2021年5月16日日曜日

七句会 第三十五回目のネット句会 自句自解をお送りします。

 

 七句会のみなさま

 

 第三十五回の選句結果を踏まえて、感想や自句自解、等をおよせいただき、

たいへんありがとうございました。

 およせいただいたものを、作品集とともに、名前順に、ほぼそのまままとめ

てお届けします。

   今回から服部さんにもお送りします。服部さんは、慶応大学工学部、日本航

空のOBであり、ゴルフ霞光会メンバーです。

 今後のやり方に、ご意見、等ありましたら、よろしくお願いします。

 七句会のweb  http://nanaku-haiku.blogspot.jp/ にも掲載してあります。

  今後とも、よろしくお願いいたします。

  深瀬 (事務方)

 

 

1.35  ネット句会  作品集

 

(01)新井さん

 

・災いも箱根も越える紫紺の旗

・新緑のランニングシャツ軽やかに

・春風にひよっこ踊る競技場

・春風の都の社にツーシーム

・東北の真夏にうなる豪速球

・ぶりっこのバブルを引きずる令和の日

・椿姫白い帽子のそっと咲く

・大輪の椿の香る八幡宮

・パンジーの風に揺れるや春浅し

・つぼみ見てふくらむ希望春浅し

・バレンタインデー高級チョコの似合うかな

・倉敷の柳の下に踊る傘

・糸柳孫三郎のお出迎え

・五十女ノースリーブの四月馬鹿

・葉山牛食べ放題と四月馬鹿

・春の宵甘い香りの頬なでる

 

(02)小野寺さん

 

・韃靼の夏野駆けるや青き月

・光降る雪解の小径疾風 (はやて) 舞ひ

・花冷えや夜更けて窓を風が哭き

・奥津城の風哭き止みて寒椿

・海鳴りに春雷和すや鐘とほく

・春待つや白寿の母の希望の絵

・春暮れて熱きを恃み海渡る

・文やぶる眸の奥に春は過ぎ

・黒髪の匂ひ乱れて花吹雪

・花散りて青葉に沈む寺のあり

・散る桜醍醐の宵に想い馳せ

・春の月濡れにし髪の艶めきて

・生き死にを超えて仏師の能面 (おもて)

・岩に散る波濤の飛沫 (しぶき) 花筏

・ためらひて言葉呑みけり春の宵

・したためし文の墨の香木の芽時

・月冴えて菜の花の海天に尽き

・落城の今際 (いまわ) の鬨 (とき) か花吹雪

・春暁や牡丹の花芽目覚めをり

・石垣に花散りしくや鬨 (とき) の声

・初蝶は光の風に流れをり

・巣作りの雀守りて春の雨

 

(03)吉良さん

 

・花吹雪ほほえみ残し恩師逝く

・蕗の薹苦みも美味し夫婦酒

・ビル風にさえづり乗せて燕舞う

・菜の花の絨毯織りし利根堤

・石畳ミモザ敷き詰め春祝う

 

(04)桑子さん

 

・今年又近場巡りの花見かな

・カサカサと夜のしじまに蚕(こ)の咀嚼

・犀星忌ぶらり探策旧居跡

・鶯の初音背に受けティーショット

・長閑なり浜辺に戯れる親子づれ

・コロナ禍に桜見るのも命懸け

 

(05)志方さん

 

・西陽さす富士の白肌春霞

・雪洞に色香を誘う宵桜

・幼児 (おさなご) が菜の花畑まあだだよ

・渺然と白波寄せる由比ヶ浜

・今年また花大根のそぞろ道

・春光に浅緑の風漂いて

・彩雲の山の端遠く朧月

 

(06)中津川さん

 

・梅枝をまだ咲かぬかとメジロ飛び

・豆撒けず檀徒まばらに節分会

・あの彼女(ひと)も今年限りと年賀状

・「黙食」とそば屋の春は味気なし

・はくれんがピンクの中に主張せり

・絨毯のごとビルの隣に梨花の棚

・花は盛り掟破りの送別会

 

(07)橋本さん

 

・何処までも初音に乗せてティーショット

・鶯にひととき静まる花見かな

・花を愛で鶯を聞く贅の時

・囀りに陽射し明るき樹間かな

・宴無くも花を求むる人出かな

・山門の花散りゆくも大師像

・下萌えの岸水満ちて鯉の群れ

 

(08)藤原さん

 

・春暁の流れる雲に夜があける

・桜並木ゴルフショット天高し

・ぬるま湯の朧月夜にもの思う

・風光る梅に戯れるメジロかな

 

(09)宮澤さん

 

・胸元に桜吹雪の着地点

・花見酒画面相手に酔いつぶれ

・春うらら惰眠の夢は幸多し

・水面に輪池の主が春知らせ

・夜桜は淡く輝き雨霞

・夜明け前春の足音密やかに

 

(10)柳町さん

 

・桜なき入学式の不可思議さ

・桜咲き黄砂禍悲し花筏

・桜咲く早めの春や気ぜわしく

・子等の聲桜吹雪の舞う奥に

 

(11)豊さん

 

・野に舞える蝶となりたる夢を見し

・菜の花や海の青さに負けぬほど

・花筏ライトアップの夜の川

・桜散る吹き寄せられて山となり

・朧夜や昔の女(ひと)の面影が

・十年を経て静かなり春の海

・パスポート更新すませ春の旅

・また一つ空室増えてビルの春

 

(12)深瀬

 

・春浅し振鈴駆ける永平寺

・春浅し断捨離の本山に積み

・突然死うわさ身に沁む浅き春

・散り際をわれも追ひたし落ち椿

・活け椿掛け軸の虎あいまみえ

・静かさや茶釜の脇の椿かな

・垣根沿ひ椿ひっそり過疎の村

・お堀端柳に刻む動乱史

・三度笠柳なで切るわらじびと

・地蔵さま柳にうたれ知らぬ顔

・母実家柳目印訪ねけり

・やなぎ背に羽織袴の女子大生

・止まらない特例国債万愚節

・万愚節たてまえ本音見え隠れ

・ウイルスと平和条約万愚節

・春めいてクラブ磨いて誘い待つ

・訃報次ぐ恩師の授業春の夢

・春の陽に去年 (こぞ) と変わらぬコロナかな

・付箋紙にすること書いて春昼寝

・看護士の緊迫走る春深夜

・距離感を互いに気にす花見かな

・花びらの散っては埋まる地をみつめ

・餌とれぬ老ライオンの死を見る眼

・座禅して時の重みに耐えるかな

・手術台パンツ下ろされ覚悟決め

・社会性ぬぎすて身軽あの世へと

 

 

2.35  ネット句会  自句自解

 

◎ 新井さんの自句自解

 

・災いも箱根も越える紫紺の旗

 センバツで東海大相模が優勝。コロナ禍を乗り越え、神奈川へ紫紺の大優勝

旗を持って帰ってきてくれたことは、嬉しいニュースです。

 

・新緑のランニングシャツ軽やかに

 近所の大学のグラウンド近くのカフェから、陸上部の練習を見つめていまし

た。トラック上の一コマです。

 

・春風にひよっこ踊る競技場

 近所の大学のグラウンド近くのタリーズカフェから、陸上部の練習を見つめ

ていました。若々しい大学生の方たちが、ひよこの様に見え、初々しさに思わ

ず詠みました。

 

・春風の都の社にツーシーム

 田中将大投手が楽天に戻ってきたこの春、楽しみです。

 

・東北の真夏にうなる豪速球

 楽天の田中投手の活躍が、本当に楽しみです。

 

・ぶりっこのバブルを引きずる令和の日

 もう還暦近い女子社員の時代錯誤に驚きます。

 

・椿姫白い帽子のそっと咲く

 ビルの中庭に椿が咲いています。雪の日には白い帽子をかぶって寒さに耐え

る姿が何とも愛らしかったです。

 

・大輪の椿の香る八幡宮

 鶴岡八幡宮に椿が咲いていました。大きい花で境内へと続く道を飾っている

ようでした。

 

・パンジーの風に揺れるや春浅し

 パンジーは春先にも元気に咲きます。寒風にさらされながら、鮮やかに咲い

ていました。

 

・つぼみ見てふくらむ希望春浅し

 枝先のつぼみが大きくなるのを見ると、今年一年への希望が湧きます。

 

・バレンタインデー高級チョコの似合うかな

 売り場で高級チョコを見つけると、高いチョコを買う人がいるのだろうかと

やや皮肉に見えてしまいます。

 

・倉敷の柳の下に踊る傘

 柳といえば、倉敷の川沿いの柳を思い出しました。踊り傘を差した女性が歩

いていました。旅の一コマです。

 

・糸柳孫三郎のお出迎え

 倉敷の柳の並ぶ川沿いの道を進んで、大原美術館へ着きます。入り口に大原

孫三郎の銅像がありました。あの頃は楽しかったです。

 

・五十女ノースリーブの四月馬鹿

 この季節、50代の女性がノースリーブを着ていました。嘘かと思いました。

 

・葉山牛食べ放題と四月馬鹿

 数年前、4 1 日にお誘いを受けました。実際に連れて行っていただいたの

は、しらす丼のお店でした。

 

・春の宵甘い香りの頬なでる

 仕事が終わって外に出たときの一コマです。 

 

 

  小野寺さんの自句自解

 

・春待つや白寿の母の希望の絵   (007) 7点句

  この度は白寿の母が描いた絵をテーマにした俳句が望外にも最高点を頂き大

変嬉しく思います。吉良さんや桑子さん治部さん他どの様な絵かとご質問あり

ましたのでご披露させて頂きます。 (20214 24日付けメールに添付。)

  小生は岩手県釜石の田舎町で育ちました。ご承知の様に東日本大震災で釜石

も壊滅的な津波被害を受けましたが、釜石市の復興委員から依頼されて、昨年

は小生が支援の絵を描きました。今年は震災から10年の節目の年として母が希

望をテーマに絵を依頼され、3 11の慰霊の式典に母の作品が絵葉書となり釜

石市長始め参列した市民に、配布されました。母は仙台在住ですが、お世話に

なった釜石の為にお役に立てた事を喜んでおります。

 

  ご参考1.桑子さんからのコメントとのやりとり

  お母様の絵にそういう経緯があるとは知りませんでした。単純に白寿になら

れても、どういう希望の絵を描かれるのだろうかと思った次第です。絵は力強

く復興に向けて皆で手を携えて頑張っていこうという想いが感じました(絵は

素人ですが)。 (桑子さん)

 

  大変ありがとうございます。大正10年生まれの母は7 人兄弟姉妹ですが母1

人が残り友人達も皆世をさりましたが、元気で絵を描いてます。震災復興支援

委員からの依頼で深い海の底から、皆で協力して希望の光を求めるというメッ

セージを込めたのだそうで桑子さんのご理解の通りです。この絵葉書が好評だ

ったので、来年の作品の依頼も頂く事になりました。 (小野寺さん)

 

  ご参考2.平島さんからのコメント

  実はこの句は小生経緯も評判も前以て存じあげておりこれに票を投じるのは

身贔屓の謂わばズルになるかもと敢えて票を投じませんでした。でも皆さんが

高い評価をされたことは鑑賞眼も高いと嬉しく思います。

  小野寺さんに送った僕の感想は釜石市もやるなあ!  100 歳になろうとされ

る老人に皆さんはまだ若いのだから希望を持って生きなさいと励まされている

みたいで元気をもらえて喜んでいる様子も目に浮かんで来ます。

  というようなものだったと記憶しています。兎も角おめでとう。

 

・ためらひて言葉呑みけり春の宵   (036) 3点句

  これだけは言おうと心に決めて逢いに来たのに言い出せないまま、言葉を呑

み込んでしまい、告白する機会を無くした己の不甲斐無さを悔いた春の宵。遠

い記憶がまざまざと蘇ります。平島さんの解説の通りです

 

・巣作りの雀守りて春の雨   (012) 2点句

  裏の家の二階戸袋に雀が巣を作り盛んに藁などを運んでおりました。雛の巣

立ちを無事迎える事を春の雨に託しました。

 

・韃靼の夏野駆けるや青き月   (024) 2点句

 11世紀壮大なモンゴル帝国を築いた開祖チンギスハーンがモンゴルゴル高原

を駆けぬける様を青い月が照らしながら追いかけてゆく、と詠んだものです。

 

・春暁や牡丹の花芽目覚めをり   (038) 2点句

 朝焼けの光に包まれた春暁、牡丹の花芽は冬の眠りから覚め開花に向けて呼

吸しているのだとハットさせられました。

 

・したためし文の墨の香木の芽時   (113)  2 点句

 正座して墨を擦り筆の手紙を書いてます。墨の香りと、ふと眼をやると窓の

外は新芽の香りがあり心が洗われるひとときです。平島さんの解釈に全く相違

ありません。

 

・花散りて青葉に沈む寺のあり   (044)  1点句

 桜の花が散り人の気配の無い寺を青葉が深々と包みこみ、静寂があたり一面

を覆っている様子を、青葉に沈む、と詠みました。吉良さんのご理解の通りで

す。

 

・黒髪の匂ひ乱れて花吹雪  (050) 1 点句

 黒髪の甘い匂いと散る桜の乱舞は遠い絵模様となり切ない悼みの記憶です。

 

・奥津城の風哭きやみて寒椿  (055) 1 点句

 訪れる人もない無縁仏の墓地にむせび泣くような風が止むと寒椿の赤い花が

人の世の無常を誘いました。

 

・光降る雪解の小径疾風 (はやて) 舞ひ  (064)  1 点句

 東北の故郷釜石の春を待つ雪解の小径に一陣の風と共に粉雪の結晶がキラキ

ラと光りながら流れてゆきました。

 

・初蝶は光の風を流れをり   (084)  1 点句

 豊さんの解釈の通りです。春先に生まれたばかりの頼りなげなうすばしろち

ようは光の風に流されておりました。

 

・春の月濡れにし髪の艶めきて   (008)  1点句

 春の宵濡れた黒髪は月の光を浴びて一層艶めいておりました。遠い記憶のし

かし鮮やかな一コマです。

 

 

◎ 吉良さんの自句自解

 

・花吹雪ほほえみ残し恩師逝く

 今年は駒東の多くの恩師の先生方の訃報をいただき、昨年の七夕会が中止に

なりお会いできず残念に思います。花吹雪で見送りたいと思い句をつくりまし

た。 

 

・蕗の薹苦みも美味し夫婦酒

 蕗の薹は日本の珍味で毎年1 回は楽しんでいます。コロナ禍、毎晩最期の晩

餐のつもりで食事をしていますが、この年になりこれからも心穏やかに過ごし

たいものです。  

 

・ビル風にさえづり乗せて燕舞う

 駿河台の20階ぐらいのビルの外壁にくぼみがあり、毎年燕が巣をつくり、空

を囀りながら飛ぶ光景が楽しめます。自然を感じることができてほっとします。

 

 

◎ 桑子さんの自句自解

 

 前回同様コロナ禍の中で、健康維持のため運動(ゴルフ)と散歩に励んでい

ます。今回もそれらに関連して詠んだものが多いです。

 

・鶯の初音背に受けティーショット

 ゴルフ日和に初音を聞いて、一緒にプレーしていた橋本さんからここで一句

と言われて作りました。(推敲してちょっと変わりましたが)

 

・長閑なり浜辺に戯れる親子づれ

 散歩の途中、間隔を開けながら遊ぶ家族連れ達がほほえましかったです。

 

・今年又近場巡りの花見かな

 散歩を兼ね3 密を避けて近所の桜の名所を巡っています。来年は遠出が出来

るかな?

 

・カサカサと夜のしじまに蚕(こ)の咀嚼

 NHK大河ドラマ「 青天を衝け」を見ていて、昔小学生の時亡父の実家に泊

まりに行った時のことを思い出しました。屋根裏の蚕棚がうるさくなかなか眠

れなかったのを覚えています。

 

・犀星忌ぶらり探策旧居跡

 室生犀星は田端近辺を5 回も転居したそうです。散歩がてらその跡を巡りま

した。

 

 

◎ 中津川さんの感想、自句自解

 

 4月の投句は春で全体に明るく暖かい句が多い様で楽しく拝見しました。

 

  私の句では4点を頂いた

・あの彼女(ひと)も今年限りと年賀状

  新年(2月初旬)に作っていたいくつかの句の中から出してみました。多分

春の句が多いと思ったので、多少目立つかなと思っていました。

 

  その他ではできるだけ " ()"以外を題として、梅、木蓮、梨花で作った

ものを提出しました。次の3です。

・梅枝をまだ咲かぬかとメジロ飛び

・絨毯のごとビルの隣に梨花の棚

・はくれんがピンクの中に主張せり

  表現力が今一つ足りない様です。

 

 

  豊さんの感想、自句自解

 

  最高点句は私もいい句だと思いましたが、きっと何点か入るに違いないと思

ったので、あえて選びませんでした。それが7 点。これまでの選句でも最高で

はないでしょうか。皆さんの鑑賞眼に改めて感心させられました。

 

 さて、私の一句です。

・桜散る吹き寄せられて山となり

 これは、「花吹雪吹き寄せられて積もりけり」としたほうがよかったと反省

しました。

・花筏ライトアップの夜の川

 川岸の桜並木がライトアップされた景色を詠んだつもりだったのですが、う

まく伝わらなかったようです。弘前城のお堀の夜の桜の花筏を思い浮かべてい

ただけるとありがたいです。

 

 

◎ 深瀬の自句自解

 

・春浅し振鈴駆ける永平寺

  まだ残雪も多い早朝、起床を告げる鈴を振って、長い廊下を走っていく僧の

様子です。

 

・春浅し断捨離の本山に積み

  もう読まないだろうと思う本を本棚から取り出し積み重ねました。一応、ス

マホで背表紙を写真に撮りました。

 

・突然死うわさ身に沁む浅き春

  最近は、人の死の聞いてもひとごととは思えなくなりました。

 

・散り際をわれも追ひたし落ち椿

  椿は散るとき、花ごと落ちるそうです。

 

・活け椿掛け軸の虎あいまみえ

  床の間に飾ってある花瓶の椿と掛け軸に描かれた虎の取り合わせを想像して

みました。

 

・静かさや茶釜の脇の椿かな

  茶道をたしなむ訳ではありませんが、静かな茶室に思いを寄せてみました。

 

・垣根沿ひ椿ひっそり過疎の村

  過疎化した村里の生け垣に咲く椿を想像してみました。

 

・お堀端柳に刻む動乱史

  国会図書館から桜田門、第一生命ビルなどを見ながら有楽町まで歩きました

。堀端の新緑の柳がきれいでした。

 

・三度笠柳なで切るわらじびと

  柳田國男はわらじの履き心地を愛したそうです。その気持ちをヒントに詠み

ました。

 

・地蔵さま柳にうたれ知らぬ顔

  お地蔵様の超然した様子に思いを寄せてみました。

 

・母実家柳目印訪ねけり

  母の実家は秋田県横堀 (現湯沢市。小野小町の出生地。) ですが、入り口の

横に大きな柳の木があります。

 

・やなぎ背に羽織袴の女子大生

  やなぎの緑と羽織袴の色彩的コントラストを詠みたいと思いました。

 

・止まらない特例国債万愚節

  毎年のように法律違反の赤字国債を発行し続けるということにはやはり強い

違和感を覚えます。

 

・万愚節たてまえ本音見え隠れ

  エイプリルフールの嘘にも、本音と建前が入り交じっている感じがします。

 

・ウイルスと平和条約万愚節

  新型コロナウイルスの変異とmRNAワクチンの開発のせめぎ合いはどうなるの

でしょうか。

 

・春めいてクラブ磨いて誘い待つ

  ゴルフは、やはり春になってから始めたいと思います。

 

・訃報次ぐ恩師の授業春の夢

  今まで毎年の同窓会に参加されていた恩師の訃報が相次いでいます。遅沢先

生のお墓がわたしと同じ五百羅漢寺の2 階でした。

 

・春の陽に去年 (こぞ) と変わらぬコロナかな

  コロナウイルスとの戦いを見くびったようです。ワクチン接種で鎮静化する

ことを祈るばかりですが。

 

・付箋紙にすること書いて春昼寝

  することリストの管理に妙手はなかなか見つかりません。付箋紙のうまい活

用法があれば知りたいと思っています。

 

・看護士の緊迫走る春深夜

  双牛舎という句会のweb 「わたしの俳句館」に、ガンを患う作者による「短

夜やナースしずかに来ては去り」、「冴ゆる夜のかくもしづかに妻とゐて」と

いう句が掲載されています。すごいなと思い、少しまねしてみました。

 

・距離感を互いに気にす花見かな

  今年も目黒川の花見に出かけましたが、ここでもソーシャルディスタンスで

した。

 

・花びらの散っては埋まる地をみつめ

  散ってくる花びらが次から次に地面を覆っていく様です。

 

・餌とれぬ老ライオンの死を見る眼

  老いて獲物を捕れなくなったライオンに、餌を与えてくれる仲間はいないよ

うです。この方が自然かもしれません。

 

・座禅して時の重みに耐えるかな

  腰のしたに厚い敷物を置いて座るとかなり長時間、平気で座れます。

 

・手術台パンツ下ろされ覚悟決め

  病室から手術室まで車椅子で移動され、手術室の看護婦さんによって衣類を

脱がされました。

 

・社会性ぬぎすて身軽あの世へと

  あの世に旅立つときも、次第に身近に感ずるようになりました。

 

 

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