2019年5月27日月曜日

第二十八回の七句会の選句結果です。

 七句会のみなさま
 第二十八回の七句会にご参加いただきたいへんありがとうございました。
今回の選句結果をご報告いたします。
  8 点句
(014)   新緑や葉裏を見せて風渡る           橋本
  5 点句
(063)   碧天の 白雲切り裂く 初つばめ        志方
  4 点句
(007)   新緑の葉先に雨後の光かな           豊
(048)   闊歩する就活女子や春の蝶           豊
(054)   春光に津波の遺構静まれり           深瀬
  3 点句
(004)   新緑に黙し祈りの古仏たち           深瀬
(011)   柔らかき 新緑浴びし 命延ぶ         吉良
(024)   ながらえて仰ぐ令和の五月 (さつき) かな    治部
(066)   葉桜や 睫毛に宿る 涙跡           小野寺
(074)   苔むして 煙雨に命の 息吹きかな       志方
  2 点句
(015)   硯擦る 眼に新緑の匂(にほひ)発ち      小野寺
(018)   目に映える 若葉の緑に 心燃ゆ        柳町
(019)   新緑も 山また山で 染め分けし        吉良
(041)   散る花を貴舟の杜で 浴びにけり。       小野寺
(045)   春雷の 闇切り裂きて 花は散り        小野寺
(049)   花びらの敷きつめられし雨の道         深瀬
(050)   花散りて 浅緑(さみどり)薫る 青紅葉    志方
(053)   たまゆらの 生命(いのち)鎮めて春の海    小野寺
(057)   花月夜 黒髪匂ひ(にほひ)風に揺れ      小野寺
(061)   蝌蚪狙ふ大山椒の子ぎこちなく         深瀬
(081)   菜の花を血の色に染め夕日かな         豊
(087)   手作りの梅干し茶請け過疎の村         深瀬

  下記に、選句表に、各句の右側に作者名、および、その下に選んだ人の名前
とコメント (追番付き、順不同、敬称略。) を付したものを添付します。
  次回については、7 月中旬ころにご連絡したいと思っていますので、よろし
くお願いいたします。やり方、等について、ご意見がありましたら、ご連絡を
いただきたく、よろしくお願いいたします。
 事務方から、以下、ご連絡、ご依頼です。
(1) 選句参加者
 今回の選句には、下記の13名が参加しました。
  秋岡さん、秋元さん、小野寺さん、吉良さん、志方さん、治部さん、中津川
さん、橋本さん、宮澤さん、森杜瑯さん、柳町さん、豊さん、深瀬。
(2) 今回の句会の結果を踏まえた自句自解、感想、等の募集について
  今回の句会の選句結果を踏まえて、各自、表明しておきたいこともあるので
はないかと思いますので、自句自解、感想、等、なんでも結構ですので、募り
たいと思います。一応、期限としては6 月16日とし、事務方にメールでいただ
き、それを七句会の下記のweb に掲載することにしたいと思います。
 http://nanaku-haiku.blogspot.jp/
  これまで、句会の後、勉強会としての集まりを企画していましたが、参加者
が少ないこともあり、改めることにしました。集まっての勉強会も適宜、行い
たいとは思っていますが、よろしくお願いします。
  2019.05.26
      代表   橋口侯之介 (休会中)
      顧問  豊  宣光
      事務方 深瀬久敬
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 1.兼題  新緑
   
(001)   新緑やトロッコ列車に通る風          豊
1 秋元
(002)   新緑の 雨降る野辺に 朋の逝き        小野寺
(003)   新緑を 映して走る 孫の背よ         吉良
(004)   新緑に黙し祈りの古仏たち           深瀬
1 吉良    古仏は路傍の苔むした石仏でしょうか、新緑と
  の対比が見事です。
2 柳町
3 小野寺  新緑の中でひっそりと祈りを捧げる古仏たちが
  息づいているようです。
(005)   陽光に新緑揃ひ庭光る             橋本
(006)   新芽伸び 牧の台地の 茶摘みかな       中津川
(007)   新緑の葉先に雨後の光かな           豊
1 志方    季節のきらきら感がイメージされます。
2 治部    新緑と雨後の雫の先に青空が見えます。しずく
  がレンズのように明るさをズームアップして、雨後の清
  々しさを感じるいい句だと思います。
3 吉良    七色の光が目に浮かぶようです
4 秋岡    情景を素直に詠んだ句で気持ちのいい句です。
(008)   我が時と若葉のキャンバス八重桜        橋本
(009)   新緑に令和はじまる余生かな          深瀬
(010)   晴れの日の新緑の路 子等の声         小野寺
(011)   柔らかき 新緑浴びし 命延ぶ         吉良
1 吉良    これからは一年一年大事に生きていく作者の気
  持ちがでています。
2 森
3 橋本    新緑の森林浴、確かに命も延びそうな気がしま
  す
(012)   鯉千尾 新緑(みどり)の谷に 飛ぶバンジー  中津川
(013)   新緑や 令和の薫り 町に満つ         吉良
1 秋岡    令和の薫りがどんなものか分かりませんが、新
 緑と合わせ新鮮な感じが匂い立ちます。
(014)   新緑や葉裏を見せて風渡る           橋本
1 志方    風の渡る様が葉裏という隠されたものまで緑に
 染まってますね
2 治部    やわらかい若葉の間を風が通って葉裏の白さが
  見える。ほんの一瞬の光景をうまく切り取っていると思
  います。風もそよぐではなく渡るとしたのがいいですね。
  何となくではなく、どこかへ向かっている気がしますね。
  お見事です。
3 中津川
4 宮澤  枝の揺れ、新緑の輝きの変化、点描のような葉
 裏の動きで風の道を知ります。風はどこから来て、どこ
 へ行くのでしょうか。年取って当たり前のことが不思議
 に思えるようになりました。
5 豊      新緑の感じがよく出ています。「葉裏を見せて
 風渡る」の表現がすばらしい。
6 秋元
7 小野寺  新緑の季節の変わり目風が流れる様を爽やかに
  感じます。
8 深瀬    「葉裏を見せて風渡る」という観察力と表現力
  がすごいと思いました。葉裏のやさしくやわらかい新緑
  が目に浮かびます。
(015)   硯擦る 眼に新緑の匂(にほひ)発ち      小野寺
1 中津川
2 橋本    眼に新緑の匂発ちが新鮮です
(016)   十連休新緑匂ひ道みごむ            深瀬
(017)   人閑散 花の名所は 緑濃し          中津川
1 宮澤  あんなににぎわっていた花の名所は、花が散っ
 たらただの場所。来年もきれいに咲けば名所として続く
 のでしょうが、来年がなければ、それで終わり。さて、
 その来年に生き続けられるのでしょうか?
       もう若くないと思いつつ、新緑を見てもう一
     花咲かせたいと思う今日この頃です
(018)   目に映える 若葉の緑に 心燃ゆ        柳町
1 森
2 秋元
(019)   新緑も 山また山で 染め分けし        吉良
1 志方    緑の様々な色の変化がそうぞうされます。
2 豊      この句もうまいと思いました。「染め分けし」
 がいいですね。

 2.兼題  令和、元号、等
(020)   元号に 平和を祈る 春万葉          中津川
1 治部    令和のお題は難しかったと思います。いろいろ
  とご意見はあるでしょうが、平和を祈る気持ちには変わ
  り有りません。前後に一文字づつのスペースを置くこと
  により、中七の平和を祈るをきょうちょうして、作者の
  思いが伝わりました。同感です。
(021)   花が散り芽ぶく新緑令和明け          秋元
(022)   花みづき 祝意溢れて 即位式         中津川
(023)   改元に生きて皇居の近くなり          橋本
(024)   ながらえて仰ぐ令和の五月 (さつき) かな    治部
1 吉良    令和元年、今年も平和が続くように祈りたいで
  すね。
2 橋本
3 深瀬    「ながらえて」という感慨に同感しました。新
  元号が五月からというのは、生前退位のメリットなのか
  もしれません。
(025)   改元の何がめでたや雹激し           豊
(026)   人の列 つつじの社 朱印待ち         中津川
(027)   万葉の令月と風和の令和来る          橋本
(028)   令和とてさわぐ浮世にさめるわれ        深瀬
1 豊      改元をめぐる世間の大騒ぎ、私も苦々しく思っ
 ていました。安倍政権の仕組んだ政治ショーにバカな国
 民が踊らされただけです。
(029)   令は麗 新元号は 五月晴れ          中津川
(030)   梅の香や旅人憶良の歌の宴           豊
1 中津川

 3.雑詠、無季語
   
(031)   万緑の 光の杜に時鳥(ホトトギス)      小野寺
(032)   帰郷せぬ毛馬蕪村碑にビール置き        深瀬
(033)   暁闇(ぎょうあん)に夢から覚めて 白椿    小野寺
1 宮澤  すっかり早寝が当たり前になり、明け方前の暗
 いうちに目覚めることが多くなりました。白椿とは、き
 っとすがすがしい夢から覚められたのでしょう羨ましい
 です。私の目覚めに出てくるのは黒鴉か、よくてクロネ
 コ。
(034)   地球号おもかじいっぱい春に向け        深瀬
(035)   鯉の恋我先競ふ春の川             橋本
1 宮澤  この句から、川幅いっぱいに舞うこいのぼりを
 思い浮かべました。派手やかに、競うように空を泳いで
 いるが、ひもで結ばれ自由に動けず今年の恋も成就せず
 しまわれて、また来年。でも一番きれいだったのは鯉の
 ぼりがつくられた最初の年だったのですよね。
(036)   今生の別れ想わす五月の陽           深瀬
(037)   髪結ひて夜桜を観し人のなく          小野寺
(038)   五月雨や生き様流す枯山水           治部
1 柳町
(039)   花吹雪 古城の壕は まぼろしか。       小野寺
(040)   カネ余りどこのことかと空仰ぐ         深瀬
(041)   散る花を貴舟の杜で 浴びにけり。       小野寺
1 豊      「貴舟」は「貴船」の誤りではないでしょうか。
 それとも実際に「貴舟」という場所があるのでしょうか。
 私は京都の貴船のことだと思いましたが。
2 秋岡    貴舟の杜で散る花を浴びることに風情がありま
 すね。
(042)   陽水の五月の別れ遠く鳴り           深瀬
(043)   栂ノ尾は 緑に和らぐ うぐいすや       志方
(044)   雲うつす湿原に蝌蚪黒き群れ          深瀬
1 豊      空の雲から湿原のおたまじゃくしに視線が移る。
 みごとです。
(045)   春雷の 闇切り裂きて 花は散り        小野寺
1 柳町
2 秋元
(046)   早朝の新聞受けに春陽満ち           深瀬
(047)   魂(たましひ)を海に鎮めて春霞        小野寺
1 森
(048)   闊歩する就活女子や春の蝶           豊
1 治部    夜の蝶ではなくて春の蝶なのですね。これが普
 通の光景になってしまったのですね。令和は女子の時代
 と言われていますが、その先が女帝という事にでもなれ
 ば子供はさらに減るでしょう。もう止められませんね。
 逆に春の蝶として美しく見た方がいいのでしょうか。
2 宮澤  昔は、昼のモンシロチョウや夜の蝶がいっぱい
 いました。みんなどこへ行ったのかと思っていたら、就
 活女子に変身していたのですか。それでも蝶はいくらか
 見ることがありますが、トンボは都会ではすっかり見る
 ことがなくなりました。皆すっかり堅実になり、極楽と
 んぼも絶滅種のようです。
3 秋岡    闊歩する就活女子を春の蝶に見立てて詠んだ句
 なのでしょうか、中々このような発想は出来ませんが、
 面白くて、楽しい、素晴らしい句だと思いました。
4 橋本    売り手市場で切迫感、悲壮感はなさそうですね
(049)   花びらの敷きつめられし雨の道         深瀬
1 志方    敷き詰められた花びらへの愛惜がかんじられま
  す。
2 秋元
(050)   花散りて 浅緑(さみどり)薫る 青紅葉    志方
1 橋本
2 小野寺  桜が散り、季節が新緑に変わる風景を絵のよう
  に捉えてます。
(051)   高層階個室に入れば宇宙人           深瀬
(052)   古都の庭 花影(かえい)に映る 青紅葉    志方
(053)   たまゆらの 生命(いのち)鎮めて春の海    小野寺
1 柳町
2 深瀬    「たまゆらの」という表現に、我が身も含めて、
  人間の生とはそういうものなのだろう、としみじみ感じ
  ました。
(054)   春光に津波の遺構静まれり           深瀬
1 吉良    津波の被害からまだ完全には復興しているとは
  言えないでしょうが、一時の平和が訪れた感じが読めま
  す。
2 中津川
3 豊      東日本大震災から8年、いまだに避難生活を強
 いられている人がたくさんいます。災害の記憶を忘れて
 はいけません。いい句です。
4 小野寺  春の光をたたえた海は大震災の津波が嘘のよう
  に静かだが、当時を伝える遺構に降る波はさながら鎮魂
  の光です。
(055)   山城の 暮色に紅く椿咲き           小野寺
(056)   うつくしもめでたさも気持ちさまざま      深瀬
(057)   花月夜 黒髪匂ひ(にほひ)風に揺れ      小野寺
1 治部    何ですかこれは。誰の黒髪ですか、作者の年齢
 からして妻ではないですよね。わざわざ歴史的仮名遣い
 で風呂上りを想像させています。おそらく作者はこのよ
 うな光景に憧れていたのでしょう、夢の世界を句にした
 ものだと思います。選者も同じ夢を見たことありますよ。
2 吉良    昔の記憶でしょうか、美しい思い出でしょうか。
(058)   春の野に 霞消えゆき 菜の花が        志方
(059)   春ひかる夕張岳の湿原に            深瀬
       駒東の門のそばにあった桜の木も、もはや老
     木かな???と思うこの頃です
(060)   駒東の 桜の木々を 旧懐し          柳町
(061)   蝌蚪狙ふ大山椒の子ぎこちなく         深瀬
1 中津川
2 秋岡    楽しい、面白い句と思いました。
(062)   深夜 (みよ) に聞く夢幻飛行や春暮れる     治部
1 深瀬    「深夜に聞く夢幻飛行」というのは、現実と夢
  の世界が微妙に混じり合った不思議なインパクトを感じ
  ました。「春暮れる」との関連は、作者独自の世界なの
  だと思います。
(063)   碧天の 白雲切り裂く 初つばめ        志方
1 治部    碧天に真っ白な雲。何と気持ちがいいことでし
 ょう。そこを初つばめが目にも止まらぬ速さで飛んで行
 く。そのつばめの速さを白雲切り裂くと表現したのが見
 事です。
2 中津川
3 豊      碧い空、白い雲、黒いつばめ。色の取り合わせ
 がいいですね。「初つばめ」の季語が生きています。
4 秋元
5 深瀬    「白雲切り裂く初つばめ」という表現は、なに
  か佐々木小次郎のつばめ返しを連想させられましたが、
  その躍動感がみごとという感じがしました。
(064)   静寂の信号消えし交差点            深瀬
(065)   登楼し 京は緑に 染めぬきて         志方
(066)   葉桜や 睫毛に宿る 涙跡           小野寺
1 治部    何の涙なのでしょうか。葉桜を見て何だかとて
 も悲しいことを思い出したのでしょう。おそらく誰かと
 の別れ。葉桜との関連が時候なのか事象なのか、涙をも
 う少し具体的にした方が良いと思います。
2 秋岡    葉桜と涙跡の関係を聞いてみたいと思い選句し
 ました。
3 森
(067)   古店や古都の小路に花の散る          治部
(068)   人面の梅干し見つけ父想ふ           深瀬
(069)   宵闇に息止めてをり 白椿           小野寺
(070)   風和みドア開け放す五月かな          深瀬
1 志方    日常によくある風情が新鮮な感動をおぼえまし
  た。
(071)   恋文を書きし日の在り桜散る          小野寺
(072)   ハゼと水両元繋ぐ自然愛            橋本
1 深瀬    「両元繋ぐ自然愛」という表現は、かなり理屈
  っぽいという感じもしましたが、自然のなかでの生きも
  のの在り方を適切に指摘していると同感しました。
(073)   花びらの流れ渦巻く朝の道           深瀬
1 柳町
(074)   苔むして 煙雨に命の 息吹きかな       志方
1 吉良    苔の鮮やかな緑色が目に浮かびます。
2 中津川
3 深瀬    雨にうたれた苔の緑の美しさは、都会に住んで
  いると久しく出会っていませんが、苔の細かい糸状の密
  集した葉のひとつひとつに息吹を感ずるというのは新鮮
  だと思いました。
(075)   霧の海 郭公(カッコウ)啼きて 朋は逝き   小野寺
1 志方    色、音、感情(哀惜)の3重奏
(076)   戯れに蝌蚪掬ひし手皺深く           深瀬
1 橋本    子供の頃も掬った手、皺の深さに老いを感じた
(077)   海鳴りの故郷の岬 白椿            小野寺
(078)   危うさやこころひとつと騒ぐ世の        深瀬
(079)   杣路を 越え来し峰春霞            小野寺
1 柳町
(080)   死のくにに誘うごとし花ふぶき         深瀬
(081)   菜の花を血の色に染め夕日かな         豊
1 秋元
2 小野寺  一面の菜の花畑が、紅く染まるほどの壮大な落
  日ですね。作者は血の色として心境を重ねたのでしょう
  か。
(082)   老ひ深むことしもめぐる五月の陽        深瀬
1 森
(083)   信濃路を 桜散らして 風渡り。        小野寺
1 志方    信濃路の春逝くさまが浮かびます。
(084)   奥津城に 手児名し想う 春哀し        志方
1 小野寺  今は訪れる人もない墓碑に、失くした幼い子の
  顔が浮かび春は殊更に辛い無常を思うのでしょうか。
(085)   払暁に露纏(まとひ)をり 白椿        小野寺
(086)   五月雨の雫光るや低き軒 (のき)         治部
1 小野寺  五月雨の中で古い家の軒先に滴る雨が光の雫と
  なって落ちる様が、目に沁みます。
(087)   手作りの梅干し茶請け過疎の村         深瀬
1 柳町
2 橋本

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 追記
  この会の代表をつとめていただいている橋口さんが、5 月22日の日本経済新
聞の朝刊の文化欄に「お江戸のよろず本屋事情」という記事を寄稿されました
。橋口さんは、休会中ですが、七句会のメールには目を通して下さっていると
のことです。一部の方には重複しますが、ご参考までにそのPDF を添付します。
よろしくお願いします。