2019年12月27日金曜日

七句会 第三十回句会の自句自解です。

 七句会のみなさま
 第三十回の選句結果を踏まえて、感想や自句自解、等をおよせいただき、た
いへんありがとうございました。
 およせいただいたものを、名前順に、ほぼそのまままとめてお届けします。
今後のやり方に、ご意見、等ありましたら、よろしくお願いします。

 七句会のweb  http://nanaku-haiku.blogspot.jp/ にも掲載してあります。
  今後とも、よろしくお願いいたします。
  深瀬 (事務方)

 追記
  自由連句を、12月上旬から、小野寺さん、吉良さん、志方さん、豊さん、深
瀬の5 名にて、5 回転し25句まで詠みたいと思っています。
  無事、終わりましたらみなさまにご報告したいと思っています。よろしくお
願いします。


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1.小野寺さんの自句自解
・石畳み紅葉敷き詰め小糠雨     (060)
 古都の石畳みに敷き詰めたように散り落ちた紅葉は小糠雨に濡れていっそう
の艷やかさを増し、さながら絵巻きのような風景でした。
・朝霧や柿の実ひとつ濡れ残り   (071)
 朝露のたち込めた秋の朝ぽつんと残った柿の実が、濡れたままで、淡い風景
の中で鮮やかな色を残しており心に残りました。
・蒼き露野仏の頬伝い落ち   (073)
  古都の苔むした蒼い野仏の頬をつたい落ちる露はさながら野仏が秘めやかに
涙をながして晩秋の深い哀しみを宿しているようでもありました
・蟷螂は健気に百舌の贄となり   (068)
 カマキリのオスは交尾して生きながらにしてメスが産卵する為の餌となりま
す。子孫を遺す為に食われた、身体半分のオスが更に百舌の早贄のために、枝
に突き刺されておりました。カマキリのオスの一生は健気ではありませんか。
・落ち葉踏む音静まれり古都の路   (076)
  吉良さんが指摘されたように、深く積もった落ち葉を踏む音は、古都の年月
を重ねた、不思議な静寂を連れて歩く様でもありました。
・月冴えて芒の原は銀の波    (080)
  中天にかかり煌々と輝きを増す月の光の中で芒の原の芒の穂波は、銀色に波
だち、さながら海原の波浪の様でもありました。静寂な幽玄を思わせる一幅の
墨絵の趣きがあったのです。
・芒原風は轍を残しけり    (083)
  一面の芒の原に一陣の風が舞い、吹き荒れ風の通り路には いく筋もの轍が
残されておりました。風は天に昇ったのでしょうか。
・あだし野に煙たなびき曼珠沙華   (086)
  徒然草の一節
   あだし野の露消ゆるときなく、鳥辺山の煙り
   立ちさらでのみ住みはつるならいならば
   いかでもののあはれもなからん。
 この世は定めなく、無常であるからいいのだ。と言ってます。嵯峨野から大
覚寺へ行く道すがら煙りがたなびき、曼珠沙華が紅く咲いており、京の片隅で
不思議な無常を思った事でした。
・コーナーを追い抜く孫の運動会    (005)
  リレー選手になった孫娘がコーナーをゴボウ抜きして走りさる姿を大声で叫
びながら応援しました。小学生時代の自分に、重ねておりました。
・鰻食ふ白寿の母に小春の陽    (032)
  白寿を迎える母は好きな油絵を描き好物の鰻を食べる笑顔に小春陽が降り注
ぎ来年の銀座の個展への参加を願います。

2.桑子さんの自句自解
・天高くティーショットは視野の外 (039)  
 ナイスショットもドジッたボールも、視力の衰えですぐに見えなくなるとい
う現実を読みました。治部さんの言うとおり「・・・視野の外へとティーショ
ット」の方がいいですね。
・秋寒し今宵納めの冷やの酒 (042)
 季重なりについては気になっていたところで、「冷や酒」(夏の季語)を「
冷やの酒」と「の」を入れることで無季語にならないかと。
・長き夜の話し相手はテレビかな (049)
 毎日だと、家内との会話もそうは続かないので必然的にテレビに向かって文
句を言っている今日この頃です。

3.橋本さんの自句自解
・枝見上げいましばらくの落ち葉掃き (4点句)
 落葉は自然任せ、庭と道路への落ち葉が気になると掃いている。枝に残る葉
の様子から未だしばらく付き合わされそうである、ヤレヤレ。(最後の1 枚は
12/20 に散りました、句は11月初旬)
・箍緩む瑞穂の国や台風禍 (1点句)
 台風15号、19号の風害、水害の被害は甚大、救える命・ 財産が対応の甘さで
失われたものも多い。温暖化で想定外の災害が増えている昨今、出来ることか
ら備えていかねば、、、
・血税の花見の宴に露と消ゆ (1点句)
 首相主催の「桜を見る会」は、税金の使途として甚だしく不適切、不愉快。
バラマキ政治の本質の一端が垣間見える。

4.宮澤さんの自句自解
・年寄りのうんちく姦し美術展  (015) 
  とにかく昨今の美術展は混んでいます。この作品の背景はから始まり、技法
、業界のランクまで知る限りの知識を披露してる人。一方、作品には関係なく
、なんでここでというよもやま話をしているおばさんたち。特別展だと入場料
も結構高いはずですが、年寄りはひたすら元気で好奇心旺盛という感じです。
浮世絵展などだと、作品が小さくて、人混みではよく見えないと思いますが、
それでも混むのはちょっと不思議な感じがします。特別展よりすいている常設
展を推奨します。
・稲妻にクラブ投げ出し命乞い  (028)
 これはまさに実感で、ゴルフで何が怖いといって、スコアが乱れることでは
なく、雷に直撃され命までかけることはないということ。格闘技ならごめんな
さいで命懸けの勝負は避けられますが、たかがゴルフで、勝負をかけるところ
でないところで命をかけたくないというわがままな気持ちです。
・青い目が神輿を担ぐビルの谷  (010) 
 1 治部    最近この光景をよく見る気がします。ビルの谷としたところが面
白いと思います。
 ありがとうございます。昔、仲宗根美樹が歌った「川は流れる」という曲で
、「街の谷、川は流れる」という詩がありました。ビルの谷は、そこから借用
です。
・秋の空雲の間に間に覗き見え  (035) 
 今年は、夏からすぐに冬で、秋空がたまにしか見えなかった残念感です。こ
んな年でも雲の向こうは、秋空が広がっているのでしょうという思いです。
・秋来ぬと目に見えぬまま痩せさんま (084)  
 1 中津川
 古今和歌集のパロディのつもりです。今年の秋は、夏が長く、秋に雨が多く
、いきなり冬という感じでした。古今和歌集の本歌は、風の音に秋が来たと聴
覚で秋を感じたようです。今年の秋は台風ばかりでこの聴覚を感じぬまま、痩
せたさんまに視覚と味覚と臭覚に、またあえて痩せた手触りの触覚の、五感の
内の四感で感じた、つかの間の貧しい秋だったなという気持ちです。

5.豊さんの自句自解
・沖縄のこころ焼けたり曼珠沙華
 沖縄の歴史と文化には以前から関心を持っていました。辺野古埋め立てと首
里城の焼失、沖縄県 民の続く受難に深く同情します。
 まさか最高点になるとは思っていませんでしたが、皆さん沖縄に想いがある
ことを知ってうれしく思いました。
・菊花展老いの一日また過ぎて
 小春日和のある日、老夫婦そろって菊花展に出かけた様子を想像して詠みま
した。
 老人の平和な日常の一端を切り取ったつもりです。
・月見には独りがよろし手酌酒
 名月を愛でるにはやはり一人がいいのです。ススキの生えている野原にぽつ
んと坐り、一升びん を片手に空の満月と対話している風流人を想像してみて
ください。

6.深瀬の自句自解
・国東の古代の田にも今年米  (077)
  九州・国東半島の水田は、平安時代から続いているそうです。水田の生産の
安定性やそれが日本列島に広がっていった様子を思いました。
・翼竜や秋の雲間を滑り飛ぶ  (023)
  恐竜時代に思いを馳せました。翼竜がたくさん空を舞っている様子はどんな
感じだったのでしょうか。
・鉄骨を吊るすクレーンや秋の雲  (046)
  都心では、あっちこちで高層ビルの建築が進んでいます。時代の変化や躍動
感に感じ取っていただけたらと思います。
・六十年 (むそとせ) のすまいの朝に秋の雲  (034)
  同じ場所に物心ついてから60年以上住んでいます。朝、マンションの4 階の
廊下に出て、近所を見回しますが、ふと感慨におそわれることがあります。
・秋の陽を反射す額また広く   (041)
・秋の風広がる額すべりゆく   (027)
  最近、急速に額あたりの頭髪が消えていきます。そのスピード感に驚いてい
ます。
・それぞれの終活事情秋の風   (021)
・秋空に終活思案まとまらず   (054)
  終活として、なにをどういう手順でするか考えることがあります。蔵書や遺
産の整理とかあるとは思いますが、どうもそれだけないような気もします。人
それぞれの課題のようにも思います。
・こがらしに終活見据えよろけけり   (019)
  終活をがんばろうとか気合を入れた瞬間によろけたりするのがなさけない感
じです。
・善く生きる問ひを背負いて秋の声   (025)
  昔の人は、善く生きるとはどういうことか、という問いが日常的にあったの
ではないかと思うことがあります。競争社会やスマホ社会のなかでは、そうい
う意識が後退してしまっているのか気になることがあります。
・仰向けの蝉の見つめる虚空かな    (067)
  朝、マンションの外廊下に、蝉が仰向けにころがっていることがあります。
もう死んでいるのかと手をふれると、ぱっと飛び立っていきます。あんなかっ
こうでなにをしていたのか不思議に思います。
・地表には巨大ひとつ目野分行く    (037)
  気象衛星からみた地表の雲の様子は日常茶飯になりましたが、台風の目の映
像は、改めて自然の脅威を思い知らされます。
・地下タンク野分の水を捌くかな    (050)
  荒川や神田川にはあふれた水を貯水したり別の川に放水する巨大な仕組みが
地下に作られているようです。温暖化による雨量の増大とのいたちごっこにな
らないかと心配になります。
・学らんの大根踊りや青き空    (002)
  東京農大の応援団の大根踊りはユニークだと思います。
・大根の葉っぱ広げしヘアかな   (058)
  大根やパイナップルの上についている葉っぱのようなヘアスタイルの女性を
見ることがあります。女性には似合う感じもします。
・大根の磨かれし艶パリ画風    (072)
  大根の色というのは、よくみると深みがあって引き込まれます。藤田嗣治と
かユトリロの絵なんかを連想しました。
・ママチャリの荷台の大根夕陽受け  (055)
  夕方の買い物帰りの主婦の様子を思い浮かべました。
・昼呑みに大根おでんつまみけり   (085)
  これはかなりフィクションですが、昼呑みの機会は増えました。なにかかな
り贅沢をしている気持ちになります。
・大根に網タイツ着せフェティシズム  (063)
  大根を見つめていたら、こういう気持ちも湧くのではないかという想像です。
・アラーキー萎び大根 (だいこ) の美学かな  (089)
  写真家荒木経惟は、萎びて枯れかけた花や野菜を被写体にしているようです
が、それが美しいと言われると、不思議にそうかなという気持ちになります。
日本人のわびさびの美意識につながるのかもしれません。
・チアガール大根踊りのどはくりょく    (016)
  大根踊りのときのチアガールは、大根は持ちません。持って踊っている姿を
勝手に想像したものです。
・神の旅此処も水没後ろ髪    (013)
  今年の台風19号は広い範囲に大雨を降らし、雨があがった後に洪水が押し寄
せました。地球温暖化に起因し、今後も増えそうだとのことです。のんびり秋
祭りをたのしんでいる余裕がなくなるのか心配です。
・唄太鼓十津川踊り神の留守   (009)
  十津川の盆踊りは、唄と太鼓のみで、両手にもった扇子の動きや唄の歌詞に
伝統の重みを感じます。歌詞がかなり世俗的でおもしろいと感じました。
・神の旅一神教ではさみしけり    (007)
  日本中の神様が収穫を終えた各地方から出雲に集まってくるというのは、一
神教の世界では考えられないことです。日本人の心象の奥深くにある感じです。
・目黒川さくら並木も紅葉に    (096)
  春には、川の両岸が満開の桜で彩られますが、今は、紅や黄色に色づいた枯
れ葉が並んでいます。最近は、枯れ葉も落ちてしまいました。四季と生の循環
のダイナミズムを実感しました。
・いつのまに「まいったなもう」口癖に  (061)
  最近、お風呂やトイレにいく途中などの合間合間に、このフレーズが頭のな
かに現れます。
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