七句会のみなさま
第四十五回の選句結果を踏まえて、感想や自句自解、等をお寄せいただき、
たいへんありがとうございました。
およせいただいたものを、作品集とともに、名前順に、ほぼそのまままとめ
てお届けします。
今後のやり方に、ご意見、等ありましたら、よろしくお願いします。
七句会のweb http://nanaku-haiku.blogspot.jp/ にも掲載してあります。
今後とも、よろしくお願いいたします。
追加、等がありましたら、再編集してお届けします。
深瀬 (事務方)
1.第45回 ネット句会 作品集
(01) 桜子さん
・三陸の荒波越えた鯖弁当
・秋桜と背比べごっこの女の子
・赤とんぼ石畳に舞うひらひらと
・茂原の神竜巻退治の力持ち
・球磨川の紅葉に映える蒼の水
・丹波山清いしずくの流々と
(02) 小野寺さん
・曼珠沙華百万億土が読経して
・朝陽受け肩で息つく秋の蝶
・赤とんぼ茜の空を透いて飛び
・霧ふかし野に待ち人か女郎花 (おみなえし)
・霧流る湖水に紅き烏瓜
・風止みて闇夜のしじま虫時雨
・紅ひけば祇園の太鼓夜の顔
・月の夜にまぎれしひとを想ひけり
・一燈を灯して祖父に栗の飯
・漆黒の闇ふるわせて虫時雨
・月明かり侘助待つや京の宿
・朽ち果てし墓標に紅き寒椿
・百舌鳥鳴きて山里は火を灯しゆき
・野分け荒れ蟷螂窓にへばりつき
・カナカナの哭きうつりゆき茜雲
・墓洗い無言の父と語らひし
・別嬪に似顔絵描くや夜店の灯
・秋祭り樟脳舟に子らはしゃぎ
・ジンタ聴き赤き兵児帯秋祭り
・流燈は月の光をのぼりゆき
・雁が鳴く我が葬送に悔いなきや
(03) 吉良さん
九州大分県の父の郷里を旅して (8 句)
・秋の風老婆の背おす城下町
・秋日差す山道喘ぎ墓参り
・落ち葉分け先祖の墓石名をたどる
・石仏の笑み暖かし秋の宿
・夕がすみ刈田見守る石地蔵
・すすき野や世の憂い去り風渡る
・囲炉裏火に椎茸香る田舎飯
・蠣小屋の炭火に煙る笑顔の輪
(04) 桑子さん
・朝イチのボール消え行く霧の中
・九月尽ゴーヤ実はなり秋は来ぬ
・秋の宵二合までよと山の神
・十時には皆就寝す十三夜
・秋晴や出だしボギーにまあいいか
(05) 志方さん
・夕陽浴び柿朱朱 (あかあか) と風誘う
・春潮や島影縫って流れゆく
・風出でて穂波が揺らぐ野の秋や
・野沢菜の凍てつく束は酒の友
・サングラス喜寿のタモリは自然体
・酔い醒めに岩風呂浸かり銀の河
・朝霧が木立を縫って立ち消える
(06) 治部さん
・青苔の朝やはらりと紅葉かな
・冠雪の駒足元の枯れる芝
・秋旅やうまし呼子の生き造り
・阿蘇の秋パネルで季節失せにけり
・柿食うは熊も野猿も命がけ
(07) 中津川さん
・新蕎麦や名湯もあり道の駅
・諏訪4社御柱立つ秋の杜
・秋深しレジ横つまみ値上げまた
・トラファンや枝豆つまみ「アレ」を待つ
・信濃路は無人スタンド「林檎あり」
・コスモスや人影伸びて無人駅
・ドングリやパチパチパチと靴の下
(08) 橋本さん
・団栗の小川にポットリどじょう待つ
・香り来て思わず探す金木犀
実家から届いた新米で2 句
・炊きたての新米こそのつやと味
・新米に秋刀魚の夕餉天高し
気候変動 (温暖化) の海への影響を2 句
・一歩先漁に異変の続く海
・鰤 (ぶり) 来たり秋刀魚鮭去る北の海
・葉を落とし柿の木全部つるし柿
(09) 服部さん
・九月尽小さい秋も見つけれず
・空たかしラジコン一機宙返り
・銀杏の実迷惑そうに落ちており
・楽しみの柚子色づいてジャム作り
・世紀末日傘半そで霜月に
(10) 豊さん
・秋冷や大仏様も咳をする
・温暖化強まる地球秋出水
・遠山に初冠雪の便りかな
・冬近し里に出没親子熊
・菊花展外国人がカメラ向け
・秋の日や線香香る一周忌
・庭掃除短き秋を惜しみけり
(11) 深瀬
・老いゆえの一歩一歩の秋の坂
・散歩道来し方想う老いの秋
・パソコンの取り替えのたり老いの秋
・空爆の廃墟写真埋む秋紙面
・秋雨に奥羽の空の暗きかな
・グラフ見て食欲の秋言い訳に
・高速の秋のドライブ爽快さ
・古代史を読みふけ目上ぐ秋の暮れ
・レコード聞きたばこくゆらす父の秋
・散歩して風の身にしむ早き秋
・散歩道お好み焼き屋に秋気配
・あたふたと過ぎ行く時や秋の暮れ
・秋の日に偉ぶる人に口ふたぐ
・コンビニに好みのパンあり秋の幸
・太ももの輝きを増す秋のミニ
・店頭にポルシェ居並び落ち葉踏む
・冬支度奥羽の里に思い馳せ
・栗ごはん古代の人の身近さや
・仏壇にすすきを飾りりんの音
・文化の日模擬店コーヒー老い集い
・老い集い古き曲聴く秋日和
・老い自覚席をゆずられ秋日和
・人生の矛盾を自問秋の暮れ
・中国の残留孤児に赤とんぼ
・赤とんぼ波とたわむる群れひとつ
・赤とんぼ西方浄土の使者のごと
・まどろみの幻視に乱舞赤とんぽ
2.第45回 ネット句会 感想と自句自解
◎ 小野寺さんの自句自解、感想
4点句
(045) 月の夜にまぎれし人を想ひけり
治部さんと平島さんの説明のままです。月が綺麗だった静かな夜とうとう別
れる日が来た。月光の中を後ろも振り向かずに人混みの中に消えてしまった愛
しい人。和服の似合う清楚で細身の佳人だったなぁ。残された狂おしい喪失感
を、月の夜にまぎれてしまったとしか、適切な言葉は無かったのです。遠く過
ぎた日の断腸の記憶です。
(053) 秋祭り樟脳舟に子らはしゃぎ
樟脳舟は今時の子供達ではありません。高価な物など無い質素な田舎の暮ら
しに洗面器の中をセルロイド板で切り抜いた舟がくるくる周る興奮は宮澤さん
のご指摘どおりはしゃぐ子供達より、親の喜びだった様にも思います。虫除け
の樟脳のひとかけらから溢れる喜びは鮮やかな記憶となり、秋祭りの日の豊か
な思い出となりました。
(104) 朽ち果てし墓標に紅き寒椿
平島さんの感想の通りです。村の人達は皆都会に出ていってしまい、お墓の
守りをする人も居なくなり、寂れゆくのみの山里、しかし自然は休みなく営み
を続け今年も朽ち果てた墓標に、真っ赤な寒椿が咲いてをりました。祖父の育
った岩手県一関市、松川村の寂れた山寺を訪ねた折の記憶は風化しないのです。
2点句
(010) 流燈は月の光をのぼりゆき
精霊流しの燈籠は月明かりのなかでまるで暗い川の先を月の光を登っていく
様な錯覚がありました。さだまさしの精霊流しが下敷きにありました。
(022) 墓洗い無言の父と語りけり
吉良さんの感想通り。20年を海外駐在で過ごしたとはいえ生前の父とあまり
打ち解けて話した記憶がなくどうして、もっと話してあげなかったろうと悔悟
の念に誘われます。満州の極寒の地で祖母の死を聞き号泣したという父は優し
い人でした。墓参の折に墓を洗い感謝を語りかけるのですが、、、
(025) 漆黒の闇ふるわせて虫時雨
深く暗い闇の中其処彼処で鳴く虫の声はやがて一面の虫時雨となりまるで闇
を震わせて鳴いているかの様でした。虫時雨は心が落ち着いていく安堵の音で
した。
(072) 紅ひけば祇園の太鼓夜の顔
中津川さん深瀬さんのご賛同を頂きました。締め切りの5-6 日前から、記憶
の種引き出しを手繰ると季節に関係なく夏の祇園太鼓の響きが紅の赤と共に鮮
烈な記憶として心の鼓動を共鳴させたのです。遠い記憶でありながら、、、
(078) 朝陽受け肩で息つく秋の蝶
凄いなー。治部さん、宮澤さんの感想。季節はもう終わりなのに 必死にも
がいて生きようとする、秋の蝶はまるで肩で息継ぎをしてる様でもあり、もう
そんなにがんばらなくてもいいよ、と言いたい気持ちになり老いてゆく自分の
今に重ねてもみるのです。
(085) 一燈を灯して祖父に栗の飯
治部さん深瀬さんの感想ありがたいなあ。燈明を灯して祖父の霊前に坐り祖
父の大好きだった栗ご飯をお供えすれば祖父文之進の慈愛に触れた気持ちにな
ります。今の自分は祖父母やご先祖の薫陶の賜物と襟を律します。
(090) 風止みて闇夜のしじま虫時雨
吉良さん橋本さん 感想の通りです。不思議な事に風が止むと今まで以上に
虫の鳴き声が響きそれは一瞬絶対的な静寂に包まれる錯覚にとらわれます。虫
時雨は静寂に変わるのです。秋の真っ只中に居る事を感じる瞬間です。
1 点句
(056) 百舌鳥鳴きて山里は火を灯しゆき
桑子さんの感想の通り。晩秋の寒い日に百舌鳥が鋭く高い声で鳴くと家々に
ポツポツと火が灯りだし暮れてゆく山里の初冬を迎える光景が流れてゆきます。
(083) 雁が鳴く我が葬送に悔いなきや
吉良さんの感想ありがとうございます。渡り鳥の雁が故郷に帰ってゆく鳴き
声に送られて自分の葬送に対峙して悔いの無い人生であっただろうか?。と自
問しているのですが。細い一筋の峻険な断崖を辛うじて乗り越えて来たのだと
言う、自負も少しはあります。過ぎてきた自分を肯定しなければ先へは進めな
いからです。
感想
ドタバタでギリギリ締め切りの5-6 日前に記憶の引き出しから感激した事象
を21句紡ぎ出しました。そのうち半数以上が皆様の賛同を得て感想を頂きまし
た事は望外の喜びで感謝に耐えません。投句した俳句が人様の心に響き共鳴と
共感を得るとしたらこれ程素晴らしい励みはありません。殊に102 歳になる母
が声をだして詠んでくれる喜びの言葉は、父に対する悔恨の念をいくらかでも
癒してくれるよすがになります。
◎ 橋本さんの自句自解
(009) 香り来て思わず探す金木犀 (4点句)
何処にいてもこの独特の香りがすると、在処を探してみたくなるものです。
選んで頂いた方々も同様ですね。
(031) 新米に秋刀魚の夕餉天高し (2点句)
日本の秋を代表する伝統 (?) 食を、季語3連発ですっきりと詠んでみまし
た。
(030) 炊きたての新米こそのつやと味 (1点句)
実家 (鹿沼市) の長兄から毎秋地元産の新玄米 (コシヒカリ) を送ってきま
す。早速近くの無人精米機で白米にして炊きあげた新米は、スーパーで買うい
つもの白米とは、艶と味が違います。今年は特にその差を感じました。
(074) 葉を落とし柿の木全部つるし柿 (1点句)
散歩道から結構大きな柿の木が見えます。葉を落とし、熟したたくさん実が
枝に垂れ下がり( たわわに実り)、全てがつるし柿のように見えました。
◎ 豊さんの自句自解
(001) 冬近し里に出没親子熊
今年は人間が熊に襲われる事件が多発しています。それを句にしたのですが
、直接的すぎたようです。
(054) 秋冷や大仏様も咳をする
大仏様も咳をするほどインフルエンザが流行しているのです。
(064) 庭掃除短き秋を惜しみけり
ここ数年、日本の四季がなくなっています。季語の意味も薄れていくのでは
ないでしょうか。
(061) 菊花展外国人がカメラ向け
菊花展は日本の文化の一つです。外国人観光客が興味を示していました。
(089) 秋の日や線香香る一周忌
一年前に亡くなった人を偲ぶ思いを詠んだのですが、当たり前すぎました。
(069) 温暖化強まる地球秋出水
今年は世界の至る所で洪水が発生しました。地球温暖化の影響はますます広
がるでしょう。
(100) 遠山に初冠雪の便りかな
「遠山に」を「北国に」としたほうがイメージが具体的になったかもしれま
せん。
◎ 深瀬の自句自解
・老いゆえの一歩一歩の秋の坂
自宅の横の急な坂道をのぼるのが、歳とともにきつくなってきました。
・散歩道来し方想う老いの秋 (3点句)
散歩をしていて、ふとこれまで生きてきたことの意味とか思います。
・パソコンの取り替えのたり老いの秋
この歳になってPCの切り替えはかなり苦痛です。次はどうなるのでしょう。
・空爆の廃墟写真埋む秋紙面
ウクライナとかガザの爆撃による廃墟写真を日常的に見ます。人間の知恵と
はなんなのでしょうか。
・秋雨に奥羽の空の暗きかな (2点句)
父母の実家のある奥羽地方は冬に入ると黒くて厚い雲に覆われます。
・グラフ見て食欲の秋言い訳に
体重のグラフが右肩あがりだとかなり気になります。
・高速の秋のドライブ爽快さ
秋のさわやかな自然をみていると地球の景観の美しさに驚きます。
・古代史を読みふけ目上ぐ秋の暮れ
引退の身には、アフリカを出立したホモサピエンスとか日本列島にたどり着
いた縄文人とかに思いを馳せるのもよいと思います。
・レコード聞きたばこくゆらす父の秋
親父は若いころから、結構、格好つけるタイプだったと思います。
・散歩して風の身にしむ早き秋
昨日まで夏のような暑さだったのが、風の冷たさに驚きます。
・散歩道お好み焼き屋に秋気配
街中の坂道の途中のお好み焼き屋さんがなにかしっくりきました。
・あたふたと過ぎ行く時や秋の暮れ
現役サラリーマンのころに比較すると日常は様変わりですが、それでもけっ
こうばたばたしている感じです。
・秋の日に偉ぶる人に口ふたぐ
ふだんから偉ぶることが身についてしまっている人がいますが、それがたの
しいのでしょうか。
・コンビニに好みのパンあり秋の幸
最近、セブンイレブンの菓子パンのおいしさに引き込まれています。
・太ももの輝きを増す秋のミニ (3点句)
夏のミニより秋のミニの方が新鮮で大胆な感じがしました。
・店頭にポルシェ居並び落ち葉踏む
散歩道沿いにポルシェの販売店があり、前には街路樹が植わっています。街
路樹を薬剤で枯らして撤去してしまったという事件もありました。
・冬支度奥羽の里に思い馳せ
独身の従兄弟は毎年、冬を前に誰も住まない実家の雪囲いをしにいきます。
・栗ごはん古代の人の身近さや
縄文時代には、栗が大切な食糧だったと聞きました。
・仏壇にすすきを飾りりんの音
仏壇には棒でたたくとちーんと音がするおりんがありました。亡くなった人
に向き合うこころの準備なのでしょうか。
・文化の日模擬店コーヒー老い集い
目黒区のボランティアの一環でコーヒー同好会というのに参加していますが
、中目黒駅前の福祉まつりはかなりの賑わいでした。
・老い集い古き曲聴く秋日和
目黒区のボランティアの一環で音楽を聴く会に参加しています。一曲聞いて
手をたたいて喜び合うというのもいいものだと思います。
・老い自覚席をゆずられ秋日和
わたしの前でシルバーシートに座っていた若者があわてて席を立って離れて
いきました。
・人生の矛盾を自問秋の暮れ (2点句)
身の回りには、自分では矛盾とは思っていなくても、他者には矛盾と受け止
められることがたくさんあるようです。
・中国の残留孤児に赤とんぼ
中国の残留孤児が、自分が日本人だと言える根拠は、母親の背中で聞かされ
た赤とんぼの歌を歌えることだという話を聞いて戦争の悲惨を思いました。
・赤とんぼ波とたわむる群れひとつ
日本の赤とんぼの赤色は、外国のものに比べるとかなり濃いと聞いたことが
あります。紅葉と同じなのでしょうか。
・赤とんぼ西方浄土の使者のごと (3点句)
・まどろみの幻視に乱舞赤とんぽ
夕陽に輝く夕空に舞う赤とんぼはなにか幻想的な感じもします。
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