2023年12月27日水曜日

七句会 第45回 ネット句会 感想、自句自解

  七句会のみなさま


 第四十五回の選句結果を踏まえて、感想や自句自解、等をお寄せいただき、

たいへんありがとうございました。

 およせいただいたものを、作品集とともに、名前順に、ほぼそのまままとめ

てお届けします。

 今後のやり方に、ご意見、等ありましたら、よろしくお願いします。

 七句会のweb  http://nanaku-haiku.blogspot.jp/ にも掲載してあります。

  今後とも、よろしくお願いいたします。

  追加、等がありましたら、再編集してお届けします。

  深瀬 (事務方) 



1.第45回  ネット句会  作品集


(01) 桜子さん

・三陸の荒波越えた鯖弁当

・秋桜と背比べごっこの女の子

・赤とんぼ石畳に舞うひらひらと

・茂原の神竜巻退治の力持ち

・球磨川の紅葉に映える蒼の水

・丹波山清いしずくの流々と


(02) 小野寺さん

・曼珠沙華百万億土が読経して

・朝陽受け肩で息つく秋の蝶

・赤とんぼ茜の空を透いて飛び

・霧ふかし野に待ち人か女郎花 (おみなえし) 

・霧流る湖水に紅き烏瓜

・風止みて闇夜のしじま虫時雨

・紅ひけば祇園の太鼓夜の顔

・月の夜にまぎれしひとを想ひけり

・一燈を灯して祖父に栗の飯

・漆黒の闇ふるわせて虫時雨

・月明かり侘助待つや京の宿

・朽ち果てし墓標に紅き寒椿

・百舌鳥鳴きて山里は火を灯しゆき

・野分け荒れ蟷螂窓にへばりつき

・カナカナの哭きうつりゆき茜雲

・墓洗い無言の父と語らひし

・別嬪に似顔絵描くや夜店の灯

・秋祭り樟脳舟に子らはしゃぎ

・ジンタ聴き赤き兵児帯秋祭り

・流燈は月の光をのぼりゆき

・雁が鳴く我が葬送に悔いなきや


(03) 吉良さん

 九州大分県の父の郷里を旅して (8 句) 

・秋の風老婆の背おす城下町

・秋日差す山道喘ぎ墓参り

・落ち葉分け先祖の墓石名をたどる

・石仏の笑み暖かし秋の宿

・夕がすみ刈田見守る石地蔵

・すすき野や世の憂い去り風渡る

・囲炉裏火に椎茸香る田舎飯

・蠣小屋の炭火に煙る笑顔の輪


(04) 桑子さん

・朝イチのボール消え行く霧の中

・九月尽ゴーヤ実はなり秋は来ぬ

・秋の宵二合までよと山の神

・十時には皆就寝す十三夜

・秋晴や出だしボギーにまあいいか


(05) 志方さん

・夕陽浴び柿朱朱 (あかあか) と風誘う

・春潮や島影縫って流れゆく

・風出でて穂波が揺らぐ野の秋や

・野沢菜の凍てつく束は酒の友

・サングラス喜寿のタモリは自然体

・酔い醒めに岩風呂浸かり銀の河

・朝霧が木立を縫って立ち消える


(06) 治部さん

・青苔の朝やはらりと紅葉かな

・冠雪の駒足元の枯れる芝

・秋旅やうまし呼子の生き造り

・阿蘇の秋パネルで季節失せにけり

・柿食うは熊も野猿も命がけ


(07) 中津川さん

・新蕎麦や名湯もあり道の駅

・諏訪4社御柱立つ秋の杜

・秋深しレジ横つまみ値上げまた

・トラファンや枝豆つまみ「アレ」を待つ

・信濃路は無人スタンド「林檎あり」

・コスモスや人影伸びて無人駅

・ドングリやパチパチパチと靴の下


(08) 橋本さん

・団栗の小川にポットリどじょう待つ

・香り来て思わず探す金木犀

 実家から届いた新米で2 句

・炊きたての新米こそのつやと味

・新米に秋刀魚の夕餉天高し

 気候変動 (温暖化) の海への影響を2 句

・一歩先漁に異変の続く海

・鰤 (ぶり) 来たり秋刀魚鮭去る北の海

・葉を落とし柿の木全部つるし柿


(09) 服部さん

・九月尽小さい秋も見つけれず

・空たかしラジコン一機宙返り

・銀杏の実迷惑そうに落ちており

・楽しみの柚子色づいてジャム作り

・世紀末日傘半そで霜月に                   


(10) 豊さん

・秋冷や大仏様も咳をする

・温暖化強まる地球秋出水

・遠山に初冠雪の便りかな

・冬近し里に出没親子熊

・菊花展外国人がカメラ向け

・秋の日や線香香る一周忌

・庭掃除短き秋を惜しみけり


(11) 深瀬

・老いゆえの一歩一歩の秋の坂

・散歩道来し方想う老いの秋

・パソコンの取り替えのたり老いの秋

・空爆の廃墟写真埋む秋紙面

・秋雨に奥羽の空の暗きかな

・グラフ見て食欲の秋言い訳に

・高速の秋のドライブ爽快さ

・古代史を読みふけ目上ぐ秋の暮れ

・レコード聞きたばこくゆらす父の秋

・散歩して風の身にしむ早き秋

・散歩道お好み焼き屋に秋気配

・あたふたと過ぎ行く時や秋の暮れ

・秋の日に偉ぶる人に口ふたぐ

・コンビニに好みのパンあり秋の幸

・太ももの輝きを増す秋のミニ

・店頭にポルシェ居並び落ち葉踏む

・冬支度奥羽の里に思い馳せ

・栗ごはん古代の人の身近さや

・仏壇にすすきを飾りりんの音

・文化の日模擬店コーヒー老い集い

・老い集い古き曲聴く秋日和

・老い自覚席をゆずられ秋日和

・人生の矛盾を自問秋の暮れ

・中国の残留孤児に赤とんぼ

・赤とんぼ波とたわむる群れひとつ

・赤とんぼ西方浄土の使者のごと

・まどろみの幻視に乱舞赤とんぽ



2.第45回  ネット句会  感想と自句自解


◎  小野寺さんの自句自解、感想


4点句


(045) 月の夜にまぎれし人を想ひけり

 治部さんと平島さんの説明のままです。月が綺麗だった静かな夜とうとう別

れる日が来た。月光の中を後ろも振り向かずに人混みの中に消えてしまった愛

しい人。和服の似合う清楚で細身の佳人だったなぁ。残された狂おしい喪失感

を、月の夜にまぎれてしまったとしか、適切な言葉は無かったのです。遠く過

ぎた日の断腸の記憶です。


(053) 秋祭り樟脳舟に子らはしゃぎ

 樟脳舟は今時の子供達ではありません。高価な物など無い質素な田舎の暮ら

しに洗面器の中をセルロイド板で切り抜いた舟がくるくる周る興奮は宮澤さん

のご指摘どおりはしゃぐ子供達より、親の喜びだった様にも思います。虫除け

の樟脳のひとかけらから溢れる喜びは鮮やかな記憶となり、秋祭りの日の豊か

な思い出となりました。


(104) 朽ち果てし墓標に紅き寒椿

 平島さんの感想の通りです。村の人達は皆都会に出ていってしまい、お墓の

守りをする人も居なくなり、寂れゆくのみの山里、しかし自然は休みなく営み

を続け今年も朽ち果てた墓標に、真っ赤な寒椿が咲いてをりました。祖父の育

った岩手県一関市、松川村の寂れた山寺を訪ねた折の記憶は風化しないのです。


2点句


(010) 流燈は月の光をのぼりゆき

 精霊流しの燈籠は月明かりのなかでまるで暗い川の先を月の光を登っていく

様な錯覚がありました。さだまさしの精霊流しが下敷きにありました。


(022) 墓洗い無言の父と語りけり

 吉良さんの感想通り。20年を海外駐在で過ごしたとはいえ生前の父とあまり

打ち解けて話した記憶がなくどうして、もっと話してあげなかったろうと悔悟

の念に誘われます。満州の極寒の地で祖母の死を聞き号泣したという父は優し

い人でした。墓参の折に墓を洗い感謝を語りかけるのですが、、、


(025) 漆黒の闇ふるわせて虫時雨

 深く暗い闇の中其処彼処で鳴く虫の声はやがて一面の虫時雨となりまるで闇

を震わせて鳴いているかの様でした。虫時雨は心が落ち着いていく安堵の音で

した。


(072) 紅ひけば祇園の太鼓夜の顔

  中津川さん深瀬さんのご賛同を頂きました。締め切りの5-6 日前から、記憶

の種引き出しを手繰ると季節に関係なく夏の祇園太鼓の響きが紅の赤と共に鮮

烈な記憶として心の鼓動を共鳴させたのです。遠い記憶でありながら、、、


(078) 朝陽受け肩で息つく秋の蝶

 凄いなー。治部さん、宮澤さんの感想。季節はもう終わりなのに 必死にも

がいて生きようとする、秋の蝶はまるで肩で息継ぎをしてる様でもあり、もう

そんなにがんばらなくてもいいよ、と言いたい気持ちになり老いてゆく自分の

今に重ねてもみるのです。


(085) 一燈を灯して祖父に栗の飯

 治部さん深瀬さんの感想ありがたいなあ。燈明を灯して祖父の霊前に坐り祖

父の大好きだった栗ご飯をお供えすれば祖父文之進の慈愛に触れた気持ちにな

ります。今の自分は祖父母やご先祖の薫陶の賜物と襟を律します。


(090) 風止みて闇夜のしじま虫時雨

 吉良さん橋本さん  感想の通りです。不思議な事に風が止むと今まで以上に

虫の鳴き声が響きそれは一瞬絶対的な静寂に包まれる錯覚にとらわれます。虫

時雨は静寂に変わるのです。秋の真っ只中に居る事を感じる瞬間です。


1 点句


(056) 百舌鳥鳴きて山里は火を灯しゆき

  桑子さんの感想の通り。晩秋の寒い日に百舌鳥が鋭く高い声で鳴くと家々に

ポツポツと火が灯りだし暮れてゆく山里の初冬を迎える光景が流れてゆきます。


(083) 雁が鳴く我が葬送に悔いなきや

 吉良さんの感想ありがとうございます。渡り鳥の雁が故郷に帰ってゆく鳴き

声に送られて自分の葬送に対峙して悔いの無い人生であっただろうか?。と自

問しているのですが。細い一筋の峻険な断崖を辛うじて乗り越えて来たのだと

言う、自負も少しはあります。過ぎてきた自分を肯定しなければ先へは進めな

いからです。


  感想


  ドタバタでギリギリ締め切りの5-6 日前に記憶の引き出しから感激した事象

を21句紡ぎ出しました。そのうち半数以上が皆様の賛同を得て感想を頂きまし

た事は望外の喜びで感謝に耐えません。投句した俳句が人様の心に響き共鳴と

共感を得るとしたらこれ程素晴らしい励みはありません。殊に102 歳になる母

が声をだして詠んでくれる喜びの言葉は、父に対する悔恨の念をいくらかでも

癒してくれるよすがになります。


◎  橋本さんの自句自解


(009) 香り来て思わず探す金木犀  (4点句)

 何処にいてもこの独特の香りがすると、在処を探してみたくなるものです。

選んで頂いた方々も同様ですね。


(031) 新米に秋刀魚の夕餉天高し (2点句)

 日本の秋を代表する伝統 (?) 食を、季語3連発ですっきりと詠んでみまし

た。


(030) 炊きたての新米こそのつやと味 (1点句)

  実家 (鹿沼市) の長兄から毎秋地元産の新玄米 (コシヒカリ) を送ってきま

す。早速近くの無人精米機で白米にして炊きあげた新米は、スーパーで買うい

つもの白米とは、艶と味が違います。今年は特にその差を感じました。


(074) 葉を落とし柿の木全部つるし柿 (1点句)

  散歩道から結構大きな柿の木が見えます。葉を落とし、熟したたくさん実が

枝に垂れ下がり( たわわに実り)、全てがつるし柿のように見えました。


◎  豊さんの自句自解


(001) 冬近し里に出没親子熊 

 今年は人間が熊に襲われる事件が多発しています。それを句にしたのですが

、直接的すぎたようです。


(054) 秋冷や大仏様も咳をする

 大仏様も咳をするほどインフルエンザが流行しているのです。 


(064) 庭掃除短き秋を惜しみけり

 ここ数年、日本の四季がなくなっています。季語の意味も薄れていくのでは

ないでしょうか。


(061) 菊花展外国人がカメラ向け

 菊花展は日本の文化の一つです。外国人観光客が興味を示していました。


(089) 秋の日や線香香る一周忌

 一年前に亡くなった人を偲ぶ思いを詠んだのですが、当たり前すぎました。

  

(069) 温暖化強まる地球秋出水

 今年は世界の至る所で洪水が発生しました。地球温暖化の影響はますます広

がるでしょう。


(100) 遠山に初冠雪の便りかな 

 「遠山に」を「北国に」としたほうがイメージが具体的になったかもしれま

せん。


◎  深瀬の自句自解


・老いゆえの一歩一歩の秋の坂

  自宅の横の急な坂道をのぼるのが、歳とともにきつくなってきました。


・散歩道来し方想う老いの秋        (3点句) 

  散歩をしていて、ふとこれまで生きてきたことの意味とか思います。


・パソコンの取り替えのたり老いの秋

  この歳になってPCの切り替えはかなり苦痛です。次はどうなるのでしょう。


・空爆の廃墟写真埋む秋紙面

  ウクライナとかガザの爆撃による廃墟写真を日常的に見ます。人間の知恵と

はなんなのでしょうか。


・秋雨に奥羽の空の暗きかな        (2点句) 

  父母の実家のある奥羽地方は冬に入ると黒くて厚い雲に覆われます。


・グラフ見て食欲の秋言い訳に

  体重のグラフが右肩あがりだとかなり気になります。


・高速の秋のドライブ爽快さ

  秋のさわやかな自然をみていると地球の景観の美しさに驚きます。


・古代史を読みふけ目上ぐ秋の暮れ

  引退の身には、アフリカを出立したホモサピエンスとか日本列島にたどり着

いた縄文人とかに思いを馳せるのもよいと思います。


・レコード聞きたばこくゆらす父の秋

  親父は若いころから、結構、格好つけるタイプだったと思います。


・散歩して風の身にしむ早き秋

  昨日まで夏のような暑さだったのが、風の冷たさに驚きます。


・散歩道お好み焼き屋に秋気配

  街中の坂道の途中のお好み焼き屋さんがなにかしっくりきました。


・あたふたと過ぎ行く時や秋の暮れ

  現役サラリーマンのころに比較すると日常は様変わりですが、それでもけっ

こうばたばたしている感じです。


・秋の日に偉ぶる人に口ふたぐ

  ふだんから偉ぶることが身についてしまっている人がいますが、それがたの

しいのでしょうか。


・コンビニに好みのパンあり秋の幸

  最近、セブンイレブンの菓子パンのおいしさに引き込まれています。


・太ももの輝きを増す秋のミニ       (3点句) 

  夏のミニより秋のミニの方が新鮮で大胆な感じがしました。


・店頭にポルシェ居並び落ち葉踏む

  散歩道沿いにポルシェの販売店があり、前には街路樹が植わっています。街

路樹を薬剤で枯らして撤去してしまったという事件もありました。


・冬支度奥羽の里に思い馳せ

  独身の従兄弟は毎年、冬を前に誰も住まない実家の雪囲いをしにいきます。


・栗ごはん古代の人の身近さや

  縄文時代には、栗が大切な食糧だったと聞きました。


・仏壇にすすきを飾りりんの音

  仏壇には棒でたたくとちーんと音がするおりんがありました。亡くなった人

に向き合うこころの準備なのでしょうか。


・文化の日模擬店コーヒー老い集い

  目黒区のボランティアの一環でコーヒー同好会というのに参加していますが

、中目黒駅前の福祉まつりはかなりの賑わいでした。


・老い集い古き曲聴く秋日和

  目黒区のボランティアの一環で音楽を聴く会に参加しています。一曲聞いて

手をたたいて喜び合うというのもいいものだと思います。


・老い自覚席をゆずられ秋日和

  わたしの前でシルバーシートに座っていた若者があわてて席を立って離れて

いきました。


・人生の矛盾を自問秋の暮れ        (2点句) 

  身の回りには、自分では矛盾とは思っていなくても、他者には矛盾と受け止

められることがたくさんあるようです。


・中国の残留孤児に赤とんぼ

  中国の残留孤児が、自分が日本人だと言える根拠は、母親の背中で聞かされ

た赤とんぼの歌を歌えることだという話を聞いて戦争の悲惨を思いました。


・赤とんぼ波とたわむる群れひとつ

  日本の赤とんぼの赤色は、外国のものに比べるとかなり濃いと聞いたことが

あります。紅葉と同じなのでしょうか。


・赤とんぼ西方浄土の使者のごと      (3点句) 

・まどろみの幻視に乱舞赤とんぽ

  夕陽に輝く夕空に舞う赤とんぼはなにか幻想的な感じもします。


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2023年12月4日月曜日

第四十五会 ネット句会 選句結果

 

 七句会のみなさま

 

 第四十五回の七句会にご参加いただきたいへんありがとうございました。

 

 今回の選句結果をご報告いたします。

 

 4 点句                          

(009) 香り来て思わず探す金木犀             橋本  02

(045) 月の夜にまぎれしひとを想ひけり          小野寺08

(053) 秋祭り樟脳舟に子らはしゃぎ            小野寺18

(104) 朽ち果てし墓標に紅き寒椿             小野寺12

 

 3 点句

(002) 赤とんぼ西方浄土の使者のごと           深瀬  26

(003) 酔い醒めに岩風呂浸かり銀の河           志方 06

(013) 散歩道来し方想う老いの秋             深瀬  02

(017) 秋の宵二合までよと山の神             桑子 03

(039) 石仏の笑み暖かし秋の宿              吉良 04

(040) 夕がすみ刈田見守る石地蔵             吉良 05

(088) 太ももの輝きを増す秋のミニ            深瀬  15

 

 2 点句

(010) 流燈は月の光をのぼりゆき             小野寺20

(022) 墓洗い無言の父と語らひし             小野寺16

(025) 漆黒の闇ふるわせて虫時雨             小野寺10

(028) 人生の矛盾を自問秋の暮れ             深瀬  23

(031) 新米に秋刀魚の夕餉天高し             橋本  04

(032) 柿食うは熊も野猿も命がけ             治部 05

(035) コスモスや人影伸びて無人駅            中津川06

(054) 秋冷や大仏様も咳をする              豊   01

(064) 庭掃除短き秋を惜しみけり             豊   07

(066) 秋雨に奥羽の空の暗きかな             深瀬  05

(072) 紅ひけば祇園の太鼓夜の顔             小野寺07

(078) 朝陽受け肩で息つく秋の蝶             小野寺02

(085) 一燈を灯して祖父に栗の飯             小野寺09

(090) 風止みて闇夜のしじま虫時雨            小野寺06

(103) 秋旅やうまし呼子の生き造り            治部 03

 

  下記に、選句表に、各句の右側に作者名、および、その下に選んだ人の名前

とコメント (追番付き、順不同、敬称略。) を付したものを添付します。

  次回については、来年1 月~  2 月ころにご連絡したいと思っていますので

、よろしくお願いいたします。やり方、等について、ご意見がありました

ら、ご連絡をいただきたく、よろしくお願いいたします。

 

 事務方から、以下、ご連絡、ご依頼です。

 

(1) 選句参加者

 今回の選句には、下記の14名が参加しました。

  桜子さん (新井さん) 、小野寺さん、吉良さん、桑子さん、志方さん、治部

さん、中津川さん、橋本さん、服部さん、平島さん、宮澤さん、柳町さん、豊

さん、深瀬。

 

(2) 今回の句会の結果を踏まえた自句自解、感想、等の募集について

  今回の句会の選句結果を踏まえて、各自、表明しておきたいこともあるので

はないかと思いますので、自句自解、感想、等、なんでも結構ですので、募り

たいと思います。一応、期限としては  1224日とし、事務方にメールでいた

だき、それを七句会の下記のweb に掲載することにしたいと思います。

 http://nanaku-haiku.blogspot.jp/

 

  2023.12.04

 

      代表   橋口侯之介

      顧問  豊  宣光

      事務方 深瀬久敬

 

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(001) 冬近し里に出没親子熊               豊   04

(002) 赤とんぼ西方浄土の使者のごと           深瀬  26

      1 志方    赤とんぼ西方浄土の使者のごと

      2 服部   

      3       確かに赤とんぼはそんなふうに見えますね。

          西方浄土から何を伝えに来たのでしょうか。

(003) 酔い醒めに岩風呂浸かり銀の河           志方 06

      1 小野寺  しこたま飲んだあと酔い覚めに入った露天

              風呂からふと眺めると天の川。気分は最高で

              しょう。

      2 桑子    酒を飲み、露天風呂につかり、満天の星を

          見る、至福の時ですね、年老いた今はそのま

          ま天国に上らないように。

      3 柳町

(004) 中国の残留孤児に赤とんぼ             深瀬  24

(005) 赤とんぼ石畳に舞うひらひらと           桜子 03

(006) 銀杏の実迷惑そうに落ちており           服部 03

      1 桑子    確かに道端に落ちて潰れているのは臭くて

          邪魔です。

(007) 文化の日模擬店コーヒー老い集い          深瀬  20

      1 桜子    「文化の日」何か文化祭でもお出かけにな

          られたのでしょうか。温かな雰囲気でおしゃ

          べりを楽しまれている姿が目に浮かびます。

(008) 野分け荒れ蟷螂窓にへばりつき           小野寺14

(009) 香り来て思わず探す金木犀             橋本  02

      1 桜子    「香来て」日常の何気ない風景にお気づき

          の細やかな感性が感じられます。共感します。

      2 服部    秋の訪れを感じるいつもの光景です。

      3 宮澤    五感の衰えを痛感するなか、金木犀の香り

              はまだ我が臭覚をくすぐり、残りし感性に喜

              びを感じながら、思わずいずこからと探して

              しまう気持ちを思います。

      4 深瀬    全く同じことをしていてすごいと思いまし

          た。

(010) 流燈は月の光をのぼりゆき             小野寺20

      1 志方     流燈は月の光をのぼりゆき

      2 中津川  幾つもの灯籠がゆっくり流れゆく様が思い

              浮かびました。

(011) コンビニに好みのパンあり秋の幸          深瀬  14

(012) 霧ふかし野に待ち人か女郎花 (おみなえし)      小野寺04

(013) 散歩道来し方想う老いの秋             深瀬  02

      1 吉良    年を経ると、自分の人生を振り返ることが

          多くなります。秋の冷たい風のなかの散歩道

          ではなおさらです。

      2 宮澤    息荒く坂道を散歩して、昇りし距離を返り

              見れば我が人生と同じ、たいしたことない距

              離をあえいできたものですという思いを感じ

              ます。

      3       老いの寂しさの実感ですね。よくわかりま

          す。

(014) 曼珠沙華百万億土が読経して            小野寺01

(015) 散歩道お好み焼き屋に秋気配            深瀬  11

(016) 冠雪の駒足元の枯れる芝              治部 02

(017) 秋の宵二合までよと山の神             桑子 03

      1 小野寺  作者は自ずと分かりますが、何て素敵な夫

              婦の掛け合いでしょう。ほのぼのとした奥さ

              んの配慮が嬉しい。大将は感謝ですね。

      2 宮澤    二合目と言えば麓からほんのちょっとでは?

          山の神は超安全運転しか許してくれないよう

              です。

      3 柳町

(018) 古代史を読みふけ目上ぐ秋の暮れ          深瀬  08

(019) トラファンや枝豆つまみ「アレ」を待つ       中津川04

(020) 店頭にポルシェ居並び落ち葉踏む          深瀬  16

(021) 朝霧が木立を縫って立ち消える           志方 07

(022) 墓洗い無言の父と語らひし             小野寺16

      1 吉良    父親とは生前にあまり心を打ち明けて話し

          たことがないのに、墓前ではなぜか自然に言

          葉がでたのでしょうか。

      2       亡き父と語らう子。思い出のたくさんある

          いい親子関係だったのでしょう。

(023) 丹波山清いしずくの流々と             桜子 06

(024) 夕陽浴び柿朱朱 (あかあか) と風誘う        志方 01

(025) 漆黒の闇ふるわせて虫時雨             小野寺10

      1 柳町

      2       暗い闇の中で虫の声だけが聞こえる。「闇

          ふるわせて」がいいですね。

(026) レコード聞きたばこくゆらす父の秋         深瀬  09

(027) カナカナの哭きうつりゆき茜雲           小野寺15

(028) 人生の矛盾を自問秋の暮れ             深瀬  23

      1 桜子    「人生の」「矛盾」と「秋の暮れ」がリン

          クする気がします。

      2 吉良    いまさら過去を振り返ってもどうしようも

          ないのに何故か秋になると、昔の事をあれこ

          れ思い出すのでしょうか。

(029) 九月尽小さい秋も見つけれず            服部 01

      実家から届いた新米で2

(030) 炊きたての新米こそのつやと味           橋本  03

      1 桜子    「新米に」新米を召し上がって、とても満

          足したご様子が伝わり幸せになります。

(031) 新米に秋刀魚の夕餉天高し             橋本  04

      1 桑子    季語3連発すごいです。リズムもいいです。

      2 服部    湯気の立つ食卓が目に浮かびます。

(032) 柿食うは熊も野猿も命がけ             治部 05

      1 桑子    熊たちも生きるのに必死なんでしょう。

      2 志方     柿食うは熊も野猿も命がけ

(033) 冬支度奥羽の里に思い馳せ             深瀬  17

      1 治部    温暖化とか言っているけれど寒い郷里はも

          う冬支度なんだろうなぁ。何だか昔を思い出

          すようなほっこりとした感じになります。

(034) ジンタ聴き赤き兵児帯秋祭り            小野寺19

(035) コスモスや人影伸びて無人駅            中津川06

      1 吉良    ローカル線の無人駅。夕日に伸びた人影に

          添うように生えるコスモスが印象的。

      2 平島    過疎の田舎、駅舎には人はおらず日に何本

          しか無い汽車をホームで待つ人影。寅さんの

          世界だね。

      九州大分県の父の郷里を旅して (8 )

(036) 秋の風老婆の背おす城下町             吉良 01

(037) 秋日差す山道喘ぎ墓参り              吉良 02

(038) 落ち葉分け先祖の墓石名をたどる          吉良 03

      1 志方     落ち葉分け先祖の墓石名をたどる

(039) 石仏の笑み暖かし秋の宿              吉良 04

      1 小野寺  歩き疲れてようやく辿り着いた秋の宿宿の

              側の地蔵さんは暖かく迎えてくれましたね。

      2 中津川  一昨日まで大分国東半島周辺を旅しました。

       石仏も宿の料理もとてもよかったです。

      3 宮澤    石仏は優しい時は暖かいまなざし。でも吹

              雪の時は不気味ですらあります。自分の心の

              持ちようが大事という教えのようです。

(040) 夕がすみ刈田見守る石地蔵             吉良 05

      1 橋本    ずーっと田を見守り続けてきた石地蔵、ご

          苦労さんこれからも。

      2 服部   

      3 深瀬    刈田を見守る石地蔵に日本風景の原点をみ

          る思いです。

(041) すすき野や世の憂い去り風渡る           吉良 06

      1 小野寺  晩秋のすすき野を吹きぬける風はまるで憂

              世の暗い世相を吹き飛ばしてくれるかの様に

              心地よかったのですね。

(042) 囲炉裏火に椎茸香る田舎飯             吉良 07

      1 志方     囲炉裏火に椎茸香る田舎飯

(043) 蠣小屋の炭火に煙る笑顔の輪            吉良 08

      1 橋本    炭火で美味しそうに焼き上がる牡蠣、煙く

          ても思わず笑顔がこぼれる。

(044) 空爆の廃墟写真埋む秋紙面             深瀬  04

      1 橋本    ガザ、ウクライナ、それとも大戦のですか、

          どうして繰り返されるのでしょう。

(045) 月の夜にまぎれしひとを想ひけり          小野寺08

      1 治部    大切な人に対する思いが伝わります。「月

          の夜に」がいいです。「まぎれる」というの

          も、行ってしまったのではなく、まだその辺

          に居そうな感じがあっていいですね。

      2 橋本    いろいろな捉え方が出来て意味深ですね。

      3 平島    とうとう別れる日が来てしまった。月光の

          中を後も振り向かず人混みのの中へときえて

          しまった愛しいひと。和服の似合う細身の佳

          人だったなあ。

      4       ロマンチックな句ですね。きっと幸せなひ

          とときをすごしたのでしょう。

(046) パソコンの取り替えのたり老いの秋         深瀬  03

(047) 九月尽ゴーヤ実はなり秋は来ぬ           桑子 02

      1 橋本   

(048) 諏訪4社御柱立つ秋の杜              中津川02

(049) 茂原の神竜巻退治の力持ち             桜子 04

(050) 信濃路は無人スタンド「林檎あり」         中津川05

(051) 霧流る湖水に紅き烏瓜               小野寺05

(052) 赤とんぼ波とたわむる群れひとつ          深瀬  25

      1 柳町

(053) 秋祭り樟脳舟に子らはしゃぎ            小野寺18

      1 治部    今時樟脳舟なんてあるんですね。自分が子

          供の頃は洗面器の中で動き回る樟脳舟が不思

          議で不思議でずっと見ていたものでした。今

          の子供たちにも不思議に見えたのでしょうね。

          様子がよく伝わります。懐かしいと思いまし

          た。

      2 中津川  今も樟脳船があるのですね。懐かしいです。

      3 服部    樟脳に懐かしさを感じます。

      4 宮澤    樟脳舟はまだあるのですか? "子らはしゃ

              " とありますが、 "子は" ではなく "子ら"

              という "" に大人が懐かしくはしゃぐとい

              う思いがこめられていると感じます。

(054) 秋冷や大仏様も咳をする              豊   01

      1 桜子    「秋冷えや」 くすっと笑える一コマです。

      2 志方     秋冷えや大仏様も咳をする

(055) グラフ見て食欲の秋言い訳に            深瀬  06

(056) 百舌鳥鳴きて山里は火を灯しゆき          小野寺13

      1 桑子    暮れていく秋の光景が目に浮かびます。

(057) 十時には皆就寝す十三夜              桑子 04

(058) 秋深しレジ横つまみ値上げまた           中津川03

(059) 老いゆえの一歩一歩の秋の坂            深瀬  01

      1 吉良    老いて足が萎えたわけでなく、人生を一歩

          一歩踏みしめてきた様子があらわされてます。

(060) 世紀末日傘半そで霜月に              服部 05

      1 橋本    上の2 句は、今年の気候変動の (夏の)

          常さを上手く詠んでいます。

(061) 菊花展外国人がカメラ向け             豊   05

(062) 月明かり侘助待つや京の宿             小野寺11

(063) あたふたと過ぎ行く時や秋の暮れ          深瀬  12

(064) 庭掃除短き秋を惜しみけり             豊   07

      1 平島    落ち葉を掻き集めながらああもう秋も行く

          か。時は速く行き過ぎ残された人生も少ない。

          大事に生きよう。

      2 深瀬    なにか落ち着いた気品ある生活実感を感じ

          ます。

(065) 風出でて穂波が揺らぐ野の秋や           志方 03

      1 小野寺  晩秋の野を歩けば、稲の穂波が風に揺れて

          しみじみと秋の寂寥がしのびよります。

(066) 秋雨に奥羽の空の暗きかな             深瀬  05

      1 柳町

      2       旅の風景を詠んだのでしょうね。芭蕉のよ

          うなうまい句だと思います。

(067) 阿蘇の秋パネルで季節失せにけり          治部 04

(068) まどろみの幻視に乱舞赤とんぽ           深瀬  27

(069) 温暖化強まる地球秋出水              豊   02

(070) 新蕎麦や名湯もあり道の駅             中津川01

      1 平島    地元の名物新蕎麦も買えたし近くにあると

          言う有名な温泉でひと汗流して寛ぐことにし

          よう。

(071) 仏壇にすすきを飾りりんの音            深瀬  19

(072) 紅ひけば祇園の太鼓夜の顔             小野寺07

      1 中津川  なかなか色っぽい句ですが、季節は夏です

              か?

      2 深瀬    いろいろ経験してきた大人の俳句という感

          じがします。

(073) 高速の秋のドライブ爽快さ             深瀬  07

      1 桜子    「高速の」 爽快感がありまっすぐで気持

          ちのいい一句です

(074) 葉を落とし柿の木全部つるし柿           橋本  07

      1 服部    今年何故か多く見る風景です。

(075) 秋桜と背比べごっこの女の子            桜子 02

(076) 青苔の朝やはらりと紅葉かな            治部 01

      1 中津川  苔寺かどこかお寺の庭の景色でしょうか。

       秋ですね。

(077) 老い自覚席をゆずられ秋日和            深瀬  22

      1 小野寺  自分ではまだまだと思っていても電車で席

              を譲られると譲ってくれた若い人に感謝する

              反面秋日和のやわらかい陽に自分が老いた事

              を否応なく認めざるを得ない寂しさを感じま

              す。

(078) 朝陽受け肩で息つく秋の蝶             小野寺02

      1 治部    季節も終わりなのに必死にもがいて生きよ

          うとしている様子。もうそろそろいいですよ。

          あまりがんばらなくても。何だか悲しくなり

          ますが、老いの身には感じるものがあります

          ね。

      2 宮澤    枝に止まり一休み。ゆっくり翅を動かす様

              "息つく" と表現にされた視点好きです。

(079) 野沢菜の凍てつく束は酒の友            志方 04

      気候変動 (温暖化) の海への影響を2

(080) 一歩先漁に異変の続く海              橋本  05

(081) (ぶり) 来たり秋刀魚鮭去る北の海        橋本  06

(082) 空たかしラジコン一機宙返り            服部 02

      1 深瀬    秋空に舞うラジコンの様子が彷彿とさせら

          れます。

(083) 雁が鳴く我が葬送に悔いなきや            小野寺21

      1 吉良    国に帰る雁の鳴き声に送られて、いつ死ん

          でも悔いのない人生を送ってきたという自負

          が感じられます。

(084) 球磨川の紅葉に映える蒼の水            桜子 05

      1 小野寺  三年前熊本の球磨川が氾濫し甚大な死傷者

              が出ました。いまは何事もなかったかの様に

          流れる球磨川に今を盛りの紅葉は蒼い水面に

              華やかな色どりを添えて滔々と悠久の刻を流

              れます。

(085) 一燈を灯して祖父に栗の飯             小野寺09

      1 治部    燈明をともして亡き祖父の前に座る。何だ

          か厳しくて優しい声が聞こえてくるようです。

          お爺ちゃん子だったのでしょう。「栗ご飯」

          秋が好きだったのですね。

      2 深瀬    先祖への深い思いが鮮明に描写されている

          と思います。

(086) 秋晴や出だしボギーにまあいいか          桑子 05

(087) 楽しみの柚子色づいてジャム作り          服部 04

(088) 太ももの輝きを増す秋のミニ            深瀬  15

      1 桜子    「太ももの」 とてもおもしろいです。

      2 桑子    「輝きを増す」という表現が微妙にステキ

          です。

      3 中津川  涼しくなった気候にミニの足は目立ちます。

(089) 秋の日や線香香る一周忌              豊   06

(090) 風止みて闇夜のしじま虫時雨            小野寺06

      1 吉良    風が止むと今まで以上に虫の鳴き声が響い

          て秋の真っ只中にいることが自覚されます。

      2 橋本    風が止んで静まった闇夜から虫時雨が、、、

          聞いてみたいです。

(091) ドングリやパチパチパチと靴の下          中津川07

      1 桑子    「靴の下」で音がするという表現がいいで

          す。

(092) 別嬪に似顔絵描くや夜店の灯            小野寺17

(093) 春潮や島影縫って流れゆく             志方 02

      1 平島    湧きて流るる八百潮の萬の波を呼び集め遠

          く聞ゆる春の潮の音。故郷瀬戸内海が懐かし

          い。

(094) 朝イチのボール消え行く霧の中           桑子 01

      1 深瀬    スタートホールの様子が活き活きと伝わっ

          てきます。

(095) 三陸の荒波越えた鯖弁当              桜子 01

(096) 栗ごはん古代の人の身近さや            深瀬  18

(097) サングラス喜寿のタモリは自然体          志方 05

(098) 団栗の小川にポットリどじょう待つ         橋本  01

(099) 老い集い古き曲聴く秋日和             深瀬  21

      1 柳町

(100) 遠山に初冠雪の便りかな              豊   03

(101) 秋の日に偉ぶる人に口ふたぐ            深瀬  13

(102) 赤とんぼ茜の空を透いて飛び            小野寺03

(103) 秋旅やうまし呼子の生き造り            治部 03

      1 中津川  呼子には行ったことが無いのですが、イカ

       刺しがおいしそうです。

      2 平島    天高く馬肥ゆる秋。玄界灘の海も澄んで取

          れる魚のうまいこと。中でもイカは格別よ!

(104) 朽ち果てし墓標に紅き寒椿             小野寺12

      1 志方     朽ち果てし墓標に紅き寒椿

      2 服部   

      3 平島    村の人達も都会に出て行ってしまい お墓

          の守りをする人も居なく寂れ行くのみの里。

          でも自然はやすみなく営みを続け今年も紅い

          花を咲かせている。

      4 柳町

(105) 散歩して風の身にしむ早き秋            深瀬  10

 

 

  -------------

 

 

  ご参考  選句をお寄せいただいたときに添えられた各選者のコメントです。

 

○ 桜子さん

 朝晩の冷えがきついですね。皆様のレベルが高くて、様々な風景を楽しませ

ていただきました。

 

○ 志方さん

 今回は全体に素晴らしい出来栄えの句が多く、選句に苦労します。

 趣向を変えて、古希成りたての我が老妻に選句を依頼してみました。勿論私

の句がどれかも知らせておりませんが、一つも選ばれておりません。選んだ11

句の中から、7句に絞り込みました。

 

○ 平島さん

 20句程拾って絞り込んで行く内にこの7 句に落ち着きました。やはり古典的

なスタイルになり日本的なものが出てきました。ただ五七五を並べただけでは

物足りなくて季語があり、切れ字があるものが姿も美しいと感じます。小生先

月末に82歳となり幼児帰り先祖返りが出始めたのかな?

 今日も快晴で気温21度です。日本はもう冬との声も。

 また独断と偏見の選句をお届けします。

 

○ 柳町さん

 今週月曜から、琵琶湖東岸の湖東三山や吉野の紅葉巡り、初めての高野山参

拝、その足で大阪、通天閣や住吉大社を巡って、今帰りました。湖東三山の紅

葉は最高である意味、京都より素晴らしかったです。高野山は初めてでしたが

、思いのほか外国の方が多く参拝に訪れていて、ビックリしました。通天閣は

、韓国の方々がとても多くおり、彼方此方でハングルが飛び交っていました。

 

 

 

 七句会のみなさま

 

 第四十四回の選句結果を踏まえて、感想や自句自解、等をおよせいただき、

たいへんありがとうございました。

 選句結果を踏まえてのお寄せいただいた自句自解をご報告します。今回、作

品集は省略させていただきました。

 

 今後のやり方に、ご意見、等ありましたら、よろしくお願いします。

 七句会のweb  http://nanaku-haiku.blogspot.jp/ にも掲載してあります。

  今後とも、よろしくお願いいたします。

 

  深瀬 (事務方)

 

 

1.44  ネット句会  自句自解

 

◎ 新井桜子さんの感想と自句自解

 

  自句自解を考えながら、投句した日を思いますと、暑さたけなわでしたね。

  今は、朝晩秋が感じられますが、個人的には温かい食事がいいなと思ったり

体調が混乱する感じです。季節の変わり目…みなさんはあまり気にしないです

か?

  振り返ると、やはり投句した盛夏のころとは、心情も目に留まる風景も違い

ますね…。今年は慶応高校の優勝が印象的です。私は翠嵐野球部のマネージャ

ーでしたが、当時はうちと同じ上の下レベルのチームで、練習試合に行ったこ

とがあります。そのころはスカウトとかしていなかったみたいです。

  俳句は自分史というほどではないですが、ミニ日記みたいですね。

 

(058) オレンジのくちばし並ぶ燕の巣

 最寄りの日吉駅構内につばめの巣があるのですが、見上げるとオレンジのか

わいいくちばしが並んでいます。

 

(035) 発車票数字の上に燕の巣

 日吉駅構内に行き、電車に乗るため発車標を見上げると、燕の巣が目に入り

、ユニークな光景を楽しめます.

  (季節のお話:この夏の日吉駅構内。初夏は燕の巣にカメラを向ける人が大

勢いて、燕の声の大合唱を楽しめました。晩夏は慶應が甲子園で優勝したので

、発車標にお祝いのテロップが出ているのをスマホで映す人でごった返してい

ました。優勝してすぐに行きましたが、ちょうど慶応高校の方角に虹が出てい

てお祝いのようでした。)

 

(092) デヴィ夫人滝つぼの中古希迎え。

 タレントのデヴィ夫人が古希のお誕生日に修行で滝に打たれていました。印

象的です。

 

(065) ナイアガラ小舟揺るがす滝の音

 大学生の時にカナダ旅行へ行きました。ナイアガラ大瀑布で遊覧船に乗りま

したが、迫力に驚きました。

 

(011) 蓮の花三渓園の朝に咲く

 初夏の三渓園の朝の一コマです。池に見渡す限り蓮が咲いていました。

 

(039) ミニトマトつるの中から実がのぞく

 自宅近くの家庭菜園でかわいいトマトの実がなっているのを見ました。

 

(074) 夏服の洗濯物の乾きよし

 夏は暑くても、洗濯物がすぐに乾くので楽です。

 

(027) ぼんぼりの朝顔照らす色とりどり

 朝顔祭りの一コマ、夕闇でぼんぼりに照らされる朝顔の幻想的な美しさを思

いました。

 

(046) ほおづき市淡いオレンジ癒されし

 初夏のほおづき市でならぶオレンジ色のほおづきの実を見るとほっとします。

 

(051) 七夕に大雨こぬよう願い事

 私の七夕の願い事です。

 

 

◎ 小野寺さんの自句自解

 

 締め切りを延ばして頂き心に響いた夏の日の記憶の21句のうち15句も皆様の

心に留めて頂き望外の喜びです。

 

(068) 5 点句 朽ち果てし卒塔婆に語る夏の蝶

 朽ち果てて文字さえ定かではない卒塔婆に今を盛りの美しい夏の蝶がとまり

己の命の儚さを語りかけている様でもありました。

 

(049) 4 点句 心澄みやはらかに聴く夏至の雨

 治部さん、吉良さん、平島さんの解釈はありがたいのですが、現実は時間に

追われる多忙な生活で、静かに聴く夏至の雨はやはらかに聴く至福のひととき

でした。心澄む日は私の切なる願望です。

 

(064) 3 点句 ゆふすげは君亡き里の道しるべ

 昔の大切な人が住んでいた里には辺り一面が変わり果て今は夕菅がまるで道

標のように咲き乱れて遥かな郷愁を誘いました。

 

(100) 3 点句 夕日落ち薔薇一輪の赤き色

 夕日が落ち、辺り一面がたそがれの淡い薄紫に包まれる一瞬の静寂の中ただ

一輪の薔薇が見事な真紅を放っておりました。

 

(020) 2 点句 暁にひらきはじめし白牡丹

 暁のぼんやりとほのぐらい光の中で新しく咲き始める牡丹は目の覚める様な

白のハーモニーでした。

 

(030) 2 点句 浜木綿は潮騒聴くや雲の峰

 桜子さんの感想鏑木清方の日本画とは嬉しい限り。入道雲がわく真夏の海辺

浜木綿の白い花は潮騒の海の調べを静かに聴いているのでしょうか。

 

(061) 2 点句 滝近し木立の冷気迷い蝶

 平島さんの見事な感想の通り、この木立の冷気は何処から?  ああ近くにあ

る滝からだ。蝶よおまえも迷い迷いながら、探しているのか?

 

(026) 1 点句 鮎走る暗き深みに腹ひかり

  豊さんの感想、生き生きとした鮎の姿が目に浮かびます。とは嬉しい選句評

です。少年時代祖父や父て鮎の友釣りについていきましたが、瀞の深みに居る

鮎の走りを眺めてらおりました。

 

(053) 1 点句 炎帝の怒りに耐えてカンナ咲き

 灼熱の暑さの中カンナは健気にも紅い花を咲かせて、じっと耐えて炎帝に抵

抗している様でもありました。

 

(076) 1 点句 雲の峰湧きて湖沼に風ひかる

 吉良さんの感想の通り。積乱雲の湧きあがる暑い夏、湖沼を駆け抜ける一陣

の風を感じたのです。

 

(091) 1 点句 胎動を聴きしその日に薔薇を買い

 家内が長女を身籠もった時一時の流産の危機を乗り越えて入院先で胎動を聴

き飛び跳ねて紅い薔薇を買いに行きました。

 

(094) 1 点句 音もなく時過ぎゆくや蛍舞ひ

 平島さんの感想の通り。静かに、穏やかに、迷い無く過ごしている老境の日

(現実は迷いだらけ) 。でも自然の営なみはそこここにあり、蛍も短い命を

懸命に燃やして、生き急いでいるのかなあ? と

 

(008) 1 点句 野仏が着いてきそうな祇園の夜

 中津川さん  祇園祭りの宵山です。まるで笛や太鼓につられて、野仏もつい

てきそうです。

 

(012) 1 点句 御仏の眼が合ひ外は蝉時雨

 山寺の持仏堂で、御仏が生きて眼を合わせてきたと感じたのです。ふと汗を

ぬぐい我に帰ると外は蝉時雨の静寂でした。

 

(034) 1 点句 花菖蒲黒髪香ほり息をのみ

  治部さんに喝破された様にこれは私の投句です。花菖蒲に香る黒髪は、思わ

ず息をのみます。過ぎてきた遠い記憶は時に鮮烈に蘇ります。

 

 

◎ 吉良さんのコメント

 

(024) 望郷や第九奏でる蝉しぐれ

 

      徳島-淡路島ゴルフ旅行にて (7 )

(077) マスクとり口元緩めかき氷

(078) ティーショット瀬戸の夏空突き破る

(079) 向日葵(ヒマワリ)の合唱の指揮は陽の光

(080) 消え隠くる向日葵(ヒマワリ)畑に稚児の顔

(081) 渦潮の大暑のみ込む静けさや

(082) 渦の道水軍走る夏の夢

(083) ほとばしる汗や舞い手の阿波の夜

 

  7 月の連休を利用して初めての徳島、淡路島にゴルフ旅行した時の句です。

  徳島市郊外に小山に囲まれた、第一次世界大戦のドイツ人捕虜収容所跡地が

ドイツ館として保存されています。ここで日本で初めてベートーヴェン第9交

響曲が演奏されたとのことです。周りには蝉の合唱が響いていました。近くに

は陶器の窯元もいくつかあり、ぜひ一度訪れてみてください。

 

 

◎ 豊さんの自句自解

 

(002) 西瓜食う水分補給万全に 

 熱中症予防のためには水分補給が大事です。西瓜には水分がたくさんありま

す。

 

(009) 暑気払いもう一杯の大ジョッキ 

 若いころは仲間とデパートの屋上ビヤガーデンでいつも暑気払いをしていま

した。

 

(013) 子供らが消えた公園油照り

 いつもなら子供たちが遊んでいるのに、今日は猛暑のために外では遊べない

のです。

 

(032) 浦島を乗せた亀去る土用波 

 浦島太郎の物語に引っかけたのですが、土用波との組み合わせがよかったか

どうか。

 

(042) 炎天やかぶるものなき石地蔵

  熱い日を浴びながら、石地蔵は汗ひとつかきません。心頭滅却の悟りの境地

です。

 

(067) 落日やインスタ映えの夏の海 

 夕日が海の沖に沈んでいきます。インスタ映えのその美しさを詠んだのです

が。

 

(098) 大の字に寝ても広々夏座敷 

 障子や襖をあけはなった広い畳の座敷に大の字に寝転ぶのは気持ちがいいも

のです。

 

 

◎ 深瀬の自句自解

 

(066) 七月の木々のゆらめくビル谷間

  ビルの谷間の7 月の清らかな日差しに映える木々に、改めて新鮮なものを感

じたりしています。

 

(018) 病棟の窓の緑や夏陽受け

  恵比寿駅近くの病院に2 日ほど入院したのですが、窓から見る風景との間に

なにか奇妙な隔たりのようなものを感じました。

 

(070) 日傘列弁慶橋に堀の風

  弁慶橋のかかるお掘りにはボートが浮かんだりしていますが、昼時は、若い

近くの会社のOLたちが日傘をさして行き来していました。

 

(097) 夏服にマスクの列の異次元さ

  地下鉄の電車の中からホームを一瞬見たときの光景でしたが、改めて変だな

と感じました。

 

(016) 清水谷ニューオータニに蝉の声

  近くの大学に通っていたころの雰囲気とは異なり、やや場違いな高級感のあ

ふれたしゃれた感じになっています。

 

(041) ビル街にひやし中華のメニューかな

  地下のビル街にレストランが並んでいますが、昼時はひやし中華のメニュー

が目につきました。

 

(086) 夏草の砲弾に飛ぶウクライナ

 今現在、ウクライナでは夏草が砲弾で飛び散っています。ロシアのプーチン

大統領とそれを支持している人達の人間性を思わずにいられません。

 

(062) つばめの子生存枠を競うかな

(028) つばめの子寄り添い眠る夜のとばり

  人間にも多産多死の時代がありましたが、私たち団塊の世代から少産少死に

移行したようです。そうした変化をする生き物は他にあるのでしょうか。

 

(075) 寝静まる枕辺に聞く滝の音

  山間 (やまあい) の旅館にでも宿泊したとき、寝静まった中での聞き慣れな

い音に原始時代に戻ったような錯覚を覚えることがあります。

 

(031) いつの間に滝落ちるごと老い迎え

  ついこの間まで老いを実感するなどということはほとんどなかったのですが

、最近になって、そういう元気だったころはあっという間に過ぎ去ってしまっ

た気持ちを感じたりしています。

 

(054) 滝の水途中で霧消ギアナの地

  エンジェルフォールは滝壺がないことで有名です。ギアナ高地のような自然

ができることに、自然界の前の人間の小ささを実感します。

 

(101) 腰越の囲碁の集いや夏の海

  腰越は、鎌倉と藤沢を結ぶ江ノ電の中間くらいにあります。囲碁の後はみん

なでしらす丼とかを食べて、幸せをかみしめています。

 

(048) 人新世 (ひとしんせい) 夏の猛暑を噛みしめる

  数億年の歳月を経て作られた石炭や石油を、数10年くらいの間にどんどん燃

やしてしまう人類というのは、どういう存在なのか考えさせられます。

 

(014) 夏雲のみおろす大地砲火飛び

  ウクライナの方は平地が広がり、その上に夏雲がくっきりと浮かんでいます

。そうした光景のなかで砲弾を打ち合っているのをみるとなにかやりきれない

気持ちになります。

 

(022) 孫たちを夏合宿に送り出し

  同じマンションの上の階に孫が二人います。こちらは夫婦二人きりですが、

それとは別次元のような生命力の横溢に老いの在り方を考えさせられます。

 

(025) 夏の陽に訃報のはがき身に迫る

  老いの身にとって夏の陽はなにか存在感を否定されているような思いがあり

ます。そういうとき訃報の葉書を受け取ったりするとなにか催促されているよ

うな気持ちを感じたりします。

 

(089) 七月の残り日わずかなにか悔い

  七月にはなにか生命の輝きのようなものがあって、過ぎ去ってしまうときな

にかし忘れていることがあるような後ろ髪をひかれる気持ちを覚えます。

 

(043) つぎつぎの争いごとに昼寝かな

  あまりに社会全般に気になるようなことが多すぎると、もうどうでもいいと

いう気持ちなり、ふて寝をきめこみたくなります。

 

(037) そうめんに大根おろしと揚げ玉を

  昼食に家内がたまに作ってくれるのですが、シンプルで食べやすくて傑作的

な食べ物ではないかと思ったりします。

 

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