2024年3月11日月曜日

七句会 第46回 ネット句会 感想と自句自解

 七句会のみなさま


 第四十六回の選句結果を踏まえて、感想や自句自解、等をお寄せいただき、

たいへんありがとうございました。

 およせいただいたものを、作品集とともに、名前順に、ほぼそのまままとめ

てお届けします。

 今後のやり方に、ご意見、等ありましたら、よろしくお願いします。

 七句会のweb  http://nanaku-haiku.blogspot.jp/ にも掲載してあります。

  今後とも、よろしくお願いいたします。

  深瀬 (事務方) 



1.第46回  ネット句会  作品集


(01) 秋元さん

・時過ぎて足尾の街は冬枯れて

・渓流の小滝の姿名を残す


(02) 小野寺さん

・絵硝子の吹雪の向こう紅き薔薇

・年の背の支度に母はたすき掛け

・夜廻りの拍子木の音雪が呑み

・紅葉葉の降り積む音に朋は逝き

・星流る寒さ忘るる冬銀河

・祖父の骨埋めし山は雪の中

・長々と出船の霧笛雪の宵

・吹雪やみ街屋の屋根に月冴ゆる

・冬紅葉落日の山うかびたり

・粉雪の舞い散る坂で別れけり

・情念の橋渡り来て修羅の雪

・父と汲む熱燗香ほる帰省の夜

・柚子薫る妻の雑煮で年が明け

・梟がふわりと止まり杉の月

・小夜時雨ゴメ (海猫) 啼く波止場汽笛鳴り

・柚子湯してほのかに髪の匂ひけり

・野佛の翳に一輪寒椿

・寒月の光に浸かる露天の湯

・野佛や朽ちし墓標に初時雨

・父還る番屋ですする夜泣き蕎麦

・銀漢や遠賀川なる母の里

・冬至の夜父子で湯ぶねを溢れさせ


(03) 吉良さん

・湯豆腐や泡音友に一人酒

 鎌倉の散策で (4 句) 

・切通し亡者の声か冬の風

・初詣黄金夢見る銭洗い

・枯葉舞う子リス飛び跳ねカクレンボ

・日脚伸ぶ路地裏奥の垣の影


(04) 桑子さん

・ピロピロンお屠蘇気分をぶっ飛ばし

・大川の流れに抗す鴨は二羽

・あの人もゴルフ初めの五日かな

・福詣谷中銀座で一休み

・大寒もマスク帽子の散歩かな


(05) 志方さん

・讃岐路のど越し確か釜揚げや

・備讃瀬戸島影薄し雪舞いて

・白鷺が浮かぶ黄昏城下町

・玄海のわたりゆく風海千鳥

・湯煙と阿蘇の山脈雪化粧

・三十年 (みとせ) ぶり変わらぬ友の懐かしさ

・菅公の想い伝わる梅枝かな


(06) 中津川さん

・襟立てて石仏参る女(ひと)一人

・迷いつつ今年で最後と賀状書く

・紅葉散る城址見下ろす廉太郎

・ジャンボ籤年の瀬毎に夢を追う

・大寒や派閥解散偽装かな

・冷凍便今年も頼り節(せち)並ぶ

・孫受験神仏はしご初参り


(07) 橋本さん

・山茶花の紅揺れメジロ見え隠れ

・ブルーベリー紅葉は庭のナナカマド

 新型コロナ収束後、田舎の実家で再開した餅つきに出かけて (2 句) 

・賑やかに実家の餅つき十九人

・餅つきや野菜も一緒の帰車の中

・初詣戻れば頻脈( 拍) 失せており

・正月の咲きし白ばら香もほのか

・元日や能登半島地震の辛さかな


(08) 服部さん

・携帯を無くす師走の慌ただし

・おのこ孫正月毎に色気づき

・被災地に冷たい雨雪痛ましく

・コンビニに続く足跡朝の雪

・能登地震飛行機事故と正月は


(09) 柳町さん

 この歳になってもやめられないスキーを詠んでみました。(3句) 

・膝痛を痛打やスキーの爽快さ

・老骨に打ち勝つ術のスキーかな

・春未来白のぬくもり雪の色


(10) 豊さん

・災害の悲しみ深し能登の雪

・あでやかに成人の日の晴れ着かな

・雪帽子かぶりて黙す石地蔵

・寒の入入浴剤を買い足しに

・大寒の寺鐘の音透き通る

・初場所や勝負の果ての乱れ髷

・豆まきや鬼追う園児たちの声


(11) 深瀬

・神棚に朝日さしこむ初稽古

・認知症ぼやく賀状に頷けり

・年賀状やめどき意識かすむ文字

・青空に白雲の筋冬の冬

・晴れわたり雲ひとつなき冬の空

・図書館の暖房に寝る老いひとり

・老いひとり優先席に冬陽受け

・着たきりのとっくりセーター毛玉とる

・寒空に茫然自失瓦礫山

・冬の朝こずえくっきり朝日背に

・シャンソンにワインひとくち冬の夜

・タワマンのエレ前ラッシュ松明けて

・昼呑みに老いし旧友冬憩う

・昼呑みのてんぷら談義冬忘れ

・集団でいがみ合うひと個はどこに

・帰らざる七十五年すでに生き

・座し思うあと幾年のいのちかな

・生き死ぬる意味を自問す人として

・自然生む男女の相違その巧緻

・直進す時の流れに疑義を持ち

・月面を身近に生きる老いのいま

・細胞の老化の意味に神思う

・交差点赤にダッシュの老勇姿

・みな同じそれでめでたし小学校

・過激化す地球沸騰夏思う

・止まらない科学の進歩また加速

・ポピュリズム自国ファーストなにを生む

・MAGAの声日本動乱ひたひたと

・他人ごと?気候難民やまとの地

・さまざまな筋肉ゆるみ老い自覚



2.第46回  ネット句会  感想と自句自解


◎  小野寺さんの自句自解、感想


  7 点句

(046) 寒月の光に浸かる露天の湯

  信州の宿、冬の月を眺めながらゆっくりと冷気の中で入る露天風呂はキラキ

ラと輝く月の光に浸かるようで、日本人に生まれた幸せを噛みしめました。


  5 点句

(001) 柚子薫る妻の雑煮で年が明け

  下着を全て新しく変えて新酒の屠蘇で新年を祝い家族息災で迎える妻の雑煮

は柚子の香りに包まれて温かな気持ちのスタートとなりました。


  4 点句

(064) 星流る寒さ忘るる冬銀河

 満天の冬の夜娘と流星群観察の為ベランダに寝袋を敷き眺めた折突然光の尾

を引く流れ星に歓声を上げ、寒さを忘れました。

 平島さんご指摘の  nagaru  wasururu  は結果的になめらかに冬の天体ショ

ーに引き込まれました。


  3 点句

(031) 夜廻りの拍子木の音雪が呑み

 我々の子供時代は全国的に [日の用心] を拍子木を打ち鳴らしながら当番で

夜廻りをしました。シンシンと降り積む雪の中拍子木の音が雪に呑み込まれて

耳が痛くなる寒さでした。


  3 点句

(053) 柚子湯してほのかに髪の匂ひけり、

 吉良さん、中津川さんの通り冬至の風習の柚子湯は冬の夜の楽しみでした。

柚子湯の香りが鼻腔をくすぐりました。


  3 点句

(081) 銀漢や遠賀川なる母の里

  平島さんの解説の通りです。ginn kann onn の畳み掛け天と地の遠賀川を歌

いながら望郷の念をこめて母の里で締める。壮大な叙情詩としました。

  母の里は自分の郷愁でもあります。治部さんや豊さんの共感もありがたい。


  2 点句  

(015) 野佛や朽ちし墓標に初時雨

  京都嵯峨野から東福寺に向かう道すがら野佛のそばに朽ち果てた墓標があり

、折りしも初時雨が墓標を濡らし始めこの世の無常を感じさせるひとときでし

た。


  2 点句

(036) 長々と出船の霧笛雪の宵

  治部さんのご指摘の通りこの様な港の光景はなかなか見られなくなりました

。これは小生の記憶の中にある三陸の釜石の港町の降りしきる雪の中で消え消

えに響いた出船の霧笛です。

 宮澤さん、だから小生は八代亜紀の舟唄が大好きでした。


  2 点句

(049) 梟がふわりと止まり杉の月

  平島さん、豊さんのご指摘がありがたい。FuクロウがFuわりととやわらかく

、尖った杉の木立にかかる月か少し鋭く冴えて対称の妙あり、と作者として感

服です。


  2 点句 (059) 情念の橋渡り来て修羅の雪

  豊さんの解説、高倉健の任侠映画の最後の場面  降る雪の中、命を掛けて殴

り込みに行くのです。

 作者の発句を見事に推測されてます。情熱で走った最後には決まって命懸け

の修羅場があります。


  2 点句

(073) 吹雪やみ町屋の屋根に月冴ゆる

  治部さんの感想の通りです。真冬の吹雪が吹き荒れたあとはふと見上げた町

屋の空に白く月が光り輝き自分の心も冴えわたる気がしますね。


  2 点句 

(091) 冬至の夜父子で湯ぶねを溢れさせ、

  今となってはもっと声をかけて話せば良かったと悔恨の気持ちが自分を責め

ます。冬至の夜父と一緒に入り湯船を溢れさせた父の温かい優しさが浮かんで

きます。


  1 点句 

(021) 冬紅葉落日の山うかびたり

 橋本さんの解説の通りです。西日が当たると冬紅葉の山はスポットライトを

当てたように黄金虫に輝くのです。

 全山朱や黄色に染まる秋の紅葉と違い枯れる前の冬紅葉は風情があります。


  1 点句 

(086) 野佛の翳に一輪寒椿

 苔寺、西方寺の参道への道端に佇む野佛の翳に咲く寒椿の紅はひときわ野佛

の存在を引き立たせておりました。


  1 点句 

(098) 絵硝子の吹雪の向こう紅き薔薇

  ステンドグラスの外は吹雪模様、色ガラスの光を通して一面の白い風景の中

に咲き遅れた薔薇が一輪凛として吹雪に抗しておりました。


  感想

  絵画活動の個展の制作が重なり締め切りを延ばしていただき心に響いた記憶

の引き出しから短い時間の中で紡ぎだした俳句でしたが多数の皆様の共感を頂

き望外の感激でした。



◎  豊さんの自句自解


(002) 雪帽子かぶりて黙す石地蔵 

  降った雪が石地蔵の頭に積もっています。地蔵は悟りの境地にあるので雪も

寒さも感じることがないのです。


(011) 大寒の寺鐘の音透き通る 

 小野寺さんの鑑賞のとおり、大寒のさえざえとした空気の感じを詠んでみま

した。


(016) あでやかに成人の日の晴れ着かな

 用事があって駅前にでかけたとき、成人式帰りの晴れ着姿の女性グループを

見かけて、ああ若いというのはいいなあと思いました。


(051) 初場所や勝負の果ての乱れ髷

 土俵の上で力士は全力でぶつかり合います。整えていた髷が乱れるほどに。

それが相撲のおもしろさです。


(061) 災害の悲しみ深し能登の雪

 元旦そうそうの能登大地震には本当に驚きました。潰れた家の下敷きになっ

て亡くなった人もたくさんいました。合掌です。


(093) 豆まきや鬼追う園児たちの声

 節分の豆まき、幼稚園では鬼に扮装した先生を園児たちが追いかけるのです

。一票ぐらいは入ると思ったのですが、意外でした。


(097) 寒の入入浴剤を買い足しに 

 寒の入りを迎えて、これからさらに寒くなるので、体を暖める入浴剤を多め

に備えておこうと思ったのです。それがうまく伝わらなかったようです。



◎  深瀬の自句自解


(004) シャンソンにワインひとくち冬の夜

 最近、シャンソンのなにか成熟した世界に引き込まれています。


(007) 老いひとり優先席に冬陽受け

 最近は、優先席に躊躇なく座るようになりました。


(009) 座し思うあと幾年のいのちかな

 静座は精神衛生的によいと感じています。


(014) 昼呑みに老いし旧友冬憩う

 2 月に御徒町の吉池食堂で同期5 人で昼のみをしました。


(017) 青空に白雲の筋冬の冬

  真冬の青空に、刷毛で掃いたような白雲はなにか印象的です。


(020) 神棚に朝日さしこむ初稽古

  相撲の稽古場の気迫にあふれた朝をイメージしてみました。


(022) ポピュリズム自国ファーストなにを生む

  自国優先の機運が盛り上がっていますがどうなるのでしょうか。


(025) 冬の朝こずえくっきり朝日背に

  やや詠み方の工夫が足りない感じです。


(032) 月面を身近に生きる老いのいま

  アルテミス計画など月面基地もそう遠くはなさそうです。


(037) 交差点赤にダッシュの老勇姿

  なにかみっともない走り方をしていると思います。


(039) 生き死ぬる意味を自問す人として

  76歳になり自分の死を身近に思うことが多くなりました。


(042) タワマンのエレ前ラッシュ松明けて

  想像です。タワマンのエレベータはAI制御なのでしょうか。


(045) 年賀状やめどき意識かすむ文字

  最近、帯状疱疹の後遺症で眼が日常的に気になっています。


(050) みな同じそれでめでたし小学校

  集団主義、規格化教育からどう抜け出していくのだろうか。


(056) 過激化す地球沸騰夏思う

  二酸化炭素で覆われた灼熱の金星のようになっては困ります。


(058) 図書館の暖房に寝る老いひとり

  大学等の図書館は、広々としているので老後の居場所として快適です。


(060) 直進す時の流れに疑義を持ち

  時間の戻りのない直進性とはなんなのか気になっています。


(063) 他人ごと?気候難民やまとの地

  日本は移民や難民を厳しく制限していますが…。


(066) 寒空に茫然自失瓦礫山

  自然災害であれ、戦禍であれ、人間の営みのことを考えさせられます。


(068) 昼呑みのてんぷら談義冬忘れ

  昼呑みしながら、同級生のこういう話を聞くと引き込まれます。


(071) 集団でいがみ合うひと個はどこに

  戦争は個を消し去る典型のように感じます。


(074) 細胞の老化の意味に神思う

  アポトーシスとかオートファジーとか誰が設計したのでしょう。


(076) 認知症ぼやく賀状に頷けり

  認知症は次第に身近な脅威になりつつあります。


(078) 自然生む男女の相違その巧緻

  身近でありながらよく分からない不思議の一つです。


(083) 止まらない科学の進歩また加速

  人間と同じように学ぶ深層学習は人間を凌駕して当然かもしれません。


(087) さまざまな筋肉ゆるみ老い自覚

 筋力の衰えを日々自覚しますが、鍛練する気力が湧いてきません。


(089) 晴れわたり雲ひとつなき冬の空

 真冬の透き通った真っ青な空をみるとなにか気持ちが引き締まります。


 七句会のみなさま

 

 第四十六回の選句結果を踏まえて、感想や自句自解、等をお寄せいただき、

たいへんありがとうございました。

 およせいただいたものを、作品集とともに、名前順に、ほぼそのまままとめ

てお届けします。

 今後のやり方に、ご意見、等ありましたら、よろしくお願いします。

 七句会のweb  http://nanaku-haiku.blogspot.jp/ にも掲載してあります。

  今後とも、よろしくお願いいたします。

  深瀬 (事務方)

 

 

1.46  ネット句会  作品集

 

(01) 秋元さん

・時過ぎて足尾の街は冬枯れて

・渓流の小滝の姿名を残す

 

(02) 小野寺さん

・絵硝子の吹雪の向こう紅き薔薇

・年の背の支度に母はたすき掛け

・夜廻りの拍子木の音雪が呑み

・紅葉葉の降り積む音に朋は逝き

・星流る寒さ忘るる冬銀河

・祖父の骨埋めし山は雪の中

・長々と出船の霧笛雪の宵

・吹雪やみ街屋の屋根に月冴ゆる

・冬紅葉落日の山うかびたり

・粉雪の舞い散る坂で別れけり

・情念の橋渡り来て修羅の雪

・父と汲む熱燗香ほる帰省の夜

・柚子薫る妻の雑煮で年が明け

・梟がふわりと止まり杉の月

・小夜時雨ゴメ (海猫) 啼く波止場汽笛鳴り

・柚子湯してほのかに髪の匂ひけり

・野佛の翳に一輪寒椿

・寒月の光に浸かる露天の湯

・野佛や朽ちし墓標に初時雨

・父還る番屋ですする夜泣き蕎麦

・銀漢や遠賀川なる母の里

・冬至の夜父子で湯ぶねを溢れさせ

 

(03) 吉良さん

・湯豆腐や泡音友に一人酒

 鎌倉の散策で (4 )

・切通し亡者の声か冬の風

・初詣黄金夢見る銭洗い

・枯葉舞う子リス飛び跳ねカクレンボ

・日脚伸ぶ路地裏奥の垣の影

 

(04) 桑子さん

・ピロピロンお屠蘇気分をぶっ飛ばし

・大川の流れに抗す鴨は二羽

・あの人もゴルフ初めの五日かな

・福詣谷中銀座で一休み

・大寒もマスク帽子の散歩かな

 

(05) 志方さん

・讃岐路のど越し確か釜揚げや

・備讃瀬戸島影薄し雪舞いて

・白鷺が浮かぶ黄昏城下町

・玄海のわたりゆく風海千鳥

・湯煙と阿蘇の山脈雪化粧

・三十年 (みとせ) ぶり変わらぬ友の懐かしさ

・菅公の想い伝わる梅枝かな

 

(06) 中津川さん

・襟立てて石仏参る女(ひと)一人

・迷いつつ今年で最後と賀状書く

・紅葉散る城址見下ろす廉太郎

・ジャンボ籤年の瀬毎に夢を追う

・大寒や派閥解散偽装かな

・冷凍便今年も頼り節(せち)並ぶ

・孫受験神仏はしご初参り

 

(07) 橋本さん

・山茶花の紅揺れメジロ見え隠れ

・ブルーベリー紅葉は庭のナナカマド

 新型コロナ収束後、田舎の実家で再開した餅つきに出かけて (2 )

・賑やかに実家の餅つき十九人

・餅つきや野菜も一緒の帰車の中

・初詣戻れば頻脈( ) 失せており

・正月の咲きし白ばら香もほのか

・元日や能登半島地震の辛さかな

 

(08) 服部さん

・携帯を無くす師走の慌ただし

・おのこ孫正月毎に色気づき

・被災地に冷たい雨雪痛ましく

・コンビニに続く足跡朝の雪

・能登地震飛行機事故と正月は

 

(09) 柳町さん

 この歳になってもやめられないスキーを詠んでみました。(3)

・膝痛を痛打やスキーの爽快さ

・老骨に打ち勝つ術のスキーかな

・春未来白のぬくもり雪の色

 

(10) 豊さん

・災害の悲しみ深し能登の雪

・あでやかに成人の日の晴れ着かな

・雪帽子かぶりて黙す石地蔵

・寒の入入浴剤を買い足しに

・大寒の寺鐘の音透き通る

・初場所や勝負の果ての乱れ髷

・豆まきや鬼追う園児たちの声

 

(11) 深瀬

・神棚に朝日さしこむ初稽古

・認知症ぼやく賀状に頷けり

・年賀状やめどき意識かすむ文字

・青空に白雲の筋冬の冬

・晴れわたり雲ひとつなき冬の空

・図書館の暖房に寝る老いひとり

・老いひとり優先席に冬陽受け

・着たきりのとっくりセーター毛玉とる

・寒空に茫然自失瓦礫山

・冬の朝こずえくっきり朝日背に

・シャンソンにワインひとくち冬の夜

・タワマンのエレ前ラッシュ松明けて

・昼呑みに老いし旧友冬憩う

・昼呑みのてんぷら談義冬忘れ

・集団でいがみ合うひと個はどこに

・帰らざる七十五年すでに生き

・座し思うあと幾年のいのちかな

・生き死ぬる意味を自問す人として

・自然生む男女の相違その巧緻

・直進す時の流れに疑義を持ち

・月面を身近に生きる老いのいま

・細胞の老化の意味に神思う

・交差点赤にダッシュの老勇姿

・みな同じそれでめでたし小学校

・過激化す地球沸騰夏思う

・止まらない科学の進歩また加速

・ポピュリズム自国ファーストなにを生む

・MAGAの声日本動乱ひたひたと

・他人ごと?気候難民やまとの地

・さまざまな筋肉ゆるみ老い自覚

 

 

2.46  ネット句会  感想と自句自解

 

  小野寺さんの自句自解、感想

 

  7 点句

(046) 寒月の光に浸かる露天の湯

  信州の宿、冬の月を眺めながらゆっくりと冷気の中で入る露天風呂はキラキ

ラと輝く月の光に浸かるようで、日本人に生まれた幸せを噛みしめました。

 

  5 点句

(001) 柚子薫る妻の雑煮で年が明け

  下着を全て新しく変えて新酒の屠蘇で新年を祝い家族息災で迎える妻の雑煮

は柚子の香りに包まれて温かな気持ちのスタートとなりました。

 

  4 点句

(064) 星流る寒さ忘るる冬銀河

 満天の冬の夜娘と流星群観察の為ベランダに寝袋を敷き眺めた折突然光の尾

を引く流れ星に歓声を上げ、寒さを忘れました。

 平島さんご指摘の  nagaru  wasururu  は結果的になめらかに冬の天体ショ

ーに引き込まれました。

 

  3 点句

(031) 夜廻りの拍子木の音雪が呑み

 我々の子供時代は全国的に [日の用心] を拍子木を打ち鳴らしながら当番で

夜廻りをしました。シンシンと降り積む雪の中拍子木の音が雪に呑み込まれて

耳が痛くなる寒さでした。

 

  3 点句

(053) 柚子湯してほのかに髪の匂ひけり、

 吉良さん、中津川さんの通り冬至の風習の柚子湯は冬の夜の楽しみでした。

柚子湯の香りが鼻腔をくすぐりました。

 

  3 点句

(081) 銀漢や遠賀川なる母の里

  平島さんの解説の通りです。ginn kann onn の畳み掛け天と地の遠賀川を歌

いながら望郷の念をこめて母の里で締める。壮大な叙情詩としました。

  母の里は自分の郷愁でもあります。治部さんや豊さんの共感もありがたい。

 

  2 点句  

(015) 野佛や朽ちし墓標に初時雨

  京都嵯峨野から東福寺に向かう道すがら野佛のそばに朽ち果てた墓標があり

、折りしも初時雨が墓標を濡らし始めこの世の無常を感じさせるひとときでし

た。

 

  2 点句

(036) 長々と出船の霧笛雪の宵

  治部さんのご指摘の通りこの様な港の光景はなかなか見られなくなりました

。これは小生の記憶の中にある三陸の釜石の港町の降りしきる雪の中で消え消

えに響いた出船の霧笛です。

 宮澤さん、だから小生は八代亜紀の舟唄が大好きでした。

 

  2 点句

(049) 梟がふわりと止まり杉の月

  平島さん、豊さんのご指摘がありがたい。FuクロウがFuわりととやわらかく

、尖った杉の木立にかかる月か少し鋭く冴えて対称の妙あり、と作者として感

服です。

 

  2 点句 (059) 情念の橋渡り来て修羅の雪

  豊さんの解説、高倉健の任侠映画の最後の場面  降る雪の中、命を掛けて殴

り込みに行くのです。

 作者の発句を見事に推測されてます。情熱で走った最後には決まって命懸け

の修羅場があります。

 

  2 点句

(073) 吹雪やみ町屋の屋根に月冴ゆる

  治部さんの感想の通りです。真冬の吹雪が吹き荒れたあとはふと見上げた町

屋の空に白く月が光り輝き自分の心も冴えわたる気がしますね。

 

  2 点句 

(091) 冬至の夜父子で湯ぶねを溢れさせ、

  今となってはもっと声をかけて話せば良かったと悔恨の気持ちが自分を責め

ます。冬至の夜父と一緒に入り湯船を溢れさせた父の温かい優しさが浮かんで

きます。

 

  1 点句 

(021) 冬紅葉落日の山うかびたり

 橋本さんの解説の通りです。西日が当たると冬紅葉の山はスポットライトを

当てたように黄金虫に輝くのです。

 全山朱や黄色に染まる秋の紅葉と違い枯れる前の冬紅葉は風情があります。

 

  1 点句 

(086) 野佛の翳に一輪寒椿

 苔寺、西方寺の参道への道端に佇む野佛の翳に咲く寒椿の紅はひときわ野佛

の存在を引き立たせておりました。

 

  1 点句 

(098) 絵硝子の吹雪の向こう紅き薔薇

  ステンドグラスの外は吹雪模様、色ガラスの光を通して一面の白い風景の中

に咲き遅れた薔薇が一輪凛として吹雪に抗しておりました。

 

  感想

  絵画活動の個展の制作が重なり締め切りを延ばしていただき心に響いた記憶

の引き出しから短い時間の中で紡ぎだした俳句でしたが多数の皆様の共感を頂

き望外の感激でした。

 

 

  豊さんの自句自解

 

(002) 雪帽子かぶりて黙す石地蔵 

  降った雪が石地蔵の頭に積もっています。地蔵は悟りの境地にあるので雪も

寒さも感じることがないのです。

 

(011) 大寒の寺鐘の音透き通る 

 小野寺さんの鑑賞のとおり、大寒のさえざえとした空気の感じを詠んでみま

した。

 

(016) あでやかに成人の日の晴れ着かな

 用事があって駅前にでかけたとき、成人式帰りの晴れ着姿の女性グループを

見かけて、ああ若いというのはいいなあと思いました。

 

(051) 初場所や勝負の果ての乱れ髷

 土俵の上で力士は全力でぶつかり合います。整えていた髷が乱れるほどに。

それが相撲のおもしろさです。

 

(061) 災害の悲しみ深し能登の雪

 元旦そうそうの能登大地震には本当に驚きました。潰れた家の下敷きになっ

て亡くなった人もたくさんいました。合掌です。

 

(093) 豆まきや鬼追う園児たちの声

 節分の豆まき、幼稚園では鬼に扮装した先生を園児たちが追いかけるのです

。一票ぐらいは入ると思ったのですが、意外でした。

 

(097) 寒の入入浴剤を買い足しに 

 寒の入りを迎えて、これからさらに寒くなるので、体を暖める入浴剤を多め

に備えておこうと思ったのです。それがうまく伝わらなかったようです。

 

 

  深瀬の自句自解

 

(004) シャンソンにワインひとくち冬の夜

 最近、シャンソンのなにか成熟した世界に引き込まれています。

 

(007) 老いひとり優先席に冬陽受け

 最近は、優先席に躊躇なく座るようになりました。

 

(009) 座し思うあと幾年のいのちかな

 静座は精神衛生的によいと感じています。

 

(014) 昼呑みに老いし旧友冬憩う

 2 月に御徒町の吉池食堂で同期5 人で昼のみをしました。

 

(017) 青空に白雲の筋冬の冬

  真冬の青空に、刷毛で掃いたような白雲はなにか印象的です。

 

(020) 神棚に朝日さしこむ初稽古

  相撲の稽古場の気迫にあふれた朝をイメージしてみました。

 

(022) ポピュリズム自国ファーストなにを生む

  自国優先の機運が盛り上がっていますがどうなるのでしょうか。

 

(025) 冬の朝こずえくっきり朝日背に

  やや詠み方の工夫が足りない感じです。

 

(032) 月面を身近に生きる老いのいま

  アルテミス計画など月面基地もそう遠くはなさそうです。

 

(037) 交差点赤にダッシュの老勇姿

  なにかみっともない走り方をしていると思います。

 

(039) 生き死ぬる意味を自問す人として

  76歳になり自分の死を身近に思うことが多くなりました。

 

(042) タワマンのエレ前ラッシュ松明けて

  想像です。タワマンのエレベータはAI制御なのでしょうか。

 

(045) 年賀状やめどき意識かすむ文字

  最近、帯状疱疹の後遺症で眼が日常的に気になっています。

 

(050) みな同じそれでめでたし小学校

  集団主義、規格化教育からどう抜け出していくのだろうか。

 

(056) 過激化す地球沸騰夏思う

  二酸化炭素で覆われた灼熱の金星のようになっては困ります。

 

(058) 図書館の暖房に寝る老いひとり

  大学等の図書館は、広々としているので老後の居場所として快適です。

 

(060) 直進す時の流れに疑義を持ち

  時間の戻りのない直進性とはなんなのか気になっています。

 

(063) 他人ごと?気候難民やまとの地

  日本は移民や難民を厳しく制限していますが

 

(066) 寒空に茫然自失瓦礫山

  自然災害であれ、戦禍であれ、人間の営みのことを考えさせられます。

 

(068) 昼呑みのてんぷら談義冬忘れ

  昼呑みしながら、同級生のこういう話を聞くと引き込まれます。

 

(071) 集団でいがみ合うひと個はどこに

  戦争は個を消し去る典型のように感じます。

 

(074) 細胞の老化の意味に神思う

  アポトーシスとかオートファジーとか誰が設計したのでしょう。

 

(076) 認知症ぼやく賀状に頷けり

  認知症は次第に身近な脅威になりつつあります。

 

(078) 自然生む男女の相違その巧緻

  身近でありながらよく分からない不思議の一つです。

 

(083) 止まらない科学の進歩また加速

  人間と同じように学ぶ深層学習は人間を凌駕して当然かもしれません。

 

(087) さまざまな筋肉ゆるみ老い自覚

 筋力の衰えを日々自覚しますが、鍛練する気力が湧いてきません。

 

(089) 晴れわたり雲ひとつなき冬の空

 真冬の透き通った真っ青な空をみるとなにか気持ちが引き締まります。

 

(092) 着たきりのとっくりセーター毛玉とる

 とっくりセーターは暖かいせいか癖になります。

 

(096) MAGAの声日本動乱ひたひたと

 日米同盟はさらなる深まりを経ないと危険な感じがします。

 

(100) 帰らざる七十五年すでに生き

 この先あと何年あるのか、そして、どう過ごすか切実な課題です。

 

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