2021年12月10日金曜日

七句会 第7 回 自由連句の結果です。

  七句会 第7 回 自由連句のみなさま


 10月はじめからスタートした今回の歌仙も無事、満尾することができました。

感想、等を後ろにつけました。よろしくお願いします。



 初折表

01 発句  夏   紫陽花の青滴りて虹の玉                (小野寺) 

02 脇   夏    天道虫 (てんとう虫) はいま飛び立てり (吉良) 

03 第三  雑  コロナ禍の収まり活気飲み屋街          (深瀬) 

04 四句目 雑    お久ぶりね酒盃しみいる             (志方) 

05 月の座  秋  ススキ野や月にいるうさぎはいずこ      (豊) 

06 折端    秋    鰯雲越え火星目指すや                (小野寺) 


 初折裏

07 折立    秋  徒然に孫の手ひきて茸狩り              (吉良) 

08 二句目  雑    乳白色の美肌にとろける              (新井) 

09 三句目  雑  のど越しに讃岐うどんがつるりんと      (志方) 

10 四句目  雑    天国地獄人の世の旅                  (深瀬) 

11 五句目  雑  腰すえて流れのままに棹差さん          (小野寺) 

12 六句目  雑    無限軌道の円の道かな                (豊) 

13 月の座  冬  満月のアタック一打星散らし            (新井) 

14 八句目  冬    冬眠覚めて熊は戸惑う              (吉良) 

15 九句目  雑  去年とは一変したる穴の外             (豊) 

16 十句目  雑    紅葉彩 (いろどり) 日々深まりて    (志方) 

17 花の座  春  花のした孫や曾孫の家族行く       (深瀬) 

18 折端    春    桃の節句を宇宙で言祝ぐ (ことほぐ)   (小野寺) 


 名残表

19 折立    春  お花見のパンダ愛でる子歌う夢          (新井) 

20 二句目  雑    科学のひかり深まる闇間              (深瀬) 

21 三句目  雑  朝陽射す人の心に夢を呼び             (小野寺) 

22 四句目  雑    明るきところ影ありと知る            (豊) 

23 五句目  夏  向日葵の枯れた小道に願う人            (新井) 

24 六句目  夏     フラメンコ舞いほとばしる汗          (吉良) 

25 七句目  雑   シャガールの絵筆のそばで愛語らん      (新井) 

26 八句目  雑     地蔵微笑む夕陽を浴びて             (志方) 

27 九句目  雑   烏飛ぶ山郷近し旅の宿                 (吉良) 

28 十句目  雑     夜明けの空は風煌 (きら) めきて      (小野寺) 

29 月の座  秋   残照のすすきの河原風渡る            (志方) 

30 折端    秋     山々澄みて魁夷を偲ぶ              (深瀬) 


  名残裏

31 折立    秋   谷川に紅葉敷き詰め陽は落ちぬ        (小野寺) 

32 二句目  雑     赤ちゃんに万札を握らせ            (豊) 

33 三句目  雑   老いてなお「学び続けよ」天の声       (吉良) 

34 四句目  春     ドローン操り鶯の友                  (新井) 

35 花の座  春   菜の花の油で料理いろいろと            (豊) 

36 挙句    春     何はなくとも筍御飯              (志方) 



 36の付け筋 (志方さん) 

  幼き頃から、混ぜご飯が大好きで、よくお代りをしておりました。地表にわ

ずかにか顔出す春先の筍の穂先の生命力が感じられる料理です。


 35の付け筋 (豊さん) 

  春と言えば菜の花。ドローンが菜の花畑の上を飛んでいます。たくさんの菜

の花から取った菜種油で、今夜はどんな料理を作りましょうか。


 34の付け筋 (新井さん) 

  人生の後半の学びは、今の時代はIT。デジタル機器をマスターし、ドローン

を日常的に操れる日が来るかもしれません。そして、鶯を追いかけて、仲間と

思ってもらえたら楽しいことでしょう…。


 33の付け筋 (吉良さん) 

  1 万円札といえば肖像福沢諭吉「学問のすすめ」。団塊の世代は揺り籠から

墓場まで競争の時代を生き抜く運命ですね。


 32の付け筋 (豊さん) 

  秋の自然の句が続いたので、人間に転換しました。赤ちゃんの手は紅葉にた

とえられます。その手に一万円札を握らせて、将来お金を稼げる人間になって

ほしいと願う親です。


 31の付け筋 (小野寺さん) 

  東山魁夷の作品からは静謐な画風が感じられます。秋深い谷川の清流の底に

鮮やかな紅葉が沈む速い流れは、おりしも秋の落日の輝きと相まって不思議な

静謐を醸し出しておりました。


 30の付け筋 (深瀬) 

  「残照」というと東山魁夷の絵画が想いだされます。「風渡る」から地球温

暖化のことでも詠もうかと思ったのですが、前にシャガールが出ているので、

日本画家を出してみました。

  http://higashiyama-kaii.or.jp/残照.html 


 29の付け筋 (志方さん) 

  多摩川の土手に咲き乱れるすすきの穂が風に揺られている情景を詠んでみま

した。


 28の付け筋 (小野寺さん) 

  吉良さんの旅の宿を受けて、懐かしい旅の宿で熟睡した翌日、清々しい夜明

けの朝、風が光り輝いて流れてゆくのを感じた事でした。


 27の付け筋 (吉良さん) 

  夕日のお地蔵様には日本の原風景の烏が欠かせません。疲れた旅人が烏の住

む山郷の宿を目指している風景を描きました。


 26の付け筋 (志方さん) 

  シャガールの絵画も何か優しさを空想させる作品が多いと記憶しております

。小学生時代、故郷の分かれ道に、一対のお地蔵さんが祭られており、遊び疲

れての帰り道夕陽が挿し込んで、慈しみ深い眼差しが思い出されます。


 25の付け筋 (新井さん) 

  娘を見かけたシャガールが、熱心に誘って自分の絵のモデルにします。恋を

夢見る娘には本望。幻想的な絵に描いてもらえるものの、シャガールの相手で

は複雑さが残ります。


 24の付け筋 (吉良さん) 

  向日葵の枯れた暑さの残る夕方、裏路地では恋を願う村娘が一心不乱にフラ

メンコを踊っています。


 23の付け筋 (新井さん) 

  明るい方向を向いてどんどん伸びる向日葵…。近所の小学校の小道に, 降り

注ぐ太陽を浴びる向日葵を見た夏。秋に通りがかると、学校は選挙会場となり

、小道にちょっとイライラした感じで並ぶ人々を見かけました。夏の明るさと

は対照的で、今の落ち着かない世相を見た気がします…。 (夏から秋を語る) 


 22の付け筋 (豊さん) 

  光には闇、明には暗、善には悪、物事には必ず表と裏の二面性があります。

人の心も同じでしょう。夢に燃えて充実するときもあれば、夢破れて絶望する

ときもある。人生の浮き沈み、一喜一憂せずにのんびり行くのがいいのです。


 21の付け筋 (小野寺さん) 

  科学技術の進歩で、人類は不可能を可能にしてきました。しかしどんなに科

学技術や医学が進歩しても人の生き死には如何となりません。コロナに始まる

世界規模での暗い世相の中人の心に希望の虹を創りだすのは一筋の陽の光かも

しれません。

 昨今の世界の鉄鋼需給は混沌の最中にありロシアやインドの安定で久々に落

ち着くかと見えた市況が突然の中国ミルの投げ売りで大混乱に陥っておりこの

数日徹夜に近い経験をしました。酔眼朦朧として、投句してはいけませんね。

笑  世界規模でミルは空前の利益をあげてますがトレーダーは散々です。

  それでもこの緊張が絵を描くエネルギーになるかもと勝手に独り慰めてます

。ご指摘に感謝です。シャキッとしました。


 20の付け筋 (深瀬) 

  ゲノム編集によってパンダの人工繁殖や小型化が実現し、ペットとして広く

普及するというのは、なにかブラックユーモアだと思います。効果的な新薬が

開発されても高額すぎて使用できる人が限られるとか、どうなるのでしょう。

 

 19の付け筋 (新井さん) 

  状況の変化は動物たちにも及び…、今より色々な動物たちが身近になり、パ

ンダの繁殖も成功、身近に見られるようになるでしょう。上野公園に子供たち

とお花見に行き、パンダのそばで子供たちが未来を夢見て歌う…、そんなにぎ

やかな未来を描きました。


 18の付け筋 (小野寺さん) 

  昨今の状況変化は激しさは増しております。直ぐに孫達ぐらいでは、無理で

しょうが曽孫ぐらいの時代には自由に宇宙を行き来する時代が来るかもしれま

せんね。


 17の付け筋 (深瀬) 

  今後の世界の激変を危惧しますが、孫や曾孫の家族が花見をたのしんでいる

であろうことを願っています。100 歳くらいまで元気で生きていれば一緒に過

ごせるのでしょうか。


 16の付け筋 (志方さん) 

  このところの、コロナウィルスの減少ぶり、自然の調和力が人知をこえてあ

るのかもしれません。そんな中で、今年の秋の紅葉は淡々と深まる様はやはり

自然の流れのようです。年々歳々花相似たりの句が思い浮かべた次第です。


 15の付け筋 (豊さん) 

  外に出てみたら、周囲の様子が冬眠前の世界とはすっかり変わっていたので

す。核戦争で人類が滅亡してしまったのか、大規模な気候変動で自然が壊れて

しまったのか。S F的発想です。


 14の付け筋 (吉良さん) 

  月のアタックで散った星が地表に落ちて冬眠中の熊を目覚めさせたようです。


 13の付け筋 (新井さん) 

  満月をバレーボールのように思い切りアタック、破片で辺りの星を散らすこ

とで、世界が変わり、劇的に現状を変えたらどうだろうな…と思います。


 12の付け筋 (豊さん) 

  川の流れにはいつかは終点がありますが、丸い円の道は同じところをぐるぐ

るまわり続けるだけで、終点も出口もありません。あえてひねった句にしてみ

ました。


 11の付け筋 (小野寺さん) 

  人生の変遷はまさに山あり谷ありです。水源に始まる川の流れもまた奔流を

経て海に注ぎますが、流れに逆らわずしてしかも、その流れを見極めながら舵

取りをして生きたいものです。


 10の付け筋 (深瀬) 

  うどんがつるんとのどを通ったあとのことなどを思いました。それを人に当

てはめると、人生には、多様な天国と地獄のときが、入れ代わり立ち代わり現

れるものではないでしょうか。


 09の付け筋 (志方さん) 

  讃岐うどんは何と言っても弾力性が命で、咽喉につるりと入る味わいが醍醐

味です。分葱と生姜をたっぷり添えて。さっと生醤油をかけて熱い麺をすする

。ああ峠の立ち食いうどん屋で食したときは、一杯50円でした(35年前)

ちなみにタクシー代は往復5千円でしたけど。。。。


 08の付け筋 (新井さん) 

  茸のクリームパスタを作りたくなりました。ホワイトソースをお鍋でかき混

ぜているうちに、乳白色になり、つやが出て、美味しそう…と見え、だんだん

と「美白つや出しクリーム」に見えてきました。最近、石田ゆり子が宣伝して

いる資生堂のつや出しクリームを思い浮かべました。(アラフィフの女性に人

気No.1なのです)美味しいクリームパスタを食べ、肌によく作用するといいだ

ろうな…、と楽しい連想が浮かびました。


 07の付け筋 (吉良さん) 

  コロナ禍も明け、久しぶりに故郷に帰ってきた息子家族と宇宙すごろくゲー

ムで月・火星旅行して遊び疲れ、やることもなくに裏山に茸狩りに出かけまし

た。 


 06の付け筋 (小野寺さん) 

  月に人類が降りたって半世紀。うさぎ伝説を超え今やアメリカの火星探査機

パーサビアランスは地球の隣の惑星に降り立ち、荒涼とした赤い風景に驚きま

した。茜の鰯雲の先に人類の夢は広がります。


 05の付け筋 (豊さん) 

  ススキ野原で満月を見上げながら月見酒をしています。月にはうさぎがいる

という伝説がありましたが、宇宙時代の今日、あの伝説はどうなってしまった

のでしょうか。


 04の付け筋 (志方さん) 

  赤提灯が何故か生き生きと輝き、暖簾がおいでとおいでと手招きするので。

。。。 抗しがたい誘いです。


 03の付け筋 (深瀬) 

  コロナ禍が急速に収まりつつあります。飲み屋さんの前を通ると店員にかな

り気合が入っているのを感じます。飛び立つものが違いますが。


 02の付け筋 (吉良さん) 

  雨に葉陰で息ひそめていた天道虫が、紫陽花に光をそそぐ太陽に向かって一

斉に飛翔している様子を読みました。


 深瀬 (事務方) 



・補足 適宜、下記を参照いただければ幸いです。

 七句会第7 回自由連句の要領

  http://nanaku-haiku.blogspot.com/2021/10/7.html 



  追記  いただいた感想、等。


・豊さん


  志方さんの見事な挙句でうまく収まりましたね。私自身もそうですが、回を

重ねるにつれて皆さん慣れてきたようで、面白くなってきました。

 次回も楽しみです。


・平島さん


  満尾おめでとうございます。また勝手に好きなことを言わせてもらいます。

  深瀬さん:世相や身近な題材も入れられて目が広く行き渡って流石です。

  志方さん:呑兵衛、食いしん坊の面目躍如。

  吉良さん:退院されて自然現象や人事に細やかな観察特に最後の学び続ける

はゴヤの晩年の有名なスケッチ「俺はまだ学ぶぞ!」を彷彿させる良い句だと

思います。

  豊さん :やはり練達の読み手ですね。大胆な転じ方、軽いいなし方など慣

れておられるなあ。

  新井さん:唯一紅一点でやはり女らしさが現れて全体に華やぎを醸し出され

ています。

  小野寺さん:句に天象が多く例えば 虹 鰯雲 火星 空 風  夜明け な

どやはり発想の貧困と言われても仕方ないでしょうね。もうひとつ19句で新

井さんが歌う夢に対して21句で夢を呼び とあるのは観音開きに当たり避けら

れた方が良いとされいます。これも天象に関わりますが陽の字が頻繁に出てき

ます。現役で仕事をされたおられ多忙ではあると思いますが人の句にも気を配

られて同字重用はなるべく避けられるのが良いと思います。身内の後輩だから

か言いたいことを言わせてもらいました。済みません。

  でも皆さんがこうやって楽しく作品を作り上げておられるのはきっと良い思

い出になると思います。小野寺さんは母上が百歳の誕生日を迎えられた年の興

行ということで忘れられない記念の連句だと思います。これからも皆さん和気

あいあいに続けられんことを祈っています。深瀬さんの纏め上手がある限りま

だ当分は楽しめることでしょう。

  何時も年寄りの言いたい放題で申し訳ありません。今後ともよろしくお願い

します。


・深瀬


  平島さん

  平島さんならではの踏み込んだコメント、たいへんありがとうございます。

  連句には、句会とは異なり、詠み手同志のつながりのようなものがあり、そ

の辺を平島さんのコメントからよりはっきり感ずることができました。

  個人的には、詠む順番とか、展開のダイナミズムとか、さらに工夫が必要か

なと感じたりもしています。

  少しずつでもたのしさが増していくように、これからもよろしくご指導のほ

どお願いします。


・小野寺さん


 平島さん

 第七回自由連句

 句に天象が多すぎる、とのご指摘全く気付かずに、意識せずに発句していた

事反省です。発想の貧困その通りです!もう少し大胆に世相や身近な題材も入

れて、流れを変えていける様にしてみます。これは絵画の創作にも同じで発想

の転換、大胆な試みに常に挑戦できる様に気配りができるようにしてゆきます。

  コロナの為に二年半ぶりで会いにいきました100 歳になった母が、新しい画

材に対して、まだまだ好奇心をつねらせている事に感心してきました。常日頃

から新しい事に挑戦できる感性や意識を培って行きたいと思います。

  二年間延期してきた来年の二月から始まる絵画の個展に向けて一層の精進を

したいと思います。

  目から鱗のご指摘に感謝です。



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2021年11月4日木曜日

七句会 第三十七回目のネット句会 感想、自句自解をご報告します。

  七句会のみなさま


 第三十七回の選句結果を踏まえて、感想や自句自解、等をおよせいただき、

たいへんありがとうございました。

 およせいただいたものを、作品集とともに、名前順に、ほぼそのまままとめ

てお届けします。

 今後のやり方に、ご意見、等ありましたら、よろしくお願いします。

 七句会のweb  http://nanaku-haiku.blogspot.jp/ にも掲載してあります。

  今後とも、よろしくお願いいたします。

  深瀬 (事務方) 



1.第37回  ネット句会  作品集


(01)秋元さん

・焼き茄子と香り味噌にて夕餉かな


(02)新井さん

・ふくらはぎ秋の灯に沿いもみほぐす

・秋の灯に百人一首めくるめく

・刈田から手招く笑顔ひいじいちゃん

・寂し気に刈田にたたずむペルシャ猫

・草の陰白いラッパの秋奏で

・三十歳自由へ飛び立つシンデレラ

・摩天楼無垢な瞳に影映す

・摩天楼彷徨う二人を包み込み

・ウォーキング最も安価な減量法


(03)小野寺さん

・日だまりに肩で息つく秋の蝶

・引き波は砕けて光り鰯雲

・帯解きし祇園囃子の古都の宵

・蛍火は鼓動となりて闇に棲み

・雲一朶芒の原を翳らせて

・あだし野に一期の別れ曼珠沙華

・カナカナの声こだまして友は発ち

・水澄みて瀬音駆け抜くオニヤンマ

・冬銀河原野の町に沈みけり

・川底に陽の光りあり秋の影

・荒海に冬の銀河は傾きて

・時雨哭く朋逝きし夜の濁り酒

・シベリアの鉄路凍らせ冬銀河

・熟柿食ふ陽の匂ひして腹に沁み

・百舌鳥 (もず) 鳴きて墨の香りに筆を置き

・銀杏散り黒き梢に白き月

・鳥渡る故郷の祖父と別れし日

・朋惜しむ読経のしじま蝉時雨

・独り酒今生きてをり時雨降る

・黒髪の匂ひ羽織りて紅葉燃え

・新酒酌む深き匂いに父偲ぶ

・谷川を紅葉流れて朋は逝き


(04)吉良さん

 舌癌の手術治療を受けて:

・臥して見る天井奥に銀河濃し

・病室の窓泳ぎ行く鱗雲

・舌腫れて柘榴のごとく鎮座せり

・舌を病み知る美味しさぞ新豆腐

・とろろ汁食うもどかしさ痺れ舌


(05)桑子さん

・ISS一直線に宵の秋

・敬老会古希過ぎてなお若手かな

・池ポチャに100切りならぬ秋の夕

・物言えば3 倍返し秋の声

・名月や輝き放つ星二つ


(06)志方さん

・さわやかにピュアーピンクの百日紅

・茜舞う風穂の先の草千里

・彼岸花黄泉に誘う思い馳せ

・切り通し超えて山路に地蔵かな

・山霧が流れ林に郭公が

・久方の暖簾をくぐり喉癒す

・懐かしき赤提灯はお馴染みさん


(07)治部さん

・老いらくや今更のジム秋の風

・ティーショット道具に頼る秋の空

・二学期がリモートとなる孫の鬱

・月明かり隣家と柿の今は無く

・一打差でコンペを制し山も澄む


(08)中津川さん

・紅白や敬老餅と彼岸花

・痛いほどきっと味良し栗拾い

・信濃路やそよぎ光りてそばの花

・稲穂垂れ思い出多し蝗取り

・赤蜻蛉半袖シャツを追い出せり

・色溢れ果物の秋道の駅

・高過ぎる買う気の起きぬ痩せさんま


(09)橋本さん

・風に乗り遙かな法師蝉時雨

・かなかなの一鳴き響き森暮れる

・古希過ぎて初孫を抱く赤とんぼ

・孫二人大の字揃へて眠る秋

・夜風入れ虫の音を聞く良夜かな


(10)服部さん

・お隣も旦那がゴミ出し秋の朝

・お釈迦様秋の日差しに目を細め

・懐かしや火薬の匂い運動会

・秋麗店主の居眠り骨董市

・秋涼し今宵の酒はチンをして


(11)宮澤さん

・プロ野球残り試合で秋を知る

・半身づつサンマ高値で睦まじく

・風の音谷に集いて秋深し

・千鳥足舗道の銀杏 (ぎんなん) 踏まぬよう

  (本句は、公序良俗に反するようでしたら割愛願います。) 

・秋風に胸の谷間も店 (見せ) 仕舞い


(12)柳町さん

・香りたつ菊の白さに母想う

・我が庵は終の棲家や紅紅葉

  

(13)豊さん

・旅寝かな中天の月枕とし

・時刻む柱時計や秋深し

・野分後の澄みたる空の青さかな

・熟柿枝より落ちる五秒前

・人も樹もいま黄落の時の中


(14)深瀬

・狂騒の東京音頭に阿鼻の陰

・盆踊り漁火遠く伊豆の浜

・盆踊りセザンヌの構図行き来して

・じゃがいもの地中つらなる小惑星

・エルドラドじゃがいもの皮アンデス史

・秋の夜ゆぶねでしばし目をつむり

・秋の陽に疲れを知らぬ孫の声

・コロナ禍の人生の秋これもあり

・深む老い肩に背負いて秋の暮れ

・日比谷にて議事堂噴水秋の風

・秋日差し永久 (とわ) に地にあれ祈るかな

・秋深夜トイレに起きてポップコーン

・図書室の学生まばら秋の朝

・曼珠沙華さんぽの道にみつけおり

・いつのまに手すりに頼る老いの秋

・ふるさとへ刈田のつづく鉄路行く

・原発の廃墟に並ぶ刈田かな

・一年の仕事終わりし刈田かな

・秋灯下祖父の形見の拡大鏡

・秋灯の団地の窓に老いの影



2.第37回  ネット句会  自句自解


◎  新井さんの自句自解


  自句自解

・ふくらはぎ秋の灯に沿いもみほぐす

 秋の夜、夏の気配の残る昼間を過ごし、寝る前に明かりでふくらはぎを照ら

し、丹念にもみほぐします。1日の疲れをとるために…。


・秋の灯に百人一首めくるめく

 秋の夜長に延々と百人一首を一枚一枚めくり、唱えて過ごします。お正月の

親戚の集まりで百人一首をしても勝てるでしょう。


・刈田から手招く笑顔ひいじいちゃん

 幼い頃、田舎で曽祖父に「こっちに来てごらん。」と笑顔で呼ばれ、いった

い何があるのだろうかと分からなくなったことがあります。


・寂し気に刈田にたたずむペルシャ猫

 収穫の終わった田んぼにペルシャ猫…変わった組み合わせの光景であったの

で、印象に残っています。


・草の陰白いラッパの秋奏で

 公園の雑草の陰に一凛の白いユリが咲いていました。秋の訪れをを告げるラ

ッパのようでした。


・三十歳自由へ飛び立つシンデレラ

 眞子さまへの応援メッセージです。


・摩天楼無垢な瞳に影映す

 眞子さまのような皇室しかご存じない方は、アメリカ社会での生活にも戸惑

われるかもしれません。


・摩天楼彷徨う二人を包み込み

 色々あったお二人、ニューヨークのパワーの元力強く生きていってほしいで

す。


・ウォーキング最も安価な減量法

 コロナ禍でウォーキングを始めましたが、実感しています。


 感想 (やや深瀬への私信的ですが。深瀬) 

 選句結果、楽しく拝読しました。今回、私は深瀬さんのご作品3点位選んだ

かと思います。感想をお伝えしたくなりました。

 どの作品も、一人の人が詠んだとは思えないくらいに違う雰囲気が流れてお

られます。一つの句ごとに、表したい雰囲気がよく出ておられると思います。

 図書館の静けさや、コロナ禍を達観したようなお気持ちや、十分よく表れて

いると感じました。



◎  小野寺さんの自句自解


(001) 雲一朶芒の原を翳らせて

 桑子さんの感想の通りです。一面の芒の原を翳らせながら一塊の雲が走り流

れてゆく光景です。雲一朶は司馬遼太郎の日露戦争をテーマにした坂の上の雲

の冒頭の文から拝借しました。


(012) 帯解きし祇園囃子の古都の宵

 若い頃の遠い記憶のなかで祇園囃子と太鼓の音が衣摺れの音と共に古都の宵

宮を思い起こします。


(023) 川底に陽の光りあり秋の影

 平島さんの講評そのものです。秋の光と影を川底に見咎めた観察眼。澄んだ

空気、清流に映り消える秋の気配が美しい。と感じたのです。


(025)   引き波は砕けて光り鰯雲

 治部さんと橋本さんの講評の通りです。砕けた引き波の波濤の光の煌めきの

先遥かに鰯雲が流れて、穏やかな秋の気配を感じた事でした。


(031) 銀杏散り黒き梢に白き月

 平島さんの感想の通りです。葉を落として高く聳える銀杏の木々その黒い梢

の先を白い月の光が照らし黒と白い光が一幅の墨絵の様でもありました。


(033) 新酒酌む深き匂いに父偲ぶ

 新酒を開けた時の甘い香りに酒を愛した父を偲び、もっと一緒に飲む機会を

作れば良かったとおもう自責の念を込めて、深い匂いとしたものです。


(040) 熟柿食ふ陽の匂火して腹に沁み

  熟れた柿のしみじみとした美味さは陽をたっぷりと浴びて育まれたものに違

いないのです。橋本さんの感想に脱帽です。


(047) 独り酒今生きてをり時雨降る

 平島さん吉良さんの感想そのものです。人生今まで生きてきていろんな事が

あったけど秋の夜雨の音を聴きながら、独りで酒をしみじみと愉しむ、今生き

ている幸せをかみしめます。


(059) 鳥渡る故郷の祖父と別れし日

 渡り鳥が南に帰る秋の深まった日に遠い故郷の駅頭で手を振ってくれた祖父

の手を思い出します。それが今生の別れとなり、渡り鳥の季節になると小さく

なっていった祖父の姿を思いだします。

  

(065) シベリアの鉄路凍らせ冬銀河

 志方さん豊さんの講評の通りです。シカゴ駐在時代ロシアからの鋼材出荷の

立ち会いに海が凍るとシベリアの鉄道を使いました。極寒の凍てつく鉄路の大

地に冬の銀河が傾き圧倒的な光景でした。


(069) あだし野に一期の別れ曼珠沙華

 平島さんの講評の通りです。人は誰でもいつかは死ぬことは知ってます。し

かしまさかの親友の死に立ち会い、彼岸花が一面に咲くという向こう側の世に

いってしまうとは、なんという事だろう、嗚呼


(075) 日だまりに肩で息つく秋の蝶

 秋の穏やかな日だまりの中夏の暑さを生き抜いてきた羽に破れめのあるタテ

ハ蝶が、ひっそりと羽根を開く様子はまるで肩でかろうじて息継ぎをしている

、と見えたのです。


(083) 百舌鳥( もず) 鳴きて墨の香りに筆を置き

 初冬の夜更け手紙を書く為に墨を摺ると鋭く百舌鳥の声がして、ふと墨の香

りに筆を取るのを忘れてました。



◎ 吉良さんの感想、自句自解

 今回の病気に際して、七句会の皆から励ましのお言葉をいただき有難うござ

いました。希少な舌ガンは意外でした。普段舌の機能など全く意識しなかので

すが、いざ障害をうけるとその絶妙な機能に驚くばかりです。手術後3 週間目

ぐらいから少しづつなんとか痛みも和らぎ食べられるようになり、話も出来る

ようになりました。今回は貴重な体験を5句にしたためた次第です。



◎ 中津川さんの感想、自句自解


 感想

 4点句が5句、3点句が8句、2点句が15句合計28句でした。いつもよ

り分散してているような気がします。それだけ皆さんの作句の広がり、選句へ

の見方、思いが多様化しているのでしょうか?これからも楽しみです。


 自句自解: 

・信濃路やそよぎ光りてそばの花

 4人の方に選んでいただいた句。塩尻近くの「そば切り発祥の里」というお

店の周りが一面そばの花が咲いていてそれが秋風に揺れてそばの味も一段とお

いしく感じられられました。白い花が光っているように感じました。



◎ 豊さんの自句自解


・時刻む柱時計や秋深し 

 いま読み返してみると、われながら何を言いたかったのかわかりません。柱

時計の「ボン」となった音で秋の深さを感じたということなのですが、凡句で

したね。


・旅寝かな中天の月枕とし

 橋本さんのご指摘の通り、「中天の月を枕に旅寝かな」としたほうがよかっ

たと思います。


・熟柿枝より落ちる五秒前 

 「五秒前」という表現をどのように理解してもらえるか不安だったのですが

、中津川さん、ありがとうございました。


・人も樹もいま黄落の時の中 

 吉良さんが疑問に思ったように、「時の中」はわかりにくい表現でした。「

時にあり」とでもしたほうがよかったかもしれません。


・野分後の澄みたる空の青さかな 

 まさにそのままの句です。当たり前すぎてどうかな、と思ったのですが。


 以上、今回の私の作品は凡作で終わったと反省しています。次回はもう少し

いい句を。



◎  深瀬の自句自解


・狂騒の東京音頭に阿鼻の陰

  たくさんの戦死者をだしていた日中戦争や太平洋戦争のさなか、東京音頭に

躍る熱狂があったというのは、なにか怖い感じがします。


・盆踊り漁火遠く伊豆の浜

  浜辺からみた遠近感を表現してみたかったのですが。音のことはあまり意識

しませんでしたが、今後、注意してみたいと思います。


・盆踊りセザンヌの構図行き来して

  セザンヌには沐浴の人体の図がいろいろありますが、盆踊りの人々の体の動

きもユニークだと感じます。


・じゃがいもの地中つらなる小惑星

  「地中つらなる」がよかったのかと。共感をいただきありがとうございまし

た。


・エルドラドじゃがいもの皮アンデス史

  スペイン人の黄金郷を目指したたくましさというのか、すごいと思います。


・秋の夜ゆぶねでしばし目をつむり

  涼しくなってお風呂で目をつむっているとなにか落ち着きます。


・秋の陽に疲れを知らぬ孫の声

  同じマンションに住む孫の声がときどき聞こえます。生命力の違いを実感し

ます。


・コロナ禍の人生の秋これもあり

  コロナ禍の自粛生活がこんなに続くとは思いませんでした。団塊の世代の戦

争体験みたいにも感じます。


・深む老い肩に背負いて秋の暮れ

  70歳をすぎ、疲労感とか眠気とかに襲われる時間が多くなりました。


・日比谷にて議事堂噴水秋の風

  自宅に一日いるのは鬱陶しいので、日比谷図書館にときどき行っています。


・秋日差し永久 (とわ) に地にあれ祈るかな

  秋の日差しの温かさに生命の源泉を感じたりします。環境破壊が心配です。


・秋深夜トイレに起きてポップコーン

  夜中、口淋しさでなにか口に入れたくなります。ポップコーンなら太らない

かなどと思うのですが。


・図書室の学生まばら秋の朝

  卒業した大学の図書館を利用できます。コロナ禍のためか朝はかなりすいて

います。


・曼珠沙華さんぽの道にみつけおり

  いつも歩いている歩道の脇に白い曼珠沙華が咲いているのに驚きました。


・いつのまに手すりに頼る老いの秋

  この前まで自宅のなかの階段の手摺りなんかは目に入らなかったのですが。


・ふるさとへ刈田のつづく鉄路行く

  両親の郷里の秋田には奥羽本線で行っていました。そのときの景色です。


・原発の廃墟に並ぶ刈田かな

  土の入れ替えとかたいへんだったようですが、なにか複雑な心境です。


・一年の仕事終わりし刈田かな

  米の収穫の終わった田んぼは、擬人法的にはやれやれというところだと思い

ます。


・秋灯下祖父の形見の拡大鏡

  まさか父の引き出しに入っていた祖父の拡大鏡が役に立つとは。


・秋灯の団地の窓に老いの影

 団地全体の高齢化が進むというのは、なにか人間の営みの不自然さを感じま

す。



2021年10月19日火曜日

七句会 第三十七回目のネット句会 選句結果をご報告します。

 

 七句会のみなさま

 

 第三十七回の七句会にご参加いただきたいへんありがとうございました。

今回の選句結果をご報告いたします。

 

 4 点句

(001) 雲一朶芒の原を翳らせて            小野寺05

(018) じゃがいもの地中つらなる小惑星        深瀬  04

(050) 病室の窓泳ぎ行く鱗雲             吉良 02

(061) 信濃路やそよぎ光りてそばの花         中津川01

(095) 月明かり隣家と柿の今は無く          治部 04

 

 3 点句

(011) いつのまに手すりに頼る老いの秋        深瀬  15

(012) 帯解きし祇園囃子の古都の宵          小野寺03

(013) 焼き茄子と香り味噌にて夕餉かな        秋元  01

(023) 川底に陽の光りあり秋の影           小野寺10

(031) 銀杏散り黒き梢に白き月            小野寺16

(051) 舌腫れて柘榴のごとく鎮座せり         吉良 03

(069) あだし野に一期の別れ曼珠沙華         小野寺06

(075) 日だまりに肩で息つく秋の蝶          小野寺01

 

 2 点句

(003) 図書室の学生まばら秋の朝           深瀬  13

(014) 香りたつ菊の白さに母想う           柳町 01

(024) 彼岸花黄泉に誘う思い馳せ           志方  03

(025) 引き波は砕けて光り鰯雲            小野寺02

(032) コロナ禍の人生の秋これもあり         深瀬  08

(040) 熟柿食ふ陽の匂ひして腹に沁み         小野寺14

(041) 古希過ぎて初孫を抱く赤とんぼ         橋本  03

(044) 盆踊り漁火遠く伊豆の浜            深瀬  02

(047) 独り酒今生きてをり時雨降る          小野寺19

(062) 熟柿枝より落ちる五秒前            豊  04

(065) シベリアの鉄路凍らせ冬銀河          小野寺13

(066) 茜舞う風穂の先の草千里            志方  02

(086) ふるさとへ刈田のつづく鉄路行く        深瀬  16

(088) 秋風に胸の谷間も店 (見せ) 仕舞い       宮澤  05

(090) 野分後の澄みたる空の青さかな         豊  03

 

 

  下記に、選句表に、各句の右側に作者名、および、その下に選んだ人の名前

とコメント (追番付き、順不同、敬称略。) を付したものを添付します。

  次回については、今年12月~来年1 月ころにご連絡したいと思っていますの

で、よろしくお願いいたします。やり方、等について、ご意見がありましたら

、ご連絡をいただきたく、よろしくお願いいたします。

 事務方から、以下、ご連絡、ご依頼です。

 

(1) 選句参加者

 今回の選句には、下記の15名が参加しました。

  秋元さん、新井さん、小野寺さん、吉良さん、桑子さん、志方さん、治部さ

ん、中津川さん、橋本さん、服部さん、平島さん、宮澤さん、柳町さん、豊さ

ん、深瀬。

 

(2) 今回の句会の結果を踏まえた自句自解、感想、等の募集について

  今回の句会の選句結果を踏まえて、各自、表明しておきたいこともあるので

はないかと思いますので、自句自解、感想、等、なんでも結構ですので、募り

たいと思います。一応、期限としては  11 2日とし、事務方にメールでいた

だき、それを七句会の下記のweb に掲載することにしたいと思います。

 http://nanaku-haiku.blogspot.jp/

 

  2021.10.19

      代表   橋口侯之介

      顧問  豊  宣光

      事務方 深瀬久敬

 

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(001) 雲一朶芒の原を翳らせて            小野寺05

      1 秋元   

     2 桑子    一面の芒原が翳っていく光景が目に浮かびます。

   3 橋本    雲の一塊が、芒の原の一部を日影していく旨い

       表現です)

   4 宮澤    昔、箱根仙石原で急に雲が出て辺りが暗くなっ

       た光景の記憶が蘇りました。

(002) 秋の灯に百人一首めくるめく          新井  02

(003) 図書室の学生まばら秋の朝           深瀬  13

   1 新井    秋の静かな朝、この時期の図書室の静けさをう

       まく表しておられます。

   2       対面授業がなくて、登校する学生が少ない。そ

       んな大学の風景でしょうか。「図書室の」よりも

       「図書室に」としたほうがよかったと思います。 

(004) 寂し気に刈田にたたずむペルシャ猫       新井  04

   1 志方    まさに静止画の情景。

(005) 高過ぎる買う気の起きぬ痩せさんま       中津川01

(006) カナカナの声こだまして友は発ち        小野寺07

(007) 切り通し超えて山路に地蔵かな         志方  04

   1 小野寺  切り通しのある鎌倉辺りの風景でしょうか。地

       蔵に出くわした邂逅の素直な驚きを  感じます。

(008) 孫二人大の字揃へて眠る秋           橋本  04

(009) 二学期がリモートとなる孫の鬱         治部 03

(010) 敬老会古希過ぎてなお若手かな         桑子  02

(011) いつのまに手すりに頼る老いの秋        深瀬  15

   1 秋元   

   2 宮澤    特に駅の下り階段は、人通りも多く手すりを頼

       りにするようになり、秋の心細さの中で共感しま

       す。

   3       老いは知らないうちに迫ってきます。手すりを

       頼りにするようになって、はっと自分の老いに気

       づかされたのです。

(012) 帯解きし祇園囃子の古都の宵          小野寺03

   1 桑子    昔の映画のワンシーンを見ているみたいです。

   2 服部

   3 柳町    つやっぽくていいですね!!でも、私には冬の

       京都の方が好きですが?

(013) 焼き茄子と香り味噌にて夕餉かな        秋元  01

   1 小野寺  焼き茄子に香り味噌、晩酌には辛口の酒も良い

       ですね。平凡な団欒こそが幸せなのです。

   2 中津川  私は米茄子の田楽が大好物です

   3 深瀬    色と香りに彩られた夕食の雰囲気が静物画のよ

       うに伝わってきます。

(014) 香りたつ菊の白さに母想う           柳町 01

   1 小野寺  白菊の様な色白の品のある母上だったのでしょ

       うね。亡き母への作者の深い哀切を感じます。

   2 服部

(015) 摩天楼彷徨う二人を包み込み          新井  08

(016) 黒髪の匂ひ羽織りて紅葉燃え          小野寺20

(017) 老いらくや今更のジム秋の風          治部 01

(018) じゃがいもの地中つらなる小惑星        深瀬  04

   1 吉良    ジャガイモの実を星と見立てるとは空想力があ

           りますね。

   2 治部    土の中に宇宙を見るとは思いもよらぬ発想。流

       石ですね。

   3 服部

   4 宮澤    小惑星は丸くないこと、いっぱいあることをイ

       トカワで知りました。

(019) かなかなの一鳴き響き森暮れる         橋本  02

   1 小野寺  ひぐらしの一鳴きに今まさに暮れようとする暗

       い森に静寂が訪れ、泣かまほしいような深い寂寥

       を誘います。一鳴きの選択が見事です。  

(020) 久方の暖簾をくぐり喉癒す           志方  06

(021) お隣も旦那がゴミ出し秋の朝          服部 01

(022) 秋灯下祖父の形見の拡大鏡           深瀬  19

(023) 川底に陽の光りあり秋の影           小野寺10

   1 秋元   

   2 治部    風も水も澄んでいる秋の様子。光と影の対比が

       いいですね。

   3 平島    秋の光と影を川底に見咎めた観察眼。澄んだ空

       気、清流に映り消える秋の気配が美しい。

(024) 彼岸花黄泉に誘う思い馳せ           志方  03

   1 服部

   2 柳町   

(025) 引き波は砕けて光り鰯雲            小野寺02

   1 治部    下の目線に光る波は上の目線の鰯雲と重なって

       穏やかな秋を感じます。波が砕ける前には同じ目

       線に鰯雲も見えていたかもしれません。季語がい

       いです。

   2 橋本    砕けた引き波の光具合と鰯雲の対比が良いです

       ね。

(026) 風の音谷に集いて秋深し            宮澤  03

(027) 池ポチャに100切りならぬ秋の夕       桑子  03

(028) 谷川を紅葉流れて朋は逝き           小野寺22

(029) 時刻む柱時計や秋深し             豊  02

(030) 痛いほどきっと味良し栗拾い          中津川01

   1 桑子    苦労して取ったものはうまくないはずは無いで

       すね。「きっと味よし」という表現がステキです。

(031) 銀杏散り黒き梢に白き月            小野寺16

   1 秋元   

   2 平島    高い木々は黒々と立ち、その一部を照らす月光。

       白と黒が鮮やかです。

   3 宮澤    勝手に嵐勘寿郎の鞍馬天狗の映画の場面を連想

       して気に入ってます。

(032) コロナ禍の人生の秋これもあり         深瀬  08

   1 新井    「コロナ禍」「人生の秋」と、どうとらえたら

           いいか戸惑うような状態を、うまくまとめておら

           れるので、読んだ後に心が落ち着きました。

   2 吉良    年をへて達観すると、なんでも素直に受け入れ

           られる余裕を「これもあり」に感じます。

(033) 新酒酌む深き匂いに父偲ぶ           小野寺21

   1 橋本    新酒の深き匂いとは (香りとは異なる?) 、酒

       を愛した父が懐かしく思い出されるのでしょうか。

(034) 草の陰白いラッパの秋奏で           新井  05

   1 深瀬    草の陰でひっそりと繰り広げられている情景の

       切り取りがすごい。

(035) 秋麗店主の居眠り骨董市            服部 04

   1       秋のうららかな一日、骨董市が開かれています。

       のんびりした日差しの下、つい店主は居眠りをし

       てしまいました。

(036) 蛍火は鼓動となりて闇に棲み          小野寺04

(037) ティーショット道具に頼る秋の空        治部 02

   1 柳町    この気持ちよーーーくわかります!!でも、私

       は大和魂でがんばってまーーす。

(038) 色溢れ果物の秋道の駅             中津川01

   1 治部    おいしそうな果物が並ぶ道の駅実りの秋を色で

       主張しています。語順どうかな? 我が家の近く

       にもあります。「道の駅瀧山」

(039) 盆踊りセザンヌの構図行き来して        深瀬  03

   1 新井    絵が好きですが、面白い見方です。

(040) 熟柿食ふ陽の匂ひして腹に沁み         小野寺14

   1 橋本    熟れた柿が実に旨い、陽ををたっぷり浴びたに

       違いない。

   2 深瀬    熟した柿の実を食べている雰囲気がストレート

       に伝わってきます。

(041) 古希過ぎて初孫を抱く赤とんぼ         橋本  03

   1 中津川 

   2 柳町   

(042) 千鳥足舗道の銀杏 (ぎんなん) 踏まぬよう    宮澤  04

   1 治部    八王子の甲州街道は今ぎんなんの真っ盛りです。

       クサイですよね解ります。この句は、ぎんなんを

       避ける姿が千鳥足なのか、酒に酔って千鳥足だか

       ら踏まぬように注意しているのかどちらでしょう

       か。選者は前者だと思いましたが。

(043) 荒海に冬の銀河は傾きて            小野寺11

   1 服部

(044) 盆踊り漁火遠く伊豆の浜            深瀬  02

   1 吉良    絵になる俳句ですね。

   2 平島    祭囃子を聴きながら沖を見やれば遠くにチラチ

       ラと揺れる漁火。イさりびとイずのイ音の重なり

       が心地好い。

(045) 紅白や敬老餅と彼岸花             中津川01

   1 治部    彼岸花と取り合わせてほしくはないのですが合

       いますよね。

(046) さわやかにピュアーピンクの百日紅       志方  01

(047) 独り酒今生きてをり時雨降る          小野寺19

   1 吉良    コロナ禍、明日はどうなるか分からない世の中

       でも、「今生きている」気持ちが伝わります。

   2 平島    人生今までに色んな事があったけどこうして時

       雨の音を聴きながらひとりでしみじみ酒を楽しめ

       ることの幸せ。

(048) 秋深夜トイレに起きてポップコーン       深瀬  12

   舌癌の手術治療を受けて:  (5 )

(049) 臥して見る天井奥に銀河濃し          吉良 01

   1 秋元   

(050) 病室の窓泳ぎ行く鱗雲             吉良 02

   1 新井    窓から遠くをながめておられるお心がよく表れ

           ているようです。

   2 桑子    ゆったりとした時間が流れていく様子が伝わっ

       てきます。

   3 平島    今は身動き出来ないベッドの上だが早く退院し

       てあの空を行く雲の様に自由に動き回りたいなあ。

   4 深瀬    病室のベッドから鰯雲を眺めている気持ちがよ

       く分かります。

(051) 舌腫れて柘榴のごとく鎮座せり         吉良 03

   1 治部    吉良さん大変でしたね。石榴ですか。すごいも

       のが入った感じなのですね。とても痛そうです。

       伝わります。

   2 中津川  さぞかし痛かったでしょう。無事手術が終わっ

       て良かったです。

   3       吉良様、舌の入院治療ご同情申し上げます。実

       は私もつい先日まで虫垂炎で10日間入院していた

       ので、入院生活の苦労はよくわかります。

(052) 舌を病み知る美味しさぞ新豆腐         吉良 04

   1 小野寺  舌癌の手術を乗り超えてようやく食べた新豆腐

       の味は己の生命( いのち) に対する深い感謝の思

       いでしょうか。新豆腐の美味さが、歓びとなる味

       わいが伝わります。

(053) とろろ汁食うもどかしさ痺れ舌         吉良 05

   1 橋本    とろろ汁を一気に飲み込むわけにも行かず、確

       かに難儀でしょう。

(054) 半身づつサンマ高値で睦まじく         宮澤  02

   1 桑子    ご夫婦の愛情が感じられます。

(055) 一年の仕事終わりし刈田かな          深瀬  18

(056) 風に乗り遙かな法師蝉時雨           橋本  01

(057) 旅寝かな中天の月枕とし            豊  01

   1 橋本    一人気ままな、一寸侘しい旅でしょうか、私的

       には「中天の月枕とし旅寝かな」の方が好みです

       が、、、)

(058) 原発の廃墟に並ぶ刈田かな           深瀬  17

   1 中津川  この10年あの事故は片時も忘れられないです。

(059) 鳥渡る故郷の祖父と別れし日          小野寺17

(060) 懐かしき赤提灯はお馴染みさん         志方  07

(061) 信濃路やそよぎ光りてそばの花         中津川01

   1 秋元   

   2 小野寺  白い蕎麦の話に吹く信州の風は光りながらなが

       れてゆく、作者の感性の光りを感じます、

   3 吉良    風に舞うそばの白い花が瞼に浮かびます。

   4 志方    信濃路に蕎麦の花、寅さん映画の一コマ。

(062) 熟柿枝より落ちる五秒前            豊  04

   1 中津川  五秒前という表現が落ちる寸前をうまく表して

       いると思います。

   2 服部

(063) 秋の夜ゆぶねでしばし目をつむり        深瀬  06

   1 新井    涼しくなった夜、お風呂に入った時の気持ちよ

           さがよく伝わってきます。

(064) 摩天楼無垢な瞳に影映す            新井  07

(065) シベリアの鉄路凍らせ冬銀河          小野寺13

   1 志方    壮大な原野の様の活写。

   2       シベリアという大地の上に広がる銀河。寒さで

       鉄路が凍っています。壮大なスケールの見事な句

       です。

(066) 茜舞う風穂の先の草千里            志方  02

   1 秋元   

   2 橋本    「風穂」は想像するしかないのですが、広大な

       草千里の秋の情景が浮んできます。

(067) 懐かしや火薬の匂い運動会           服部 03

   1 宮澤    車の排気ガス、落葉焚き、風呂の焚き木・・炭

       素系のにおいが懐かしくなりました。

(068) 日比谷にて議事堂噴水秋の風          深瀬  10

(069) あだし野に一期の別れ曼珠沙華         小野寺06

   1 中津川 

   2 平島    死はいずれは来るものとは知りながら親友があ

       っけなく別名は彼岸花の咲くというあの世へ行っ

       てしまうとは。嗚呼!

   3 柳町    京都化野念仏寺を詠んだのでしょうか?昨年も

       今年(11 月予定)も京都を訪問する私には、心地

       よい句です。

(070) 夜風入れ虫の音を聞く良夜かな         橋本  05

   1 深瀬    夜中、穏やかな風と虫の音に耳を傾ける様子に

       深く共感します。

(071) 水澄みて瀬音駆け抜くオニヤンマ        小野寺08

(072) 秋灯の団地の窓に老いの影           深瀬  20

(073) 名月や輝き放つ星二つ             桑子  05

(074) 人も樹もいま黄落の時の中           豊  05

   1 吉良    「時の中」は面白い表現ですが、黄色い落ち葉

       にうずもれている様子で良いのでしょうか。

(075) 日だまりに肩で息つく秋の蝶          小野寺01

   1 中津川 

   2 宮澤    肩で息ついて休んでいるのか。そういう目で見

       たことなかったので新鮮です。

   3       秋の蝶は春ほど元気がないように見えます。日

       だまりで一休み。「肩で息つく」という表現がい

       いですね。

(076) 曼珠沙華さんぽの道にみつけおり        深瀬  14

(077) 一打差でコンペを制し山も澄む         治部 05

(078) 秋涼し今宵の酒はチンをして          服部 05

(079) プロ野球残り試合で秋を知る          宮澤  01

   1 新井    全く同感です。

(080) エルドラドじゃがいもの皮アンデス史      深瀬  05

(081) 稲穂垂れ思い出多し蝗取り           中津川01

(082) 秋日差し永久 (とわ) に地にあれ祈るかな    深瀬  11

(083) 百舌鳥 (もず) 鳴きて墨の香りに筆を置き    小野寺15

   1 志方    墨の香りを懐かしく思い出させてくれます。

(084) 我が庵は 終の棲家や 紅紅葉                 柳町 02

(085) 刈田から手招く笑顔ひいじいちゃん       新井  03

   1 桑子    ほのぼのした光景が目に浮かびます。「ひいじ

       いちゃん」の表現がいいです。

(086) ふるさとへ刈田のつづく鉄路行く        深瀬  16

   1 吉良    稲穂が刈り取られ、今年も豊作の遠い故郷を思

       う気持ちが鉄路に込められています。

   2 志方    車窓から眺める秋がしみこむようです。

(087) 時雨哭く朋逝きし夜の濁り酒          小野寺12

    (本句は、公序良俗に反するようでしたら割愛願います。)

(088) 秋風に胸の谷間も店 (見せ) 仕舞い       宮澤  05

   1 新井    とても面白いです、思わず笑ってしまいました。

   2 桑子    こういうの好きです。薄着になっていく春の句

       が楽しみです。

(089) 狂騒の東京音頭に阿鼻の陰           深瀬  01

(090) 野分後の澄みたる空の青さかな         豊  03

   1 志方    台風一過。昔はそうだったけど。

   2 深瀬    台風の過ぎ去ったあとの空いっぱいの青空が眼

       に浮かびます。

(091) 秋の陽に疲れを知らぬ孫の声          深瀬  07

(092) 赤蜻蛉半袖シャツを追い出せり         中津川01

   1 柳町   

(093) 三十歳自由へ飛び立つシンデレラ        新井  06

(094) ISS一直線に宵の秋             桑子  01

(095) 月明かり隣家と柿の今は無く          治部 04

   1 小野寺  ふと月明かりに気づく隣家の宅地化世代が代わ

       り、世知辛くなる昨今の世相ですね。

   2 服部

   3 平島    昔も今も月は照らす世の有為転変を。自分の瞼

       には残っているのに今や何も無し。それにしても

       時の流れは早いなあ。

   4 深瀬    なにがあったのかはっきりとは分かりませんが、

       なにかむなしいというかさみしい気持ちがしみじ

       みと伝わってきます。

(096) ふくらはぎ秋の灯に沿いもみほぐす       新井  01

(097) お釈迦様秋の日差しに目を細め         服部 02

   1 志方    秋の夕暮れの柔らかさ上手く表現。

(098) 冬銀河原野の町に沈みけり           小野寺09

(099) 深む老い肩に背負いて秋の暮れ         深瀬  09

   1 柳町   

(100) ウォーキング最も安価な減量法         新井  09

(101) 山霧が流れ林に郭公が             志方  05

(102) 朋惜しむ読経のしじま蝉時雨          小野寺18

(103) 物言えば3倍返し秋の声            桑子  04

 

2021年10月4日月曜日

第7 回目の七句会自由連句 実施要領

  七句会自由連句のみなさま

  いつもたいへんお世話になり、ありがとうございます。

  事務方の怠慢でやや遅延してしまいましたが、第7 回目の七句会自由連句を

下記要領にて行いたいと思います。よろしくお願いします。


・参加者 新井さん、小野寺さん、吉良さん、志方さん、豊さん、深瀬(6名) 


・発句  紫陽花の青滴りて虹の玉  小野寺さん


  選句者および作者のコメント

- 雨上がりの状況でしょうか。水滴が光に虹色に輝き、花の青色とコントラス

トを見せている美しさを感じました。 (吉良さん) 

- 紫陽花、虹、とロマンティックで洋画の一場面のようです。 (新井さん) 

- 情景が見事に浮んできます、美しいです。 (橋本さん) 

- 雨上がりの紫陽花の花の水滴が光に当たり虹色に輝き紫陽花の青とのコント

ラストが見事でした。吉良さんの感想の通りです。 (小野寺さん) 


・座


    初折表六句

01 発句   夏    小野寺

02 脇    夏    吉良

03 第三   雑 無季 深瀬

04 四句目  雑 無季 志方

05 月の座  秋    豊

06 折端   秋    小野寺


 初折裏十二句

07 折立   秋    吉良

08 二句目  雑 無季 新井

09 三句目  雑 無季 志方

10 四句目  雑 無季 深瀬

11 五句目  雑 無季 小野寺

12 六句目  雑 無季 豊

13 月の座  冬    新井

14 八句目  冬    吉良

15 九句目  雑 無季 豊

16 十句目  雑 無季 志方

17 花の座  春    深瀬

18 折端   春    小野寺


 名残表十二句

19 折立   春    新井

20 二句目  雑 無季 深瀬

21 三句目  雑 無季 小野寺

22 四句目  雑 無季 豊

23 五句目  夏    新井

24 六句目  夏か雑  吉良

25 七句目  雑 無季 新井

26 八句目  雑 無季 志方

27 九句目  雑 無季 吉良

28 十句目  雑 無季 小野寺

29 月の座  秋    志方

30 折端   秋    深瀬


 名残裏六句

31 折立   秋    小野寺

32 二句目  雑 無季 豊

33 三句目  雑 無季 吉良

34 四句目  雑か春  新井

35 花の座  春    豊

36 挙句   春    志方


・式目  特に前回と変わりません。同じ語句の使用は避ける、付合において

場面の繰り返しや後戻りはしない、付合の背景の補足コメント (付け筋) を簡

単に付記する、といった程度です。

  若干追加しますが、月、花の座については遵守する、固有名詞の使用はバラ

ンスを考慮する、雅的な雰囲気は少し避ける、などです。恋の座は取りやめま

した。また、表六句が序、裏~名残表が破、名残裏が急、あるいは、表六句が

起、裏が承、名残表が転、名残裏が結といっためりはりを意識したいと思いま

す。


・順番ですが、前回、新井さんのところを若干変更しましたが、それをもとに

戻した形としました。


  なにか、お気づきの点などありましたら、対応したいと思いますので、適宜

、ご連絡方、よろしくお願いします。


  深瀬 (事務方) 


2021年8月13日金曜日

七句会 第三十六回目のネット句会 作品集、自句自解です。

 

 七句会のみなさま

 

 第三十六回の選句結果を踏まえて、感想や自句自解、等をおよせいただき、

たいへんありがとうございました。

 およせいただいたものを、作品集とともに、名前順に、ほぼそのまままとめ

てお届けします。

 今後のやり方に、ご意見、等ありましたら、よろしくお願いします。

 七句会のweb  http://nanaku-haiku.blogspot.jp/ にも掲載してあります。

  今後とも、よろしくお願いいたします。

  深瀬 (事務方)

 

 

1.36  ネット句会  作品集

 

(01)秋元さん

・紫陽花は薄紫の花暦

 

(02)新井さん

・桜色来年の私似合うかな

・夏来る予約画面でヨーイドン

・健診表人生秋の便りかな

・警報におののく蛍も避難かな

・布団干し梅雨の合間の勘違い

・蓮の花白やピンクの愛らしさ

・昼休み若葉の下のピクニック

・キャミソール薄着で魅せる五十女

 

(03)小野寺さん

・散る桜海の蒼さに染まりけり

・人妻となりて別れし花明かり

・野佛の深き瞳や夏木立

・夏雲を讃えて青き甲斐の山

・キャンバスに滴る緑夏の雲

・紫陽花の青滴りて虹の玉

・切れ長の佛の目 (まなこ) 梅雨の寺

・梔子 (くちなし) の白き雫に光る虹

・ほとばしる滝の飛沫 (しぶき) に蝶は舞ひ

・青葉木菟 (あおばずく) 故郷の森に祖父はをり

・天涯を光と翔けし岩ひばり

・軒先の倖せの巣やツバメ来る

・燕の子黄色の声に母還る

・夏野行く駿馬は青き風を追い

・万緑の深き谷間を鷺は越え

・草笛や憂いのしらべ峠道

・粽 (ちまき) 喰う孫の笑顔や風薫る

・湯上りに浴衣着流しみだれ髪

・ひとと逢ふ闇夜を蛍流れゆき

・万緑に染まりし寺に不動尊

・霧の海郭公 (かっこう) が哭き陽は昏れぬ

 

(04)吉良さん

・冷そうめん卓に吹き寄す瀬戸の風

・独り居の友となりぬる冷やっこ

・若鮎の炭火に香る藻の青さ

・部屋隅に琥珀に沈む梅酒あり

・メロン切る手に甘き汁母の夢

 

(05)桑子さん

・梅雨晴や足取り軽くフェアウエイ

・雨蛙ハシビロコウに勝ちにけり

・六月や塩屋の空にフェニックス

・紫陽花に居場所とらるる愛車かな

 

(06)志方さん

・梅雨さ中マスクは苦しコロナかな

・変わりなく瀬戸の島並み煙雨降り

・七夕にトラの命が後わずか

・風の中ツバメ飛び交う田植えかな

・江ノ電の車窓に映る夾竹桃

・更衣(衣替え)眩く見えるセーラー服

・何時の間に富士の雪解け消えゆきて

 

(07)中津川さん

・左腕接種安心老いの夏

・ミズスマシ水面に逝きし友の顔

・オリパラをやるかやめるか迷い梅雨

・遊園地跡バラの盛りの燃えるごと

・木曽川の風薫り来て山法師

・カルガモの親子見守る半夏生

・鳴るラインワクチン接種の報告会

 

(08)橋本さん

・朝採りの有機きゅうりや無二の味

・剪定に暫しの安らぎ初夏の庭

・実家より新ジャガ届く梅雨間近

・紫陽花の深緑に浮ぶ灯りかな

・ダンゴバチ来て安堵する庭野菜

(コロナ禍の句)

・後手後手と自粛に疲れ人流る

・結局はワクチン頼みとなりにけり

 

(09)服部さん

・梅雨空や胃カメラ検査の気の重く

・孫たちのやっと引き揚げ夏終わる

・草茂り捨て冷蔵庫埋もれ行く

・コロナ禍の集団接種梅雨の空

・裾乱し走り騒ぐや浴衣の子

 

(10)宮澤さん

・ラフの中打つの待ってと青蛙

・夕立に用を忘れて帰宅する

・微笑まれ帰りたくない雨宿り

・拡大鏡線香花火で隅田川

・空蝉の余生にほのか恋手紙

・スカイツリー雲にとげ刺し梅雨やまず

 

(11)豊さん

・砂浜に残る足跡晩夏光

・船旅や太平洋は夕焼けて

・ライオンも木陰に休む夏日かな

・少年は夢ふくらませ夏の雲

・人生は花火とともに消えにけり

・青空に落ちるものなし原爆忌

 

(12)深瀬

・温暖化先行き想ふ子供の日

・老ひ集ふ若葉に埋まるゴルフ場

・生きすぎとほたるに詫びる老ひひとり

・戦死者のいのちほたるに重ねけり

・乱れ飛ぶほたるの飛跡星を縫ひ

・つゆ空に一羽のからす重く飛び

・つゆ空に芽生えし稲の田に映えり

・つゆの窓頬杖をつく少女かな

・ふきつのる梅雨の雨かぜ老ひの窓

・干しもののピアノ部屋埋むつゆの日々

・夏休み喧嘩ばかりし兄施設

・夏休み始め終わりの浮ひた腰

・夏休み湘南電車に海の青

・庭に椅子すいか囲みし父母は亡く

・庭電灯つけて影踏み懐かしく

・夏ホームべんとべんとの声行き来

・ところてん遭遇せしは母実家

・迎え火を庭で焚く父いまは亡く

・草むらや雨に打たれるあまがえる

・おもちゃかと石灯籠に乗る蛙

・残り時間どうたのしむか日々自問

・地球といふ岩石浮かす宇宙かな

・心筋梗塞この死に方は気が重し

・人生は一度限りといま悟り

・おもひつきアマゾンクリック少し悔ひ

・時間割隠居者用は役立たず

・寝てばかり隠居生活どこ向かふ

 

 

2.36  ネット句会  自句自解

 

  新井さんの自句自解

 

・桜色来年の私似合うかな

  桃色の美しい晴着を着たのは嬉しいのですが、一方、女性であれば心のどこ

かで「これはいつまで着れるのだろうか…」と悩むのではないかと思います。

 

・夏来る予約画面でヨーイドン

  やっとワクチン接種の予約券が届いたと思って封を開けたら、予約開始は8

月です。

 

・健診表人生秋の便りかな

  若い時と違い、熟年世代の健診表は項目も増えて、憂鬱になるものです。人

生の時計が進んだと思い知らされます。

 

・警報におののく蛍も避難かな

 三渓園の「蛍の夕べ」というイベントに出向きましたが、大雨の予報が出て

いたためか、蛍が見れませんでした。

 

・布団干し梅雨の合間の勘違い

 たまの晴れに布団を干しましたが、梅雨の合間と勘違い。今年は異常気象で

すね。

 

・蓮の花白やピンクの愛らしさ

 早朝の三渓園での一コマです。

 

 

  小野寺さんの自句自解

 

(008) 紫陽花の青滴りて虹の玉

  雨上がりの紫陽花の花の水滴が光に当たり虹色に輝き紫陽花の青とのコント

ラストが見事でした。吉良さんの感想の通りです。

 

(036) 青葉木菟 (あおばずく) 故郷の森に祖父はをり

 帰省した故郷釜石の森で聞いた青葉木菟の声に祖父が姿を変えて会いにきて

くれたと感動した記憶が蘇りました。志方さん、豊さんの感想の通りです。

 

(042)ほとばしる滝の飛沫 (しぶき) に蝶は舞ひ

  圧倒的な瀑布の音量の中瀑風に乗りひらひらと舞い上がる蝶に大自然の涼を

感じたのです。吉良さんの感想の通りです。

 

(052) 人妻となりて別れし花あかり

  物憂げな春の宵花あかりのぼんやりとした光の中にふと別れた人の遠い昔を

重ねた事でした。平島さんの感想に感服です。柳町さん、桑子さんのご想像に

任せます。

 

(102) 野佛の深き瞳や夏木立

  嵯峨野から大覚寺へ向かう道すがら野佛の深い瞳に京の歴史の優しさを感じ

た事でした。志方さんの奈良のお地蔵さまと一緒です。

 

(027) 切長の佛の目 (まなこ) 梅雨の寺

 佛の目は野にある地蔵の優しい目とは違い切長の目の中に衆生を救い守る鋭

いものを感じます。暗い伽藍の外は緑を濡らして梅雨の雨が光っておりました。

 

(039) 夏雲を讃えて青き甲斐の山

 紺碧の空に湧き立つ積乱雲、それらを讃える様な青い甲斐の山々、大自然の

雄渾な絵巻を眺める想いでした。平島さん、治部さんの解説に感謝。

 

(077) 軒先の倖せの巣やツバメ来る

 ツバメの巣は確かな夏の風物詩です。巣作りから雛の巣立ちまで、ツバメは

夫婦で家族を守り育てており、彼らの自然の愛情を眺めるのは心が洗われます。

志方さん、豊さんの感想に感謝。

 

(086) 梔子 (くちなし) の白き雫に光る虹

 梔子の花の雫に虹が宝石の様に輝きを放ち渡哲也の- くちなしの花- は、お

まえのような花だったという歌詞に重なります。宮澤さんの解釈に感謝。

 

(016) 天涯を光と翔けし岩ひばり

  初夏の青い空を高く翔ぶ小柄な岩ひばりは光と競い合って空の高みまであが

るダイナミックな力を感じさせてくれます。志方さんの解釈に感謝。

 

(047) ひとと逢ふ闇夜を蛍ながれゆき

  大切な人と逢う為に急ぐ暗い夜道を、蛍が流れる様に舞い飛び、不思議な道

案内をしておりました。宮澤さんの感想の通りです。

 

(088) 夏野行く駿馬は青き風を追い

  夏の韃靼の大草原を駆ける駿馬は青い風となってチンギス汗の夢へと重なっ

てゆきます。

 

(090) 湯上がりに浴衣着流し乱れ髪

  平島さんの解説の通りです。与謝野晶子の- 乱れ髪- に遠い日の消えぎえな

官能の記憶の断片を蘇らせておりました。

 

 

  豊さんの自句自解

 

・砂浜に残る足跡晩夏光 

 今年の夏もさまざまな思い出とともに過ぎ去ってしまったなあ、という感慨

を詠みました。

 

・少年は夢ふくらませ夏の雲 

 少年はいつも夢をふくらませています。かつては私もそうでした。もくもく

と盛り上がる夏の雲のように。

 

・人生は花火とともに消えにけり 

 治部さんの評のとおり、人生は消すものではありませんね。「花火とともに

燃えにけり」のほうが勢いがあります。 

 

・青空に落ちるものなし原爆忌 

 私たちは直接の戦争体験者ではありませんが、悲惨な様子は知っているはず

なので、平成・令和の若者にその記憶を語り継いでいく義務があると思います。

 

 

  深瀬の自句自解

 

・温暖化先行き想ふ子供の日

  俳句ではないかもしれません。

 

・老ひ集ふ若葉に埋まるゴルフ場

  老いと若さの対比ですが、自分もそういう歳なのかと。ありがたいことだと

感謝しています。

 

・生きすぎとほたるに詫びる老ひひとり

  生きていること自体が罪という意識が分かる感じも。生きるということは、

物質がなにか意識をもつという現象であり、いろいろな生き物がいるというの

も不思議に思います。

 

・戦死者のいのちほたるに重ねけり

  斎藤茂吉の「草づたふ朝の螢よみじかかるわれのいのちを死なしむなゆめ」

を思いました。

 

・乱れ飛ぶほたるの飛跡星を縫ひ

  3 点、ありがとうございます。なにか受けを狙った感じもします。

 

・つゆ空に一羽のからす重く飛び

  以前の「頭上飛ぶ残暑の機影重たげに」とやや発想が同じです。

 

・つゆ空に芽生えし稲の田に映えり

  芽生えたばかりの緑の美しさです。

 

・つゆの窓頬杖をつく少女かな

  やや少女漫画のようになってしまいました。

 

・ふきつのる梅雨の雨かぜ老ひの窓

  高村光太郎の「雨にうたるるカテドラル」のぱくりです。

 

・干しもののピアノ部屋埋むつゆの日々

  家内のピアノの部屋が洗濯物だらけです。主婦業もたいへんそうです。

 

・夏休み喧嘩ばかりし兄施設

  兄はどうもやさしさがなかった感じです。脳梗塞で右半身麻痺です。

  兄弟の関係というのも、なにか不思議に感じています。

 

・夏休み始め終わりの浮ひた腰

  夏休みの始めと終わりはなにか落ち着かないへんな気持ちでした。

 

・夏休み湘南電車に海の青

  夏休みに、緑と橙の湘南電車で伊東によく行きました。

 

・庭に椅子すいか囲みし父母は亡く

  父は大のすいか好きでした。母はあまり好きではありませんでした。

 

・庭電灯つけて影踏み懐かしく

  親類の子供も来ていたのかもしれません。青い裸電球でした。

 

・夏ホームべんとべんとの声行き来

  伊東に湘南電車で行く途中の光景です。弁当屋さんやアイスクリーム屋さん

がぞろぞろ行き来していました。昭和の風景だと思います。

 

・ところてん遭遇せしは母実家

  子供のころ、母の実家の秋田県雄勝にいったとき、透明なきらきらしたもの

がにょろにょろ出てくるのを見てびっくりしました。

 

・迎え火を庭で焚く父いまは亡く

  父はお盆の夜、廃材を積み上げたき火をしていました。祖先や戦死した弟を

思っていたのだと思います。

 

・草むらや雨に打たれるあまがえる

  高村光太郎の「雨にうたるるカテドラル」を少しぱくりました。

 

・おもちゃかと石灯籠に乗る蛙

  ハシビロコウとか餌をとるために長時間じっとしていますが、生きる智恵な

のでしょうか。

 

・残り時間どうたのしむか日々自問

  もうすぐ終わりだなとは日々実感するのですが、残り時間をどう生きるか分

からないままです。

 

・地球といふ岩石浮かす宇宙かな

  豊さん、ありがとうございます。こういう類の句を作っていきたいと思って

います。宇宙は猛スピードで膨張しているので安定なのでしょうか。暗黒物質

とか暗黒エネルギーとかの正体が解明されるときがたのしみです。

 

・心筋梗塞この死に方は気が重し

  胸に締めつけられるような痛みと脂汗。次第に意識が遠のくのは、気持ちの

よいものではありませんでした。

 

・人生は一度限りといま悟り

  頭では分かっていてもどうしようもないという感じです。

 

・おもひつきアマゾンクリック少し悔ひ

  あまりにも買い物がかんたんにできすぎる感じです。

 

・時間割隠居者用は役立たず

  時間割を作れば時間を有効活用できるのではと思ったのですが。

 

・寝てばかり隠居生活どこ向かふ

  最近は昼間も眠気によく襲われます。やや不安になります。

 

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