七句会のみなさま
第四十二回の選句結果を踏まえて、感想や自句自解、等をおよせいただき、
たいへんありがとうございました。
およせいただいたものを、作品集とともに、名前順に、ほぼそのまままとめ
てお届けします。
今後のやり方に、ご意見、等ありましたら、よろしくお願いします。
七句会のweb http://nanaku-haiku.blogspot.jp/ にも掲載してあります。
今後とも、よろしくお願いいたします。
深瀬 (事務方)
1.第42回 ネット句会 作品集
(01) 桜子さん
曜変天目を見ましたが、青の輝きに引き付け
られました。
・国宝の碧の深さの神秘なり
冬休みは幸せでした。
・目を閉じて浮世忘れる寝正月
年末に近所のお宅の窓ガラスを拭く女性を見
かけました。伝統的な大掃除がいいと思いま
した。
・雑巾でサッシを拭く嫁古き日本
7日を過ぎてからセールに行っても残り物ば
かり…。残り物には福がある…を信じて足を
運びます。
・松過ぎて最終セールの運試し
本格的に朝の通勤ラッシュも戻って、忍耐の
日々が始まります。
・松過ぎて通勤電車に耐える日々
初場所は着物で来るご婦人が多いですから、
美しい女性を拝見する場所でもあります。
・初場所や着物姿の美人ショー
初場所は、晴れ晴れしいですが、現実は寒く
て雪がちらつく日もあります。
・初場所の東京の空うすら雪
今年はどこへ行こうか心が弾みます。
・ウキウキと旅行支援の紙めくる
近所の梅が咲いたので、見たくて通勤も遠回
りをします。
・家を出て早梅見たさに遠回り
都会にある山王坂ですが、清い風が吹き抜け
ます。
・青い空清い風吹く山王坂
年賀状は神様が、新年のお福を運ぶと良いで
すね。
・福の神幸せ運ぶ賀状かな
(02) 小野寺さん
・陽あたりて餌場のメジロ春を待つ
・夜鳴き蕎麦屋台の空に月のあり
・吹雪舞ふ波止場の汽笛風に消え
・夜鳴きそばふるえた声が集まりて
・亡き人の形見の雪か降り止まず
・月光に黒く枝張り冬木立ち
・冬の蜂夕陽に長き脚を垂れ
・冬晴れに恃みて高き杉木立
・炭はぜて夕餉の匂ひ外は雪
・埋み火に過ぎし縁 (えにし) の影燃やし
・墨青く匂ひて朝の雪景色
・小夜時雨行燈の火に髪揺れて
・寒椿この世の憂きを知らで咲き
・侘助が秘めて咲きをり古都の宿
・凍土に牡丹の花芽赤く棲み
・木枯らしの落ちゆく波止場霧笛哭き
・百舌鳥 (もず) 鳴きて鎮守の森に帷 (とばり) 降り
・冬霞百舌鳥 (もず) 高く鳴き陽はくれて
・寄せ鍋の湯気やはらかに母の味
・まばたきて夜寒の翳を仕舞ひけり
・墨にほふ降り積む雪の温かし
(03) 吉良さん
冬の鎌倉瑞泉寺にて (5 句)
・朝靄(もや)に群れ語り合う水仙花
・庫裡暗く蠟梅ほのかに香りけり
・霜柱門前の石飛び散らん
・寒梅や苔むす枝に花光る
・寒椿仏の顔の悟りあり
(04) 桑子さん
・飲み・歩きコロナ陽性寝正月
・初春や富士に願掛け初ショット
・目が醒めて目が醒めてなお冬の夜
・寒鴉頭上に集うごみ出し日
・寒風に足取り急かし丸の内
(05) 志方さん
・碧き空風が軋ます冬木立
・初富士をあと幾だびか拝めるか
・瀬戸の海尽きせぬ思い車窓から
・渡り鳥凍てつく湖面一休み
・稜線を雲と朱に染め初日の出
・今年こそ心おきなく花見酒
・年賀状まだ飲んでるか問い交す
(06) 治部さん
年末年始に金沢に旅行しました。生憎の天気
でしたが、時々晴れ間もありました。その時
の3 句。帰ってからの2 句。 (5 句)
・バイキング思いもよらず雑煮かな
・能登の海岩打つ波や虎落笛
・冬虹や雲間に出ず消ゆ日本海
・七福神巡る利益や鷹の舞
・お焚き上げ大國魂神社で蕎麦
(07) 中津川さん
・ふぐ鍋や三河日間賀の海は残照
・賀状書き加える文の悩ましき
・コロナ癒え元日の空いちめん青
・孫そろい冷凍お節も馳走なり
・めでたきや街道踏破は松の内
・命日の墓参寒梅は紅(あか)
・WBC選手決まりて春隣り
(08) 服部さん
皆で初日の出を見に行ったときの事
・初日の出初屁する孫頬染めて
11月ごろ山形の山寺に登った時
・山寺や靴に染み入る雪の道
・老いるとは冬の痒さに耐える事
・隣家よりよき塩梅の沢庵が
・新春のホールインワンは想定外
(09) 柳町さん
・ペダルこぐ足元に咲く蕗の薹
私は、趣味としてミニSLを走らせています
(5年かけて製作しました)。先日の運転会
で吹き上がる蒸気の向こうに白梅がかすんで
見えるところを詠んでみました。
・SLの蒸気にかすむ白梅や
(10) 豊さん
・洗顔の水の痛さや寒の入
・新聞が冷えてポストに冬の朝
・赤い目を最後に入れて雪兎
・除雪車の轍の跡や北の街
・冬眠の獣目覚める日和かな
・凍鶴は一声鳴いて動かざる
・冬過ぎて攻勢に出よウクライナ
(11) 深瀬
・歳末の人出なつかし昭和の世
・年の瀬の一人ひとりの区切りかな
・年の瀬に街路で仰ぐ青き空
・断捨離の悔いをこころに年の暮れ
・フィニッシュこそ大事と聞かす年の暮れ
・年の瀬を病院通いで予定埋め
・初場所の櫓太鼓につくね食べ
・初場所のテレビ桟敷でビール飲む
・初場所のうっちゃり応援背筋のび
・松過ぎの図書館で食うカツカレー
・松過ぎて世情波音さらに増し
・避寒地の図書館埋める老人会
・青き空澄んで厳しき寒気かな
・自室にて座禅まねごと朝茶飲み
・地球の美いく億年の鑿 (のみ) の跡
・団塊も後期の門に乱れ入る
・セルフレジ使いこなして誇らしげ
・不都合を覆い隠してポピュリズム
・世の流れ自由か専制か自明では
・フレイルの行く先みすえ舵握る
・駒カフェの中一 (ちゅういち) の顔なにか懐かし
・蟻地獄かつて遊びし縁の下
・コロナ禍の三年間の老ひ深し
・なにげない写真に浮かぶ老いのかげ
2.第42回 ネット句会 感想と自句自解
◎ 小野寺さんの自句自解
・01 4点句 033 寄せ鍋の湯気やはらかに母の味
子供時代も帰省の時も慎ましやかな団欒の寄せ鍋は母の得意料
理でした。全く意識しませんでしたがyose Yuge Yahatayaのヤ行
の音が心地よい 味覚 触覚 視覚 が働いている、という平島
さんのご指摘は、ありがたいです。
治部さんのご指摘の様に 良い人生を送ってきたと、感謝です。
・02 4点句 040 侘助が秘めて咲きをり古都の宿
豊さんの静かで静謐な雰囲気に浸りましたが、平島さんのご指
摘の通り遠い昔ですが危ない時代も超えてきました。
・03 3点句 024 埋み火に過ぎし縁 (えにし) の影燃やし
埋み火に灰をかけながら燃やしたいのはいつまでも断ち切れな
かった未練の数々でした。男はというか自分は弱い生き物です。
・04 2点句 009 寒椿この世の憂きを知らで咲き
治部さんのご指摘の通りです。現世は次つぎに憂き事の連続で
す。辛いこの世に一喜一憂せずに、生きてゆきたいものです。厳
しい寒風の中に凛と咲く真紅の寒椿の強さは如何ばかりではあり
ませんか。
・05 2点句 050 吹雪舞ふ波止場の汽笛風に消え
平島さんのご指摘には恐れ入ります。Fu ha .Kitsuki Kaze
kie 吹雪の波止場、もの悲しげな汽笛の音が消え消えに風の音に
かき消されてゆく、少年の日の凄まじい、風景は目と耳、全ての
五感を消し飛ばす程にしっかりと脳裏に刻まれておりました。
・06 2点句 085 墨にほふ降り積む雪の温かし
部屋の中で硯をすり文を書いておりますと外の世界の寒いはず
のボタン雪が墨の香りに包まれて、温かいと感じたのです。吉良
さん、治部さんの通りです。
・07 2点句 089 亡き人の形見の雪か降り止まず
友の葬儀の雪の夜、生きたかったであろう、切々とした深い哀
しさが胸をしめつけ、切れ目なく、雪となって降り積むようでも
ありました。
・08 1点句 007 炭はぜて夕餉の匂ひ外は雪
夕餉の支度は炭のはぜる音に始まり味噌汁の匂いが一緒になり、
外はチラチラと粉雪ながら、慎ましい団欒の風景でした。
・09 1点句 021 凍土に牡丹の花芽赤く棲み
真っ黒な凍土に晩春に咲く牡丹の花芽は固く紅い生き物の様に
霜柱にも耐え密かに生命を蓄えている様でもありました。
・10 1点句 055 木枯らしの落ちゆく波止場霧笛哭き
吹き荒れた木枯らしの落ちゆく先は波止場の波濤の先、霧笛が
泣けとばかりにくぐもりの響きを風に晒しておりました。
・11 1点句 057 月光に黒く枝張り冬木立
吉良さんのご指摘の通り冬の澄んだ空にかかる白い月の明かり
が、冬木立の地強い枝えだを黒々と浮かび上がらせておりました。
・12 1点句 068 小夜時雨行燈の火に髪揺れて
冬の時雨の夜、行燈の火に揺れる乱れ髪は幻想的な風景の一コ
マでもありました。
・13 1点句 071 冬の蜂夕陽に長き脚を垂れ
冬の日の夕暮れ、足長蜂は静かにその長い脚を垂らしながら、
夕陽の中を消えてゆきました。
・14 1点句 075 百舌鳥 (もず) 鳴きて鎮守の守りに帷 (とばり)
降り
鎮守の森で鋭い声で鳴く百舌鳥の鳴き声は鎮守の森の守り神の
様でもあり、おりしも全てを包み込みながら夜の帷が降り始めて
おりました。
・15 1点句 091 冬霞百舌鳥( もず) 高く鳴き陽は暮れて
冬霞の寒い日、百舌鳥が一声高く鳴き落日の光に、消えて行く
様でもありました。
・161点句 098 墨青く匂ひて朝の雪景色
硯で墨を擦る冬の雪の朝胸一杯に吸い込む墨の匂いは心地よく
青い墨は外の白い雪景色に鮮やかな黒を演出したのです。
絵画展と立て込んだ仕事の合間に投句の期限を延ばして頂き投
句した、21句の中で16句も皆さまの心に響く句があった事は望外
の感激でした。
◎ 吉良さんの自句へのコメント
自句自解は特にありませんが、鎌倉駅からバスで10分ぐらい
の瑞泉寺は訪れる人も多くなく、落ち着いた小さな寺です。そこ
での冬の花の様子を読んでみました。
◎ 桑子さんの自句自解
・(005) 目が醒めて目が醒めてなお冬の夜
7点ももらって恐縮です。頻尿の現況を読みました。毎夜何回
も起きてトイレに行く、冬の夜は寒くて長い、まだ明けないのか
と、どちらかというと長い方に重点をおきました。
・(017) 飲み・歩きコロナ陽性寝正月
いわゆるハシゴ酒で飲み歩いているのではなく、飲む(会食)
と歩き(ウォーキング)は別々の行動で、「・」をいれてそれを
表したつもりです。勿論それぞれ感染対策はしていましたがコロ
ナにかかってしまいました。
◎ 服部さんの自句自解
・(066) 初日の出初屁する孫頬染めて
1 桑子 孫は女の子ですか。愛いらしい光景が目に浮か
びます。我々年寄りは所かまわず、恥も外聞もな
く放屁します。
放屁したのは小6 の男の子でした。母親が匂いで気づきました。
この件を冬休みの作文宿題に書いていて、又笑ってしまいました。
◎ 豊さんの自句自解
・凍鶴は一声鳴いて動かざる
小野寺さん、吉良さん、お二人のみごとな鑑賞のとおりです。
・新聞が冷えてポストに冬の朝
冬の朝ポストに新聞を取りにいったら、新聞が冷たかったとい
う句なのですが、「取りに来られるのを新聞が待っていた」と解
釈されてしまう欠点があったかもしれません。
・洗顔の水の痛さや寒の入
寒の入りの寒さを洗水の水の冷たさで感じたのです。そこそこ
の句ではないでしょうか。
・冬眠の獣目覚める日和かな
冬眠していた獣が目を覚ますほど、日差しに春らしい暖かさが
出てきたのです。
・除雪車の轍の跡や北の街
大雪に悩まされる北国の人たちの苦労を思いました。
・冬過ぎて攻勢に出よウクライナ
ウクライナ戦争、いつまでつづくのでしょうか。冬の間は思う
ように戦えなかったウクライナが力を取り戻してロシアを撃退す
ることを期待しています。
・赤い目を最後に入れて雪兎
降りつもった雪を固めて兎の形を作ったのです。目に南天の赤
い実を入れて。今年の干支の兎にちなんで詠んだのですが、うま
く伝わらなかったようです。
◎ 深瀬の自句自解
・(002) 初場所のテレビ桟敷でビール飲む
・(006) 松過ぎの図書館で食うカツカレー
1 桑子 「食うカツカレー」という表現が正月料理に飽
きて日常生活に戻った様子がよく表されていると
思います。
国会図書館3Fのレストランのカツカレーはなかなかだと思いま
す。
・(010) 駒カフェの中一 (ちゅういち) の顔なにか懐かし
60年の年齢差を飛び越して向き合うとなにかふしぎな気持ちに
なります。
・(016) 自室にて座禅まねごと朝茶飲み
藁半紙の束を12cmくらいにして輪ゴムで固めたものを腰に敷く
と半跏趺坐でも背筋を伸ばしてらくに座れます。
・(020) 団塊も後期の門に乱れ入る
1 豊 後期高齢者という言い方がなんとも不愉快です
ね。仕方ないけど。
後期高齢者ということばをはじめて聞いたとき、お役人的発想
に不快感を覚えましたが、75歳を過ぎるとなにか納得してしまい
ます。
・(028) 年の瀬に街路で仰ぐ青き空
年の瀬の雑踏からやや浮いている存在です (いつも?)。
・(036) 蟻地獄かつて遊びし縁の下
1 小野寺 我々子供の頃は遊びの一つは自然と向き合うこ
とでしたね。蟻を落として、中にいるウスバカゲ
ロウの幼虫を捕まえたりしてました。
子供のころの自宅の縁の下でよく目にしました。いま思えばお
そろしい光景だと思います。
・(041) コロナ禍の三年間の老ひ深し
1 志方 実感。
この年齢になる老化が加速度的に進みます。久し振りに会うの
がややおそろしく感じたりもします。
・(043) 初場所の櫓太鼓につくね食べ
子供のころ、お相撲を見に行ったときつくねが食べられるのが
たのしみでした。
・(049) 青き空澄んで厳しき寒気かな
・(051) 避寒地の図書館埋める老人会
暖房費の高騰を思えば、かしこい選択のようにも感じます。
・(053) 歳末の人出なつかし昭和の世
1 志方 歳末の懐かしい雑踏を思い出します。
みんなでがんばろうの昭和の雰囲気、なつかしくもありどう反
省すべきか考えさせられます。
・(058) なにげない写真に浮かぶ老いのかげ
自分は普段こんなに腰が丸くなっていたのかと気がつかされま
す。
・(061) フィニッシュこそ大事と聞かす年の暮れ
一つひとつけじめを付けることが大切だと最近思います。究極
は死ぬときだと思います。
・(063) 不都合を覆い隠してポピュリズム
ポピリズムの人達は威勢がよいですが、なにか危ういものを感
じます。
・(067) 地球の美いく億年の鑿 (のみ) の跡
1 中津川
地球上にはさまざまな絶景がありますが、その形成には数千万
年という時間が必要であったことに思いを寄せてみました。
・(070) フレイルの行く先みすえ舵握る
老化の進行を日々感じていますが、弱気すぎず、強気すぎず注
意していきたいと思います。
・(072) 初場所のうっちゃり応援背筋のび
1 治部 体験句、状況がよく伝わります。何だか自分が
相撲を取っているようで土俵際思わず背筋が伸び
ます。春夏秋冬どの場所(季節)でもよいところ
がどうかな?
うっちゃりというのは相撲ならではの技で興味深く感じます。
・(083) 松過ぎて世情波音さらに増し
1 豊 時事俳句として完成されていますね。全く同感
です。
民主義国家と権威主義国家の対立は、地球社会の今後をどう左
右するのでしょうか。
・(087) 年の瀬を病院通いで予定埋め
ここまで病院通いが日常的になるとはかつて予想もしていませ
んでした。
・(090) 年の瀬の一人ひとりの区切りかな
1 吉良 毎年実感される心境です。
区切りの付け方というのは、たぶん一人一人みな違うのではな
いかという気がします。自分なりの工夫が必要なのだと感じます。
・(092) 世の流れ自由か専制か自明では
ロシアや中国のような専制国家が権勢を振るうことに危機感を
覚えます。一方、米国の分断社会化傾向や日本の民主主義がどこ
まで根付いているのかなど心配になったりします。
・(096) 断捨離の悔いをこころに年の暮れ
1 中津川
2 橋本 なかなかですか、往生際悪いんですね。
3 服部
部屋のなかの整理はいつも念頭にあり、介護施設に入るときに
持って行ける範囲にと思ったりします。貴重なものを捨てたと後
悔する? ないと思います。
・(099) セルフレジ使いこなして誇らしげ
1 志方 アナログ人種にも差別なく。
昼食用のサンドイッチとかかんたんな買い物のときは、セルフ
レジでバーコードを読み込ませて買うようにしています。
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