・なまはげや出刃と雄叫び雪の夜
  なまはげの迫力を描写してみたいと思いました。
・なまはげにおびえる子らのいじらしさ
 この前の節分の日、息子の家で、息子が鬼の仮面をかぶって男の孫二人をか
なり驚かしたようです。それ以来、下の孫がドアをあける音がすると怯えるよ
うになってしまいました。
・来訪神登録遺産面映ゆく
  日本にはなまはげ以外にも来訪神が多数あるようです。多神教文化の面目躍
如ということかもしれません。
・松明けや整理し部屋の崩れゆく
  最近、部屋の中が整理されていることがなかなかありません。身の回りの整
理もかなりの気力とエネルギーが必要です。
・松明けの体重悩む平和かな
  老化による基礎代謝の衰えのせいかなどと苦慮しています。
・松明けの妻と朝餉の静かさや
  こういう関係が理想かなと感じています。
・風に舞ふ落ち葉の音のしむ身かな
  芭蕉の「野ざらしを心に風のしむ身かな」のパロディー(?) みたいにも後で
思いました。
・切り干しに江戸の賑わい日本橋
  切り干し大根というのは、かつては保存食としてもっと日常的だったのでは
ないか、と思います。
・切り干しの湯に漬かるごと座のなごみ
  切り干しを兼題に、無理やり捻った感じです。
・帰らざるおもひかさねし冬茜 (あかね)
  マリリン・モンロー主演の「帰らざる河 River of No Return 」は、西部劇
ですが、題名だけでも惹きつけられます。帰って来ないものへの郷愁は、人間
らしさの特徴のひとつだと思います。
・生きている意味は分からず死にもせず
  現役のサラリーマン時代には、こういう気持ちはなかったと思いますが、老
境をかいま見るようになってふと感じます。3 点は、やや複雑な気持ちもしま
した。

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