七句会 第43回句会 選者各位の選句結果 (句の作者名付き)
○ 秋元さん選
(006) 行く春を惜しむ間もなし温暖化 橋本 05
(060) 若き日の果てなき春眠なつかしむ 深瀬 01
(080) かきあげし髪に菖蒲湯香ほりけり。 小野寺06
(085) 春炬燵うつらうつらの向かい合い 桑子 01
(090) 引き波の跡鮮やかに桜貝 小野寺17
(097) 街花壇つつじの花の咲き誇り 深瀬 21
(098) 緑なす風さえ染める青紅葉 志方 03
○ 桜子さん選
(020) 菜の花の沖の黒潮雲を呼び 小野寺19
瀬戸大橋の風景を思い浮かべました。神がかりの豪快な感じが出ています。
※話はそれますが、職場では「快速マリンライナーには一度乗っておくべき
だ」と話題になっています。
(023) こげうましタケノコ飯や香も馳走 中津川05
おいしい時の満足感でいっぱいです
(036) 五月晴れひとり聞き入るジャズ喫茶 深瀬 17
独特の小粋な雰囲気が出ています
(045) 筍の群れて顔だすリズム感 深瀬 07
リズムが本当に感じられます
(054) 紫陽花の青滴りて古都は雨 小野寺07
雨の日の鎌倉明月院を思い浮かべました。古都の情緒たっぷりです
(066) 新緑やつつじの絨毯引き立てり 橋本 06
『つつじの絨毯』がいいですね
(091) 綿菓子やふわり膨らむ春の雲 豊 02
空をご覧になりながら思い浮かべたのかと思いますが、素朴で素敵な表現で
す。
○ 小野寺さん選
(002) 母逝きぬ五月の木々に見送られ 深瀬 08
多分大往生だったと思われますが青葉繁る中での最愛の母上への哀惜の念が
現れてます。
(010) 新緑の谷より清き風生まる 豊 05
清き風生まる、とはジブリの風の谷のナウシカを想起します。
(019) 弘前城堀うめ尽くす花筏 服部 05
弘前城の見事な満開の桜より花筏となって佇む弘前城の栄枯盛衰を感じます。
(030) 桜散る後の菜の花藤の棚 志方 07
桜が終わり、その後に続く菜の花と藤の花が花の時間の移ろいを感じさせま
す。
(037) 初燕帰ってきたよと旋回す 橋本 04
春が終わり梅雨が始まる前かに燕が帰って来たよと旋回して挨拶するのは作
者の心に余裕があるからです。
(076) 新緑の香りのなかを柩ゆく 深瀬 18
新緑の青葉の中をおくる柩の葬列は哀しみの葬送を自然の中に帰って行くの
だと己に言い聞かせている作者の切々と心情を現わしております。
(098) 緑なす風さえ染める青紅葉 志方 03
新緑のあおあおと繁る青紅葉が風さえも爽やかに染めていくとする作者の豊
かな感性を感じ入ります。
○ 吉良さん選
(003) 春風に行方定めぬ綿毛かな 豊 03
タンポポの綿毛がどこに行くともなく漂い、春ののんびりした様子が感じら
れます。
(015) 生命 (いのち) 継ぐ孫の習字に春香る 小野寺14
若い孫の勢いある字が次の世代の命を感じさせてくれて、老人の安心感を読
むことができます。
(020) 菜の花の沖の黒潮雲を呼び 小野寺19
菜の花の黄色と黒潮の紺色、雲の白の色の対比が面白い。
(027) 筍の足元の春見いつけた 桜子 09
筍ほりの場面でしょうか。楽しそうな雰囲気がでています。
(032) 風はらみお産間近の鯉のぼり 豊 06
5 月の爽やかで豊かな風を感じることができます。
(053) いとうまし花なればなり握り飯 治部 01
コロナ禍もひと段落。 桜の下で食べる握り飯がこんなに旨いと、感激した
様子が面白く感じました。
(076) 新緑の香りのなかを柩ゆく 深瀬 18
生命の誕生と生命の終焉が同時にさりげなく表現されています。
○ 桑子さん選
(004) そびえ立ち枝垂れ花散る古刹屋根 中津川02
田舎のお寺の閑散とした佇まいが目に浮かびます。枝垂れからの軽快なリズ
ムがいいです。
(021) 雛芥子に問いかけてみる初夏の風 秋元 02
アグネス・チャンの「ひなげしの花」を思い出しました。
(023) こげうましタケノコ飯や香も馳走 中津川05
たけのこご飯の美味しさをうまく伝えています。
(032) 風はらみお産間近の鯉のぼり 豊 06
「お産間近」の比喩・表現がいいです。
(064) 宵闇に寝息静まり命削ぐ 秋元 01
無呼吸症候群ですか?同病相憐れむ、共感します。
(088) 初夏や女子高生の素足伸ぶ 豊 07
(095) 旅の宿束ねし髪に合歓の花 小野寺03
合歓の花の花言葉は「胸のときめき」、想像を搔き立てられます。
○ 志方さん選
(023) こげうましタケノコ飯や香も馳走 中津川05
(028) 金婚日あと幾年の春の旅 吉良 05
(033) 雨やまず若葉に沈む山の寺 小野寺22
(038) 万緑の空高く鳴き草雲雀 (くさひばり) 小野寺09
(046) 奥津城を訪う人もなく花吹雪 小野寺11
(091) 綿菓子やふわり膨らむ春の雲 豊 02
ただこの句は綿菓子より綿帽子の方がぴったりかな
(092) 若葉萌ゆ阿修羅の瞳愁ひ帯び 小野寺20
○ 治部さん選
(003) 春風に行方定めぬ綿毛かな 豊 03
ふわりふわりと本当に春らしい光景です。行方定めぬがいいですね。
(011) 1杯と薫風よせてまた一杯 志方 05
1 杯と一杯がいいですね。心地よい酔いが・・・ 結果何杯だったのですか
ね。ヤボでした。
(019) 弘前城堀うめ尽くす花筏 服部 05
選者も行ったことがあります。水面と土手の部分まで、圧巻でした。「うめ
尽くす」に作者の感動が見えます。
(023) こげうましタケノコ飯や香も馳走 中津川05
タケノコご飯のおこげの香りはたまりません。「こげうましで」よだれです
。お見事です。
(036) 五月晴れひとり聞き入るジャズ喫茶 深瀬 17
五月晴れの明とジャズ喫茶の暗の対比がいいですね。「ひとり」には外は大
勢、内は一人、そんな対比も感じます。いい句だと思います。
(089) 春疾風池ポチャOB(オービー)4(フォー)パット 桑子 04
あるあるですね~。これ俳句にしちゃいます?ホントに風のせいですかね。
(090) 引き波の跡鮮やかに桜貝 小野寺17
光景がきれいですね。春の穏やかな砂浜の様子が見えます。なかなか遭遇し
ない光景。美しいです。
(092) 若葉萌ゆ阿修羅の瞳愁ひ帯び 小野寺20
奈良の低山の新緑と阿修羅の表情は、何だか奥が深そうです。
○ 中津川さん選
(001) 木葉木菟 (このはずく) 木々眠らせて地霊呼ぶ 小野寺04
仏法僧と鳴いています。昔訪れた鳳来寺山を想い出しました。
(028) 金婚日あと幾年の春の旅 吉良 05
毎年ご夫婦で花見旅をいているのでしょう。これからもずっと。
(041) 梅雨空に空車タクシー過ぎにけり 深瀬 14
乗れずに残念。これからはタクシーアプリのご利用を。
(045) 筍の群れて顔だすリズム感 深瀬 07
雨後の筍でしょうか、リズム感という表現がいきいきと伝えています。
(070) 蕗味噌に緑酒あおりて朋送る 小野寺18
友人を偲ぶ心情を蕗味噌が表しています。
(073) 火渡りや法衣の朱にも風光る 治部 02
「法衣の朱」が火の熱さも伝えています。
(078) 屏風絵の木蓮描くビルの窓 吉良 03
ビルの窓に映っている様子が見えてきます。
○ 橋本さん選
(023) こげうましタケノコ飯や香も馳走 中津川05
田舎で食べたタケノコご飯を思い出します、上手く表現されています。
(059) 車停めかるの子の軍団俺らが道 中津川07
都会の中の微笑ましい共存の光景ですね。
(060) 若き日の果てなき春眠なつかしむ 深瀬 01
本当にいつまでも眠れた若き日がありました。
(089) 春疾風池ポチャOB(オービー)4(フォー)パット 桑子 04
自然相手のゴルフですが、さすがにこれでは悔しいか。
(090) 引き波の跡鮮やかに桜貝 小野寺17
きれいな句です。
(098) 緑なす風さえ染める青紅葉 志方 03
万緑の中、青紅葉は風さえも染めている様に見えたのですね。
○ 服部さん選
(003) 春風に行方定めぬ綿毛かな 豊 03
(014) 春眠に少しあやかる老いの朝 深瀬 02
(023) こげうましタケノコ飯や香も馳走 中津川05
(052) 春が行くもの憂き想い残しつつ 豊 01
(062) 散る桜憂き世の全て眺め来し 小野寺21
(089) 春疾風池ポチャOB(オービー)4(フォー)パット 桑子 04
(092) 若葉萌ゆ阿修羅の瞳愁ひ帯び 小野寺20
○ 平島さん選
(008) 水ぬるみ池面に映ず若葉かな 志方 01
透明な鏡の様な青い水面に浮かぶ若緑の初々しい葉。色彩が綺麗です。
(017) 満開の常磐満作(トキワマンサク) 花の雪 橋本 03
満開、満作の畳み掛けが目と耳に心地良く。
(024) 輝きに神妙混ざる木の芽かな 深瀬 05
春の訪れが嬉しいがそれにしても不可思議な形、色、匂いだなあ。神妙が絶
妙です。
(028) 金婚日あと幾年の春の旅 吉良 05
色々あったけどもう少しで50年もか。人生も旅そのものだが春の旅は青春時
代を思い出すなあ。
(046) 奥津城を訪う人もなく花吹雪 小野寺11
田舎はいよいよ過疎が進みひと気が無くなって寂しいが自然は巡り春は訪れ
て桜は花を咲かせ盛大に散らせて過ぎ去って行く。静と動。
(084) 初蝶がとまりて牡丹沈みけり 小野寺13
季語が重なっていますが、軽い蝶に沈む牡丹というのが目新しく目の付け所
に感心しています。
(090) 引き波の跡鮮やかに桜貝 小野寺17
遠望には青い海原眼を落とせば沖へと引き返す白い波更に近間を見れば美し
い桜色の貝。青白ピンク色の配置が美しいなあ。
○ 宮澤さん選
(003) 春風に行方定めぬ綿毛かな 豊 03
(029) 花冷えの曇天低く燕翔び 小野寺10
(041) 梅雨空に空車タクシー過ぎにけり 深瀬 14
(054) 紫陽花の青滴りて古都は雨 小野寺07
(079) 照り返すビルの光や夏来る 豊 04
(080) かきあげし髪に菖蒲湯香ほりけり。 小野寺06
○ 柳町さん選
(038) 万緑の空高く鳴き草雲雀 (くさひばり) 小野寺09
(043) 雲走る車窓に夏は過ぎさりぬ 小野寺01
(050) 仏法僧祖霊まします森で哭き 小野寺05
(068) 染まりゆく深山幽谷早緑に 志方 04
(076) 新緑の香りのなかを柩ゆく 深瀬 18
(084) 初蝶がとまりて牡丹沈みけり 小野寺13
(095) 旅の宿束ねし髪に合歓の花 小野寺03
○ 豊さん選
(015) 生命 (いのち) 継ぐ孫の習字に春香る 小野寺14
孫の習字の文字に力強さを感じて、自分の命がつながってゆく嬉しさ。作者
の気持ちが伝わってきます。
(046) 奥津城を訪う人もなく花吹雪 小野寺11
奥津城とは神道の墓のこと。お寺の墓とは違った趣で、花吹雪とうまく調和
しています。
(054) 紫陽花の青滴りて古都は雨 小野寺07
言葉の並べ方がうまいですね。雨に濡れた紫陽花の美しいイメージが光って
います。
(061) 満開のまさに満開の桜かな 服部 01
「満開」を二度重ねた。それだけ作者が桜に感動しているということです。
その正直さがいいですね。
(080) かきあげし髪に菖蒲湯香ほりけり。 小野寺06
菖蒲湯につかり、髪を洗い終えた女性の艶やかな姿が季節感を出しています。
(085) 春炬燵うつらうつらの向かい合い 桑子 01
老夫婦でしょうか。春ののんびりした炬燵でうつらうつら。平和ですね。
(090) 引き波の跡鮮やかに桜貝 小野寺17
寄せてきた波が運んできた桜貝が、波が引いた浜辺に残された。ロマンチ
ックな夢があります。
○ 深瀬選
(007) 汐の香にリアスの海辺花筏 小野寺16
津波被害からの復興も進み、穏やかな風景を感じます。
(023) こげうましタケノコ飯や香も馳走 中津川05
実感がリアルに伝わってきます。
(040) 湯呑手に届く新茶の香を想う 中津川06
お茶好きのわくわくした気持ちが伝わってきます。
(049) 君子ラン満開映える金婚日 吉良 04
子供さんらが送ってくれたのでしょう。幸福感がいっぱいです。
(078) 屏風絵の木蓮描くビルの窓 吉良 03
木蓮がビルの窓に映っているのを屏風絵に見立てるのはおもしろい。
(090) 引き波の跡鮮やかに桜貝 小野寺17
潮の引いた砂浜に桜貝が光っている光景が目に浮かびます。
(092) 若葉萌ゆ阿修羅の瞳愁ひ帯び 小野寺20
阿修羅像のある奈良は新緑に溢れていますが、単純には喜べないなにかがあ
るのでしょう。
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