七句会 第10回 自由連句のみなさま
第三十六句目 (名残裏 挙句 春) を、豊さん、ありがとうございます。
おかげさまで、今回の連句も、約2 ヶ月にて満尾することができました。
感想、等ありましたら、2 月上旬ころまでにお願いします。
豊さんと相談して、適当な時期に今回の歌仙をレビューする場をもちたい
と思っています。参加は自由です。よろしくお願いします。
初折表
01 発句 秋 野佛の眠り起こすや稲光り (小野寺)
02 脇 月 夕月待てる旅人の群れ (吉良)
03 第三句 秋 枯れ尾花風に揺られて影永く (志方)
04 四句目 雑 表札掲げ終える引っ越し (豊)
05 月の座 夏 引退し数珠持ち巡る夏の日々 (深瀬)
06 折端 夏 老いた釣り人飛び跳ねる鮎 (平島)
初折裏
07 折立 雑 世界戦体操ニッポン目指せ金 (吉良)
08 二句目 恋 星の月夜に尽きぬ語らひ (小野寺)
09 三句目 恋 不意の雨相合い傘の二人にて (豊)
10 四句目 雑 同じ夢みたあのプーチンと (志方)
11 五句目 雑 許すまじ市民殺めし侵略者 (小野寺)
12 六句目 雑 軍拡費用危ぶむ福祉 (深瀬)
13 月の座 冬月 枯れ澄みた山河照らして冬の月 (平島)
14 八句目 冬 熱燗交わす露天の湯殿 (吉良)
15 九句目 雑 柏手の響く出雲に朝陽射し (深瀬)
16 十句目 雑 喜怒哀楽の人生なれば (豊)
17 花の座 花 彼岸ばな一輪一輪の顔ありし (吉良)
18 折端 春 花散る里に陽の光降る (小野寺)
名残表
19 折立 春 朧月いま遠山の上にあり (豊)
20 二句目 雑 冷気に醒めてすばる煌々 (志方)
21 三句目 雑 変わらぬは獣に変わる人の闇 (小野寺)
22 四句目 雑 碁盤はさみて闘う平和 (深瀬)
23 五句目 夏 蝉獲りを競った琵琶の木今はなく (志方)
24 六句目 夏 麦酒傾け亡き友思う (吉良)
25 七句目 雑 漆黒に浮かぶ地球の蒼さかな (深瀬)
26 八句目 恋 手に手を取りて夢の世界へ (豊)
27 九句目 恋 燃え盛る乙女心や西鶴忌 (吉良)
28 十句目 雑 故郷とほくこの道を征く (小野寺)
29 月の座 月 みちのくの旅の思い出萩の月 (豊)
30 折端 秋 稲刈り終えて田は遊び場に (志方)
名残裏
31 折立 秋 木枯らしの落ちゆく波止場霧笛哭き (小野寺)
32 二句目 雑 タワマンの子らゲームに浸る (深瀬)
33 三句目 雑 空狭く銀河も富士も今は消え (志方)
34 四句目 雑 広重たどり江戸を出立 (吉良)
35 花の座 花 過疎の村愛でる人なく花の咲く (深瀬)
36 挙句 春 こころ楽しき春ぞ待たるる (豊)
36の付け筋 (豊さん)
一月下旬、まだ冬の寒さの真っ最中です。早く暖かい春になってくれと待ち
遠しく思われます。挙句としてうまく収まるように付けてみました。
35の付け筋 (深瀬)
東京一極集中的な開発が進む一方、少子高齢化の流れは止まらないようです。
人間はなにを求めて動き回っているのでしょうか。
34の付け筋 (吉良さん)
大都会を脱出してさあ広重の東海道53次をたどろう。
33の付け筋 (志方さん)
黄昏時、久しぶりに新宿西口周辺をぶらぶらしておりました。中学生の頃、
まだ淀橋浄水場があったころ、このあたりで仲の良い友人たちとやはりぶらぶ
らした記憶が蘇りました。黄昏の空を背景に、富士の雄姿に帳が降り、天の川
など星空が観測できていた光景が懐かしい。摩天楼に囲まれた今の新宿は空気
も澱み、息苦しさが拭えません。
32の付け筋 (深瀬)
都内は超高層ビルが林立するようになりました。タワマンで育った子供たち
は、大人になってふるさとをどのように思い浮かべるのでしょうか。仮想空間
のなかを自由奔放に行き来する時代になっているのでしょうか。
31の付け筋 (小野寺さん)
30句目志方さんの田圃のガキの頃の思いでから、私の故郷は、岩手の港町釜
石ですが、明治時代からの幾度もの津波による震災で辛酸を舐めてきました。
港街は、秋も深まると荒涼とした海岸の向こう、木枯らしが吹き荒び、海猫の
声に時折鳴る外洋船の霧笛が、泣けとばかりに深い感慨を誘いました。。。ふ
るさとは遠きにありて、思ふもの、そして、哀しく、うたうもの。。なのかも
しれません。
30の付け筋 (志方さん)
恋の思い出から、年末途中下車した故郷のガキの頃の楽しみは刈り取られた
田んぼに刈られた藁くず、色んな遊びを懐かしく思いだします。今はスーパー
マーケットが建ち、当時の痕跡は跡形もありません。
29の付け筋 (豊さん)
萩の月は仙台の銘菓です。かつて仕事で仙台へ出張したときはいつも土産に
萩の月を買っていました。また、最近は他の人から土産として萩の月をもらう
こともあります。おいしいお菓子ですね。
28の付け筋 (小野寺さん)
26.27 と続いた恋の句から飛翔して、旅に病み、という芭蕉の枯れ野の夢に
憧れます。遠くふるさとを離れて歩んできた一筋の細い路は、枯れ野の先に続
いているかもしれません。人は皆永遠の旅人なのです。
27の付け筋 (吉良さん)
古今東西、世に残る恋物語は「やおやお七」など悲恋に終わるものが多いよ
うです。
26の付け筋 (豊さん)
恋する男女が、周囲の理解を得られずに幸せを求めて、二人だけの宇宙、夢
の世界へ旅立って行くのです。駆け落ちかもしれないし、心中かもしれません。
25の付け筋 (深瀬)
思いを過去から未来に馳せてみました。多くの人々が宇宙から地球を眺める
ようになると、国境などなくなっているのでしょうか。
24の付け筋 (吉良さん)
都市開発で子供のころの景色も人も全く変化し、寂しい限りです。郷里の駅
前の飲み屋で一杯やり、昔を懐かしむ心境。
23の付け筋 (志方さん)
故郷の停車場に途中下車して、幼少時蝉獲りに明け暮れた琵琶の林があった
はずの場所は確か天神様の裏にあったと、探し回ったのですが社ごと消え失せ
て、無味乾燥な広場になってしまったようです。何時も蝉を取りそこない、悪
ガキ仲間に馬鹿にされていたことをほろ苦く思い出しました。
22の付け筋 (深瀬)
囲碁は、盤上の石の生き死にをかけた非情な格闘技だと思います。しかし、
負けて終わったとしても、相手への敬意と自分の非力への自省の気持ちですが
すがしいものがあります。プーチンは柔道家とも聞いていますが、武士道的精
神はどう理解されているのか困惑してしまいます。
21の付け筋 (小野寺さん)
志方さんの大宇宙に輝く昴の瞬きを受けて、昔ロシアのシベリア鉄道で見上
げた、悠久の冬のオリオンは荘厳に時を刻んでおりました。悲惨な戦争を体験
したロシアの文豪トルストイやドストエフスキー達は、何故為政者が獣に変貌
して戦争に導いたかと糾弾しました。時を経て今ロシアを突き動かす者がこの
獣である事は、議論の余地がありません。歴史が繰り返される事の冷酷な現実
を我々は知らねばなりません。
20の付け筋 (志方さん)
新春の宵、ほろ酔い気分を覚ますように漂う冷気。ふと見上げると、こんな
都会にも多くの星座が輝いて宇宙の大パノラマを垣間観ました。
19の付け筋 (豊さん)
花が散った里が夜になりました。寝静まった里を山の上から朧月が見下ろし
ているのです。
18の付け筋 (小野寺さん)
彼岸花の群生は、秋の深まりの寂寥を誘いますが、春の寂寥の風景は山里に
散りしく桜吹雪が光となって舞い散る光景ではないでしょうか。
17の付け筋 (吉良さん)
人生の喜怒哀楽が一人ひとり変わるように、群生している彼岸花にも一輪ご
とに色々な表情を感じます。
16の付け筋 (豊さん)
朝陽に向かって柏手を打つのは、何か悩みごとがあって祈りもしくは願いご
とがあったのでしょう。煩悩があるからこその人間、人生ではないでしょうか。
15の付け筋 (深瀬)
夜の景色から、小泉八雲の描いた出雲の朝の風景に転じてみました。朝陽に
向かって柏手 (かしわで) を打ち拝む人間の姿です。
14の付け筋 (吉良さん)
平島さんの句から、昔蔵王温泉で、露天風呂につかりながらお燗を飲んだス
キー旅行の記憶がよみがえりました。
13の付け筋 (平島さん)
天然自然は休むことなく動いており木々は葉を落とし凛として立ち、河にも
澄んだ水が流れて人の世の些細な争いなど関係なく四季は巡り月は玲瓏と天か
ら清らかな光を地上に降り注ぎ照らしている。
人事が続いていますので天象に転じて見ました。
12の付け筋 (深瀬)
多様性を認めない自国ファーストの権威主義体制は、民主主義体制に多額の
軍事予算を突きつけます。こども支援、リスキリング、等も必要不可欠ななか、
赤字国債は膨らむ一方です。
11の付け筋 (小野寺さん)
志方さんのプーチンの夢を受けて、21世紀のこの時代にヒトラーさながら独
立国家を傲然と侵略する狂人が存在し、一年にならんとする今もって世界はそ
の侵略を止めきれずにいる。恐ろしい現実ですが、明日は我々に降りかからな
いという保証はありません。こころして生きるべきと思います。
10の付け筋 (志方さん)
アイアイ傘もいいけれど、恋も友情も入れ込みすぎるとおおやけどに注意。
09の付け筋 (豊さん)
星の月夜かと思っていたら、急にポツポツと雨が降ってきたのです。相合い
傘で肩を寄せ合う二人には、雨はむしろ嬉しいものでした。
08の付け筋 (小野寺さん)
跳び跳ねる若者のイメージを受け、喧騒の雑踏を離れて心震わせて語らう若
い恋人達を静謐な星月夜が包んでおりました。
07の付け筋 (吉良さん)
世代交代した日本の体操選手の、ピチピチして飛跳ねる若鮎のごとき活躍を
期待して。
06の付け筋 (平島さん)
旅の途次見た光景。田舎の清流で釣り糸を操るのは老人。一方飛び跳ねて泳
ぎ登リ行くのは元気な鮎。
05の付け筋 (深瀬)
引っ越しは転勤族の運命でしたが、引退したら、今度は巡礼の旅に心を洗い
ます。 (平島さんの「ここはただの夏の句でよく月は第二句で出ていますので
月は詠みこまなくて良いと思います。」を踏まえました。)
04の付け筋 (豊さん)
「旅人」「風に揺られて」という流浪のイメージを「定住」に変えてみまし
た。
03の付け筋 (志方さん)
陽ざしの文言が続いたので、山路の路傍に映えるすすきの影の揺らぐ様をよ
んでみました。
02の付け筋 (吉良さん)
地蔵様を醒ますような秋の嵐が過ぎて、美しい秋の夕月を待ちわびる旅人の
気持ちをよみました。
01発句自解 (小野寺さん)
京都を旅した折嵯峨野で秋の雷雨に逢った折一天俄にかき曇った空から刹那
に光った稲妻が野佛の顔を照らして1000年の眠りから目覚めさせたと感じたの
です。
深瀬 (事務方)
・補足 適宜、下記を参照いただければ幸いです。
七句会第10回自由連句の要領
http://nanaku-haiku.blogspot.com/2022/11/10.html
・七句会 第10回自由連句 レビュー会のご報告
七句会自由連句関係のみなさま
昨日 (2023年3 月3 日) は、第10回目の連句結果を踏まえ、小野寺さん、吉
良さん、志方さん、豊さんとともに、新宿でレビュー会を行うことができまし
た。
とはいえ、レビュー内容としては、平島さんの1 月28日付けのご指摘 (平島
さんからのご指摘 1) で言い尽くされているという合意のもとに、雑談に終始
してしまいました。
強いて反省するとすると、付け筋の説明がなくても連句の醍醐味を味わえる
ようになることを目指すというものでしたが、一足飛びには無理だろうとして
、意識して工夫していくということになりました。
ご多忙のなか、ご参加、たいへんありがとうございました。
今後とも、よろしくお願いします。
深瀬
追記
3 月3 日のレビュー会の後、平島さんから、下記の「平島さんからのご指摘
2 (23.03.05) 」の追加のご連絡がありました。
○平島さんからのご指摘 1 (2023.1.28)
深瀬さん
皆さん
今回はお声を掛けて頂き2 句参加出来また私事ながら孫が大学に受かったニ
ュースもありまして忘れがたい興業となりました。
有難う御座いました。
気なった点を下記します。
1)17花の座 吉良さんの句では彼岸花となっていますがここは賞翫の花(
連歌では桜に決まっていました)であるべきで彼岸花は秋の季語でしかも狐花
とか死の花とか縁起の悪い花に分類されておりますので今後は気をられたら良
いと思います。
2)18の小野寺さんの花は場所をずらせたと言えばそれまでですがここは単
なる春の句で良かったと思います。
3)19 朧月はやはり月であり歌仙の場合2花3月が原則でこれでは4月と
なり月の出番が多すぎるきらいがあります。
4 )27の西鶴忌 34の広重 江戸時代の有名人 二人はちと行き過ぎの感あり
。固有名詞は便利だけどインパクトが強すぎて逆に句想が貧弱になります。
5 ) 23今はなく 33今は消え 35愛でる人なく失われたものを懐かしがり恋し
がる気持ちはわかります。述懐 無常よりも36歩前へ前へが芭蕉の精神です。
お忘れなく。
言いたい事を言わせてもらいました。
ヨーロッパは寒いですがここはマイナスにはなりません。ここポルトガルは
今日日中は13度でした。東京は歴史的な寒さの様で皆さんどうぞご自愛くださ
い。
平島道彦拝
○平島さんからのご指摘 2 (23.03.05)
もう一度ゆっくりと見直しましてこんな感想が出て来たので報告します。
表六句は穏やかに詠むべしで神祇釈教恋無常などは避けるべしとあります。
発句の「野佛」5 句目の「数珠」は厳密に言えば少し抵触するかなぁと思い至
りました。
蕉風連句の目指した軽みと言う視座から見回して見ますと未だ重厚長大感な
きにしもあらずでこれもこれからの課題かなと感じました。
でも大事な事は皆でワイワイガヤガヤ愉しく遊ぶ事ですから今の調子で続け
られると良いと思います。