2022年2月24日木曜日

第8 回目の七句会自由連句実施要領

  第8 回目の七句会自由連句実施要領

 

 七句会自由連句のみなさま

  いつもたいへんお世話になり、ありがとうございます。

  コロナ禍はあと少しの辛抱だとよいのですが、第8 回目の七句会自由連句を

下記要領にて行いたいと思います。よろしくお願いします。

  豊さん、二句目をよろしくお願いします。

 

・参加者 新井さん、小野寺さん、吉良さん、志方さん、豊さん、深瀬(6)

・発句  身をそぎて凜とそびえり枯れ銀杏   吉良さん

・選句者および作者のコメント

  選者コメント

      1 柳町

      2 志方

      3 宮澤    葉を落としきり、潔く素っ裸になってまた来年と言って

          いるようで、冬の銀杏ほんとに凛としています。

      4 中津川  年輪を重ねそびえている様がわかります。

      5 桑子 

  作者コメント

  神宮外苑の銀杏並木を句題としました。神宮外苑は11月頃から色づき、1

月間は車道に人が溢れる程の人気のあるスポットとなります。歩道には黄色い

葉っぱの絨毯ができて、子供が転げ回ったり、若いカップルがスマホで自撮り

をしたりとにぎやかです。でも人影の絶えた、12月中旬以降の冬の落葉後の銀

杏並木がもっと素晴らしいと思います。寒風に耐えて、20m近い巨木が白い

枝を暗闇の天に向かって伸ばす様子は生命の力強さを感じます。是非一度訪れ

てみてください。  

 

・座

 

    初折表六句

 

01 発句   冬    吉良

02 脇    冬    豊

03 第三   雑 無季 新井

04 四句目  雑 無季 小野寺

05 月の座  秋    深瀬

06 折端   秋    吉良

 

 初折裏十二句

 

07 折立   秋    豊

08 二句目  雑 無季 志方

09 三句目  雑 無季 小野寺

10 四句目  雑 無季 新井

11 五句目  雑 無季 吉良

12 六句目  雑 無季 深瀬

13 月の座  夏    志方

14 八句目  冬    豊

15 九句目  雑 無季 深瀬

16 十句目  雑 無季 小野寺

17 花の座  春    新井

18 折端   春    吉良

 

 名残表十二句

 

19 折立   春    志方

20 二句目  雑 無季 新井

21 三句目  雑 無季 吉良

22 四句目  雑 無季 深瀬

23 五句目  冬    志方

24 六句目  冬か雑  豊

25 七句目  雑 無季 志方

26 八句目  雑 無季 小野寺

27 九句目  雑 無季 豊

28 十句目  雑 無季 吉良

29 月の座  秋    小野寺

30 折端   秋    新井

 

 名残裏六句

 

31 折立   秋    吉良

32 二句目  雑 無季 深瀬

33 三句目  雑 無季 豊

34 四句目  雑か春  志方

35 花の座  春    深瀬

36 挙句   春    小野寺

 

・式目  特に前回と変わりません。同じ語句の使用は避ける、付合において

場面の繰り返しや後戻りはしない、付合の背景の補足コメント (付け筋) を簡

単に付記する、といった程度です。

  若干追加しますが、月、花の座については遵守する、固有名詞の使用はバラ

ンスを考慮する、雅的な雰囲気は少し避ける、などです。恋の座は取りやめま

した。また、表六句が序、裏~名残表が破、名残裏が急、あるいは、表六句が

起、裏が承、名残表が転、名残裏が結といっためりはりを意識したいと思いま

す。                                 

 

  補足

 

  各座を詠む上での備考です。

  下記より転記。

  http://www.local.co.jp/renku/4.html

 

    初折表六句

 

01 発句   冬    や、けり、かな、などの切れ字を用いるのが好まし

           い、とされる。

02 脇    冬    発句に密着し同季同場同時で補完。

03 第三   雑 無季 前句から転じて、て、に、にて、らん、もなし、の

                      留字で留める。

04 四句目  雑 無季 軽くサラリとつける。

05 月の座  秋    発句が秋の月の句の時は無季の句をつける。

06 折端   秋    軽くテンポのいい句をつける。

 

 初折裏十二句

 

07 折立   秋    恋の句はまだ早い。

08 二句目  雑 無季 独自の発想でバンバン行く。

09 三句目  雑 無季 恋句はこのあたりからだすのがよいともいわれる。

10 四句目  雑 無季 恋句は二句続ける。

11 五句目  雑 無季 独自の発想でバンバン行く。

12 六句目  雑 無季 同上。

13 月の座  夏    句の流れで月の句はもっと後でもよい。

14 八句目  冬    月の句の次は季節に準ずる。

15 九句目  雑 無季 独自の発想でバンバン行く。

16 十句目  雑 無季 花の句の前は植物を詠まないようにする。

17 花の座  春    花の句の定座、花とは桜のこと。但し発句が桜の時

           は梅を詠んでもいい。

18 折端   春    春の季語を入れて独自の発想でバンバン行く。

 

 名残表十二句

 

19 折立   春    春の季語を入れて独自の発想でバンバン行く。

20 二句目  雑 無季 独自の発想でバンバン行く。

21 三句目  雑 無季 同上。

22 四句目  雑 無季 同上。

23 五句目  冬    このあたりで季節を詠む。

24 六句目  冬か雑  季節は二句続いたほうが好ましい。

25 七句目  雑 無季 独自の発想でバンバン行く。濃厚な恋句を二句続き

           で盛り込むとよい。

26 八句目  雑 無季 同上。

27 九句目  雑 無季 同上。

28 十句目  雑 無季 同上。

29 月の座  秋    以前に詠まれた月の句と同趣同景にならぬようにす

           る。

30 折端   秋    以前に詠まれた秋の句と同趣同景にならぬようにす

                      る。

 

 名残裏六句

 

31 折立   秋    ここからは考え込まないで軽く穏やかな句をテンポ

           よく詠む。

32 二句目  雑 無季 テンポよく穏やかに詠む。

33 三句目  雑 無季 同上。

34 四句目  雑か春  同上。

35 花の座  春    以前に詠まれた花の句と同趣同景にならぬようにす

           る。

36 挙句   春    穏やかにおわる。

 

2022年2月6日日曜日

七句会 第38回 感想、自句自解です。

 

 七句会のみなさま

 

 第三十八回の選句結果を踏まえて、感想や自句自解、等をおよせいただき、

たいへんありがとうございました。

 およせいただいたものを、作品集とともに、名前順に、ほぼそのまままとめ

てお届けします。

 今後のやり方に、ご意見、等ありましたら、よろしくお願いします。

 七句会のweb  http://nanaku-haiku.blogspot.jp/ にも掲載してあります。

  今後とも、よろしくお願いいたします。

  深瀬 (事務方)

 

 

1.38  ネット句会  作品集

 

(01)秋元さん

・日の丸を掲げて過ぎし宴かな

・年の瀬に行き交う人も儘ならず

・夜目遠目落とした物も気がつかず

 

(02)新井さん

・カメラマン一瞬とらえる流れ星

・クリスマス深紅のネクタイ輝けり

・一時間遅く起きた日テレワーク

・祈る男賽銭箱の脇隠れ

・神様も覚えきれない願い事

・元日の朝の神社に白い息

・水仙の切り花包むパステル色

・ワクチンを待つ身に響く汽笛かな

・除夜の鐘待つ夕水仙ひっそりと

・ワクチンに振り回されし年惜しむ

・年惜しむ後に湧き出るしたいこと

 

(03)小野寺さん

・急流に紅葉敷き詰め陽は落ちぬ

・やはらかき猫の和毛 (にこげ) か冬の薔薇

・鮮やかに柿の葉濡れて初時雨

・小夜時雨沖の小舟に灯り揺れ

・千年の古都鎮めさせ時雨降る

・艶めきの過ぎてあはれを散るもみぢ

・近き嶺暮れて遠山冬茜

・雪の宵紅ひき結び別れ往き

・雪濡れのほおかすめ哭く潮の音

・墨にほふ途切れし筆の雪の朝

・混沌の二年を咲くや冬の薔薇

・鳶の輪を残して古都の秋は暮れ

・四面楚歌越え来し峰に寒椿

・星流る一期の命燃え尽きて

・凩 (こがらし) が哭きて故郷の無人駅

・小豆煮る母の匂ひの年の暮れ

・ふるさとの森眠らせて冬銀河

・椋鳥 (むくどり) の騒ぎ包みて帷 (とばり) 降り

・柚子かほる無音の闇夜迫り来て

・鬼瓦降り積む雪に雀舞ひ

・朋去りぬ酔えぬ酒浴び明けの星

・冬の夜の祖母の童話は動きだし

 

(04)吉良さん

・身をそぎて凜とそびえり枯れ銀杏

・スマホ手に落ち葉の雨のランデブー

・落葉踏む音も静けし夫婦老う

・黄昏の落ち葉まといて笑顔行く

 

(05)桑子さん

・つむじ風落葉舞上げ路掃除

・ミチクサに池を巡りて漱石忌

・着膨れてスイカまさぐり通せんぼ

・寒風や一人佇むショット待ち

・蜜避けて3 日遅れの初詣

 

(06)服部さん

・宝くじ懲りずに夢見る去年今年

・冬鳥の叫び虚空に突き抜けり

・正月も朝からゲームの孫達よ

・早々に喪中はがきの暮早し

・落ち葉来る仕舞いはいつなの掃き掃除

 

(07)志方さん

・老いてなほ黄昏寒し独酒かな

・木枯らしに老い桜耐えまた春を

・山稜の寒さを刻む夕照が

・寒空に銀漢流れ大宇宙

・しみたかなおでん恋しや大根が

・葉も散りて梢の先の熟柿かな

・割烹着師走の母を想い出し

 

(08)中津川さん

・正月や二年ぶりの孫を待つ

・鮟肝のつきだし小鉢友偲ぶ

・膝痛し風花舞いて峠越え

・受験生幸先詣でオミクロン

・冬紅葉逝きし報せを後で知り

・年始め今年もテレビで待つ駅伝

・会えぬから今年こそ書く年賀状

 

(09)橋本さん

・風雨明け芝生に描く落ち葉の絵

・ブルーベリー朱の葉留める松の内

・北風に寒波を連れた雲の峰

・鐘つきも酒も手水も無し初詣

・味深し杵つき餅の雑煮かな

 

(10)柳町さん

・しもやけの孫と割る手や鏡餅

・孫帰省疲れも忘れ遊びナウ

・紅白のビデオ見つつ雑煮味う

 

(11)豊さん

・おごそかに海明けてくる初日の出

・若きよりLINEで届く年賀状

・故郷の味なつかしき雑煮かな

・冬の日ははや沈みけり黒き富士

・吐く息で指を暖め霜の朝

・冬木立快晴の空突き刺しぬ

 

(12)深瀬

・苦も楽も日記かえりみ年惜しむ

・帰らざる宇宙の時流年惜しむ

・年惜しむ残り少なき老ひ刻み

・水仙や時空旅して今ここに

・水仙や古池めぐる苔に和し

・かくれんぼこんなところにからすうり

・からすうり夕陽に染まり子ら家路

・去年今年つらぬくものはなにか問い

・年賀状もうやめますといく枚か

・お正月重ねし回の遠く消え

・お正月ことしの抱負夢の中

・お正月残り少なき歳数え

・隠居者の部屋はすっきりお正月

・静かさに老いをかさねてお正月

・お正月孫を迎えて子は父に

・新聞を切り抜き過ごす三が日

・お正月澄みし空気に老いきざみ

・米中のまなじり険しお正月

  初日の出世界十景 (10)

・宇宙から見ればなんなの初日の出

・紫禁城いらかに燃える初日の出

・ガンジスの荼毘の岸辺に初日の出

・キャラバンを砂紋にうかす初日の出

・アメリカの荒野の地平初日の出

・朱を深めエアーズロックに初日の出

・初日の出伊豆の海原万華鏡

・柏手のひびく出雲の初日の出

・石組みの濠 (ほり) に清らか初日の出

・湾岸のビルとブリッジ初日の出

 

 

2.38  ネット句会  感想と自句自解

 

  新井さんの自句自解

 

・カメラマン一瞬とらえる流れ星

 カメラが好きなおじが、流星群を撮影した夜のことを熱く語っていました。

 

・クリスマス深紅のネクタイ輝けり

 おしゃれの好きな近所の大学生男子、クリスマスの朝に会うとかっこいいス

ーツを着ていました。素敵な赤のネクタイをしておられまして、光っていまし

た。

 

・一時間遅く起きた日テレワーク

 テレワークの嬉しいことはいつもより1 時間遅く起きることです。

 

・祈る男賽銭箱の脇隠れ

  元旦に神社へ行きましたが、前に並んでいた中年の男性、お祈りが終わった

後も、お賽銭箱の横に立っていました。そして、そこでも何度も頭を下げ神様

に願い事をしていました。後ろの人たちは次から次へとお祈りをしていました

が、なぜかこっそりと祈り続ける姿が目に焼き付きました。

  

・神様も覚えきれない願い事

  このコロナ禍ですと、人々からのお願い事も増えて、神様も混乱されている

のではないでしょうか。

 

・元日の朝の神社に白い息

  元旦の朝、という神聖な場所で、吐く息もすっかり白いと感じました。

 

・水仙の切り花包むパステル色

  水仙の切り花に似合うのは、パステル調の柔らかい色の包み紙でしょう。

 

・ワクチンを待つ身に響く汽笛かな

  横浜市の大規模接種でワクチンを受けました。港の検疫場でじっと待ってい

ると、船の汽笛が聞こえてきました。

 まさか港でワクチンを受けるとは夢にも思っていなかったので、やけに身に

染みて残りました。

 

・除夜の鐘待つ夕水仙ひっそりと

  大みそかの金蔵寺、夕方訪れると、水仙が除夜の鐘を待ってひっそりとたた

ずんでいるようでした。

 

・ワクチンに振り回されし年惜しむ

  2021年を振り返ると、ワクチンの予約がなかなか出来なくて、ずいぶん振り

回されたように感じました。

 また、副作用のうわさも飛び交いましたし、打つ前と打った後の気持ちの状

態も変わりました。

 

・年惜しむ後に湧き出るしたいこと

  一年と振り返るとできないこともたくさんありましたが、次の瞬間、新しい

一年を思ってやりたいことがどんどん出てきます。

 

 

  小野寺さんの自句自解

 

5 点句 013 小豆煮る母の匂ひの年の暮れ

  平島さんの解説の通りです。毎年の暮れのお節の行事の準備、この匂いを嗅

ぐと母が割烹着で甲斐甲斐しく働いていた姿が思い出されます。正月を迎える

期待もあり。。匂いの記憶は生涯忘れられない懐かしさとなります。

 

4 点句  035 柚子かほる無音の闇夜迫り来て

  橋本さんの解説の通りです。黄色の柚子と深い香りが閑かな漆黒の闇に包ま

れてゆく、、冬の情景です。

 

4 点句 047 近き嶺暮れて遠山冬茜

  治部さんの解説が見事です、、八王子に住む高尾さんの山々に冬の日が沈む

と遠目の赤を背景に、手前の山々が黒々と沈んで遠くに感じます。私は子供の

頃故郷の、五葉山を背景にしてこの不思議な光景に接し、冬の日没の茜色の風

景を記憶してます。豊さんにお褒めいただいた、冬茜は夕映えの風景を表した

かった、私の造語です。

 

4 点句 075 (こがらし) が哭きて故郷の無人駅

  治部さんの解説のとおりです。久しぶりに帰ってみた故郷は、今時の無人駅

に凩が啜り泣き、何も変わらず、時間が止まっておりました。

 

4 点句 088 混沌の二年を咲くや冬の薔薇

  平島さん他解釈の通りです。コロナコロナで振り回された二年でした。誰も

が、不安を抱いての二年が経ちましたが、薔薇はそんな浮世の騒憂には無関係

で、寒い冬に凛と咲いている。人間もこうありたいものです。

 

3 点句 018 冬の夜の祖母の童話は動きだし

  吉良さんの解釈の通りです。寒い冬の夜、布団の中で聞く祖母の童話には巧

みな語りで迫るものがあり、夢現つの中で追ってくる山姥から山を越え一目散

に逃げておりました。

 

3 点句  097 艶めきの過ぎてあはれを散るもみぢ

  遥かな記憶の中めくるめく刻は過ぎて、はらはらと散る紅葉にはもののあは

れを誘う自然の摂理がありました。過ぎ去った情念は埋み火と消えました。

 

2 点句 009 墨にほふ途切れし筆の雪の朝

  硯で墨を擦り、手紙をかく筆を止めると雪の朝の白い世界に墨の香りが清々

しい冷気を発しておりました。

 

2 点句 028 鬼瓦降り積む雪に雀舞ひ

  平島さんの解釈の通りです。厳しい黒い鬼瓦に降り積む白い雪。この白い雪

の中を戯れる可愛い雀達は一幅の絵巻を眺める様でもありました。

 

2 点句 033 鮮やかに柿の葉濡れて初時雨

  紅く色づいた柿の葉に初時雨が降り柿の葉の赤がより一層の鮮やかさを演出

しておりました。

 

・朋去りぬ酔えぬ酒浴び明けの星

  長い付き合いの友人を亡くしたお通夜の日、独り酒を飲むしか手立てが無く

、しかし酔いは回らず、気がつくと白々と夜が明け一つ金星が輝いておりまし

た。

 

 

  吉良さんの感想、自句自解

 

  世界の初日の出の俳句は発想がとても面白く感心して読みました。自分の句

の自解より自戒というべきかもしれません。

 

  神宮外苑の銀杏並木を句題としました。神宮外苑は11月頃から色づき、1

月間は車道に人が溢れる程の人気のあるスポットとなります。歩道には黄色い

葉っぱの絨毯ができて、子供が転げ回ったり、若いカップルがスマホで自撮り

をしたりとにぎやかです。でも人影の絶えた、12月中旬以降の冬の落葉後の銀

杏並木がもっと素晴らしいと思います。寒風に耐えて、20m近い巨木が白い

枝を暗闇の天に向かって伸ばす様子は生命の力強さを感じます。是非一度訪れ

てみてください。  

 

 

  橋本さんの自句自解

 

(063) 味深し杵つき餅の雑煮かな

  以下の方々から4点句に選んで頂きましたが、この句の「杵つき餅」につい

て紹介したいと思います。

  1 宮澤  もう何年も機械でついた餅ばかりで正月を過ごしています。杵も

    臼も見なくなって久しいが、つき加減が時々乱れる人力だよりが懐かしい

    です。美は乱調にあり。

    2 深瀬  臼と杵でうったお餅の味は違うのだろうと想像しました。

    3 秋元

    4 小野寺  市販のサトーの切り餅ではない杵付き餅の味はまた深い味わい

    があるのでしょう。

 

  餅は以下の手順で、田舎の実家で暮れの12月30日につき、正月にまず雑

煮で頂きます。

1)もち米の下準備・・・ 一臼分づつ洗い一晩水に浸けておき、蒸す前に水切り

2)もち米を蒸す・・・ ポータブルの竈 (かまど) を設置し、釜でお湯を沸かし

蒸籠 (せいろ) で蒸す。

3)前処理・・・ 木製の臼に蒸したもち米を入れ、杵でついても飛び散らない程

度に、杵で均等に押し回して潰す。

4)杵で餅つき・・・10kg 弱程度の木製の杵で、捏ね取りの人と呼吸を合わせて

数十回つく。 (体力のある元気な人でないと一気につき上げるのは難しい)

5)餅板作り (整形)・・・つけた餅の塊を臼から取り出し、のし板上に置き、の

し棒で均一で適度な厚さの四角な板状に整形する (餅取り粉をまぶして、板と

棒にくっつかないよう、しかも熱いうちに素早く行う作業なので、私のような

1 回の者では満足な餅板はほとんど出来ない)

6)切り出し・・・ 数時間から1 日以内で、適度な堅さの内に餅板から所望の形

に包丁で切り出す。

  もち米の品質、蒸し米の状態、つき具合、餅板の整形などにより、ついた餅

 () 毎に違いが出て来てしまうので味も変わります。宮澤さんの美は乱調に

ありですかね。

  恒例の兄弟4人集まっての暮れの餅つきも、皆歳を取りそろそろ無理な状況

に、子供達が継ぐかどうか、、、

 

 

  平島さんの感想 (小野寺さんとのその後のやりとりを僣越ですが含めまし

た。)

 

  小生の選んだ句が深瀬さん4 句小野寺さん3 句しかも小野寺さんのは5 点句

4 点句でした。皆さんが上手くなられて選句も難しさを感じていました。

  でもこの偏りはどう評価してよいのか自分でも上手く表現出来ません。

  でも参加させていただいて楽しんでいますので今後ともよろしくお願いしま

す。

 

- 小野寺さんからの応答

  平島さんが選句していただいたもの全部で107 句あるなかで小生のを3 句、

深瀬さんを4句選句頂いたのは偶然ではないかもしれませんね。

  今回は友人の死でとても投句するような気持ちにならずおろおろしてました

が、たまたま見ていたしぶんぎ座流星群でみた流れ星から

 

・星流る一期の命燃え尽きて

・朋去りぬ酔えぬ酒浴び明けの星

 

のニ句を捻りだして、ため息をつきながら、他は記憶の引き出しから何も考え

ず無心の心境で紡ぎだしたものです。

  平島さんや他の方々の心に留められるものが自分で意識したものとは違う事

を感じました。

  釜石の田舎、昔の母のお節作りは、質素なものでしたが、小豆を煮る匂いが

子供の頃の幸せな、やわらかい記憶の中に刷り込まれていた事でした。平島さ

んの解説が的確で驚きました。この記憶は多分今の子供達にはありませんが、

共感して頂ける人達が沢山居る事を嬉しく思いました。

  俳句の楽しみのひとつかもしれませんね。

 

- 平島さんからの応答

  とらきちの朋友の突然の死に呆然とされた大兄の心境がわかる気もします。

小生なりにまねてみました。こんな感じです。

 

・流星や命の果ての友の魂

・朋去りぬ涙の苦杯夜明けまで

 

  俳句に興味を持たれてだんだん上手くなられて行くのが嬉しいです。言葉の

感性は美術や音楽などで目や耳を肥やして行くことで磨かれると思います。い

ま小生の音楽は専らモーツァルトですが。

 

- 小野寺さんからの応答

  朋友の死に際しての追悼句、平島さんの見事な俳句怖入ります。感嘆しまし

た。言葉の選択ですが追悼ですから、季語は考えなくてよろしいんですね。

  上手い俳句ではなく感嘆や感情の高揚がいかにつたわるかに腐心しますが、

なまじ頭で構成や季語を練るより浮かんでくる、単純な想いの表現が人の心に

共感を呼ぶのでしょうか。。

  皆さんに選句頂いた句はほとんど感情のおもむくままに書いたものでそうし

てみるとやはり俳句の奥は深いのですね。

 

- 平島さんからの応答

  この句はやっつけ仕事で大兄が藤嶋さんの遺影の前で慟哭しておられる場を

想像して作ったもので連句の雑の句みたいになりました。俳句なら追悼でも季

語は必要です。すっ飛んでいました。

 

 

  豊さんの自句自解、感想

 

・冬の日ははや沈みけり黒き富士

 吉良さんのご指摘の通り、黒富士を強調したほうがよかったと思います。た

だ、俳句では「や」と「けり」が重なるのは不可とされているので、「黒富士

や冬の陽ははや沈みつつ」「黒富士や冬の陽ははや沈みゆく」となるでしょう

か。

 

・おごそかに海明けてくる初日の出

 初日の出を詠もうと思ったのですが、 あたりまえの発想になってしまいまし

た。もうすこしひねったほうがよかったです。

 

・冬木立快晴の空突き刺しぬ

 「突き刺しぬ」と断定するのがいいかどうか迷ったのですが、やはり少し強

すぎたようです。

 

・吐く息で指を暖め霜の朝 

 これも平凡でした。「霜の朝」を別の言葉に変えたほうが良かったと思いま

す。

 

・故郷の味なつかしき雑煮かな 

 雑煮は地方地方で作り方や味が違います。都会に出てきた人が田舎の味を懐

かしんでいる様子を詠んだのですが、うまく伝わらなかったようです。

 

・若きよりLINEで届く年賀状 

 現代の風俗を取り入れたのですが、「LINE」という表現がなじまなかったの

でしょうか。

 

 今回の5点句はどちらもすばらしい句だと思います。よその句会に出しても

高得点になるのではないでしょうか。次回を楽しみにしています。

 

 

  深瀬の自句自解

 

・苦も楽も日記かえりみ年惜しむ

  コロナ禍であってもたのしかったことはあるものだと思います。

 

・帰らざる宇宙の時流年惜しむ

  ビッグバンから138 億年。時間に始まりがあるというのが不思議です。

 

・水仙や時空旅して今ここに

  中近東から中国を経て日本まではるばる、どんな旅だったのだろうと。

 

・水仙や古池めぐる苔に和し

  水仙と日本庭園の苔は、なにか似合うように感じます。

 

・かくれんぼこんなところにからすうり

  崖っぷちのやや危ないところに隠れたときの思い出てす。

 

・からすうり夕陽に染まり子ら家路

  子どものことは周辺に原っぱがいくつもあり、真っ赤なからすうりをよく見

かけました。

 

・去年今年つらぬくものはなにか問い

  言うまでもなく虚子の「去年今年貫く棒の如きもの」のパロディーです。

 

・年賀状もうやめますといく枚か

  この歳になったら直接会ったりやりとりする人だけとお正月を共有できたら

という心境になります。

 

・年惜しむ残り少なき老ひ刻み

・お正月重ねし回の遠く消え

・お正月ことしの抱負夢の中

・お正月残り少なき歳数え

・隠居者の部屋はすっきりお正月

・静かさに老いをかさねてお正月

・お正月澄みし空気に老いきざみ

  老人のお正月の感慨です。こんな句ばかりを詠んでいる自分に、若いころと

のあまりの違いに慄然とします。

 

・お正月孫を迎えて子は父に

  同じマンションの5 階に住む息子一家がお正月に訪れます。かつては一緒に

ここに住んでいた息子が、と世代の移りゆくのをしみじみ感じます。

 

・新聞を切り抜き過ごす三が日

  新聞の切り抜きは、時間潰しと頭の体操にはよいと思います。

 

・米中のまなじり険しお正月

  米中対立には、米ソ冷戦構造の時代とは別次元の圧迫感を感じます。

 

  初日の出世界十景 (10)

・宇宙から見ればなんなの初日の出

・紫禁城いらかに燃える初日の出

・ガンジスの荼毘の岸辺に初日の出

・キャラバンを砂紋にうかす初日の出

・アメリカの荒野の地平初日の出

・朱を深めエアーズロックに初日の出

・初日の出伊豆の海原万華鏡

・柏手のひびく出雲の初日の出

・石組みの濠 (ほり) に清らか初日の出

・湾岸のビルとブリッジ初日の出

  初日の出を兼題に、はじめアメリカの荒野のものを詠んだのですが、やや調

子に乗って世界一周にチャレンジしてみました。宇宙からはどう詠むか中途半

端に終わってしまい残念です。