七句会のみなさま
第三十九回の選句結果を踏まえて、感想や自句自解、等をおよせいただき、
たいへんありがとうございました。
およせいただいたものを、作品集とともに、名前順に、ほぼそのまままとめ
てお届けします。
今後のやり方に、ご意見、等ありましたら、よろしくお願いします。
七句会のweb
http://nanaku-haiku.blogspot.jp/
にも掲載してあります。
今後とも、よろしくお願いいたします。
深瀬 (事務方)
1.第39回 ネット句会 作品集
(01) 秋元さん
・蕾咲く春の日差しに陰深く
・平和ボケ忘れてならぬ日本人
・忍び寄る悪の枢軸焦眉の急
・妄想に生きる狂人露亡霊
・核威嚇歴史に残る大汚点
・国連は機能不全の5P
(02) 新井さん
・三渓園はずむおしゃべり梅見酒
・卒業もメールでつなぐゆるい縁
・引っ越しで人の情けの身に沁みけり
・新しい本立て飾るあれこれと
・エルグレコ神秘の紅に鳥肌立ち
(03) 小野寺さん
・鐘の音に心弾みて春の雨
・谷川の瀬音ゆたかに山桜
・山城を訪ふひともなく花吹雪
・桜花ほのかに遷 (うつ) し緑酒注ぐ
・峠道うしろ髪ひく花の雨
・葉桜の湖 (うみ) の向こうに風ひかり
・夜桜や想い断ち切る風の音
・墨擦れば花冷えの木々薫りけり
・雲翳り畔一面の蓮華草
・風が哭く古城の堀に花筏
・野佛の頬濡らしけり花時雨
・吹き入りし落花に佛息を止め
・潮鳴りの煌く沖をごめ (海猫)
渡り
・解きおろす緞子の帯に花落ちて
・満開の花観ることもなく朋は逝き
・夕餉待つ母の得意の木の芽和え
・おぼろ月蛙のこだま帰省の夜
・音もなく渓流下る花筏
・ホオジロの渡る枝々新芽吹き
・夜桜の梢の闇に人の声
・鐘の音に和して舞ひ翔ぶ春疾風 (はやて)
(04) 吉良さん
・深き空白木蓮(はくれん)光るビルの街
・春寒や背中丸めて夫婦坂
ソビエトのウクライナ侵攻の早期の解決を願
って。
・硝煙の消えることなし草芽吹く
・悲きや戦 (いくさ) なる地へ鳥帰る
・戦 (いくさ) 止み青麦そよぐ静けさや
(05) 桑子さん
・川うららゴミ取り船の千鳥足
・卒業子正門前のファッションショー
・露消えてロビンさえずる春の宇宙 (そら)
・隅田川上り下りの花筏
・遅き日や19番はパー5 (ファイブ)
(06) 志方さん
・散り桜日ごと少なく春は往く
・水温み朱き石楠花生き生きと
・花園も色も多彩に華やいで
・寂しさも酒杯に浮かびもう二年
・プーチンとともに未来の地獄絵図
・みちのくのこれから魅せる山桜
・由比ガ浜水平線はどこまでも
(07) 中津川さん
・花見せんとカルガモ親子列を成し
・鳩のごと白木蓮 (はくれん) に停戦祈る
・香満る本尊囲むつるし雛
・この浜も外国産かと潮干狩り
・山歩くジビエ料理に雪の果
・手術後の目を襲うかと春の塵
・燕の巣主は来ぬかと今日も見る
(08) 橋本さん
・長閑さや散歩道にも眠気有り
・水温む水辺の草の水水し
・今年また初音嬉しやゴルフ場
・寒暖の大差に竦む老いの春
・囀りの車途切れて響く空
・花の香を肴に一人ビールかな
・雲雀飛ぶ石陰寄れば巣に命
・雨二日緑一気に春の庭
・ウクライナ実りの大地春はいつ
・自由死守決意の闘いウクライナ
・核を背に狂気の侵攻世界闇
・侵攻を咎めぬ国の不自由度
・鯉幟 (のぼり) 川には鯉の恋上り
(09) 服部さん
・一合が眠り薬と春の宵
・藍染の槽の温みや春浅し
・陽当たりの良き場所ほどの梅早し
・入社式制服の折り目ぎこちなく
・蹂躙のウクライナには春遠し
(10) 柳町さん
桜の時期に、青森県五所川原市にある「鶴の
舞橋」を見た時の情景です。
・春霞岩木の山に鶴が舞う
桜のトンネルで有名な、津軽鉄道の「芦野公
園駅」に、私が現役時代に関係したT-2 型ジェ
ット練習機 (自衛隊で用途廃止となった) が展
示されています。この航空機の日の丸がとても
輝いていた情景を詠んでみました。
・日の丸や芦野の園に桜舞う
(11) 豊さん
・稚魚泳ぐ春の小川の光かな
・春昼や縁側の猫あくびする
・青信号歩道を飛んで揚羽蝶
・100号の桜絵並ぶ美術展
・朧月すれ違う人あやしげに
・満開の桜にこころ狂わされ
(12) 深瀬
・堀端の桜並木に夕陽映え
・花びらの街路に散って季節ゆく
・山門に雲水送るさくらかな
・校門の並ぶ笑顔に桜舞う
・さくら咲く三途の川の遠見かな
・入学の孫に手をふる坂の上
・満帆の笑顔と緊張入学日
・入学式たぎる若さに老い深む
・たんぽぽのミニマリストの窓飾り
・黄たんぽぽ野原いっぱい広き空
・ボテンティア登録記念梅の花
・紀元節ビッグバンの日分かるなら
・紀元節アイデンティティーの底問われ
・ごまかせる瀬戸際を行く老いの春
・することののたりのたりの老いの春
・活け花や駅舎の隅に春ともす
・長閑 (のどか) さや深き睡魔の老いの午後
・コロナ禍に花粉禍ロシア禍人新世
・図書館の深き静けさ辞書の列
・母からの十三回忌の便りかな
2.第39回 ネット句会 感想と自句自解
◎
小野寺さんの自句自解
・野佛の頬濡らしけり花時雨 (6 点句)
京都嵯峨野の野佛は春の花時雨に濡れそぼち、まるでこの世の不条理を一身
に抱え込み涙を流しておられるように感じたのです。
・山城を訪ふひともなく花吹雪 (6 点句)
山奥の城跡に人知れずにひっそりと咲く桜、もう訪れる人もなく、一陣の風
に任せて散る花吹雪は、人の世の儚さを今に伝える様でもありました。
・谷川の瀬音ゆたかに山桜 (3 点句)
山深い谷川の瀬は水量も多くダイナミックに音立てて流れ、観る人もない山
桜は堂々と咲き誇り、大自然に身を委ねる心地よいひと時でした。
・葉桜の湖( うみ) の向こうに風ひかり (3 点句)
葉桜となった鮮やかな新緑の向こうには湖水がキラキラと輝いていて、心地
よい風が光りながら、流れていくのを感じたのです。
・風が哭く古城の堀に花筏 (2 点句)
桜がちりしく古城の石垣に風が茫々と哭いているかの様に吹きあれて、桜は
花の筏となってお堀にたゆとうておりました。
・墨擦れば花冷えの木々薫りけり (2 点句)
手紙を書く為に墨を擦ると墨の匂いが心地よく、花冷えの窓の外の木々が薫
りくるような気分になったのです。
・夜桜や想い断ち切る風の音 (2 点句)
光を浴びた夜桜をながめると悩み抜いた末に別れた人への未練を断ち切れと
、風が音たてて桜を散らしておりました。新井さん橋本さんのご推察の通りで
す。
・潮鳴りの煌く沖をごめ( 海猫)
渡り (2 点句)
平島さん恐れ入ります。これだけの言葉で私の言いたい事を全て解説頂きま
した。なかにし礼の石狩挽歌なのです。北の海満洲、千島、その向こうにはロ
シア。今 ウクライナを蹂躙するプーチンのバカ野郎。ごめが鳴くからニシン
が来た、のですが我々も又、ウクライナの蹂躙を他人事としてはならないので
す。
・鐘の音に和して舞ひ翔ぶ春疾風 (はやて) (2 点句)
鐘の音に唱和するかの如く春の疾風が音たてて舞い上がり、鐘の音だけがい
つまでも乾いた心に鳴り響いておりました。
・おぼろ月蛙のこだま帰省の夜 (1 点句)
帰省した月夜の一面の田圃道。蛙の大合唱がこだまの様に耳殻に響き温かく
、泣けとばかりに懐かしい郷愁となって想いだされます。
・満開の花観る事もなく朋は逝き (1 点句)
(満開の花間に合わで朋は逝き)
西行の、願わくは花の下にて春死なんその如月の望月の頃、の歌が好きだっ
た朋は、桜を観る事もなく急逝しました。花の季節になり、朋の死の無念を想
うと徒 (あだ) や疎 (おろそ) かには生きられないのです。
以上
春の句の兼題を締め切りを猶予頂き一気に投句したのですが、最高得点にニ
句も選んで頂き大変ありがたい事で感謝に耐えません。
◎
中津川さんの自句自解
残念ながら一つも二点句以上になりませんでしたがいくつか自解します。
・手術後の目を襲うかと春の塵(035)
2月に白内障の手術を受けました。その後保護メガネをかけて散歩したので
すがある日突風が砂を巻き上げメガネめがけて飛んできたのです。
・山歩くジビエ料理に雪の果て(050)
裏高尾を小仏峠を目指す途中のお店で鹿・猪を使ったイタリアンを食べまし
た。雪がチラチラと寒い春でした。
・燕の巣主は来ぬかと今日も見る(089)
バス停横の2軒の家の駐車スペースの軒に毎年燕が来る。今年はいつ来るか
とバスを待つ間気になります。今年は七句会の締め切り後の数日後にやってき
ました。
感想)
ウクライナ侵攻に関する句が10句以上ありましたが、季語を入れるには難
しいと思いました。その中で吉良さんの ”鳥帰る”の句は渡り鳥の習性と戦
争の悲惨さを訴え見事に表現されていると思いました。
◎
橋本さんの自句自解
今回は、ロシア (プーチン) による理不尽なウクライナ侵攻のショックがあ
り、関連の句4句と合せて13句も投句してしまいましたので、自句自解や思
いを述べさせて頂きます。
・自由死守決意の闘いウクライナ
屈したら自由と民主主義を失い屈辱の未来が待っている、死闘に耐えて国を
守るウクライナ頑張れ、 応援する!
・核を背に狂気の侵攻世界闇(1点句)
核の脅しもちらつかせ戦いを有利にしようとするプーチン、まさかと思うが
現実になれば世界は大きなダメージを受ける。国連の安全保障体制が有効確実
に機能するべく、改革が必要不可欠と思う。
・侵攻を咎( とが) めぬ国の不自由度(1点句)
ロシアに似た強権ないしは独裁、専制国家で国民の自由が制約されたり、経
済や軍の装備などをロシアに依存している国は国連のロシアへの非難決議や制
裁に反対、躊躇している。
・ウクライナ実りの大地春はいつ
ウクライナは小麦やひまわりなどの世界的穀倉地帯、戦争が終わり実りを迎
えるのはいつになるのか。
・囀 (さえず) りの車途切れて響く空
道路を走る車の音が途切れると、近くの何処かでなく小鳥の囀り。窓越しに
空を見上げ、耳を澄まし聞けば心が癒やされる。
・花の香を肴に一人ビールかな(1点句)
近くの公園に満開の桜を見に出かけ、桜の香り、 姿を肴に家で一人ビールで
乾杯する老いの春の一コマ。
・雲雀飛ぶ石陰寄れば巣に命(2点句)
田舎の少年時代の河原散策での体験、勿論巣には一切手を触れない。雲雀の
巣を見たのはこの時だけ。
・雨二日緑一気に春の庭(2点句)
春の雨が二日続き、庭は一気に緑の勢いが増してきた。
・今年また初音嬉しやゴルフ場(2点句)
コロナ禍ではあるが、今年もまた同じゴルフ場で鶯の初鳴きを聞くことが出
来た喜び。
・寒暖の大差に竦 (すく) む老いの春
1日で10℃も変化する春先、老いの身は予報を信じてしっかりと備えるば
かり。
・長閑 (のどか) さや散歩道にも眠気有り(1点句)
座生川沿いのいつもの散歩道も、穏やかな春爛漫の陽気に包まれ眠気を誘う
。
・水温む水辺の草の水水し(1点句)
次の句と合せて遊び心で韻を踏んで詠んでみました。
座生川の石堤側河床の岸の草が、春真っ先に緑に染まり美しい。
・鯉幟 (のぼり) 川には鯉の恋上り
鯉幟は夏の季語だが、4(~5)月に増水すると支流の座生川には江戸川から多
くの鯉が上り、水没した岸辺の草に産卵する。
◎
豊さんの自句自解
・青信号歩道を飛んで揚羽蝶
横断歩道で信号待ちをしていたら、青信号に変わったとき、ちょうど揚羽蝶
も一緒に渡ったのです。
・朧月すれ違う人あやしげに
朧月の下では向こうから歩いてくる人の顔はよく見えません。もしかすると
あやしい人かもしれません。
・満開の桜にこころ狂わされ
「桜の樹の下には屍体が埋まっている」と梶井基次郎は書きました。満開の
桜を見ると、私はなにやら胸騒ぎがします。皆さんはどうですか。
・100号の桜絵並ぶ美術展
100号の絵は162センチ×112センチの大きさがあります。そんな絵
がずらりと並ぶ春の美術展は壮観でしょう。
・春昼や縁側の猫あくびする
春ののんびりした風景を切り取ったのですが、平凡だったかもしれません。
・稚魚泳ぐ春の小川の光かな
生まれたばかりの稚魚が初めて春の川で泳ぎ始める。その新鮮な感じを詠み
ました。
◎
深瀬の自句自解
・堀端の桜並木に夕陽映え
総武線の窓から市ヶ谷のお堀り端の桜並木をみたときの印象です。夕陽には
少し早い時刻でしたが、なにか輝いて見えました。
・花びらの街路に散って季節ゆく
桜は咲いてしばらくすると散り始めます。時の流れを妙に実感させられる思
いがしました。
・山門に雲水送るさくらかな
NHK 特集でみた永平寺の映像を思い出して詠んでみました。
・校門の並ぶ笑顔に桜舞う
学校の門の前には桜が定番みたいです。桜は日本の象徴のような感じですが
、ぱっと咲いてぱっと散るというのは、いいことなのかやや考えさせられます
。
・さくら咲く三途の川の遠見かな
一昨年、心筋梗塞の発作で三途の川をもうすぐで渡るところでした。老化の
自覚とともになにか誘われているような気持ちになったりもしています。
・入学の孫に手をふる坂の上
去年の春、孫が、わたし、息子と三代続けて同じ小学校に入学しました。近
所の女の子と一緒に行ったりしているようです。
・入学式笑みと緊張ぎこちなく
入学式と卒業式のときの写真を比較してみるとおろしいと思います。
・入学式たぎる若さに老い深む
小学校でも大学でも新入生の輝いている様には圧倒されます。引退している
身としては、彼我の落差に複雑な心境です。
・たんぽぽのミニマリストの窓飾り
良寛のように最低限の持ち物で生活することは理想のように感じますが、う
るおいも大切にしたいと思います。
・黄たんぽぽ野原いっぱい広き空
約半世紀前、大学紛争が吹き荒れているころ、森山良子さんの「この広い野
原いっぱい」がはやっていました。やや複雑な思い出があります。
・ボテンティア登録記念梅の花
今年3 月、目黒区のボランティア登録をしました。はじめはコーヒー同好会
という集まりの話し相手をするというもので、新鮮な体験でした。
・紀元節ビッグバンの日分かるなら
ビッグバンは、今から138.2 億年前とのことですが、この精度が高まり日単
位で分かれば、その日を記念してはと思います。
・紀元節アイデンティティーの底問われ
人間は自分の存在の意味や価値を知りたがり、そこにアイデンティティーを
見いだし安心を得るようです。日本人としてのアイデンティティーばかりでは
ないだろうとの問題提起です。
・ごまかせる瀬戸際を行く老いの春
・することののたりのたりの老いの春
・長閑 (のどか) さや深き睡魔の老いの午後
最近、心臓の負担を減らす薬を服用しているせいか、ややふらつくようなこ
とがあります。なにか限界を生きていて追い詰められているような気持ちにな
ったりします。
・活け花や駅舎の隅に春ともす
実際に見たのは、地下鉄の改札の近くだったと思います。なにか気持ちのや
すらぎを感じました。
・コロナ禍に花粉禍ロシア禍人新世
最近、人新世ということばを耳にします。それだけ激変の時代を生きている
のだと実感します。もうすぐこの世から引退する身ですが、やや身につまされ
る思いです。
・図書館の深き静けさ辞書の列
キョウイクの一環として大学の図書館をよく利用していますが、春休みはす
いていて静かです。なにか蔵書の重みに威圧される雰囲気があります。
・母からの十三回忌の便りかな
母のお墓のある五百羅漢寺から13回忌の法要をしてはどうかとの連絡があり
ました。もうそんなになるのかと母からの催促のように感じました。当日、家
内とお参りに行ってきましたが、同じフロアに恩師遅沢先生のお墓もありご挨
拶してきました。
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