七句会のみなさま
第四十一回の選句結果を踏まえて、感想や自句自解、等をおよせいただき、
たいへんありがとうございました。
およせいただいたものを、作品集とともに、名前順に、ほぼそのまままとめ
てお届けします。
今後のやり方に、ご意見、等ありましたら、よろしくお願いします。
七句会のweb http://nanaku-haiku.blogspot.jp/ にも掲載してあります。
今後とも、よろしくお願いいたします。
深瀬 (事務方)
1.第41回 ネット句会 作品集
(01) 秋元さん
・十六夜の月を愛でしか屋形船
・沸壺の水を沸かして呑む抹茶
・山里の朝紅にて湯音聞く
(02) 桜子さん
・運動会猪突猛進たすきリレー
・運動会マイムマイムで日が暮れる
・スズメの群かかし朗希に逃げるかな
・幾千のピンクの扇合歓の花
・秋の夜ハイビスカスの寂し気な
・ビアガーデン会話無くとも気は弾む
・つがるりんご豪雨に耐えて明ける朝
・黄色の葉ハイビスカスに秋のトーン
(03) 小野寺さん
・初秋の露匂ひける逢瀬かな
・野辺おくり蜻蛉を風に従へて
・音もなく月光穿つ銀薄 (すすき)
・湖 (うみ) 夕日ひぐらしの声水に入り
・筆置きて十六夜 (いざよい) 残る空仰ぐ
・頬杖の御佛の瞳 (め) に秋思満ち
・時雨来て艶やかに濡れ柿紅葉 (もみじ)
・赤蜻蛉微塵に光り風となり
・虫鳴きて路地裏の闇やはらかし
・翅たたむ陽だまりの墓秋の蝶
・虫時雨 (しぐれ) 月夜に銀のすすき揺れ
・野佛の眠り起こすや稲光り
・風哭きて入り陽に燃ゆる曼珠沙華
・空澄みて岸辺に赤き曼珠沙華
・滝しぶき櫨 (はぜ) の紅葉はひるがえり
・女郎花 (おみなへし) 揺れ合う霧の道しるべ
・杉木立日暮れて百舌鳥 (モズ) の声高し
・引きぎわの声をかぎりに雁は発ち
・霧の海哭き呼び交わし鳥渡る
・秋彼岸円空佛に陽は翳り
・百舌鳥 (もず) 叫び贄の枯れ枝風に鳴り
(04) 吉良さん
・白寿なる義母の微笑みぶどう噛む
島根・大山ゴルフ旅行の思い出 (6 句)
・寒の朝酔いも彼方にしじみ汁
・宍道湖の白帆すべらす秋の風
・怪談を語る鈴虫八雲荘
・出雲なる社飛び来るオニヤンマ
・秋あかね五線譜上を浮き沈み
・朝寒の大山めがけティーショット
(05) 桑子さん
・老人が老人祝う敬老の日
・国葬の女王に祈り子規忌かな
・国葬に黙祷抗議秋の空
・見渡せば360度天高し
・パッティング行きつ戻りつ秋日かな
・柿食えば(カキク)苔(コケ)が残れしか行かな
(06) 志方さん
・うろこ雲黄昏染める錦鯉
・しみじみと冷や酒喉にゲソをかみ
・曼殊沙華彼岸過ぎれば朱が褪せて
・いわき沖真一文字の水平線
・土塀越し柿の実色ずく城下町
・鹿威し子トンと響く冷気かな
・折詰を鳶にさらわれほれぼれと
(07) 中津川さん
・敬老日いらぬ祝意の「おめでとう」
・コロナ慣れ行列「赤福」伊勢の秋
・山門へ登る足元彼岸花
・秋ナスやぬか漬けしぎ焼き天ぷらも
・村神やあと一本の秋空へ
・しわ増えて金婚記念や紅葉狩り
・回る寿司値上げ告知の秋の暮
(08) 橋本さん
庭の菜園の獅子唐を (2 句)
・獅子唐の大樹となりて実六百
・獅子唐の辛きに当たるは宝くじ
取り敢えず東北の旅を (2 句)
・尻屋崎津軽海峡秋優し
・錦秋の月山拝みて旅仕舞い
最近のゴルフに思うこと (2 句)
・ゴルフとは18ホールのドラマかな
・女子ゴルフ新人満開秋桜
(09) 服部さん
・飛距離落ち嘆くシニアの秋コンペ
・秋冷やホットな便座にほっとして
・母介護認定進むや秋の暮
・枯葉道ともに老いたる主と犬
・街宣車靖国神社金木犀
(10) 宮澤さん
・街流る川の瀬さやか鯉の影
・動くなよマーカー代わりの赤とんぼ
・お湿りを待っていたのに雨台風
・枝豆の茹で方ひとつで料理通
・家族連れ校舎の向こうは運動会
・恋文に残暑の汗で書き直し
(11) 豊さん
・悲しみは海より深し秋刀魚食う
・黄金の秋の寺なる阿弥陀仏
・水澄みて川底の石透かれけり
・敬老日孫の笑顔にいやされぬ
・野分過ぎ晴れ上がりたる今朝の空
・全山紅葉観光船下る
・虫の声途絶えて夜の闇深し
(12) 深瀬
・合歓の花葉音宇宙に溶け込まし
・合歓の花正田邸跡ひっそりと
・夜の秋別れの記憶遠き日々
・夜の秋海の笑顔のよぎりゆく
・夜の秋ショパンの音色遠くから
・秋の夜寝返り続く老いひとり
・秋の夜不登校の孫気にかかり
・終活のメモに手入れす秋の夜
・コロナ禍の秋に尾を引く後遺症
・老いの秋根気意欲のなき嘆く
・ためらわず優先席に座る秋
・おだやかな秋晴れの朝世にうれい
・都会の夜おごりを笑う虫の音
・月あかりすすきの原に銀の波
・曼珠沙華ロシアの狂気燃え盛る
・曼珠沙華たんぼのなかの墓地に咲き
・曼珠沙華アル中で死し叔父の髪
・名月夜太鼓に躍る古代人
・名月に稜線湖面冴え冴えと
・名月に落ち武者仰ぐ妻や子ら
・名月の砂浜埋める亀の列
・対岸のにぎわいひそり名月夜
・蓑虫の唯我独尊風に揺れ
・蓑虫の夕陽背にする梢かな
谷中夕焼け酒場(2022.9.16) (3 句)
・駒東の浦島太郎秋うたげ
・秋の宵昭和レトロに老い忘れ
・秋の宵谷中の坂を千鳥足
2.第41回 ネット句会 感想と自句自解
◎ 秋元さんの自句自解
・(097) 山里の朝紅に湯音聞く
早朝、月山麓宿の露天風呂に浸かり、ふと空を仰ぐと
未だ明けきらぬ日の出前の深い青にくれない色に染まっ
た雲が張り付いたようにコントラストをなし、とても美
しく、また静謐で静かに注ぐ湯船が天上湯のようでした。
◎ 小野寺さんの自句自解
・4 点句 (034) 野佛の眠り起こすや稲光り
京都を旅した折嵯峨野で秋の雷雨に逢った折一天俄に
かき曇った空から刹那に光った稲妻が野佛の顔を照らし
て1000年の眠りから目覚めさせたと感じたのです。
・3 点句 (001) 初秋の露匂ひける逢瀬かな
京都の初秋に逢いに行った折萩の葉に付いた水滴が匂
うが如くに感じた事でした。遠い記憶の中で、心の高鳴
りを覚えた事が、鮮明に蘇ります。
・3 点句 (081) 滝しぶき櫨(はぜ)の紅葉はひるがえり
白煙をあげて轟々と落ちる滝しぶきを背景にして、は
かなくも翻り舞う真紅の櫨(はぜ)の葉は一幅の絵巻の
様でもありました。櫨のもみじ、です。
・2 点句 (016) 虫時雨(しぐれ)月夜に銀のすすき揺れ
秋の夜更け虫しぐれの中で月光に照らしだされたすす
きは風に揺れ動く銀の波のようでもありました。
・2 点句(022) 女郎花(おみなえし)揺れ合う霧の道しるべ
中津川さんのご指摘通り、揺れて流れる様な霧の野道
に咲く女郎花は黄色の花が道しるべなのです。
・2 点句 (058) 野辺おくり蜻蛉を風に従えて
辛い友の死を悼みみあげた空を風にまかせて蜻蛉が昇
っていくようでもありました。
・2 点句 (087) 虫鳴きて路地裏の闇やはらかし。
平島さん、橋本さんのご指摘通り下町の平和な虫の声
は闇(ヤミ)でもヤワラかいのです。生きてて良かった
なあ、との感慨に浸るのです。
・2 点句 (104) 杉木立日暮れて百舌鳥(もず)の声高し
鬱蒼とした杉木立の夕暮れ百舌鳥の鋭い声が、哀しく
深い郷愁を誘い翔然てして、襟をただします。
・1 点句 (013) 百舌鳥(もず)叫び贄の枯れ枝風に鳴り
百舌鳥は捉えた昆虫や小動物を枝に串刺しにして後か
ら食べる習性があり、深瀬さんご指摘通り、不気味でも
の悲しい風景です。
・1 点句 (027) 時雨来て艶やかに濡れ柿紅葉(もみじ)
秋も深まり時雨に濡れそぼつ柿の葉は艶やかに命の最
後の色を発色するのです。
・1 点句 (051) 頬杖の御佛ね瞳(め)に秋思満ち
頬杖をつく御仏の瞳は秋ね気配の中で秋の憂いを一身
に感じておられるのだと思いました。桑子さんのご指摘
通り違う季節にはまた違う表情に観えるのだと思います。
・1 点句 (071) 引きぎわの声を限りに雁は発ち
秋の時期に鳴いて発つ雁の哀愁に満ちた声を別れを惜
しんでの事と詠んだつもりでしたが、雁が帰るのは春と
の豊さんのご指摘であれば、秋の雁の鳴き声は来飛した、
喜びの声だったかもしれません。
・1 点句 (100) 翅たたむ陽だまりの墓秋の蝶
平島さんのご指摘通り温かい秋の日和 ご先祖に会い
に来た墓参に出逢えた可憐な蝶に心が和みます。
・1 点句 (108)空澄みて岸辺に赤き曼珠沙華
高々と秋の空が澄み渡り、目を落とすと対岸の岸辺に
は真紅の彼岸花が咲いておりました。
以上投句した21句中13句に皆様の共感を頂きました事
は望外の喜びでもありました。引き続き宜しくお願いし
ます。
◎ 豊さんの自句自解
・水澄みて川底の石透かれけり
秋の川の水が澄んで、川底に沈んでいる石が透けて見
えた。秋の気配を詠んだつもりですが、それがどうした、
と言われるとそれまでで、われながら平凡な句になって
しまいました。
・悲しみは海より深し秋刀魚食う
海の深さよりも深い悲しみを経験した。その思いをか
みしめながら秋刀魚を食べている。悲しみの深さと海の
秋刀魚をひっかけてみたのですが、少しわざとらしかっ
たようです。
・野分過ぎ晴れ上がりたる今朝の空
台風一過の朝の空の青さを詠んだのですが、これもあ
たりまえ過ぎました。
・黄金の秋の寺なる阿弥陀仏
庭の木々が黄葉した寺、その堂内には金色の阿弥陀仏
像が座しているのです。
・敬老日孫の笑顔にいやされぬ
老いが進むと気持ちが沈むことが増えてきます。そん
なとき、幼い孫が屈託のない笑顔で接してくれるといや
されるのです。
・全山紅葉観光船下る
全山紅葉した山と山の間の谷川を、川下りの観光船が
紅葉狩りのお客さんを乗せて進んでいくのです。
・虫の声途絶えて夜の闇深し
吉良さんと同じようにもっと多くの人が鑑賞してくれ
ると思ったのですが、残念です。
◎ 深瀬の自句自解
・(010) 合歓の花葉音宇宙に溶け込まし
合歓の葉は夜になると自ら閉じるようです。なにか宇
宙的存在を感じました。
・(015) ためらわず優先席に座る秋
かつては、優先席は避けるようにしていたのですが。
・(017) 曼珠沙華アル中で死し叔父の髪 (1 点句)
甘やかされて育った叔父は、ついにまともになりませ
んでした。
・(025) 都会の夜おごりを笑う虫の音
草むらなどほとんどない都会の夜に虫の音が響くのが
ふしぎです。
・(029) 秋の夜不登校の孫気にかかり
小学2 年の孫が不登校にりました。周囲に気を使いす
ぎるのか、やや心配です。
・(033) 名月の砂浜埋める亀の列
名月と砂浜になにを添えたらよいか思案してみました。
・(036) おだやかな秋晴れの朝世にうれい (2 点句)
幾万年も続いてきた穏やかな地球の朝の気配は、環境
破壊や核の脅威などでどうなるのでしょうか。
・(038) 曼珠沙華たんぼのなかの墓地に咲き (1 点句)
母の実家のある秋田では、田んぼのなかの少し高くし
た場所に墓地があります。
・(042) 合歓の花正田邸跡ひっそりと (1 点句)
かつて自転車で前をよく通りましたが、趣のある住居
でした。今は公園になっているのが残念です。
・(044) 曼珠沙華ロシアの狂気燃え盛る
破壊の限りを尽くすロシアの暴力性は人間の本性なの
でしょうか。
・(047) 老いの秋根気意欲のなき嘆く
老衰ということばを身近に違和感なく感じられるよう
になりました。老衰とどう向き合っていくか問われます。
・(059) 終活のメモに手入れす秋の夜 (1 点句)
いつまでも現役気取りでがんばらず、すっきり終わり
たいと思います。
・(062) 夜の秋ショパンの音色遠くから (1 点句)
ショパンのピアノ曲は、宇宙全体の宝物みたいに思い
ます。
・(065) 名月に稜線湖面冴え冴えと (1 点句)
東山魁夷的な世界を詠みたいと思ったのですが。
・(068) 夜の秋海の笑顔のよぎりゆく
夏の終わりの頃の海は少し怒っている感じでしょうか。
・(072) 蓑虫の唯我独尊風に揺れ (4 点句)
生き物たちの生き残り戦略のふしぎを感じます。
・(078) 駒東の浦島太郎秋うたげ
・(079) 秋の宵昭和レトロに老い忘れ (2 点句)
・(080) 秋の宵谷中の坂を千鳥足
小野寺さん関連の、女性二人を含むメンバーの飲み会
が谷中近くでありました。年老いた浦島太郎の群れが、
龍宮城の生活を懐かしがっている雰囲気でした。
・(082) 名月夜太鼓に躍る古代人
名月の夜、都会人としてはなにか縁遠い存在になって
しまいました。
・(086) 秋の夜寝返り続く老いひとり (2 点句)
昼寝のし過ぎなのか。明日、仕事がある訳ではないの
ですが。
・(091) 夜の秋別れの記憶遠き日々 (1 点句)
ほのかな夏の思い出というのは、いつまでも続くよう
です。
・(094) 名月に落ち武者仰ぐ妻や子ら
落ち武者が名月の夜、故郷を偲び彷徨っています。鬼
婆伝説をヒントにしました。
・(098) 蓑虫の夕陽背にする梢かな (1 点句)
こどものころ、遊び終わったあと、こんな風景があっ
たように思います。最近は本当に見ないです。
・(101) 月あかりすすきの原に銀の波 (2 点句)
すすきの穂がたくさん揺れる月夜のさまは幻想的だと
思います。
・(106) 対岸のにぎわいひそり名月夜
名月の夜の海岸にひとりたたずみ人の孤独感?
・(109) コロナ禍の秋に尾を引く後遺症
コロナ禍は、後遺症の方が怖い感じがします。地球上
の生命の多様性を実感させられます。
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