2019年12月27日金曜日

七句会 第三十回句会の自句自解です。

 七句会のみなさま
 第三十回の選句結果を踏まえて、感想や自句自解、等をおよせいただき、た
いへんありがとうございました。
 およせいただいたものを、名前順に、ほぼそのまままとめてお届けします。
今後のやり方に、ご意見、等ありましたら、よろしくお願いします。

 七句会のweb  http://nanaku-haiku.blogspot.jp/ にも掲載してあります。
  今後とも、よろしくお願いいたします。
  深瀬 (事務方)

 追記
  自由連句を、12月上旬から、小野寺さん、吉良さん、志方さん、豊さん、深
瀬の5 名にて、5 回転し25句まで詠みたいと思っています。
  無事、終わりましたらみなさまにご報告したいと思っています。よろしくお
願いします。


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1.小野寺さんの自句自解
・石畳み紅葉敷き詰め小糠雨     (060)
 古都の石畳みに敷き詰めたように散り落ちた紅葉は小糠雨に濡れていっそう
の艷やかさを増し、さながら絵巻きのような風景でした。
・朝霧や柿の実ひとつ濡れ残り   (071)
 朝露のたち込めた秋の朝ぽつんと残った柿の実が、濡れたままで、淡い風景
の中で鮮やかな色を残しており心に残りました。
・蒼き露野仏の頬伝い落ち   (073)
  古都の苔むした蒼い野仏の頬をつたい落ちる露はさながら野仏が秘めやかに
涙をながして晩秋の深い哀しみを宿しているようでもありました
・蟷螂は健気に百舌の贄となり   (068)
 カマキリのオスは交尾して生きながらにしてメスが産卵する為の餌となりま
す。子孫を遺す為に食われた、身体半分のオスが更に百舌の早贄のために、枝
に突き刺されておりました。カマキリのオスの一生は健気ではありませんか。
・落ち葉踏む音静まれり古都の路   (076)
  吉良さんが指摘されたように、深く積もった落ち葉を踏む音は、古都の年月
を重ねた、不思議な静寂を連れて歩く様でもありました。
・月冴えて芒の原は銀の波    (080)
  中天にかかり煌々と輝きを増す月の光の中で芒の原の芒の穂波は、銀色に波
だち、さながら海原の波浪の様でもありました。静寂な幽玄を思わせる一幅の
墨絵の趣きがあったのです。
・芒原風は轍を残しけり    (083)
  一面の芒の原に一陣の風が舞い、吹き荒れ風の通り路には いく筋もの轍が
残されておりました。風は天に昇ったのでしょうか。
・あだし野に煙たなびき曼珠沙華   (086)
  徒然草の一節
   あだし野の露消ゆるときなく、鳥辺山の煙り
   立ちさらでのみ住みはつるならいならば
   いかでもののあはれもなからん。
 この世は定めなく、無常であるからいいのだ。と言ってます。嵯峨野から大
覚寺へ行く道すがら煙りがたなびき、曼珠沙華が紅く咲いており、京の片隅で
不思議な無常を思った事でした。
・コーナーを追い抜く孫の運動会    (005)
  リレー選手になった孫娘がコーナーをゴボウ抜きして走りさる姿を大声で叫
びながら応援しました。小学生時代の自分に、重ねておりました。
・鰻食ふ白寿の母に小春の陽    (032)
  白寿を迎える母は好きな油絵を描き好物の鰻を食べる笑顔に小春陽が降り注
ぎ来年の銀座の個展への参加を願います。

2.桑子さんの自句自解
・天高くティーショットは視野の外 (039)  
 ナイスショットもドジッたボールも、視力の衰えですぐに見えなくなるとい
う現実を読みました。治部さんの言うとおり「・・・視野の外へとティーショ
ット」の方がいいですね。
・秋寒し今宵納めの冷やの酒 (042)
 季重なりについては気になっていたところで、「冷や酒」(夏の季語)を「
冷やの酒」と「の」を入れることで無季語にならないかと。
・長き夜の話し相手はテレビかな (049)
 毎日だと、家内との会話もそうは続かないので必然的にテレビに向かって文
句を言っている今日この頃です。

3.橋本さんの自句自解
・枝見上げいましばらくの落ち葉掃き (4点句)
 落葉は自然任せ、庭と道路への落ち葉が気になると掃いている。枝に残る葉
の様子から未だしばらく付き合わされそうである、ヤレヤレ。(最後の1 枚は
12/20 に散りました、句は11月初旬)
・箍緩む瑞穂の国や台風禍 (1点句)
 台風15号、19号の風害、水害の被害は甚大、救える命・ 財産が対応の甘さで
失われたものも多い。温暖化で想定外の災害が増えている昨今、出来ることか
ら備えていかねば、、、
・血税の花見の宴に露と消ゆ (1点句)
 首相主催の「桜を見る会」は、税金の使途として甚だしく不適切、不愉快。
バラマキ政治の本質の一端が垣間見える。

4.宮澤さんの自句自解
・年寄りのうんちく姦し美術展  (015) 
  とにかく昨今の美術展は混んでいます。この作品の背景はから始まり、技法
、業界のランクまで知る限りの知識を披露してる人。一方、作品には関係なく
、なんでここでというよもやま話をしているおばさんたち。特別展だと入場料
も結構高いはずですが、年寄りはひたすら元気で好奇心旺盛という感じです。
浮世絵展などだと、作品が小さくて、人混みではよく見えないと思いますが、
それでも混むのはちょっと不思議な感じがします。特別展よりすいている常設
展を推奨します。
・稲妻にクラブ投げ出し命乞い  (028)
 これはまさに実感で、ゴルフで何が怖いといって、スコアが乱れることでは
なく、雷に直撃され命までかけることはないということ。格闘技ならごめんな
さいで命懸けの勝負は避けられますが、たかがゴルフで、勝負をかけるところ
でないところで命をかけたくないというわがままな気持ちです。
・青い目が神輿を担ぐビルの谷  (010) 
 1 治部    最近この光景をよく見る気がします。ビルの谷としたところが面
白いと思います。
 ありがとうございます。昔、仲宗根美樹が歌った「川は流れる」という曲で
、「街の谷、川は流れる」という詩がありました。ビルの谷は、そこから借用
です。
・秋の空雲の間に間に覗き見え  (035) 
 今年は、夏からすぐに冬で、秋空がたまにしか見えなかった残念感です。こ
んな年でも雲の向こうは、秋空が広がっているのでしょうという思いです。
・秋来ぬと目に見えぬまま痩せさんま (084)  
 1 中津川
 古今和歌集のパロディのつもりです。今年の秋は、夏が長く、秋に雨が多く
、いきなり冬という感じでした。古今和歌集の本歌は、風の音に秋が来たと聴
覚で秋を感じたようです。今年の秋は台風ばかりでこの聴覚を感じぬまま、痩
せたさんまに視覚と味覚と臭覚に、またあえて痩せた手触りの触覚の、五感の
内の四感で感じた、つかの間の貧しい秋だったなという気持ちです。

5.豊さんの自句自解
・沖縄のこころ焼けたり曼珠沙華
 沖縄の歴史と文化には以前から関心を持っていました。辺野古埋め立てと首
里城の焼失、沖縄県 民の続く受難に深く同情します。
 まさか最高点になるとは思っていませんでしたが、皆さん沖縄に想いがある
ことを知ってうれしく思いました。
・菊花展老いの一日また過ぎて
 小春日和のある日、老夫婦そろって菊花展に出かけた様子を想像して詠みま
した。
 老人の平和な日常の一端を切り取ったつもりです。
・月見には独りがよろし手酌酒
 名月を愛でるにはやはり一人がいいのです。ススキの生えている野原にぽつ
んと坐り、一升びん を片手に空の満月と対話している風流人を想像してみて
ください。

6.深瀬の自句自解
・国東の古代の田にも今年米  (077)
  九州・国東半島の水田は、平安時代から続いているそうです。水田の生産の
安定性やそれが日本列島に広がっていった様子を思いました。
・翼竜や秋の雲間を滑り飛ぶ  (023)
  恐竜時代に思いを馳せました。翼竜がたくさん空を舞っている様子はどんな
感じだったのでしょうか。
・鉄骨を吊るすクレーンや秋の雲  (046)
  都心では、あっちこちで高層ビルの建築が進んでいます。時代の変化や躍動
感に感じ取っていただけたらと思います。
・六十年 (むそとせ) のすまいの朝に秋の雲  (034)
  同じ場所に物心ついてから60年以上住んでいます。朝、マンションの4 階の
廊下に出て、近所を見回しますが、ふと感慨におそわれることがあります。
・秋の陽を反射す額また広く   (041)
・秋の風広がる額すべりゆく   (027)
  最近、急速に額あたりの頭髪が消えていきます。そのスピード感に驚いてい
ます。
・それぞれの終活事情秋の風   (021)
・秋空に終活思案まとまらず   (054)
  終活として、なにをどういう手順でするか考えることがあります。蔵書や遺
産の整理とかあるとは思いますが、どうもそれだけないような気もします。人
それぞれの課題のようにも思います。
・こがらしに終活見据えよろけけり   (019)
  終活をがんばろうとか気合を入れた瞬間によろけたりするのがなさけない感
じです。
・善く生きる問ひを背負いて秋の声   (025)
  昔の人は、善く生きるとはどういうことか、という問いが日常的にあったの
ではないかと思うことがあります。競争社会やスマホ社会のなかでは、そうい
う意識が後退してしまっているのか気になることがあります。
・仰向けの蝉の見つめる虚空かな    (067)
  朝、マンションの外廊下に、蝉が仰向けにころがっていることがあります。
もう死んでいるのかと手をふれると、ぱっと飛び立っていきます。あんなかっ
こうでなにをしていたのか不思議に思います。
・地表には巨大ひとつ目野分行く    (037)
  気象衛星からみた地表の雲の様子は日常茶飯になりましたが、台風の目の映
像は、改めて自然の脅威を思い知らされます。
・地下タンク野分の水を捌くかな    (050)
  荒川や神田川にはあふれた水を貯水したり別の川に放水する巨大な仕組みが
地下に作られているようです。温暖化による雨量の増大とのいたちごっこにな
らないかと心配になります。
・学らんの大根踊りや青き空    (002)
  東京農大の応援団の大根踊りはユニークだと思います。
・大根の葉っぱ広げしヘアかな   (058)
  大根やパイナップルの上についている葉っぱのようなヘアスタイルの女性を
見ることがあります。女性には似合う感じもします。
・大根の磨かれし艶パリ画風    (072)
  大根の色というのは、よくみると深みがあって引き込まれます。藤田嗣治と
かユトリロの絵なんかを連想しました。
・ママチャリの荷台の大根夕陽受け  (055)
  夕方の買い物帰りの主婦の様子を思い浮かべました。
・昼呑みに大根おでんつまみけり   (085)
  これはかなりフィクションですが、昼呑みの機会は増えました。なにかかな
り贅沢をしている気持ちになります。
・大根に網タイツ着せフェティシズム  (063)
  大根を見つめていたら、こういう気持ちも湧くのではないかという想像です。
・アラーキー萎び大根 (だいこ) の美学かな  (089)
  写真家荒木経惟は、萎びて枯れかけた花や野菜を被写体にしているようです
が、それが美しいと言われると、不思議にそうかなという気持ちになります。
日本人のわびさびの美意識につながるのかもしれません。
・チアガール大根踊りのどはくりょく    (016)
  大根踊りのときのチアガールは、大根は持ちません。持って踊っている姿を
勝手に想像したものです。
・神の旅此処も水没後ろ髪    (013)
  今年の台風19号は広い範囲に大雨を降らし、雨があがった後に洪水が押し寄
せました。地球温暖化に起因し、今後も増えそうだとのことです。のんびり秋
祭りをたのしんでいる余裕がなくなるのか心配です。
・唄太鼓十津川踊り神の留守   (009)
  十津川の盆踊りは、唄と太鼓のみで、両手にもった扇子の動きや唄の歌詞に
伝統の重みを感じます。歌詞がかなり世俗的でおもしろいと感じました。
・神の旅一神教ではさみしけり    (007)
  日本中の神様が収穫を終えた各地方から出雲に集まってくるというのは、一
神教の世界では考えられないことです。日本人の心象の奥深くにある感じです。
・目黒川さくら並木も紅葉に    (096)
  春には、川の両岸が満開の桜で彩られますが、今は、紅や黄色に色づいた枯
れ葉が並んでいます。最近は、枯れ葉も落ちてしまいました。四季と生の循環
のダイナミズムを実感しました。
・いつのまに「まいったなもう」口癖に  (061)
  最近、お風呂やトイレにいく途中などの合間合間に、このフレーズが頭のな
かに現れます。
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2019年12月6日金曜日

七句会 第三十回目のネット句会 選句の結果をご報告します。

 七句会のみなさま
 第三十回の七句会にご参加いただきたいへんありがとうございました。
今回の選句結果をご報告いたします。
  5 点句
(082)  沖縄のこころ焼けたり曼珠沙華       豊 
  4 点句
(060)  石畳み紅葉敷き詰め小糠雨         小野寺
(067)  仰向けの蝉の見つめる虚空かな       深瀬
(079)  枝見上げいましばらくの落ち葉掃き     橋本
  3 点句
(014)  菊花展老いの一日また過ぎて        豊
(031)  月見には独りがよろし手酌酒        豊 
(039)  天高くティーショットは視野の外      桑子
(042)  秋寒し今宵納めの冷やの酒         桑子
(071)  朝霧や柿の実ひとつ濡れ残り        小野寺
(073)  蒼き露野仏の頰伝い落ち          小野寺
  2 点句
(015)  年寄りのうんちく姦し美術展        宮澤
(027)  秋の風広がる額すべりゆく         深瀬
(028)  稲妻にクラブ投げ出し命乞い        宮澤
(037)  地表には巨大ひとつ目野分行く       深瀬
(038)  秋月や真白に染まる醤油倉         吉良
(051)  夕映えに柘榴が独つ空に溶け        志方
(066)  八千草の岸辺や今に伝えけん        治部
(068)  蟷螂は健気に百舌の贄となり        小野寺
(076)  落ち葉踏む音静まれり古都の路       小野寺
(080)  月冴えて芒の原は銀の波          小野寺
(083)  芒原風は轍を残しけり           小野寺
(086)  あだし野に煙たなびき曼珠沙華       小野寺

  下記に、選句表に、各句の右側に作者名、および、その下に選んだ人の名前
とコメント (追番付き、順不同、敬称略。) を付したものを添付します。
  次回については、来年1 月中旬ころにご連絡したいと思っていますので、よ
ろしくお願いいたします。やり方、等について、ご意見がありましたら、ご連
絡をいただきたく、よろしくお願いいたします。
 事務方から、以下、ご連絡、ご依頼です。
(1) 選句参加者
 今回の選句には、下記の14名が参加しました。
  秋岡さん、秋元さん、小野寺さん、吉良さん、桑子さん、志方さん、治部さ
ん、鳥海さん、中津川さん、橋本さん、宮澤さん、柳町さん、豊さん、深瀬。
(2) 今回の句会の結果を踏まえた自句自解、感想、等の募集について
  今回の句会の選句結果を踏まえて、各自、表明しておきたいこともあるので
はないかと思いますので、自句自解、感想、等、なんでも結構ですので、募り
たいと思います。一応、期限としては12月23日とし、事務方にメールでいただ
き、それを七句会の下記のweb に掲載することにしたいと思います。
 http://nanaku-haiku.blogspot.jp/
  句会の後の勉強会等については、みなさまのご意見をお聞きしながら、適宜
、行っていきたいと思っています。よろしくお願いします。
(3) 自由連句第二回について
  末尾に付記として、要領を記しました。よろしくお願いします。
  2019.12.06
      代表   橋口侯之介 (休会中)
      顧問  豊  宣光
      事務方 深瀬久敬
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 1.兼題  秋の行事
   
(001)  今年も並ぶ鉢増えて菊花展         中津川
(002)  学らんの大根踊りや青き空         深瀬
1 吉良    大根の白が青空を背景に空を舞う光景が素敵です。
(003)  穂の重み沁みて楽しむ秋祭り        柳町
1 志方    季節と種の生育の時間とと農民の感謝が調和している
(004)  いが栗や長靴で割る味たのし        中津川
(005)  コーナーを追い抜く孫の運動会       小野寺
1 豊      前を走っているランナーを追い抜く孫を、はらはらし
 ながら応援しているおじいちゃん。かつての自分を見ているの
 かもしれません。
         60の手習いで始めた先輩たちの個展で上手
       なことにびっくりしました
(006)  柿の絵に進歩を示す個展かな        中津川
1 深瀬    前の勤務先の社友会の会報がときどき送られてきます。
 そこに写真、絵画、工芸品などの、かつて職場をともにした人
 たちの作品の掲載があります。この人にこんな趣味があったの
 だと新鮮な感動を呼び起こされます。
(007)  神の旅一神教ではさみしけり        深瀬
1 桑子    旅は道連れ、一人ではつまらないと思います。
 孫の運動会に行くと、自分の子供の運動会
の応援よりも大声になっていくのが不思議で

(008)  大声は孫のためかな運動会            柳町
(009)  唄太鼓十津川踊り神の留守         深瀬
(010)  青い目が神輿を担ぐビルの谷        宮澤
1 治部    最近この光景をよく見る気がします。ビルの谷とした
 ところが面白いと思います。
(011)  べったら市香りほのかな江戸の街      吉良
1 中津川
(012)  秋燃ゆるベートーベンの楽曲に       豊 
(013)  神の旅此処も水没後ろ髪          深瀬
(014)  菊花展老いの一日また過ぎて        豊 
1 秋岡    小生も今年は菊花展に出かけました。丹精込めた菊を
 眺めていると確かに時間が早く過ぎてしまいます。
2 柳町   
3 宮澤  予定表に終了のチェックマークを付けました。次の予
 定は「白内障の検査」か「入れ歯の修理」かな?
(015)  年寄りのうんちく姦し美術展        宮澤
1 中津川
2 橋本
(016)  チアガール大根踊りのどはくりょく     深瀬

 2.兼題  秋の天文
(017)  潮鳴りを耳殻で聴きし小春かな       小野寺
(018)  野分後に八百屋に並ぶ高値菜        中津川
(019)  こがらしに終活見据えよろけけり      深瀬
(020)  箍 (たが) 緩む瑞穂の国や台風禍      橋本
1 治部    危機意識が薄れていることを天が教えています。災害
 や、テロ等に対する備えを再考すべき時だとこの句が告げてい
 ます。流石です。
(021)  それぞれの終活事情秋の風         深瀬
1 豊      秋はすべてが滅びへ向かう季節。人生の終わりを間近
 にして、人それぞれにさまざまな思いがめぐります。
(022)  土手に来て復興祈る雨野分         中津川
(023)  翼竜や秋の雲間を滑り飛ぶ         深瀬
1 吉良    雲を翼竜に見たてたのかと思いましたが、秋の青空の
  深さが感じられます。
(024)  灯消え岬の街は星月夜           小野寺
(025)  善く生きる問ひを背負いて秋の声      深瀬
1 橋本    人生も末頃となり善く生きたかなと振り返り、未だ間
 に合うところもあるかなとも
(026)  秋晴れや万国旗ゆれて園児の輪       治部
1 鳥海    何故か孫の運動会は張り切ってしまいますね。
(027)  秋の風広がる額すべりゆく         深瀬
1 柳町   
2 宮澤  年老いて、季節を感じる新しいセンサーが機能しだし
ました。
(028)  稲妻にクラブ投げ出し命乞い        宮澤
1 鳥海    今年の夏に駒東OBと一緒に行った際これで死んだら
  皆様に何て言われるかと、雷の音で即中止した事を思い出しま
  した。
2 桑子    カミナリが近くに来るまでプレーしていたのですね。
  ゴルフが余程好きな人ですね、命あっての物種です。命乞いは
  土下差して低くしていたのですかね。
 バスツアーで飛騨高山方面へ行きました。
       紅葉が思った以上に良かった。
(029)  天高し響く異国語白川郷          中津川
(030)  見上げれば金刀比羅宮に秋日濃し      吉良
(031)  月見には独りがよろし手酌酒        豊 
1 吉良    たまたま一人なのか、独り身なのかはわかりませんが、
 共感を生みます。
2 中津川
3 小野寺  独りで、月見酒。自分と向き合いながら呑む酒はまた
格別ですね。
(032)  鰻食ふ白寿の母に小春の陽         小野寺
1 豊      食欲旺盛な99歳と高齢の母。まだまだ元気です。「
 小春の陽」という言葉がみごと。かなり俳句作りになれた作者
 でしょう。
(033)  秋の雲瀬戸の波間に船流がる        吉良
(034)  六十年 (むそとせ) のすまいの朝に秋の雲  深瀬
(035)  秋の空雲の間に間に覗き見え        宮澤
(036)  空澄みて古都の石段にわか雨        小野寺
(037)  地表には巨大ひとつ目野分行く       深瀬
1 中津川
2 橋本    宇宙から詠みましたか、地表は大変です
(038)  秋月や真白に染まる醤油倉         吉良
1 秋元    絵画を思わせる
2 深瀬    醤油蔵の白壁が秋月の光に照らされ、夜空を背景にた
 たずんでいる景色は、なにか幻想的な絵画のようです。酒蔵で
 も味噌蔵でもないのもよいと感じました。高校時代に習った萩
 原朔太郎の詩「猫」を連想したりもしました。
(039)  天高くティーショットは視野の外      桑子
1 鳥海    加齢により視力が落ちてボールの行方を見る事が出来
 ない人。意図した方向とは全く異なり行方が分からない人。色
 々あると思いますが。
2 橋本    秋の青空に白球がのはずが、右に左にまっすぐ飛ばず
 探すのが一苦労、同類です
3 治部    テンプラですか、OBですか?「・・・視野の外へとテ
 ィーショット」では?
(040)  野分止み野に金色の月のぼり        小野寺
1 志方    野分の後の静寂が表現され、いいですね
(041)  秋の陽を反射す額また広く         深瀬
(042)  秋寒し今宵納めの冷やの酒         桑子
1 秋岡    季重なりのようですが、気分は良く分かります。これ
 からはやはり人肌のぬる燗、さらに熱燗ですか。
2 秋元    酒飲みに敬意を表して
3 小野寺  寒い季節となり熱燗が恋しくなる前に飲み納めの冷酒
はまたおつですな
(043)  台風禍暗闇ひそみ祈る声          吉良
        想定外の災害が人間のおごり産物で、かっ
       て台風は子供心に何か楽しかった記憶があり
       ます。
(044)  今は無く野分またの日碧き空        志方
(045)  古時計音秘めやかに小夜時雨        小野寺
1 深瀬    子供のころの柱時計は、歯車の噛み合う音がしていま
 した。夜中に前を通ったりするとよく響いていました。小夜時
 雨の夜中だと余計大きく響き、こころに迫るものがありそうで
 す。
(046)  鉄骨を吊るすクレーンや秋の雲       深瀬
1 秋岡    大都会の秋の風景ですね。秋の雲は、すじ雲ですか、
 うろこ雲ですか?
(047)  水害の忘る間の無き瑞穂国         橋本
(048)  台風の老木倒す強さかな          豊 
(049)  長き夜の話し相手はテレビかな       桑子
1 秋岡    独り身の夜なのでしょうか?秋は一層さみしいです。
 昔は書物、今はテレビですか?単身赴任の時はこんな感じでし
 たね。
(050)  地下タンク野分の水を捌くかな       深瀬
        下記の3 つの句は秋の夕暮れを読んでみま
       した。
(051)  夕映えに柘榴が独つ空に溶け        志方
1 治部    (独つ)とすることで最後の一個とわかります。夕映
 えの中に溶け込んで、存在感が薄れています。寂しい様子が人
 生の終盤に重なっちゃいますね。(071) の朝霧と柿の取り合わ
  せとの違いが面白かった。
2 深瀬    かつて住んでいた家の庭の西側に柘榴の木が植わって
 いました。夕陽を背にした柘榴の光景が思い出されました。独
 つというのも絵になる感じです。
(052)  雁帰行秋の夕暮れ山の端に         志方
(053)  風誘う夕陽に染まる芒かな         志方
(054)  秋空に終活思案まとまらず         深瀬
1 小野寺  冬を控えた秋の風の日、終活の案などなおさら、思い
乱れてまとまりませんよね

  3.雑詠、無季語
(055)  ママチャリの荷台の大根夕陽受け      深瀬
(056)  野仏に木枯らし哭きて古都は暮れ      小野寺
1 橋本   
(057)  山肌を紅葉飾りて秋化粧          秋元
1 志方    山麓の秋が目に浮かぶ
(058)  大根の葉っぱ広げしヘアかな        深瀬
(059)  寺町をながむる松やうそ寒し        治部
1 小野寺  寺町の長い歴史を見守ってきた老い松には木枯らしの
季節はとりわけ寒さが身に沁みるのでしょうか。
(060)  石畳み紅葉敷き詰め小糠雨         小野寺
1 橋本   
2 秋元    秋の色に染まった情景を思わせる
3 深瀬    石畳みの上に紅葉がたくさん敷きつめられ、そこにこ
 まかい雨が静かに降り、紅葉の色がさらに映えている様子が思
 い浮かべられました。
4 宮澤  同じ濡れ落ち葉でも、紅葉は風情があります。そうい
えば「小糠雨ふる御堂筋・・」と歌った欧陽菲菲はどこへ行った
のでしょうか?
(061)  いつのまに「まいったなもう」口癖に    深瀬
(062)  川堤五羽の白鷺照らす月          橋本
(063)  大根に網タイツ着せフェティシズム     深瀬
(064)  天透きて嵯峨野の路に彼岸花        小野寺
(065)  秋雨晴れ厳かなり即位式          中津川
(066)  八千草の岸辺や今に伝えけん        治部
1 豊      岸辺のアルバムは名作でした。八千草薫の清楚な姿が
 浮かびます。静かな死に合掌。
2 柳町   
(067)  仰向けの蝉の見つめる虚空かな       深瀬
1 吉良    仰向けの息を引きとる前の蝉に自分を重ねているので
  しょうか。無になってすべてを受け入れる覚悟を感じます。
2 治部    自分の寿命が分かっているようで虚しいですよね。何
  を考えているのでしょうか。でも最後の一飛びの力は残してい
  るのです。ただ、今回の句会の季節としてはどうですかね。
3 宮澤  「八日目の蝉」を演じきって満足なのか、地上での短
い寿命の不条理を憤っているのか?合掌。
4 小野寺  生きとしいけるもの、皆平等に死はやってきます。蝉
の複眼が死の底でみた先は無限の虚空だったかもしれませんね。
(068)  蟷螂は健気に百舌の贄となり        小野寺
1 桑子    健気に贄となるという表現がすてきです。気に入りま
  した。
2 橋本    カマキリが百舌の贄となっているのは見たことがあり
 ませんが、健気がなんとも、、、
(069)  血税の花見の宴に露と消ゆ         橋本
1 中津川
(070)  蟋蟀の声不意に消え藪暗し         豊 
1 宮澤  虫の演奏が突然終わり、静寂が訪れると、寂しさに抱
きすくめられたような気になります。
(071)  朝霧や柿の実ひとつ濡れ残り        小野寺
1 吉良    そろそろ冬も近くなり、少し寂し気な田園風景を想像
  させられます。
2 豊      秋の朝の風景をうまく切り取っています。「濡れ残り」
 が効果的です。
3 治部    柿は一つ取り残した方が翌年の実りが良いそうです。
  濡れ残りが朝霧を強調していていいですね。
(072)  大根の磨かれし艶パリ画風         深瀬
(073)  蒼き露野仏の頰伝い落ち          小野寺
1 秋岡    ”蒼き”露とはどんなイメージなのでしょうか?絵画
 的ですね。
2 志方    秋の情緒がひそやかに伝わります
3 柳町   
(074)  美咲呼び紅葉且つ散る道志川        治部
(075)  コスモスの咲き乱れたる野の原に      秋元
(076)  落ち葉踏む音静まれり古都の路       小野寺
1 吉良    本当は落ち葉の踏む音がしてるのでしょうが、それも
  聞こえない静寂さを感じることができました。
2 秋元    古都の静寂が伝わって来る
(077)  国東の古代の田にも今年米         深瀬
(078)  熱燗の温さを好む朋逝きて         志方
1 小野寺  熱燗の温さ加減を知り抜いていた朋の死はしみじみと
切ないですね。
(079)  枝見上げいましばらくの落ち葉掃き     橋本
1 桑子
2 志方    儚さが上手く表現されている秀作ですね(2 点句)
3 深瀬    毎朝、きちんと落ち葉を掃いている人の感慨のような
 ものが自然体で詠まれ、こころに響くものを感じました。
4 宮澤  最後の葉一枚が落ちると冬が来ます。外の焚火では寒
いので、家に入り暖炉で暖まりましょう。
(080)  月冴えて芒の原は銀の波          小野寺
1 秋岡    季重なりのようですが、絵画的で美しい句ですね。月
 が砂漠を照らし銀色に輝く有名な絵画(?)にも通じるような。
2 深瀬    夜の芒の原に月光が降り注ぎ、銀色の芒の穂が波のよ
 うに揺らいでいるというのは、なにか幻想的な絵画のようです。
 落ち武者の金目のものを奪おうとする盗賊でも出てきそうな不
 気味さも感じました。
 半世紀に亘る飲み友達に先立たれ
(081)  朋逝きて野辺にたたずむ彼岸花       志方
1 小野寺  長いあいだ苦楽を共にした友人の死は忍びがたいもの
があり、心に開いた穴にたたずむ彼岸花は作者自身でしょうか。
(082)  沖縄のこころ焼けたり曼珠沙華       豊 
1 鳥海    何年か前に沖縄旅行で首里城に行った事を思い出しま
  した。沖縄復帰20周年事業の一環として首里城が復活したの
  に・・・。今、「アジアの歴史と文化」と題する大学の講義の
  中で、琉球の歴史を学習しています。沖縄の墓石には中国の元
  号、日本の元号、西暦、日本の元号記載の変遷があるそうです。
  最初の日本元号使用は、琉球王朝を琉球藩にし更に沖縄県にし、
  中国との両属関係にあった琉球を組込んだ日本の「近代化」に
  よる所謂琉球処分よりも後の日清戦争に中国が負けた後の事の
  様です。
2 吉良    早く再建されることを祈るばかりです。
3 中津川
4 秋元    沖縄人の悲嘆に思いを馳せて
5 柳町   
(083)  芒原風は轍を残しけり           小野寺
1 治部    以前仙石原でこの風景を見た気がします。鉛色の空か
  ら風が吹いて芒の穂が揺れる様子が波のようだったのですが、
  轍ですか・・・なるほど恐れ入りました。
2 宮澤  風の通り道が、幾筋も見えます。この道を通って風は
どこへ行ったのでしょうか?
(084)  秋来ぬと目に見えぬまま痩せさんま     宮澤
1 中津川
(085)  昼呑みに大根おでんつまみけり       深瀬
1 志方    のんべい万歳
(086)  あだし野に煙たなびき曼珠沙華       小野寺
1 桑子  最初はちょっと分からなかったのですが、あだし野の
 意味を調べて納得しました。
2 柳町   
(087)  食卓に上らぬ秋刀魚懐かしや        秋元
1 桑子   
(088)  朱の空百舌啼く里は冬支度         小野寺
(089)  アラーキー萎び大根 (だいこ) の美学かな  深瀬
(090)  黄葉や街に小さな鼓笛隊          治部
1 豊      きれいに黄葉した銀杏並木が続く通りを、子供の鼓笛
 隊が進んでいく。その奏でる音が聞こえてくるようです。
(091)  渾身の羽ふりしぼり雁は翔び        小野寺
(092)  秋飾る石積み土手に見入り居り       橋本
        下記の2 つの句は秋そのものの季語であり、
       花弁の散る様を惜しんで
(093)  こぬか雨金木犀の花散らし         志方
1 秋元    雨に濡れた季節感のある情景
(094)  何想う金木犀の残り香に          志方
1 柳町   
(095)  山茶花は通学の子等見守りて        小野寺
1 秋岡    もう山茶花が咲きだしているのですね。都会では山茶
 花の垣根も少なくなってきたのでは。
(096)  目黒川さくら並木も紅葉に         深瀬
(097)  紅葉燃え永観堂に陽は落ちぬ        小野寺
1 志方    今年の春に青紅葉に圧倒され、晩秋の光景を想像して
 いましたが。
  注。選句にあたって寄せられたコメント
・友人の死を悼み作った句が多くなりましたね。私自身、長いあ
いだ付き合った友人の葬儀に幾つも立ち会い、残されたご家族の
慟哭の涙をみて断腸の思いでした。おろそかには、生きられない
と思うようになりました。 小野寺  健

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  付記
  自由連句に参加される方のご連絡をお待ちしています。
  前回の自由連句は、7 月上旬から9 月末までの約3 ヶ月にわた
り、橋本さんの「新緑や葉裏を見せて風渡る」を発句として、小
野寺さん、吉良さん、豊さん、深瀬の四人で行いました。
  できあがったものは、七句会HPの「七句会自由連句第一回2019
年7 月9 日~9 月30日」を参照してください。
  前回の反省を踏まえ、12月下旬くらいから、下記のような要領
で第二回を行いたいと思っています。参加してもよいと思う方は、
12月中旬ころまでに、ご連絡をお願いします。 
  事務方  深瀬
  ・・・・・・・・・・
  前回は、歌仙形式 (36句) の自由連句として行われた。10句目
あたりから、わたしたちの残りの人生の整理にむけた気持ちのよ
うなものが中心的になったが、それはそれでたいへん興味深いも
のになった。
 次回に向けては、下記のような方向で行う。
1.式目 (ルール)
・次の句をつける人に誤解や戸惑いを与えないように、なるべく
補足説明を記すように心がける。 (すでに行っている人もいるが。)
・「花」、「月」、「恋」などといった定座のような規則は設け
ない。ネット運営なので時間的ゆとりがあり、特に単調になった
りすることを危惧する必要はないと思われるため。
・次の句に、前の句と同じような言葉は使わないといった基本的
なルールは、自主的に尊重すればよいという考えで進める。
・捌き手とか特に設けないが、投句の整理をする程度とする。
2.発句
・なるべく連句に参加する人が作ったもので、これまでの同季節
の句会で高い点数を得たもののなかから、適宜、選ぶという方向
とする。 (発句の選び方が、その後の流れにどのように影響する
のかは、よく分かっていない。)
3.実施する間隔、参加者
・1 ラウンドするのに前回は、約3 ヶ月 (7 月初旬から9 月末。)
かかった。ラウンドの間は、2 ~3 ヶ月はあける。
・1 ラウンドする期間は、参加する人数にもよる。前回は4 人で
あったが、あと2 ~3 人、増えても大丈夫そうである。
・前回は、歌仙形式の36句で行ったが、やや長すぎるので、24句
を1 ラウンドとする。
4.その他
・実施している最中でも、適宜、問題、等があれば、相談するよ
うにする。
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