2022年11月27日日曜日

七句会 第10回 自由連句 実施要領

  七句会自由連句のみなさま    (各座の詠み手を訂正しました。) 


  いつもたいへんお世話になり、ありがとうございます。

  第10回目の七句会自由連句を下記要領にて行いたいと思います。前回からや

や間があいてしまいたいへん申し訳ありません。よろしくお願いします。

  今回は満尾しましたら、有志でやや踏み込んだレビューをしてみたいと思っ

ています。

  なにか気になることがありましたら、適宜、ご連絡ください。

  吉良さん、二句目をよろしくお願いします。

  深瀬 (事務方) 


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・参加者 小野寺さん、吉良さん、志方さん、豊さん、深瀬(5名) 

  注。今回、新井さんは体調等のご都合でお休みです。よろしくお願いします。

・発句  野佛の眠り起こすや稲光り   小野寺さん

  作者自句自解

 京都を旅した折嵯峨野で秋の雷雨に逢った折一天俄にかき曇った空から刹那

に光った稲妻が野佛の顔を照らして1000年の眠りから目覚めさせたと感じたの

です。


・座

  初折表六句

01 発句   秋    小野寺

02 脇    月     吉良

03 第三句  秋      志方

04 四句目  雑      豊

05 月の座  夏    深瀬

06 折端   夏    平島

 初折裏十二句

07 折立   雑    吉良

08 二句目  恋      小野寺

09 三句目  恋      豊

10 四句目  雑      志方

11 五句目  雑      小野寺

12 六句目  雑      深瀬

13 月の座  冬月   志方

14 八句目  冬    吉良

15 九句目  雑      深瀬

16 十句目  雑      豊

17 花の座  花    吉良

18 折端   春    小野寺

 名残表十二句

19 折立   春    豊

20 二句目  雑      志方

21 三句目  雑      小野寺

22 四句目  雑      深瀬

23 五句目  夏    志方

24 六句目  夏      吉良

25 七句目  雑      深瀬

26 八句目  恋      豊

27 九句目  恋      吉良

28 十句目  雑      小野寺

29 月の座  月    豊

30 折端   秋    志方

 名残裏六句

31 折立   秋    小野寺

32 二句目  雑      深瀬

33 三句目  雑      志方

34 四句目  雑      吉良

35 花の座  花    深瀬

36 挙句   春    豊                      

・式目  特に前回と変わりません。同じ語句の使用は避ける、付合において

場面の繰り返しや後戻りはしない、付合の背景の補足コメント (付け筋) を簡

単に付記する、といった程度です。

  若干追加しますが、月、花の座については遵守する、固有名詞の使用はバラ

ンスを考慮する、雅的な雰囲気は少し避ける、などです。恋の座は復活しまし

た。また、表六句が序、裏~名残表が破、名残裏が急、あるいは、表六句が起

、裏が承、名残表が転、名残裏が結といっためりはりを意識したいと思います

  補足

  各座を詠む上での備考です。

  下記より転記。

  http://www.local.co.jp/renku/4.html 


  初折表六句

01 発句    や、けり、かな、などの切れ字を用いるのが好まし

       い、とされる。

02 脇     発句に密着し同季同場同時で補完。

03 第三    前句から転じて、て、に、にて、らん、もなし、の

              留字で留める。

04 四句目   軽くサラリとつける。

05 月の座   発句が秋の月の句の時は無季の句をつける。

06 折端    軽くテンポのいい句をつける。

 初折裏十二句

07 折立    恋の句はまだ早い。

08 二句目   独自の発想でバンバン行く。

09 三句目   恋句はこのあたりからだすのがよいともいわれる。

10 四句目   恋句は二句続ける。

11 五句目   独自の発想でバンバン行く。

12 六句目   同上。

13 月の座   句の流れで月の句はもっと後でもよい。

14 八句目   月の句の次は季節に準ずる。

15 九句目   独自の発想でバンバン行く。

16 十句目   花の句の前は植物を詠まないようにする。

17 花の座   花の句の定座、花とは桜のこと。但し発句が桜の時

       は梅を詠んでもいい。

18 折端    春の季語を入れて独自の発想でバンバン行く。

 名残表十二句

19 折立    春の季語を入れて独自の発想でバンバン行く。

20 二句目   独自の発想でバンバン行く。

21 三句目   同上。

22 四句目   同上。

23 五句目   このあたりで季節を詠む。

24 六句目   季節は二句続いたほうが好ましい。

25 七句目   独自の発想でバンバン行く。濃厚な恋句を二句続き

       で盛り込むとよい。

26 八句目   同上。

27 九句目   同上。

28 十句目   同上。

29 月の座   以前に詠まれた月の句と同趣同景にならぬようにす

       る。

30 折端    以前に詠まれた秋の句と同趣同景にならぬようにす

              る。

 名残裏六句

31 折立    ここからは考え込まないで軽く穏やかな句をテンポ

       よく詠む。

32 二句目   テンポよく穏やかに詠む。

33 三句目   同上。

34 四句目   同上。

35 花の座   以前に詠まれた花の句と同趣同景にならぬようにす

       る。

36 挙句    穏やかにおわる。


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2022年11月15日火曜日

七句会 第四十一回目のネット句会 作品集と自句自解です。

  七句会のみなさま


 第四十一回の選句結果を踏まえて、感想や自句自解、等をおよせいただき、

たいへんありがとうございました。

 およせいただいたものを、作品集とともに、名前順に、ほぼそのまままとめ

てお届けします。


 今後のやり方に、ご意見、等ありましたら、よろしくお願いします。

 七句会のweb  http://nanaku-haiku.blogspot.jp/ にも掲載してあります。

  今後とも、よろしくお願いいたします。

  深瀬 (事務方) 



1.第41回  ネット句会  作品集


(01) 秋元さん

・十六夜の月を愛でしか屋形船

・沸壺の水を沸かして呑む抹茶

・山里の朝紅にて湯音聞く


(02) 桜子さん

・運動会猪突猛進たすきリレー

・運動会マイムマイムで日が暮れる

・スズメの群かかし朗希に逃げるかな

・幾千のピンクの扇合歓の花

・秋の夜ハイビスカスの寂し気な

・ビアガーデン会話無くとも気は弾む

・つがるりんご豪雨に耐えて明ける朝

・黄色の葉ハイビスカスに秋のトーン


(03) 小野寺さん

・初秋の露匂ひける逢瀬かな

・野辺おくり蜻蛉を風に従へて

・音もなく月光穿つ銀薄 (すすき) 

・湖 (うみ) 夕日ひぐらしの声水に入り

・筆置きて十六夜 (いざよい) 残る空仰ぐ

・頬杖の御佛の瞳 (め) に秋思満ち

・時雨来て艶やかに濡れ柿紅葉 (もみじ) 

・赤蜻蛉微塵に光り風となり

・虫鳴きて路地裏の闇やはらかし

・翅たたむ陽だまりの墓秋の蝶

・虫時雨 (しぐれ) 月夜に銀のすすき揺れ

・野佛の眠り起こすや稲光り

・風哭きて入り陽に燃ゆる曼珠沙華

・空澄みて岸辺に赤き曼珠沙華

・滝しぶき櫨 (はぜ) の紅葉はひるがえり

・女郎花 (おみなへし) 揺れ合う霧の道しるべ

・杉木立日暮れて百舌鳥 (モズ) の声高し

・引きぎわの声をかぎりに雁は発ち

・霧の海哭き呼び交わし鳥渡る

・秋彼岸円空佛に陽は翳り

・百舌鳥 (もず) 叫び贄の枯れ枝風に鳴り


(04) 吉良さん

・白寿なる義母の微笑みぶどう噛む

 島根・大山ゴルフ旅行の思い出 (6 句) 

・寒の朝酔いも彼方にしじみ汁

・宍道湖の白帆すべらす秋の風

・怪談を語る鈴虫八雲荘

・出雲なる社飛び来るオニヤンマ

・秋あかね五線譜上を浮き沈み

・朝寒の大山めがけティーショット


(05) 桑子さん

・老人が老人祝う敬老の日

・国葬の女王に祈り子規忌かな

・国葬に黙祷抗議秋の空

・見渡せば360度天高し

・パッティング行きつ戻りつ秋日かな

・柿食えば(カキク)苔(コケ)が残れしか行かな


(06) 志方さん

・うろこ雲黄昏染める錦鯉

・しみじみと冷や酒喉にゲソをかみ

・曼殊沙華彼岸過ぎれば朱が褪せて

・いわき沖真一文字の水平線

・土塀越し柿の実色ずく城下町

・鹿威し子トンと響く冷気かな

・折詰を鳶にさらわれほれぼれと


(07) 中津川さん

・敬老日いらぬ祝意の「おめでとう」

・コロナ慣れ行列「赤福」伊勢の秋

・山門へ登る足元彼岸花

・秋ナスやぬか漬けしぎ焼き天ぷらも

・村神やあと一本の秋空へ

・しわ増えて金婚記念や紅葉狩り

・回る寿司値上げ告知の秋の暮


(08) 橋本さん

 庭の菜園の獅子唐を (2 句) 

・獅子唐の大樹となりて実六百

・獅子唐の辛きに当たるは宝くじ

 取り敢えず東北の旅を (2 句) 

・尻屋崎津軽海峡秋優し

・錦秋の月山拝みて旅仕舞い

 最近のゴルフに思うこと (2 句) 

・ゴルフとは18ホールのドラマかな

・女子ゴルフ新人満開秋桜


(09) 服部さん

・飛距離落ち嘆くシニアの秋コンペ

・秋冷やホットな便座にほっとして

・母介護認定進むや秋の暮

・枯葉道ともに老いたる主と犬

・街宣車靖国神社金木犀


(10) 宮澤さん

・街流る川の瀬さやか鯉の影

・動くなよマーカー代わりの赤とんぼ

・お湿りを待っていたのに雨台風

・枝豆の茹で方ひとつで料理通

・家族連れ校舎の向こうは運動会

・恋文に残暑の汗で書き直し


(11) 豊さん

・悲しみは海より深し秋刀魚食う

・黄金の秋の寺なる阿弥陀仏

・水澄みて川底の石透かれけり

・敬老日孫の笑顔にいやされぬ

・野分過ぎ晴れ上がりたる今朝の空

・全山紅葉観光船下る

・虫の声途絶えて夜の闇深し


(12) 深瀬

・合歓の花葉音宇宙に溶け込まし

・合歓の花正田邸跡ひっそりと

・夜の秋別れの記憶遠き日々

・夜の秋海の笑顔のよぎりゆく

・夜の秋ショパンの音色遠くから

・秋の夜寝返り続く老いひとり

・秋の夜不登校の孫気にかかり

・終活のメモに手入れす秋の夜

・コロナ禍の秋に尾を引く後遺症

・老いの秋根気意欲のなき嘆く

・ためらわず優先席に座る秋

・おだやかな秋晴れの朝世にうれい

・都会の夜おごりを笑う虫の音

・月あかりすすきの原に銀の波

・曼珠沙華ロシアの狂気燃え盛る

・曼珠沙華たんぼのなかの墓地に咲き

・曼珠沙華アル中で死し叔父の髪

・名月夜太鼓に躍る古代人

・名月に稜線湖面冴え冴えと

・名月に落ち武者仰ぐ妻や子ら

・名月の砂浜埋める亀の列

・対岸のにぎわいひそり名月夜

・蓑虫の唯我独尊風に揺れ

・蓑虫の夕陽背にする梢かな

 谷中夕焼け酒場(2022.9.16)  (3 句) 

・駒東の浦島太郎秋うたげ

・秋の宵昭和レトロに老い忘れ

・秋の宵谷中の坂を千鳥足



2.第41回  ネット句会  感想と自句自解


◎  秋元さんの自句自解


・(097) 山里の朝紅に湯音聞く

  早朝、月山麓宿の露天風呂に浸かり、ふと空を仰ぐと

未だ明けきらぬ日の出前の深い青にくれない色に染まっ

た雲が張り付いたようにコントラストをなし、とても美

しく、また静謐で静かに注ぐ湯船が天上湯のようでした。


◎  小野寺さんの自句自解


・4 点句 (034) 野佛の眠り起こすや稲光り

 京都を旅した折嵯峨野で秋の雷雨に逢った折一天俄に

かき曇った空から刹那に光った稲妻が野佛の顔を照らし

て1000年の眠りから目覚めさせたと感じたのです。


・3 点句  (001) 初秋の露匂ひける逢瀬かな

 京都の初秋に逢いに行った折萩の葉に付いた水滴が匂

うが如くに感じた事でした。遠い記憶の中で、心の高鳴

りを覚えた事が、鮮明に蘇ります。


・3 点句 (081) 滝しぶき櫨(はぜ)の紅葉はひるがえり

 白煙をあげて轟々と落ちる滝しぶきを背景にして、は

かなくも翻り舞う真紅の櫨(はぜ)の葉は一幅の絵巻の

様でもありました。櫨のもみじ、です。

    

・2 点句 (016) 虫時雨(しぐれ)月夜に銀のすすき揺れ

 秋の夜更け虫しぐれの中で月光に照らしだされたすす

きは風に揺れ動く銀の波のようでもありました。


・2 点句(022) 女郎花(おみなえし)揺れ合う霧の道しるべ

 中津川さんのご指摘通り、揺れて流れる様な霧の野道

に咲く女郎花は黄色の花が道しるべなのです。


・2 点句 (058) 野辺おくり蜻蛉を風に従えて

 辛い友の死を悼みみあげた空を風にまかせて蜻蛉が昇

っていくようでもありました。


・2 点句 (087) 虫鳴きて路地裏の闇やはらかし。

 平島さん、橋本さんのご指摘通り下町の平和な虫の声

は闇(ヤミ)でもヤワラかいのです。生きてて良かった

なあ、との感慨に浸るのです。


・2 点句 (104) 杉木立日暮れて百舌鳥(もず)の声高し

 鬱蒼とした杉木立の夕暮れ百舌鳥の鋭い声が、哀しく

深い郷愁を誘い翔然てして、襟をただします。


・1 点句 (013) 百舌鳥(もず)叫び贄の枯れ枝風に鳴り

 百舌鳥は捉えた昆虫や小動物を枝に串刺しにして後か

ら食べる習性があり、深瀬さんご指摘通り、不気味でも

の悲しい風景です。


・1 点句 (027) 時雨来て艶やかに濡れ柿紅葉(もみじ)

  秋も深まり時雨に濡れそぼつ柿の葉は艶やかに命の最

後の色を発色するのです。


・1 点句 (051) 頬杖の御佛ね瞳(め)に秋思満ち

 頬杖をつく御仏の瞳は秋ね気配の中で秋の憂いを一身

に感じておられるのだと思いました。桑子さんのご指摘

通り違う季節にはまた違う表情に観えるのだと思います。


・1 点句  (071) 引きぎわの声を限りに雁は発ち

 秋の時期に鳴いて発つ雁の哀愁に満ちた声を別れを惜

しんでの事と詠んだつもりでしたが、雁が帰るのは春と

の豊さんのご指摘であれば、秋の雁の鳴き声は来飛した、

喜びの声だったかもしれません。


・1 点句 (100) 翅たたむ陽だまりの墓秋の蝶

 平島さんのご指摘通り温かい秋の日和 ご先祖に会い

に来た墓参に出逢えた可憐な蝶に心が和みます。


・1 点句 (108)空澄みて岸辺に赤き曼珠沙華

 高々と秋の空が澄み渡り、目を落とすと対岸の岸辺に

は真紅の彼岸花が咲いておりました。

  

 以上投句した21句中13句に皆様の共感を頂きました事

は望外の喜びでもありました。引き続き宜しくお願いし

ます。


◎  豊さんの自句自解


・水澄みて川底の石透かれけり

 秋の川の水が澄んで、川底に沈んでいる石が透けて見

えた。秋の気配を詠んだつもりですが、それがどうした、

と言われるとそれまでで、われながら平凡な句になって

しまいました。


・悲しみは海より深し秋刀魚食う

 海の深さよりも深い悲しみを経験した。その思いをか

みしめながら秋刀魚を食べている。悲しみの深さと海の

秋刀魚をひっかけてみたのですが、少しわざとらしかっ

たようです。 


・野分過ぎ晴れ上がりたる今朝の空 

 台風一過の朝の空の青さを詠んだのですが、これもあ

たりまえ過ぎました。


・黄金の秋の寺なる阿弥陀仏

 庭の木々が黄葉した寺、その堂内には金色の阿弥陀仏

像が座しているのです。 


・敬老日孫の笑顔にいやされぬ

 老いが進むと気持ちが沈むことが増えてきます。そん

なとき、幼い孫が屈託のない笑顔で接してくれるといや

されるのです。

  

・全山紅葉観光船下る

 全山紅葉した山と山の間の谷川を、川下りの観光船が

紅葉狩りのお客さんを乗せて進んでいくのです。 


・虫の声途絶えて夜の闇深し 

 吉良さんと同じようにもっと多くの人が鑑賞してくれ

ると思ったのですが、残念です。


◎  深瀬の自句自解


・(010) 合歓の花葉音宇宙に溶け込まし

  合歓の葉は夜になると自ら閉じるようです。なにか宇

宙的存在を感じました。


・(015) ためらわず優先席に座る秋

  かつては、優先席は避けるようにしていたのですが。


・(017) 曼珠沙華アル中で死し叔父の髪   (1 点句) 

  甘やかされて育った叔父は、ついにまともになりませ

んでした。


・(025) 都会の夜おごりを笑う虫の音

  草むらなどほとんどない都会の夜に虫の音が響くのが

ふしぎです。


・(029) 秋の夜不登校の孫気にかかり

  小学2 年の孫が不登校にりました。周囲に気を使いす

ぎるのか、やや心配です。


・(033) 名月の砂浜埋める亀の列

  名月と砂浜になにを添えたらよいか思案してみました。


・(036) おだやかな秋晴れの朝世にうれい  (2 点句) 

  幾万年も続いてきた穏やかな地球の朝の気配は、環境

破壊や核の脅威などでどうなるのでしょうか。


・(038) 曼珠沙華たんぼのなかの墓地に咲き (1 点句) 

  母の実家のある秋田では、田んぼのなかの少し高くし

た場所に墓地があります。


・(042) 合歓の花正田邸跡ひっそりと    (1 点句) 

  かつて自転車で前をよく通りましたが、趣のある住居

でした。今は公園になっているのが残念です。


・(044) 曼珠沙華ロシアの狂気燃え盛る

  破壊の限りを尽くすロシアの暴力性は人間の本性なの

でしょうか。


・(047) 老いの秋根気意欲のなき嘆く

  老衰ということばを身近に違和感なく感じられるよう

になりました。老衰とどう向き合っていくか問われます。


・(059) 終活のメモに手入れす秋の夜    (1 点句) 

  いつまでも現役気取りでがんばらず、すっきり終わり

たいと思います。


・(062) 夜の秋ショパンの音色遠くから   (1 点句) 

  ショパンのピアノ曲は、宇宙全体の宝物みたいに思い

ます。


・(065) 名月に稜線湖面冴え冴えと     (1 点句) 

  東山魁夷的な世界を詠みたいと思ったのですが。


・(068) 夜の秋海の笑顔のよぎりゆく

  夏の終わりの頃の海は少し怒っている感じでしょうか。


・(072) 蓑虫の唯我独尊風に揺れ      (4 点句) 

  生き物たちの生き残り戦略のふしぎを感じます。


・(078) 駒東の浦島太郎秋うたげ

・(079) 秋の宵昭和レトロに老い忘れ    (2 点句) 

・(080) 秋の宵谷中の坂を千鳥足

 小野寺さん関連の、女性二人を含むメンバーの飲み会

が谷中近くでありました。年老いた浦島太郎の群れが、

龍宮城の生活を懐かしがっている雰囲気でした。


・(082) 名月夜太鼓に躍る古代人

  名月の夜、都会人としてはなにか縁遠い存在になって

しまいました。


・(086) 秋の夜寝返り続く老いひとり    (2 点句) 

  昼寝のし過ぎなのか。明日、仕事がある訳ではないの

ですが。


・(091) 夜の秋別れの記憶遠き日々     (1 点句) 

  ほのかな夏の思い出というのは、いつまでも続くよう

です。


・(094) 名月に落ち武者仰ぐ妻や子ら

  落ち武者が名月の夜、故郷を偲び彷徨っています。鬼

婆伝説をヒントにしました。


・(098) 蓑虫の夕陽背にする梢かな      (1 点句) 

  こどものころ、遊び終わったあと、こんな風景があっ

たように思います。最近は本当に見ないです。


・(101) 月あかりすすきの原に銀の波    (2 点句) 

  すすきの穂がたくさん揺れる月夜のさまは幻想的だと

思います。


・(106) 対岸のにぎわいひそり名月夜

  名月の夜の海岸にひとりたたずみ人の孤独感? 


・(109) コロナ禍の秋に尾を引く後遺症

  コロナ禍は、後遺症の方が怖い感じがします。地球上

の生命の多様性を実感させられます。


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2022年10月23日日曜日

七句会 第四十一回目のネット句会 選句の結果をご報告します。

 

 七句会のみなさま

 

 第四十一回の七句会にご参加いただきたいへんありがとうございました。

今回の選句結果をご報告いたします。

 

 4 点句

(012) 枯葉道ともに老いたる主と犬           服部04

(034) 野佛の眠り起こすや稲光り            小野寺12

(072) 蓑虫の唯我独尊風に揺れ             深瀬23

 

 3 点句

(001) 初秋の露匂ひける逢瀬かな            小野寺01

(030) 恋文に残暑の汗で書き直し            宮澤06

(053) 宍道湖の白帆すべらす秋の風           吉良03

(056) 秋あかね五線譜上を浮き沈み           吉良06

(081) 滝しぶき櫨 (はぜ) の紅葉はひるがえり       小野寺15

 

 2 点句

(003) 秋冷やホットな便座にほっとして         服部02

(008) 悲しみは海より深し秋刀魚食う          豊  01

(009) 見渡せば360度天高し             桑子04

(011) 運動会マイムマイムで日が暮れる         新井02

(016) 虫時雨 (しぐれ) 月夜に銀のすすき揺れ      小野寺11

(022) 女郎花 (おみなへし) 揺れ合う霧の道しるべ    小野寺16

(036) おだやかな秋晴れの朝世にうれい         深瀬12

(052) 寒の朝酔いも彼方にしじみ汁           吉良02

(058) 野辺おくり蜻蛉を風に従へて           小野寺02

(079) 秋の宵昭和レトロに老い忘れ           深瀬26

(086) 秋の夜寝返り続く老いひとり           深瀬06

(087) 虫鳴きて路地裏の闇やはらかし          小野寺09

(088) 白寿なる義母の微笑みぶどう噛む         吉良01

(104) 杉木立日暮れて百舌鳥 (モズ) の声高し      小野寺17

  下記に、選句表に、各句の右側に作者名、および、その下に選んだ人の名前

とコメント (追番付き、順不同、敬称略。) を付したものを添付します。

  次回については、今年12月~  来年1 月ころにご連絡したいと思っています

ので、よろしくお願いいたします。やり方、等について、ご意見がありました

ら、ご連絡をいただきたく、よろしくお願いいたします。

 

 事務方から、以下、ご連絡、ご依頼です。

 

(1) 選句参加者

 今回の選句には、下記の14名が参加しました。

  秋元さん、新井さん、小野寺さん、吉良さん、桑子さん、志方さん、中津川

さん、橋本さん、服部さん、平島さん、宮澤さん、柳町さん、豊さん、深瀬。

 

(2) 今回の句会の結果を踏まえた自句自解、感想、等の募集について

  今回の句会の選句結果を踏まえて、各自、表明しておきたいこともあるので

はないかと思いますので、自句自解、感想、等、なんでも結構ですので、募り

たいと思います。一応、期限としては  1113日とし、事務方にメールでいた

だき、それを七句会の下記のweb に掲載することにしたいと思います。

 http://nanaku-haiku.blogspot.jp/

 

  2022.10.23

 

      代表   橋口侯之介

      顧問  豊  宣光

      事務方 深瀬久敬

 

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(001) 初秋の露匂ひける逢瀬かな            小野寺01

      1 中津川  大人の恋の雰囲気が漂ってきます。

      2 服部    何か色っぽさを感じました。

      3 柳町   

(002) 水澄みて川底の石透かれけり           豊  03

      1 秋元   

(003) 秋冷やホットな便座にほっとして         服部02

      1 桜子    『ホット』を二回使ってリズムのある楽しい句になって

          おられます。

      2 橋本    同感です、便器の進化にホント感謝ですね。

(004) 土塀越し柿の実色ずく城下町           志方05

      1 宮澤   

      庭の菜園の獅子唐を (2 )

(005) 獅子唐の大樹となりて実六百           橋本01

      1 吉良    大げさとも思える「大樹となりて実六百」に栽培者の獅

          子唐への愛情と豊作の期待感を感じました。

(006) 獅子唐の辛きに当たるは宝くじ          橋本02

(007) 風哭きて入り陽に燃ゆる曼珠沙華         小野寺13

(008) 悲しみは海より深し秋刀魚食う          豊  01

      1 桜子    句の最後には前向きになれるので、少し安心しました。

          流れのある句です。

      2 服部   

(009) 見渡せば360度天高し             桑子04

      1 桜子    秋の空をうまく表しておられます。

      2 橋本    秋晴れの青空の広がりをシンプルに表現して良いです。

(010) 合歓の花葉音宇宙に溶け込まし          深瀬01

(011) 運動会マイムマイムで日が暮れる         新井02

      1 小野寺  マイムマイムのダンス曲は我々の中学時代女子生徒の手

          を触れる由一の手段でした。一回りして憧れの彼女が巡っ

          て来た時には胸の高鳴りを禁じ得ませんでした。

      2 桑子    運動会ではないけれども学園祭でのフォークダンスを思

          い出します。確かに日が暮れるまで踊っていました。

(012) 枯葉道ともに老いたる主と犬           服部04

      1 吉良    飼い主と犬のしみじみとした情景が浮かびます。

      2 志方   

      3 平島    夕暮散歩中に出会った風景。ふと思うは生病老死のこと。

          人も犬もヨボヨボだなあ!  主とは自分かな?

      4 深瀬    散歩するペットとご自身の高齢化にいたわりを感じます。

(013) 百舌鳥 (もず) 叫び贄の枯れ枝風に鳴り      小野寺21

      1 深瀬    百舌の捕らえた獲物を串刺しにする習性はなにか不気味

          です。

(014) お湿りを待っていたのに雨台風          宮澤03

(015) ためらわず優先席に座る秋                   深瀬11

(016) 虫時雨 (しぐれ) 月夜に銀のすすき揺れ      小野寺11

      1 秋元   

      2 宮澤   

(017) 曼珠沙華アル中で死し叔父の髪          深瀬17

      1 吉良    子供のころの思い出でしょうか。曼殊沙華の花の形を頭

          髪にみたてる発想を面白く感じました。

(018) しわ増えて金婚記念や紅葉狩り          中津川06

(019) 野分過ぎ晴れ上がりたる今朝の空         豊  05

      1 小野寺  昨夜吹き荒れた野分の翌朝、張り詰めた秋晴れの高い空

          の広がりが爽やかな冷気となり伝わってきます。

      最近のゴルフに思うこと (2 )

(020) ゴルフとは18ホールのドラマかな         橋本05

(021) 女子ゴルフ新人満開秋桜             橋本06

(022) 女郎花 (おみなへし) 揺れ合う霧の道しるべ    小野寺16

      1 秋元   

      2 中津川  霧の中で黄色の花がはっきり見えてきます。

(023) 敬老日いらぬ祝意の「おめでとう」        中津川01

(024) 老人が老人祝う敬老の日             桑子01

(025) 都会の夜おごりを笑う虫の音           深瀬13

(026) 秋の夜ハイビスカスの寂し気な          新井05

(027) 時雨来て艶やかに濡れ柿紅葉 (もみじ)       小野寺07

      1 志方   

(028) 柿食えば(カキク)苔(コケ)が残れしか行かな  桑子06

      1       思わず笑ってしまいました。アイデアのユニークさに拍

          手。

(029) 秋の夜不登校の孫気にかかり           深瀬07

(030) 恋文に残暑の汗で書き直し            宮澤06

      1 桜子    一生懸命のお気持ちが間接的に伝わってきました。

      2 小野寺  暑い夏の日の昼下がり、彼女に対する想いが先走り、し

          たたり落ちる汗の中で、うまく表現できないもどかしさが

          伝わってきます。手紙の結末は如何に?

      3 桑子    やっといい文章が書けたのに、汗が染みて台無し、残念。

(031) 街宣車靖国神社金木犀              服部05

(032) 霧の海哭き呼び交わし鳥渡る           小野寺19

(033) 名月の砂浜埋める亀の列             深瀬21

      1       秋の月の夜、孵化したウミガメの子が砂浜を這う幻想的

          な情景が浮かびました。

(034) 野佛の眠り起こすや稲光り            小野寺12

      1 秋元   

      2 志方   

      3 服部   

      4 宮澤   

(035) 沸壺の水を沸かして呑む抹茶           秋元02

(036) おだやかな秋晴れの朝世にうれい         深瀬12

      1 吉良    秋晴れのさわやかさと先の見えないこの世界の不安感と

          の対比があざやか。

      2 橋本    秋晴れの朝くらい気分爽快と行きたいものですが、いろ

          いろ有り過ぎます。

(037) いわき沖真一文字の水平線            志方04

(038) 曼珠沙華たんぼのなかの墓地に咲き        深瀬16

      1 桑子   

(039) 回る寿司値上げ告知の秋の暮           中津川07

(040) スズメの群かかし朗希に逃げるかな        新井03

(041) コロナ慣れ行列「赤福」伊勢の秋         中津川02

      1 服部    情景が浮かびます。

(042) 合歓の花正田邸跡ひっそりと           深瀬02

      1 平島    今の若い人は昔天皇家に嫁いだ娘さんの実家も知らない

          でしょう。天皇家も姻戚も大富豪ではなく質素さが伺えま

          すね。日本の良さ。

(043) 黄金の秋の寺なる阿弥陀仏            豊  02

(044) 曼珠沙華ロシアの狂気燃え盛る          深瀬15

(045) パッティング行きつ戻りつ秋日かな        桑子05

      1 深瀬    「行きつ戻りつ」にやすらぎを感じます。打っている人

          は反対かも。

(046) ビアガーデン会話無くとも気は弾む        新井06

(047) 老いの秋根気意欲のなき嘆く           深瀬10

(048) 赤蜻蛉微塵に光り風となり            小野寺08

(049) 折詰を鳶にさらわれほれぼれと          志方07

(050) 村神やあと一本の秋空へ             中津川05

(051) 頬杖の御佛の瞳 () に秋思満ち         小野寺06

      1 桑子    季節が変わるとまた違った表情に観えるのでしょうね。

      島根・大山ゴルフ旅行の思い出 (6 )            

(052) 寒の朝酔いも彼方にしじみ汁           吉良02

      1 小野寺  昨夜の二日酔いが、朝の冷え込みでシャキッとし妻の暖

          かいしじみ汁が、明日への元気を取り戻してくれましたね。

      2 服部    実体験で同じ思いがします。

(053) 宍道湖の白帆すべらす秋の風           吉良03

      1 秋元   

      2 平島    空と湖の青さの中を音もなく行く白帆。寺田寅彦の連句

          の挙句にあった句「白帆の往来霞む遠山」を思い出しまし

          た。

      3 深瀬    なにか歴史の古い島根の方の情景に郷愁感を覚えます。

(054) 怪談を語る鈴虫八雲荘              吉良04

      1       「怪談」を書いた小泉八雲は松江に住んでいました。島

          根旅行をした作者の思いが伝わってきます。

(055) 出雲なる社飛び来るオニヤンマ          吉良05

      1 小野寺  出雲の神話の国のやしろから飛びくるトンボは須佐男の

          化身のオニヤンマでしょうか。

(056) 秋あかね五線譜上を浮き沈み           吉良06

      1 秋元   

      2 平島    やわらかな弦楽器の音が聴こえてきました。五線の五は

          ひとの指から生まれたとか。

      3 柳町   

(057) 朝寒の大山めがけティーショット         吉良07

(058) 野辺おくり蜻蛉を風に従へて           小野寺02

      1 志方   

      2 中津川  お別れの悲しさが伝わってきました。

(059) 終活のメモに手入れす秋の夜           深瀬08

      1 吉良    終活のメモなどまだ用意していない自分もそろそろ必要

          かなと思わせてくれました。

(060) うろこ雲黄昏染める錦鯉             志方01

      1 深瀬    空のうろこ雲が錦鯉のようだはすごいスケールだと思い

          ます。

(061) (うみ) 夕日ひぐらしの声水に入り       小野寺04

(062) 夜の秋ショパンの音色遠くから          深瀬05

      1 桜子    おしゃれな感じがして素敵だと思いました。

(063) 十六夜の月を愛でしか屋形船           秋元01

      1 桜子    屋形船で楽しむご様子が伝わってきます。

(064) つがるりんご豪雨に耐えて明ける朝        新井07

(065) 名月に稜線湖面冴え冴えと            深瀬19

      1 柳町   

(066) 山門へ登る足元彼岸花              中津川03

(067) 動くなよマーカー代わりの赤とんぼ        宮澤02

(068) 夜の秋海の笑顔のよぎりゆく           深瀬04

      取り敢えず東北の旅を (2 )

(069) 尻屋崎津軽海峡秋優し              橋本03

(070) 錦秋の月山拝みて旅仕舞い            橋本04

      1 深瀬    旅仕舞いの雰囲気がすがすがしいと感じます。

(071) 引きぎわの声をかぎりに雁は発ち         小野寺18

      1       雁は秋に渡来して春に去って行きます。「引きぎわ」「

          発ち」とありますから、帰って行く雁を詠んだのでしょう

          ね。

(072) 蓑虫の唯我独尊風に揺れ             深瀬23

      1 中津川  蓑虫一つがぶら下がっている姿は確かにそんな感じです

          ね。最近は蓑虫をあまり見なくなった気がします。

      2 橋本    蓑虫の雌は簑の中で終わるとか、最近はめっきり蓑虫を

          見かけなくなり寂しい。

      3 平島    お釈迦様の悟りの境地か?  ユイガ・・・ユレのユの頭

          韻が心地よい。

      4 宮澤   

(073) 運動会猪突猛進たすきリレー           新井01

(074) 敬老日孫の笑顔にいやされぬ           豊  04

(075) 家族連れ校舎の向こうは運動会          宮澤05

      1 深瀬    運動会の日の学校近くの情景がなつかしい。声援が聞こ

          えてきそうです。

(076) 全山紅葉観光船下る               豊  06

(077) 国葬に黙祷抗議秋の空              桑子03

      谷中夕焼け酒場(2022.9.16)  (3 )                  

(078) 駒東の浦島太郎秋うたげ             深瀬25

(079) 秋の宵昭和レトロに老い忘れ           深瀬26

      1 橋本   

      2 服部   

(080) 秋の宵谷中の坂を千鳥足             深瀬27

(081) 滝しぶき櫨 (はぜ) の紅葉はひるがえり       小野寺15

      1 秋元   

      2 中津川  ハゼの葉は本当に紅くなりますね。この句では「もみじ」

          と読むのですか?

      3 柳町   

(082) 名月夜太鼓に躍る古代人             深瀬18

(083) しみじみと冷や酒喉にゲソをかみ         志方02

(084) 秋彼岸円空佛に陽は翳り             小野寺20

(085) 幾千のピンクの扇合歓の花            新井04

(086) 秋の夜寝返り続く老いひとり           深瀬06

      1 吉良    妻を亡くした作者の寂しさが感じられました。

      2 橋本    同じ独り身、寝返りして眠気を待ちますが、、、。

(087) 虫鳴きて路地裏の闇やはらかし          小野寺09

      1 橋本    路地裏で鳴く虫の声、ほっと心が和らぎます。

      2 平島    これもヤみヤはらかしが好きです。下町の秋 平和な虫

           の声 生きていてよかったなあ、

(088) 白寿なる義母の微笑みぶどう噛む         吉良01

      1 小野寺  白寿を迎えた義母が葡萄を食べながら微笑えんでいる。

          妻への感謝が義母への優しさとなり人の心を温かく包みま

          す。

      2 中津川  百歳になろうとするお義母さまご健在です。

(089) 母介護認定進むや秋の暮             服部03

(090) 音もなく月光穿つ銀薄 (すすき)          小野寺03

      1 志方   

(091) 夜の秋別れの記憶遠き日々            深瀬03

      1 中津川  若いころの悲しい別れだったのでしょうか?  ふと御巣

          鷹山のことが浮かびました。

(092) 秋ナスやぬか漬けしぎ焼き天ぷらも        中津川04

(093) 鹿威し子トンと響く冷気かな           志方06

      1 柳町   

(094) 名月に落ち武者仰ぐ妻や子ら           深瀬20

(095) 曼殊沙華彼岸過ぎれば朱が褪せて         志方03

      1 宮澤   

(096) 筆置きて十六夜 (いざよい) 残る空仰ぐ      小野寺05

(097) 山里の朝紅にて湯音聞く             秋元03

      1 小野寺  山里の静かな湯治場、朝焼けの鋭い冷気の中で聴く湯の

          流れる音は不思議な安らぎをいざないます。

(098) 蓑虫の夕陽背にする梢かな             深瀬24

      1       蓑虫に目をつけたところに感心しました。秋の夕暮れの

          孤独な風景が浮かびます。

(099) 街流る川の瀬さやか鯉の影            宮澤01

      1 桑子   

(100) 翅たたむ陽だまりの墓秋の蝶           小野寺10

      1 平島    温かい小春日和 御先祖に会いに来たお墓参りで出会っ

          た可憐な蝶のどかさに こころが和みます。

(101) 月あかりすすきの原に銀の波           深瀬14

      1 桜子    幻想的で絵葉書の一コマのようです。

      2 志方   

(102) 黄色の葉ハイビスカスに秋のトーン        新井08

(103) 飛距離落ち嘆くシニアの秋コンペ         服部01

      1 桑子    共感です。小生も全く飛ばなくなりました。

(104) 杉木立日暮れて百舌鳥 (モズ) の声高し      小野寺17

      1 志方   

      2 柳町   

(105) 虫の声途絶えて夜の闇深し            豊  07

      1 吉良    人の気配で虫が鳴きやんだのでしょうか、虫の声の騒が

          しさと暗闇の対比が見事。

(106) 対岸のにぎわいひそり名月夜           深瀬22

(107) 枝豆の茹で方ひとつで料理通           宮澤04

      1 桑子   

(108) 空澄みて岸辺に赤き曼珠沙華           小野寺14

      1 柳町   

(109) コロナ禍の秋に尾を引く後遺症          深瀬09

(110) 国葬の女王に祈り子規忌かな           桑子02

      1       子規忌が9月19日だったとは気がつきませんでした。

          エリザベス女王の国葬が行われたのもまさに9月19日、

          この二つを結びつけた作者の知識の深さに脱帽です。

 

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2022年8月15日月曜日

七句会 第四十回目のネット句会 感想、自句自解です。

  七句会のみなさま

 

 第四十回の選句結果を踏まえて、感想や自句自解、等をおよせいただき、た

いへんありがとうございました。

 およせいただいたものを、作品集とともに、名前順に、ほぼそのまままとめ

てお届けします。

 

 今後のやり方に、ご意見、等ありましたら、よろしくお願いします。

 七句会のweb  http://nanaku-haiku.blogspot.jp/ にも掲載してあります。

  今後とも、よろしくお願いいたします。

  深瀬 (事務方)

 

 

1.40  ネット句会  作品集

 

(01) 小野寺さん

・緑陰に染まりて吾子は歩みだし

・木漏れ陽に滝の風来て夏木立

・望郷の森に啼きをり青葉木菟 (あおばずく)

・霧雨のしじまに啼くや閑古鳥

・ゆるやかにホタル飛びきて人と逢う

・郭公の木霊かえすや燧岳

・つゆ草を滑りて蛍飛びたてり

・島陰を白き帆滑り潮の音

・夏蝶は生まれて滝の風に乗り

・万緑を影移り行き雲走る

・夏蝶は無縁の墓に羽やすめ

・虫咥え薄暮一閃夏ツバメ

・菖蒲湯のほのかに匂ふ洗い髪

・燕の子口開け騒ぐ雨の軒

・夏の宵森の匂ひの髪を梳き

・濁浪を稲妻走り驟雨打つ

・浜木綿や沖には紺の潮流れ

・鮎掛かる叫びてはしゃぐ祖父笑顔

・鮎走る深き水底陽の匂ひ

・黒潮の岬うずめて月見草

・夏銀河天廻りゆき櫂の音

 

(02) 吉良さん

・木洩れ日に香り浮かべる蓮の花

・朝靄に溶け行く鷺のなお白し

・独り居の昼の冷酒に笑みこぼれ

・白南風や松の木狙い一番ティー

・遥かなる夏期講習や今は孫

 

(03) 桑子さん

・好天日木陰に集うテントかな

・夏至の日ものんべんだらり日が暮れる

・池ポチャが三連発や梅雨曇

・玄関に映る守宮や今日二匹

・庭いじり何はともあれ次ビール

 

(04) 志方さん

・夕涼み浴衣乱して孫はしゃぐ

・紫陽花の朽ちてアヤメの花祭り

・枝豆を孫と競いて八分負け

・夕霞田植えの後に蛙鳴き

・くちなしのはかなき香り風に消え

・すだれ越し涼風ぬける廊下かな

・新緑に風に染まりてまた一杯

 

(05) 中津川さん

・仕切り無し乾杯ビールの友の顔

・急坂をカモシカ走る夏木立

・湿気満つ突然目覚む夏至の夜や

・昼寝して待つは4度目の接種券

・三年 (みとせ) ぶりビアガーデンの一気飲み

・猛暑日や守れぬ公約言い放つ

・着飾って散歩の犬はバギー乗る

 

(06) 橋本さん

・剪定に緑の日影夏迎ふ

・新緑と瀬音に埋もる四万の宿

・満満と八ッ場のダムや何思う

・野反湖に老鶯競い風渡る

・未だ青いほころび悲鳴の地球号

・脱ロシア持たざる国の未来賭け

・侵略し解放と言ふああ非情

 

(07) 服部さん

・客を釣る鰻ののぼり印旛沼

・真っすぐで真っすぐでない田植え苗

・新緑のエージシュートは想定外

・梅雨明けの電力逼迫恐ろしや

・夕食はヤモリと一緒ガラス窓

 

(08) 宮澤さん

・空梅雨に身を置く木々のたくましさ

・紫陽花や雨無き日々に頼りなげ

・羨まし百足虫百歩で一万歩

・ペダル漕ぐたわわな胸に汗光る

・翡翠や水面の飛沫に色映し

・行水だ火の玉浸かる水平線

・燕の子みんなの秘密巣立つまで

 

(09) 森 (杜瑯) さん

・我が夢は百年経ちて蓮と咲く

 

(10) 柳町さん

  先週、地域割を使って軽井沢、草津、浅間方面にいきまして、その時のこと

をいじってみました。

 

  白樺の枝越しに見える浅間山の噴煙に、涼しい軽井沢にも夏が来たな~ と感

じました。

・白樺の浅間の煙や夏来る

  湯畑で有名な草津温泉で草津音頭を聴きながらーーーーー

・湯煙の草津音頭に胸躍る

  鬼押し出しから見る浅間山が、江戸時代の噴火の跡を木々が覆って少しずつ

緑になっていくなーっと感じます。

・新緑や燃え立つ木々の浅間山

 

(11) 豊さん

・炎天や笠をかぶらぬ石地蔵

・水羊羹するりと喉を通りけり

・紫陽花の青の孤独や雨強し

・捕虫網持つ子は何を追いかける

・浮世絵の美人が涼む隅田川

・向日葵の大きいのちが燃えており

・夏の海夕日の中の帰り船

 

(12) 深瀬

・夏山に六根清浄声の行く

・夏山の城址の空に雲ひとつ

・父母遺影うなどん供えお線香

・太鼓橋父とうなぎの在りし日や

・ふとよぎるこれが最期のうなぎかな

・夏の陽にはしゃぐ孫らのいのちかな

・老ひの身の夏の陰影うすれゆき

・夏の陽に覚悟あらたむ死出の旅

・空調音深夜に停まり退社急く

・土用波ほのかな思ひ押し流し

・夏休み神保町の喫茶店

・燃え立つる赤きカンナの池に映へ

・奥座敷うかぶ麻蚊帳薄明かり

・蝉時雨森の静けさ深き淵

・湿原の林間学校朝の風

・かき氷銀座の路地に人の列

・夏の雲声を掛けたきその姿

・夏草の空き地をおおふ異空間

・夏巡る幾億年の今に居て

・人の世に誠意と笑ひ満つる日は

・ウクライナ水漬く屍に草生す屍

・階上の孫の叫びに妻笑ひ

 

 

2.40  ネット句会  感想と自句自解

 

  小野寺さんの自句自解

1 2 点句(011) 島陰を白き帆すべり潮の音

 島陰を風孕んだ白い帆船が行き潮騒が心地よい。とした句ですが平島さんの

シマカゲをシロき帆スベリ、シオの音、サ行の音の繰り返しが、心地よい。と

は全く予期せぬ立派な感想を頂きました。

 

2 2 点句(017 )夏銀河天廻りゆき櫂の音

 仰ぎ見れば、満天の星、荘厳な天の川が廻りゆき、漕ぎゆく櫂の音だけが耳

に心地よく余韻を残しました。

 

3 二点句(028) 夏蝶は無縁の墓に羽やすめ。

 無縁佛の墓石に夏蝶が静かに羽を休めており、何故か命を感じ引き寄せられ

ました。

 豊さんのご指摘のとおり、蝶は亡くなった無縁の死者の魂かもしれません。

不思議な静謐な時が流れておりました。

 

4 二点句(033) 菖蒲湯のほのかに匂ふ洗い髪

 桑子さんの鋭い推察の通りです。菖蒲湯の洗い髪のほのかな匂いが鼻腔をく

すぐりました。遠い昔ですが、匂いの記憶は鮮烈に残ります。菖蒲と勝負をか

ける、とまでは詠み通せませんでした。笑

 

5 二点句(045) 虫咥え薄暮一閃夏ツバメ

 腹を空かせた雛鳥が待つ巣を目指して日暮れの薄暮の中を素早く飛びさるツ

バメの速さに見惚れておりました。

 

6 二点句(082) 郭公の木霊かえすや燧岳

 学生時代に水芭蕉咲く尾瀬の白い筏路を朝靄の中彼女と歩いた遠い記憶です。

郭公が鳴いて、眼前の燧岳に木霊となっておりました。

 平島さんの寸評  kakkouno Kodama kaesuya のカ行の音の流れの心地よさ、

は全くの偶然の結果でしたが、尾瀬の眼前に聳え立つヒウチダケで決まり。と

言って頂き燧岳で締めた甲斐がありました。

 

7.一点句(048) 黒潮の岬埋めて月見草

 平島さんの寸評に寸分違いません。遠く沖を流れる黒潮、近くの岬に目をや

れば一面の月見草。黄色が眼に浮かびます。静かな月見草の黄色は切り取った

絵画の風景となり、鮮明に記憶の画帳に残ります。

 

8.一点句(062) つゆ草を滑りて蛍飛びたてり

 志方さんの寸評の様に我々が子供の頃には普通に見られた風景でした。宵闇

が迫るなか蛍が露草を滑りおちて、突然飛びたち光の尾を引いて消えゆく様は

鮮やかな記憶として残ってます。

 

9.一点句(073) 万緑を影移りゆき雲走る。

 吉良さんの寸評の通りです。一面万緑の涼やかな原を風に乗った雲が流れて、

万緑を一面の影となり走り去ってゆく、次から次に影は流れて、風による雲の

走りに立ちつくしておりました。

 

10. 一点句(078) 浜木綿や沖には紺の潮流れ

 平島さんの寸評の通りです。これは近くから遠くに目をやって見えた紺色の

海の流れ。浜木綿との対が好きです。濃紺の黒潮の流れと純白の浜木綿との鮮

やかな対比です。

 

11. 一点句(086) 鮎走る深き水底陽の匂ひ

 平島さんの寸評の通り、夏の日の深いトロ場の水底を、尺近い鮎が元気に泳

ぎ走り、陽の匂いがして、その晩祖父が掛けた鮎は最高の塩焼きとなりました。

 

・一点句(095) 望郷の森に哭きをり青葉木菟

 子供の頃に岩手釜石の故郷の森で聴いたフクロウの仲間のアオバズクの鳴き

声は大人になり、シカゴの駐在時代、ロシアの出張時代、折りに触れて、哭く

様な微かな声となり耳殻の奥に住み続けております。

 

・無点句(055) 鮎掛かる叫びてはしゃぐ祖父笑顔

 子供の頃父や祖父に連れられてよく鮎釣りに行きました。鮎はオトリを使い

縄張りに入った鮎を追い払う習性を利用して針で引っ掛けるのです。鮎掛けと

いいました。私の竿に鮎が掛かった時の祖父の破顔一笑の騒ぎを今でも鮮明に

覚えております。

 

 締め切りをギリギリ過ぎて推敲する間も無く提出した21句の中で12句が皆様

の心に響いていたと思うとありがたい事です。主催者の豊さんから3.の無縁の

墓に休む夏蝶の句を今回の中で一番の句です。と言って下さったなは自分の励

みにもなりました。また、1 人七句の選句の中で平島さんが五句も選んでくだ

さった事は望外の感激でした。

 

◎ 小野寺さんの感想

 小生の投句 平島さんが20句に絞り込まれた中で最終七句のうちの五句も選

んで頂きましたこと光栄の至りです。

 頂きました俳句の本は一読したあと時々めくってますが締め切りの前、ぎり

ぎりになってから季節を主題にした記憶の引き出しから感動の記憶だけを頼り

に、感覚を頼りに紡ぎだします。

 色彩、音、匂い、といったさまざまな複合した感覚が記憶の中で蘇るのは感

動した記憶の情景が強いかどうかにかかる様な気もします。

 不思議な事にこのプロセスは絵の創作に似てます。自分が感動したものだけ

が人様に感銘を与えられる気がします。情景の美しさではない様な気がします。

 

 

◎ 平島さんの感想

 選句の結果のご報告ありがとうございました。今回も捨てがたい句が多くま

ずランダムに20句ほど拾ってこの中から7 句に絞りました。

 ビックリしましたが小野寺さんの句が5 句もありました。彼には俳句の本を

差し上げましたが別に指導などしたわけでもないのに色彩とか音の捉え方の感

性が似ているのかなあ。

 小生は連句は気合を入れてやって来ましたが発句というか俳句は海外暮らし

で何となく季節感がしっくりと来なくて諦めております。

 でも皆さんが和気藹藹とこのような会を楽しまれて居られるのを羨ましく眺

めております。深瀬さんは体調が万全とはいいがたい中で取りまとめにご尽力

本当に有難う御座いました。今後ともよろしくお願いいたします。

暑いポルトガルにて  平島道彦

 

 

  宮澤さんの自句自解

 自句自解は苦手ですが、望外の七点句もあり、下記2 句につき下記します。

 

(050) ペダル漕ぐたわわな胸に汗光る

 七点句として選句いただき、恥ずかしながら光栄です。

 先日、ビデオで映画「アラベスク」を見てソフィア・ローレンに久しぶりで

再会しました。また会いたいと思っていたら、昨日NHKBS 3で「ひまわり」を

放映しており、見入りました。

 「ブーベの恋人」のクラウディア・カルディナーレも大好きです。どうも昔

から、ラテン系美人の顔立ちとたわわな胸にぞっこんで、女性がけなげに立ち

動く様を、映画の1 シーンの写し絵ように感じ見惚れてしまう性格は生涯続く

のでしょう。

 

(080) 羨まし百足虫百歩で一万歩        

 酷暑の中、何とか1 1 万歩を続けています。

 朝一の散歩は問題ありませんが、日が昇ってから残りをこなすのは大変です。

以前、ゴルフ場のロッカーに出現した百足虫が躓くこともなく、瞬時に1 万歩

をこなし足早に消え去るのを思い出しました。

 羨ましい限りです。しかし、人、生き物、皆それぞれです。ましてや「変身」

なぞ望まず、日々是好日に過ごしたいものです。

 

 

  豊さんの自句自解

・炎天や笠をかぶらぬ石地蔵 

 炎天の野にさらされている石地蔵の姿を詠んだのですが、平凡でした。 

 

・浮世絵の美人が涼む隅田川

 江戸時代の浮世絵には美人画がたくさんありますが、吉原の遊女たちも隅田

川で夕涼みをしていたことでしょう。

 

・水羊羹するりと喉を通りけり 

 水羊羹のするりとしたなめらかさと甘さで夏のちょっとした涼しさを表現し

てみました。

 

・捕虫網持つ子は何を追いかける

 「何を」という曖昧な表現がよくなかったようです。もっと具体的なものに

すべきでした。

 

・夏の海夕日の中の帰り船

 文字通り、漁を終えて港に帰ってくる船の風景です。

 

・紫陽花の青の孤独や雨強し 

 雨に打たれる紫陽花の青に寂しさを感じたのですが、「雨強し」の言葉が強

すぎたようです。

 

・向日葵の大きいのちが燃えており

 炎天下、高く大きく咲いている向日葵に強い生命力を感じました。

 

 

  深瀬の自句自解

(002) 太鼓橋父とうなぎの在りし日や

   1 吉良    太鼓橋で父親とウナギを食べた思い出でしょうか。

       「在りし日や」の表現が印象的です。

   2 橋本    父と渡り、ウナギも捕った (食べた?) 川の思い

       出の太鼓橋。

   3 小野寺  太鼓橋にくると父上と一緒に食べた鰻が思いださ

       れるのでしょう。切ない思い出です。

 目黒駅から行人坂を下ると目黒川にかかる太鼓橋があります。この辺は、江

戸時代、目黒不動尊への参詣道であり、富士山の眺望もよく、浮世絵に描かれ

たりもしました。そのたもとに太鼓鰻という鰻屋さんがありました。子どもの

ころ、父になにかのついでに連れて行ってもらったことがあります。

 

(006) 夏山に六根清浄声の行く

 「六根清浄懺悔懺悔」と唱えながら山道を行く山伏姿の列は、日本の山岳信

仰を象徴している感じがします。

 

(009) 夏山の城址の空に雲ひとつ

   1 志方    天空の蒼いキャンパスに描く城址と白雲が浮かぶ

       見事な構図だと思います。

   2 柳町

 芭蕉の「夏草や~」の句とか、ウェスタンカントリーソング「Ghost Riders

 in the Sky 」などを思い浮かべながら作りました。

 

(014) 夏巡る幾億年の今に居て

 夏の日差しは、太陽を巡る地球の位置づけを改めて感じさせてくれます。

 

(016) 空調音深夜に停まり退社急く

   1 桜子    よくわかります。

 富士通の川崎工場に勤務していたころ、工場を改造したようなオフィスであ

ったせいか、残業で遅くなり空調音がとまると不気味な静けさになりました。

 

(019) 夏の陽にはしゃぐ孫らのいのちかな

 こちらは老化が進み夏の日差しに困惑しているのとは対照的に、孫たちの様

子には若い生命力のたくましさを感じます。

 

(024) 人の世に誠意と笑ひ満つる日は

 今日のウクライナ戦争や台湾海峡をめぐる緊張は、今後どうなっていくのか

考えさせられます。

 

(027) ウクライナ水漬く屍に草生す屍

 「水漬く屍に草生す屍」は、戦争中に準国歌とされた「海ゆかば」の一節で

す。こうした状況が今日のウクライナで起きていることに困惑します。

 

(031) 湿原の林間学校朝の風

 駒東での仙石原での合宿が印象に残っています。

 

(034) 父母遺影うなどん供えお線香

 仏壇にお供えするミニチュアのうな重キャンドルというのがあることを最近、

知りました。

 

(039) 奥座敷うかぶ麻蚊帳薄明かり

 遠くから、薄明かりのともる麻蚊帳の部屋をみているという様です。水上勉

の「雁の寺」なんかにあったか。

 

(043) 土用波ほのかな思ひ押し流し

   1 吉良    ほのかな思いは恋の思い出でしょうか。シャンソ

       ン「枯れ葉」の歌詞「波は愛し合った恋人の足跡さ

       え消してゆく」を思い出します。

   2       ひと夏のつかの間の恋を土用波が押し流してしま

       ったのです。甘く苦い思い出です。

 土用波ということばを聞くと、夏のさかりが終わったなにかさみしい気持ち

になりました。

 

(046) 夏草の空き地をおおふ異空間

   1       夏草が伸び放題の空き地。そこはまさに異空間の

       趣です。

 夏草の成長するスピードにはなにか畏怖を感じます。

 

(053) かき氷銀座の路地に人の列

 銀座にはいろいろな路地が残されていて歴史が感じられます。

 

(060) 燃え立つる赤きカンナの池に映へ

   1 橋本    「燃え立つる」が上手い表現だと思います。

   2 柳町

      3 小野寺  まるで燃え立つ様な赤いカンナが静かに池に映え

          て暑い夏の風物詩ですね

 子どものころ、自宅の池の向こう側に赤いカンナが植えてありました。

 

(063) ふとよぎるこれが最期のうなぎかな

 少し前、肉厚のうなぎを食べましたが、かなり感動しました。

 

(066) 老ひの身の夏の陰影うすれゆき

   1 吉良    年とともに段々とすべてに執着心がなくなり、時

       に流されそうになる気分でしょうか。

 10代とか20代のころは、強烈な夏の日差しに正面から向き合っていたように

思います。

 

(074) 蝉時雨森の静けさ深き淵

 以前、富士山の樹海に少し入ったことがあります。そのときの印象からミシ

ェル・リシャール・ド・ラランド  グラン・モテ「深き淵より」が思い起こさ

れました。

 

(079) 夏休み神保町の喫茶店

   1 中津川

 神保町には、クラシックな感じの喫茶店が残っているようです。

 

(083) 階上の孫の叫びに妻笑ひ

 私たち夫婦はマンションの4 階に住んでいて、息子一家はすぐ上の5 階にい

ます。ときどき孫たちの叫び声や泣き声が窓ごしに聞こえてきます。

 

(093) 夏の陽に覚悟あらたむ死出の旅

   1       夏の陽には烈しさがあります。それに打ち勝つた

       めにはあらたな覚悟が必要なのです。死を恐れぬ作

       者の意思が感じられます。

      2 小野寺  照りつける夏の強い陽射しの中でいつかはこの命

          も尽きる日は来ると覚悟を決める作者の心情に同感

          です。生きると言う事は常に死と隣り合わせですよ

          ね。

 戦前世代は「青葉しげれる櫻井の~」で始まる「楠公の歌」は、みんなそら

んじていたようです。その三番目の歌詞「父上いかにのたもうも  見捨てまつ

りてわれ一人いかで帰らん帰られん  この正行は年こそは  未だ若けれ諸共に

  御供仕えん死出の旅」の「死出の旅」を勝手に流用しました。

 

(096) 夏の雲声を掛けたきその姿

 夏のくっきりした雲の形には、不思議な迫力を感じます。

 

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