七句会のみなさま
第五十一回目の七句会にご参加いただきたいへんありがとうございました。
今回の選句結果をご報告いたします。
・4 点句
(016) 春の海ポンポン船や波のたり 深瀬
(030) 喜寿迎へやらされ感なき日々憩ふ 深瀬
(038) 山の端に沈む刹那の朱華(はねず)色 志方
(079) 春愁にまなざし優し阿修羅像 志方
(095) 新緑に余命意識す喜寿ひとり 深瀬
・3 点句
(009) 逆光に輝きまして春の草 宮澤
(040) 新茶摘み山の鉄路の窓薫る 吉良
(046) あるじ亡き塀に盛れる夏蜜柑 吉良
(083) 夕闇に沈みゆくなり白牡丹 小野寺
(098) ふき味噌や残る苦みに口うれし 中津川
・2 点句
(003) 遠き日や仙石原の水芭蕉 深瀬
(013) 山百合は真昼の風に語りかけ 小野寺
(021) 春の陽に吊り革揺れて駅近し 深瀬
(022) 木漏れ日の透き通りたる若葉かな 豊
(026) 淡雪に水音を聞く過疎の村 深瀬
(033) 春うれひ退会届け三つ書き 深瀬
(044) 浴衣着て気持ちときめく薄暑かな 小野寺
(047) 春深し瓦礫の街を鳥一羽 深瀬
(056) しょうぶ湯に浸かり懐かし幼き日 宮澤
(063) アルツとて饒舌の朋眼に若葉 小野寺
(064) 大森の縄文しのび潮干狩り 深瀬
(070) たけのこの皮むき香る山の土 宮澤
(074) さえずりの去りて大樹は眠りけり 小野寺
(082) 湯上りは珈琲牛乳風薫る 桑子
(101) 足軽しネモフィラの青夏近し 中津川
(105) 北斎の怒涛の青や夏の雲 小野寺
下記に、選句表に、各句の右側に作者名、および、その下に選んだ人の名前
とコメント (追番付き、順不同、敬称略。) を付したものを添付します。
次回については、今年7 月~ 8月ころにご連絡したいと思っていますので、
よろしくお願いいたします。やり方、等について、ご意見がありましたら、ご
連絡をいただきたく、よろしくお願いいたします。
事務方から、以下、ご連絡、ご依頼です。
(1) 選句参加者
今回の選句には、下記の14名が参加しました。
桜子さん、小野寺さん、吉良さん、桑子さん、志方さん、治部さん、
中津川さん、橋本さん、服部さん、平島さん、宮澤さん、柳町さん、豊さん、
深瀬。
(2) 今回の句会の結果を踏まえた感想、自句自解の募集について
掲記について6 月30日を期限として募ります。お寄せいただいた感想は、と
りまとめ次回の句会のキックオフメールに添付し配布します。
句会としての作品集は作成 (当メールの後ろに添付) し、自句自解集は作成
しないことにしました。
誤記、記入漏れなどありましたら、ご連絡ください。修正します。
選句結果は、七句会の下記のweb に掲載します。よろしくお願いします。
http://nanaku-haiku.blogspot.jp/
2025.06.03
代表 橋口侯之介
顧問 豊 宣光
事務方 深瀬久敬
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(001) ナイスパー桜吹雪がお出迎え 桑子
1 深瀬 ゴルフをたのしむ人にとっては最高の気分
でしょう。
(002) 雨に濡れ葉のかさなりや若楓 小野寺
(003) 遠き日や仙石原の水芭蕉 深瀬
1 中津川 箱根に湿生花園がありましたね。なぜか中
学の時の仙石原の林間学校を思い出しました。
2 桜子 なぜ遠き日なのか、ポーラ美術館をお尋ね
になったのか…。謎めいてもっと知りたくな
る一句です。
(004) 輝ける水面は初夏の光かな 豊
(005) 三一一堤防高く春の波 中津川
1 宮澤 2 度と津波被害を受けまいというリスク対
策は、春の気配を知る感性を遠ざける代償を
払って成り立つ切なさ感じます
(006) 球春だ選抜野球にMLG 服部
(007) 阿佐ヶ谷の古き町並みデジャヴュ感 深瀬
(008) 若楓萌ゆるみどりに影さして 小野寺
(009) 逆光に輝きまして春の草 宮澤
1 吉良 逆光では草の緑が濃くなるのかと思いきや
輝いて見えるとの発見が面白い。
2 治部 見ている草の先に太陽。眩しさの中にキラ
キラと草の揺れる春の光景が浮かび、選者も
眩しくなりました。映像が素晴らしいです。
3 桜子 新緑の美しさが輝くように伝わってきます。
(010) 大凧の願い乗せたり天空へ 桜子
1 中津川 5月の浜松まつりの凧揚げでしょうか。
(011) 春憂や花粉と共にやって来る 橋本
1 服部 春憂や花粉と共にやって来る
(012) 走線者米中はざま行き場なく 深瀬
(013) 山百合は真昼の風に語りかけ 小野寺
1 吉良 百合と風との対話が新鮮に感じます。
2 志方
(014) 鯉のぼり風を吸い込み空泳ぐ 志方
(015) 睡蓮に揺れる木漏れ日もの想ひ 小野寺
(016) 春の海ポンポン船や波のたり 深瀬
1 治部 ポンポン船とはレトロなものを引き出して
きましたね。小船が凪いだ海に浮かぶ姿は春
らしくていいですね。「のたり」がすべてを
物語り何とも言えず穏やかでいい景色です。
お見事です。
2 服部 ポン船や波のたり
3 平島 蕪村の句を思い出しながらポンポンという
音が良いなあ!
4 志方
(017) 今年はまだか筍(たけ)を待つ日や炊飯器 中津川
(018) モナリザに魅入られてをりパリの初夏 小野寺
(019) 定食の百円上がるしぶしぶの 桜子
(020) 浅緑に染まる煙雨の修学院 志方
(021) 春の陽に吊り革揺れて駅近し 深瀬
1 服部 春の陽に吊り革揺れて駅近し
2 中津川
(022) 木漏れ日の透き通りたる若葉かな 豊
1 吉良 5 月のさわやかな日差しを感じます
2 宮澤 限りなく透明に近い新緑のすがすがしさを
感じます。
(023) 栗の香やいのちのかぎり匂ひけり 小野寺
(024) 新顔に春の番組NHK 服部
(025) 苺食む三角錐の星の音よ 吉良
(026) 淡雪に水音を聞く過疎の村 深瀬
1 桑子 春が訪れたのどかな農村の光景が目に浮か
びます。
2 小野寺 雪解けの水音だけが過疎の村に響き春の訪
れを感じます。
(027) 花見上げれば碧空にも雲の花 橋本
1 桑子 写真の風景にピッタリの句です。
(028) 葉桜に川面変わらず流れゆく 宮澤
(029) 水打てば広重の空輝きて 小野寺
(030) 喜寿迎へやらされ感なき日々憩ふ 深瀬
1 橋本 私も状況に応じて割り切れる様になりまし
たが、日々憩う迄はなかなかです。
2 柳町
3 桜子 悠々自適で素敵な日々を想像します。
4 志方
(031) 春キャベツ大巾値下げカツ特上 中津川
1 橋本 米はどうなるか、取り敢えず安くなったキ
ャベツたっぷりに特上カツで溜飲を下さげる。
(032) 夕間暮れ古刹の塔頭千年かな 志方
(033) 春うれひ退会届け三つ書き 深瀬
1 治部 何の退会届なのでしょうか。三つもという
事は、相当な覚悟なのですね。事を始めるの
も春ですが、引退の決断も春なのですね。う
れいが伝わります。
2 服部 春うれひ退会届け三つ書き
(034) 鳥帰る鎮守の森を後にして 小野寺
1 橋本 近くをねぐらにしていたのか、いつものコ
ースの途中なのか鎮守の森が良いです。
(035) 良い本に巡り合えれば友となり 桜子
(036) 葉桜や栄華の夢はいまいずこ 豊
1 柳町
(037) 菖蒲湯の香の染みし髪かきあげて 小野寺
1 宮澤 想像力が湧いてきます。何かいいですね。
(038) 山の端に沈む刹那の朱華(はねず)色 志方
1 治部 山の向こうに沈む夕日なんでしょうが、「
山の端、刹那、朱華」とくれば、何とも特別
な、それは美しい夕景と変わります。感性の
なんと素晴らしいことでしょう。参りました。
2 柳町
3 平島 今にも消え行く一瞬の空の色をキャッチし
て綺麗だなあ。
4 小野寺 日没の瞬間に輝くはねず色の表現が素敵で
す。
(039) しずかさや被災の海を東風ゆけり 深瀬
(040) 新茶摘み山の鉄路の窓薫る 吉良
1 中津川
2 桜子 この季節の楽しみである新茶に目をつけら
れたところにセンスを感じます。
3 小野寺 山道を走る鉄道の窓に新茶摘みの香が流れ
る。心地よさが伝わります。
(041) 年金支給日豪華に初鰹 豊
1 服部 年金支給日豪華に初鰹
(042) 恍惚の友たずぬれば初夏の風 小野寺
1 吉良 自分も認知症にいつなってもおかしくない
年齢。初夏の風が慰めてくれるのでしょうか。
(043) 若楓光きらめき万華鏡 深瀬
(044) 浴衣着て気持ちときめく薄暑かな 小野寺
1 橋本 好きな浴衣を着てお出かけですか、何か良
い出会いがありそうな。
2 中津川 だんだん夏が近づいて来ているのですね。
(045) 髪あげる遠目日傘に胸騒ぎ 宮澤
1 小野寺 もう忘れていた甘く儚い漢の感覚持ち続け
るのが良い事です。
(046) あるじ亡き塀に盛れる夏蜜柑 吉良
1 治部 最近は空き家が増えています。理由は様々
ですが、高齢、核家族化が後押ししているよ
うです。荒れた庭に、何事もなきように毎年
実をつける夏蜜柑の黄色は鮮やかなのに、「
あるじ亡き」 は何とも寂しさを感じます。
2 豊 住人が亡くなった空き家の庭に夏蜜柑が実
をつけている。一つの物語が見えてくる風景
ですね。
3 桑子 「東風吹かば匂ひおこせよ梅の花・・・・」
を思い出しました。
(047) 春深し瓦礫の街を鳥一羽 深瀬
1 豊 能登半島地震の被災地の映像でしょうか。
瓦礫の残っている街にも季節がめぐって春が
くるのです。
2 平島 能登地震を思わせて人工物の儚さに大自然
の営みそれもたった一羽の鳥を対比させた句
作りに感心。
(048) 傾城の佳人愛でしか紅牡丹 小野寺
(049) 大和路を風切るツバメ甍越し 志方
1 深瀬 古都の雰囲気がよく伝わってきます。
(050) 純情な娘のごとく白牡丹 豊
(051) 彼おもひ手にはさみもつ桜貝 深瀬
(052) 庭飾る鮮やか三色菫かな 橋本
(053) 女湯の女姦し髪洗う 桑子
(054) 夜勤明け朝風呂匂ふ菖蒲かな 小野寺
(055) 女子並ぶケーキ屋のまえ花水木 深瀬
1 宮澤 列をなす、はやりのケーキ屋が近所にあり
ます。生クリームに花水木は似合いそうです。
(056) しょうぶ湯に浸かり懐かし幼き日 宮澤
1 服部 しょうぶ湯に浸かり懐かし幼き日
2 深瀬 この歳になるとやや抵抗感がありますが気
持ちは分かります。
(057) ヘソ出しに負けるものかと玉の汗 桑子
1 中津川
(058) 新緑や森の匂ひの青く甘く 橋本
(059) 今何月つぶやき増える寒暖差 桜子
(060) 若楓ビルの谷間の森の精 吉良
(061) 若竹の伸びて希望のふくらみぬ 豊
1 吉良 若竹のみずみずしい成長が老いた体に元気
をくれます。
(062) スリッパの足跡のまま置かれおり 深瀬
(063) アルツとて饒舌の朋眼に若葉 小野寺
1 橋本 久し振りにあった朋、症状は未だ軽く饒舌
も目に映る若葉が少し悲しいか。
2 柳町
(064) 大森の縄文しのび潮干狩り 深瀬
1 橋本 大森の海岸で潮干狩りが出来るのですね、
遙か縄文の時代から繋がっているとは、、、。
2 桜子 古代を思わせるロマンあふれる句です。
(065) 大谷がホームラン寝起きの新茶 中津川
1 豊 大リーグの中継は朝が早い。眠気が残って
いる頭で見た大谷のホームランは新茶のよう
なさわやかさな刺激がありました。
(066) 母の炊く筍飯の香ほりけり 小野寺
1 豊 旬の食材を使ったおいしい筍飯。それをお
母さんが炊いてくれている。母親に対する愛
情あふれる句です。
(067) 被災地に女神降り立つ愛子姫 桜子
1 橋本 敬宮愛子内親王を次の天皇に推したい気持
ちです。
(068) 新じゃがの指先包む芽の香り 桜子
(069) まだら雪峠に消えず水芭蕉 小野寺
(070) たけのこの皮むき香る山の土 宮澤
1 志方
2 小野寺 筍掘りたての皮剥けば山の黒土が香る感覚
が良いですね。
(071) 息切らし桜求めて山城に 服部
(072) 逃水に津波の記憶空よぎり 深瀬
(073) 花粉症楽しい時にも目に涙 中津川
1 深瀬 ちぐはぐ感のギャップがおもしろいです。
(074) さえずりの去りて大樹は眠りけり 小野寺
1 豊 自分の体の枝にとまってさえずっていた小
鳥の声を楽しんで聞いていた大樹。その小鳥
が去ったのでゆっくり眠ることにしたのです。
さえずりと大樹の組み合わせがみごとです。
2 宮澤 木陰の中のうるさいくらいのさえずりが突
然やむ夕暮れ。大樹さんが電灯を消しておや
すみと言っているようです。
(075) 息を呑む舞ふ初黄蝶の鮮やかさ 橋本
(076) 夏近し弾む胸元お待ちどう 宮澤
1 桜子 思わず笑ってしまうユニークな句です。
(077) 軒騒ぐ今年も会えし燕の子 吉良
(078) 五月雨を傘もささずに別れけり 小野寺
(079) 春愁にまなざし優し阿修羅像 志方
1 深瀬 阿修羅象の面影が思い浮かびます。
2 豊 春愁をかかえたまま阿修羅像と向き合った
作者。阿修羅像には怒りと微笑二つの顔があ
りますが、やさしさの眼差しのほうにいやさ
れたのでしょう。
3 平島 名工の造った傑作は観る者に多彩な見方を
させますが春愁の己にまなざしを「優し」と
感じさせるほど素晴らしいのです。
4 小野寺 あの阿修羅のまなざしに感じる春愁は自分
のこころなのでしょうね。
(080) MAGAへの関税乱発春嵐 橋本
(081) 夏浅し仏間ただよふ鐘の音 深瀬
(082) 湯上りは珈琲牛乳風薫る 桑子
1 治部 火照った体に冷たい珈琲牛乳うまいですよ
ね~。風がす~っと通り抜ける、爽やかな句
ですね。余談ですが、選者は「名糖の珈琲牛
乳」が大好きでした。
2 宮澤 銭湯の扇風機の前の竹製の椅子に座り飲む
珈琲牛乳。冷蔵庫の横に吊るしてあった紙の
蓋を開けるオープナーが思い出されます。
(083) 夕闇に沈みゆくなり白牡丹 小野寺
1 豊 うっすらと暗くなっていく夕闇の中に、白
牡丹の白が浮き上がっています。「沈みゆく
なり」という表現がいいですね。
2 平島 暮れなずむ夕べに白色が闇に消えて行きそ
うな瞬間を「沈みゆく」と表現されたのが上
手いなあ。
3 志方
(084) 亡き母をしのぶ童に春の月 深瀬
(085) 失恋す気分はずっと五月闇 豊
1 深瀬 「五月闇」に切実感が伝わってきます。
「かな」三句
(086) 何気なく見ている先に小蝿かな 治部
1 桑子
(087) プレイ中蕗見るほどの余裕かな 治部
(088) 米価とは無縁のごとき青田かな 治部
1 中津川
そして番外
(089) かなかなかなとは蝉の声かな 治部
(090) 空青く芽吹く川辺の風清し 橋本
(091) 風揺らぎ小さきバラの花模様 宮澤
1 吉良 大輪のバラではなく、小さいバラが集まっ
て色のハーモニーを醸しだりている様子が美
しい。
(092) 風そよぐポピー畑にホーホケキョ 桑子
1 桜子 ホーホケキョ、が聞こえてきます。
(093) 雷と雨風襲うこいのぼり 桜子
(094) 望月の葉蔭に宿る薄暑かな 小野寺
(095) 新緑に余命意識す喜寿ひとり 深瀬
1 服部 新緑に余命意識す喜寿ひとり
2 宮澤 春の訪れを喜びつつ、この喜びをあと何回
感じられるかと思ってしまいます。
3 柳町
4 桑子 小生も平均寿命までは元気に生きたいと思
う今日この頃です。
(096) 桜舞い地元アイドル舞い踊る 服部
(097) 薫風に緑彩る水面かな 志方
1 治部 初夏の風に若葉の浅い緑が揺れる水面を彩
っている光景。初夏の風景としてはあるある
なのですが、目線が水面にあり、薫風が揺ら
しているのがあえて緑の若葉ではなく水面だ
と伝わり、何とも爽やかに感じました。
(098) ふき味噌や残る苦みに口うれし 中津川
1 深瀬 食通の人のたのしみが漂ってきます。
2 桑子 美味しさが伝わってきます。
3 志方
(099) 蕗の香や鍋に煌めくエメラルド 吉良
(100) 出棺を見送る空にひばり鳴く 深瀬
1 小野寺 大切な人の野辺送り晴れた空で鳴くひばり
は己れの涙の声でしょうか。
(101) 足軽しネモフィラの青夏近し 中津川
1 柳町
2 桑子 絨毯のようなネモフィラ畑癒されます。
(102) 春暮るる出船の汽笛遠ざかり 小野寺
1 志方
(103) 読経の本堂流る薄暑かな 深瀬
1 柳町
(104) お日様もみゃくみゃく照らす歓喜の輪 桜子
(105) 北斎の怒涛の青や夏の雲 小野寺
1 吉良 北斎の浮世絵が目の前に浮かびあがるよう
に感じます。
2 平島 あの有名な富士山を包み込む波を思わせて
雄渾な大自然の情景です。
(106) 匂いたつ八重大藤に酔いしれて 服部
1 平島 松江を旅しましたので八雲立つが思い浮か
び、フジの花も沢山見まして、それこそ酔い
しれて存分に楽しんで来ました。
(107) ぽい捨てを見ては一箱一万円 深瀬
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ご参考 作品集
(01)
桜子さん
・新じゃがの指先包む芽の香り
・定食の百円上がるしぶしぶの
・お日様もみゃくみゃく照らす歓喜の輪
・今何月つぶやき増える寒暖差
・良い本に巡り合えれば友となり
・雷と雨風襲うこいのぼり
・被災地に女神降り立つ愛子姫
・大凧の願い乗せたり天空へ
(02)
小野寺さん
・春暮るる出船の汽笛遠ざかり
・さえずりの去りて大樹は眠りけり
・鳥帰る鎮守の森を後にして
・若楓萌ゆるみどりに影さして
・浴衣着て気持ちときめく薄暑かな
・雨に濡れ葉のかさなりや若楓
・まだら雪峠に消えず水芭蕉
・栗の香やいのちのかぎり匂ひけり
・母の炊く筍飯の香ほりけり
・望月の葉蔭に宿る薄暑かな
・睡蓮に揺れる木漏れ日もの想ひ
・恍惚の友たずぬれば初夏の風
・夕闇に沈みゆくなり白牡丹
・アルツとて饒舌の朋眼に若葉
・菖蒲湯の香の染みし髪かきあげて
・五月雨を傘もささずに別れけり
・モナリザに魅入られてをりパリの初夏
・夜勤明け朝風呂匂ふ菖蒲かな
・北斎の怒涛の青や夏の雲
・傾城の佳人愛でしか紅牡丹
・山百合は真昼の風に語りかけ
・水打てば広重の空輝きて
(03)
吉良さん
・新茶摘み山の鉄路の窓薫る
・軒騒ぐ今年も会えし燕の子
・苺食む三角錐の星の音よ
・あるじ亡き塀に盛れる夏蜜柑
・若楓ビルの谷間の森の精
・蕗の香や鍋に煌めくエメラルド
(04)
桑子さん
・ナイスパー桜吹雪がお出迎え
・女湯の女姦し髪洗う
・湯上りは珈琲牛乳風薫る
・ヘソ出しに負けるものかと玉の汗
・風そよぐポピー畑にホーホケキョ
(05)
志方さん
・山の端に沈む刹那の朱華(はねず)色
・浅緑に染まる煙雨の修学院
・大和路を風切るツバメ甍越し
・春愁にまなざし優し阿修羅像
・薫風に緑彩る水面かな
・鯉のぼり風を吸い込み空泳ぐ
・夕間暮れ古刹の塔頭千年かな
(06)
治部さん
「かな」三句
・何気なく見ている先に小蝿かな
・プレイ中蕗見るほどの余裕かな
・米価とは無縁のごとき青田かな
そして番外
・かなかなかなとは蝉の声かな
(07)
中津川さん
・三一一堤防高く春の波
・ふき味噌や残る苦みに口うれし
・花粉症楽しい時にも目に涙
・今年はまだか筍(たけ)を待つ日や炊飯器
・足軽しネモフィラの青夏近し
・大谷がホームラン寝起きの新茶
・春キャベツ大巾値下げカツ特上
(08)
橋本さん
・息を呑む舞ふ初黄蝶の鮮やかさ
・春憂や花粉と共にやって来る
・MAGAへの関税乱発春嵐
・庭飾る鮮やか三色菫かな
・花見上げれば碧空にも雲の花
・空青く芽吹く川辺の風清し
・新緑や森の匂ひの青く甘く
(09)
服部さん
・息切らし桜求めて山城に
・桜舞い地元アイドル舞い踊る
・球春だ選抜野球にMLG
・新顔に春の番組NHK
・匂いたつ八重大藤に酔いしれて
(10)
宮澤さん
・たけのこの皮むき香る山の土
・逆光に輝きまして春の草
・髪あげる遠目日傘に胸騒ぎ
・葉桜に川面変わらず流れゆく
・しょうぶ湯に浸かり懐かし幼き日
・夏近し弾む胸元お待ちどう
・風揺らぎ小さきバラの花模様
(11)
豊さん
・葉桜や栄華の夢はいまいずこ
・輝ける水面は初夏の光かな
・失恋す気分はずっと五月闇
・純情な娘のごとく白牡丹
・木漏れ日の透き通りたる若葉かな
・年金支給日豪華に初鰹
・若竹の伸びて希望のふくらみぬ
(12)
深瀬
・亡き母をしのぶ童に春の月
・彼おもひ手にはさみもつ桜貝
・春の海ポンポン船や波のたり
・しずかさや被災の海を東風ゆけり
・淡雪に水音を聞く過疎の村
・逃水に津波の記憶空よぎり
・春深し瓦礫の街を鳥一羽
・大森の縄文しのび潮干狩り
・春の陽に吊り革揺れて駅近し
・春うれひ退会届け三つ書き
・読経の本堂流る薄暑かな
・若楓光きらめき万華鏡
・女子並ぶケーキ屋のまえ花水木
・出棺を見送る空にひばり鳴く
・遠き日や仙石原の水芭蕉
・夏浅し仏間ただよふ鐘の音
・阿佐ヶ谷の古き町並みデジャヴュ感
・喜寿迎へやらされ感なき日々憩ふ
・新緑に余命意識す喜寿ひとり
・スリッパの足跡のまま置かれおり
・走線者米中はざま行き場なく
・ぽい捨てを見ては一箱一万円
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