2020年7月25日土曜日

七句会 第3 回 自由連句 感想まとめ

  七句会自由連句のみなさま
  歌仙形式の第3 回目が無事終了し、感想、等をお寄せいただき、たいへんあ
りがとうございました。
  下記に、それらを整理し、ご報告します。
  連句の結果は、別途、整理し、web に登録しておきます。
  次回は、9 月か10月ころに行いたいと思っています。
  よろしくお願いします。
  深瀬

・小野寺さん
  言葉の遊びごころといわれますが発せられた言葉は、その人の人格そのもの
の様にも思われます。

・志方さん
  俳句も連句も、風情や心情を表現する文言の選択肢が多くて、漢字、ひらが
な、カタカナ、ローマ字等文字選択も加わって、難しさを痛感しております。
これが日本文化の特色かもしれませんね。言葉の選択がその奥行も考慮せず、
迂闊に発言してしまう我が国の最高無責任者の発出する、無知、無恥な発言が
横行している現状、日本文化の土台が浸食されてしまうか心配です。
  自戒を含めて、人の心に響く表現の追求に、俳句創りの研鑚を重ねていきた
いと思っております。

・小野寺さん
  確かに英語のアルファベットに比べて日本語は選択肢が多彩ですね。それだ
け、言葉の選択により、より深い伝達の可能性があると言う事でしょうか。
  この国の責任者達は海外でも物笑いの種になってるようです。
  早くコロナが下火になって一献傾ける日が来るといいですね。
  俳句に携わった事によりお互い、言葉や文章の研鑽に努める機会に恵まれた
ように思います。お互い何も考えないで過ごすよりは俳句や、連句に携わって
いく事で感動や感情をいかに人に伝えられるかを楽しみながら、無理なく自分
にロードをかける事は意味のある事と思います。

・平島さん
  今回の感想を送信しますが基本はあくまで蕉風連句の猿蓑辺りをお手本にし
たものです。
  先ずは「36歩前へ」という事と同字重用の観点から見て行きます。
  第三に風薫るがあります。
  09に寅さんの風
  31に麦秋の風
  06に哀しき
  26に声哀し  
  13に漁火
  28に漁火
  以前に誰かが使われた言葉は避けるべきであり言うなれば後戻りにもなるの
で注意が要ります。
  数字の事。
  発句で一面 14で二三 34で四葉
  深瀬さんの登っていく感じの一二三四は上手いなあと思いました。
  他に付け方転じ方につきましては別途送信します。

・小野寺さん
  13  吉良さんの漁火がありましたが、暗い海の展開からの先に収まりの良い
漁火を使いました。
  きちんと前句の中の漁火を検証してませんでした、反省です。

・平島さん
  例えば漁火の代わりに潮鳴りとおく揺れる舷灯
という手もあります。それから18  木漏れ陽を瀬に春出帆す
ですが「瀬」は「背」ではないですか?
  今回は古い友人を亡くされてそれも読み込んで終生忘れがたい連句興行とな
ったことと拝察します。
  大兄の絵画的なセンスが縦横に出て来ますが少し欲張りすぎて観念的な美意
識が過剰かなと感じた部分もありました。
  でも七句会の俳句の漢語の使い方はどんどん上達されて来ていると思います。
  眼高手低陳謝。

・平島さん
  皆さん総じて大変に上達されて運びも上手くなられたとおもいます。
  特に前から感じていたのですが豊さんの天象と心象のアシライやそのバラン
ス、それに更に軽みが加わり、練達の士と思いました。昔からかなり読み込ん
でおられますね。
  表の6句は穏やかにですがまだ少し劇的な展開もありました。
  初折りの裏では身近な出来事中心の人情句が多くもう少し転じても良かった
かなと感じています。
  名残りの表も連歌の名残りのみやびやかを意識されてか綺麗にまとまってい
ます。
  名残りの裏は今回の興行の締めくくりとして良く出来上がったと思います。
  小生も海外暮らしで日本語を忘れがちでしたが皆さんのお陰で脳みそを刺激
されて楽しかったです。今後ともよろしくお願いいたします。

・平島さん
  謹慎中時間もあるので昔読み飛ばした本を少し丁寧に読み直しています。
  小西甚一著「俳句の世界」で談林の新しみの中で
  甚太 (チンタ) 瓶を捨つるや仮のフグもどき  清風
  チンタはポルトガルからの舶来酒( 原語はVinho-tinto)他に チャルメラ 
カルタ カステラ フラスコ ミイラ  くろんぼ など読み込んだ句があり、
これらの談林派の無軌道ぶりに対する反省から蕉風俳諧が生まれて来ました。
  1680年代に既に外来語を取り入れていた人達がいた事に日本人の新しいもの
好きに驚き且つ感心しています。

・小野寺さん
  ご指摘痛み入ります。舟偏に玄の漢字は知りませんでした。これで漁火、い
さりびと詠むのでしょうか?  俳句の裾野は広いです。
  木漏れ日を は確かに背です。木漏れ日を背に春出帆す。
です。変換間違いの不注意でした。ご指摘ありがとうございます。
  そうですね。確かに私は絵画の映像記憶を意識して句を詠みますが、観念的
な美意識が過剰にあったかなと、ご指摘ありがとうございます。
 (中略)
  連句に参加させて頂いたお陰で、より深く言葉に対する感覚が増したかもし
れません。
  平島さんの洞察にも感謝です。

・吉良さん
  36句にわたる連句のまとめを有難うございました。参加された平島さんの批
評、皆の感想を読ませていただきました。全く文学的センスがない中で四苦八
苦して参加しましたが、前の句から転ずる難しさを実感しました。今後とも宜
しくお願いします。

・平島さん
  舷灯はそのままげんとうと読みます。夜間船が航行する時に 右舷に緑左舷
に赤色を付ける事に決められています。潮鳴りとありましたので沖では風もき
つく船は揺れて舷灯も揺れている様を詠んでみました。
  漁火が同字重用となるので似たような景色を想像してこんなのもありますが
と提示したものです。まだまだ色々考えて見ても良いと思います。

・平島さん
  豊さんの事知らずに勝手なコメントを送っていましたが道理で上手いはずで
失礼しまた。文を扱うプロに対してチョット恥ずかしく思っています。
  チンタの事ですが舶来酒だった頃飲めたのは少しの上流階級の人達だった筈
です。それが今現地に住んで毎日この赤ワインを飲んでいる不思議さを喜んで
いる次第です。一本千円以下ですよ。白はもっと安く500 円程度で手に入りま
す。飲み過ぎには注意はしていますがどうしても医者の薦める限度をオーバー
しがちです。まあ美味しく飲めればイイや と慰めながら。

・小野寺さん
  舷灯とはおそれいりました。辞書では舷燈となってましたが舷灯とも記され
るのですね。潮鳴りの発想から、舷灯のほうが絵になり心に響きます。

・豊さん
 今回の歌仙は、皆さん良い句になっていると思いました。
 作者のコメントは本来ならばなくてもいいのでしょうが、コメントがあった
ほうが理解しやすくて、句をつけるのも悩まずにすむようです。
 季語にこだわる必要がないので自由な発想ができて、連句のおもしろさがわ
かったような気がしました。

・深瀬の感想、レビュー
1)自由連句から式目尊重へ
  これまでは、自由連句を標榜してきましたが、今回は、歌仙形式とし、初折
表、初折裏、名残表、名残裏の段落を意識し、かつ、季節、座をあらかじめ決
めておくというかなり伝統に則ったものになりました。そのためか、だいぶ連
句らしくなった感じがしました。これは平島さんのご助言や吉良さんの調査に
負うところが大だと感謝します。
2)展開の妙について
  初折表、初折裏、名残表、名残裏の各段落に、起承転結を意識する展開とか
、同字重用のこと、付合や展開の妙を含めて、まだやや敷居が高い感じがして
います。
 とはいえ、個人プレーの要素の強い俳句とは異なり、人それぞれの若かりし
ころや最近の老境の思いなど、呼応している面もあり、たいへん参考になった
と思いました。
3)付合のコメント
  各句の付合については、簡単なコメントを付記していただき、次の詠み手に
回すようにし、過去のはweb に累積するようにしました。この方式は、とりあ
えずは踏襲したいと思います。
4)わたしなりの各句の鑑賞
  ご参考までですが、わたしなりの各句の解釈を記してみました。
 初折表
 朝日が一面の雪に反射しているなか、たくさんの寒椿の朱色がその雪に映え
わたっている。それに圧倒された子供らは、息をのんで見つめている。
  初土俵に臨む息子を応援に来た両親は、手に汗して気が気でない。いよいよ
制限時間もいっぱいになった。金星の期待が高まり、座布団が舞う。
  お相撲さんの鬢付け油とは違うほのかな髪油をただよわせる女性が静かに月
を見上げている。その先で、旅に疲れ力尽きた雁が落ちて行った。
  初折裏
  里の方では、秋祭りの笛の音が響きわたっている。こどものころのほのかな
恋ごころがふと思い出される。
  映画の寅さんのような感じに、思いを秘めながら今にいたってしまった。一
方、柴又のお饅頭はおいしく、若い女性は遠慮しながらも頬張っている。
  寅さんのように挫折を味わっても前向きにチャレンジして生きてきた。確か
に、いつも晴天のときばかりではなかった。
  沖合で漁火を焚いて漁をしている船の上には月が皓々と競うように輝いてい
る。浜辺では、線香花火を二つ三つ、たのしんでいる様子だ。
  人生、夢幻のごとしと言われるが、過去のことはほとんど忘却の彼方になっ
てしまった。その中から時々ふと古い写真のように思い出されることもある。
  訪れる人の少なくなった古寺の庭では、桜の花びらが、苔の上に静かに散っ
ている。あの春爛漫の故郷を高揚した気持ちで後にしたころが懐かしい。
 名残表
  瀬戸内の島々が春霞のなか、墨絵のような風情を湛えている。どこかで仙人
が詩を詠み酒を酌み交わしているようだ。
  ことばの力は時空を超える。弓矢にことばで願いを込めた。その願いはめで
たくかない、見通しもたったことだ。
  コロナ禍が世界を覆っている。ことばの力に除夜の鐘の力も加え、災害から
の脱却を確実にしたい。家では、家内と孫が南天の赤い実をみつめている。
  三密を避けるため、結婚式が延期されてしまった。一方では、結婚相手に恵
まれず寂しそうにしている人もいる。
  「太陽の季節」のような若さあふれる小説も遠い過去の思い出になってしま
った。子供のころ、故郷の夜の海では漁火が頼りなげに浮かんでいた。
  40年くらい前の梅雨時の夜、紀尾井坂を歩いているとき、月光のもと白い梔
子が連なり甘い香りを放っていた。家では、夕食に白いとろろ汁の用意が進ん
でいる。
  名残裏
  海外でも共にした古くからの友人がその人柄にふさわしい麦秋のなか、逝っ
てしまった。あの世へも飄々と煙のように旅立っていることだろう。
  かつては炭を焼いていた窯は、見捨てられ紅葉に覆われてしまっている。か
つてはサラリーマン家族で賑わったニュータウンも四葉クローバマークをつけ
た車がひっそり走っている。
  年齢とともに人生も円熟し、味わい深いところも見えてきた感じだ。満開の
桜をみた後のなにかむなしい思いもあと何回経験することだろうか。
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2020年7月24日金曜日

七句会 第3 回 自由連句 結果 (2020年4 月~7 月)

 七句会  第3 回  自由連句  結果 (2020年4 月~7 月)
 初折表
01 発句  朱染めし雪一面に寒椿           小野寺 (春)
02 脇      息のむ子らのみひらく瞳       深瀬   (春)
03 第三  風薫る父母の手に汗初土俵        吉良   (春)
04 四句目    目指せ金星座布団乱舞        志方   (雑)
05 月の座 髪油匂う女が月見上げ          豊    (月)
06 折端    落ちゆく雁の啼くぞ哀しき      小野寺 (秋)
 初折裏
07 折立   笛の音の里にしみいる秋まつり      深瀬   (秋)
08 二句目   埋み火のごとこころ騒ぎて      小野寺 (恋)
09 三句目 寅さんの風を背に受け思い秘め      志方   (恋)
10 四句目   乙女恥じらい団子頬張る       吉良   (雑)
11 五句目 来し方を脇目もふらず明日に賭け     小野寺 (雑)
12 六句目   雲のさえぎる日の光にて       豊    (雑)
13 月の座 漁火と競うがごとし夏の月        吉良   (夏)
14  八句目     浜辺に二三線香花火              深瀬   (夏)
15 九句目  夢覚めてたちまち消える面影よ      豊    (雑)
16 十句目   セピア色したアルバム残る      志方   (雑)
17  花の座  人絶えし苔むす寺に花の散り       深瀬)  (花)
18  折端    木洩れ陽を瀬に春出帆す       小野寺 (春)
 名残表 
19  折立  霞立つ瀬戸の島影墨絵かな        志方   (春)
20  二句目    仙人詩い酒酌み交わす        吉良   (雑)
21 三句目  刻 (とき) を越えこの矢当たれと弓を引き 小野寺 (雑)
22 四句目    未来明るき大吉の運         豊    (雑)
23 五句目 憂きことも今年かぎりぞ除夜の鐘     吉良   (冬)
24 六句目     南天の実を妻孫見つめ            深瀬   (冬)
25  七句目 コロナ禍で延期されたる結婚式      豊    (雑)
26  八句目   梅雨にウグイス鳴く声哀し      志方   (恋)
27  九句目 太陽の季節はるけき古稀の夏       深瀬   (恋)
28  十句目     潮鳴りとほく漁火は哭き       小野寺 (雑)
29  月の座 名残花月に白雲梔子と           志方   (月)
30  折端       とろろ汁擦り夕餉の支度       吉良   (秋)
 名残裏 
31  折立  麦秋の風頬に受け朋は逝き        小野寺 (秋)
32  二句目      空へ流れる煙ひとすじ        豊    (雑)
33  三句目  人は去り紅葉に隠る炭の窯        吉良   (雑)
34  四句目    ニュータウンには四葉クローバ     深瀬   (雑)
35  花の座  年輪を重ねて老いの花が咲き       豊    (花)
36  挙句       春の訪ないあと幾たびか       志方   (花)

  注。作成プロセス (付合のコメント) は、下記URL 参照。
    http://nanaku-haiku.blogspot.com/2020/04/