2024年9月10日火曜日

七句会 第四十八回 ネット句会 作品集、感想、自句自解

  七句会のみなさま

 

 第四十八回の選句結果を踏まえて、感想や自句自解、等をお寄せいただき、

たいへんありがとうございました。

 およせいただいたものを、作品集とともに、名前順に、ほぼそのまままとめ

てお届けします。誤記、等ありましたら、ご連絡ください。

 今後のやり方に、ご意見、等ありましたら、よろしくお願いします。

 七句会のweb  http://nanaku-haiku.blogspot.jp/ にも掲載してあります。

  今後とも、よろしくお願いいたします。

  深瀬 (事務方)

 

 

1.48  ネット句会  作品集

 

(01)  秋元さん

 

・七夕に疑惑まみれの選挙戦

・飛鳥山路面電車と八仙花

・紫陽花の行き交う姿艶やかに

・線路脇後ろ姿に藍映える

・楚々として余韻に浸る四葩(よひら)かな

・七夕に魑魅魍魎の猿芝居

 

(02)  桜子さん

 

・夏帽子ブローチ光る貴婦人の

・夏帽子赤と白とのかけっこの

・青田揺れ車窓のぞけばそよ風の

・雨の日に蛙飛び跳ね青田かな

・鰻の日この日のために頑張った

 

(03)  小野寺さん

 

・郭公の木霊返すや燧ヶ岳 (ひうちだけ)

・菖蒲湯の香の染みし髪風が梳き

・洗い髪行燈揺れて京の宿

・夜の闇白き牡丹は沈みゆき

・大粒の雨瓦打ち朋は逝き

・鮎掛かる瀬音駆け来る父の声

・梔子 (くちなし) が闇に匂ひて別れけり

・黒髪を束ねし宵の合歓の花

・月光に紫陽花の青ひかり帯び

・遠野の夜座敷わらしが蚊帳に来て

・万緑や廃屋の卒塔婆蝶が棲み

・月見草夜気忍び寄る風の村

・夕鐘の空に響きて夏が逝き

・風生まれ梔子 (くちなし) の香をはこびけり

・雨けぶり海鳴りの丘夏あざみ

・墨擦れば一瞬の涼蝉時雨

・涼み船影絵の如く街流れ

・大杉を陽の移りゆき青葉木菟

・山寺の急峻の坂草いきれ

・病癒え妻の包丁音たてて

・夏蝶は旅に疲れて眼 (まなこ) 閉じ

・郭公に落葉松の風続きけり

 

(04)  吉良さん

 

 知多半島ゴルフ旅行:日間鹿島にて 6

・夏の蝶憩うベランダ夢野原

・夕日さすトマトもぐ手の皺深し

・乾し蛸や家族総出の夏の浜

・渡し船航跡に落ちる夏の雲

・ラフ深し草の香むせる夏ゴルフ

・夏草や息染まり行く午後3

・UFOの如く動くや揚羽蝶

・風渡る海霧に浮かぶ三原山

・梅雨空や球の行方も儘ならず

・紫陽花に横顔ポーズ飛鳥山

・河童忌や玄関の蜘蛛そっと出し

・生き返るゴルフ帰りの暑気払

 

(05)  志方さん

 

 路地裏の象徴すだれで 2

・朝顔の滴るしずくすだれ越し

・風鈴のチリンチリンがよしず越し

 鈴鹿瀬を想起 2

・浴衣越し団扇が贈る風やさし

・百日紅炎暑にホット風の途

・夕立の夏の風情は今どこに

・素麵ののど越し流る生姜かな

・抜かれたか孫と並びて背比べ

・くちなしに過ぎし思いの朽ち果てて

 

(06)  治部さん

 

・酒蔵の粕の香りやかき氷

・登り来て神の恵みか石清水

・酷暑でも掃除当番地獄かな

・素麵がうまいと思う家の卓

・ふっくらとつけ焼く香り土用かな

・梅雨明けを宣する意味やとうに失せ

・国道に千貫神輿の行き戻り

 

(07)  中津川さん

 

・予約決め湯上りビール只の宿

・真夏日や新券祝う飛鳥山

・インバウンド軽装弾丸山開き

・二度三度後遺症ケア夏コロナ

・喜寿集い枯れ四葩ごと友縮み

・土用うなぎ店前往き来高値かな

・梅雨明けて冷感グッズ買い揃う

 

(08)  橋本さん

 

・だんご蜂受粉待たせて庭野菜

・紫陽花の都電も懐かし飛鳥山

・紫陽花に美人借景飛鳥山

・向日葵(ヒマワリ)の望む平和の陽よ昇れ

・十三年目山百合一輪寂しけり

・重き朝一瞬の涼風息をつく

・百日紅薄暮の寺に浮び来る

・水無月雨集めて溢る最上川

 

(09)  服部さん

 

・紫陽花のお墓参りは雨の中

・トランプが銃に撃たれる梅雨の朝

・妻コロナ朝昼晩と汗をかき

・蓮散華朝の楽しみ又来年

・馬鈴薯がバケツに三杯ゴロころと

 

(10)  宮澤さん

 

・ティーショット狙いは遠く雲の峰

・老若の声入り混じるビヤホール

・我が脚に若き血求め蚊も迷い

・蛮勇をふるい踏み出す炎天下

・赤信号日傘の影をおすそ分け

 

(11)  柳町さん

 

 いよいよ寿命が見えてきた歳となり、何か世の中に自

身の存在を残したいと思うこの頃の気持ちを詠みました。

特に「秋」を「とき」と読ませたいです。駒東時代の漢

文の授業でその意味を習いましたね!!

・八十路何かせねばと焦燥の秋(とき)

 お祭りの屋台の金魚すくいで孫のために頑張ってとっ

た一匹を渡して喜ぶ孫の顔の情景を詠んでみました。

・百円で掬う金魚は孫の手に

 

(12)  豊さん

 

・故郷の思い出浮かぶ夏祭

・夕涼み縁台将棋の昭和かな

・激流の天の川にて溺れけり

・恋人と別れた記憶かき氷

・青々と空の広さや原爆忌

・猛暑日や今日も一日引きこもり

・朝顔の開く夜明けの白さかな

 

(13)  深瀬

 

・過激化す暑さの質の不気味さや

・年ごとに灼熱地獄酷さ増し

・灼熱に逃げ場狭まる隠居の身

・猛暑日の哲学対話老いひとり

・繰り返すむかし話しの猛暑かな

・クーラーに逃げ込む人や自己矛盾

・猛暑日の国会図書館シェルターに

・熱中症後ろめたさや人為説

・ビル街を日陰求めて人行き来

・昼食に家内とすする冷素麺

・風情満つうちわや金魚ついむかし

・ひきりなしインバウンド機夏日受け

・夏ルック肩胸おへそ女子パワー

・冷や奴しょう油に生姜古典の美

・地方都市閑散の夏風情なく

・ちらほらと猛暑に耐えるマスク人

・いつまでか若いつもりの喜寿の夏

・老いの顔鏡気になる夏の街

・大メディアオオタニ都知事の暴風雨

・枯れ木みて生煮えの老い立ちすくむ

・青田よこ半導体の無塵棟

・特攻機青田旋回手振り去る

・風そよぎひかりゆらめく青田かな

・夏帽子シャッター通りをひとり行く

・夏帽子ひげにステッキ夕陽受け

・無意識にやってたことに手止まり

・人類の存在意義に首ひねり

・AIにすることを問う未来かな

・死にたいとよく母言うを分かりだし

 

 

2.48  ネット句会  感想、自句自解

 

◎ 小野寺さん 自句自解

 

1  3点句(052) 郭公の木霊返すや燧ヶ岳( ひうちだけ)

 尾瀬を抜けて燧ヶ岳に向かう途中木霊が返って来る様に郭公

が鳴き雄大な自然の中に頬をわたる風が夏山の朝の爽やかさを

全身で感じてをりました。

 

2. 3点句(104) 鮎掛かる瀬音駆け来る父の声

 平島さんの解説の通りです。久しぶりで親子で清流に鮎釣り

に出かけ親父の嬉しそうな声が瀬音を凌駕して聞こえて来た、

故郷釜石の少年時代、心弾む思い出でした。

 

3. 2点句(010) 墨擦れば一瞬の涼蝉時雨

 

 手紙を認める為に墨をすると墨の匂いが

 心を落ち着かせ外の蝉時雨が一瞬静寂となり

 暑さを感じなくなるのです。

 

4. 2点句(020) 風生まれ梔子 (くちなし) の香をはこびけり

 初夏の朝どこからともなく漂ってきた梔子の甘い香りは、初

夏の爽やかな風が生まれたのだと感じたのです。

 

5.二点句(071) 菖蒲湯の香の染みし髪風が梳き

 風香る初夏のひととき菖蒲湯の香りの洗い髪が鼻腔を心地良

くくすぐりました。

 

6.一点句(042) 郭公に落葉松の風続きけり

 落葉松の林を過ぎて郭公が鳴きだし、おりしも落葉松を一陣

の風が吹き落葉松の浅黄色に郭公が不思議なハーモニーを奏で

ておりました。

 

7.一点句(067) 梔子 (くちなし) が闇に匂ひて別れけり

 突然の別れの夜ただ唯声を呑みこめば深い闇の中梔子の匂い

は狂おしい絶望の香りでした。

 

8.一点句(077) 夏蝶は旅に疲れて眼( まなこ) 閉じ

  夏に見られるアサギマダラは春から夏にかけて南から北へ移

動し、秋になると南へ移動します。静かに羽を休める姿は遥か

な飛翔を夢みているのでしょうか。

 

9.  一点句(081) 涼み船影絵の如く街流れ

 納涼船に乗り川の流れの風に身をゆだねると対岸の街の灯は、

まるで陰絵の光の様にゆっくりと流れてゆきました。

 

10. 一点句(108) 黒髪を束ねし宵の合歓の花

 黒髪を束ねた宵宮の夜, 合歓の花の赤が見事でした。

 

11. 一点句(119) 病癒え妻の包丁音たてて

 病で伏せていた妻の体調が回復して朝食をつくる包丁の音が

元気 な音をたてて明るい朝が帰ってきました。

 

 

◎ 宮澤さん 自句自解

 

 今回の選句で感じたこと下記します。

 今回、

(023) 赤信号日傘の影をおすそ分け が5 点句

(083) 蛮勇をふるい踏み出す炎天下 が3 点句

と選句いただき、望外の喜びです。

 

 (023) の句は、信号待ちで、真上からの日差しを避けちょっ

と手前の街路樹で待機している時に目にした光景です。日傘を

さしたご婦人が、隣で待つ方にさりげなく、傘を傾けた様子が、

日影のおすそ分けという表現になり、後ろ姿ですが、美人に見

えました。

 (083)の句は、日ごろは気楽に「ちょっと、そこまで散歩」

と出かけますが、この猛暑下の夏の散歩は「帽子よし!、水分

よし!、体調よし!」と事前準備、現状把握をしたうえでない

と出かけられません。

 ということで、評価いただいた句は、思い付きに近い感覚で

スッと書きました。

 

 一方、選ばれなかった中で、

(003) 我が脚に若き血求め蚊も迷い

の下の句は(蚊も)ではなく(蚊の)がよろしいようです。

 この句は、半ズボンで、アプローチの練習を雑草だらけの小

さな庭でしている時、数匹の蚊が、脚の周りを飛び回り、ちょ

っと脚に止まっては、また飛び立つ様子を見て、我が血は、年

老りで濁っておいしくなさそうだけど、他に人もいないから我

慢するか、それとも吸血は止めようかなと、迷っている蚊の様

子です。

 このお状況を句としてどう書くか、ちょっと考えましたが、

表現しきれなかったようです。

 

 思い付きに近い句が選句され、ちょっぴり考えた句は選ばれ

ないということでつくづく技量の未熟さを感じております。

 とは言え、もう成熟しないことも感じております。

 今後とも、よろしくお願いいたします。

 

 

◎ 豊さん 自句自解

 

・青々と空の広さや原爆忌 

 皆さんの鑑賞の通り、広島の原爆忌中継を見て詠んだもので

す。あの悲劇を忘れてはいけません。

 

・朝顔の開く夜明けの白さかな

 夏の朝の爽やかさを詠んでみました。多くの方に共感してい

ただいてうれしいです。

 

・故郷の思い出浮かぶ夏祭 

 都会に出て働いている人が、街の夏祭りを見て田舎でも夏祭

りをしていたなあと懐かしんでいるのです。

 

・猛暑日や今日も一日引きこもり

 この夏は連日猛暑日でした。熱中症をさけるため高齢者は外

出するな、と市の広報がありました。 

 

・恋人と別れた記憶かき氷

 ある夏の日、恋人とかき氷を食べていたとき突然別れを告げ

られたのです。それを思い出しながら、今日もかき氷を食べて

いる青春の風景です。

 

・夕涼み縁台将棋の昭和かな

 いまや縁台将棋の風景は見られませんね。昭和には隣近所の

親しい付き合いがありました。

 

・激流の天の川にて溺れけり

 天の川と大雨の川の氾濫をかけたのですが、無理があったよ

うです。

 

 

  深瀬 自句自解

 

(005) 夏ルック肩胸おへそ女子パワー

 女性のたのしみ方の感性とのギャップをいつも感じています。

 

(007) 地方都市閑散の夏風情なく

 地方都市の駅前はかつては商店街で賑わい、お盆では伝統行

で賑わっていました。

 

(016) 風そよぎひかりゆらめく青田かな

 青田には生命力があふれ、声援を送りたくなります。

 

(018) 青田よこ半導体の無塵棟           1 点句

 クリーンルームをもつ窓なしの建物と青田の対比です。

 これで地方活性化になるのか。日本の半導体復興戦略の内容

がいまひとつピンとこないでいます。

 

(021) 猛暑日の哲学対話老いひとり         1 点句

 最近、哲学対話がかなり流行っています。若い人たちがかな

熱心なのでやや驚きます。テーマはいろいろですが、高齢者の

みというのもいいかもしれません。

 

(026) 大メディアオオタニ都知事の暴風雨

 ジャニーズ事件、木原事件、石丸都知事候補、大谷選手のプ

ライバシーなど、大手メディアとYouTube のギャップは興味深

く感じます。

 

(035) 無意識にやってたことに手止まり

  パソコンを使っていて、これはどうするんだっけと手が止ま

ることがあります。老化現象なのかとがっくりきます。

 

(038) 熱中症後ろめたさや人為説          1 点句

  海水温度の上昇が災害級の暑さや地球沸騰を招いているよう

です。CO2 の大量排出のためでしょうか。

  

(045) 灼熱に逃げ場狭まる隠居の身         2 点句

  (038) と同じ。

 

(051) 年ごとに灼熱地獄酷さ増し

  海水温は一度上がるとなかなか下がらないようです。

 

(055) ひきりなしインバウンド機夏日受け

  昼過ぎになると、新宿方面から羽田に着陸する飛行機が頻繁

に飛びます。外国人観光客があふれるのを実感します。

 

(058) 老いの顔鏡気になる夏の街          1 点句

  突然、見たような人が写り、あれっ誰かなと思うと自分だっ

たりして、やや寒気を覚えます。

 

(060) 夏帽子ひげにステッキ夕陽受け        1 点句

  歳をとっても夏に負けまいと粋がる気持ちも大切でしょう。

 

(062) いつまでか若いつもりの喜寿の夏       2 点句

  たくさんで集まるときは、みんなはつらつとしている感じで

す。我が身を思い、虚勢をはっているのかと思案しています。

 

(068) 人類の存在意義に首ひねり

  経営分野で、パーパス論が盛んですが、人間にもあてはめて

はと思います。神話や宗教は切り捨ててしまったので困難?

 

(072) クーラーに逃げ込む人や自己矛盾

  (038) と同じ。

 

(078) 昼食に家内とすする冷素麺

  冷えた素麺に大根おろし、海苔、醤油くらいをかけて食べる

のが好きです。老化のせいか。

 

(082) 冷や奴しょう油に生姜古典の美        1 点句

  浴衣でも着て畳の上で食べれば、もっといいかもしれません。

 

(087) 枯れ木みて生煮えの老い立ちすくむ      1 点句

  食べ物や医療の進化で寿命も延び、枯れた感じの老人を見か

けなくなった感じがします。問題は中身かも。

 

(089) AIにすることを問う未来かな

  ChatGPT との自然な日本語での会話は、なにか錯覚しそうに

なります。

 

(097) 繰り返すむかし話しの猛暑かな

  最近、暑さのためなのか、同じ話しをなんかいもする人がや

や目立ってきた感じがします。

 

(099) 過激化す暑さの質の不気味さや        1 点句

  (038) と同じ。

 

(101) 夏帽子シャッター通りをひとり行く      2 点句

  夏の昼下がりのシャッター通りを一人で歩くのは、なにか不

気味さを感じそうです。

 

(103) ちらほらと猛暑に耐えるマスク人

  蒸し暑さのなか、コロナ防止のマスク。日本人の几帳面さな

のでしょうか。

 

(107) 猛暑日の国会図書館シェルターに

  レストランもあり、広々としていて大いに助かります。

 

(111) 風情満つうちわや金魚ついむかし       1 点句

  クーラーが必需品となってしまい、うちわや風鈴など縁遠く

なってしまいました。

 

(115) ビル街を日陰求めて人行き来

  道路のどっち側を歩けば日陰なのか、意識するのは必然です。

 

(120) 死にたいとよく母言うを分かりだし

  「じゃあ死んだら」とか乱暴に言っていた我が身が情けない。

 

(123) 特攻機青田旋回手振り去る

  青田の季節に特攻命令とは、残酷なことだと身に沁みます。

 

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