2019年12月27日金曜日

七句会 第三十回句会の自句自解です。

 七句会のみなさま
 第三十回の選句結果を踏まえて、感想や自句自解、等をおよせいただき、た
いへんありがとうございました。
 およせいただいたものを、名前順に、ほぼそのまままとめてお届けします。
今後のやり方に、ご意見、等ありましたら、よろしくお願いします。

 七句会のweb  http://nanaku-haiku.blogspot.jp/ にも掲載してあります。
  今後とも、よろしくお願いいたします。
  深瀬 (事務方)

 追記
  自由連句を、12月上旬から、小野寺さん、吉良さん、志方さん、豊さん、深
瀬の5 名にて、5 回転し25句まで詠みたいと思っています。
  無事、終わりましたらみなさまにご報告したいと思っています。よろしくお
願いします。


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1.小野寺さんの自句自解
・石畳み紅葉敷き詰め小糠雨     (060)
 古都の石畳みに敷き詰めたように散り落ちた紅葉は小糠雨に濡れていっそう
の艷やかさを増し、さながら絵巻きのような風景でした。
・朝霧や柿の実ひとつ濡れ残り   (071)
 朝露のたち込めた秋の朝ぽつんと残った柿の実が、濡れたままで、淡い風景
の中で鮮やかな色を残しており心に残りました。
・蒼き露野仏の頬伝い落ち   (073)
  古都の苔むした蒼い野仏の頬をつたい落ちる露はさながら野仏が秘めやかに
涙をながして晩秋の深い哀しみを宿しているようでもありました
・蟷螂は健気に百舌の贄となり   (068)
 カマキリのオスは交尾して生きながらにしてメスが産卵する為の餌となりま
す。子孫を遺す為に食われた、身体半分のオスが更に百舌の早贄のために、枝
に突き刺されておりました。カマキリのオスの一生は健気ではありませんか。
・落ち葉踏む音静まれり古都の路   (076)
  吉良さんが指摘されたように、深く積もった落ち葉を踏む音は、古都の年月
を重ねた、不思議な静寂を連れて歩く様でもありました。
・月冴えて芒の原は銀の波    (080)
  中天にかかり煌々と輝きを増す月の光の中で芒の原の芒の穂波は、銀色に波
だち、さながら海原の波浪の様でもありました。静寂な幽玄を思わせる一幅の
墨絵の趣きがあったのです。
・芒原風は轍を残しけり    (083)
  一面の芒の原に一陣の風が舞い、吹き荒れ風の通り路には いく筋もの轍が
残されておりました。風は天に昇ったのでしょうか。
・あだし野に煙たなびき曼珠沙華   (086)
  徒然草の一節
   あだし野の露消ゆるときなく、鳥辺山の煙り
   立ちさらでのみ住みはつるならいならば
   いかでもののあはれもなからん。
 この世は定めなく、無常であるからいいのだ。と言ってます。嵯峨野から大
覚寺へ行く道すがら煙りがたなびき、曼珠沙華が紅く咲いており、京の片隅で
不思議な無常を思った事でした。
・コーナーを追い抜く孫の運動会    (005)
  リレー選手になった孫娘がコーナーをゴボウ抜きして走りさる姿を大声で叫
びながら応援しました。小学生時代の自分に、重ねておりました。
・鰻食ふ白寿の母に小春の陽    (032)
  白寿を迎える母は好きな油絵を描き好物の鰻を食べる笑顔に小春陽が降り注
ぎ来年の銀座の個展への参加を願います。

2.桑子さんの自句自解
・天高くティーショットは視野の外 (039)  
 ナイスショットもドジッたボールも、視力の衰えですぐに見えなくなるとい
う現実を読みました。治部さんの言うとおり「・・・視野の外へとティーショ
ット」の方がいいですね。
・秋寒し今宵納めの冷やの酒 (042)
 季重なりについては気になっていたところで、「冷や酒」(夏の季語)を「
冷やの酒」と「の」を入れることで無季語にならないかと。
・長き夜の話し相手はテレビかな (049)
 毎日だと、家内との会話もそうは続かないので必然的にテレビに向かって文
句を言っている今日この頃です。

3.橋本さんの自句自解
・枝見上げいましばらくの落ち葉掃き (4点句)
 落葉は自然任せ、庭と道路への落ち葉が気になると掃いている。枝に残る葉
の様子から未だしばらく付き合わされそうである、ヤレヤレ。(最後の1 枚は
12/20 に散りました、句は11月初旬)
・箍緩む瑞穂の国や台風禍 (1点句)
 台風15号、19号の風害、水害の被害は甚大、救える命・ 財産が対応の甘さで
失われたものも多い。温暖化で想定外の災害が増えている昨今、出来ることか
ら備えていかねば、、、
・血税の花見の宴に露と消ゆ (1点句)
 首相主催の「桜を見る会」は、税金の使途として甚だしく不適切、不愉快。
バラマキ政治の本質の一端が垣間見える。

4.宮澤さんの自句自解
・年寄りのうんちく姦し美術展  (015) 
  とにかく昨今の美術展は混んでいます。この作品の背景はから始まり、技法
、業界のランクまで知る限りの知識を披露してる人。一方、作品には関係なく
、なんでここでというよもやま話をしているおばさんたち。特別展だと入場料
も結構高いはずですが、年寄りはひたすら元気で好奇心旺盛という感じです。
浮世絵展などだと、作品が小さくて、人混みではよく見えないと思いますが、
それでも混むのはちょっと不思議な感じがします。特別展よりすいている常設
展を推奨します。
・稲妻にクラブ投げ出し命乞い  (028)
 これはまさに実感で、ゴルフで何が怖いといって、スコアが乱れることでは
なく、雷に直撃され命までかけることはないということ。格闘技ならごめんな
さいで命懸けの勝負は避けられますが、たかがゴルフで、勝負をかけるところ
でないところで命をかけたくないというわがままな気持ちです。
・青い目が神輿を担ぐビルの谷  (010) 
 1 治部    最近この光景をよく見る気がします。ビルの谷としたところが面
白いと思います。
 ありがとうございます。昔、仲宗根美樹が歌った「川は流れる」という曲で
、「街の谷、川は流れる」という詩がありました。ビルの谷は、そこから借用
です。
・秋の空雲の間に間に覗き見え  (035) 
 今年は、夏からすぐに冬で、秋空がたまにしか見えなかった残念感です。こ
んな年でも雲の向こうは、秋空が広がっているのでしょうという思いです。
・秋来ぬと目に見えぬまま痩せさんま (084)  
 1 中津川
 古今和歌集のパロディのつもりです。今年の秋は、夏が長く、秋に雨が多く
、いきなり冬という感じでした。古今和歌集の本歌は、風の音に秋が来たと聴
覚で秋を感じたようです。今年の秋は台風ばかりでこの聴覚を感じぬまま、痩
せたさんまに視覚と味覚と臭覚に、またあえて痩せた手触りの触覚の、五感の
内の四感で感じた、つかの間の貧しい秋だったなという気持ちです。

5.豊さんの自句自解
・沖縄のこころ焼けたり曼珠沙華
 沖縄の歴史と文化には以前から関心を持っていました。辺野古埋め立てと首
里城の焼失、沖縄県 民の続く受難に深く同情します。
 まさか最高点になるとは思っていませんでしたが、皆さん沖縄に想いがある
ことを知ってうれしく思いました。
・菊花展老いの一日また過ぎて
 小春日和のある日、老夫婦そろって菊花展に出かけた様子を想像して詠みま
した。
 老人の平和な日常の一端を切り取ったつもりです。
・月見には独りがよろし手酌酒
 名月を愛でるにはやはり一人がいいのです。ススキの生えている野原にぽつ
んと坐り、一升びん を片手に空の満月と対話している風流人を想像してみて
ください。

6.深瀬の自句自解
・国東の古代の田にも今年米  (077)
  九州・国東半島の水田は、平安時代から続いているそうです。水田の生産の
安定性やそれが日本列島に広がっていった様子を思いました。
・翼竜や秋の雲間を滑り飛ぶ  (023)
  恐竜時代に思いを馳せました。翼竜がたくさん空を舞っている様子はどんな
感じだったのでしょうか。
・鉄骨を吊るすクレーンや秋の雲  (046)
  都心では、あっちこちで高層ビルの建築が進んでいます。時代の変化や躍動
感に感じ取っていただけたらと思います。
・六十年 (むそとせ) のすまいの朝に秋の雲  (034)
  同じ場所に物心ついてから60年以上住んでいます。朝、マンションの4 階の
廊下に出て、近所を見回しますが、ふと感慨におそわれることがあります。
・秋の陽を反射す額また広く   (041)
・秋の風広がる額すべりゆく   (027)
  最近、急速に額あたりの頭髪が消えていきます。そのスピード感に驚いてい
ます。
・それぞれの終活事情秋の風   (021)
・秋空に終活思案まとまらず   (054)
  終活として、なにをどういう手順でするか考えることがあります。蔵書や遺
産の整理とかあるとは思いますが、どうもそれだけないような気もします。人
それぞれの課題のようにも思います。
・こがらしに終活見据えよろけけり   (019)
  終活をがんばろうとか気合を入れた瞬間によろけたりするのがなさけない感
じです。
・善く生きる問ひを背負いて秋の声   (025)
  昔の人は、善く生きるとはどういうことか、という問いが日常的にあったの
ではないかと思うことがあります。競争社会やスマホ社会のなかでは、そうい
う意識が後退してしまっているのか気になることがあります。
・仰向けの蝉の見つめる虚空かな    (067)
  朝、マンションの外廊下に、蝉が仰向けにころがっていることがあります。
もう死んでいるのかと手をふれると、ぱっと飛び立っていきます。あんなかっ
こうでなにをしていたのか不思議に思います。
・地表には巨大ひとつ目野分行く    (037)
  気象衛星からみた地表の雲の様子は日常茶飯になりましたが、台風の目の映
像は、改めて自然の脅威を思い知らされます。
・地下タンク野分の水を捌くかな    (050)
  荒川や神田川にはあふれた水を貯水したり別の川に放水する巨大な仕組みが
地下に作られているようです。温暖化による雨量の増大とのいたちごっこにな
らないかと心配になります。
・学らんの大根踊りや青き空    (002)
  東京農大の応援団の大根踊りはユニークだと思います。
・大根の葉っぱ広げしヘアかな   (058)
  大根やパイナップルの上についている葉っぱのようなヘアスタイルの女性を
見ることがあります。女性には似合う感じもします。
・大根の磨かれし艶パリ画風    (072)
  大根の色というのは、よくみると深みがあって引き込まれます。藤田嗣治と
かユトリロの絵なんかを連想しました。
・ママチャリの荷台の大根夕陽受け  (055)
  夕方の買い物帰りの主婦の様子を思い浮かべました。
・昼呑みに大根おでんつまみけり   (085)
  これはかなりフィクションですが、昼呑みの機会は増えました。なにかかな
り贅沢をしている気持ちになります。
・大根に網タイツ着せフェティシズム  (063)
  大根を見つめていたら、こういう気持ちも湧くのではないかという想像です。
・アラーキー萎び大根 (だいこ) の美学かな  (089)
  写真家荒木経惟は、萎びて枯れかけた花や野菜を被写体にしているようです
が、それが美しいと言われると、不思議にそうかなという気持ちになります。
日本人のわびさびの美意識につながるのかもしれません。
・チアガール大根踊りのどはくりょく    (016)
  大根踊りのときのチアガールは、大根は持ちません。持って踊っている姿を
勝手に想像したものです。
・神の旅此処も水没後ろ髪    (013)
  今年の台風19号は広い範囲に大雨を降らし、雨があがった後に洪水が押し寄
せました。地球温暖化に起因し、今後も増えそうだとのことです。のんびり秋
祭りをたのしんでいる余裕がなくなるのか心配です。
・唄太鼓十津川踊り神の留守   (009)
  十津川の盆踊りは、唄と太鼓のみで、両手にもった扇子の動きや唄の歌詞に
伝統の重みを感じます。歌詞がかなり世俗的でおもしろいと感じました。
・神の旅一神教ではさみしけり    (007)
  日本中の神様が収穫を終えた各地方から出雲に集まってくるというのは、一
神教の世界では考えられないことです。日本人の心象の奥深くにある感じです。
・目黒川さくら並木も紅葉に    (096)
  春には、川の両岸が満開の桜で彩られますが、今は、紅や黄色に色づいた枯
れ葉が並んでいます。最近は、枯れ葉も落ちてしまいました。四季と生の循環
のダイナミズムを実感しました。
・いつのまに「まいったなもう」口癖に  (061)
  最近、お風呂やトイレにいく途中などの合間合間に、このフレーズが頭のな
かに現れます。
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2019年12月6日金曜日

七句会 第三十回目のネット句会 選句の結果をご報告します。

 七句会のみなさま
 第三十回の七句会にご参加いただきたいへんありがとうございました。
今回の選句結果をご報告いたします。
  5 点句
(082)  沖縄のこころ焼けたり曼珠沙華       豊 
  4 点句
(060)  石畳み紅葉敷き詰め小糠雨         小野寺
(067)  仰向けの蝉の見つめる虚空かな       深瀬
(079)  枝見上げいましばらくの落ち葉掃き     橋本
  3 点句
(014)  菊花展老いの一日また過ぎて        豊
(031)  月見には独りがよろし手酌酒        豊 
(039)  天高くティーショットは視野の外      桑子
(042)  秋寒し今宵納めの冷やの酒         桑子
(071)  朝霧や柿の実ひとつ濡れ残り        小野寺
(073)  蒼き露野仏の頰伝い落ち          小野寺
  2 点句
(015)  年寄りのうんちく姦し美術展        宮澤
(027)  秋の風広がる額すべりゆく         深瀬
(028)  稲妻にクラブ投げ出し命乞い        宮澤
(037)  地表には巨大ひとつ目野分行く       深瀬
(038)  秋月や真白に染まる醤油倉         吉良
(051)  夕映えに柘榴が独つ空に溶け        志方
(066)  八千草の岸辺や今に伝えけん        治部
(068)  蟷螂は健気に百舌の贄となり        小野寺
(076)  落ち葉踏む音静まれり古都の路       小野寺
(080)  月冴えて芒の原は銀の波          小野寺
(083)  芒原風は轍を残しけり           小野寺
(086)  あだし野に煙たなびき曼珠沙華       小野寺

  下記に、選句表に、各句の右側に作者名、および、その下に選んだ人の名前
とコメント (追番付き、順不同、敬称略。) を付したものを添付します。
  次回については、来年1 月中旬ころにご連絡したいと思っていますので、よ
ろしくお願いいたします。やり方、等について、ご意見がありましたら、ご連
絡をいただきたく、よろしくお願いいたします。
 事務方から、以下、ご連絡、ご依頼です。
(1) 選句参加者
 今回の選句には、下記の14名が参加しました。
  秋岡さん、秋元さん、小野寺さん、吉良さん、桑子さん、志方さん、治部さ
ん、鳥海さん、中津川さん、橋本さん、宮澤さん、柳町さん、豊さん、深瀬。
(2) 今回の句会の結果を踏まえた自句自解、感想、等の募集について
  今回の句会の選句結果を踏まえて、各自、表明しておきたいこともあるので
はないかと思いますので、自句自解、感想、等、なんでも結構ですので、募り
たいと思います。一応、期限としては12月23日とし、事務方にメールでいただ
き、それを七句会の下記のweb に掲載することにしたいと思います。
 http://nanaku-haiku.blogspot.jp/
  句会の後の勉強会等については、みなさまのご意見をお聞きしながら、適宜
、行っていきたいと思っています。よろしくお願いします。
(3) 自由連句第二回について
  末尾に付記として、要領を記しました。よろしくお願いします。
  2019.12.06
      代表   橋口侯之介 (休会中)
      顧問  豊  宣光
      事務方 深瀬久敬
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 1.兼題  秋の行事
   
(001)  今年も並ぶ鉢増えて菊花展         中津川
(002)  学らんの大根踊りや青き空         深瀬
1 吉良    大根の白が青空を背景に空を舞う光景が素敵です。
(003)  穂の重み沁みて楽しむ秋祭り        柳町
1 志方    季節と種の生育の時間とと農民の感謝が調和している
(004)  いが栗や長靴で割る味たのし        中津川
(005)  コーナーを追い抜く孫の運動会       小野寺
1 豊      前を走っているランナーを追い抜く孫を、はらはらし
 ながら応援しているおじいちゃん。かつての自分を見ているの
 かもしれません。
         60の手習いで始めた先輩たちの個展で上手
       なことにびっくりしました
(006)  柿の絵に進歩を示す個展かな        中津川
1 深瀬    前の勤務先の社友会の会報がときどき送られてきます。
 そこに写真、絵画、工芸品などの、かつて職場をともにした人
 たちの作品の掲載があります。この人にこんな趣味があったの
 だと新鮮な感動を呼び起こされます。
(007)  神の旅一神教ではさみしけり        深瀬
1 桑子    旅は道連れ、一人ではつまらないと思います。
 孫の運動会に行くと、自分の子供の運動会
の応援よりも大声になっていくのが不思議で

(008)  大声は孫のためかな運動会            柳町
(009)  唄太鼓十津川踊り神の留守         深瀬
(010)  青い目が神輿を担ぐビルの谷        宮澤
1 治部    最近この光景をよく見る気がします。ビルの谷とした
 ところが面白いと思います。
(011)  べったら市香りほのかな江戸の街      吉良
1 中津川
(012)  秋燃ゆるベートーベンの楽曲に       豊 
(013)  神の旅此処も水没後ろ髪          深瀬
(014)  菊花展老いの一日また過ぎて        豊 
1 秋岡    小生も今年は菊花展に出かけました。丹精込めた菊を
 眺めていると確かに時間が早く過ぎてしまいます。
2 柳町   
3 宮澤  予定表に終了のチェックマークを付けました。次の予
 定は「白内障の検査」か「入れ歯の修理」かな?
(015)  年寄りのうんちく姦し美術展        宮澤
1 中津川
2 橋本
(016)  チアガール大根踊りのどはくりょく     深瀬

 2.兼題  秋の天文
(017)  潮鳴りを耳殻で聴きし小春かな       小野寺
(018)  野分後に八百屋に並ぶ高値菜        中津川
(019)  こがらしに終活見据えよろけけり      深瀬
(020)  箍 (たが) 緩む瑞穂の国や台風禍      橋本
1 治部    危機意識が薄れていることを天が教えています。災害
 や、テロ等に対する備えを再考すべき時だとこの句が告げてい
 ます。流石です。
(021)  それぞれの終活事情秋の風         深瀬
1 豊      秋はすべてが滅びへ向かう季節。人生の終わりを間近
 にして、人それぞれにさまざまな思いがめぐります。
(022)  土手に来て復興祈る雨野分         中津川
(023)  翼竜や秋の雲間を滑り飛ぶ         深瀬
1 吉良    雲を翼竜に見たてたのかと思いましたが、秋の青空の
  深さが感じられます。
(024)  灯消え岬の街は星月夜           小野寺
(025)  善く生きる問ひを背負いて秋の声      深瀬
1 橋本    人生も末頃となり善く生きたかなと振り返り、未だ間
 に合うところもあるかなとも
(026)  秋晴れや万国旗ゆれて園児の輪       治部
1 鳥海    何故か孫の運動会は張り切ってしまいますね。
(027)  秋の風広がる額すべりゆく         深瀬
1 柳町   
2 宮澤  年老いて、季節を感じる新しいセンサーが機能しだし
ました。
(028)  稲妻にクラブ投げ出し命乞い        宮澤
1 鳥海    今年の夏に駒東OBと一緒に行った際これで死んだら
  皆様に何て言われるかと、雷の音で即中止した事を思い出しま
  した。
2 桑子    カミナリが近くに来るまでプレーしていたのですね。
  ゴルフが余程好きな人ですね、命あっての物種です。命乞いは
  土下差して低くしていたのですかね。
 バスツアーで飛騨高山方面へ行きました。
       紅葉が思った以上に良かった。
(029)  天高し響く異国語白川郷          中津川
(030)  見上げれば金刀比羅宮に秋日濃し      吉良
(031)  月見には独りがよろし手酌酒        豊 
1 吉良    たまたま一人なのか、独り身なのかはわかりませんが、
 共感を生みます。
2 中津川
3 小野寺  独りで、月見酒。自分と向き合いながら呑む酒はまた
格別ですね。
(032)  鰻食ふ白寿の母に小春の陽         小野寺
1 豊      食欲旺盛な99歳と高齢の母。まだまだ元気です。「
 小春の陽」という言葉がみごと。かなり俳句作りになれた作者
 でしょう。
(033)  秋の雲瀬戸の波間に船流がる        吉良
(034)  六十年 (むそとせ) のすまいの朝に秋の雲  深瀬
(035)  秋の空雲の間に間に覗き見え        宮澤
(036)  空澄みて古都の石段にわか雨        小野寺
(037)  地表には巨大ひとつ目野分行く       深瀬
1 中津川
2 橋本    宇宙から詠みましたか、地表は大変です
(038)  秋月や真白に染まる醤油倉         吉良
1 秋元    絵画を思わせる
2 深瀬    醤油蔵の白壁が秋月の光に照らされ、夜空を背景にた
 たずんでいる景色は、なにか幻想的な絵画のようです。酒蔵で
 も味噌蔵でもないのもよいと感じました。高校時代に習った萩
 原朔太郎の詩「猫」を連想したりもしました。
(039)  天高くティーショットは視野の外      桑子
1 鳥海    加齢により視力が落ちてボールの行方を見る事が出来
 ない人。意図した方向とは全く異なり行方が分からない人。色
 々あると思いますが。
2 橋本    秋の青空に白球がのはずが、右に左にまっすぐ飛ばず
 探すのが一苦労、同類です
3 治部    テンプラですか、OBですか?「・・・視野の外へとテ
 ィーショット」では?
(040)  野分止み野に金色の月のぼり        小野寺
1 志方    野分の後の静寂が表現され、いいですね
(041)  秋の陽を反射す額また広く         深瀬
(042)  秋寒し今宵納めの冷やの酒         桑子
1 秋岡    季重なりのようですが、気分は良く分かります。これ
 からはやはり人肌のぬる燗、さらに熱燗ですか。
2 秋元    酒飲みに敬意を表して
3 小野寺  寒い季節となり熱燗が恋しくなる前に飲み納めの冷酒
はまたおつですな
(043)  台風禍暗闇ひそみ祈る声          吉良
        想定外の災害が人間のおごり産物で、かっ
       て台風は子供心に何か楽しかった記憶があり
       ます。
(044)  今は無く野分またの日碧き空        志方
(045)  古時計音秘めやかに小夜時雨        小野寺
1 深瀬    子供のころの柱時計は、歯車の噛み合う音がしていま
 した。夜中に前を通ったりするとよく響いていました。小夜時
 雨の夜中だと余計大きく響き、こころに迫るものがありそうで
 す。
(046)  鉄骨を吊るすクレーンや秋の雲       深瀬
1 秋岡    大都会の秋の風景ですね。秋の雲は、すじ雲ですか、
 うろこ雲ですか?
(047)  水害の忘る間の無き瑞穂国         橋本
(048)  台風の老木倒す強さかな          豊 
(049)  長き夜の話し相手はテレビかな       桑子
1 秋岡    独り身の夜なのでしょうか?秋は一層さみしいです。
 昔は書物、今はテレビですか?単身赴任の時はこんな感じでし
 たね。
(050)  地下タンク野分の水を捌くかな       深瀬
        下記の3 つの句は秋の夕暮れを読んでみま
       した。
(051)  夕映えに柘榴が独つ空に溶け        志方
1 治部    (独つ)とすることで最後の一個とわかります。夕映
 えの中に溶け込んで、存在感が薄れています。寂しい様子が人
 生の終盤に重なっちゃいますね。(071) の朝霧と柿の取り合わ
  せとの違いが面白かった。
2 深瀬    かつて住んでいた家の庭の西側に柘榴の木が植わって
 いました。夕陽を背にした柘榴の光景が思い出されました。独
 つというのも絵になる感じです。
(052)  雁帰行秋の夕暮れ山の端に         志方
(053)  風誘う夕陽に染まる芒かな         志方
(054)  秋空に終活思案まとまらず         深瀬
1 小野寺  冬を控えた秋の風の日、終活の案などなおさら、思い
乱れてまとまりませんよね

  3.雑詠、無季語
(055)  ママチャリの荷台の大根夕陽受け      深瀬
(056)  野仏に木枯らし哭きて古都は暮れ      小野寺
1 橋本   
(057)  山肌を紅葉飾りて秋化粧          秋元
1 志方    山麓の秋が目に浮かぶ
(058)  大根の葉っぱ広げしヘアかな        深瀬
(059)  寺町をながむる松やうそ寒し        治部
1 小野寺  寺町の長い歴史を見守ってきた老い松には木枯らしの
季節はとりわけ寒さが身に沁みるのでしょうか。
(060)  石畳み紅葉敷き詰め小糠雨         小野寺
1 橋本   
2 秋元    秋の色に染まった情景を思わせる
3 深瀬    石畳みの上に紅葉がたくさん敷きつめられ、そこにこ
 まかい雨が静かに降り、紅葉の色がさらに映えている様子が思
 い浮かべられました。
4 宮澤  同じ濡れ落ち葉でも、紅葉は風情があります。そうい
えば「小糠雨ふる御堂筋・・」と歌った欧陽菲菲はどこへ行った
のでしょうか?
(061)  いつのまに「まいったなもう」口癖に    深瀬
(062)  川堤五羽の白鷺照らす月          橋本
(063)  大根に網タイツ着せフェティシズム     深瀬
(064)  天透きて嵯峨野の路に彼岸花        小野寺
(065)  秋雨晴れ厳かなり即位式          中津川
(066)  八千草の岸辺や今に伝えけん        治部
1 豊      岸辺のアルバムは名作でした。八千草薫の清楚な姿が
 浮かびます。静かな死に合掌。
2 柳町   
(067)  仰向けの蝉の見つめる虚空かな       深瀬
1 吉良    仰向けの息を引きとる前の蝉に自分を重ねているので
  しょうか。無になってすべてを受け入れる覚悟を感じます。
2 治部    自分の寿命が分かっているようで虚しいですよね。何
  を考えているのでしょうか。でも最後の一飛びの力は残してい
  るのです。ただ、今回の句会の季節としてはどうですかね。
3 宮澤  「八日目の蝉」を演じきって満足なのか、地上での短
い寿命の不条理を憤っているのか?合掌。
4 小野寺  生きとしいけるもの、皆平等に死はやってきます。蝉
の複眼が死の底でみた先は無限の虚空だったかもしれませんね。
(068)  蟷螂は健気に百舌の贄となり        小野寺
1 桑子    健気に贄となるという表現がすてきです。気に入りま
  した。
2 橋本    カマキリが百舌の贄となっているのは見たことがあり
 ませんが、健気がなんとも、、、
(069)  血税の花見の宴に露と消ゆ         橋本
1 中津川
(070)  蟋蟀の声不意に消え藪暗し         豊 
1 宮澤  虫の演奏が突然終わり、静寂が訪れると、寂しさに抱
きすくめられたような気になります。
(071)  朝霧や柿の実ひとつ濡れ残り        小野寺
1 吉良    そろそろ冬も近くなり、少し寂し気な田園風景を想像
  させられます。
2 豊      秋の朝の風景をうまく切り取っています。「濡れ残り」
 が効果的です。
3 治部    柿は一つ取り残した方が翌年の実りが良いそうです。
  濡れ残りが朝霧を強調していていいですね。
(072)  大根の磨かれし艶パリ画風         深瀬
(073)  蒼き露野仏の頰伝い落ち          小野寺
1 秋岡    ”蒼き”露とはどんなイメージなのでしょうか?絵画
 的ですね。
2 志方    秋の情緒がひそやかに伝わります
3 柳町   
(074)  美咲呼び紅葉且つ散る道志川        治部
(075)  コスモスの咲き乱れたる野の原に      秋元
(076)  落ち葉踏む音静まれり古都の路       小野寺
1 吉良    本当は落ち葉の踏む音がしてるのでしょうが、それも
  聞こえない静寂さを感じることができました。
2 秋元    古都の静寂が伝わって来る
(077)  国東の古代の田にも今年米         深瀬
(078)  熱燗の温さを好む朋逝きて         志方
1 小野寺  熱燗の温さ加減を知り抜いていた朋の死はしみじみと
切ないですね。
(079)  枝見上げいましばらくの落ち葉掃き     橋本
1 桑子
2 志方    儚さが上手く表現されている秀作ですね(2 点句)
3 深瀬    毎朝、きちんと落ち葉を掃いている人の感慨のような
 ものが自然体で詠まれ、こころに響くものを感じました。
4 宮澤  最後の葉一枚が落ちると冬が来ます。外の焚火では寒
いので、家に入り暖炉で暖まりましょう。
(080)  月冴えて芒の原は銀の波          小野寺
1 秋岡    季重なりのようですが、絵画的で美しい句ですね。月
 が砂漠を照らし銀色に輝く有名な絵画(?)にも通じるような。
2 深瀬    夜の芒の原に月光が降り注ぎ、銀色の芒の穂が波のよ
 うに揺らいでいるというのは、なにか幻想的な絵画のようです。
 落ち武者の金目のものを奪おうとする盗賊でも出てきそうな不
 気味さも感じました。
 半世紀に亘る飲み友達に先立たれ
(081)  朋逝きて野辺にたたずむ彼岸花       志方
1 小野寺  長いあいだ苦楽を共にした友人の死は忍びがたいもの
があり、心に開いた穴にたたずむ彼岸花は作者自身でしょうか。
(082)  沖縄のこころ焼けたり曼珠沙華       豊 
1 鳥海    何年か前に沖縄旅行で首里城に行った事を思い出しま
  した。沖縄復帰20周年事業の一環として首里城が復活したの
  に・・・。今、「アジアの歴史と文化」と題する大学の講義の
  中で、琉球の歴史を学習しています。沖縄の墓石には中国の元
  号、日本の元号、西暦、日本の元号記載の変遷があるそうです。
  最初の日本元号使用は、琉球王朝を琉球藩にし更に沖縄県にし、
  中国との両属関係にあった琉球を組込んだ日本の「近代化」に
  よる所謂琉球処分よりも後の日清戦争に中国が負けた後の事の
  様です。
2 吉良    早く再建されることを祈るばかりです。
3 中津川
4 秋元    沖縄人の悲嘆に思いを馳せて
5 柳町   
(083)  芒原風は轍を残しけり           小野寺
1 治部    以前仙石原でこの風景を見た気がします。鉛色の空か
  ら風が吹いて芒の穂が揺れる様子が波のようだったのですが、
  轍ですか・・・なるほど恐れ入りました。
2 宮澤  風の通り道が、幾筋も見えます。この道を通って風は
どこへ行ったのでしょうか?
(084)  秋来ぬと目に見えぬまま痩せさんま     宮澤
1 中津川
(085)  昼呑みに大根おでんつまみけり       深瀬
1 志方    のんべい万歳
(086)  あだし野に煙たなびき曼珠沙華       小野寺
1 桑子  最初はちょっと分からなかったのですが、あだし野の
 意味を調べて納得しました。
2 柳町   
(087)  食卓に上らぬ秋刀魚懐かしや        秋元
1 桑子   
(088)  朱の空百舌啼く里は冬支度         小野寺
(089)  アラーキー萎び大根 (だいこ) の美学かな  深瀬
(090)  黄葉や街に小さな鼓笛隊          治部
1 豊      きれいに黄葉した銀杏並木が続く通りを、子供の鼓笛
 隊が進んでいく。その奏でる音が聞こえてくるようです。
(091)  渾身の羽ふりしぼり雁は翔び        小野寺
(092)  秋飾る石積み土手に見入り居り       橋本
        下記の2 つの句は秋そのものの季語であり、
       花弁の散る様を惜しんで
(093)  こぬか雨金木犀の花散らし         志方
1 秋元    雨に濡れた季節感のある情景
(094)  何想う金木犀の残り香に          志方
1 柳町   
(095)  山茶花は通学の子等見守りて        小野寺
1 秋岡    もう山茶花が咲きだしているのですね。都会では山茶
 花の垣根も少なくなってきたのでは。
(096)  目黒川さくら並木も紅葉に         深瀬
(097)  紅葉燃え永観堂に陽は落ちぬ        小野寺
1 志方    今年の春に青紅葉に圧倒され、晩秋の光景を想像して
 いましたが。
  注。選句にあたって寄せられたコメント
・友人の死を悼み作った句が多くなりましたね。私自身、長いあ
いだ付き合った友人の葬儀に幾つも立ち会い、残されたご家族の
慟哭の涙をみて断腸の思いでした。おろそかには、生きられない
と思うようになりました。 小野寺  健

  -------
  付記
  自由連句に参加される方のご連絡をお待ちしています。
  前回の自由連句は、7 月上旬から9 月末までの約3 ヶ月にわた
り、橋本さんの「新緑や葉裏を見せて風渡る」を発句として、小
野寺さん、吉良さん、豊さん、深瀬の四人で行いました。
  できあがったものは、七句会HPの「七句会自由連句第一回2019
年7 月9 日~9 月30日」を参照してください。
  前回の反省を踏まえ、12月下旬くらいから、下記のような要領
で第二回を行いたいと思っています。参加してもよいと思う方は、
12月中旬ころまでに、ご連絡をお願いします。 
  事務方  深瀬
  ・・・・・・・・・・
  前回は、歌仙形式 (36句) の自由連句として行われた。10句目
あたりから、わたしたちの残りの人生の整理にむけた気持ちのよ
うなものが中心的になったが、それはそれでたいへん興味深いも
のになった。
 次回に向けては、下記のような方向で行う。
1.式目 (ルール)
・次の句をつける人に誤解や戸惑いを与えないように、なるべく
補足説明を記すように心がける。 (すでに行っている人もいるが。)
・「花」、「月」、「恋」などといった定座のような規則は設け
ない。ネット運営なので時間的ゆとりがあり、特に単調になった
りすることを危惧する必要はないと思われるため。
・次の句に、前の句と同じような言葉は使わないといった基本的
なルールは、自主的に尊重すればよいという考えで進める。
・捌き手とか特に設けないが、投句の整理をする程度とする。
2.発句
・なるべく連句に参加する人が作ったもので、これまでの同季節
の句会で高い点数を得たもののなかから、適宜、選ぶという方向
とする。 (発句の選び方が、その後の流れにどのように影響する
のかは、よく分かっていない。)
3.実施する間隔、参加者
・1 ラウンドするのに前回は、約3 ヶ月 (7 月初旬から9 月末。)
かかった。ラウンドの間は、2 ~3 ヶ月はあける。
・1 ラウンドする期間は、参加する人数にもよる。前回は4 人で
あったが、あと2 ~3 人、増えても大丈夫そうである。
・前回は、歌仙形式の36句で行ったが、やや長すぎるので、24句
を1 ラウンドとする。
4.その他
・実施している最中でも、適宜、問題、等があれば、相談するよ
うにする。
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2019年10月24日木曜日

七句会 自由連句 第一回 2019年7月9日~9月30日

 自由連句のみなさま
  平島道彦様 多大な励ましをいただき、たいへんありがとうございます。

  今回は、7 月9 日に、橋本さんの
    新緑や葉裏を見せて風渡る
を発句として手さぐり的に始めた連句も、下記のように、歌仙形式の36句目を
小野寺さんに詠んでいただき、無事、満尾することができました。きびしい暑
さのなか、たいへんありがとうございました。
 10月中に、できれば今回の結果を踏まえて反省会のようなこと (例えば、ル
ールの修正。ご参考までに下段に掲載。) を行いたいと思っています。日程、
等につきましては、豊さんをはじめみなさまにご相談したいと思っています。
  深瀬

 追記
  連句と並行して、小野寺さんの伊藤忠時代の先輩であり、俳句にお詳しい平
島さんから、多大な励ましのお言葉をいただきました。満尾にしたことについ
て、下記のようなメールをいただきました。小野寺さんとわたしにいただいた
ものですが、ご参考までに下記に掲載させていただきます。注。平島さんは、
阪大OB、ポルトルガルにお住まいです。

  平島さんのメール(1)
  満尾おめでとうございます。
  自由連句という事で皆さんかなり奔放に楽しめた事でしょう。各人の長句短
句のバランスも取れていると思います。もしこれから本気で連句・歌仙に挑戦
するのであれば基本的な式目を会得して欲しいと思います。
  もう既にお持ちの方もおられるかと思いますが岩波新書1121「歌仙の愉しみ
」を参考書として読まれることをお勧めします。
  ラグビーのワールドカップで皆さん盛り上っていると思いますがあの風変わ
りなルールがあってこそ面白さが倍加していると思います。歌仙も式目に則っ
て作りますと各個人の個性が如実に発揮されて転調も大胆、作品が複雑な色合
いや音や匂いの展開で深く幅広いものになること請け合いです。
  やればやるほど面白さに嵌り、遊び心に身体も軽やかに伸びやかに応じるよ
うになりますよ!  呻吟は避けて通れないですが・・・  産みの苦しみはこれ
も快楽!
 平島道彦拝

  平島さんのメール(2)
  俳句に練達の人に釈迦に説法みたいで面映ゆいです。でも気の置けない仲間
で切磋琢磨すれば更に親和力も増して友情・友愛も深まっていきます。遠慮な
く羽目を外せるのも座の文学の良いところ。
  紹介した本 [大岡信、丸谷才一、岡野弘彦著  「歌仙の愉しみ」 (岩波新書
) 、2008年3 月刊] にありますが野坂昭如のパロディ「男の果てはみなインポ
なり」というのがありますが、これは猿蓑の「市中はものの匂ひや夏の月」の
名残の裏の凡兆の「さまざまに品かはりたる恋をして」に対して芭蕉が「浮世
の果ては皆小町なり」と付けたのを捻ったものです。
  これは極端にしても王朝文学やら滑稽やら自由闊達に奔放に遊べますので是
非皆さんでワイワイガヤガヤやりあって下さい。
 妄言多謝
 平島拝

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01  新緑や葉裏を見せて風渡る         (橋本)
02   野原に遊ぶ園児らの声        (豊)

03  チャンバラの斬られ役の子ポーズ決め     (深瀬)
04   草雲雀啼き雲流れゆく         (小野寺)

05 梅雨雲や光り焦がれる花芽かな        (吉良)
06     光合成もいまや遅しと          (深瀬)

07  よみがえる強き日射しや夏の雲      (豊)
08   鵜と戯れし不忍の池          (吉良)

09  紫陽花の青滴りぬ古都の庭         (小野寺)
10   青もいつしか枯れて黄色に      (豊)

11 駒東の紅顔男子も七十路に           (深瀬)
12   頬かすめゆく煌めきの時空(とき)   (小野寺)

13 友は逝き夢み果てなむ天の川          (吉良)
14      人それぞれの旅路はるかに       (深瀬)

15 この世からあの世へ運ぶ渡し舟      (豊)
16   漆黒の海に星流れ散る           (吉良)

17  鐘の音 (ね) に遠雷和して陽は沈み     (小野寺)
18      孤独な人の哀しみ深し        (豊)

19  予定表余白数えて蝉の声            (深瀬)
20      炎暑の浜へ潮鳴りが呼ぶ        (小野寺)

21  夏の海船誘 (いざな) いてイルカ舞う    (吉良)
22      どこまでともに一期一会を          (深瀬)

23  老いてなお若さを保つうれしさよ     (豊)
24   果てなる旅路しばし待ち詫ぶ       (吉良)

25 雲速し今際 (いまは) の声か蝉時雨     (小野寺)
26   地には空蝉ばかり残して       (豊)

27 仰向けの蝉の見つめる虚空かな         (深瀬)
28   限りある日を生命 (いのち) 尽くさむ  (小野寺)

29 朽ち果てし巨木押し上げ夏木立       (吉良)
30      若きいのちの船出しずかに         (深瀬)

31 老兵はまだ消え去らず曼珠沙華      (豊)
32    心静かに秋空見上ぐ          (吉良)

33 闇の音碧い息吐き蛍舞ひ          (小野寺)
34   源氏平家の戦い終えて        (豊)

35 六十年 (むそとせ) の住居 (すまい) の朝に秋の雲  (深瀬)
36   結界超えていざ旅発たん        (小野寺)



  ご参考  自由連句の基本ルール (当初)

・ルール  01
  発句のあとに、2 番目の人が短句(77)を詠み、それを踏まえて3 番目の人が
長句(575) を詠み、4 番目の人が3 番目の人の詠んだ長句を踏まえて短句(77)
を詠む、という手順を繰り返す。基本的に1 つ前の句のみ踏まえればよいもの
とするが、それ以前の句も踏まえるかは自由とする。

・ルール  02
  句を詠む順番は、あらかじめ決めておく。参加者が偶数人数のときは、同じ
順番で繰り返すと、長句を詠んだ人はずっと長駆を、短句を詠んだ人はずっと
短句を詠むことになってしまうので、2 巡目以降、適宜、入れ換えるようにす
る。

・ルール  03
 発句は、適当に持ってくるものとする。必ずしも、連句に参加している人の
詠んだ句にこだわらず、協議のうえ、だれの句でも発句とすることができるも
のとする。

・ルール  04
  句を詠んだら、次の人にメールで連絡するとともに、他の参加者にはCCを入
れることにする。他の参加者が進捗状況を知るため。
  次の人は、受け取ってから3 日以内に自分の句を詠んでメールすることを基
本とする。ただし、間に合わないときには、あと何日待ってくださいと連絡す
るものとする。

・ルール  05
  長句や短句を詠んだとき、なにか分かりにくい点があれば補足的な説明を加
えることも可能とする。最終的には、注釈的に残すのみとする。



2019年9月21日土曜日

七句会 第29回 ネット句会 自句自解

 七句会のみなさま
 第二十九回の選句結果を踏まえて、感想や自句自解、等をおよせいただき、
たいへんありがとうございました。
 およせいただいたものを、名前順に、ほぼそのまままとめてお届けします。
今後のやり方に、ご意見、等ありましたら、よろしくお願いします。
 七句会のweb  http://nanaku-haiku.blogspot.jp/ にも掲載してあります。
  今後とも、よろしくお願いいたします。
  深瀬 (事務方)
 追記
  自由連句を、7 月上旬から、小野寺さん、吉良さん、豊さん、深瀬の4 名に
て、歌仙形式 (36句で満尾) で行っています。あと2 句で満尾となります。無
事、終わりましたらみなさまにご報告したいと思っています。よろしくお願い
します。

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1.小野寺さん
・漣 (さざなみ) に足沈めをり夏の雲 (010)
  炎暑の海、波打ち際に足を浸して涼を取ると、波の彼方に積乱雲がわいてお
り、風が流れて、夏の日のさざめきでした。
・鐘の音に遠雷和して陽は沈み (088)
  志方さんの評がありがたい。夕暮れの寺の鐘の音と大自然の遠い雷鳴が共鳴
し合い、折しも赤い夕陽が薄闇の彼方に沈みゆく様は、自分を忘我の境地に誘
う光景でした。
・滝近し風とほりきて夏木立 (012)
  治部さんの感想の通りです。滝の音ではなく、木立を抜けて来た冷たい風と
飛沫で、滝が近くにあると感じたのです。長いあいだ杣道を歩き続けて来て汗
がすーっと引いていきました。
・梅雨あけて橋桁翔ける夏燕 (005)
  梅雨あけの晴れた日  鉄橋の橋桁を飛翔する燕は初夏の風を運ぶ夏の風物詩
です。
・紫陽花の青滴りて古都の庭 (077)
  豊さんの感想の通りです。京都の庭の片隅で雨に濡れて咲く紫陽花の花弁か
ら落ちる雫は、紫陽花の青紫をそのまま、滴らせて落ちる様でもあり脳裏に焼
き付いた風情でした。
・夏蝶の翅閉じてをり滝飛沫 (しぶき)  (095)
  滝のしぶきが微かにかかる岩に翅を閉じたまま微動だにしないルリタテハ蝶
はそこだけ山の静寂が支配しておりました。
・風孕み白帆の跡は蒼き海 (102)
  深瀬さんの評の如くです。満帆の白い帆が風を受けて大海原を走り跡に蒼い
海の航跡が鮮やかに残ります。白い帆の跡が海の蒼さを際立たせます。
・宵宮に行き交う人は薄化粧 (056)
  古都の宵宮薄明かりの中を行き交う人の横顔は皆薄化粧で艶めいておりまし
た。

2.桑子さん
・スーツ女(め)に歩調合わせて玉の汗
  スーツ姿のキャリアウーマンらしき若い女が颯爽と追い抜いて行ったので負
けるものかと後について行ったが、汗がダラダラ。年を取った、体力が落ちた
と実感したのを読みました。

3.志方さん
・ネット句会の皆様
  今回の選句結果、特に5 点句、4 点句の評価は古希過ぎた我々には、共感を
得られるもので、素晴らしいですね。
  私が一番評価したものは (漣 (さざなみ) に足沈めをり夏の雲)でした。
一幅の山水画のようなイメージが、俳句に見事に表現され、洗練された技量に
素直に評価できました。w評価(2 点)をしたいぐらいです。
  作者名をみて、さすがと、改めて感じいりました。
  そのあとの(阿蘇夏野子連れの牛の草を喰む)も淡いタッチの水彩画みたい
でいいなと思いました。同じ作者の結い上げし黒髪云々は5 点句に比べて、女
性経験の差がでているのか、残念ですね。
  さて自句解説ですが、、瀬戸の夕凪の句ですが、、もう30年以上前の瀬戸の
島々で、夕凪の暑さが停まっているのが水面に現れ、後ろからヒグラシの鳴き
声が聞こえてくる情景が時として懐かしく思い出されます。
  何かまだ働き盛りのころの残照が懐かしいですね。
  ここで提案ですが、選句の時、2 点評価を1 句だけ選句できるような選句方
法もいいかなと思っています。皆様の御意見如何ですか。

4.中津川さん
・風呂浴びて 香るみょうがの 冷奴
・流れ来る 薬味で食う 冷素麺
  毎年知人から沢山のみょうがを頂きます。酢味噌で和えたり、卵とじにした
りで食します。今回句にした次の二つも好きな食べ方です。
 4点句となった
  風呂浴びて 香るみょうがの 冷奴
はあえて季重なりでみょうがを強調したつもりです。
 もう一句の
  流れ来る 薬味で食う 冷素麺
は季重なりにならないように作りました。
・焼き鮎を 狙いし鷺の 止まる桟
  京都鴨川の川床料理屋さんで実際に体験した情景ですが、あまり現実感を出
せなかったようです。
 焼き鮎を 狙うがごとく 鷺が舞う
の方が動きがあって良かったなと思いました。

5.宮澤さん
・抜き襟の  うなじの汗に  ときめいて
 さて、皆様の味わい深い投句の中で、5 点句という望外の結果に、うなじで
はなく、わきの下に冷や汗が流れています。
  満員電車で押されると、私は背が高く、乗客を見下ろすことが多く、間近に
いた妙齢の女性の襟元につい目がいったときの状況です。
  目をそらそうとしても、身動き取れません。
  せっかくのご褒美なので素直にときめかせていただきました。
  目にした襟元は洋服ですが、和服のイメージに脚色しています。
  ほとんど妄想の世界で、正直、この句で5 点句となると、三振王の8 番バッ
ターが、偶然ホームランを打ってしまったようです。
  次回から「ホームラン王!」などと冷やかされるのが嫌で、ずる休みしよう
かなと思っています。
・人は待ち  熱風渡る  赤信号
  2 点句の「人は待ち」のほうは、夏散歩の途中赤信号で止まっても、わがま
まな熱風と自転車は信号を守りません。
  暑い中律儀に信号を待ちながら、感じたまま書きました。自転車は省きまし
た。
  車が来ないと時々赤信号を無視します。よその人は私を見て、わがままな老
人だと思っているのでしょう。
6.柳町さん
・震災の 陰りも見せず 光る海
  鉄道ファンの私としては、東日本大震災で壊滅的な破壊を受けてから8 年、
今年三月に三陸鉄道再開通のお祝い(?) に乗車してきました。
 途中は堰堤を直したり、陸橋の再敷設さらには駅そのものが位置も建屋も変
わっている箇所もありの周りは随分と様変わりしてましたが、三陸の海は以前
と同じように光輝いていました。
 そんな情景を読んでみました。

7.豊さん
・最高点句について
 「ときめきて」という生々しい表現が気になって私は選ばなかったのですが
、かえってそこがいいと皆さんは思われたのかもしれません。「 抜き襟のうな
じに汗が光っている」 、確かに色っぽいです。
・生姜擦る冷やそうめんの昼げかな
・猛暑日や激辛カレー胆試し
 この2作は我ながら駄作でした。4点句のおふたりの作品のほうがずっとい
いです。
・八月や兵士の霊が戸をたたく
 八月はお盆の月であり、戦争を語る月でもあります。太平洋戦争で南の島と
海で死んだ兵士たちの霊がお盆に合わせて故郷に帰ってくる。亡くなった兵士
の無念と、高齢化した遺族の忘れることのできないつらい記憶を組み合わせた
のですが、少し難しすぎたようです。

8.深瀬
・夏の雲空にくっきり輪郭線
  夏の雲は、強い陽差しによって、くっきりと見えます。空の蒼さと雲の白さ
のコントラスの鮮やかさが印象的です。
・阿蘇夏野子連れの牛の草を食み
  TV番組で見た風景です。旅行をほとんどしないかわりに、TV番組の録画はた
くさんあるので、録画で世界中を見てみたいと思っています。邪道(?) 。
・静かさに戦車朽ちゆく夏野かな
・ノモンハン塹壕埋む夏野かな
 TV番組でノモンハン事件のドキュメンタリーをみました。芭蕉の「夏草や兵
どもが夢のあと」からの連想もあったと思います。近代の戦争の方がよりむな
しさを感じさせられます。
・生きすぎて戸惑う人や夏の雲
  医療、食糧、生活の便利さ、等によって寿命が伸びていますが、その一方、
どう老後を過ごすか戸惑いも増えてきており、複雑な心境です。
・静かさや夏野にうなる光合成
  植物の光合成の働きは神秘的です。生命の根源のようにも感じます。
・結い上げし黒髪凛々し夏女
  お祭りに行く女性とか、銀座の夜の蝶とか、女性の変身には神秘性が感じら
れます。
・夏くれば海の蒼さに波の音
  波の音は、生命の故郷に誘い、時間を超越させてくれる感じがします。
・待合所人それぞれの夏姿
・夏空に旗立て旅行者声高く
・バッグ引きそろい半袖旅行団
  たまにJR品川駅の新幹線待合所で時間を潰すことがあります。そのとき見た
風景です。
・電線の夏雲を断つ静かさや
  以前、「夕焼けの電線よぎる落ち葉かな」という句を作りました。今度は、
夏雲が電線によって切られるという視点で詠みました。電線は昭和のイメージ
でしょうか。台風15号では電柱が倒壊したりし、地中化が進むそうです。
・木筒からにょろにょろいずるところてん
  子供のころ、秋田の母の実家に行ったとき、朝ごはんのときだったのか、目
の前で作ってくれたのが強く印象に残っています。
・水ようかん匙で切り取り孫笑顔
  もう少しで五歳になる孫 (男) との日常を思い作りました。
・ガラス器に赤いすいかの黒き種
  ややひねりすぎか、とも思います。
・おかあさーん八月の空遠くから
  戦場で兵士が死んでいくときのことを思いました。なぜ悲惨な戦争が繰り返
されるのか不思議です。
・マンションの朝つつみけり蝉の声
  周囲がほとんどアスファルトなのに、東京はかなり自然が残っているようで
す。蝉の鳴き声のシャワーをあびるとなにかほっとします。
・古池や浮かぶ花弁に蟻二匹
  以前、「水面のバラの花弁に蟻ひとつ」という句を作ったのですが、季重な
りでもあり、芭蕉の句も意識して作りなおしてみました。
・足もとの蟻踏み避けて生思ふ
  「蟻」という兼題の句会で、日常的に感じていることを詠みました。
・緑陰のひかり濃淡万華鏡
  新緑のころの木蔭から太陽の陽が差してくる光景を詠んでみました。万華鏡
でよいのか迷いましたが、家内の「いんじゃないの」の一言でこうしました。
・梅雨の朝街路のみどり輝けり
  梅雨のころは曇天が多いのですが、朝の街路樹は意外と輝いてみえるのが印
象に残りました。
・屋形船連句に興ず旦那衆
  連句はゆとりのある旦那衆とか呼ばれる人たちのたのしみだと言われていま
す。芭蕉の紀行文もそうした人たちとの交流のなかで作られたようです。いま
はネットの時代なので、そういう制約もなくなったと感じています。
・街電車みどりに染まり走りゆく
  街路樹や線路沿線の深い緑を思って詠みました。
・奈落へと引きずりこまる老ひごこち
  七十歳も超えると、急に老化が進む感じをもつことがあります。そうしたと
きの恐怖感のようなものを詠んでみました。
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2019年8月29日木曜日

第二十九回 七句会 ネット句会 選句の結果をご報告します。

 七句会のみなさま                          
                                   
 第二十九回の七句会にご参加いただきたいへんありがとうございました。 
今回の選句結果をご報告いたします。                  
                                   
 5 点句                               
(066)   抜き襟の うなじの汗に ときめきて    宮澤        
                                   
 4 点句                               
(032)   風呂浴びて 香るみょうがの 冷奴     中津川       
(070)   古希過ぎて悪びれもせず昼寝かな      治部        
                                   
 3 点句                               
(010)   漣 (さざなみ) に足沈めをり夏の雲     小野寺       
(011)   阿蘇夏野子連れの牛の草を食み       深瀬        
(015)   結い上げし黒髪凛々し夏女         深瀬        
(017)   電線の夏雲を断つ静かさや         深瀬        
(053)   風止まる 瀬戸の夕凪 蝉しぐれ      志方        
(055)   屋根の上たまに顔出す花火かな       桑子        
(088)   鐘の音に遠雷和して陽は沈み        小野寺       
                                   
 2 点句                               
(005)   梅雨あけて橋桁翔ける夏燕         小野寺       
(012)   滝近し風とほりきて夏木立         小野寺       
(014)   生茂る 夏草のなか 百合一輪       志方        
(019)   生きすぎて戸惑う人や夏の雲        深瀬        
(026)   一涼の鶯の声夏の朝            橋本        
(029)   水ようかん匙で切り取り孫笑顔       深瀬        
(034)   茄子胡瓜トマト青紫蘇朝もぎり       秋元        
(038)   庭育ち味噌付け胡瓜の旨さかな       橋本        
(043)   素麺の 木箱に染まる 潮の香や      吉良        
(049)   花火果て空に静けさ戻りけり        豊          
(057)   瀬の音や若き岩魚の影速し         治部        
(071)   緑陰のひかり濃淡万華鏡          深瀬        
(077)   紫陽花の青滴りて古都の庭         小野寺       
(080)   震災の 陰りも見せず 光る海       柳町        
(083)   足もとの蟻踏み避けて生思ふ        深瀬        
(084)   人は待ち 熱風渡る 赤信号        宮澤        
(087)   スーツ女 (め) に歩調合わせて玉の汗    桑子        
(095)   夏蝶の翅閉じてをり滝飛沫 (しぶき)     小野寺       
(102)   風孕み白帆の跡は蒼き海          小野寺       
                                   
  下記に、選句表に、各句の右側に作者名、および、その下に選んだ人の名前
とコメント (追番付き、順不同、敬称略。) を付したものを添付します。  
  次回については、10月中旬ころにご連絡したいと思っていますので、よろし
くお願いいたします。やり方、等について、ご意見がありましたら、ご連絡を
いただきたく、よろしくお願いいたします。               
                                   
 事務方から、以下、ご連絡、ご依頼です。               
                                   
(1) 選句参加者                            
 今回の選句には、下記の14名が参加しました。             
  秋岡さん、秋元さん、小野寺さん、吉良さん、桑子さん、志方さん、治部さ
ん、中津川さん、橋本さん、宮澤さん、森杜瑯さん、柳町さん、豊さん、深瀬
。                                  
                                   
(2) 今回の句会の結果を踏まえた自句自解、感想、等の募集について    
  今回の句会の選句結果を踏まえて、各自、表明しておきたいこともあるので
はないかと思いますので、自句自解、感想、等、なんでも結構ですので、募り
たいと思います。一応、期限としては9 月16日とし、事務方にメールでいただ
き、それを七句会の下記のweb に掲載することにしたいと思います。    
 http://nanaku-haiku.blogspot.jp/                  
  これまで、句会の後、勉強会としての集まりを企画していましたが、参加者
が少ないこともあり、改めることにしました。集まっての勉強会も適宜、行い
たいとは思っていますが、よろしくお願いします。            
                                   
  2019.08.29                            
      代表   橋口侯之介 (休会中)                   
      顧問  豊  宣光                        
      事務方 深瀬久敬                        
                                   
----------------------------------------------------------------------
                                   
  1.兼題  夏 (夏野、夏の海、夏の雲、夏の月、夏の山、夏祭、等)     
                                   
(001)   エアコンを効かして掃除すなる夏      橋本        
(002)   待合所人それぞれの夏姿          深瀬        
1 秋岡    旅行先或いは帰省先での待合所でしょうか、夏の風物      
  詩を感じます                            
       昔、夏の「白馬」に登山した時の思い出を            
     読みました。                          
(003)   残雪に 心浮かれる 夏の山        柳町        
1 秋元                                  
(004)   静かさに戦車朽ちゆく夏野かな       深瀬        
1 豊      長い年月が経ち、すっかりさびて戦場跡に残されたま      
 まの戦車。静かな夏野の風景に戦争の記憶をうまく詠みこんで      
 います。                              
(005)   梅雨あけて橋桁翔ける夏燕         小野寺       
1 宮澤                                
2 橋本                                
       以前勤めていた会社主催の「夏祭り大会」            
     に孫にせがまれて連れて行ったところ、金魚            
     すくいで思わぬほど大漁(?) で大きなビニー            
     ル袋に入れてくれたのはいいが、重くて孫に            
     は持てない状況を読みました。                  
(006)   孫の手に 余る金魚や 夏祭        柳町        
(007)   夏くれば海の蒼さに波の音         深瀬        
(008)   命懸け 耐熱テスト 夏散歩        宮澤        
1 橋本                                
(009)   ノモンハン塹壕埋む夏野かな        深瀬        
(010)   漣 (さざなみ) に足沈めをり夏の雲     小野寺       
1 志方    涼しさが絵画的に伝わってきます。              
2 秋元                                
3 宮澤                                
(011)   阿蘇夏野子連れの牛の草を食み       深瀬        
1 治部    草千里のあたりでしょうか、牛の親子が草を食む様子      
 が何とも穏やかな景色ですね。目に見えるようです。          
2 志方    のどかさ想像できて、いいですね。              
3 柳町                                
(012)   滝近し風とほりきて夏木立         小野寺       
1 治部    山道を歩いていて滝に出くわすことありますよね。似      
  たような句はいくつかあると思いますが、たいがい音が先に来      
  るのに、作者は風に乗ってきた飛沫や涼しさで滝の接近を感じ      
  たのでしょう。木立の中を歩いて汗をかいた後の涼しげな雰囲      
  気がよくわかります。                        
2 中津川  木の間を抜けて滝の音も聞こえて来ますね           
(013)   白球が真夏の空へ甲子園          豊          
1 秋岡    ストレートに詠んだ句が高校野球らしくていいです。      
(014)   生茂る 夏草のなか 百合一輪       志方        
1 桑子    緑の中にぽつんと白い百合、ひときわ目立つその光景      
 が目に浮かびます。小生も庭の草木の中に切り忘れたあじさい      
 が一輪在って、その光景を読みたがったが浮かばなかったです。     
2 小野寺  夏草の繁る雑草のなか白い山百合の花一輪、風情があ      
 りますね。                             
(015)   結い上げし黒髪凛々し夏女         深瀬        
1 治部    黒髪を結い上げている夏女はたぶん浴衣姿でしょう。      
  艶っぽかったでしょうに。凛々しく見えたのは家族だからです      
  かね。違うでしょう。本当は凛々しではなかったのではないで      
  すか作者殿?いかが?                        
2 森杜瑯                               
3 小野寺  きりりと結びあげたひっつめの黒髪は健康的で爽やか      
 な美人でしょうか。夏女とはいいですね。               
(016)   夏霧や 虫の骸に 蝉時雨         宮澤        
1 柳町                                
(017)   電線の夏雲を断つ静かさや         深瀬        
1 吉良    電線は送電線ですかね。日常の何気ない風景の観察が      
 良いと思います。                          
2 中津川  一本の電線が空(空間)を上下に切り分けています       
3 小野寺  夏の入道雲を切り従える電線は確かに動と静で静寂を      
 感じさせますね。                          
(018)   振り返る 間もなく光る 夏の雲      吉良        
1 治部    夏の雷の様子がよくわかりますね。一文字開けないほ      
  うがいいと思いますよ。間もなく光るのではないでしょう。光      
  った方を振り返る間もなく次が光るのでしょう。夏の積乱雲を      
  飛び交う稲妻は、光のショウタイムのように見えることがあり      
  ますね。                              
(019)   生きすぎて戸惑う人や夏の雲        深瀬        
1 志方    古希過ぎて、老いをどう認識するか、考えさせらます。     
2 森杜瑯                               
      夏休みの部活                         
(020)   たくましさ 日に日に黒く 孫の夏     中津川       
1 桑子    夏休みで野球かサッカーの練習でもしているのでしょ      
  うか、孫の成長を見守る情景が目に浮かびます。            
(021)   ホットする たまには涼し 夏の風     志方        
(022)   夏の雲空にくっきり輪郭線         深瀬        
1 宮澤                                
(023)   止まり木に 心残して 夏の酔い(宵)   志方        
1 治部    この句はオールシーズンですね。春夏秋冬いつでも止      
  まり木に心残す人はいるものです。作者は、酒も止まり木も大      
  好きなのでしょう。選者もしかりです。                
(024)   静かさや夏野にうなる光合成        深瀬        
(025)   夏祭り 浴衣に赤い 鼻緒かな       志方        
1 深瀬    白い浴衣と下駄の赤い鼻緒の色彩感覚、そして、それ      
 らを身につけた女性の雰囲気がほのかに漂ってくる感じです。      
(026)   一涼の鶯の声夏の朝            橋本        
1 吉良    鶯は春の季語ですが、夏山に行くと爽やかな声で迎え      
 てくれます。                            
2 小野寺  鶯は春の季語ですが、初夏の朝に啼く鶯は確かに、涼      
 を呼びますね。                           
(027)   夏空に旗立て旅行者声高く         深瀬        
                                   
                                   
  2.兼題  夏の食べ物、料理 (トマト、かき氷、素麺、ところてん、等)   
                                   
(028)   炎天下 並んで待つか かき氷       中津川       
(029)   水ようかん匙で切り取り孫笑顔       深瀬        
1 桑子    匙で切り取るという表現がすてきです。おいしさが伝      
  わってきます。                           
2 秋岡    お孫さんがかわいくて仕方がないのですね。          
(030)   素麺を 黙してすする 昼下がり      吉良        
(031)   夏昼餉梅干し納豆熱いお茶         橋本        
(032)   風呂浴びて 香るみょうがの 冷奴     中津川       
1 志方    冷酒一杯と直ぐに注文したくなる句ですね           
2 秋岡    夏はこのパターンが最高ですね、後は冷酒か冷えたビ      
  ールですね。                            
3 橋本                                
4 深瀬    みょうがと冷奴の色彩感覚に惹かれました。ビールと      
 か飲みながら、風呂上がりのゆったりした雰囲気も伝わってき      
 ます。                               
(033)   生姜擦る冷やそうめんの昼げかな      豊          
(034)   茄子胡瓜トマト青紫蘇朝もぎり       秋元        
1 柳町                                
2 吉良    朝とれたての感じが「もぎり」で表現されています。      
(035)   細けれど素麺助く細る食          橋本        
(036)   切るのみで 買いし巻き寿司 食べる昼   中津川       
(037)   ガラス器に赤いすいかの黒き種       深瀬        
(038)   庭育ち味噌付け胡瓜の旨さかな       橋本        
1 桑子    やはり自分で育てた野菜は形はどうあれうまい。もろ      
  きゅうは最高です。                         
2 中津川  自分で育てた野菜の味は一層おいしいでしょう         
(039)   道の駅一足早い心太            治部        
1 豊      車で旅する途中なのでしょう。もしかすると名物の心      
 太を求めての旅なのかもしれません。「 一足早い」 とあります      
 から、たまたま立ち寄った道の駅で、目的地よりも早く心太に      
 出会ったということでしょうか。                   
      鴨川の川床料理で                       
(040)   焼き鮎を 狙いし鷺の 止まる桟      中津川       
(041)   そうめんは トマトに胡瓜 錦糸卵     志方        
(042)   木筒からにょろにょろいずるところてん   深瀬        
(043)   素麺の 木箱に染まる 潮の香や      吉良        
1 秋元                                
2 深瀬    かつてはお中元とかで、束ねた素麺がいくつか入った      
 木箱をよくみかけました。独特な香りですが、web によれば、      
 「日本国内では近世より西日本を中心に素麺生産が盛んであっ      
 た。これは原料となる小麦、水(軟水)、食塩(海水塩)の産      
 地が近かったことが1 つの理由である。」との解説があり、納      
 得しました。                            
       以前勤めていた会社主催の「夏祭り大会」            
     に孫にせがまれて連れて行ったところ、懐か            
     しい後輩が出店でトマトを販売していたので            
     思わず買って食べた時の情景です。                
(044)   夏祭 孫と頬張る 冷トマト        柳町        
(045)   孫惑う 赤青黄色 かき氷         吉良        
(046)   江戸切子 静かに漂う 冷素麺       宮澤        
(047)   猛暑日や激辛カレー胆試し         豊          
(048)   流れ来る 薬味で食らう 冷素麺      中津川       
                                   
                                   
  3.雑詠、無季語                           
                                   
(049)   花火果て空に静けさ戻りけり        豊          
1 秋元                                
2 宮澤                                
(050)   夕闇の川面を急ぐ屋形船          秋元        
(051)   海恋し炎暑の浜へ潮鳴りは呼ぶ       小野寺       
(052)   パリ祭や 踊る乙女の 夢たどる      吉良        
(053)   風止まる 瀬戸の夕凪 蝉しぐれ      志方        
1 柳町                                
2 吉良    経験がないのですが一度訪ねてみたくなる気分を感じ      
 させます。                             
3 宮澤                                
(054)   蓮子の花水面( みなも) の下に蜘蛛の糸   小野寺       
(055)   屋根の上たまに顔出す花火かな       桑子        
1 橋本                                
2 深瀬    実際の花火大会の現場に行ったことがありません。い      
 つも屋根の上とかビルの合間からみています。既視感に訴えら      
 れた感じです。                           
3 小野寺  屋根の上から眺める花火は確かに音も微かで、たまに      
 しか顔を出さないと言う表現が言い得て妙に面白い。          
(056)   宵宮に行き交う人は薄化粧         小野寺       
1 中津川  京都の町の浴衣の女性は皆美しく見えます           
(057)   瀬の音や若き岩魚の影速し         治部        
1 吉良    山間の沢の涼しさを味わえる句です。             
2 深瀬    岩魚の素早い動きが音感や色彩感覚の両面から活写さ      
 れているように印象深く感じました。                 
(058)   変幻に姿を変える仕掛け火や        秋元        
(059)   雨に濡れ問はずかたりの白牡丹       小野寺       
(060)   おかあさーん八月の空遠くから       深瀬        
      夏の立山で発見                        
(061)   見つけたり 雷鳥親子 走り去り      中津川       
(062)   古希過ぎて頬かすめ行く煌めきの時空 (とき) 小野寺       
(063)   大輪の夜空の頬を赤に染め         秋元        
(064)   大花火滝のしたたり闇の音         小野寺       
(065)   屋形船連句に興ず旦那衆          深瀬        
(066)   抜き襟の うなじの汗に ときめきて    宮澤        
1 治部    いいかげん卒業しましょう。でもわかりますよ。ホン      
  ト                                 
2 秋元                                
3 森杜瑯                               
4 桑子    まだときめきがあるというのはすばらしいしうらやま      
  しい、と同時にうなじの汗が見えるのは視力がいいせいなのか      
  はたまた見えるほど近づいていたのでしょうか。気になるとこ      
  ろです。                              
5 小野寺  抜き襟のうなじに滲む汗は確かに艶めいて、色気があ      
 りますね。                             
(067)   潮騒は読経の声か蝉時雨          小野寺       
1 森杜瑯                               
(068)   花火咲き台場の橋を透かし見る       秋元        
(069)   昼下がりジムのプールや四面女声      桑子        
(070)   古希過ぎて悪びれもせず昼寝かな      治部        
1 吉良    リタイアしてのんびり過ごせる身分がうらやましく思      
 えます。                              
2 桑子    70も過ぎると恥も外聞もなくなってくるが、それを      
  悪びれもせずと開き直っている?ことに感心しました。         
3 秋岡    ”悪びれもせず”という言葉で思わずニヤリとしまし      
  た。                                
4 中津川  私も悪びれず昼寝します                   
(071)   緑陰のひかり濃淡万華鏡          深瀬        
1 志方    井之頭公園の奥の雑木林の夏木立の中を散歩している      
 ときに、感じます。                         
2 小野寺  木漏れ日の緑の光の濃淡はさながら自然の万華鏡です      
 ね。美しい。                            
(072)   蠍座は銀河の彼方紅く燃ゆ         小野寺       
(073)   マンションの朝つつみけり蝉の声      深瀬        
(074)   肩紐のあとが残れる日焼け肌        豊          
(075)   川面ゆく舟の灯りに蝉時雨         秋元        
1 柳町                                
      全英女子オープンゴルフ優勝のスマイルシ            
     ンデレラ渋野選手、元気もらった                 
(076)   全英のスマイルシブノ有難し        橋本        
(077)   紫陽花の青滴りて古都の庭         小野寺       
1 秋元                                
2 豊      鎌倉にあじさい寺があります。あるいは、 古都は京都      
 かもしれません。「 青滴りて」 なので、雨がやんだあと紫陽花      
 の花に雫が残っている情景でしょうか。きれいな句です。        
(078)   街電車みどりに染まり走りゆく       深瀬        
1 橋本                                
(079)   送り火や火照りし人の洗い髪        小野寺       
       東日本大震災から8 年、三陸鉄道全通のお            
     祝い(?) に乗車しました。駅の周りは随分と            
     様変わりしてましたが、三陸の海は以前と同            
     じように光輝いていました。                   
(080)   震災の 陰りも見せず 光る海       柳町        
1 志方    三陸の復興の様が伝わって、うれしいですね          
2 橋本                                
(081)   硯洗いの桶墨絵のキャンバス        治部        
1 中津川  無季語、破調の句が新鮮に感じました             
(082)   谷深し山鳩啼きて朋は逝き         小野寺       
(083)   足もとの蟻踏み避けて生思ふ        深瀬        
1 宮澤                                
2 豊      足を踏み出そうとしたら、足もとに蟻が這っているの      
 を見つけたので、踏み潰さないように避けた。小さな生き物の      
 命が自分の命と重なったのです。作者の優しさがうかがえます。     
(084)   人は待ち 熱風渡る 赤信号        宮澤        
1 秋岡    本当に暑い夏です。信号待ちの時間は熱風が一段と熱      
  く感じます。”熱風渡る”が面白いですね。              
2 橋本                                
(085)   天地 (あめつち) を濡らして匂ふ百合の花  小野寺       
(086)   八月や兵士の霊が戸をたたく        豊          
(087)   スーツ女 (め) に歩調合わせて玉の汗    桑子        
1 治部    なぜ歩調を合わせたのかが不明。スーツ女は誰ですか。     
  娘、孫でなければ作者は変ですよ。ただ、行動に移さずに汗を      
  かかない選者にも気が付きました。                  
2 秋岡    スーツ姿は就職活動中の若い娘でしょうか、彼女らに      
  歩調を合わせて歩くと間違いなく汗が吹き出します。しかし負      
 けたくない。いいですね。                      
(088)   鐘の音に遠雷和して陽は沈み        小野寺       
1 志方    音の共鳴が見事に表現されています。夕陽が水平線に、     
 ポトンと落ちていく様が想像されます。                
2 秋元                                
3 森杜瑯                               
(089)   梅雨の朝街路のみどり輝けり        深瀬        
(090)   打ち水の 朝顔咲ける  路地裏は     志方        
(091)   郭公は谺 (こだま) となりて友を呼び    小野寺       
(092)   古池や浮かぶ花弁に蟻二匹         深瀬        
1 柳町                                
(093)   朝一でラジオに合わせ集う子ら       秋元        
(094)   雨音の閑かに包む梅雨の朝         橋本        
1 深瀬    梅雨らしい朝の静寂の雰囲気がよく描写されていると      
 感じました。                            
(095)   夏蝶の翅閉じてをり滝飛沫 (しぶき)     小野寺       
1 吉良    絵になる光景ですね。                    
2 豊      翅を閉じているのですから、蝶は石の上か花の上に止      
 まっているのでしょう。近くで滝がしぶきを上げている。けれ      
 ども蝶は逃げることなく止まったまま。山の静かな風景が想像      
 されます。                             
(096)   子供らの遠ざかる声薮蚊たつ        治部        
1 豊      夏休みの子供たちが野原で遊んでいます。藪蚊が出て      
 きたので子供たちは遠ざかったのか、それとも騒いでいた子供      
 たちがいなくなったから藪蚊がたったのか。どちらにしても、      
 夏の一コマです。                          
(097)   バッグ引きそろい半袖旅行団        深瀬        
(098)   鈍色の汀 (みぎわ) さざめき糸トンボ    小野寺       
1 中津川  子供の頃の池のある景色を思い出しました           
(099)   運試し ジャンボは外れ 暑気当たり    宮澤        
(100)   夕立や傘開かずに雨宿り          治部        
(101)   奈落へと引きずりこまる老ひごこち     深瀬        
(102)   風孕み白帆の跡は蒼き海          小野寺       
1 柳町                                
2 深瀬    満帆の白い帆が蒼い海の上をまっすぐに突き進み、航      
 跡波を長くひいている情景が目に浮かびました。            
                                   
                                   
                                   
  追記                                
                                   
1.選句の際、お送りいただいたコメントです。              
・ちょっと偏った選句になりましたが、暑さに免じてお許しください。 (治部
さん)                                 
・今回は傑作が多く選句に迷いましたが、個人的な共感だけで選んでみました
。 (志方さん)                             
・暑いですね!!孫も帰り、ほっとした時間を過ごしています。 (柳町さん)
・素人なので的外れになるかもしれませんが、ご容赦下さい。感想になってし
まいましたがよろしくお願いいたします。 (桑子さん)           
・今回は、私の投句は間に合いませんでした。 (森杜瑯さん)        
・7月の初めに母親が95歳で亡くなり、昨日満中陰志を終えました。長く寝
込むこともなく95歳まで長生きしてくれましたので感謝しています。遅くな
りましたが以下の通り選句させて頂きましたのご連絡いたします。 (秋岡さん
                                   
・暑かった今夏の情景を思い浮かべ、六句選句しました。 (宮澤さん)    
・猛暑のせいか、今回は皆さんだいぶ苦労されたようでした。 (豊さん)   
・ようやく少し凌ぎやすくなってきましたので、体調を良くして行きたいと思
っています。庭木、芝が伸び放題なのでまずこれを片付けねばなりません。 (
橋本さん)                               
                                   
2.七句会自由ネット連句の進捗状況                   
  7 月上旬に始めた自由連句は、今現在、下記のようになっています。参加し
てもよいとお思いの方は事務方までご連絡ください。           
                                   
01  新緑や葉裏を見せて風渡る       (橋本)            
02   野原に遊ぶ園児らの声      (豊)            
                                   
03  チャンバラの斬られ役の子ポーズ決め   (深瀬)            
04   草雲雀啼き雲流れゆく       (小野寺)           
                                   
05 梅雨雲や光り焦がれる花芽かな      (吉良)            
06     光合成もいまや遅しと        (深瀬)            
                                   
07  よみがえる強き日射しや夏の雲    (豊)            
08   鵜と戯れし不忍の池        (吉良)            
                                   
09  紫陽花の青滴りぬ古都の庭       (小野寺)           
10   青もいつしか枯れて黄色に    (豊)            
                                   
11 駒東の紅顔男子も七十路に         (深瀬)            
12   頬かすめゆく煌めきの時空(とき) (小野寺)           
                                   
13 友は逝き夢み果てなむ天の川        (吉良)            
14      人それぞれの旅路はるかに     (深瀬)            
                                   
15 この世からあの世へ運ぶ渡し舟    (豊)            
16   漆黒の海に星流れ散る         (吉良)            
                                   
17  鐘の音 (ね) に遠雷和して陽は沈み   (小野寺)           
18      孤独な人の哀しみ深し      (豊)            
                                   
19  予定表余白数えて蝉の声          (深瀬)            
20      炎暑の浜へ潮鳴りが呼ぶ      (小野寺)           
                                   
21  夏の海船誘 (いざな) いてイルカ舞う  (吉良)            
22      どこまでともに一期一会を        (深瀬)            
                                   
23  老いてなお若さを保つうれしさよ   (豊)            
24   果てなる旅路しばし待ち詫ぶ     (吉良)            
                                   
25 雲速し今際 (いまは) の声か蝉時雨   (小野寺)           
26   地には空蝉ばかり残して     (豊)            
                                   
27 仰向けの蝉の見つめる虚空かな       (深瀬)            
                                   
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2019年6月18日火曜日

七句会 第28回ネット句会の自句自解、および、ネット自由連句会の参加者募集

 七句会のみなさま                          
                                   
 第二十八回の選句結果を踏まえて、感想や自句自解、等をおよせいただき、
たいへんありがとうございました。                   
 およせいただいたものを、名前順に、ほぼそのまままとめてお届けすること
にします。今後のやり方に、ご意見、等ありましたら、よろしくお願いします。                                  
                                   
 七句会のweb  http://nanaku-haiku.blogspot.jp/ にも掲載してあります。
  今後とも、よろしくお願いいたします。                
  深瀬 (事務方)                            
                                   
 追記                                
                                   
  七句会ーネット自由連句会の参加者を募集しています。         
  実施要領は、豊さんと協議し、下記のような案を検討しています。    
  俳句は、全員参加型の文芸であり、かつての連句は座に集まった人たちが長
句 (五七五) と短句 (七七) を交互に詠み即興でたのしみましたし、近年の句
会は選句の点数の多寡を通して共感の多彩さをたのしむといったものになって
います。                               
  本格的な連句は即興性が求められ、なおかつ、発句、脇句、第三、平句、挙
句とか、定座とか、かなり複雑なルールがあるため、それなりの参加者意識が
求められ、やや敷居の高いものになっています。             
 そこで、連句の複雑なルールは一切無視し、前の長句や短句を、兼題のよう
なものとして (連想ゲームのように) 、ネットで自由連句を試行してみたいと
思っています。できあがったものは、全員の作品であり、通常の単体の俳句を
作るのとは違った趣があると思います。                 
  順番は、あらかじめ決めておき (1 番目は豊さん、2 番目は深瀬。) 、ネッ
トで遅くとも2 ~3 日以内には詠んで送ります。何回繰り返すかは、参加人数
にもよると思いますが、2 ~3 回くらいを想定しています。発句は、七句会の
選句結果から適当に選ぶような方向です。                
  なんにんでも構いませんので、参加してもよいという方は7 月6 日までに、
ご連絡をいただきたく、よろしくお願いします。7 月中旬ころからのスタート
を予定しています。                          
                                   
 連句については、下記のURL を参照してください。           
・連句のルール早わかり - BIGLOBE                   
  http://www5b.biglobe.ne.jp/~kyonta/renku/quickrule.htm       
・連句の歴史と意義 - BIGLOBE                     
  http://www5b.biglobe.ne.jp/~kyonta/renku/history.html        
・連句とは |一般社団法人日本連句協会                 
  https://renku-kyokai.net/renku/                   
                                   
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1.小野寺さんの自句自解                        
                                   
・葉桜や睫毛に宿る涙跡                        
  葉桜の新緑の季節が来ると、別れた人の切れ長の瞳の睫毛に光る涙の跡をか
すかな心の痛みと共に想いだします。                  
  立原道造の詩、ゆうすげびと、の最後の一節が重なります。       
    ーしかし、僕はあまりに、老いすぎた。               
    若い身空で、あなたを悔いなく                   
  去らせたほどにー、                        
                                   
・硯擦る目に新緑の匂 (にほひ) 発ち                  
  文を書こうとして硯を擦ると窓の外に爽やかな新緑が鮮やかに拡がり、墨の
香りが匂い立つように、心に沁みます。                 
                                   
・散る花を貴船の杜で浴びにけり                    
  京の鞍馬の貴船の杜で花吹雪が舞い散るさまを身に浴びてとして活写したも
のです。                               
                                   
・春雷の闇切り裂きて花は散り                     
  春雷の黒雲を稲妻が走り桜の花びらが光りながら散り敷く様は一幅の墨絵の
世界でした。                             
                                   
・たまゆらの生命 (いのち) 鎮めて春の海                
  人の生は邯鄲の夢の如くに一瞬の夢まぼろしでもあります。あの大震災で失
われた幾多の命に対し、今春の海は凪いで鎮魂の祈りを捧げているかのようで
す。                                 
                                   
・花月夜黒髪匂ひ (にほひ) 風にゆれ                  
  満開の花月夜の艶やかで確かな記憶です。湯あがりの洗い髪の匂いが、物憂
げに風にただよい、夜の帳 (とばり) が音もなく更けてゆきました。    
                                   
                                   
2.橋本さんの自句自解等                        
                                   
  さて、この度のネット句会の選句結果を見て、8点句に選ばれ本当に驚いて
います。驚きの醒めない内にと、感想及び投句した句の背景など書かせていた
だきました。                             
  今回は8点句に選ばれ、大相撲の朝乃山がトランプ氏から "米国大統領杯"
を頂いたような気分です。俳句始めたのは、深瀬さんからゴルフが縁で「何で
もありですよ」と七句会への参加を薦められてのことです。定年後の頭の体操
 (ぼけ防止) にも良いかと、五七五を続けて、平成26年2月の第七回から一
応皆勤しています。笑いのあるものも好きですが、どちらかというと自然を多
く詠んでいます。                           
                                   
・新緑や葉裏を見せて風渡る  (8点句)                 
 散歩で近くの清水公園の森を眺めたときの光景です。風が新緑の枝をなびか
せ葉をめくり、白い葉裏を波のように見せて渡っていく。         
                                   
・鯉の恋我先競ふ春の川  (1点句)                   
 水温む春の座生川( 江戸川の支流) では、子孫を残すため我先にと雌の廻り
で水しぶきを上げて雄鯉達のバトルが見られる。(宮澤さんの様にも想像して
いただけるのかなと楽しくなります)                  
                                   
・ハゼと水両元繋ぐ自然愛  (1点句)                 
 平成の明仁天皇はハゼを研究し、令和の徳仁天皇は水、自然を愛し平和な時
代が続いて欲しい。                          
                                   
・我が時と若葉のキャンバス八重桜                   
 ソメイヨシノは葉桜となり、廻り一面若葉の緑の中に時は今と美しくき誇る
ピンク色の八重桜。                          
                                   
・改元に生きて皇居の近くなり                     
 平成が令和となる一連の改元に伴う多くの関連する情報がメディアからもた
らされ、皇居の全体像、祭祀をはじめ皇室の務め、住まい、生活などを知り以
前より天皇や皇室に親近感を覚えた。                  
                                   
・万葉の令月と風和の令和来る                     
 良い意味の令「整って美しい、麗しい」を万葉集から採り、続く和と結びつ
けるとは私事的には思いも寄らないこと。                
                                   
・陽光に新緑揃ひ庭光る                        
 常緑広葉樹も新芽を出すと同時に古葉を落として、庭木はほぼ一斉に新緑と
なり陽射しに煌めく。                         
                                   
                                   
3.柳町さんの自句自解                         
                                   
  2点句になったそうですので、少し説明をします。           
・目に映える 若葉の緑に 心燃ゆ                   
  一年のうち特に、5月の新緑、10月の紅葉は心躍る時期であり、残り少な
い人生を少しでも楽しもうといろいろ思うもの( 願うものかな??)が心を過
ります。                               
  その気持ちを少しでも表せたらと思い詠んでみました。         
                                   
                                   
4.豊さんの自句自解等                         
                                   
  最高点句についての感想                       
 私も選句した一人ですが、8人が選んだのはこれまでで最高ではなかったで
しょうか。                              
 完成度の高いいい句であるのは間違いありません。その魅力を皆さんが素直
に感じたということでしょう。                     
 それもまたすばらしいことだと思います。               
                                   
  自句自解                              
・闊歩する就活女子や春の蝶                      
 秋岡さんの指摘にもあるとおり、 就活の女子学生を春の蝶に見立てて詠んだ
句です。                               
 4月、同じようなリクルートスーツに身を固めた女子学生を何人も見ました
。会社説明会へ行くところなのでしょうが、皆さっそうと歩いているので、春
の蝶のイメージに重ねたのです。「夜の蝶」だとイメージが全く変わります。
                                   
・梅の香や旅人憶良の歌の宴                      
 令和の出典になった万葉集の詞書きは、大伴旅人が太宰府で開いた、梅を愛
でながら歌を詠むという宴についての文章で す。その宴には、旅人の歌仲間
である山上憶良も参加していました。二人とも有名な万葉歌人です。それにな
ぞらえて令和のことを詠んでみたのですが、うまく伝わらなかったようです。
                                   
・菜の花を血の色に染め夕日かな                    
 夕日と血、いささかわざとらしい感じがしましたが、血は肉体をつくる根源
であると同時に、精神のあり方を象徴するものでもあります。黄色い菜の花が
血の色に染まったらどういう印象になるか、鑑賞する人に問いかけてみました
。                                  
                                   
                                   
5.深瀬の自句自解                           
                                   
・十連休新緑匂ひ道みごむ                       
  十連休というのは、後にも先にも、たぶんないように思います。十連休、新
緑の五月、令和のはじまりというのは、歴史に刻まれる感じがします。   
                                   
・新緑に令和はじまる余生かな                     
  私たち団塊の世代は、昭和、平成と生き、70歳を過ぎて、令和という新しい
時代に生きることになりました。なにかお荷物的な気持ちで迎える感じもあり
ますが、孫たちのこともあり、前向きにいきたいと思います。       
                                   
・新緑に黙し祈りの古仏たち                      
  4 月、奈良の興福寺に吟行に行ってきました。阿修羅像など、祈りに満ちた
仏像をたくさん見ましたが、昔の人々にとっては、苦難を克服するための最大
の手段が、権威をまとった仏像に心を込めて祈ることであったのだと実感しま
した。科学技術や医療技術の進歩した今日とのギャップを噛みしめました。 
                                   
・令和とてさわぐ浮世にさめるわれ                   
  なにか世の中全体が一つの気分に覆われるのは、団塊の世代の故なのか抵抗
感を感じます。一致団結にはいいのかもしれませんが。          
                                   
・雲うつす湿原に蝌蚪黒き群れ                     
  湿原のなかの池の水面には白い雲が映り、そのなかをよくみると黒いおたま
じゃくしの塊が泳いでいるという風景です。湿原の池のことを「池塘」と呼ぶ
ようですが、あまり馴染みのない言葉なので止めました。         
                                   
・戯れに蝌蚪掬ひし手皺深く                      
  啄木に「戯れに母を背負いてそのあまり軽きに泣きて三歩歩まず」の短歌が
ありますが、わたしの母はもう亡くなっているので、別の切り口で「戯れに」
を詠んでみました。                          
                                   
・蝌蚪狙ふ大山椒の子ぎこちなく                    
  夕張岳の湿原には、大山椒魚が棲んでいます。大山椒魚の子どもがおたまじ
ゃくしを狙うのですが、こどものせいか動きが遅くうまくとれないようでした
。                                  
                                   
・風和みドア開け放す五月かな                     
  開け放すのは窓ではないかというご指摘を受けましたが、わたしの住むマン
ションは南側のすぐに別のマンションが建ち日当たりがよくありません。北側
のドアを開けてはじめて五月の陽の美しさを感じます。          
                                   
・老ひ深むことしもめぐる五月の陽                   
・今生の別れ想わす五月の陽                      
  西行の「ねがはくは花のもとにて春死なむその如月の望月のころ」は、死に
たい季節を詠んだものですが、老化とともに、死ぬときと季節を意識しはじめ
たのかもしれません。                         
                                   
・陽水の五月の別れ遠く鳴り                      
  井上陽水の歌は、なにか不思議な歌詞が多いと思いますが、引き込まれます
。最近はあまり聞きませんが、改めて調べてみました。          
  風の言葉に諭されながら/ 別れゆく二人が五月を歩く/ 木々の若葉は強がり
だから/ 風の行く流れに逆らうばかり/// 鐘が鳴り花束が目の前で咲きほこり
/ 残された青空が夢をひとつだけ/ あなたに叶えてくれる (以下略)     
                                   
・手作りの梅干し茶請け過疎の村                    
  わたしの両親の故郷の秋田では、お漬物を茶請けに日常生活のなかでのコミ
ュニケーションが図れています。梅干しもあるのか、定かではありません。 
                                   
・人面の梅干し見つけ父想ふ                      
  梅干しを兼題とする句会がありました。たまたま読んでいたSF小説に人面岩
というのが登場し、それをヒントに作りました。             
                                   
・地球号おもかじいっぱい春に向け                   
  日本の四季の変化には、地球の律儀さを感じます。地球の自転軸の向きの公
転面に対する傾きに起因するのだとは思いますが、なにか四季を作り出す意志
のようなものを感じます。異常気象の頻発には、戸惑いを感じます。    
                                   
・春光に津波の遺構静まれり                      
 3.11の津波の遺構は、かなり撤去されているようですが、自然の威力に対す
る人知の小ささを噛みしめるという意味からも保存した方がよいように思いま
す。                                 
                                   
・早朝の新聞受けに春陽満ち                      
 朝、マンションのドアを開けて、外廊下の電灯を消し、ドアポストの新聞を
とり出すのが毎朝の習慣になっています。春になってくると、朝日や街路樹の
様子も変わってくるのでうれしくなります。               
                                   
・春ひかる夕張岳の湿原に                       
  日曜朝の「さわやか自然百景」で見た夕張岳の湿原の春のさまを詠んでみま
した。                                
                                   
・花びらの流れ渦巻く朝の道                      
  桜の花が散りだした朝、風が吹いて花びらが道路上で渦を巻いたり、流れる
ように移動するのを見て、不思議な感覚になりました。          
                                   
・死のくにに誘うがごとし花ふぶき                   
  桜の花びらが、満開の時期を過ぎ、ひらひらと散りだし、そこに風が吹いた
りするとなにか別世界に誘われる気持ちになります。           
                                   
・花びらの敷きつめられし雨の道                    
  散った花びらが濡れた歩道に敷きつめられたように積もっていると特別の道
のように感じられ、踏むのが申し訳ない気持ちになります。        
                                   
・帰郷せぬ毛馬蕪村碑にビール置き                   
  今年の4 月下旬、蕪村の生まれた大阪・淀川ほとりの毛馬村を30人くらいで
訪ねました。生誕の地の記念碑がありましたが、理由はわかりませんが、蕪村
は、生涯この地を訪れることはなかったそうです。ビールをお供えしたのです
が、少し複雑な気持ちになりました。室生犀星の「ふるさとは遠きにありて思
ふもの  そして悲しくうたふもの」を思い出しました。          
                                   
・危うさやこころひとつと騒ぐ世の                   
・うつくしもめでたさも気持ちさまざま                 
 みんなで、美しいとかめでたいとか言って騒いでいても、その理由をよく見
れば、それぞれで全く異なっていることもあり、あるときそれが突然顕在化し
て亀裂が走ったりするように思います。                 
                                   
・カネ余りどこのことかと空仰ぐ                    
 ほんの一握りの人たちが、ほとんどのマネーを所有しているとかとも聞きま
す。マネーが勝手に増殖しているようでもあり、不思議です。       
                                   
・高層階個室に入れば宇宙人                      
 高層マンションで生活する人の気持ちを想像してみました。一人で窓の外の
夜景などをみているとどのような気持ちになるのでしょうか。       
                                   
・静寂の信号消えし交差点                       
  原発事故のため住民全員が避難し、廃墟と化した街の様子は、ショックでし
た。文明の崩壊を象徴している感じがしました。             
                                   
                                   
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2019年5月27日月曜日

第二十八回の七句会の選句結果です。

 七句会のみなさま
 第二十八回の七句会にご参加いただきたいへんありがとうございました。
今回の選句結果をご報告いたします。
  8 点句
(014)   新緑や葉裏を見せて風渡る           橋本
  5 点句
(063)   碧天の 白雲切り裂く 初つばめ        志方
  4 点句
(007)   新緑の葉先に雨後の光かな           豊
(048)   闊歩する就活女子や春の蝶           豊
(054)   春光に津波の遺構静まれり           深瀬
  3 点句
(004)   新緑に黙し祈りの古仏たち           深瀬
(011)   柔らかき 新緑浴びし 命延ぶ         吉良
(024)   ながらえて仰ぐ令和の五月 (さつき) かな    治部
(066)   葉桜や 睫毛に宿る 涙跡           小野寺
(074)   苔むして 煙雨に命の 息吹きかな       志方
  2 点句
(015)   硯擦る 眼に新緑の匂(にほひ)発ち      小野寺
(018)   目に映える 若葉の緑に 心燃ゆ        柳町
(019)   新緑も 山また山で 染め分けし        吉良
(041)   散る花を貴舟の杜で 浴びにけり。       小野寺
(045)   春雷の 闇切り裂きて 花は散り        小野寺
(049)   花びらの敷きつめられし雨の道         深瀬
(050)   花散りて 浅緑(さみどり)薫る 青紅葉    志方
(053)   たまゆらの 生命(いのち)鎮めて春の海    小野寺
(057)   花月夜 黒髪匂ひ(にほひ)風に揺れ      小野寺
(061)   蝌蚪狙ふ大山椒の子ぎこちなく         深瀬
(081)   菜の花を血の色に染め夕日かな         豊
(087)   手作りの梅干し茶請け過疎の村         深瀬

  下記に、選句表に、各句の右側に作者名、および、その下に選んだ人の名前
とコメント (追番付き、順不同、敬称略。) を付したものを添付します。
  次回については、7 月中旬ころにご連絡したいと思っていますので、よろし
くお願いいたします。やり方、等について、ご意見がありましたら、ご連絡を
いただきたく、よろしくお願いいたします。
 事務方から、以下、ご連絡、ご依頼です。
(1) 選句参加者
 今回の選句には、下記の13名が参加しました。
  秋岡さん、秋元さん、小野寺さん、吉良さん、志方さん、治部さん、中津川
さん、橋本さん、宮澤さん、森杜瑯さん、柳町さん、豊さん、深瀬。
(2) 今回の句会の結果を踏まえた自句自解、感想、等の募集について
  今回の句会の選句結果を踏まえて、各自、表明しておきたいこともあるので
はないかと思いますので、自句自解、感想、等、なんでも結構ですので、募り
たいと思います。一応、期限としては6 月16日とし、事務方にメールでいただ
き、それを七句会の下記のweb に掲載することにしたいと思います。
 http://nanaku-haiku.blogspot.jp/
  これまで、句会の後、勉強会としての集まりを企画していましたが、参加者
が少ないこともあり、改めることにしました。集まっての勉強会も適宜、行い
たいとは思っていますが、よろしくお願いします。
  2019.05.26
      代表   橋口侯之介 (休会中)
      顧問  豊  宣光
      事務方 深瀬久敬
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 1.兼題  新緑
   
(001)   新緑やトロッコ列車に通る風          豊
1 秋元
(002)   新緑の 雨降る野辺に 朋の逝き        小野寺
(003)   新緑を 映して走る 孫の背よ         吉良
(004)   新緑に黙し祈りの古仏たち           深瀬
1 吉良    古仏は路傍の苔むした石仏でしょうか、新緑と
  の対比が見事です。
2 柳町
3 小野寺  新緑の中でひっそりと祈りを捧げる古仏たちが
  息づいているようです。
(005)   陽光に新緑揃ひ庭光る             橋本
(006)   新芽伸び 牧の台地の 茶摘みかな       中津川
(007)   新緑の葉先に雨後の光かな           豊
1 志方    季節のきらきら感がイメージされます。
2 治部    新緑と雨後の雫の先に青空が見えます。しずく
  がレンズのように明るさをズームアップして、雨後の清
  々しさを感じるいい句だと思います。
3 吉良    七色の光が目に浮かぶようです
4 秋岡    情景を素直に詠んだ句で気持ちのいい句です。
(008)   我が時と若葉のキャンバス八重桜        橋本
(009)   新緑に令和はじまる余生かな          深瀬
(010)   晴れの日の新緑の路 子等の声         小野寺
(011)   柔らかき 新緑浴びし 命延ぶ         吉良
1 吉良    これからは一年一年大事に生きていく作者の気
  持ちがでています。
2 森
3 橋本    新緑の森林浴、確かに命も延びそうな気がしま
  す
(012)   鯉千尾 新緑(みどり)の谷に 飛ぶバンジー  中津川
(013)   新緑や 令和の薫り 町に満つ         吉良
1 秋岡    令和の薫りがどんなものか分かりませんが、新
 緑と合わせ新鮮な感じが匂い立ちます。
(014)   新緑や葉裏を見せて風渡る           橋本
1 志方    風の渡る様が葉裏という隠されたものまで緑に
 染まってますね
2 治部    やわらかい若葉の間を風が通って葉裏の白さが
  見える。ほんの一瞬の光景をうまく切り取っていると思
  います。風もそよぐではなく渡るとしたのがいいですね。
  何となくではなく、どこかへ向かっている気がしますね。
  お見事です。
3 中津川
4 宮澤  枝の揺れ、新緑の輝きの変化、点描のような葉
 裏の動きで風の道を知ります。風はどこから来て、どこ
 へ行くのでしょうか。年取って当たり前のことが不思議
 に思えるようになりました。
5 豊      新緑の感じがよく出ています。「葉裏を見せて
 風渡る」の表現がすばらしい。
6 秋元
7 小野寺  新緑の季節の変わり目風が流れる様を爽やかに
  感じます。
8 深瀬    「葉裏を見せて風渡る」という観察力と表現力
  がすごいと思いました。葉裏のやさしくやわらかい新緑
  が目に浮かびます。
(015)   硯擦る 眼に新緑の匂(にほひ)発ち      小野寺
1 中津川
2 橋本    眼に新緑の匂発ちが新鮮です
(016)   十連休新緑匂ひ道みごむ            深瀬
(017)   人閑散 花の名所は 緑濃し          中津川
1 宮澤  あんなににぎわっていた花の名所は、花が散っ
 たらただの場所。来年もきれいに咲けば名所として続く
 のでしょうが、来年がなければ、それで終わり。さて、
 その来年に生き続けられるのでしょうか?
       もう若くないと思いつつ、新緑を見てもう一
     花咲かせたいと思う今日この頃です
(018)   目に映える 若葉の緑に 心燃ゆ        柳町
1 森
2 秋元
(019)   新緑も 山また山で 染め分けし        吉良
1 志方    緑の様々な色の変化がそうぞうされます。
2 豊      この句もうまいと思いました。「染め分けし」
 がいいですね。

 2.兼題  令和、元号、等
(020)   元号に 平和を祈る 春万葉          中津川
1 治部    令和のお題は難しかったと思います。いろいろ
  とご意見はあるでしょうが、平和を祈る気持ちには変わ
  り有りません。前後に一文字づつのスペースを置くこと
  により、中七の平和を祈るをきょうちょうして、作者の
  思いが伝わりました。同感です。
(021)   花が散り芽ぶく新緑令和明け          秋元
(022)   花みづき 祝意溢れて 即位式         中津川
(023)   改元に生きて皇居の近くなり          橋本
(024)   ながらえて仰ぐ令和の五月 (さつき) かな    治部
1 吉良    令和元年、今年も平和が続くように祈りたいで
  すね。
2 橋本
3 深瀬    「ながらえて」という感慨に同感しました。新
  元号が五月からというのは、生前退位のメリットなのか
  もしれません。
(025)   改元の何がめでたや雹激し           豊
(026)   人の列 つつじの社 朱印待ち         中津川
(027)   万葉の令月と風和の令和来る          橋本
(028)   令和とてさわぐ浮世にさめるわれ        深瀬
1 豊      改元をめぐる世間の大騒ぎ、私も苦々しく思っ
 ていました。安倍政権の仕組んだ政治ショーにバカな国
 民が踊らされただけです。
(029)   令は麗 新元号は 五月晴れ          中津川
(030)   梅の香や旅人憶良の歌の宴           豊
1 中津川

 3.雑詠、無季語
   
(031)   万緑の 光の杜に時鳥(ホトトギス)      小野寺
(032)   帰郷せぬ毛馬蕪村碑にビール置き        深瀬
(033)   暁闇(ぎょうあん)に夢から覚めて 白椿    小野寺
1 宮澤  すっかり早寝が当たり前になり、明け方前の暗
 いうちに目覚めることが多くなりました。白椿とは、き
 っとすがすがしい夢から覚められたのでしょう羨ましい
 です。私の目覚めに出てくるのは黒鴉か、よくてクロネ
 コ。
(034)   地球号おもかじいっぱい春に向け        深瀬
(035)   鯉の恋我先競ふ春の川             橋本
1 宮澤  この句から、川幅いっぱいに舞うこいのぼりを
 思い浮かべました。派手やかに、競うように空を泳いで
 いるが、ひもで結ばれ自由に動けず今年の恋も成就せず
 しまわれて、また来年。でも一番きれいだったのは鯉の
 ぼりがつくられた最初の年だったのですよね。
(036)   今生の別れ想わす五月の陽           深瀬
(037)   髪結ひて夜桜を観し人のなく          小野寺
(038)   五月雨や生き様流す枯山水           治部
1 柳町
(039)   花吹雪 古城の壕は まぼろしか。       小野寺
(040)   カネ余りどこのことかと空仰ぐ         深瀬
(041)   散る花を貴舟の杜で 浴びにけり。       小野寺
1 豊      「貴舟」は「貴船」の誤りではないでしょうか。
 それとも実際に「貴舟」という場所があるのでしょうか。
 私は京都の貴船のことだと思いましたが。
2 秋岡    貴舟の杜で散る花を浴びることに風情がありま
 すね。
(042)   陽水の五月の別れ遠く鳴り           深瀬
(043)   栂ノ尾は 緑に和らぐ うぐいすや       志方
(044)   雲うつす湿原に蝌蚪黒き群れ          深瀬
1 豊      空の雲から湿原のおたまじゃくしに視線が移る。
 みごとです。
(045)   春雷の 闇切り裂きて 花は散り        小野寺
1 柳町
2 秋元
(046)   早朝の新聞受けに春陽満ち           深瀬
(047)   魂(たましひ)を海に鎮めて春霞        小野寺
1 森
(048)   闊歩する就活女子や春の蝶           豊
1 治部    夜の蝶ではなくて春の蝶なのですね。これが普
 通の光景になってしまったのですね。令和は女子の時代
 と言われていますが、その先が女帝という事にでもなれ
 ば子供はさらに減るでしょう。もう止められませんね。
 逆に春の蝶として美しく見た方がいいのでしょうか。
2 宮澤  昔は、昼のモンシロチョウや夜の蝶がいっぱい
 いました。みんなどこへ行ったのかと思っていたら、就
 活女子に変身していたのですか。それでも蝶はいくらか
 見ることがありますが、トンボは都会ではすっかり見る
 ことがなくなりました。皆すっかり堅実になり、極楽と
 んぼも絶滅種のようです。
3 秋岡    闊歩する就活女子を春の蝶に見立てて詠んだ句
 なのでしょうか、中々このような発想は出来ませんが、
 面白くて、楽しい、素晴らしい句だと思いました。
4 橋本    売り手市場で切迫感、悲壮感はなさそうですね
(049)   花びらの敷きつめられし雨の道         深瀬
1 志方    敷き詰められた花びらへの愛惜がかんじられま
  す。
2 秋元
(050)   花散りて 浅緑(さみどり)薫る 青紅葉    志方
1 橋本
2 小野寺  桜が散り、季節が新緑に変わる風景を絵のよう
  に捉えてます。
(051)   高層階個室に入れば宇宙人           深瀬
(052)   古都の庭 花影(かえい)に映る 青紅葉    志方
(053)   たまゆらの 生命(いのち)鎮めて春の海    小野寺
1 柳町
2 深瀬    「たまゆらの」という表現に、我が身も含めて、
  人間の生とはそういうものなのだろう、としみじみ感じ
  ました。
(054)   春光に津波の遺構静まれり           深瀬
1 吉良    津波の被害からまだ完全には復興しているとは
  言えないでしょうが、一時の平和が訪れた感じが読めま
  す。
2 中津川
3 豊      東日本大震災から8年、いまだに避難生活を強
 いられている人がたくさんいます。災害の記憶を忘れて
 はいけません。いい句です。
4 小野寺  春の光をたたえた海は大震災の津波が嘘のよう
  に静かだが、当時を伝える遺構に降る波はさながら鎮魂
  の光です。
(055)   山城の 暮色に紅く椿咲き           小野寺
(056)   うつくしもめでたさも気持ちさまざま      深瀬
(057)   花月夜 黒髪匂ひ(にほひ)風に揺れ      小野寺
1 治部    何ですかこれは。誰の黒髪ですか、作者の年齢
 からして妻ではないですよね。わざわざ歴史的仮名遣い
 で風呂上りを想像させています。おそらく作者はこのよ
 うな光景に憧れていたのでしょう、夢の世界を句にした
 ものだと思います。選者も同じ夢を見たことありますよ。
2 吉良    昔の記憶でしょうか、美しい思い出でしょうか。
(058)   春の野に 霞消えゆき 菜の花が        志方
(059)   春ひかる夕張岳の湿原に            深瀬
       駒東の門のそばにあった桜の木も、もはや老
     木かな???と思うこの頃です
(060)   駒東の 桜の木々を 旧懐し          柳町
(061)   蝌蚪狙ふ大山椒の子ぎこちなく         深瀬
1 中津川
2 秋岡    楽しい、面白い句と思いました。
(062)   深夜 (みよ) に聞く夢幻飛行や春暮れる     治部
1 深瀬    「深夜に聞く夢幻飛行」というのは、現実と夢
  の世界が微妙に混じり合った不思議なインパクトを感じ
  ました。「春暮れる」との関連は、作者独自の世界なの
  だと思います。
(063)   碧天の 白雲切り裂く 初つばめ        志方
1 治部    碧天に真っ白な雲。何と気持ちがいいことでし
 ょう。そこを初つばめが目にも止まらぬ速さで飛んで行
 く。そのつばめの速さを白雲切り裂くと表現したのが見
 事です。
2 中津川
3 豊      碧い空、白い雲、黒いつばめ。色の取り合わせ
 がいいですね。「初つばめ」の季語が生きています。
4 秋元
5 深瀬    「白雲切り裂く初つばめ」という表現は、なに
  か佐々木小次郎のつばめ返しを連想させられましたが、
  その躍動感がみごとという感じがしました。
(064)   静寂の信号消えし交差点            深瀬
(065)   登楼し 京は緑に 染めぬきて         志方
(066)   葉桜や 睫毛に宿る 涙跡           小野寺
1 治部    何の涙なのでしょうか。葉桜を見て何だかとて
 も悲しいことを思い出したのでしょう。おそらく誰かと
 の別れ。葉桜との関連が時候なのか事象なのか、涙をも
 う少し具体的にした方が良いと思います。
2 秋岡    葉桜と涙跡の関係を聞いてみたいと思い選句し
 ました。
3 森
(067)   古店や古都の小路に花の散る          治部
(068)   人面の梅干し見つけ父想ふ           深瀬
(069)   宵闇に息止めてをり 白椿           小野寺
(070)   風和みドア開け放す五月かな          深瀬
1 志方    日常によくある風情が新鮮な感動をおぼえまし
  た。
(071)   恋文を書きし日の在り桜散る          小野寺
(072)   ハゼと水両元繋ぐ自然愛            橋本
1 深瀬    「両元繋ぐ自然愛」という表現は、かなり理屈
  っぽいという感じもしましたが、自然のなかでの生きも
  のの在り方を適切に指摘していると同感しました。
(073)   花びらの流れ渦巻く朝の道           深瀬
1 柳町
(074)   苔むして 煙雨に命の 息吹きかな       志方
1 吉良    苔の鮮やかな緑色が目に浮かびます。
2 中津川
3 深瀬    雨にうたれた苔の緑の美しさは、都会に住んで
  いると久しく出会っていませんが、苔の細かい糸状の密
  集した葉のひとつひとつに息吹を感ずるというのは新鮮
  だと思いました。
(075)   霧の海 郭公(カッコウ)啼きて 朋は逝き   小野寺
1 志方    色、音、感情(哀惜)の3重奏
(076)   戯れに蝌蚪掬ひし手皺深く           深瀬
1 橋本    子供の頃も掬った手、皺の深さに老いを感じた
(077)   海鳴りの故郷の岬 白椿            小野寺
(078)   危うさやこころひとつと騒ぐ世の        深瀬
(079)   杣路を 越え来し峰春霞            小野寺
1 柳町
(080)   死のくにに誘うごとし花ふぶき         深瀬
(081)   菜の花を血の色に染め夕日かな         豊
1 秋元
2 小野寺  一面の菜の花畑が、紅く染まるほどの壮大な落
  日ですね。作者は血の色として心境を重ねたのでしょう
  か。
(082)   老ひ深むことしもめぐる五月の陽        深瀬
1 森
(083)   信濃路を 桜散らして 風渡り。        小野寺
1 志方    信濃路の春逝くさまが浮かびます。
(084)   奥津城に 手児名し想う 春哀し        志方
1 小野寺  今は訪れる人もない墓碑に、失くした幼い子の
  顔が浮かび春は殊更に辛い無常を思うのでしょうか。
(085)   払暁に露纏(まとひ)をり 白椿        小野寺
(086)   五月雨の雫光るや低き軒 (のき)         治部
1 小野寺  五月雨の中で古い家の軒先に滴る雨が光の雫と
  なって落ちる様が、目に沁みます。
(087)   手作りの梅干し茶請け過疎の村         深瀬
1 柳町
2 橋本

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 追記
  この会の代表をつとめていただいている橋口さんが、5 月22日の日本経済新
聞の朝刊の文化欄に「お江戸のよろず本屋事情」という記事を寄稿されました
。橋口さんは、休会中ですが、七句会のメールには目を通して下さっていると
のことです。一部の方には重複しますが、ご参考までにそのPDF を添付します。
よろしくお願いします。

2019年3月17日日曜日

七句会 第二十七回目のネット句会 選句を踏まえた自句自解です。

 七句会のみなさま                          
                                   
 第二十七回の選句結果を踏まえて、感想や自句自解、等をおよせいただき、
たいへんありがとうございました。                   
 およせいただいたものを、名前順に、ほぼそのまままとめてお届けすること
にします。今後のやり方に、ご意見、等ありましたら、よろしくお願いします。  
                                
 七句会のweb  http://nanaku-haiku.blogspot.jp/ にも掲載してあります。
  今後とも、よろしくお願いいたします。                
  深瀬 (事務方)                            


1.小野寺さんの自句自解
・残照の苫屋に淡く冬の影       (066)
 初冬の夕暮れ時 薄明りの中に夕餉の煙がたなびく苫屋はあり冬の落日を前
にして ほのかな一幅の墨絵のような風景でした。
・星冴えて森羅万象回りけり      (087)
 月のない真冬の夜更 深いしじまの中で星々が煌煌と輝き夜空の壮大なパノ
ラマは 人知を遥かに超えたダイナミックな自然の運行の正確さを肌でひしひ
しと感じさせてくれました。
・ふるさとは霙(霙)の彼方寒椿    (097)
  豊さんのご指摘通りです。霙が降る中に凜として紅く咲く見事な寒椿は、遠
い三陸釜石の少年時代の記憶に刷り込まれた 鮮やかな情景として蘇ってくる
のでした。
・寒椿雪の重みを凌ぎをり       (057)
  冬の朝 降りしきる雪の中で 紅い寒椿は雪の重みに耐えてひっそりと 紅
い花弁を主張し健気に咲いておりました。
・冬枯れの野にけぶりたち鳶の声    (063)
 荒涼とした荒れ野にたちのぼる煙は 京の斎場のあだし野にあがる焼き場の
煙を連想させ鳶の声は人の世の無常と儚さを一層かきたてるものがありました。
・くれないに燃ゆる椿に雪が舞ひ    (080)
 深瀬さんの感想の通りです。深紅の鮮やかな椿に真っ白な粉雪がやはらかく
舞い落ちて降りかかり絵巻ものをみる情景でした。
・雪の原 雄叫び聴くや 衣川     (095)
 桑子さんの感想の通りです。一面の銀世界の衣川の古戦場は少年の頃に連れ
てゆかれた盛夏の衣川の情景が思い起こされ芭蕉の句
   夏草や兵どもが夢のあと
の句と重なり 源の義経無念の終焉の地は滅びゆく武者達の雄叫びが怨霊とな
り耳殻の奥に聞こえてくるようでもありました。

2.中津川さんの自句自解
  はからずも5点句一つと4点句二つという結果に驚いています。
  早春という兼題についてはまず春の季語のうち早春に該当するものをいくつ
か選んで考えあるいは想像してみました。
・朝ひかる 通学路(みち)に 薄氷
  小学校時代に田んぼの横の路を歩いて通い、薄い氷を割って遊びながら行っ
たことを思い出しました。
・リュック背に 川の薫りと 猫柳
  田舎の川沿いの道をウォーキングしていた時に見た猫柳と春の川が草木の芽
吹きを促しているような感じがして「川の薫り」という表現を用いました。
・春浅し ダウンコートで受験生
  多くの受験生が風邪をひかない様にダウンの厚いコートで会場に向かう様子
を書いてみました。
・だみ声や 自動車(くるま)の下に 猫の恋
  毎年のように春先に自分の車の下で猫が大声で相手にアピールするのを思い
だした句です。猫の声の表現が思い浮かばず結局「ダミ声」としました。
  昭和平成の兼題は季語に苦労しました。
・秋たかし 昭和五輪の飛行雲
  東京オリンピックの開会式の様子が思い浮かびスムースに出てきました。
・リストラを バブルはじけて 暮れに知る
  平成11年12月に退職勧奨された苦い思い出です。
・平成の 最後と 我も参賀人
  平成最後の正月一般参賀に行こうと思ったのですが、人出が多く結局止めた
のですが。

3.豊さんの自句自解
・早春の山河の大気肺清め
 早春の山河には新たな息吹を発する新鮮さがあります。その新鮮な空気を肺
いっぱいに吸い込んで、自分の気持ちも爽やかに蘇ったのです。 
・庭の木の蕾ふくらむ春浅し 
 「 春浅し」 がよくなかったようです。「 早春」 という題にこだわりすぎまし
た。せめて「 庭の木の蕾ふくらむ二月かな」 ぐらいにすべきだったかもしれま
せん。
・東京に大雪ありし昭和かな 
 子どものころ昭和30何年かに、東京に大雪が降ったと記憶しています。ま
た、昭和の東京の大雪と言えば二・二六事件が有名です。
・梅開く終わる平成惜しみつつ 
 まもなく終わる平成を読み込みたくてこんな句になりました。
・雪解けの土の中より緑の芽
 雪が解けて春が近づいている感じを出したかったのですが、ちょっと平凡す
ぎました。
・お水取り待つ夜静かな二月堂 
 東大寺二月堂のお水取りは、古都奈良に春を呼ぶ行事として知られています
。その夜はたくさんの人で賑わうのですが、ふだんの二月堂は観光客の数はそ
れほど多くありません。

4.深瀬の自句自解
・早春の芭蕉碑囲む団塊団
  1 月下旬、散歩の集まりで清澄公園近くの芭蕉庵跡を見学しました。江戸時
代の雰囲気が少し分かった感じでした。
・早春のあたたかき陽に老ひみつめ
・早春の浅き眠りに老ひ深む
  最近、老化現象のせいか熟睡感がなく、昼間、ぼんやりしていることが多く
なりました。両方足すと7 点で、同様の傾向があるのかと安心しました。
・早春に地球壊れる予感して
  最近、世界中から極端な異常気象のニュースがあふれています。トランプ米
大統領の傍若無人もあり、なにか配になってきます。
・昭和史に二二六の雪の朝
  二二六事件は、日中・太平洋戦争に突き進む大きな取っかかりになった感じ
がします。昭和天皇の怒りが勝ったようですが、社会全体の流れは変わらなか
ったということだと思います。
・昭和には人間天皇帽子振り
  現人神から象徴天皇への転換をどう引き受けるのか、新天皇にも引き継がれ
る課題だと思います。国民の受け止め方も様々のように感じます。
・団塊も昭和とともに過去完了
  私たち団塊の世代は、廃墟からの戦後復興のなかを「みんなでがんばろう」
とひたすら生きてきましたが、バブル崩壊頃から様相が一変した感じがします。
・平成の三・一一山河哭く
  津波の被害だけなら、もう少し諦めもあったと思いますが、原発被害にはな
にか救いようのない暗さを感じさせられます。
・平成後米中の谷底見えず
  米国と中国というなにか新興と伝統の両極端の国家が対立しているようで、
不気味さを感じます。
・平成後女系か途絶土俵際
  天皇には側室を認めるべきでは、とは言えないですし、医療技術の進歩に頼
っては、とも表立っては言えない感じです。
・アナクロの天皇?首相?家長職
  日本の戦後民主主義は付け焼刃なのかとか、少し気になります。
・なまはげや出刃と雄叫び雪の夜
  なまはげの迫力を描写してみたいと思いました。
・なまはげにおびえる子らのいじらしさ
 この前の節分の日、息子の家で、息子が鬼の仮面をかぶって男の孫二人をか
なり驚かしたようです。それ以来、下の孫がドアをあける音がすると怯えるよ
うになってしまいました。
・来訪神登録遺産面映ゆく
  日本にはなまはげ以外にも来訪神が多数あるようです。多神教文化の面目躍
如ということかもしれません。
・松明けや整理し部屋の崩れゆく
  最近、部屋の中が整理されていることがなかなかありません。身の回りの整
理もかなりの気力とエネルギーが必要です。
・松明けの体重悩む平和かな
  老化による基礎代謝の衰えのせいかなどと苦慮しています。
・松明けの妻と朝餉の静かさや
  こういう関係が理想かなと感じています。
・風に舞ふ落ち葉の音のしむ身かな
  芭蕉の「野ざらしを心に風のしむ身かな」のパロディー(?) みたいにも後で
思いました。
・切り干しに江戸の賑わい日本橋
  切り干し大根というのは、かつては保存食としてもっと日常的だったのでは
ないか、と思います。
・切り干しの湯に漬かるごと座のなごみ
  切り干しを兼題に、無理やり捻った感じです。
・帰らざるおもひかさねし冬茜 (あかね)
  マリリン・モンロー主演の「帰らざる河 River of No Return 」は、西部劇
ですが、題名だけでも惹きつけられます。帰って来ないものへの郷愁は、人間
らしさの特徴のひとつだと思います。
・生きている意味は分からず死にもせず
  現役のサラリーマン時代には、こういう気持ちはなかったと思いますが、老
境をかいま見るようになってふと感じます。3 点は、やや複雑な気持ちもしま
した。

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2019年2月24日日曜日

七句会 第二十七回目のネット句会 選句の結果をご報告します。

 七句会のみなさま
 第二十七回の七句会にご参加いただきたいへんありがとうございました。
今回の選句結果をご報告いたします。
  5 点句
(004)  朝ひかる 通学路(みち)に 薄氷      中津川
  4 点句
(012)  リュック背に 川の薫りと 猫柳       中津川
(021)  早春の浅き眠りに老ひ深む          深瀬
(043)  秋たかし 昭和五輪の 飛行雲        中津川
  3 点句
(003)  早春の山河の大気肺清め           豊
(009)  沈丁花 夜来にかおる 早春賦        志方
(016)  早春のあたたかき陽に老ひみつめ       深瀬
(018)  早春の 旅を運びて 飛行雲         吉良
(058)  帰らざるおもひかさねし冬茜 (あかね)     深瀬
(065)  松明けの妻と朝餉の静かさや         深瀬
(066)  残照の 苫屋に淡く冬の影          小野寺
(067)  生きている意味は分からず死にもせず     深瀬
(081)  見はるかす 稜線白き 八ヶ岳        志方
(087)  星冴えて 森羅万象回りゆき         小野寺
(092)  梅の花一目も会えず友の逝く         治部
(097)  ふるさとは霙 (みぞれ) の彼方寒椿      小野寺
  2 点句
(028)  平成は閉まるも締まらぬ安倍政治            橋本
(039)  皺深し 昭和平成 駆け抜ける          吉良
(042)  春雷や 昭和はとほくなりにけり       小野寺
(045)  平成に何を成したか懐手           治部
(050)  風に舞ふ落ち葉の音のしむ身かな       深瀬
(057)  寒椿 雪の重みを凌ぎをり          小野寺
(063)  冬枯れの野にけぶりたち鳶の声        小野寺
(064)  薄氷 踏んで感じる 暖かさ         柳町
(072)  寒風に陸奥 (みちのく) 想ふや芭蕉像     橋本
(080)  くれないに 燃ゆる椿に雪が舞ひ       小野寺
(095)  雪の原 雄叫び聴くや 衣川         小野寺

  下記に、選句表に、各句の右側に作者名、および、その下に選んだ人の名前
とコメント (追番付き、順不同、敬称略。) を付したものを添付します。
  次回については、4 月中旬ころにご連絡したいと思っていますので、よろし
くお願いいたします。やり方、等について、ご意見がありましたら、ご連絡を
いただきたく、よろしくお願いいたします。
 事務方から、以下、ご連絡、ご依頼です。
(1) 選句参加者
 今回の選句には、下記の14名が参加しました。
  秋岡さん、秋元さん、小野寺さん、吉良さん、桑子さん、志方さん、治部さ
ん、中津川さん、橋本さん、藤原さん、森杜瑯さん、柳町さん、豊さん、深瀬。
(2) 今回の句会の結果を踏まえた自句自解、感想、等の募集について
  今回の句会の選句結果を踏まえて、各自、表明しておきたいこともあるので
はないかと思いますので、自句自解、感想、等、なんでも結構ですので、募り
たいと思います。一応、期限としては3 月16日とし、事務方にメールでいただ
き、それを七句会の下記のweb に掲載することにしたいと思います。
 http://nanaku-haiku.blogspot.jp/
  これまで、句会の後、勉強会としての集まりを企画していましたが、参加者
が少ないこともあり、改めることにしました。集まっての勉強会も適宜、行い
たいとは思っていますが、よろしくお願いします。
  2019.02.24
      代表   橋口侯之介 (休会中)
      顧問  豊  宣光
      事務方 深瀬久敬
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 1.兼題  早春
(001)  早春の山茶花揺れてメジロかな        橋本
(002)  初春や トンドに響く 太鼓かな       藤原
(003)  早春の山河の大気肺清め           豊
1 吉良   早春の冷たい風に体の清まる感じがでています。
2 治部   早春の山河が清めるものを肺に的を絞っているとこ
 ろが引っ掛かりました。作者はもしかしたら肺を病んでいる
 ような気がしました。この作品からは、久しぶりにフレッシ
 ュな空気を送り込まれた肺が「気持いいね」と言っている様
 子がうかがえます。上五中七が少し散文的に見えますが、山
 河の大気で清々しさは伝わります。肺が印象的で、季語が弱
 くなったような気がします。
3 小野寺  山河の大気が肺腑深くに沁み渡ると言う気宇広大な
  早春への希望です。
(004)  朝ひかる 通学路(みち)に 薄氷      中津川
1 志方    ランドセルを背負ってた頃の情景はおもいだされま
  す。
2 桑子   寒い中、朝日を浴びて、登校する生徒達が目に浮か
 びます。
3 秋岡    昔は舗装されていないでこぼこ道にこのような光景
 がよくありました。
4 橋本   
5 宮澤   
(005)  早春の芭蕉碑囲む団塊団           深瀬
(006)  残雪の畦道新芽萌え出づる          秋元
(007)  庭の木の蕾ふくらむ春浅し          豊
(008)  早春や ベランダ横たう 鉢一つ       吉良
(009)  沈丁花 夜来にかおる 早春賦        志方
1 柳町   
2 藤原   
3 小野寺  夜半の帷の中で沈丁花の強い香りは春への密やかな
  期待でしょうか
(010)  春浅し ダウンコートで 受験生       中津川
(011)  早春に地球壊れる予感して          深瀬
(012)  リュック背に 川の薫りと 猫柳       中津川
1 志方    猫柳が鑑賞できる川辺がすくなくなってしまいまし
  た。
2 桑子   これも川辺をウオーキングする風景が浮かびます。
3 秋元   
4 深瀬    川べりをハイキングのように歩いていて、ふと川の
 薫りと猫柳のやわらかな色彩に、春の到来をしみじみと感じ
 ている作者の気持ちが伝わってきました。
(013)  早春の息吹き通わすつづみぐさ        秋元
1 中津川 
(014)  大手町 早春の窓 輝ける          吉良
1 秋岡    自然を感じる場の少ない大都会もこんな形で春を感
 じるのですかね。
(015)  初春に スーパームーン 冴え渡る      藤原
(016)  早春のあたたかき陽に老ひみつめ       深瀬
1 桑子   室内でしょうか、ぼんやりと過ごす一抹の寂しさを
  感じました。
2 秋岡    年をとるとあたたかい陽射しのありがたさを痛感し
 ます。
3 豊      旧仮名遣いの表現、全体のまとまり、この作者はか
  なり作句の経験を積んだ人だと思います。イメージの膨らむ
  いい句です。
(017)  早春の土手の轍(わだち)に子等はしゃぎ   小野寺
1 治部   この句は(003) と構成が似ていますが、子らがはし
  ゃいでいる姿がとてものどかで、春らしい句だと思います。
  轍にはそう目がいかないと思うのですが、おそらくこの轍に
  は少し水が溜まっていて青空をうつしていたのでしょう。思
  わず目がいった様子も伝わります。深読みしすぎですかね。
(018)  早春の 旅を運びて 飛行雲         吉良
1 橋本   
2 宮澤   
3 深瀬    春先の空を見上げると飛行機雲がまぶしげに見え、
 今年は海外のどこに旅行しようかなどと思いを馳せるのは、
 ほんとうにたのしそうです。
(019)  鴨ツグミかわせみと遇ふ早春歩        橋本
(020)  ダミ声や 自動車(くるま)の下に 猫の恋  中津川
1 藤原   
(021)  早春の浅き眠りに老ひ深む          深瀬
1 吉良   人生あっという間に年をとるもの、うまく読んでい
  ますね。
2 森杜瑯 
3 柳町   
4 宮澤   
 2.兼題  昭和、平成
(022)  平成の 黄昏愛し 椿落つ          宮澤
1 吉良   平成の世も椿の落ちるように最後は少しは美しく散
  りたいもの。
(023)  昭和史に二二六の雪の朝           深瀬
(024)  アルバムの 昭和は遠く セピア色      志方
1 藤原   
(025)  東京に大雪ありし昭和かな          豊
(026)  平成を 極めし後も 雪の山         森杜瑯
(027)  平成や 金、北、災と 過ぎにけり      藤原
(028)  平成は閉まるも締まらぬ安倍政治            橋本
1 豊      「閉まる」「 締まらぬ」 と重ねたシャレに拍手です。
  安倍政治は全く締まらない。私も同感です。
2 藤原   
(029)  昭和には人間天皇帽子振り          深瀬
(030)  平成も 昭和も遠く 白髪染         吉良
(031)  平成後女系か途絶土俵際           深瀬
(032)  カラオケに歌ふは昭和の曲ばかり       橋本
1 志方   古希を迎えた世代は昭和が懐かしく、また生きがい
  にあふれた時代ですね。
(033)  団塊も昭和とともに過去完了         深瀬
1 中津川 我々団塊世代は頑張ってる人もそろそろ引退かな
(034)  リストラを バブルはじけて 暮れに知る   中津川
(035)  凍て空に 平成挽歌 いま一度        森杜瑯
(036)  平成の 忖度誇る 霞が関          志方
(037)  平成の最後と我も参賀人           中津川
1 治部   平成という時代の最後を参賀という行動で締める。
  いいですね。我も、というところに作者の正直な気持ちが表
  れていますね。
(038)  北風に 平成押されて 夢飛ばず       森杜瑯
(039)  皺深し 昭和平成 駆け抜ける          吉良
1 森杜瑯 
2 秋岡    駆け抜けるという言葉に共感します。
(040)  平成の三・一一山河哭く           深瀬
1 志方   なぜここまで住民を苦しめているのか、科学者と政
  治家による人災
(041)  梅開く終わる平成惜しみつつ         豊
1 中津川 5月には新しい元号に変わってしまう感慨が伝わり
  ます
(042)  春雷や 昭和はとほくなりにけり       小野寺
1 豊      中村草田男の「降る雪や明治は遠くなりにけり」と
  同じ構造ですが、「 春雷」 を添えたところに新鮮さを感じま
  した。
2 秋元   
(043)  秋たかし 昭和五輪の 飛行雲        中津川
1 治部   この光景は昭和を生きた人は忘れないでしょう。秋
  たかしの意味が下五の飛行雲で空だとわかる。でもそんなこ
  と関係なくノスタルジックな気持ちになれる一句だと思いま
  す。つまり今の光景は秋たかしだけで、昭和ノスタルジーを
 印象的に表したいい句です。お見事でした。
2 柳町   
3 豊      前回の東京オリンピックは戦後昭和の象徴でした。
  思い出しますね。「 秋高し」 と季語を添えてうまくまとまり
  ました。
4 深瀬    1964年、昭和39年の東京オリンピック当時、わたし
  たちは高校生でした。当時の世の中の活気が沸沸と思い出さ
  されました。
(044)  平成後米中の谷底見えず           深瀬
(045)  平成に何を成したか懐手           治部
1 橋本   
2 宮澤   
(046)  平成の 炎は昇る 寒月に          森杜瑯
(047)  老い桜 平成最後の 芽吹きかな       志方
1 吉良   我々の心境でしょうか。
(048)  アナクロの天皇?首相?家長職        深瀬
    
 3.雑詠、無季語
(049)  霜晴れや 薔薇一陣の風に揺れ        小野寺
(050)  風に舞ふ落ち葉の音のしむ身かな       深瀬
1 森杜瑯 
2 小野寺  晩秋の風に舞い散る落ち葉は、さながら疲れた心の
  隙間に吹く風でしょうか、
(051)  みちのくの 枯野遥かに 夢吹雪       小野寺
1 柳町   
(052)  白む空 輝き一つ 梅に露          宮澤
(053)  冬木立空にオリオン北の旅          小野寺
(054)  寒木立 紺碧の空 渡り鳥          志方
(055)  凍て土に 柚子の香りは眠りをり       小野寺
(056)  寒風に 定年男 吠え叫び          森杜瑯
(057)  寒椿 雪の重みを凌ぎをり          小野寺
1 秋元   
2 藤原   
(058)  帰らざるおもひかさねし冬茜 (あかね)     深瀬
1 志方   あの日に帰ってみたいおもいが切なく表現されてい
  る
2 橋本   
3 小野寺  冬の日の夕陽に過ぎた日の取り戻す事のできない想
  いを重ね合わせているのでしょうか。
(059)  戦場(いくさば)に雪の残月 夢の跡     小野寺
(060)  春一番 陽だまり揺れて 乱れ雲       宮澤
1 藤原   
(061)  雑木林落ち葉のベッドに眠り居り       橋本
1 深瀬    厚く落ち葉が敷きつめられた雑木林のなかは、まだ
  春の気配が遠く静寂そのものなのだと思います。そのなかを
  散策している様子が伝わってきました。
(062)  なまはげにおびえる子らのいじらしさ     深瀬
(063)  冬枯れの野にけぶりたち鳶の声        小野寺
1 治部   
2 中津川 けぶりたつという表現を想像しています
(064)  薄氷 踏んで感じる 暖かさ         柳町
1 中津川 少しずつ近づいてくる春の予感が感じられます
2 秋岡    寒いと言え氷が段々薄くなってくると暖かくなって
 きたなあと感じるのでしょうね
(065)  松明けの妻と朝餉の静かさや         深瀬
1 吉良   言葉を交わさないでも二人の気持ちが通じ合ってい
  るように思えます。
2 桑子   正月休みで来ていただろう孫らがようやく帰って、
  やっと二人になってゆっくりできる情景がよくでていると思
  いました。共感しました。
3 秋岡    年末年始の慌しさからやっと解放された気分なので
 しょうか
(066)  残照の 苫屋に淡く冬の影          小野寺
1 志方   一服の山水画のように思えます。
2 治部   
3 橋本   
(067)  生きている意味は分からず死にもせず     深瀬
1 森杜瑯 
2 桑子   悩める?人生観がでていていいと思います。この歳
  (多分古希を過ぎているのでしょうか)でまだ悩めるのはう
  らやましい。
3 宮澤   
(068)  東雲(しののめ)の路鮮やかに落ち椿     小野寺
1 治部   
(069)  切り干しの湯に漬かるごと座のなごみ     深瀬
1 小野寺  切り干しの湯に浸かるようなとは懐かしい、しみじ
  みとした情感です。
(070)  外は雪 闇切り裂いて 百舌鳥の声      小野寺
(071)  なまはげや出刃と雄叫び雪の夜        深瀬
1 豊      なまはげの雰囲気がストレートに出ています。
(072)  寒風に陸奥 (みちのく) 想ふや芭蕉像     橋本
1 吉良   旅を思う芭蕉の気持ちが伝わります。
2 小野寺  冬の日の烈風は芭蕉の奥の細道を思い起こさせたの
  でしょう。
(073)  百舌鳥哭きて父の墓前を去りにけり      小野寺
1 豊      百舌鳥の鳴き声は独特の鋭さがあります。墓参りに
  きた作者の想いがその声に共鳴したのでしょう。
(074)  来訪神登録遺産面映ゆく           深瀬
(075)  大漁の帰帆連なり春うらら          治部
1 吉良   色とりどりの大漁旗が閃いた春の光景が絵のように
  広がります。
(076)  蒼海に霙(みぞれ)降り積み天は暮れ     小野寺
(077)  冬散歩燗酒小便あと1000歩        桑子
1 中津川 毎日一万が日課ですか結構大変ですね
(078)  塔頭に残せし想ひ 古都は雪         小野寺
1 秋岡    残せし想いはどんな想いなんでしょうか?古都は雪
 が似合いますね。
(079)  雪解けの土の中より緑の芽          豊
(080)  くれないに 燃ゆる椿に雪が舞ひ       小野寺
1 秋元   
2 深瀬    椿の大きなくれないの花と白い雪のコントラストが
  とても鮮やかだと感じました。絵画的な俳句だと思います。
(081)  見はるかす 稜線白き 八ヶ岳        志方
1 橋本   
2 藤原   
3 深瀬    「見はるかす」や「稜線」といったことばが効いて、
  冬の雄大な八ヶ岳のたたずまいが、パノラマのように活写さ
  れているように感じました。
(082)  頬被りして里帰り土産無し          治部
(083)  胸ゆする 北風向かい われ進む       森杜瑯
(084)  鼻水の 春や花粉の 山霞          柳町
1 中津川 スギ花粉の季節が来ます 鼻がムズムズしますね
(085)  松明けや整理し部屋の崩れゆく        深瀬
1 橋本   
       (終活のつもりの年賀状に書き添えました)
(086)  古希過ぎて新しき時代身は軽く        橋本
(087)  星冴えて 森羅万象回りゆき         小野寺
1 森杜瑯 
2 秋元   
3 深瀬    わたしたちの居住している地球を含む天の川銀河が、
  しずかに渦巻いている様を想像させる雄大なスケールを感じ
  ました。
(088)  切り干しに江戸の賑わい日本橋        深瀬
(089)  海見える何だ坂こんな坂着ぶくれて      治部
(090)  三日月を闇夜に掛けて百舌鳥は啼き      小野寺
(091)  松明けの体重悩む平和かな          深瀬
(092)  梅の花一目も会えず友の逝く         治部
1 志方   死が周りに近づいていることを、意識しながら、1
  日1 日を大切にしていかねばと今日もまた一杯
2 柳町   
3 小野寺  梅の花の開花を待たずに逝ってしまった友への痛切
  な哀惜の情を感じます。
(093)  夢に舞ふ 能登の黒髪花衣          小野寺
1 秋元   
(094)  お水取り待つ夜静かな二月堂         豊
1 柳町   
(095)  雪の原 雄叫び聴くや 衣川         小野寺
1 森杜瑯 
2 桑子   芭蕉の句『夏草や兵どもが夢の跡』との対比がおも
  しろいと思いました。
(096)  信号の 点滅むなし 梅月夜         宮澤
(097)  ふるさとは霙 (みぞれ) の彼方寒椿      小野寺
1 豊      みぞれが降っている中に寒椿が咲いている。それを
  見た作者は故郷の雪を思い出した。それとも、故郷のみぞれ
  の中に咲いている寒椿を思った句でしょうか。
2 秋元   
3 宮澤   
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