七句会のみなさま
第二十九回の選句結果を踏まえて、感想や自句自解、等をおよせいただき、
たいへんありがとうございました。
およせいただいたものを、名前順に、ほぼそのまままとめてお届けします。
今後のやり方に、ご意見、等ありましたら、よろしくお願いします。
七句会のweb http://nanaku-haiku.blogspot.jp/ にも掲載してあります。
今後とも、よろしくお願いいたします。
深瀬 (事務方)
追記
自由連句を、7 月上旬から、小野寺さん、吉良さん、豊さん、深瀬の4 名に
て、歌仙形式 (36句で満尾) で行っています。あと2 句で満尾となります。無
事、終わりましたらみなさまにご報告したいと思っています。よろしくお願い
します。
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1.小野寺さん
・漣 (さざなみ) に足沈めをり夏の雲 (010)
炎暑の海、波打ち際に足を浸して涼を取ると、波の彼方に積乱雲がわいてお
り、風が流れて、夏の日のさざめきでした。
・鐘の音に遠雷和して陽は沈み (088)
志方さんの評がありがたい。夕暮れの寺の鐘の音と大自然の遠い雷鳴が共鳴
し合い、折しも赤い夕陽が薄闇の彼方に沈みゆく様は、自分を忘我の境地に誘
う光景でした。
・滝近し風とほりきて夏木立 (012)
治部さんの感想の通りです。滝の音ではなく、木立を抜けて来た冷たい風と
飛沫で、滝が近くにあると感じたのです。長いあいだ杣道を歩き続けて来て汗
がすーっと引いていきました。
・梅雨あけて橋桁翔ける夏燕 (005)
梅雨あけの晴れた日 鉄橋の橋桁を飛翔する燕は初夏の風を運ぶ夏の風物詩
です。
・紫陽花の青滴りて古都の庭 (077)
豊さんの感想の通りです。京都の庭の片隅で雨に濡れて咲く紫陽花の花弁か
ら落ちる雫は、紫陽花の青紫をそのまま、滴らせて落ちる様でもあり脳裏に焼
き付いた風情でした。
・夏蝶の翅閉じてをり滝飛沫 (しぶき) (095)
滝のしぶきが微かにかかる岩に翅を閉じたまま微動だにしないルリタテハ蝶
はそこだけ山の静寂が支配しておりました。
・風孕み白帆の跡は蒼き海 (102)
深瀬さんの評の如くです。満帆の白い帆が風を受けて大海原を走り跡に蒼い
海の航跡が鮮やかに残ります。白い帆の跡が海の蒼さを際立たせます。
・宵宮に行き交う人は薄化粧 (056)
古都の宵宮薄明かりの中を行き交う人の横顔は皆薄化粧で艶めいておりまし
た。
2.桑子さん
・スーツ女(め)に歩調合わせて玉の汗
スーツ姿のキャリアウーマンらしき若い女が颯爽と追い抜いて行ったので負
けるものかと後について行ったが、汗がダラダラ。年を取った、体力が落ちた
と実感したのを読みました。
3.志方さん
・ネット句会の皆様
今回の選句結果、特に5 点句、4 点句の評価は古希過ぎた我々には、共感を
得られるもので、素晴らしいですね。
私が一番評価したものは (漣 (さざなみ) に足沈めをり夏の雲)でした。
一幅の山水画のようなイメージが、俳句に見事に表現され、洗練された技量に
素直に評価できました。w評価(2 点)をしたいぐらいです。
作者名をみて、さすがと、改めて感じいりました。
そのあとの(阿蘇夏野子連れの牛の草を喰む)も淡いタッチの水彩画みたい
でいいなと思いました。同じ作者の結い上げし黒髪云々は5 点句に比べて、女
性経験の差がでているのか、残念ですね。
さて自句解説ですが、、瀬戸の夕凪の句ですが、、もう30年以上前の瀬戸の
島々で、夕凪の暑さが停まっているのが水面に現れ、後ろからヒグラシの鳴き
声が聞こえてくる情景が時として懐かしく思い出されます。
何かまだ働き盛りのころの残照が懐かしいですね。
ここで提案ですが、選句の時、2 点評価を1 句だけ選句できるような選句方
法もいいかなと思っています。皆様の御意見如何ですか。
4.中津川さん
・風呂浴びて 香るみょうがの 冷奴
・流れ来る 薬味で食う 冷素麺
毎年知人から沢山のみょうがを頂きます。酢味噌で和えたり、卵とじにした
りで食します。今回句にした次の二つも好きな食べ方です。
4点句となった
風呂浴びて 香るみょうがの 冷奴
はあえて季重なりでみょうがを強調したつもりです。
もう一句の
流れ来る 薬味で食う 冷素麺
は季重なりにならないように作りました。
・焼き鮎を 狙いし鷺の 止まる桟
京都鴨川の川床料理屋さんで実際に体験した情景ですが、あまり現実感を出
せなかったようです。
焼き鮎を 狙うがごとく 鷺が舞う
の方が動きがあって良かったなと思いました。
5.宮澤さん
・抜き襟の うなじの汗に ときめいて
さて、皆様の味わい深い投句の中で、5 点句という望外の結果に、うなじで
はなく、わきの下に冷や汗が流れています。
満員電車で押されると、私は背が高く、乗客を見下ろすことが多く、間近に
いた妙齢の女性の襟元につい目がいったときの状況です。
目をそらそうとしても、身動き取れません。
せっかくのご褒美なので素直にときめかせていただきました。
目にした襟元は洋服ですが、和服のイメージに脚色しています。
ほとんど妄想の世界で、正直、この句で5 点句となると、三振王の8 番バッ
ターが、偶然ホームランを打ってしまったようです。
次回から「ホームラン王!」などと冷やかされるのが嫌で、ずる休みしよう
かなと思っています。
・人は待ち 熱風渡る 赤信号
2 点句の「人は待ち」のほうは、夏散歩の途中赤信号で止まっても、わがま
まな熱風と自転車は信号を守りません。
暑い中律儀に信号を待ちながら、感じたまま書きました。自転車は省きまし
た。
車が来ないと時々赤信号を無視します。よその人は私を見て、わがままな老
人だと思っているのでしょう。
6.柳町さん
・震災の 陰りも見せず 光る海
鉄道ファンの私としては、東日本大震災で壊滅的な破壊を受けてから8 年、
今年三月に三陸鉄道再開通のお祝い(?) に乗車してきました。
途中は堰堤を直したり、陸橋の再敷設さらには駅そのものが位置も建屋も変
わっている箇所もありの周りは随分と様変わりしてましたが、三陸の海は以前
と同じように光輝いていました。
そんな情景を読んでみました。
7.豊さん
・最高点句について
「ときめきて」という生々しい表現が気になって私は選ばなかったのですが
、かえってそこがいいと皆さんは思われたのかもしれません。「 抜き襟のうな
じに汗が光っている」 、確かに色っぽいです。
・生姜擦る冷やそうめんの昼げかな
・猛暑日や激辛カレー胆試し
この2作は我ながら駄作でした。4点句のおふたりの作品のほうがずっとい
いです。
・八月や兵士の霊が戸をたたく
八月はお盆の月であり、戦争を語る月でもあります。太平洋戦争で南の島と
海で死んだ兵士たちの霊がお盆に合わせて故郷に帰ってくる。亡くなった兵士
の無念と、高齢化した遺族の忘れることのできないつらい記憶を組み合わせた
のですが、少し難しすぎたようです。
8.深瀬
・夏の雲空にくっきり輪郭線
夏の雲は、強い陽差しによって、くっきりと見えます。空の蒼さと雲の白さ
のコントラスの鮮やかさが印象的です。
・阿蘇夏野子連れの牛の草を食み
TV番組で見た風景です。旅行をほとんどしないかわりに、TV番組の録画はた
くさんあるので、録画で世界中を見てみたいと思っています。邪道(?) 。
・静かさに戦車朽ちゆく夏野かな
・ノモンハン塹壕埋む夏野かな
TV番組でノモンハン事件のドキュメンタリーをみました。芭蕉の「夏草や兵
どもが夢のあと」からの連想もあったと思います。近代の戦争の方がよりむな
しさを感じさせられます。
・生きすぎて戸惑う人や夏の雲
医療、食糧、生活の便利さ、等によって寿命が伸びていますが、その一方、
どう老後を過ごすか戸惑いも増えてきており、複雑な心境です。
・静かさや夏野にうなる光合成
植物の光合成の働きは神秘的です。生命の根源のようにも感じます。
・結い上げし黒髪凛々し夏女
お祭りに行く女性とか、銀座の夜の蝶とか、女性の変身には神秘性が感じら
れます。
・夏くれば海の蒼さに波の音
波の音は、生命の故郷に誘い、時間を超越させてくれる感じがします。
・待合所人それぞれの夏姿
・夏空に旗立て旅行者声高く
・バッグ引きそろい半袖旅行団
たまにJR品川駅の新幹線待合所で時間を潰すことがあります。そのとき見た
風景です。
・電線の夏雲を断つ静かさや
以前、「夕焼けの電線よぎる落ち葉かな」という句を作りました。今度は、
夏雲が電線によって切られるという視点で詠みました。電線は昭和のイメージ
でしょうか。台風15号では電柱が倒壊したりし、地中化が進むそうです。
・木筒からにょろにょろいずるところてん
子供のころ、秋田の母の実家に行ったとき、朝ごはんのときだったのか、目
の前で作ってくれたのが強く印象に残っています。
・水ようかん匙で切り取り孫笑顔
もう少しで五歳になる孫 (男) との日常を思い作りました。
・ガラス器に赤いすいかの黒き種
ややひねりすぎか、とも思います。
・おかあさーん八月の空遠くから
戦場で兵士が死んでいくときのことを思いました。なぜ悲惨な戦争が繰り返
されるのか不思議です。
・マンションの朝つつみけり蝉の声
周囲がほとんどアスファルトなのに、東京はかなり自然が残っているようで
す。蝉の鳴き声のシャワーをあびるとなにかほっとします。
・古池や浮かぶ花弁に蟻二匹
以前、「水面のバラの花弁に蟻ひとつ」という句を作ったのですが、季重な
りでもあり、芭蕉の句も意識して作りなおしてみました。
・足もとの蟻踏み避けて生思ふ
「蟻」という兼題の句会で、日常的に感じていることを詠みました。
・緑陰のひかり濃淡万華鏡
新緑のころの木蔭から太陽の陽が差してくる光景を詠んでみました。万華鏡
でよいのか迷いましたが、家内の「いんじゃないの」の一言でこうしました。
・梅雨の朝街路のみどり輝けり
梅雨のころは曇天が多いのですが、朝の街路樹は意外と輝いてみえるのが印
象に残りました。
・屋形船連句に興ず旦那衆
連句はゆとりのある旦那衆とか呼ばれる人たちのたのしみだと言われていま
す。芭蕉の紀行文もそうした人たちとの交流のなかで作られたようです。いま
はネットの時代なので、そういう制約もなくなったと感じています。
・街電車みどりに染まり走りゆく
街路樹や線路沿線の深い緑を思って詠みました。
・奈落へと引きずりこまる老ひごこち
七十歳も超えると、急に老化が進む感じをもつことがあります。そうしたと
きの恐怖感のようなものを詠んでみました。
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