2021年8月13日金曜日

七句会 第三十六回目のネット句会 作品集、自句自解です。

 

 七句会のみなさま

 

 第三十六回の選句結果を踏まえて、感想や自句自解、等をおよせいただき、

たいへんありがとうございました。

 およせいただいたものを、作品集とともに、名前順に、ほぼそのまままとめ

てお届けします。

 今後のやり方に、ご意見、等ありましたら、よろしくお願いします。

 七句会のweb  http://nanaku-haiku.blogspot.jp/ にも掲載してあります。

  今後とも、よろしくお願いいたします。

  深瀬 (事務方)

 

 

1.36  ネット句会  作品集

 

(01)秋元さん

・紫陽花は薄紫の花暦

 

(02)新井さん

・桜色来年の私似合うかな

・夏来る予約画面でヨーイドン

・健診表人生秋の便りかな

・警報におののく蛍も避難かな

・布団干し梅雨の合間の勘違い

・蓮の花白やピンクの愛らしさ

・昼休み若葉の下のピクニック

・キャミソール薄着で魅せる五十女

 

(03)小野寺さん

・散る桜海の蒼さに染まりけり

・人妻となりて別れし花明かり

・野佛の深き瞳や夏木立

・夏雲を讃えて青き甲斐の山

・キャンバスに滴る緑夏の雲

・紫陽花の青滴りて虹の玉

・切れ長の佛の目 (まなこ) 梅雨の寺

・梔子 (くちなし) の白き雫に光る虹

・ほとばしる滝の飛沫 (しぶき) に蝶は舞ひ

・青葉木菟 (あおばずく) 故郷の森に祖父はをり

・天涯を光と翔けし岩ひばり

・軒先の倖せの巣やツバメ来る

・燕の子黄色の声に母還る

・夏野行く駿馬は青き風を追い

・万緑の深き谷間を鷺は越え

・草笛や憂いのしらべ峠道

・粽 (ちまき) 喰う孫の笑顔や風薫る

・湯上りに浴衣着流しみだれ髪

・ひとと逢ふ闇夜を蛍流れゆき

・万緑に染まりし寺に不動尊

・霧の海郭公 (かっこう) が哭き陽は昏れぬ

 

(04)吉良さん

・冷そうめん卓に吹き寄す瀬戸の風

・独り居の友となりぬる冷やっこ

・若鮎の炭火に香る藻の青さ

・部屋隅に琥珀に沈む梅酒あり

・メロン切る手に甘き汁母の夢

 

(05)桑子さん

・梅雨晴や足取り軽くフェアウエイ

・雨蛙ハシビロコウに勝ちにけり

・六月や塩屋の空にフェニックス

・紫陽花に居場所とらるる愛車かな

 

(06)志方さん

・梅雨さ中マスクは苦しコロナかな

・変わりなく瀬戸の島並み煙雨降り

・七夕にトラの命が後わずか

・風の中ツバメ飛び交う田植えかな

・江ノ電の車窓に映る夾竹桃

・更衣(衣替え)眩く見えるセーラー服

・何時の間に富士の雪解け消えゆきて

 

(07)中津川さん

・左腕接種安心老いの夏

・ミズスマシ水面に逝きし友の顔

・オリパラをやるかやめるか迷い梅雨

・遊園地跡バラの盛りの燃えるごと

・木曽川の風薫り来て山法師

・カルガモの親子見守る半夏生

・鳴るラインワクチン接種の報告会

 

(08)橋本さん

・朝採りの有機きゅうりや無二の味

・剪定に暫しの安らぎ初夏の庭

・実家より新ジャガ届く梅雨間近

・紫陽花の深緑に浮ぶ灯りかな

・ダンゴバチ来て安堵する庭野菜

(コロナ禍の句)

・後手後手と自粛に疲れ人流る

・結局はワクチン頼みとなりにけり

 

(09)服部さん

・梅雨空や胃カメラ検査の気の重く

・孫たちのやっと引き揚げ夏終わる

・草茂り捨て冷蔵庫埋もれ行く

・コロナ禍の集団接種梅雨の空

・裾乱し走り騒ぐや浴衣の子

 

(10)宮澤さん

・ラフの中打つの待ってと青蛙

・夕立に用を忘れて帰宅する

・微笑まれ帰りたくない雨宿り

・拡大鏡線香花火で隅田川

・空蝉の余生にほのか恋手紙

・スカイツリー雲にとげ刺し梅雨やまず

 

(11)豊さん

・砂浜に残る足跡晩夏光

・船旅や太平洋は夕焼けて

・ライオンも木陰に休む夏日かな

・少年は夢ふくらませ夏の雲

・人生は花火とともに消えにけり

・青空に落ちるものなし原爆忌

 

(12)深瀬

・温暖化先行き想ふ子供の日

・老ひ集ふ若葉に埋まるゴルフ場

・生きすぎとほたるに詫びる老ひひとり

・戦死者のいのちほたるに重ねけり

・乱れ飛ぶほたるの飛跡星を縫ひ

・つゆ空に一羽のからす重く飛び

・つゆ空に芽生えし稲の田に映えり

・つゆの窓頬杖をつく少女かな

・ふきつのる梅雨の雨かぜ老ひの窓

・干しもののピアノ部屋埋むつゆの日々

・夏休み喧嘩ばかりし兄施設

・夏休み始め終わりの浮ひた腰

・夏休み湘南電車に海の青

・庭に椅子すいか囲みし父母は亡く

・庭電灯つけて影踏み懐かしく

・夏ホームべんとべんとの声行き来

・ところてん遭遇せしは母実家

・迎え火を庭で焚く父いまは亡く

・草むらや雨に打たれるあまがえる

・おもちゃかと石灯籠に乗る蛙

・残り時間どうたのしむか日々自問

・地球といふ岩石浮かす宇宙かな

・心筋梗塞この死に方は気が重し

・人生は一度限りといま悟り

・おもひつきアマゾンクリック少し悔ひ

・時間割隠居者用は役立たず

・寝てばかり隠居生活どこ向かふ

 

 

2.36  ネット句会  自句自解

 

  新井さんの自句自解

 

・桜色来年の私似合うかな

  桃色の美しい晴着を着たのは嬉しいのですが、一方、女性であれば心のどこ

かで「これはいつまで着れるのだろうか…」と悩むのではないかと思います。

 

・夏来る予約画面でヨーイドン

  やっとワクチン接種の予約券が届いたと思って封を開けたら、予約開始は8

月です。

 

・健診表人生秋の便りかな

  若い時と違い、熟年世代の健診表は項目も増えて、憂鬱になるものです。人

生の時計が進んだと思い知らされます。

 

・警報におののく蛍も避難かな

 三渓園の「蛍の夕べ」というイベントに出向きましたが、大雨の予報が出て

いたためか、蛍が見れませんでした。

 

・布団干し梅雨の合間の勘違い

 たまの晴れに布団を干しましたが、梅雨の合間と勘違い。今年は異常気象で

すね。

 

・蓮の花白やピンクの愛らしさ

 早朝の三渓園での一コマです。

 

 

  小野寺さんの自句自解

 

(008) 紫陽花の青滴りて虹の玉

  雨上がりの紫陽花の花の水滴が光に当たり虹色に輝き紫陽花の青とのコント

ラストが見事でした。吉良さんの感想の通りです。

 

(036) 青葉木菟 (あおばずく) 故郷の森に祖父はをり

 帰省した故郷釜石の森で聞いた青葉木菟の声に祖父が姿を変えて会いにきて

くれたと感動した記憶が蘇りました。志方さん、豊さんの感想の通りです。

 

(042)ほとばしる滝の飛沫 (しぶき) に蝶は舞ひ

  圧倒的な瀑布の音量の中瀑風に乗りひらひらと舞い上がる蝶に大自然の涼を

感じたのです。吉良さんの感想の通りです。

 

(052) 人妻となりて別れし花あかり

  物憂げな春の宵花あかりのぼんやりとした光の中にふと別れた人の遠い昔を

重ねた事でした。平島さんの感想に感服です。柳町さん、桑子さんのご想像に

任せます。

 

(102) 野佛の深き瞳や夏木立

  嵯峨野から大覚寺へ向かう道すがら野佛の深い瞳に京の歴史の優しさを感じ

た事でした。志方さんの奈良のお地蔵さまと一緒です。

 

(027) 切長の佛の目 (まなこ) 梅雨の寺

 佛の目は野にある地蔵の優しい目とは違い切長の目の中に衆生を救い守る鋭

いものを感じます。暗い伽藍の外は緑を濡らして梅雨の雨が光っておりました。

 

(039) 夏雲を讃えて青き甲斐の山

 紺碧の空に湧き立つ積乱雲、それらを讃える様な青い甲斐の山々、大自然の

雄渾な絵巻を眺める想いでした。平島さん、治部さんの解説に感謝。

 

(077) 軒先の倖せの巣やツバメ来る

 ツバメの巣は確かな夏の風物詩です。巣作りから雛の巣立ちまで、ツバメは

夫婦で家族を守り育てており、彼らの自然の愛情を眺めるのは心が洗われます。

志方さん、豊さんの感想に感謝。

 

(086) 梔子 (くちなし) の白き雫に光る虹

 梔子の花の雫に虹が宝石の様に輝きを放ち渡哲也の- くちなしの花- は、お

まえのような花だったという歌詞に重なります。宮澤さんの解釈に感謝。

 

(016) 天涯を光と翔けし岩ひばり

  初夏の青い空を高く翔ぶ小柄な岩ひばりは光と競い合って空の高みまであが

るダイナミックな力を感じさせてくれます。志方さんの解釈に感謝。

 

(047) ひとと逢ふ闇夜を蛍ながれゆき

  大切な人と逢う為に急ぐ暗い夜道を、蛍が流れる様に舞い飛び、不思議な道

案内をしておりました。宮澤さんの感想の通りです。

 

(088) 夏野行く駿馬は青き風を追い

  夏の韃靼の大草原を駆ける駿馬は青い風となってチンギス汗の夢へと重なっ

てゆきます。

 

(090) 湯上がりに浴衣着流し乱れ髪

  平島さんの解説の通りです。与謝野晶子の- 乱れ髪- に遠い日の消えぎえな

官能の記憶の断片を蘇らせておりました。

 

 

  豊さんの自句自解

 

・砂浜に残る足跡晩夏光 

 今年の夏もさまざまな思い出とともに過ぎ去ってしまったなあ、という感慨

を詠みました。

 

・少年は夢ふくらませ夏の雲 

 少年はいつも夢をふくらませています。かつては私もそうでした。もくもく

と盛り上がる夏の雲のように。

 

・人生は花火とともに消えにけり 

 治部さんの評のとおり、人生は消すものではありませんね。「花火とともに

燃えにけり」のほうが勢いがあります。 

 

・青空に落ちるものなし原爆忌 

 私たちは直接の戦争体験者ではありませんが、悲惨な様子は知っているはず

なので、平成・令和の若者にその記憶を語り継いでいく義務があると思います。

 

 

  深瀬の自句自解

 

・温暖化先行き想ふ子供の日

  俳句ではないかもしれません。

 

・老ひ集ふ若葉に埋まるゴルフ場

  老いと若さの対比ですが、自分もそういう歳なのかと。ありがたいことだと

感謝しています。

 

・生きすぎとほたるに詫びる老ひひとり

  生きていること自体が罪という意識が分かる感じも。生きるということは、

物質がなにか意識をもつという現象であり、いろいろな生き物がいるというの

も不思議に思います。

 

・戦死者のいのちほたるに重ねけり

  斎藤茂吉の「草づたふ朝の螢よみじかかるわれのいのちを死なしむなゆめ」

を思いました。

 

・乱れ飛ぶほたるの飛跡星を縫ひ

  3 点、ありがとうございます。なにか受けを狙った感じもします。

 

・つゆ空に一羽のからす重く飛び

  以前の「頭上飛ぶ残暑の機影重たげに」とやや発想が同じです。

 

・つゆ空に芽生えし稲の田に映えり

  芽生えたばかりの緑の美しさです。

 

・つゆの窓頬杖をつく少女かな

  やや少女漫画のようになってしまいました。

 

・ふきつのる梅雨の雨かぜ老ひの窓

  高村光太郎の「雨にうたるるカテドラル」のぱくりです。

 

・干しもののピアノ部屋埋むつゆの日々

  家内のピアノの部屋が洗濯物だらけです。主婦業もたいへんそうです。

 

・夏休み喧嘩ばかりし兄施設

  兄はどうもやさしさがなかった感じです。脳梗塞で右半身麻痺です。

  兄弟の関係というのも、なにか不思議に感じています。

 

・夏休み始め終わりの浮ひた腰

  夏休みの始めと終わりはなにか落ち着かないへんな気持ちでした。

 

・夏休み湘南電車に海の青

  夏休みに、緑と橙の湘南電車で伊東によく行きました。

 

・庭に椅子すいか囲みし父母は亡く

  父は大のすいか好きでした。母はあまり好きではありませんでした。

 

・庭電灯つけて影踏み懐かしく

  親類の子供も来ていたのかもしれません。青い裸電球でした。

 

・夏ホームべんとべんとの声行き来

  伊東に湘南電車で行く途中の光景です。弁当屋さんやアイスクリーム屋さん

がぞろぞろ行き来していました。昭和の風景だと思います。

 

・ところてん遭遇せしは母実家

  子供のころ、母の実家の秋田県雄勝にいったとき、透明なきらきらしたもの

がにょろにょろ出てくるのを見てびっくりしました。

 

・迎え火を庭で焚く父いまは亡く

  父はお盆の夜、廃材を積み上げたき火をしていました。祖先や戦死した弟を

思っていたのだと思います。

 

・草むらや雨に打たれるあまがえる

  高村光太郎の「雨にうたるるカテドラル」を少しぱくりました。

 

・おもちゃかと石灯籠に乗る蛙

  ハシビロコウとか餌をとるために長時間じっとしていますが、生きる智恵な

のでしょうか。

 

・残り時間どうたのしむか日々自問

  もうすぐ終わりだなとは日々実感するのですが、残り時間をどう生きるか分

からないままです。

 

・地球といふ岩石浮かす宇宙かな

  豊さん、ありがとうございます。こういう類の句を作っていきたいと思って

います。宇宙は猛スピードで膨張しているので安定なのでしょうか。暗黒物質

とか暗黒エネルギーとかの正体が解明されるときがたのしみです。

 

・心筋梗塞この死に方は気が重し

  胸に締めつけられるような痛みと脂汗。次第に意識が遠のくのは、気持ちの

よいものではありませんでした。

 

・人生は一度限りといま悟り

  頭では分かっていてもどうしようもないという感じです。

 

・おもひつきアマゾンクリック少し悔ひ

  あまりにも買い物がかんたんにできすぎる感じです。

 

・時間割隠居者用は役立たず

  時間割を作れば時間を有効活用できるのではと思ったのですが。

 

・寝てばかり隠居生活どこ向かふ

  最近は昼間も眠気によく襲われます。やや不安になります。

 

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