七句会 第8 回 自由連句のみなさま
第三十六句目 (名残裏 挙句 春) を、小野寺さん、ありがとうございまし
た。
おかげさまで無事、満尾することができました。
感想、コメント、等ありましたら、4 月30日までに事務方の方にお寄せくだ
さい。まとめてご報告したいと思います。
初折表
01 発句 冬 身をそぎて凜とそびえり枯れ銀杏 (吉良)
02 脇 冬 冬の京都で食う茶碗蒸し (豊)
03 第三 雑 たくあんを典座吟味す手に取りて (深瀬)
04 四句目 雑 飽食の世に食糺 (ただ) す母 (小野寺)
05 月の座 秋 月あかりミニマリストの部屋の窓 (深瀬)
06 折端 秋 古酒酌み交わす桃源の郷 (吉良)
初折裏
07 折立 秋 雁一羽列を離れてわが道を (豊)
08 二句目 雑 山の端越えて雲に溶け行く (志方)
09 三句目 雑 青雲の大志抱きて国を出る (小野寺)
10 四句目 雑 心の便り深海の底 (新井)
11 五句目 雑 狐火や榎木に集い宮参り (吉良)
12 六句目 雑 開港祭り山車担ぐ華 (新井)
13 月の座 夏 夕凪に瀬戸の水面に淡き月 (志方)
14 八句目 冬 雪山深く落ちる平家よ (豊)
15 九句目 雑 震度6高層の孤老揺れまかせ (深瀬)
16 十句目 雑 古都のキエフをミサイル蹂躙 (小野寺)
17 花の座 春 宅配便薔薇の甘さに和み顔 (新井)
18 折端 春 家族総出で草餅こねる (吉良)
名残表
19 折立 春 梅が枝の思い残して東風に消え (志方)
20 二句目 雑 ギター奏でる自由の女神 (新井)
21 三句目 雑 愛犬の墓掘る孤児に戦火止む (吉良)
22 四句目 雑 すきとおる空沈黙の街 (深瀬)
23 五句目 冬 ミサイルの降るより吹雪まだ愛し (志方)
24 六句目 雑 古くなるほど価値高き壺 (豊)
25 七句目 雑 老妻も年輪重ね味が出る (志方)
26 八句目 雑 娘達皆母の血を継ぎ (小野寺)
27 九句目 雑 妊娠ができぬ男の弱さかな (豊)
28 十句目 雑 働き蜂は蜜を集めて (吉良)
29 月の座 秋 旅の空名月仰ぎ英気満つ (小野寺)
30 折端 秋 芋煮転がし故郷自慢 (新井)
名残裏
31 折立 秋 初孫の微笑みあふれ盆帰省 (吉良)
32 二句目 雑 フェイスツフェイスにハイテク競う (深瀬)
33 三句目 雑 頬叩き気合いを入れる朝鏡 (豊)
34 四句目 雑 夕陽に向かってとぼとぼ歩む (志方)
35 花の座 春 夜桜のはらりと散って里の鐘 (深瀬)
36 挙句 春 爆音の地に花満つる日を (小野寺)
36の付け筋 (小野寺さん)
夜桜と鐘の響きの春の宵から転じて、鐘の音ならず、戦乱のウクライナの人
達は炸裂したミサイルの恐怖と戦いながら、花の咲く街の復活を信じて生き延
びて欲しいと切に願います。
35の付け筋 (深瀬)
旅先の宿で夜桜が静かに散っていくのを見ていると、遠くから鐘の音が聞こ
えてきます。
34の付け筋 (志方さん)
還暦をはるか遠くに通り越して、朝に気概を奮い立たせて臨んだが夕陽に向
かって叫ぶこともなく、春愁の想いに包まれて時間の刻みをゆったりと楽しむ
、後期高齢者を迎えるこの頃です。
33の付け筋 (豊さん)
一日は朝の洗顔から始まります。鏡に映った寝起きの顔はまだぼーっとして
いるので、頬を叩いて気合いを入れ、目覚めさせるのです。
32の付け筋 (深瀬)
コロナ禍の影響もあり、近年、Zoom、メタバースとか、音声SNS 、仮想空間
アプリとか、デジタル空間での人との出会いが急速に進化しているようです。
盆帰省という言葉はいつまでがんばれるのでしょうか。
31の付け筋 (吉良さん)
芋煮会で出会ったカップルが結婚し、故郷の親元に初孫を連れて帰省しまし
た。
30の付け筋 (新井さん)
この季節、親元を離れるのも一つの旅と言えるでしょう。私の部署には、地
方自治体からの研修生がたくさん来ています。元々の所属組織を親元と呼んで
いますが、皆緊張した顔で過ごしておられます。秋頃には、芋煮会でも開いて
、和気あいあいと親元のご当地自慢をしあうのが今の私の望みです。
29の付け筋 (小野寺さん)
吉良さんの前句を受けて子孫を産み育てる為の女性の地位は圧倒的で、男は
働きバチの様に女性を支えます。しかし男は又、ふらりと旅に出てひと知れず
、月や星を仰ぎみながら命の充電をはかります。所詮、男は女とは違う生き物
かもしれません。
28の付け筋 (吉良さん)
子孫を残す女王バチのために働く働き蜂は男を象徴していますね。
27の付け筋 (豊さん)
街で若い妊婦さんを見るといつも思います。出産という大事業をになって立
派だな、と。25、26の志方さん小野寺さんの付け筋に私も同感です。女性の力
はすごい。男はかないません。日本ではその認識がまだ薄いようです。
26の付け筋 (小野寺さん)
志方さんの糟糠の妻に共感です。しかし、娘達もまた妻や母になってゆくと
彼女らの母のDNA を何処か引き継ぎながらまた違う女性に脱皮してゆく様です。
しかし亭主の操縦は、見事です。世の中女性の力で廻っていると思います。
25の付け筋 (志方さん)
古さへの価値を老妻につなげました。コロナ禍で、同一空間を共有する時間
が多く、今まで気づかなかった一面が度々発見され、ある面その凄みに新鮮さ
を覚えるこの頃です。
24の付け筋 (豊さん)
前の句の「降る」に「古」を引っ掛けて、ウクライナの流れを転じました。
骨董の壺は古い時代のものほど高く評価されるようです。もちろん本物であれ
ば。
23の付け筋 (志方さん)
無差別殺戮をミサイル攻撃で繰り返すプーチンも生まれたペテルスブルグで
降り積もる雪に耐えた幼き日の感性に戻ってほしいものです。
22の付け筋 (深瀬)
ロシア軍によるウクライナへの砲撃が一日も早く終わってほしいと願います。
21の付け筋 (吉良さん)
自由の女神 (フランスから米国への寄贈) 、ギターからフランス映画「禁じ
られた遊び」 (ルネ・クレマン監督、ナスシソ・イエペスのギター曲) を連想
しました。戦争で両親を亡くした孤児が愛犬の墓を作る話がでてきます。丁度
ウクライナで戦死した市民を仲間がレンガの十字架で弔っているニュースと重
なりました。
20の付け筋 (新井さん)
「大宰府天満宮」のホームページから菅原道真様のご生涯について学び、梅
の季節にはご家族とも十分な別れをせずに京都を離れたと知り、悲しくなりま
した。アートの神様でもあった道真様…。先日メトロポリタン美術館展に行き
ました。カラバッジョの「音楽家たち」を思い出し、無邪気にギターの曲でも
お聞きになれば、道真様も慰められるのではないかと、思いつきました。
皆様の俳句から、たくさんの新しい知識を得られて楽しいです。
19の付け筋 (志方さん)
草餅から梅が枝餅を連想し、大宰府天満宮 菅原道真とつなげました。道真
は当時としては、大変な知識人で、それが故他から疎まれ、流刑に処せられた
のですが、京への想いは深く、梅の季節に一層だったようです。インテリの不
遇はいつの世にも起こり得るのですね。土方稼業でよかったです。
18の付け筋 (吉良さん)
春のお菓子を家族でつくるなど、何気ない日常生活がとても貴重なものであ
ることは、戦火で失って初めて気が付くことなのでしょう。
17の付け筋 (新井さん)
小野寺様の作品に人の荒んだ心を感じました。そのような気持ちを和ませる
ものは…と、考え、単純ですが、万人にとって『花』ではないかと思いました。
引っ越した新居で片付けに追われているときに、お祝いの薔薇の花束を受け
取りました。宅配便を開けたとき、理屈抜きにリラックスするのを感じました。
(薔薇は初夏の季語なので気になりますが、受け取ったのは3月ですのでご
容赦頂ければ…)
16の付け筋 (小野寺さん)
深瀬さんの都内のマンション地震の揺れからロシアの突然の侵攻で市民のマ
ンションをミサイルで攻撃されたウクライナの恐怖を詠みました。
一人の独裁者の思惑で安寧の隣国の主権を葬りさるやり方はナチスのゲルマ
ン民族の優位を掲げてユダヤ人を掃討したヒトラーに変わりません。歴史は繰
り返します。レーニンやスターリンの過酷な殺戮の歴史を背負っているのだと
思います。これは対岸の火事ではありません。台湾有事があれば、この国にも
起こりうる事です。今こそ為政者の資質と見識が問われます。
15の付け筋 (深瀬)
落人から、現代の超高層マンションに一人暮らしの老人に転じました。最近
は免震装置によってあまり揺れないのでしょうか。
14の付け筋 (豊さん)
N H Kの大河ドラマ「鎌倉殿の13人」が注目されているようです。瀬戸内海
壇ノ浦で平家は滅びました。生き残った人々は落人となって各地へ逃れます。
雪山を越えて。
13の付け筋 (志方さん)
横浜開港の千年前に、瀬戸内海は海運の要所であり、下津井港も当時は相当
賑わっていたのですが、瀬戸大橋建設の頃は寂れた漁港で、当時の面影はない
のですが、背後に控える鷲羽山から、黄昏の瀬戸の夕凪と鏡面のような水面に
映る朧月は千年の時空を超えて、変わらぬ情景を偲べるものとおもいを巡らし
詠んでみました。
12の付け筋 (新井さん)
吉良様の句の浮世絵を拝見しました。王子での名物のようで、ゴッホを彷彿
とさせる幻想的な浮世絵でした。浮世絵といえば横浜浮世絵の粋のいい鮮やか
さが思い浮かびます。開港祭りで、女性たちが横浜浮世絵に出てくるような原
色の衣装をまとって、喜びの掛け声をかける光景を描きました。
注。これだと思います。深瀬
歌川広重 –王子装束ゑの木大晦日の狐火(廣重名所江戸百景新印刷)
https://600dpi.net/utagawa-hiroshige-0002612/
11の付け筋 (吉良さん)
深海は発光動物が生息する暗黒の世界です。その様は「その昔、狐が大みそ
かに榎木の下に集い、狐火をともしながら稲荷神社に詣でた」との広重の浮世
絵を彷彿とさせます。
10の付け筋 (新井さん)
小野寺さんの句に若者を応援するすがすがしさや力強さを感じ取りました。
自分の経験ですが、20代の時にモスクワに研修に行った友達に応援の手紙を
送ったんです。帰国後に「二通送ったと書いてあったけど一通はどこかにいっ
た」と言われました。全然わからない政情不安さを感じ、せっかく書いた手紙
が風に乗ってどこかへ行ってしまったイメージを抱きました…。
09の付け筋 (小野寺さん)
志方さんの漂泊の旅人の心情に接して共感する事大ですが、最近厳しい世界
情勢の中でこれから、ウクライナ方面の任地に赴く若者の初めての駐在にでる
心意気を感じ、まだまだ日本の若者も捨てたものではないと、応援する気持ち
になりました。我々もそうでしたから。。
08の付け筋 (志方さん)
我が道を行く漂泊の旅人といえば、寅さんと山頭火ですかね。風に聞いて、
あてもなく彷徨う自由人、そんな映像を思い浮かべました。
07の付け筋 (豊さん)
人間の暮らしの句が続いたので、場面を変えてみました。雁は整然と列をな
して群れて飛んできますが、中には孤立を恐れず群れから離れて飛びたいと思
う自立志向、 自由志向の雁もいることでしょう。人間社会でもそれは同じです。
06の付け筋 (吉良さん)
月明りの窓辺で、酒好きなミニマリストは物に囚われない自由な仙人のよう
な生活を夢みています。
05の付け筋 (深瀬)
身辺整理とか断捨離とか気になっていますが、ミニマリスト (衣食住につい
て必要最小限の物で生活をするライフスタイルを実践している人) の生活にや
や憧れたりしています。
04の付け筋 (小野寺さん)
深瀬さんの典座のたくわん吟味から昨今の世の中グルメ騒ぎの風潮の中で玄
米と梅干し荒巻シャケの質素な食事の積み重ねで来たる3.11の故郷鎮魂の為に
絵を描く100 歳の母は、飽食の世の中を独りで糺す姿勢もあるような気がしま
す。
03の付け筋 (深瀬)
典座 (てんぞ。禅寺の料理を担当する僧侶) が、定番のたくあんの味を吟味
している様子を詠みました。
"第三は、発句、脇句と詠み継がれた挨拶の歌が終了し、本格的な歌遊びに
入って行くきっかけとなる句" ですが、はたして適当でしょうか。
http://haiku-shin.blogspot.com/2014/09/blog-post_26.html
02の付け筋 (豊さん)
発句の銀杏と冬の季節を織り込みました。京料理では茶碗蒸しが出てきます。
茶碗蒸しの具とし忘れてはならないのがぎんなん。ご存じ、銀杏の実です。
深瀬 (事務方)
・補足 適宜、下記を参照いただければ幸いです。
七句会第8 回自由連句の要領
http://nanaku-haiku.blogspot.com/2022/02/8.html