七句会のみなさま
第二十八回の選句結果を踏まえて、感想や自句自解、等をおよせいただき、
たいへんありがとうございました。
およせいただいたものを、名前順に、ほぼそのまままとめてお届けすること
にします。今後のやり方に、ご意見、等ありましたら、よろしくお願いします。
七句会のweb http://nanaku-haiku.blogspot.jp/ にも掲載してあります。
今後とも、よろしくお願いいたします。
深瀬 (事務方)
追記
七句会ーネット自由連句会の参加者を募集しています。
実施要領は、豊さんと協議し、下記のような案を検討しています。
俳句は、全員参加型の文芸であり、かつての連句は座に集まった人たちが長
句 (五七五) と短句 (七七) を交互に詠み即興でたのしみましたし、近年の句
会は選句の点数の多寡を通して共感の多彩さをたのしむといったものになって
います。
本格的な連句は即興性が求められ、なおかつ、発句、脇句、第三、平句、挙
句とか、定座とか、かなり複雑なルールがあるため、それなりの参加者意識が
求められ、やや敷居の高いものになっています。
そこで、連句の複雑なルールは一切無視し、前の長句や短句を、兼題のよう
なものとして (連想ゲームのように) 、ネットで自由連句を試行してみたいと
思っています。できあがったものは、全員の作品であり、通常の単体の俳句を
作るのとは違った趣があると思います。
順番は、あらかじめ決めておき (1 番目は豊さん、2 番目は深瀬。) 、ネッ
トで遅くとも2 ~3 日以内には詠んで送ります。何回繰り返すかは、参加人数
にもよると思いますが、2 ~3 回くらいを想定しています。発句は、七句会の
選句結果から適当に選ぶような方向です。
なんにんでも構いませんので、参加してもよいという方は7 月6 日までに、
ご連絡をいただきたく、よろしくお願いします。7 月中旬ころからのスタート
を予定しています。
連句については、下記のURL を参照してください。
・連句のルール早わかり - BIGLOBE
http://www5b.biglobe.ne.jp/~kyonta/renku/quickrule.htm
・連句の歴史と意義 - BIGLOBE
http://www5b.biglobe.ne.jp/~kyonta/renku/history.html
・連句とは |一般社団法人日本連句協会
https://renku-kyokai.net/renku/
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1.小野寺さんの自句自解
・葉桜や睫毛に宿る涙跡
葉桜の新緑の季節が来ると、別れた人の切れ長の瞳の睫毛に光る涙の跡をか
すかな心の痛みと共に想いだします。
立原道造の詩、ゆうすげびと、の最後の一節が重なります。
ーしかし、僕はあまりに、老いすぎた。
若い身空で、あなたを悔いなく
去らせたほどにー、
・硯擦る目に新緑の匂 (にほひ) 発ち
文を書こうとして硯を擦ると窓の外に爽やかな新緑が鮮やかに拡がり、墨の
香りが匂い立つように、心に沁みます。
・散る花を貴船の杜で浴びにけり
京の鞍馬の貴船の杜で花吹雪が舞い散るさまを身に浴びてとして活写したも
のです。
・春雷の闇切り裂きて花は散り
春雷の黒雲を稲妻が走り桜の花びらが光りながら散り敷く様は一幅の墨絵の
世界でした。
・たまゆらの生命 (いのち) 鎮めて春の海
人の生は邯鄲の夢の如くに一瞬の夢まぼろしでもあります。あの大震災で失
われた幾多の命に対し、今春の海は凪いで鎮魂の祈りを捧げているかのようで
す。
・花月夜黒髪匂ひ (にほひ) 風にゆれ
満開の花月夜の艶やかで確かな記憶です。湯あがりの洗い髪の匂いが、物憂
げに風にただよい、夜の帳 (とばり) が音もなく更けてゆきました。
2.橋本さんの自句自解等
さて、この度のネット句会の選句結果を見て、8点句に選ばれ本当に驚いて
います。驚きの醒めない内にと、感想及び投句した句の背景など書かせていた
だきました。
今回は8点句に選ばれ、大相撲の朝乃山がトランプ氏から "米国大統領杯"
を頂いたような気分です。俳句始めたのは、深瀬さんからゴルフが縁で「何で
もありですよ」と七句会への参加を薦められてのことです。定年後の頭の体操
(ぼけ防止) にも良いかと、五七五を続けて、平成26年2月の第七回から一
応皆勤しています。笑いのあるものも好きですが、どちらかというと自然を多
く詠んでいます。
・新緑や葉裏を見せて風渡る (8点句)
散歩で近くの清水公園の森を眺めたときの光景です。風が新緑の枝をなびか
せ葉をめくり、白い葉裏を波のように見せて渡っていく。
・鯉の恋我先競ふ春の川 (1点句)
水温む春の座生川( 江戸川の支流) では、子孫を残すため我先にと雌の廻り
で水しぶきを上げて雄鯉達のバトルが見られる。(宮澤さんの様にも想像して
いただけるのかなと楽しくなります)
・ハゼと水両元繋ぐ自然愛 (1点句)
平成の明仁天皇はハゼを研究し、令和の徳仁天皇は水、自然を愛し平和な時
代が続いて欲しい。
・我が時と若葉のキャンバス八重桜
ソメイヨシノは葉桜となり、廻り一面若葉の緑の中に時は今と美しくき誇る
ピンク色の八重桜。
・改元に生きて皇居の近くなり
平成が令和となる一連の改元に伴う多くの関連する情報がメディアからもた
らされ、皇居の全体像、祭祀をはじめ皇室の務め、住まい、生活などを知り以
前より天皇や皇室に親近感を覚えた。
・万葉の令月と風和の令和来る
良い意味の令「整って美しい、麗しい」を万葉集から採り、続く和と結びつ
けるとは私事的には思いも寄らないこと。
・陽光に新緑揃ひ庭光る
常緑広葉樹も新芽を出すと同時に古葉を落として、庭木はほぼ一斉に新緑と
なり陽射しに煌めく。
3.柳町さんの自句自解
2点句になったそうですので、少し説明をします。
・目に映える 若葉の緑に 心燃ゆ
一年のうち特に、5月の新緑、10月の紅葉は心躍る時期であり、残り少な
い人生を少しでも楽しもうといろいろ思うもの( 願うものかな??)が心を過
ります。
その気持ちを少しでも表せたらと思い詠んでみました。
4.豊さんの自句自解等
最高点句についての感想
私も選句した一人ですが、8人が選んだのはこれまでで最高ではなかったで
しょうか。
完成度の高いいい句であるのは間違いありません。その魅力を皆さんが素直
に感じたということでしょう。
それもまたすばらしいことだと思います。
自句自解
・闊歩する就活女子や春の蝶
秋岡さんの指摘にもあるとおり、 就活の女子学生を春の蝶に見立てて詠んだ
句です。
4月、同じようなリクルートスーツに身を固めた女子学生を何人も見ました
。会社説明会へ行くところなのでしょうが、皆さっそうと歩いているので、春
の蝶のイメージに重ねたのです。「夜の蝶」だとイメージが全く変わります。
・梅の香や旅人憶良の歌の宴
令和の出典になった万葉集の詞書きは、大伴旅人が太宰府で開いた、梅を愛
でながら歌を詠むという宴についての文章で す。その宴には、旅人の歌仲間
である山上憶良も参加していました。二人とも有名な万葉歌人です。それにな
ぞらえて令和のことを詠んでみたのですが、うまく伝わらなかったようです。
・菜の花を血の色に染め夕日かな
夕日と血、いささかわざとらしい感じがしましたが、血は肉体をつくる根源
であると同時に、精神のあり方を象徴するものでもあります。黄色い菜の花が
血の色に染まったらどういう印象になるか、鑑賞する人に問いかけてみました
。
5.深瀬の自句自解
・十連休新緑匂ひ道みごむ
十連休というのは、後にも先にも、たぶんないように思います。十連休、新
緑の五月、令和のはじまりというのは、歴史に刻まれる感じがします。
・新緑に令和はじまる余生かな
私たち団塊の世代は、昭和、平成と生き、70歳を過ぎて、令和という新しい
時代に生きることになりました。なにかお荷物的な気持ちで迎える感じもあり
ますが、孫たちのこともあり、前向きにいきたいと思います。
・新緑に黙し祈りの古仏たち
4 月、奈良の興福寺に吟行に行ってきました。阿修羅像など、祈りに満ちた
仏像をたくさん見ましたが、昔の人々にとっては、苦難を克服するための最大
の手段が、権威をまとった仏像に心を込めて祈ることであったのだと実感しま
した。科学技術や医療技術の進歩した今日とのギャップを噛みしめました。
・令和とてさわぐ浮世にさめるわれ
なにか世の中全体が一つの気分に覆われるのは、団塊の世代の故なのか抵抗
感を感じます。一致団結にはいいのかもしれませんが。
・雲うつす湿原に蝌蚪黒き群れ
湿原のなかの池の水面には白い雲が映り、そのなかをよくみると黒いおたま
じゃくしの塊が泳いでいるという風景です。湿原の池のことを「池塘」と呼ぶ
ようですが、あまり馴染みのない言葉なので止めました。
・戯れに蝌蚪掬ひし手皺深く
啄木に「戯れに母を背負いてそのあまり軽きに泣きて三歩歩まず」の短歌が
ありますが、わたしの母はもう亡くなっているので、別の切り口で「戯れに」
を詠んでみました。
・蝌蚪狙ふ大山椒の子ぎこちなく
夕張岳の湿原には、大山椒魚が棲んでいます。大山椒魚の子どもがおたまじ
ゃくしを狙うのですが、こどものせいか動きが遅くうまくとれないようでした
。
・風和みドア開け放す五月かな
開け放すのは窓ではないかというご指摘を受けましたが、わたしの住むマン
ションは南側のすぐに別のマンションが建ち日当たりがよくありません。北側
のドアを開けてはじめて五月の陽の美しさを感じます。
・老ひ深むことしもめぐる五月の陽
・今生の別れ想わす五月の陽
西行の「ねがはくは花のもとにて春死なむその如月の望月のころ」は、死に
たい季節を詠んだものですが、老化とともに、死ぬときと季節を意識しはじめ
たのかもしれません。
・陽水の五月の別れ遠く鳴り
井上陽水の歌は、なにか不思議な歌詞が多いと思いますが、引き込まれます
。最近はあまり聞きませんが、改めて調べてみました。
風の言葉に諭されながら/ 別れゆく二人が五月を歩く/ 木々の若葉は強がり
だから/ 風の行く流れに逆らうばかり/// 鐘が鳴り花束が目の前で咲きほこり
/ 残された青空が夢をひとつだけ/ あなたに叶えてくれる (以下略)
・手作りの梅干し茶請け過疎の村
わたしの両親の故郷の秋田では、お漬物を茶請けに日常生活のなかでのコミ
ュニケーションが図れています。梅干しもあるのか、定かではありません。
・人面の梅干し見つけ父想ふ
梅干しを兼題とする句会がありました。たまたま読んでいたSF小説に人面岩
というのが登場し、それをヒントに作りました。
・地球号おもかじいっぱい春に向け
日本の四季の変化には、地球の律儀さを感じます。地球の自転軸の向きの公
転面に対する傾きに起因するのだとは思いますが、なにか四季を作り出す意志
のようなものを感じます。異常気象の頻発には、戸惑いを感じます。
・春光に津波の遺構静まれり
3.11の津波の遺構は、かなり撤去されているようですが、自然の威力に対す
る人知の小ささを噛みしめるという意味からも保存した方がよいように思いま
す。
・早朝の新聞受けに春陽満ち
朝、マンションのドアを開けて、外廊下の電灯を消し、ドアポストの新聞を
とり出すのが毎朝の習慣になっています。春になってくると、朝日や街路樹の
様子も変わってくるのでうれしくなります。
・春ひかる夕張岳の湿原に
日曜朝の「さわやか自然百景」で見た夕張岳の湿原の春のさまを詠んでみま
した。
・花びらの流れ渦巻く朝の道
桜の花が散りだした朝、風が吹いて花びらが道路上で渦を巻いたり、流れる
ように移動するのを見て、不思議な感覚になりました。
・死のくにに誘うがごとし花ふぶき
桜の花びらが、満開の時期を過ぎ、ひらひらと散りだし、そこに風が吹いた
りするとなにか別世界に誘われる気持ちになります。
・花びらの敷きつめられし雨の道
散った花びらが濡れた歩道に敷きつめられたように積もっていると特別の道
のように感じられ、踏むのが申し訳ない気持ちになります。
・帰郷せぬ毛馬蕪村碑にビール置き
今年の4 月下旬、蕪村の生まれた大阪・淀川ほとりの毛馬村を30人くらいで
訪ねました。生誕の地の記念碑がありましたが、理由はわかりませんが、蕪村
は、生涯この地を訪れることはなかったそうです。ビールをお供えしたのです
が、少し複雑な気持ちになりました。室生犀星の「ふるさとは遠きにありて思
ふもの そして悲しくうたふもの」を思い出しました。
・危うさやこころひとつと騒ぐ世の
・うつくしもめでたさも気持ちさまざま
みんなで、美しいとかめでたいとか言って騒いでいても、その理由をよく見
れば、それぞれで全く異なっていることもあり、あるときそれが突然顕在化し
て亀裂が走ったりするように思います。
・カネ余りどこのことかと空仰ぐ
ほんの一握りの人たちが、ほとんどのマネーを所有しているとかとも聞きま
す。マネーが勝手に増殖しているようでもあり、不思議です。
・高層階個室に入れば宇宙人
高層マンションで生活する人の気持ちを想像してみました。一人で窓の外の
夜景などをみているとどのような気持ちになるのでしょうか。
・静寂の信号消えし交差点
原発事故のため住民全員が避難し、廃墟と化した街の様子は、ショックでし
た。文明の崩壊を象徴している感じがしました。
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