七句会のみなさま
第四十七回の選句結果を踏まえて、感想や自句自解、等をお寄せいただき、
たいへんありがとうございました。
およせいただいたものを、作品集とともに、名前順に、ほぼそのまままとめ
てお届けします。
今後のやり方に、ご意見、等ありましたら、よろしくお願いします。
七句会のweb http://nanaku-haiku.blogspot.jp/ にも掲載してあります。
今後とも、よろしくお願いいたします。
深瀬 (事務方)
1.第47回 ネット句会 作品集
(01) 桜子さん
・輪島塗海を渡れる世界一
・若き女医怒れば般若に様変わり
・歓迎会牛しゃぶしゃぶで囲む鍋
・夜桜のピンクのマシュマロふんわりと
・新入生正門くぐり一歩一歩
・新入生母の着物の袖つかむ
・竹の秋主役を地下にゆずりましょう
・竹の秋炊き込みご飯の準備かな
・能登の塩伝統の味日本一
(02) 小野寺さん
・気が付けば逃げ水追いて喜寿となり
・雪解けの瀬音流るる落ち椿
・花残月光かすめて鳥還る
・春蘭を愛でし人逝き空の青
・花透いて我が来し方に悔いなきや
・湯上がりの肌にひとひら花の白
・花冷えの古城の松に風は哭き
・春暮れて月光に触れ眠りけり
・廃村の瀬音ゆたかに山桜
・月白く花散る宵を舟は航き
・夜桜は蒼き夜空に散りしきり
・花明かり別れし人を隠しけり
・生きてあれ木々朝霧に木の芽吹き
・春雷の昏き光を朋渡り
・夜桜や梢は深き闇に消え
・星の畔 (あぜ) 蛙 (かわず) の歌の大合唱
・鎮魂の読経のしじま花吹雪
・春一番山轟かす風の音
・宵闇に漁火 (いさりび) 遠く春の雨
・みほとけの頸傾むきて春惜しむ
・花月夜凪の湖面を櫂の音
・父の墓碑風が手向けし花吹雪
・満州の戦火越え来し父の春
(03) 吉良さん
ゴルフ場の行き帰りに通る利根川の岸辺の風景 (4 句)
・菜の花や織りなす波に遊ぶ吾子
・微睡 (まどろみ) の眼窩に満ちる菜花かな
・黄金なる利根の菜花や空を断つ
・畔温み鷺舞い降りし春の風
・花盛る歌碑をたどりて人偲ぶ
・春眠や海越え届くホームラン
(04) 桑子さん
・花疲れ優先席の狸寝入り
・春雨や眼鏡に残るミスショット
・温暖化桜満開夏日かな
・数独の睡魔に負けし春の昼
(05) 志方さん
・霞みゆく川面のかなたに雉がなく
・花散らし早緑のなか風に舞い
・菜の花が朧月夜に薄化粧
・神田川散りし集まり花いかだ
・春愁の薄陽が照らす孫の頬
・舞い散りて残り桜の儚さが
・風に乗せ桜連れ去り初燕
・紅麹キックバックもAB遺産
・せせらぎの新緑のなか老い桜
(06) 治部さん
・冬旅や富士隠す雲にくにくし
・歳重ね去年より早し春一番
・筍の飯炊くかほり足止めて
・入学の朝は桜と決めていた
・あぁ桜なんと気まぐれ雨に咲く
・浅川の流れを覆う櫻花
・学園の桜吹雪や衿白し
(07) 中津川さん
・寒明けて語らう友も酒量減り
・標準木満開近し減る人出
・弾む声無口な孫に桜咲く
・苺花やがて香りの粒となり
・ぞろぞろと目黒の土手の花疲れ
・躑躅満つ迷路のごとき寺の庭
・なごり雪杖つく友に肩を貸し
(08) 橋本さん
・春浅し小川に跳ねる光かな
・ぷかりぷかり浮き雲連れて春来る
気候変動 (温暖化) (2句)
・3 月がつひに夏日となりにけり
・気候変動人を桜を振り回す
・窓越しに芽吹き楽しむ日永かな
・鵜を逃る小魚白鷺頂戴す
(09) 服部さん
・若芝のゴルフ楽しや息子らと
毎年飽きずに同じ苗を
・トマト茄子苗は今年も同じもの
・初音在り師匠の音にはほど遠く
・満開だエージシュートだ桜咲く
同期会、早世した友人を思い出
・春の宴中心避けたい記念写真
(10) 宮澤さん
・花筏かき分けながら舟が行く
・春眠と惰眠の間往き戻り
・すれ違い胸元まぶし春の服
・名も知らぬ雛も歴史を背負いたり
・さえずりや朝の気配の宅急便
(11) 柳町さん
先日、草津温泉に行きましたので、その時の感じを詠んでみ
ました。雪の大谷には負けますが、渋峠付近に雪の壁がある。
温度が上がり雪が解けて夢幻惑煙状になり---------
・雪壁が作る煙や春一番
・夢幻なり遠目に消える雪煙
(12) 豊さん
・たんぽぽや錆の色濃き廃線路
・花冷えや亡き先生を偲ぶ会
・三年後何人残る入社式
・ああ旨しわが養老の花見酒
・絵画展大小の春並びおり
・江戸人も愛でし桜の隅田川
・初夏の白き素足や女高生
(13) 深瀬
・春眠と午睡重なる老いの日々
・異星人歩道橋から花めでる
・露天風呂花散る夜の静けさや
・老妻の手とり退院花吹雪
・両国の散歩葉ざくら江戸情緒
・喜寿の声花見マンネリ認知症
・新入りの兵は戻らず母涙
・溌剌の新入社員走馬灯
・認知症新入生の胸騒ぎ
・新境地老いのもがきか竹の秋
・春迎え老いのグッズの二つ三つ
・座を仕切る豊満の笑み姥桜
・余命聞き向き合う花に改まり
・けじめなき老いの春眠やるせなく
・咲き誇る花のこころに謎宇宙
・空覆う花の老木銀河ごと
・春とてもロシアを覆うマゾヒズム
・死者並ぶガザウクライナ春陽受け
・マリウポリ残虐ロシアに眼を背く
・タテ社会他者のこころに土足入り
・囲碁手談義理人情と真逆行く
2.第47回 ネット句会 感想と自句自解
◎ 桜子さん (新井さん) の自句自解
(071) 輪島塗海を渡れる世界一
総理がバイデン首相にお贈りした輪島塗のお品は世界一と言えるで
しょう。
(038) 若き女医怒れば般若に様変わり
担当の歯医者さんは若くてきれいな女医さんですが、怒ると般若に
見えます。
(016) 歓迎会牛しゃぶしゃぶで囲む鍋
何年かぶりの歓迎会はしゃぶしゃぶ料理で盛り上がりました。
(080) 夜桜のピンクのマシュマロふんわりと
職場のそばの夜桜が、マシュマロに見えました。
(013) 新入生正門くぐり一歩一歩
大学の入学式では、校章のついたあの真田堀りの正門をくぐり、一
歩一歩と体育館へ向かいました。まさに期待と不安でいっぱいでした。
(044) 新入生母の着物の袖つかむ
小学校の入学式で会場を前に怖くなり、思わず母の黒い着物の袖に
しがみつきました。
(091) 竹の秋主役を地下にゆずりましょう
これからは筍の季節、地面の方に栄養を譲ります。
(030) 竹の秋炊き込みご飯の準備かな
筍が出てくるのを楽しみに、炊き込みご飯のおいしいレシピを調べ
ます。
(052) 能登の塩伝統の味日本一
大変な状況の能登半島ですが、最も被害を受けた珠洲市を始め、昔
から塩創りで有名です。きっと復活します。
◎ 小野寺さんの自句自解、感想
(070) 湯上がりの肌にひとひら花の白 三点句
治部さんの解釈の通り。湯上がりの女性の白い肌が薄紅色に変わり
おりしも降りかかるひとひらの桜の花びらの白は、美しいと息を呑み
ました。
(072) 気が付けば逃げ水追いて喜寿となり 三点句
自分では一生懸命に身体を張って追い求めて来たもの、辿りついた
と思えば、逃げ水となり消えてゆく、邯鄲の夢に自分の人生が重なり
ます。
(037) 花月夜凪の湖面を櫂の音 二点句
深瀬さんの解釈通り満開の夜桜の湖畔、小船を漕ぎだせば静かに櫂
の音だけが進んでゆく、往くあてはないのだけれど。
(041) 春雷の昏き光を朋渡り 二点句
急逝した友人の野辺送り、暗い空に春雷が走り、儚げな光の路を友
は独りで渡ってしまったのです。
(078) 二点句みほとけの頸傾きて春惜しむ 二点句
吉良さんの解釈の通りこの美しい春の日はいつまでも続いて欲しい
と御仏も首を傾げて、願っている様です。
(101) 宵闇に漁火( いさりび) 春の雨 二点句
宵闇の向こうに漁火が揺れ静かにやはらかい春の雨が窓を濡らす独
りオハコの舟唄の世界です。
(010) 夜桜や梢は深き闇に消え 一点句
満開の夜桜、梢の先は漆黒の闇の中に消えて幽玄の情景を醸し出す。
夜桜は千両役者なのだ。
(017) 生きてあれ木々朝霧に木の芽吹き 一点句
平島さんの目に止まりました。朝霧の中生命を託して一斉に芽吹く
木芽は辛くても生きろよ、と叫ぶ自然の応援歌です。
(025) 廃村の瀬音豊かに山桜 一点句
今は住む人も絶えた廃村だが大自然は瀬音豊かに山桜を咲かせ悠然
と巡ってくるのです。
(085) 父の墓碑風が手向けし花吹雪 一点句
父の墓碑にぬかづけば一陣の風とともに花吹雪が舞い、亡き父に風
が黙祷を捧げてくれたのです。
(088) 鎮魂の読経のしじま花吹雪 一点句
平島さんの目に止まりましたか。大震災の復興を祈願し鎮魂の為の
読経は舞い散る花吹雪の中で一瞬静寂が支配しておりました。
(092) 花明かり別れし人を隠しけり 一点句
豊さんの解釈の通りです。恋人と別れた花の夜、どうして別れてし
まったんだろうという未練が、花あかりの中に浮かんでました。
(098) 花透いて我が来し方に悔いなきや 一点句
桜子さんの解説がおもしろい。桜を見つめながらそっとつぶやく。
映画のワンシーンで俳優がふとつぶやく。素敵です。しかし現実の自
分は悔いばかりなんですよね。
(108) 雪解けの瀬音流るる落ち椿 一点句
これも平島さんの目に止まりました。雪解けの冷たい流れのなか花
ごと落ちる椿が音たてて鮮やかに流れていく。
(015) 満州の戦火越え来し父の春
あまり、多くを語らなかった父は怒涛と混乱の満州を辛うじて生き
のび帰還しました。多くの戦友は死のふちからロシアに抑留され亡く
なりました。今自分がある事は僥倖として感謝せずにはおれません。
追伸
平島さんに七句の選句のうち私の句を四句も選んで頂きました。
◎ 豊さんの自句自解
(002) 雪帽子かぶりて黙す石地蔵
降った雪が石地蔵の頭に積もっています。地蔵は悟りの境地にある
ので雪も寒さも感じることがないのです。
(011) 大寒の寺鐘の音透き通る
小野寺さんの鑑賞のとおり、大寒のさえざえとした空気の感じを詠
んでみました。
(016) あでやかに成人の日の晴れ着かな
用事があって駅前にでかけたとき、成人式帰りの晴れ着姿の女性グ
ループを見かけて、ああ若いというのはいいなあと思いました。
(051) 初場所や勝負の果ての乱れ髷
土俵の上で力士は全力でぶつかり合います。整えていた髷が乱れる
ほどに。それが相撲のおもしろさです。
(061) 災害の悲しみ深し能登の雪
元旦そうそうの能登大地震には本当に驚きました。潰れた家の下敷
きになって亡くなった人もたくさんいました。合掌です。
(093) 豆まきや鬼追う園児たちの声
節分の豆まき、幼稚園では鬼に扮装した先生を園児たちが追いかけ
るのです。一票ぐらいは入ると思ったのですが、意外でした。
(097) 寒の入入浴剤を買い足しに
寒の入りを迎えて、これからさらに寒くなるので、体を暖める入浴
剤を多めに備えておこうと思ったのです。それがうまく伝わらなかっ
たようです。
◎ 深瀬の自句自解
(003) 咲き誇る花のこころに謎宇宙
満開の桜を見るとなんのためにこんな華々しい咲き方をしているの
か不思議な気持ちに襲われます。
(007) 春とてもロシアを覆うマゾヒズム
大方のロシアの人々がプーチン政権の残虐行為に沈黙し許容してい
るのは一種のマゾヒズムなのでしょうか。
(016) 春眠と午睡重なる老いの日々 1 点句
午前中から眠くなることがあります。次第にひどくなりつつある感
じです。老いとはこういうものなのでしょうか。
(018) 花のした牛丼ひろげ紅生姜
桜の花と真っ赤な紅生姜の対比がおもしろいのでは、と思ったので
すが。
(021) 初夏を行く髭にハットのダンディズム 1 点句
最近の身近な老人は、結構、おしゃれな人が増えてきました。ひげ
は自己アピールなのでしょうか。
(024) タテ社会他者のこころに土足入り
民主主義の社会では個の尊重が基本原則な筈なのですが。
(029) 露天風呂花散る夜の静けさや 2 点句
露天風呂につかりながら、夜桜をみている状況を想像してみました。
一度は経験してみたいと思います。
(031) 異星人歩道橋から花めでる
天現寺交差点の歩道橋の上から道路の両側の桜並木をみて、なにか
空中からみているような気持ちになりました。
(035) 新境地老いのもがきか竹の秋
認知症の実感が次第に強まっていくときの心境とはどういうものな
のでしょうか。鬱の経験があるので少し自信があるのですが。
(040) 喜寿の声花見マンネリ認知症
今年の目黒川の桜は、苗木の寿命のためかいま一つでした。それと
こっちの老化も重なっているようにも感じました。
(049) 両国の散歩葉ざくら江戸情緒
10数名で両国に散歩に行き、吉良邸とか勝海舟生誕の地を見学しま
した。江戸の中心街はこの辺だったのだと実感しました。
(055) けじめなき老いの春眠やるせなく 2 点句
たくさん寝たと思っても、かつてのようなすっきりした気持ちにな
らないのが、情けないです。
(058) こどもの日子になに学ぶ対話会
哲学対話のようなこんな企画に参加してみました。若い人の参加が
多かったので新鮮でした。
(065) 新緑に孫の笑顔の夢二度寝
孫の笑顔に新緑が映えれば、こんな美しいものはないとのもいます。
(073) 溌剌の新入社員走馬灯
かつて自分も新入社員のとき、講堂に集められ、所属課長に引率さ
れて職場に向かいました。
(079) 座を仕切る豊満の笑み姥桜 2 点句
男の側から見る女性の不思議は、年齢に関係ないと思います。
(083) マリウポリ残虐ロシアに眼を背く
ロシア軍が攻め込んだマタウポリの様子を外国のジャーナストが必
死の覚悟で撮影したものをみましたが、下巻を見る気になれませんで
した。
(087) 空覆う花の老木銀河ごと
夜空を一杯に花で埋める桜の大木の威圧感を詠んでみました。
(089) 新入りの兵は戻らず母涙
戦死したロシアの若い兵隊の母親らの映像をみました。悲惨だとつ
くづく思います。
(093) 認知症新入生の胸騒ぎ
認知症が始まっています、と宣告されたときどういう気持ちになる
ものでしょうか。
(097) 死者並ぶガザウクライナ春陽受け 1 点句
戦争がいかに悲惨なものであるか、映像技術等の進歩によっていや
というほど分かっている筈なのですが。
(100) 余命聞き向き合う花に改まり 2 点句
がんでは余命がかなりはっきり告げられるようですが、どういう心
境になるものか、想像してみました。
(103) 老妻の手とり退院花吹雪 5 点句句
花吹雪に似合いそうな風景を想像してみました。
(109) 春迎え老いのグッズの二つ三つ
老眼鏡とか杖とか、いろいろ老人グッズが増えていっています。
(115) 囲碁手談義理人情と真逆行く
囲碁対局には義理人情が入り込む余地がないところがおもしろいで
す。
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