2021年11月4日木曜日

七句会 第三十七回目のネット句会 感想、自句自解をご報告します。

  七句会のみなさま


 第三十七回の選句結果を踏まえて、感想や自句自解、等をおよせいただき、

たいへんありがとうございました。

 およせいただいたものを、作品集とともに、名前順に、ほぼそのまままとめ

てお届けします。

 今後のやり方に、ご意見、等ありましたら、よろしくお願いします。

 七句会のweb  http://nanaku-haiku.blogspot.jp/ にも掲載してあります。

  今後とも、よろしくお願いいたします。

  深瀬 (事務方) 



1.第37回  ネット句会  作品集


(01)秋元さん

・焼き茄子と香り味噌にて夕餉かな


(02)新井さん

・ふくらはぎ秋の灯に沿いもみほぐす

・秋の灯に百人一首めくるめく

・刈田から手招く笑顔ひいじいちゃん

・寂し気に刈田にたたずむペルシャ猫

・草の陰白いラッパの秋奏で

・三十歳自由へ飛び立つシンデレラ

・摩天楼無垢な瞳に影映す

・摩天楼彷徨う二人を包み込み

・ウォーキング最も安価な減量法


(03)小野寺さん

・日だまりに肩で息つく秋の蝶

・引き波は砕けて光り鰯雲

・帯解きし祇園囃子の古都の宵

・蛍火は鼓動となりて闇に棲み

・雲一朶芒の原を翳らせて

・あだし野に一期の別れ曼珠沙華

・カナカナの声こだまして友は発ち

・水澄みて瀬音駆け抜くオニヤンマ

・冬銀河原野の町に沈みけり

・川底に陽の光りあり秋の影

・荒海に冬の銀河は傾きて

・時雨哭く朋逝きし夜の濁り酒

・シベリアの鉄路凍らせ冬銀河

・熟柿食ふ陽の匂ひして腹に沁み

・百舌鳥 (もず) 鳴きて墨の香りに筆を置き

・銀杏散り黒き梢に白き月

・鳥渡る故郷の祖父と別れし日

・朋惜しむ読経のしじま蝉時雨

・独り酒今生きてをり時雨降る

・黒髪の匂ひ羽織りて紅葉燃え

・新酒酌む深き匂いに父偲ぶ

・谷川を紅葉流れて朋は逝き


(04)吉良さん

 舌癌の手術治療を受けて:

・臥して見る天井奥に銀河濃し

・病室の窓泳ぎ行く鱗雲

・舌腫れて柘榴のごとく鎮座せり

・舌を病み知る美味しさぞ新豆腐

・とろろ汁食うもどかしさ痺れ舌


(05)桑子さん

・ISS一直線に宵の秋

・敬老会古希過ぎてなお若手かな

・池ポチャに100切りならぬ秋の夕

・物言えば3 倍返し秋の声

・名月や輝き放つ星二つ


(06)志方さん

・さわやかにピュアーピンクの百日紅

・茜舞う風穂の先の草千里

・彼岸花黄泉に誘う思い馳せ

・切り通し超えて山路に地蔵かな

・山霧が流れ林に郭公が

・久方の暖簾をくぐり喉癒す

・懐かしき赤提灯はお馴染みさん


(07)治部さん

・老いらくや今更のジム秋の風

・ティーショット道具に頼る秋の空

・二学期がリモートとなる孫の鬱

・月明かり隣家と柿の今は無く

・一打差でコンペを制し山も澄む


(08)中津川さん

・紅白や敬老餅と彼岸花

・痛いほどきっと味良し栗拾い

・信濃路やそよぎ光りてそばの花

・稲穂垂れ思い出多し蝗取り

・赤蜻蛉半袖シャツを追い出せり

・色溢れ果物の秋道の駅

・高過ぎる買う気の起きぬ痩せさんま


(09)橋本さん

・風に乗り遙かな法師蝉時雨

・かなかなの一鳴き響き森暮れる

・古希過ぎて初孫を抱く赤とんぼ

・孫二人大の字揃へて眠る秋

・夜風入れ虫の音を聞く良夜かな


(10)服部さん

・お隣も旦那がゴミ出し秋の朝

・お釈迦様秋の日差しに目を細め

・懐かしや火薬の匂い運動会

・秋麗店主の居眠り骨董市

・秋涼し今宵の酒はチンをして


(11)宮澤さん

・プロ野球残り試合で秋を知る

・半身づつサンマ高値で睦まじく

・風の音谷に集いて秋深し

・千鳥足舗道の銀杏 (ぎんなん) 踏まぬよう

  (本句は、公序良俗に反するようでしたら割愛願います。) 

・秋風に胸の谷間も店 (見せ) 仕舞い


(12)柳町さん

・香りたつ菊の白さに母想う

・我が庵は終の棲家や紅紅葉

  

(13)豊さん

・旅寝かな中天の月枕とし

・時刻む柱時計や秋深し

・野分後の澄みたる空の青さかな

・熟柿枝より落ちる五秒前

・人も樹もいま黄落の時の中


(14)深瀬

・狂騒の東京音頭に阿鼻の陰

・盆踊り漁火遠く伊豆の浜

・盆踊りセザンヌの構図行き来して

・じゃがいもの地中つらなる小惑星

・エルドラドじゃがいもの皮アンデス史

・秋の夜ゆぶねでしばし目をつむり

・秋の陽に疲れを知らぬ孫の声

・コロナ禍の人生の秋これもあり

・深む老い肩に背負いて秋の暮れ

・日比谷にて議事堂噴水秋の風

・秋日差し永久 (とわ) に地にあれ祈るかな

・秋深夜トイレに起きてポップコーン

・図書室の学生まばら秋の朝

・曼珠沙華さんぽの道にみつけおり

・いつのまに手すりに頼る老いの秋

・ふるさとへ刈田のつづく鉄路行く

・原発の廃墟に並ぶ刈田かな

・一年の仕事終わりし刈田かな

・秋灯下祖父の形見の拡大鏡

・秋灯の団地の窓に老いの影



2.第37回  ネット句会  自句自解


◎  新井さんの自句自解


  自句自解

・ふくらはぎ秋の灯に沿いもみほぐす

 秋の夜、夏の気配の残る昼間を過ごし、寝る前に明かりでふくらはぎを照ら

し、丹念にもみほぐします。1日の疲れをとるために…。


・秋の灯に百人一首めくるめく

 秋の夜長に延々と百人一首を一枚一枚めくり、唱えて過ごします。お正月の

親戚の集まりで百人一首をしても勝てるでしょう。


・刈田から手招く笑顔ひいじいちゃん

 幼い頃、田舎で曽祖父に「こっちに来てごらん。」と笑顔で呼ばれ、いった

い何があるのだろうかと分からなくなったことがあります。


・寂し気に刈田にたたずむペルシャ猫

 収穫の終わった田んぼにペルシャ猫…変わった組み合わせの光景であったの

で、印象に残っています。


・草の陰白いラッパの秋奏で

 公園の雑草の陰に一凛の白いユリが咲いていました。秋の訪れをを告げるラ

ッパのようでした。


・三十歳自由へ飛び立つシンデレラ

 眞子さまへの応援メッセージです。


・摩天楼無垢な瞳に影映す

 眞子さまのような皇室しかご存じない方は、アメリカ社会での生活にも戸惑

われるかもしれません。


・摩天楼彷徨う二人を包み込み

 色々あったお二人、ニューヨークのパワーの元力強く生きていってほしいで

す。


・ウォーキング最も安価な減量法

 コロナ禍でウォーキングを始めましたが、実感しています。


 感想 (やや深瀬への私信的ですが。深瀬) 

 選句結果、楽しく拝読しました。今回、私は深瀬さんのご作品3点位選んだ

かと思います。感想をお伝えしたくなりました。

 どの作品も、一人の人が詠んだとは思えないくらいに違う雰囲気が流れてお

られます。一つの句ごとに、表したい雰囲気がよく出ておられると思います。

 図書館の静けさや、コロナ禍を達観したようなお気持ちや、十分よく表れて

いると感じました。



◎  小野寺さんの自句自解


(001) 雲一朶芒の原を翳らせて

 桑子さんの感想の通りです。一面の芒の原を翳らせながら一塊の雲が走り流

れてゆく光景です。雲一朶は司馬遼太郎の日露戦争をテーマにした坂の上の雲

の冒頭の文から拝借しました。


(012) 帯解きし祇園囃子の古都の宵

 若い頃の遠い記憶のなかで祇園囃子と太鼓の音が衣摺れの音と共に古都の宵

宮を思い起こします。


(023) 川底に陽の光りあり秋の影

 平島さんの講評そのものです。秋の光と影を川底に見咎めた観察眼。澄んだ

空気、清流に映り消える秋の気配が美しい。と感じたのです。


(025)   引き波は砕けて光り鰯雲

 治部さんと橋本さんの講評の通りです。砕けた引き波の波濤の光の煌めきの

先遥かに鰯雲が流れて、穏やかな秋の気配を感じた事でした。


(031) 銀杏散り黒き梢に白き月

 平島さんの感想の通りです。葉を落として高く聳える銀杏の木々その黒い梢

の先を白い月の光が照らし黒と白い光が一幅の墨絵の様でもありました。


(033) 新酒酌む深き匂いに父偲ぶ

 新酒を開けた時の甘い香りに酒を愛した父を偲び、もっと一緒に飲む機会を

作れば良かったとおもう自責の念を込めて、深い匂いとしたものです。


(040) 熟柿食ふ陽の匂火して腹に沁み

  熟れた柿のしみじみとした美味さは陽をたっぷりと浴びて育まれたものに違

いないのです。橋本さんの感想に脱帽です。


(047) 独り酒今生きてをり時雨降る

 平島さん吉良さんの感想そのものです。人生今まで生きてきていろんな事が

あったけど秋の夜雨の音を聴きながら、独りで酒をしみじみと愉しむ、今生き

ている幸せをかみしめます。


(059) 鳥渡る故郷の祖父と別れし日

 渡り鳥が南に帰る秋の深まった日に遠い故郷の駅頭で手を振ってくれた祖父

の手を思い出します。それが今生の別れとなり、渡り鳥の季節になると小さく

なっていった祖父の姿を思いだします。

  

(065) シベリアの鉄路凍らせ冬銀河

 志方さん豊さんの講評の通りです。シカゴ駐在時代ロシアからの鋼材出荷の

立ち会いに海が凍るとシベリアの鉄道を使いました。極寒の凍てつく鉄路の大

地に冬の銀河が傾き圧倒的な光景でした。


(069) あだし野に一期の別れ曼珠沙華

 平島さんの講評の通りです。人は誰でもいつかは死ぬことは知ってます。し

かしまさかの親友の死に立ち会い、彼岸花が一面に咲くという向こう側の世に

いってしまうとは、なんという事だろう、嗚呼


(075) 日だまりに肩で息つく秋の蝶

 秋の穏やかな日だまりの中夏の暑さを生き抜いてきた羽に破れめのあるタテ

ハ蝶が、ひっそりと羽根を開く様子はまるで肩でかろうじて息継ぎをしている

、と見えたのです。


(083) 百舌鳥( もず) 鳴きて墨の香りに筆を置き

 初冬の夜更け手紙を書く為に墨を摺ると鋭く百舌鳥の声がして、ふと墨の香

りに筆を取るのを忘れてました。



◎ 吉良さんの感想、自句自解

 今回の病気に際して、七句会の皆から励ましのお言葉をいただき有難うござ

いました。希少な舌ガンは意外でした。普段舌の機能など全く意識しなかので

すが、いざ障害をうけるとその絶妙な機能に驚くばかりです。手術後3 週間目

ぐらいから少しづつなんとか痛みも和らぎ食べられるようになり、話も出来る

ようになりました。今回は貴重な体験を5句にしたためた次第です。



◎ 中津川さんの感想、自句自解


 感想

 4点句が5句、3点句が8句、2点句が15句合計28句でした。いつもよ

り分散してているような気がします。それだけ皆さんの作句の広がり、選句へ

の見方、思いが多様化しているのでしょうか?これからも楽しみです。


 自句自解: 

・信濃路やそよぎ光りてそばの花

 4人の方に選んでいただいた句。塩尻近くの「そば切り発祥の里」というお

店の周りが一面そばの花が咲いていてそれが秋風に揺れてそばの味も一段とお

いしく感じられられました。白い花が光っているように感じました。



◎ 豊さんの自句自解


・時刻む柱時計や秋深し 

 いま読み返してみると、われながら何を言いたかったのかわかりません。柱

時計の「ボン」となった音で秋の深さを感じたということなのですが、凡句で

したね。


・旅寝かな中天の月枕とし

 橋本さんのご指摘の通り、「中天の月を枕に旅寝かな」としたほうがよかっ

たと思います。


・熟柿枝より落ちる五秒前 

 「五秒前」という表現をどのように理解してもらえるか不安だったのですが

、中津川さん、ありがとうございました。


・人も樹もいま黄落の時の中 

 吉良さんが疑問に思ったように、「時の中」はわかりにくい表現でした。「

時にあり」とでもしたほうがよかったかもしれません。


・野分後の澄みたる空の青さかな 

 まさにそのままの句です。当たり前すぎてどうかな、と思ったのですが。


 以上、今回の私の作品は凡作で終わったと反省しています。次回はもう少し

いい句を。



◎  深瀬の自句自解


・狂騒の東京音頭に阿鼻の陰

  たくさんの戦死者をだしていた日中戦争や太平洋戦争のさなか、東京音頭に

躍る熱狂があったというのは、なにか怖い感じがします。


・盆踊り漁火遠く伊豆の浜

  浜辺からみた遠近感を表現してみたかったのですが。音のことはあまり意識

しませんでしたが、今後、注意してみたいと思います。


・盆踊りセザンヌの構図行き来して

  セザンヌには沐浴の人体の図がいろいろありますが、盆踊りの人々の体の動

きもユニークだと感じます。


・じゃがいもの地中つらなる小惑星

  「地中つらなる」がよかったのかと。共感をいただきありがとうございまし

た。


・エルドラドじゃがいもの皮アンデス史

  スペイン人の黄金郷を目指したたくましさというのか、すごいと思います。


・秋の夜ゆぶねでしばし目をつむり

  涼しくなってお風呂で目をつむっているとなにか落ち着きます。


・秋の陽に疲れを知らぬ孫の声

  同じマンションに住む孫の声がときどき聞こえます。生命力の違いを実感し

ます。


・コロナ禍の人生の秋これもあり

  コロナ禍の自粛生活がこんなに続くとは思いませんでした。団塊の世代の戦

争体験みたいにも感じます。


・深む老い肩に背負いて秋の暮れ

  70歳をすぎ、疲労感とか眠気とかに襲われる時間が多くなりました。


・日比谷にて議事堂噴水秋の風

  自宅に一日いるのは鬱陶しいので、日比谷図書館にときどき行っています。


・秋日差し永久 (とわ) に地にあれ祈るかな

  秋の日差しの温かさに生命の源泉を感じたりします。環境破壊が心配です。


・秋深夜トイレに起きてポップコーン

  夜中、口淋しさでなにか口に入れたくなります。ポップコーンなら太らない

かなどと思うのですが。


・図書室の学生まばら秋の朝

  卒業した大学の図書館を利用できます。コロナ禍のためか朝はかなりすいて

います。


・曼珠沙華さんぽの道にみつけおり

  いつも歩いている歩道の脇に白い曼珠沙華が咲いているのに驚きました。


・いつのまに手すりに頼る老いの秋

  この前まで自宅のなかの階段の手摺りなんかは目に入らなかったのですが。


・ふるさとへ刈田のつづく鉄路行く

  両親の郷里の秋田には奥羽本線で行っていました。そのときの景色です。


・原発の廃墟に並ぶ刈田かな

  土の入れ替えとかたいへんだったようですが、なにか複雑な心境です。


・一年の仕事終わりし刈田かな

  米の収穫の終わった田んぼは、擬人法的にはやれやれというところだと思い

ます。


・秋灯下祖父の形見の拡大鏡

  まさか父の引き出しに入っていた祖父の拡大鏡が役に立つとは。


・秋灯の団地の窓に老いの影

 団地全体の高齢化が進むというのは、なにか人間の営みの不自然さを感じま

す。