七句会のみなさま
第二十七回の七句会にご参加いただきたいへんありがとうございました。
今回の選句結果をご報告いたします。
5 点句
(004) 朝ひかる 通学路(みち)に 薄氷 中津川
4 点句
(012) リュック背に 川の薫りと 猫柳 中津川
(021) 早春の浅き眠りに老ひ深む 深瀬
(043) 秋たかし 昭和五輪の 飛行雲 中津川
3 点句
(003) 早春の山河の大気肺清め 豊
(009) 沈丁花 夜来にかおる 早春賦 志方
(016) 早春のあたたかき陽に老ひみつめ 深瀬
(018) 早春の 旅を運びて 飛行雲 吉良
(058) 帰らざるおもひかさねし冬茜 (あかね) 深瀬
(065) 松明けの妻と朝餉の静かさや 深瀬
(066) 残照の 苫屋に淡く冬の影 小野寺
(067) 生きている意味は分からず死にもせず 深瀬
(081) 見はるかす 稜線白き 八ヶ岳 志方
(087) 星冴えて 森羅万象回りゆき 小野寺
(092) 梅の花一目も会えず友の逝く 治部
(097) ふるさとは霙 (みぞれ) の彼方寒椿 小野寺
2 点句
(028) 平成は閉まるも締まらぬ安倍政治 橋本
(039) 皺深し 昭和平成 駆け抜ける 吉良
(042) 春雷や 昭和はとほくなりにけり 小野寺
(045) 平成に何を成したか懐手 治部
(050) 風に舞ふ落ち葉の音のしむ身かな 深瀬
(057) 寒椿 雪の重みを凌ぎをり 小野寺
(063) 冬枯れの野にけぶりたち鳶の声 小野寺
(064) 薄氷 踏んで感じる 暖かさ 柳町
(072) 寒風に陸奥 (みちのく) 想ふや芭蕉像 橋本
(080) くれないに 燃ゆる椿に雪が舞ひ 小野寺
(095) 雪の原 雄叫び聴くや 衣川 小野寺
下記に、選句表に、各句の右側に作者名、および、その下に選んだ人の名前
とコメント (追番付き、順不同、敬称略。) を付したものを添付します。
次回については、4 月中旬ころにご連絡したいと思っていますので、よろし
くお願いいたします。やり方、等について、ご意見がありましたら、ご連絡を
いただきたく、よろしくお願いいたします。
事務方から、以下、ご連絡、ご依頼です。
(1) 選句参加者
今回の選句には、下記の14名が参加しました。
秋岡さん、秋元さん、小野寺さん、吉良さん、桑子さん、志方さん、治部さ
ん、中津川さん、橋本さん、藤原さん、森杜瑯さん、柳町さん、豊さん、深瀬。
(2) 今回の句会の結果を踏まえた自句自解、感想、等の募集について
今回の句会の選句結果を踏まえて、各自、表明しておきたいこともあるので
はないかと思いますので、自句自解、感想、等、なんでも結構ですので、募り
たいと思います。一応、期限としては3 月16日とし、事務方にメールでいただ
き、それを七句会の下記のweb に掲載することにしたいと思います。
http://nanaku-haiku.blogspot.jp/
これまで、句会の後、勉強会としての集まりを企画していましたが、参加者
が少ないこともあり、改めることにしました。集まっての勉強会も適宜、行い
たいとは思っていますが、よろしくお願いします。
2019.02.24
代表 橋口侯之介 (休会中)
顧問 豊 宣光
事務方 深瀬久敬
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1.兼題 早春
(001) 早春の山茶花揺れてメジロかな 橋本
(002) 初春や トンドに響く 太鼓かな 藤原
(003) 早春の山河の大気肺清め 豊
1 吉良 早春の冷たい風に体の清まる感じがでています。
2 治部 早春の山河が清めるものを肺に的を絞っているとこ
ろが引っ掛かりました。作者はもしかしたら肺を病んでいる
ような気がしました。この作品からは、久しぶりにフレッシ
ュな空気を送り込まれた肺が「気持いいね」と言っている様
子がうかがえます。上五中七が少し散文的に見えますが、山
河の大気で清々しさは伝わります。肺が印象的で、季語が弱
くなったような気がします。
3 小野寺 山河の大気が肺腑深くに沁み渡ると言う気宇広大な
早春への希望です。
(004) 朝ひかる 通学路(みち)に 薄氷 中津川
1 志方 ランドセルを背負ってた頃の情景はおもいだされま
す。
2 桑子 寒い中、朝日を浴びて、登校する生徒達が目に浮か
びます。
3 秋岡 昔は舗装されていないでこぼこ道にこのような光景
がよくありました。
4 橋本
5 宮澤
(005) 早春の芭蕉碑囲む団塊団 深瀬
(006) 残雪の畦道新芽萌え出づる 秋元
(007) 庭の木の蕾ふくらむ春浅し 豊
(008) 早春や ベランダ横たう 鉢一つ 吉良
(009) 沈丁花 夜来にかおる 早春賦 志方
1 柳町
2 藤原
3 小野寺 夜半の帷の中で沈丁花の強い香りは春への密やかな
期待でしょうか
(010) 春浅し ダウンコートで 受験生 中津川
(011) 早春に地球壊れる予感して 深瀬
(012) リュック背に 川の薫りと 猫柳 中津川
1 志方 猫柳が鑑賞できる川辺がすくなくなってしまいまし
た。
2 桑子 これも川辺をウオーキングする風景が浮かびます。
3 秋元
4 深瀬 川べりをハイキングのように歩いていて、ふと川の
薫りと猫柳のやわらかな色彩に、春の到来をしみじみと感じ
ている作者の気持ちが伝わってきました。
(013) 早春の息吹き通わすつづみぐさ 秋元
1 中津川
(014) 大手町 早春の窓 輝ける 吉良
1 秋岡 自然を感じる場の少ない大都会もこんな形で春を感
じるのですかね。
(015) 初春に スーパームーン 冴え渡る 藤原
(016) 早春のあたたかき陽に老ひみつめ 深瀬
1 桑子 室内でしょうか、ぼんやりと過ごす一抹の寂しさを
感じました。
2 秋岡 年をとるとあたたかい陽射しのありがたさを痛感し
ます。
3 豊 旧仮名遣いの表現、全体のまとまり、この作者はか
なり作句の経験を積んだ人だと思います。イメージの膨らむ
いい句です。
(017) 早春の土手の轍(わだち)に子等はしゃぎ 小野寺
1 治部 この句は(003) と構成が似ていますが、子らがはし
ゃいでいる姿がとてものどかで、春らしい句だと思います。
轍にはそう目がいかないと思うのですが、おそらくこの轍に
は少し水が溜まっていて青空をうつしていたのでしょう。思
わず目がいった様子も伝わります。深読みしすぎですかね。
(018) 早春の 旅を運びて 飛行雲 吉良
1 橋本
2 宮澤
3 深瀬 春先の空を見上げると飛行機雲がまぶしげに見え、
今年は海外のどこに旅行しようかなどと思いを馳せるのは、
ほんとうにたのしそうです。
(019) 鴨ツグミかわせみと遇ふ早春歩 橋本
(020) ダミ声や 自動車(くるま)の下に 猫の恋 中津川
1 藤原
(021) 早春の浅き眠りに老ひ深む 深瀬
1 吉良 人生あっという間に年をとるもの、うまく読んでい
ますね。
2 森杜瑯
3 柳町
4 宮澤
2.兼題 昭和、平成
(022) 平成の 黄昏愛し 椿落つ 宮澤
1 吉良 平成の世も椿の落ちるように最後は少しは美しく散
りたいもの。
(023) 昭和史に二二六の雪の朝 深瀬
(024) アルバムの 昭和は遠く セピア色 志方
1 藤原
(025) 東京に大雪ありし昭和かな 豊
(026) 平成を 極めし後も 雪の山 森杜瑯
(027) 平成や 金、北、災と 過ぎにけり 藤原
(028) 平成は閉まるも締まらぬ安倍政治 橋本
1 豊 「閉まる」「 締まらぬ」 と重ねたシャレに拍手です。
安倍政治は全く締まらない。私も同感です。
2 藤原
(029) 昭和には人間天皇帽子振り 深瀬
(030) 平成も 昭和も遠く 白髪染 吉良
(031) 平成後女系か途絶土俵際 深瀬
(032) カラオケに歌ふは昭和の曲ばかり 橋本
1 志方 古希を迎えた世代は昭和が懐かしく、また生きがい
にあふれた時代ですね。
(033) 団塊も昭和とともに過去完了 深瀬
1 中津川 我々団塊世代は頑張ってる人もそろそろ引退かな
(034) リストラを バブルはじけて 暮れに知る 中津川
(035) 凍て空に 平成挽歌 いま一度 森杜瑯
(036) 平成の 忖度誇る 霞が関 志方
(037) 平成の最後と我も参賀人 中津川
1 治部 平成という時代の最後を参賀という行動で締める。
いいですね。我も、というところに作者の正直な気持ちが表
れていますね。
(038) 北風に 平成押されて 夢飛ばず 森杜瑯
(039) 皺深し 昭和平成 駆け抜ける 吉良
1 森杜瑯
2 秋岡 駆け抜けるという言葉に共感します。
(040) 平成の三・一一山河哭く 深瀬
1 志方 なぜここまで住民を苦しめているのか、科学者と政
治家による人災
(041) 梅開く終わる平成惜しみつつ 豊
1 中津川 5月には新しい元号に変わってしまう感慨が伝わり
ます
(042) 春雷や 昭和はとほくなりにけり 小野寺
1 豊 中村草田男の「降る雪や明治は遠くなりにけり」と
同じ構造ですが、「 春雷」 を添えたところに新鮮さを感じま
した。
2 秋元
(043) 秋たかし 昭和五輪の 飛行雲 中津川
1 治部 この光景は昭和を生きた人は忘れないでしょう。秋
たかしの意味が下五の飛行雲で空だとわかる。でもそんなこ
と関係なくノスタルジックな気持ちになれる一句だと思いま
す。つまり今の光景は秋たかしだけで、昭和ノスタルジーを
印象的に表したいい句です。お見事でした。
2 柳町
3 豊 前回の東京オリンピックは戦後昭和の象徴でした。
思い出しますね。「 秋高し」 と季語を添えてうまくまとまり
ました。
4 深瀬 1964年、昭和39年の東京オリンピック当時、わたし
たちは高校生でした。当時の世の中の活気が沸沸と思い出さ
されました。
(044) 平成後米中の谷底見えず 深瀬
(045) 平成に何を成したか懐手 治部
1 橋本
2 宮澤
(046) 平成の 炎は昇る 寒月に 森杜瑯
(047) 老い桜 平成最後の 芽吹きかな 志方
1 吉良 我々の心境でしょうか。
(048) アナクロの天皇?首相?家長職 深瀬
3.雑詠、無季語
(049) 霜晴れや 薔薇一陣の風に揺れ 小野寺
(050) 風に舞ふ落ち葉の音のしむ身かな 深瀬
1 森杜瑯
2 小野寺 晩秋の風に舞い散る落ち葉は、さながら疲れた心の
隙間に吹く風でしょうか、
(051) みちのくの 枯野遥かに 夢吹雪 小野寺
1 柳町
(052) 白む空 輝き一つ 梅に露 宮澤
(053) 冬木立空にオリオン北の旅 小野寺
(054) 寒木立 紺碧の空 渡り鳥 志方
(055) 凍て土に 柚子の香りは眠りをり 小野寺
(056) 寒風に 定年男 吠え叫び 森杜瑯
(057) 寒椿 雪の重みを凌ぎをり 小野寺
1 秋元
2 藤原
(058) 帰らざるおもひかさねし冬茜 (あかね) 深瀬
1 志方 あの日に帰ってみたいおもいが切なく表現されてい
る
2 橋本
3 小野寺 冬の日の夕陽に過ぎた日の取り戻す事のできない想
いを重ね合わせているのでしょうか。
(059) 戦場(いくさば)に雪の残月 夢の跡 小野寺
(060) 春一番 陽だまり揺れて 乱れ雲 宮澤
1 藤原
(061) 雑木林落ち葉のベッドに眠り居り 橋本
1 深瀬 厚く落ち葉が敷きつめられた雑木林のなかは、まだ
春の気配が遠く静寂そのものなのだと思います。そのなかを
散策している様子が伝わってきました。
(062) なまはげにおびえる子らのいじらしさ 深瀬
(063) 冬枯れの野にけぶりたち鳶の声 小野寺
1 治部
2 中津川 けぶりたつという表現を想像しています
(064) 薄氷 踏んで感じる 暖かさ 柳町
1 中津川 少しずつ近づいてくる春の予感が感じられます
2 秋岡 寒いと言え氷が段々薄くなってくると暖かくなって
きたなあと感じるのでしょうね
(065) 松明けの妻と朝餉の静かさや 深瀬
1 吉良 言葉を交わさないでも二人の気持ちが通じ合ってい
るように思えます。
2 桑子 正月休みで来ていただろう孫らがようやく帰って、
やっと二人になってゆっくりできる情景がよくでていると思
いました。共感しました。
3 秋岡 年末年始の慌しさからやっと解放された気分なので
しょうか
(066) 残照の 苫屋に淡く冬の影 小野寺
1 志方 一服の山水画のように思えます。
2 治部
3 橋本
(067) 生きている意味は分からず死にもせず 深瀬
1 森杜瑯
2 桑子 悩める?人生観がでていていいと思います。この歳
(多分古希を過ぎているのでしょうか)でまだ悩めるのはう
らやましい。
3 宮澤
(068) 東雲(しののめ)の路鮮やかに落ち椿 小野寺
1 治部
(069) 切り干しの湯に漬かるごと座のなごみ 深瀬
1 小野寺 切り干しの湯に浸かるようなとは懐かしい、しみじ
みとした情感です。
(070) 外は雪 闇切り裂いて 百舌鳥の声 小野寺
(071) なまはげや出刃と雄叫び雪の夜 深瀬
1 豊 なまはげの雰囲気がストレートに出ています。
(072) 寒風に陸奥 (みちのく) 想ふや芭蕉像 橋本
1 吉良 旅を思う芭蕉の気持ちが伝わります。
2 小野寺 冬の日の烈風は芭蕉の奥の細道を思い起こさせたの
でしょう。
(073) 百舌鳥哭きて父の墓前を去りにけり 小野寺
1 豊 百舌鳥の鳴き声は独特の鋭さがあります。墓参りに
きた作者の想いがその声に共鳴したのでしょう。
(074) 来訪神登録遺産面映ゆく 深瀬
(075) 大漁の帰帆連なり春うらら 治部
1 吉良 色とりどりの大漁旗が閃いた春の光景が絵のように
広がります。
(076) 蒼海に霙(みぞれ)降り積み天は暮れ 小野寺
(077) 冬散歩燗酒小便あと1000歩 桑子
1 中津川 毎日一万が日課ですか結構大変ですね
(078) 塔頭に残せし想ひ 古都は雪 小野寺
1 秋岡 残せし想いはどんな想いなんでしょうか?古都は雪
が似合いますね。
(079) 雪解けの土の中より緑の芽 豊
(080) くれないに 燃ゆる椿に雪が舞ひ 小野寺
1 秋元
2 深瀬 椿の大きなくれないの花と白い雪のコントラストが
とても鮮やかだと感じました。絵画的な俳句だと思います。
(081) 見はるかす 稜線白き 八ヶ岳 志方
1 橋本
2 藤原
3 深瀬 「見はるかす」や「稜線」といったことばが効いて、
冬の雄大な八ヶ岳のたたずまいが、パノラマのように活写さ
れているように感じました。
(082) 頬被りして里帰り土産無し 治部
(083) 胸ゆする 北風向かい われ進む 森杜瑯
(084) 鼻水の 春や花粉の 山霞 柳町
1 中津川 スギ花粉の季節が来ます 鼻がムズムズしますね
(085) 松明けや整理し部屋の崩れゆく 深瀬
1 橋本
(終活のつもりの年賀状に書き添えました)
(086) 古希過ぎて新しき時代身は軽く 橋本
(087) 星冴えて 森羅万象回りゆき 小野寺
1 森杜瑯
2 秋元
3 深瀬 わたしたちの居住している地球を含む天の川銀河が、
しずかに渦巻いている様を想像させる雄大なスケールを感じ
ました。
(088) 切り干しに江戸の賑わい日本橋 深瀬
(089) 海見える何だ坂こんな坂着ぶくれて 治部
(090) 三日月を闇夜に掛けて百舌鳥は啼き 小野寺
(091) 松明けの体重悩む平和かな 深瀬
(092) 梅の花一目も会えず友の逝く 治部
1 志方 死が周りに近づいていることを、意識しながら、1
日1 日を大切にしていかねばと今日もまた一杯
2 柳町
3 小野寺 梅の花の開花を待たずに逝ってしまった友への痛切
な哀惜の情を感じます。
(093) 夢に舞ふ 能登の黒髪花衣 小野寺
1 秋元
(094) お水取り待つ夜静かな二月堂 豊
1 柳町
(095) 雪の原 雄叫び聴くや 衣川 小野寺
1 森杜瑯
2 桑子 芭蕉の句『夏草や兵どもが夢の跡』との対比がおも
しろいと思いました。
(096) 信号の 点滅むなし 梅月夜 宮澤
(097) ふるさとは霙 (みぞれ) の彼方寒椿 小野寺
1 豊 みぞれが降っている中に寒椿が咲いている。それを
見た作者は故郷の雪を思い出した。それとも、故郷のみぞれ
の中に咲いている寒椿を思った句でしょうか。
2 秋元
3 宮澤
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2019年2月24日日曜日
2018年12月11日火曜日
七句会 第二十六回目のネット句会 自句自解です。
七句会のみなさま
第二十六回の選句結果を踏まえて、感想や自句自解、等をおよせいただき、
たいへんありがとうございました。
およせいただいたものを、名前順に、ほぼそのまままとめてお届けすること
にします。今後のやり方に、ご意見、等ありましたら、よろしくお願いします。
七句会のweb http://nanaku-haiku.blogspot.jp/ にも掲載してあります。
今後とも、よろしくお願いいたします。
深瀬 (事務方)
1.秋元さんの自句自解
・生け垣の赤き南天鳥が喰い
以前住んでいた一軒家では、路地沿いに生け垣のように生い茂った南天が、
秋になると頂上に赤い実を付けます。これを目当てに鳥たちがやって来ました。
・軒先きの実生の葡萄色づきぬ
葡萄を食べてポイと種を吐き出して、何年か経った後、芽を出して蔓のよう
に伸びた木から毎春新芽を出して、実を付けて秋になるとブドウ色に熟して来
ます。美味しそうな実を摘まんで口に運ぶと確かにブドウです。これも殆どは
鳥の餌になっていました。
・暑さ去り鍋が恋しき夕景色
あの暑い夏季がようやく過ぎ、しかし、まだ初秋には程遠い陽気のなかで、
夕方になると気分だけは秋を感じたかった。
・里山の枯れ木にたわわ次郎柿
里山に良くある風景ですが、大井町線から見える大岡山の東工大のキャンパ
ス側にいつも秋になるとたわわに柿がついた木が見えました。次郎柿だったか
な?
・佐渡の海山路に映える柿一つ (2 点句)
もう50年も前のことです。11月の佐渡にバックパッカー然の格好で旅し
た時、夕日が落ち相川へもうすぐという山道で月明かりにきらきらと輝くどこ
までも続いていそうな今迄見たことのないような暗く深い佐渡の海が遠くに眺
められました。ふと目をやると柿の木に一つ熟れた実が残っている、そんな景
色を山道で見たのです。
その後、その山道を歩いて来る女性に出会いました。まだ、相川の宿を決め
ていなかったので、相川に宿はあるかと尋ねると大丈夫ですよと答えてくれま
した。相川に着くと宿から迎えに来ていて、その晩は本当に美味しい佐渡米の
ご飯と温かい布団に包まり一夜を過ごした記憶が残っています。山路で行き違
いに出遭った女性は宿のひとで、隣町から連絡しくれていたのです。
2.小野寺さんの自句自解
・古戦場 熱き血潮か曼珠沙華
奥州衣川古戦場は頼朝の命を受けた本来守るべきはずの藤原氏の討伐により
源義経が最後を遂げた戦いの地です。
古戦場に咲く紅い彼岸花は 頼みの弁慶達が討たれた後妻子を手にかけて自
害せざるを得なかった義経の、さながら熱い血潮の怨念の様でもありました。
奥州一関は私の祖父の出生の地で子供の頃に最後のくだりをよく聞かされ実
際尋ねもしました。
・暁に古都の甍を 紅葉舞ひ
静寂の中に眠る秋の早暁 京の町屋の黒い瓦屋根に朝の光りを浴びた紅葉が
ひらひらと舞い散る様は一幅の絵巻物のようでもありました。
・落ち鮎を焼いて故郷を語りけり
簗(やな)で捕った落ち鮎は卵をもった子持ち鮎で同郷の友人と落ち鮎をた
べると三陸の子供の頃に食べた香ばしいあの落ち鮎の独特の香りに想いが飛び
ます。
・栗の飯 夕餉の匂い 妻の声
秋の気配漂う夕暮れに好物の栗ご飯ができたと階下で妻の声がして 温かな
夕餉の匂いは平穏無事に過ぎた日の日常に対する感謝の思いです。
・杣道(そまみち)に野仏の居り秋時雨
獣みちの様な険しく細い笹の葉で覆われた山路で秋時雨に濡れそぼちながら
野仏は佇んで居たのです。この世の不思議な出逢いのようでもありました。
・亡き朋はウ”イオロン弾くや画の中に
故人の学生時代の絵画展で友人が心血を注いだバイオリン弾きの油彩画を観
ましたが友人はバイオリンを弾くその人であり、永遠の生命(いのち)を生き
ているのだと感銘を受けたのです。ウ”イオロンとしたのは深瀬さんのご指摘
のようにベルレーヌの「秋の日のウ”イオロンのため息のひたぶるに身に染み
てうら悲し~」からの引用で語数を短くする意図もあります。季語は入れられ
ませんでしたが。亡き朋への深い惜別の想いがあります。
・戦場のすすきの海に月のぼり
古戦場に秋の陽が落ち 辺り一面すすきの群生が銀色の穂をなびかせており
さながら海の波のように蕭然とした情景のなかに 遠く白い月があがり人の世
のあわれを感じる以上に 凄まじい光景でした。
・曇天を雁飛び立ちぬ北の海
荒涼とした北の海の曇天をついて一斉に雁の群れが飛翔してゆくさまは遥か
な波頭を超えて長く遠い旅に立つ雁たちの健気で不思議な決意を感じたのです。
・征きてなほ 祖国護るや 彼岸花
国を守るために出征し異国の地に散っていった幾百万の英霊達は深紅の彼岸
花となりこの祖国を護っているのだと思うとあだやおろそかに人生を生きられ
ないという想いになります。
・秋蝶の破れし翅に陽は翳り
長い夏を生き抜いてきた瑠璃色のルリタテハの翅は先が破れており秋の釣瓶
落ちの斜陽が落ちて 翳りが翅に微かにかかっておりました。生命あるものの
移ろいの色なのだと感じたのです。
・百舌鳥啼きて銀漢の闇鎮まれり
秋も深まった冬まじかの月のない夜道銀河を仰ぎ視ると 鋭く 百舌鳥が啼
き 深い闇の底に確かな 自然の運行を感じたのでした。
3.豊さんの自句自解
・秋の日や古仏微笑む万葉路
いかにも俳句という感じだったので、どうかと思いましたが、皆さんにはわ
かりやすかったようです。
・朽ち果てて落葉降りつむ墓標かな
朽ち果てた墓標と落葉。人間も自然も無常、いつかは滅びてゆく、その哀れ
さを詠んでみました。
・新蕎麦を江戸より続く老舗にて
老舗の蕎麦屋には伝統の味があります。せっかく新蕎麦を味わうのなら、老
舗のほうがいい。これから食べに行くでも、食べた後でも、どちらに解釈して
いただいてもかまいません。
・老夫婦手を取り合いて菊日和
長年連れ添ってきた夫婦の仲睦まじい秋の一日の様子を詠みました。「菊日
和」を「菊花展」にしたほうがよかったと思います。
4.深瀬の自句自解
・輝ける柿の実あおぐ老夫婦
人生の終盤で、充実感をもって来た道を振り返ることのできる夫婦は理想的
だと思って詠みました。
・柿の実に五重塔を透かし見る (3 点句)
子規の "柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺" は、近代俳句の代表のように言われ
ますが、それほど情景が鮮やかに浮かぶという感じもしません。少し張り合っ
てみました。
・廃屋の庭の柿の実夕陽受け
廃屋の庭になっている柿の実の心境に思いを寄せてみました。
・妻亡くし鍋が得意と友の言ふ
毎年、熱海に一泊し飲み会をする友人らがいて、その内二人が奥さんに先立
たれています。夕食の話しになり、一人は外食ばかりですが、自炊をしている
一人は、鍋料理が多いとのでした。
・鍋で煮るおでん待つ間のひとりごと
おでんは手軽に作れ、おいしく食べられるので、独り身の人には便利ではな
いかと思います。奥さんを亡くした友人が、ひとりで夕食をとりながら、テレ
ビによく独り言を言っていると言っていたのを思い出しました。
・公園の屋台のおでん味深め
子供のころ、公園におでんの屋台をひいたおじさんが来て、いいにおいをさ
せていました。当時は、おでんを買う勇気はありませんでしたが、いまもコン
ビニでおでんを買う勇気はありません。
・終活の本棚前に秋の暮れ (2 点句)
本棚は、一応、分野別には整理してあるのですか、積ん読的な本も多いので
、整理しなくてはと思うのですが、なかなか手がつきません。
・終活の手順を思案秋の朝
最近、終活の大切さがかなり気になるようになりました。その段取りは、よ
く考えて取り組まないとうまくいかないと思い、自分に言い聞かせる意味で詠
みました。
・終活のネット解約秋の夜
金利のよさもあり、ネット銀行の口座を5 つほど持っていたのですが、今後
のことを考えて、1 つを残し解約しました。
・タワマンの窓辺過ぎ行く秋の風
タワマンの窓からの景色を勝手に想像してみました。
・地下街を行き交う人に秋深む
仕事で朝、日本橋三越の地下1 階の銀座線口のベンチによく座ることがあり
ます。通勤の人たちがたくさん行き交う様を見ていての感じです。
・秋の雲空にあざやか筆づかい
秋の雲は、うろこ雲をはじめ、びっくりするような模様を壮大に描き出しま
す。それを筆づかいとしてみたのですが。
・秋の声しずかに睨む仁王像
以前、 "弥勒像思惟の指先秋の声" という句を詠んだのですが、雷門の仁王
像の前を仕事でよく通るので、少し応用してみました。
・秋の声どこに向かうか身改む
終活の一環として、残りの人生をどう生きるか、改めて向き合う覚悟を詠ん
だつもりですが。
・交差点人込み縫うや秋の風
以前、 "街頭のひとごみ縫って舞う落ち葉" という句を詠んだのですが、そ
のバリエーションのつもりです。
・みつめれば遠い想い出青蜜柑 (2 点句)
青蜜柑は、かつて旅行で電車に乗る前に買い込む定番のような感じでした。
・仏壇の朱盆にふたつ青蜜柑 (3 点句)
仏壇と黒、朱盆の赤、青蜜柑の緑を組合せてみました。歌舞伎の緞帳もこの
三色なのに後で気がつきました。
・腹回りうきわ付きねと妻の言ふ
家内はときどき大胆なユーモアを口にします。これも言われてなるほどと納
得しました。
・人形に変身ツールつけまかな
つけまつげを芸能人とか水商売の女性がつけるのは分かりますが、電車のな
かで普通の女性がしているのを最近、よくみかけます。なにか人形なのか生身
の人間の感覚を放棄しているようでやや不気味です。世の中が機能化している
ということでしょうか。
・スマホ持ち人それぞれの電車内
混雑した電車のなかで、それぞれが勝手にスマホを操作している様子は、な
にか現代社会を象徴しているようです。
第二十六回の選句結果を踏まえて、感想や自句自解、等をおよせいただき、
たいへんありがとうございました。
およせいただいたものを、名前順に、ほぼそのまままとめてお届けすること
にします。今後のやり方に、ご意見、等ありましたら、よろしくお願いします。
七句会のweb http://nanaku-haiku.blogspot.jp/ にも掲載してあります。
今後とも、よろしくお願いいたします。
深瀬 (事務方)
1.秋元さんの自句自解
・生け垣の赤き南天鳥が喰い
以前住んでいた一軒家では、路地沿いに生け垣のように生い茂った南天が、
秋になると頂上に赤い実を付けます。これを目当てに鳥たちがやって来ました。
・軒先きの実生の葡萄色づきぬ
葡萄を食べてポイと種を吐き出して、何年か経った後、芽を出して蔓のよう
に伸びた木から毎春新芽を出して、実を付けて秋になるとブドウ色に熟して来
ます。美味しそうな実を摘まんで口に運ぶと確かにブドウです。これも殆どは
鳥の餌になっていました。
・暑さ去り鍋が恋しき夕景色
あの暑い夏季がようやく過ぎ、しかし、まだ初秋には程遠い陽気のなかで、
夕方になると気分だけは秋を感じたかった。
・里山の枯れ木にたわわ次郎柿
里山に良くある風景ですが、大井町線から見える大岡山の東工大のキャンパ
ス側にいつも秋になるとたわわに柿がついた木が見えました。次郎柿だったか
な?
・佐渡の海山路に映える柿一つ (2 点句)
もう50年も前のことです。11月の佐渡にバックパッカー然の格好で旅し
た時、夕日が落ち相川へもうすぐという山道で月明かりにきらきらと輝くどこ
までも続いていそうな今迄見たことのないような暗く深い佐渡の海が遠くに眺
められました。ふと目をやると柿の木に一つ熟れた実が残っている、そんな景
色を山道で見たのです。
その後、その山道を歩いて来る女性に出会いました。まだ、相川の宿を決め
ていなかったので、相川に宿はあるかと尋ねると大丈夫ですよと答えてくれま
した。相川に着くと宿から迎えに来ていて、その晩は本当に美味しい佐渡米の
ご飯と温かい布団に包まり一夜を過ごした記憶が残っています。山路で行き違
いに出遭った女性は宿のひとで、隣町から連絡しくれていたのです。
2.小野寺さんの自句自解
・古戦場 熱き血潮か曼珠沙華
奥州衣川古戦場は頼朝の命を受けた本来守るべきはずの藤原氏の討伐により
源義経が最後を遂げた戦いの地です。
古戦場に咲く紅い彼岸花は 頼みの弁慶達が討たれた後妻子を手にかけて自
害せざるを得なかった義経の、さながら熱い血潮の怨念の様でもありました。
奥州一関は私の祖父の出生の地で子供の頃に最後のくだりをよく聞かされ実
際尋ねもしました。
・暁に古都の甍を 紅葉舞ひ
静寂の中に眠る秋の早暁 京の町屋の黒い瓦屋根に朝の光りを浴びた紅葉が
ひらひらと舞い散る様は一幅の絵巻物のようでもありました。
・落ち鮎を焼いて故郷を語りけり
簗(やな)で捕った落ち鮎は卵をもった子持ち鮎で同郷の友人と落ち鮎をた
べると三陸の子供の頃に食べた香ばしいあの落ち鮎の独特の香りに想いが飛び
ます。
・栗の飯 夕餉の匂い 妻の声
秋の気配漂う夕暮れに好物の栗ご飯ができたと階下で妻の声がして 温かな
夕餉の匂いは平穏無事に過ぎた日の日常に対する感謝の思いです。
・杣道(そまみち)に野仏の居り秋時雨
獣みちの様な険しく細い笹の葉で覆われた山路で秋時雨に濡れそぼちながら
野仏は佇んで居たのです。この世の不思議な出逢いのようでもありました。
・亡き朋はウ”イオロン弾くや画の中に
故人の学生時代の絵画展で友人が心血を注いだバイオリン弾きの油彩画を観
ましたが友人はバイオリンを弾くその人であり、永遠の生命(いのち)を生き
ているのだと感銘を受けたのです。ウ”イオロンとしたのは深瀬さんのご指摘
のようにベルレーヌの「秋の日のウ”イオロンのため息のひたぶるに身に染み
てうら悲し~」からの引用で語数を短くする意図もあります。季語は入れられ
ませんでしたが。亡き朋への深い惜別の想いがあります。
・戦場のすすきの海に月のぼり
古戦場に秋の陽が落ち 辺り一面すすきの群生が銀色の穂をなびかせており
さながら海の波のように蕭然とした情景のなかに 遠く白い月があがり人の世
のあわれを感じる以上に 凄まじい光景でした。
・曇天を雁飛び立ちぬ北の海
荒涼とした北の海の曇天をついて一斉に雁の群れが飛翔してゆくさまは遥か
な波頭を超えて長く遠い旅に立つ雁たちの健気で不思議な決意を感じたのです。
・征きてなほ 祖国護るや 彼岸花
国を守るために出征し異国の地に散っていった幾百万の英霊達は深紅の彼岸
花となりこの祖国を護っているのだと思うとあだやおろそかに人生を生きられ
ないという想いになります。
・秋蝶の破れし翅に陽は翳り
長い夏を生き抜いてきた瑠璃色のルリタテハの翅は先が破れており秋の釣瓶
落ちの斜陽が落ちて 翳りが翅に微かにかかっておりました。生命あるものの
移ろいの色なのだと感じたのです。
・百舌鳥啼きて銀漢の闇鎮まれり
秋も深まった冬まじかの月のない夜道銀河を仰ぎ視ると 鋭く 百舌鳥が啼
き 深い闇の底に確かな 自然の運行を感じたのでした。
3.豊さんの自句自解
・秋の日や古仏微笑む万葉路
いかにも俳句という感じだったので、どうかと思いましたが、皆さんにはわ
かりやすかったようです。
・朽ち果てて落葉降りつむ墓標かな
朽ち果てた墓標と落葉。人間も自然も無常、いつかは滅びてゆく、その哀れ
さを詠んでみました。
・新蕎麦を江戸より続く老舗にて
老舗の蕎麦屋には伝統の味があります。せっかく新蕎麦を味わうのなら、老
舗のほうがいい。これから食べに行くでも、食べた後でも、どちらに解釈して
いただいてもかまいません。
・老夫婦手を取り合いて菊日和
長年連れ添ってきた夫婦の仲睦まじい秋の一日の様子を詠みました。「菊日
和」を「菊花展」にしたほうがよかったと思います。
4.深瀬の自句自解
・輝ける柿の実あおぐ老夫婦
人生の終盤で、充実感をもって来た道を振り返ることのできる夫婦は理想的
だと思って詠みました。
・柿の実に五重塔を透かし見る (3 点句)
子規の "柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺" は、近代俳句の代表のように言われ
ますが、それほど情景が鮮やかに浮かぶという感じもしません。少し張り合っ
てみました。
・廃屋の庭の柿の実夕陽受け
廃屋の庭になっている柿の実の心境に思いを寄せてみました。
・妻亡くし鍋が得意と友の言ふ
毎年、熱海に一泊し飲み会をする友人らがいて、その内二人が奥さんに先立
たれています。夕食の話しになり、一人は外食ばかりですが、自炊をしている
一人は、鍋料理が多いとのでした。
・鍋で煮るおでん待つ間のひとりごと
おでんは手軽に作れ、おいしく食べられるので、独り身の人には便利ではな
いかと思います。奥さんを亡くした友人が、ひとりで夕食をとりながら、テレ
ビによく独り言を言っていると言っていたのを思い出しました。
・公園の屋台のおでん味深め
子供のころ、公園におでんの屋台をひいたおじさんが来て、いいにおいをさ
せていました。当時は、おでんを買う勇気はありませんでしたが、いまもコン
ビニでおでんを買う勇気はありません。
・終活の本棚前に秋の暮れ (2 点句)
本棚は、一応、分野別には整理してあるのですか、積ん読的な本も多いので
、整理しなくてはと思うのですが、なかなか手がつきません。
・終活の手順を思案秋の朝
最近、終活の大切さがかなり気になるようになりました。その段取りは、よ
く考えて取り組まないとうまくいかないと思い、自分に言い聞かせる意味で詠
みました。
・終活のネット解約秋の夜
金利のよさもあり、ネット銀行の口座を5 つほど持っていたのですが、今後
のことを考えて、1 つを残し解約しました。
・タワマンの窓辺過ぎ行く秋の風
タワマンの窓からの景色を勝手に想像してみました。
・地下街を行き交う人に秋深む
仕事で朝、日本橋三越の地下1 階の銀座線口のベンチによく座ることがあり
ます。通勤の人たちがたくさん行き交う様を見ていての感じです。
・秋の雲空にあざやか筆づかい
秋の雲は、うろこ雲をはじめ、びっくりするような模様を壮大に描き出しま
す。それを筆づかいとしてみたのですが。
・秋の声しずかに睨む仁王像
以前、 "弥勒像思惟の指先秋の声" という句を詠んだのですが、雷門の仁王
像の前を仕事でよく通るので、少し応用してみました。
・秋の声どこに向かうか身改む
終活の一環として、残りの人生をどう生きるか、改めて向き合う覚悟を詠ん
だつもりですが。
・交差点人込み縫うや秋の風
以前、 "街頭のひとごみ縫って舞う落ち葉" という句を詠んだのですが、そ
のバリエーションのつもりです。
・みつめれば遠い想い出青蜜柑 (2 点句)
青蜜柑は、かつて旅行で電車に乗る前に買い込む定番のような感じでした。
・仏壇の朱盆にふたつ青蜜柑 (3 点句)
仏壇と黒、朱盆の赤、青蜜柑の緑を組合せてみました。歌舞伎の緞帳もこの
三色なのに後で気がつきました。
・腹回りうきわ付きねと妻の言ふ
家内はときどき大胆なユーモアを口にします。これも言われてなるほどと納
得しました。
・人形に変身ツールつけまかな
つけまつげを芸能人とか水商売の女性がつけるのは分かりますが、電車のな
かで普通の女性がしているのを最近、よくみかけます。なにか人形なのか生身
の人間の感覚を放棄しているようでやや不気味です。世の中が機能化している
ということでしょうか。
・スマホ持ち人それぞれの電車内
混雑した電車のなかで、それぞれが勝手にスマホを操作している様子は、な
にか現代社会を象徴しているようです。
2018年11月19日月曜日
七句会 第26回目のネット句会 選句結果のご報告です。
七句会のみなさま
第二十六回の七句会にご参加いただきたいへんありがとうございました。
今回の選句結果をご報告いたします。
4 点句
(038) 秋の日や古仏微笑む万葉路 豊
(047) 古戦場 熱き血潮か曼珠沙華 小野寺
3 点句
(012) 柿の実に五重塔を透かし見る 深瀬
(043) 祖谷渓や千尋の谷底に秋 橋本
(057) 仏壇の朱盆にふたつ青蜜柑 深瀬
2 点句
(014) さんま刺し 旧交の宴 湯割り酒 中津川
(019) 佐渡の海山路に映える柿一つ 秋元
(021) 故郷 (ふるさと) の 宅配待てり 熟し柿 吉良
(031) 落ち鮎を焼いて故郷を語りけり。 小野寺
(049) 朽ち果てて落葉降りつむ墓標かな 豊
(050) 暁 (あかつき) に古都の甍を 紅葉舞ひ 小野寺
(054) 終活の本棚前に秋の暮れ 深瀬
(055) 杣道 (そまみち) に野仏の居り秋時雨 小野寺
(056) 忍びよる 金木犀の 芳しさ 志方
(058) 亡き朋はヴィオロン弾くや画のなかに 小野寺
(062) みつめれば遠い想い出青蜜柑 深瀬
(067) 戦さ場のすすきの海に月のぼり 小野寺
(076) 征きてなほ 祖国護るや 彼岸花 小野寺
下記に、選句表に、各句の右側に作者名、および、その下に選んだ人の名前
とコメント (追番付き、順不同、敬称略。) を付したものを添付します。
次回については、来年1 月中旬ころにご連絡したいと思っていますので、よ
ろしくお願いいたします。やり方、等について、ご意見がありましたら、ご連
絡をいただきたく、よろしくお願いいたします。
事務方から、以下、ご連絡、ご依頼です。
(1) 選句参加者
今回の選句には、下記の12名が参加しました。
秋岡さん、秋元さん、小野寺さん、吉良さん、志方さん、治部さん、中津川
さん、橋本さん、森杜瑯さん、柳町さん、豊さん、深瀬。
(2) 今回の句会の結果を踏まえた自句自解、感想、等の募集について
今回の句会の選句結果を踏まえて、各自、表明しておきたいこともあるので
はないかと思いますので、自句自解、感想、等、なんでも結構ですので、募り
たいと思います。一応、期限としては12月8 日とし、事務方にメールでいただ
き、それを七句会の下記のweb に掲載することにしたいと思います。
http://nanaku-haiku.blogspot.jp/
これまで、句会の後、勉強会としての集まりを企画していましたが、参加者
が少ないこともあり、改めることにしました。集まっての勉強会も適宜、行い
たいとは思っていますが、よろしくお願いします。
2018.11.19
代表 橋口侯之介 (休会中)
顧問 豊 宣光
事務方 深瀬久敬
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1.兼題 秋の食べ物
(001) 暑さ去り鍋が恋しき夕景色 秋元
(002) べたら市 せり声高く 街灯り 吉良
(003) 天高く食の戻るを願ふなり 橋本
1 深瀬 「天高く馬肥ゆる秋」は、本来、逞しくなった馬に
乗った匈奴が攻め込んで来るのを警鐘するものだったそうで
す。体重がなかなか減らないのも問題 (私です) ですが、増
えないのも気がかりだと思います。
(004) 輝ける柿の実あおぐ老夫婦 深瀬
いつも熟すのを楽しみに待っていると、いつのま
にか鳥のえじきになってしまい、美味しく食べた
ことがない!!
(005) 富有柿 熟す間もなく 鳥のもの 柳町
(006) 生け垣の赤き南天鳥が喰い 秋元
(007) 釜の蓋取れば湯気立つ栗御飯 豊
1 志方 秋の味覚の美味しさが上手い表現ですね
(008) べったらの 香る夜店や 江戸の町 吉良
(009) 鱗雲恙 (つつが) なき日や里の柿 小野寺
1 橋本
(010) 雨戸閉め 帰り待つ家 炊くおでん 中津川
(011) 軒先きの実生の葡萄色づきぬ 秋元
1 小野寺 種から育てた葡萄には特別な愛着があるのでしょう。
軒先の蔓の先に葡萄の実が色をつけ、それは確かに季節の移
りかわりも教えてくれるのでしょう。
(012) 柿の実に五重塔を透かし見る 深瀬
1 中津川 たわわな実の間から塔がちらちら見えるのでしょう。
秋の果物は何と言っても柿が代表なんですね
2 秋元
3 秋岡 なぜかしら塔の傍には柿の木があり実がたわわにな
っています。 "透かし見る" というのは面白い表現だと思い
ました。
(013) べったらの 歯ごたえ旨し 酒すする 吉良
(014) さんま刺し 旧交の宴 湯割り酒 中津川
1 森杜瑯
2 橋本 秋刀魚も酒も旨いでしょう
(015) 妻亡くし鍋が得意と友の言ふ 深瀬
1 秋岡 妻を亡くされどれくらいの時間が過ぎたのでしょう
か。一区切りついた気分なのでしょうか。
(016) 松茸や ただよう湯の香 老舗宿 中津川
1 治部 土瓶蒸しなのでしょういいですね。何年もご無沙汰
しています。老舗宿とあるので、ここで香っているのは温泉
なのでしょうか。俳句的には土瓶蒸しであってほしいのです
が。
(017) 栗の飯 夕餉の匂い 妻の声 小野寺
1 治部 仲の良さが伝わります。栗ご飯の匂いはたまりませ
ん。秋ですね。
(018) 黄色実の花の様なる枝垂れ柿 橋本
1 秋元
(019) 佐渡の海山路に映える柿一つ 秋元
1 吉良 海の青と柿の色の対比が美しい。
2 小野寺 佐渡の海が見える山路に柿の木はあり秋の陽を浴び
て柿は海の藍と対照的に鮮やかな色を際立たせています。
(020) 鍋で煮るおでん待つ間のひとりごと 深瀬
1 豊 一人鍋のおでんを前に、どんな「ひとりごと」をつ
ぶやいているのでしょうか。「おでん待つ間」が微妙な心理
を現しています。
(021) 故郷 (ふるさと) の 宅配待てり 熟し柿 吉良
1 中津川
2 秋岡 都会ではなかなか美味しい熟し柿を作るのは難しい
ですね。陽当たりのいい、空気のいい田舎でないとやっぱり
駄目ですね。
(022) 廃屋の 柿の実落ちて 鳥の声 中津川
(023) 公園の屋台のおでん味深め 深瀬
(024) 柿の葉や貼り絵で飛び立つ赤い鳥 治部
1 深瀬 「貼り絵で飛び立つ」という表現に驚きました。赤
い柿の葉っぱが飛んでいる様子が立体的に目に見えるように
感じました。
(025) 柿食へば少年時代の里想ふ 橋本
(026) カボスの香 豊後の光り 部屋満ちる 吉良
(027) 里山の枯れ木にたわわ次郎柿 秋元
(028) 新蕎麦を江戸より続く老舗にて 豊
1 治部 食べたんでしょうね。羨ましい。新蕎麦は香りが何
とも言えないですよね。老舗では特にうまく感じるのは何故
でしょうか。
(029) 廃屋の庭の柿の実夕陽受け 深瀬
(030) 感謝して とどいた新米 塩むすび 中津川
1 治部 新米のおむすびは塩だけでうまいです。語順を逆に
すると感謝の気持ちがより伝わると思います。
(031) 落ち鮎を焼いて故郷を語りけり。 小野寺
1 吉良 落ちアユを焼いて食べてみたいものです。
2 治部 故郷でも鮎が取れるのでしょうね。秋の鮎を焼くと
思い出すのでしょう。語る仲間がいることも伝わります。
2.兼題 秋の旅行
(032) 富士浮かぶ 羽衣の松 秋澄みて 中津川
(033) 四方より虫鳴く声や露天風呂 豊
1 柳町
(034) 秋風のわくら葉祓い敷く小径 橋本
そらかみやこか
(035) 秋の旅宇宙か京都か思案する 治部
(036) 鳥わたる 加賀の酒へと 新幹線 中津川
1 志方 加賀の酒のうまさは格別みたいですね
(037) 散りばめし朱き実映える花水木 橋本
1 志方
(038) 秋の日や古仏微笑む万葉路 豊
1 柳町
2 橋本
3 深瀬 万葉のおもむきに溢れる古代の道をゆっくり歩いて、
しみじみとした感じになっている様子が伝わってきました。
4 小野寺 万葉の里を散策する秋の日 時の流れを生きてきた
仏も微笑んでいるのでしょう。ほのぼのとした感慨を思い起
こします。
(039) 黄葉 (もみじ) 愛で今日は雪舞ふ北の旅 橋本
1 小野寺 昨日は紅葉を愛でて秋を楽しんでいたのに今日は粉
雪の舞う北の街と男の独り旅もなかなかいいですね。
(040) 湯の煙 孫にひかれて 身を沈め 柳町
1 深瀬 わたしたち世代もこういう境遇になってきたのか、
とやや戸惑いの気持ちにもなりましたが、三世代、四世代の
家族で旅行をたのしむのもすてきかなと感じました。
あきさめのろてんでせとを
(041) 秋雨の露天風呂で瀬戸を一望す 治部
(042) もみじ浮く 硫黄の匂い 露店の湯 中津川
(043) 祖谷渓や千尋の谷底に秋 橋本
1 中津川 祖谷に向かう道やかづら橋を思い出しました
2 吉良 谷の底の紅葉の美しさが日本画のように目に浮かび
ます。
3 豊 祖谷渓は四国・徳島県の観光名所です。作者はそこ
を旅したのでしょう。「谷底に秋」の表現がうまいです。
(044) 風冷えて のぞくお釜や 秋蔵王 中津川
(045) 竹の春旅に出るかとさんざめく 治部
1 中津川 竹の緑と紅葉狩りへの期待が良く表されている様に
思います
(046) 霜月や 照葉の明り 宿の窓 柳町
3.雑詠、無季語
(047) 古戦場 熱き血潮か曼珠沙華 小野寺
1 森杜瑯
2 中津川 彼岸花が古の武将への鎮魂でしょうか
3 橋本 発想に感心します。秋の旅の句ではないのかな
4 秋岡 古戦場に咲く曼珠沙華は確かにそう見えますね。
(048) 秋の雲空にあざやか筆づかい 深瀬
1 志方 秋の雲の色彩が筆使いという上手い表現見事
(049) 朽ち果てて落葉降りつむ墓標かな 豊
1 森杜瑯
2 吉良 落ち葉の美しさがモノの憐れさを一層引き立てた句
です。
(050) 暁 (あかつき) に古都の甍を 紅葉舞ひ 小野寺
1 柳町
2 秋元
(051) 秋の声しずかに睨む仁王像 深瀬
1 豊 「秋の声」はどういう声でしょうか。紅葉した寺を
見に来た観光客のにぎやかな声かもしれません。それを、山
門の仁王像が「静かにしろ」とにらんでいるわけです。
(052) 雲淡く 滲んだ紅に コスモスが 志方
(053) 破れ寺 (やれでら) に柿の木のあり鳶の声 小野寺
(054) 終活の本棚前に秋の暮れ 深瀬
1 橋本 一寸寂しくなりますが
2 秋岡 小生も整理しなくては、整理しなくてはと思いなが
ら終日暮らしています。
(055) 杣道 (そまみち) に野仏の居り秋時雨 小野寺
1 治部 こんなにも細く険しい道にも野仏がいた。秋らしい
発見が伝わります。
2 秋元
(056) 忍びよる 金木犀の 芳しさ 志方
1 森杜瑯
2 橋本 忍びよるが新鮮です
(057) 仏壇の朱盆にふたつ青蜜柑 深瀬
1 中津川 色の対比がリアルです
2 吉良 朱と緑の色の対比がよい。画の素材になりますね。
3 豊 朱盆に青蜜柑という色の取り合わせがきれいです。
(058) 亡き朋はヴィオロン弾くや画のなかに 小野寺
1 深瀬 亡き朋が描いたヴィオロンの絵を前に、感慨にふけ
っている様子が伝わってきました。ヴィオロンというとポー
ル・ヴェルレーヌの秋の歌 (落葉) 、上田敏訳「秋の日の
ヴィオロンの ためいきの ひたぶるに 身にしみて うら
悲し~」が想起されます。駒東の授業で暗唱させたのか?
2 志方 逝きし朋への惜別がしみじみとかんじられます。
(059) 鬼子母神 真っ赤に染めし 紅葉手かな 杜瑯
(060) 風さやか 案山子傾く 刈穂かな 志方
1 小野寺 秋も深いあぜみちに稲穂がたわわに実り田んぼを守
ってきた案山子にさやかに風がそよぎ心地よい田園の風景で
す。
(061) 秋蝶の破れし翅に陽は翳り 小野寺
1 秋元
(062) みつめれば遠い想い出青蜜柑 深瀬
1 治部 青蜜柑を見つめている作者が面白い。どんな思い出
があったのかなぁ。
2 秋岡 小学生の時の秋の遠足では必ず親が初物のまだ甘く
ない青蜜柑を用意してくれました。遠い思い出です。
(063) 老い桜 野分に耐えて 冬がまた 志方
1 森杜瑯
(064) 天高く鰯雲超え朋は逝き 小野寺
1 柳町
(065) 甘酒を 若ぶる二人 夢と待つ 杜瑯
(066) 人形に変身ツールつけまかな 深瀬
(067) 戦さ場のすすきの海に月のぼり 小野寺
1 豊 古戦場の秋のさびれた風景の感じがよく出ています。
2 深瀬 先日、大学の同級生数人で、一面すすきの仙石原草
原に行ってきました。すすきはなにか不気味な感じもします
が、なにか強くひきつけられます。古戦場、すすき、月と揃
うと、人間存在のはかなさを突きつけられる感じです。
(068) よみがえる 内股老婆 長き夜 杜瑯
(069) 曇天を雁飛びたちぬ北の海 小野寺
1 吉良 雁が曇天の中を決意したように旅立つ様子がうまく
描写されている。
(070) 終活のネット解約秋の夜 深瀬
(071) 朝露に 空の茜を きらきらと 志方
(072) 朝露に山茶花の華 小鳥来る。 小野寺
(073) 老夫婦手を取り合いて菊日和 豊
(074) 新盆に 絵筆携え朋の声 小野寺
1 中津川
(075) 交差点人込み縫うや秋の風 深瀬
(076) 征きてなほ 祖国護るや 彼岸花 小野寺
1 柳町
2 深瀬 「征きてなほ」の意味するところがよく分からない
のですが、墓地の近辺に咲き乱れる真っ赤な彼岸花 (曼珠沙
華) が、逝ったあの世の人も、この世の人も見守ってくれて
いる、といった感じかなと思いました。
(077) タワマンの窓辺過ぎ行く秋の風 深瀬
(078) 逆上がり出来たと叫ぶ 孫の秋 小野寺
1 吉良 微笑ましい句です。
(079) 秋の声どこに向かうか身改む 深瀬
(080) 移りゆく 車窓に刻む 薄かな 志方
1 小野寺 旅の車窓の向こうを薄の群れが流れてゆく薄は己の
生命の儚さも乗せて流れていくようでもあります。
(081) 銀漢の澄みたる夜半に百舌が鳴き 小野寺
(082) 秋風や 前行く友を 息で追い 杜瑯
(083) 終活の手順を思案秋の朝 深瀬
(084) 奥津城は時雨 (しぐれ) て紅葉敷きつめし 小野寺
1 志方
(085) 夜長かな合わぬ眼鏡で読書する 治部
1 豊 秋の夜長は読書に向いています。本好きの作者は、
合わない眼鏡をかけてでも読みたいのでしょう。
(086) 石仏に翅たたみおり秋の蝶 小野寺
1 秋元
(087) 地下街を行き交う人に秋深む 深瀬
1 豊 何でもない風景を詠んだ句ですが、飾り立てた表現
ではない素直なところがいいです。「秋深む」が効いていま
す。
(088) 百舌啼きて銀漢の闇鎮まれリ 小野寺
1 志方 百舌鳥と銀漢の対比の妙
(089) スマホ持ち人それぞれの電車内 深瀬
(090) 潮騒に 鎮魂願う 浜千鳥 志方
1 小野寺 浜千鳥が遊ぶ海辺にたつと潮騒の音がまるで幾多の
生命を奪った海に対峙した、鎮魂の読経のようでもあり浜千
鳥はさながら読経につられて一心に祈りをささげる己の心の
心象風景でもあるのでしょうか。
(091) 朱 (あけ) に染め古都の日暮れを雁発ちぬ 小野寺
1 秋元
(092) 腹回りうきわ付きねと妻の言ふ 深瀬
1 橋本 ユーモアたっぷりですね
----
第二十六回の七句会にご参加いただきたいへんありがとうございました。
今回の選句結果をご報告いたします。
4 点句
(038) 秋の日や古仏微笑む万葉路 豊
(047) 古戦場 熱き血潮か曼珠沙華 小野寺
3 点句
(012) 柿の実に五重塔を透かし見る 深瀬
(043) 祖谷渓や千尋の谷底に秋 橋本
(057) 仏壇の朱盆にふたつ青蜜柑 深瀬
2 点句
(014) さんま刺し 旧交の宴 湯割り酒 中津川
(019) 佐渡の海山路に映える柿一つ 秋元
(021) 故郷 (ふるさと) の 宅配待てり 熟し柿 吉良
(031) 落ち鮎を焼いて故郷を語りけり。 小野寺
(049) 朽ち果てて落葉降りつむ墓標かな 豊
(050) 暁 (あかつき) に古都の甍を 紅葉舞ひ 小野寺
(054) 終活の本棚前に秋の暮れ 深瀬
(055) 杣道 (そまみち) に野仏の居り秋時雨 小野寺
(056) 忍びよる 金木犀の 芳しさ 志方
(058) 亡き朋はヴィオロン弾くや画のなかに 小野寺
(062) みつめれば遠い想い出青蜜柑 深瀬
(067) 戦さ場のすすきの海に月のぼり 小野寺
(076) 征きてなほ 祖国護るや 彼岸花 小野寺
下記に、選句表に、各句の右側に作者名、および、その下に選んだ人の名前
とコメント (追番付き、順不同、敬称略。) を付したものを添付します。
次回については、来年1 月中旬ころにご連絡したいと思っていますので、よ
ろしくお願いいたします。やり方、等について、ご意見がありましたら、ご連
絡をいただきたく、よろしくお願いいたします。
事務方から、以下、ご連絡、ご依頼です。
(1) 選句参加者
今回の選句には、下記の12名が参加しました。
秋岡さん、秋元さん、小野寺さん、吉良さん、志方さん、治部さん、中津川
さん、橋本さん、森杜瑯さん、柳町さん、豊さん、深瀬。
(2) 今回の句会の結果を踏まえた自句自解、感想、等の募集について
今回の句会の選句結果を踏まえて、各自、表明しておきたいこともあるので
はないかと思いますので、自句自解、感想、等、なんでも結構ですので、募り
たいと思います。一応、期限としては12月8 日とし、事務方にメールでいただ
き、それを七句会の下記のweb に掲載することにしたいと思います。
http://nanaku-haiku.blogspot.jp/
これまで、句会の後、勉強会としての集まりを企画していましたが、参加者
が少ないこともあり、改めることにしました。集まっての勉強会も適宜、行い
たいとは思っていますが、よろしくお願いします。
2018.11.19
代表 橋口侯之介 (休会中)
顧問 豊 宣光
事務方 深瀬久敬
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1.兼題 秋の食べ物
(001) 暑さ去り鍋が恋しき夕景色 秋元
(002) べたら市 せり声高く 街灯り 吉良
(003) 天高く食の戻るを願ふなり 橋本
1 深瀬 「天高く馬肥ゆる秋」は、本来、逞しくなった馬に
乗った匈奴が攻め込んで来るのを警鐘するものだったそうで
す。体重がなかなか減らないのも問題 (私です) ですが、増
えないのも気がかりだと思います。
(004) 輝ける柿の実あおぐ老夫婦 深瀬
いつも熟すのを楽しみに待っていると、いつのま
にか鳥のえじきになってしまい、美味しく食べた
ことがない!!
(005) 富有柿 熟す間もなく 鳥のもの 柳町
(006) 生け垣の赤き南天鳥が喰い 秋元
(007) 釜の蓋取れば湯気立つ栗御飯 豊
1 志方 秋の味覚の美味しさが上手い表現ですね
(008) べったらの 香る夜店や 江戸の町 吉良
(009) 鱗雲恙 (つつが) なき日や里の柿 小野寺
1 橋本
(010) 雨戸閉め 帰り待つ家 炊くおでん 中津川
(011) 軒先きの実生の葡萄色づきぬ 秋元
1 小野寺 種から育てた葡萄には特別な愛着があるのでしょう。
軒先の蔓の先に葡萄の実が色をつけ、それは確かに季節の移
りかわりも教えてくれるのでしょう。
(012) 柿の実に五重塔を透かし見る 深瀬
1 中津川 たわわな実の間から塔がちらちら見えるのでしょう。
秋の果物は何と言っても柿が代表なんですね
2 秋元
3 秋岡 なぜかしら塔の傍には柿の木があり実がたわわにな
っています。 "透かし見る" というのは面白い表現だと思い
ました。
(013) べったらの 歯ごたえ旨し 酒すする 吉良
(014) さんま刺し 旧交の宴 湯割り酒 中津川
1 森杜瑯
2 橋本 秋刀魚も酒も旨いでしょう
(015) 妻亡くし鍋が得意と友の言ふ 深瀬
1 秋岡 妻を亡くされどれくらいの時間が過ぎたのでしょう
か。一区切りついた気分なのでしょうか。
(016) 松茸や ただよう湯の香 老舗宿 中津川
1 治部 土瓶蒸しなのでしょういいですね。何年もご無沙汰
しています。老舗宿とあるので、ここで香っているのは温泉
なのでしょうか。俳句的には土瓶蒸しであってほしいのです
が。
(017) 栗の飯 夕餉の匂い 妻の声 小野寺
1 治部 仲の良さが伝わります。栗ご飯の匂いはたまりませ
ん。秋ですね。
(018) 黄色実の花の様なる枝垂れ柿 橋本
1 秋元
(019) 佐渡の海山路に映える柿一つ 秋元
1 吉良 海の青と柿の色の対比が美しい。
2 小野寺 佐渡の海が見える山路に柿の木はあり秋の陽を浴び
て柿は海の藍と対照的に鮮やかな色を際立たせています。
(020) 鍋で煮るおでん待つ間のひとりごと 深瀬
1 豊 一人鍋のおでんを前に、どんな「ひとりごと」をつ
ぶやいているのでしょうか。「おでん待つ間」が微妙な心理
を現しています。
(021) 故郷 (ふるさと) の 宅配待てり 熟し柿 吉良
1 中津川
2 秋岡 都会ではなかなか美味しい熟し柿を作るのは難しい
ですね。陽当たりのいい、空気のいい田舎でないとやっぱり
駄目ですね。
(022) 廃屋の 柿の実落ちて 鳥の声 中津川
(023) 公園の屋台のおでん味深め 深瀬
(024) 柿の葉や貼り絵で飛び立つ赤い鳥 治部
1 深瀬 「貼り絵で飛び立つ」という表現に驚きました。赤
い柿の葉っぱが飛んでいる様子が立体的に目に見えるように
感じました。
(025) 柿食へば少年時代の里想ふ 橋本
(026) カボスの香 豊後の光り 部屋満ちる 吉良
(027) 里山の枯れ木にたわわ次郎柿 秋元
(028) 新蕎麦を江戸より続く老舗にて 豊
1 治部 食べたんでしょうね。羨ましい。新蕎麦は香りが何
とも言えないですよね。老舗では特にうまく感じるのは何故
でしょうか。
(029) 廃屋の庭の柿の実夕陽受け 深瀬
(030) 感謝して とどいた新米 塩むすび 中津川
1 治部 新米のおむすびは塩だけでうまいです。語順を逆に
すると感謝の気持ちがより伝わると思います。
(031) 落ち鮎を焼いて故郷を語りけり。 小野寺
1 吉良 落ちアユを焼いて食べてみたいものです。
2 治部 故郷でも鮎が取れるのでしょうね。秋の鮎を焼くと
思い出すのでしょう。語る仲間がいることも伝わります。
2.兼題 秋の旅行
(032) 富士浮かぶ 羽衣の松 秋澄みて 中津川
(033) 四方より虫鳴く声や露天風呂 豊
1 柳町
(034) 秋風のわくら葉祓い敷く小径 橋本
そらかみやこか
(035) 秋の旅宇宙か京都か思案する 治部
(036) 鳥わたる 加賀の酒へと 新幹線 中津川
1 志方 加賀の酒のうまさは格別みたいですね
(037) 散りばめし朱き実映える花水木 橋本
1 志方
(038) 秋の日や古仏微笑む万葉路 豊
1 柳町
2 橋本
3 深瀬 万葉のおもむきに溢れる古代の道をゆっくり歩いて、
しみじみとした感じになっている様子が伝わってきました。
4 小野寺 万葉の里を散策する秋の日 時の流れを生きてきた
仏も微笑んでいるのでしょう。ほのぼのとした感慨を思い起
こします。
(039) 黄葉 (もみじ) 愛で今日は雪舞ふ北の旅 橋本
1 小野寺 昨日は紅葉を愛でて秋を楽しんでいたのに今日は粉
雪の舞う北の街と男の独り旅もなかなかいいですね。
(040) 湯の煙 孫にひかれて 身を沈め 柳町
1 深瀬 わたしたち世代もこういう境遇になってきたのか、
とやや戸惑いの気持ちにもなりましたが、三世代、四世代の
家族で旅行をたのしむのもすてきかなと感じました。
あきさめのろてんでせとを
(041) 秋雨の露天風呂で瀬戸を一望す 治部
(042) もみじ浮く 硫黄の匂い 露店の湯 中津川
(043) 祖谷渓や千尋の谷底に秋 橋本
1 中津川 祖谷に向かう道やかづら橋を思い出しました
2 吉良 谷の底の紅葉の美しさが日本画のように目に浮かび
ます。
3 豊 祖谷渓は四国・徳島県の観光名所です。作者はそこ
を旅したのでしょう。「谷底に秋」の表現がうまいです。
(044) 風冷えて のぞくお釜や 秋蔵王 中津川
(045) 竹の春旅に出るかとさんざめく 治部
1 中津川 竹の緑と紅葉狩りへの期待が良く表されている様に
思います
(046) 霜月や 照葉の明り 宿の窓 柳町
3.雑詠、無季語
(047) 古戦場 熱き血潮か曼珠沙華 小野寺
1 森杜瑯
2 中津川 彼岸花が古の武将への鎮魂でしょうか
3 橋本 発想に感心します。秋の旅の句ではないのかな
4 秋岡 古戦場に咲く曼珠沙華は確かにそう見えますね。
(048) 秋の雲空にあざやか筆づかい 深瀬
1 志方 秋の雲の色彩が筆使いという上手い表現見事
(049) 朽ち果てて落葉降りつむ墓標かな 豊
1 森杜瑯
2 吉良 落ち葉の美しさがモノの憐れさを一層引き立てた句
です。
(050) 暁 (あかつき) に古都の甍を 紅葉舞ひ 小野寺
1 柳町
2 秋元
(051) 秋の声しずかに睨む仁王像 深瀬
1 豊 「秋の声」はどういう声でしょうか。紅葉した寺を
見に来た観光客のにぎやかな声かもしれません。それを、山
門の仁王像が「静かにしろ」とにらんでいるわけです。
(052) 雲淡く 滲んだ紅に コスモスが 志方
(053) 破れ寺 (やれでら) に柿の木のあり鳶の声 小野寺
(054) 終活の本棚前に秋の暮れ 深瀬
1 橋本 一寸寂しくなりますが
2 秋岡 小生も整理しなくては、整理しなくてはと思いなが
ら終日暮らしています。
(055) 杣道 (そまみち) に野仏の居り秋時雨 小野寺
1 治部 こんなにも細く険しい道にも野仏がいた。秋らしい
発見が伝わります。
2 秋元
(056) 忍びよる 金木犀の 芳しさ 志方
1 森杜瑯
2 橋本 忍びよるが新鮮です
(057) 仏壇の朱盆にふたつ青蜜柑 深瀬
1 中津川 色の対比がリアルです
2 吉良 朱と緑の色の対比がよい。画の素材になりますね。
3 豊 朱盆に青蜜柑という色の取り合わせがきれいです。
(058) 亡き朋はヴィオロン弾くや画のなかに 小野寺
1 深瀬 亡き朋が描いたヴィオロンの絵を前に、感慨にふけ
っている様子が伝わってきました。ヴィオロンというとポー
ル・ヴェルレーヌの秋の歌 (落葉) 、上田敏訳「秋の日の
ヴィオロンの ためいきの ひたぶるに 身にしみて うら
悲し~」が想起されます。駒東の授業で暗唱させたのか?
2 志方 逝きし朋への惜別がしみじみとかんじられます。
(059) 鬼子母神 真っ赤に染めし 紅葉手かな 杜瑯
(060) 風さやか 案山子傾く 刈穂かな 志方
1 小野寺 秋も深いあぜみちに稲穂がたわわに実り田んぼを守
ってきた案山子にさやかに風がそよぎ心地よい田園の風景で
す。
(061) 秋蝶の破れし翅に陽は翳り 小野寺
1 秋元
(062) みつめれば遠い想い出青蜜柑 深瀬
1 治部 青蜜柑を見つめている作者が面白い。どんな思い出
があったのかなぁ。
2 秋岡 小学生の時の秋の遠足では必ず親が初物のまだ甘く
ない青蜜柑を用意してくれました。遠い思い出です。
(063) 老い桜 野分に耐えて 冬がまた 志方
1 森杜瑯
(064) 天高く鰯雲超え朋は逝き 小野寺
1 柳町
(065) 甘酒を 若ぶる二人 夢と待つ 杜瑯
(066) 人形に変身ツールつけまかな 深瀬
(067) 戦さ場のすすきの海に月のぼり 小野寺
1 豊 古戦場の秋のさびれた風景の感じがよく出ています。
2 深瀬 先日、大学の同級生数人で、一面すすきの仙石原草
原に行ってきました。すすきはなにか不気味な感じもします
が、なにか強くひきつけられます。古戦場、すすき、月と揃
うと、人間存在のはかなさを突きつけられる感じです。
(068) よみがえる 内股老婆 長き夜 杜瑯
(069) 曇天を雁飛びたちぬ北の海 小野寺
1 吉良 雁が曇天の中を決意したように旅立つ様子がうまく
描写されている。
(070) 終活のネット解約秋の夜 深瀬
(071) 朝露に 空の茜を きらきらと 志方
(072) 朝露に山茶花の華 小鳥来る。 小野寺
(073) 老夫婦手を取り合いて菊日和 豊
(074) 新盆に 絵筆携え朋の声 小野寺
1 中津川
(075) 交差点人込み縫うや秋の風 深瀬
(076) 征きてなほ 祖国護るや 彼岸花 小野寺
1 柳町
2 深瀬 「征きてなほ」の意味するところがよく分からない
のですが、墓地の近辺に咲き乱れる真っ赤な彼岸花 (曼珠沙
華) が、逝ったあの世の人も、この世の人も見守ってくれて
いる、といった感じかなと思いました。
(077) タワマンの窓辺過ぎ行く秋の風 深瀬
(078) 逆上がり出来たと叫ぶ 孫の秋 小野寺
1 吉良 微笑ましい句です。
(079) 秋の声どこに向かうか身改む 深瀬
(080) 移りゆく 車窓に刻む 薄かな 志方
1 小野寺 旅の車窓の向こうを薄の群れが流れてゆく薄は己の
生命の儚さも乗せて流れていくようでもあります。
(081) 銀漢の澄みたる夜半に百舌が鳴き 小野寺
(082) 秋風や 前行く友を 息で追い 杜瑯
(083) 終活の手順を思案秋の朝 深瀬
(084) 奥津城は時雨 (しぐれ) て紅葉敷きつめし 小野寺
1 志方
(085) 夜長かな合わぬ眼鏡で読書する 治部
1 豊 秋の夜長は読書に向いています。本好きの作者は、
合わない眼鏡をかけてでも読みたいのでしょう。
(086) 石仏に翅たたみおり秋の蝶 小野寺
1 秋元
(087) 地下街を行き交う人に秋深む 深瀬
1 豊 何でもない風景を詠んだ句ですが、飾り立てた表現
ではない素直なところがいいです。「秋深む」が効いていま
す。
(088) 百舌啼きて銀漢の闇鎮まれリ 小野寺
1 志方 百舌鳥と銀漢の対比の妙
(089) スマホ持ち人それぞれの電車内 深瀬
(090) 潮騒に 鎮魂願う 浜千鳥 志方
1 小野寺 浜千鳥が遊ぶ海辺にたつと潮騒の音がまるで幾多の
生命を奪った海に対峙した、鎮魂の読経のようでもあり浜千
鳥はさながら読経につられて一心に祈りをささげる己の心の
心象風景でもあるのでしょうか。
(091) 朱 (あけ) に染め古都の日暮れを雁発ちぬ 小野寺
1 秋元
(092) 腹回りうきわ付きねと妻の言ふ 深瀬
1 橋本 ユーモアたっぷりですね
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2018年9月10日月曜日
七句会 第二十五回目のネット句会 投句者による自句自解です。
七句会のみなさま
第二十五回の選句結果を踏まえて、感想や自句自解、等をおよせいただき、
たいへんありがとうございました。
およせいただいたものを、名前順に、ほぼそのまままとめてお届けすること
にします。今後のやり方に、ご意見、等ありましたら、よろしくお願いします。
七句会のweb http://nanaku-haiku.blogspot.jp/ にも掲載してあります。
今後とも、よろしくお願いいたします。
深瀬 (事務方)
1.秋元さんの自句自解
・海風にあたりて凌ぐ暑さかな
ベランダから眺める運河からは清々しい海風が吹き渡るはずでしたが、実は
熱風しか押し寄せないのが今夏で、一時の気晴らしの句でした。
・打ち水に涼を求める猛暑かな
何本かペットボトルに入れた水をベランダに撒いて一時の涼風を巻き起こそ
うとしましたが、あっという間に蒸発してしまい、嫌悪感にも近い儚い夢でし
た。
・熱帯夜今や懐かし死語となり
熱帯夜なんて以前のようにゆったりと構えていた一時的な現象ではなく、今
や、連日連夜のことで、言葉自体が懐かしい今夏でした。
2.小野寺さんの自句自解
・ゆるやかに蛍の生命(いのち)闇流る
蛍の青い光の連続は緩やかに闇の中を流れて、蛍の生命(いのち)の灯(と
もしび)のようにも見えて それは さながら人の命の 儚さのようでもあり
ます。
・炎天に汗したたりて 蝉しぐれ
風の音すらないひたすら暑い夏の日中蝉しぐれが響きわたり、ふと不思議な
涼を感じたのです。季重なりは承知の上で夏の季語を連ねてみました。
・鎮魂の読経の声か 夏の海
震災から早7 年が過ぎましたが被災地はまだ復興の途上にあり東北の閖上(
ゆりあげ)の海は、 潮騒の音がさながら鎮魂の読経の響きがありました。
・亡き友の絵に咲いており夏の薔薇
一緒に絵を描き絵画展も共にした友人が逝って早一年が経ちました。遺され
た絵の中に鮮やかに咲く 薔薇の花は、さながら友人の生命(いのち)の 証
しでもあるのです。
・紫陽花の 露に宿りて 虹光り
紫陽花の露に朝の光が当たり プリズムの様に虹が出現する様はさながら
小宇宙の様で自然の確かな運行に驚かされます。季重なりですが気にせず句と
しました。
・絽に足袋で 打ち水渡り 古都が暮れ
薄絹の黒い絽の着物の人が、 鮮やかな白足袋で、打ち水を渡ると古都の街
に夕暮れの帳(とばり)がそこまで降りてきていました。
・夕闇の殻脱ぎ捨てて 青き蝉
蝉の一生は幼虫で土中に7 年を過ごし蝉としてえ成虫になり2 -3 週間で命
を終えることより儚い生命の代名詞のように言われますが実は土の中で7 年も
生きる長生きの昆虫なのです。蛹から成虫になるのはたいてい夜ですが、長い
闇を殻とともに脱ぎ捨てて薄緑の碧い蝉になったと表現したかったのです。碧
い蝉の誕生はいつみても神秘的です。
3.橋本さんの自句自解
・蚊と暑さ逃れし蚊帳の夜の在りし (5点句)
田舎暮らしの時代は夏は戸を開け放して風を入れ蚊帳の中で眠れたが、最近
は田舎の実家も暑くとても無理
・シュノーケル海の生命 (いのち) の濃さを知り ( 2点句)
H26 年5 月、沖縄の白保の海岸でシュノーケルを初体験したときの海の中の
生命の多様さ、美しさに感動
・千キロの海様々に小笠原 ( 1点句)
東京湾、黒潮本流、小笠原近海と千キロの船旅で、海はいろいろな表情を見
せつつ疲れの中待望の小笠原に着く
・揚羽蝶みかんの幼葉に子を託す (1点句)
ミカンの幼葉・若葉は格好の揚羽蝶の産卵場所、すぐに幼虫が葉を食べ始め
る。私はそれらを邪魔しているが、、、
・政権も猛暑も豪雨も歯止無し
長いほど害ばかりとなる、ほどほどが人の世も自然も難しくなっている
・剪定し程よき木陰芝を刈る
剪定も枝葉をあまり切らずに木陰を作るのが、木にも人にも優しい。芝刈り
の合間に木陰で一休み
・空蝉のがっちり留まる枝葉かな
今年は初めて数匹以上の蝉殻がアメリカ楓の枝葉に見られた、羽化が安全に
行えるようがっちりと脚は枝葉を掴んでいる
4.宮澤さんの自句自解
・窓の外 暑さ溢れて 散歩止め
サァー1 日1 万歩のノルマ達成の散歩に出かけようかと、外を見ると溢れる
熱気が充満しています。その空間へ足を踏み出す勇気が萎えます。「健康のた
めの散歩が、健康を害することになってしまったら意味がない」という言い訳
を、自分に言い聞かせる日が続きました。
・寒さにも 暑さにも負け 年を知る
異常気象のせいでしょうか、例年以上に冬は寒く、夏は暑く感じますが、年
のせいもあるのでしょう。しかし、年を取ると暑さも感じなくなり、エアコン
無しで過ごし、熱中症で亡くなる老人が増えているというニュースも聞きます
。年は知ったが、まだ、老いは知らないということにしたいと思います。
・火の玉が 窓を突き抜け 燃える夏
夏に水を入れたガラスの金魚鉢などを窓辺に置いておくとレンズ効果で焦点
にあるものが燃えることがあるという話を聞きます。今年の夏は、そんなもの
が無くても、勝手に火の玉が家の中に飛び込んできたような感じの暑さでした。
・けだるげに 寄せる波音 夏の海
大海を渡ってきた波が、終着地の海辺で、寄せては返すという言葉に従いま
た、大海に戻ろうと思ったけれど、あまり暑いので、返すのはもういいねと言
っています。「ざぶーん、ざぶーん」という波音はけだるげで投げやりに感じ
ます。
・暑さ溜め 黒く漂う 夜の海
いくらかの涼を求めて、夜の海を眺めていると、暗い海面を撫でてきた風に
まだ昼間の熱気が残っている。自己発熱している漆黒の石炭の山を渡ってくる
生暖かい風の感触を思い出し、何やら重苦しい雰囲気です。今年は、外出せず
、家でエアコンが一番似合う夏で、「海」という兼題もすべて「暑さ」に飲み
込まれてしまいました。
5.豊さんの自句自解
・白き帆の速き滑走夏光る
皆さんから好評をいただき、感謝です。夏の光り輝く青い海と、滑走するヨ
ットの白い帆の鮮やかな色の対象を詠んでみました。
・行く夏を惜しみて海の夕日かな
夏の終わりが近づく夕方の海。まさにいま太陽が沈もうとしています。
「行く夏」を惜しむ主体は、作者でもあり、沈もうとしている太陽でもある
のです。
・灯籠の明かりに揺れる幽霊画
以前盛岡に行ったとき、古いお寺が保存している江戸時代の幽霊画を見たこ
とがあります。いつもは観光客には見せないのですが、夏の一時期だけ開帳す
るのだそうです。その雰囲気を出したかったのですが、平凡な句になってしま
いました。
・絶景をカメラの中へ夏の山
夏山の登山で頂上へ着いた。周囲は360度見渡せる絶景。感激してそれを
カメラに収めた。「カメラの中へ」をもう一工夫すればよかったかもしれませ
ん。
6.深瀬の自句自解
・夏の海夕陽の影絵船の行く
3 点、ありがとうございます。夕陽の煌めいている海を影絵のような船が行
く情景は、月並みとは思うのですが、なにか異次元的な雰囲気も感じます。
・海旅館花火くだけて波しぶき
花火が四方に散って舞落ちる様と波の飛沫を合わせたつもりです。
・夏の海さかなの声に耳澄ます
電車や車で海岸沿いを走っていると、あの海の底には魚たちがたくさん生き
ていることに、ふと思いを馳せることがあります。
・帰る日や散骨されて海の底
海は生命の故郷という意識は、潜在的にあるのだと思います。
・海底 (うなぞこ) に生のふるさと見る車窓
湘南電車の車窓から相模湾を見るとき、ときどきこういう思いになります。
・海ゆかば五十六無念終戦忌
山本五十六氏は、日米開戦に抵抗感をもちながらも、時代の世相の圧力のも
と陣頭指揮をとらざるをえなかったようです。ブーゲンビル島での戦死は、そ
の無念を物語っているように感じます。
・川下り暑さ吹き飛ぶ水飛沫
月並みすぎました。「五月雨をあつめて早し最上川」はすごいと思います。
・アルプスの霊峰仰ぎ暑気払い
イメージ先行で月並みの感じです。
・暑き朝ジョギングびとの口への字
酷暑のなか、なにか苦行僧のように走っていました。
・シェルターに閉じ籠もりたき暑さかな
今年の酷暑には、なにか地球最期の日を感じさせられました。
・十字架の入り江に沈む暑き夕
クリスチャンの家内は、かなり評価してくれました。
・富士を背に土肥まで海路夏合宿
大学1 年の柔道部合宿に参加したときの想い出です。
・波の音抜ける雑踏夏夜店
子供のころ、鎌倉の由比ヶ浜に行ったときの想い出です。
・新築のマンションの窓夏陽受け
最近、目の前に積水ハウスの賃貸マンションが建ちました。
・大阪に震度6弱初夏の朝
台風、地震、酷暑が続きます。東京は大丈夫なのか不安です。
・雨蛙飛び跳ねんとす脚二本
蛙の跳躍する躍動感を表現しようとしたのですが。
・夏めいて老母の脛の細きかな
以前、別の句会で「夏めいて老母気になる痩せ具合」と作ったのですが、そ
こでの批評を参考に作りなおしました。
・虚無感のしじまに軋む夏の夜
かなり力みすぎの俳句だと思います。
・焼け野原空透き通り終戦忌
観念的で、月並みの感じ。
・棺の蓋閉じて釘打つ石の音
棺の釘打ちは亡くなった人の最期の締めくくりを象徴している感じです。人
から聞いた話を参考にしました。
・老化とはかくの如きと少し知り
老化に伴ういろいろな不具合を感じますが、今が入り口みたいです。
・手にもって食事できずば旅立つ日
もはやこれまでと観念する日をいさぎよく迎えたい感じです。
・七十路の微睡 (まどろ) ひの陰つきまとひ
なにか最近ぼんやりしている時間が多くなっている感じがします。
・日本製絶滅危惧種身の回り
アマゾンで家電製品を買おうとして、日本製の存在感が希薄化しつつあるの
を感じました。
・もぎたての野菜で乾杯老仲間
先日、家庭菜園を作っている同級生のところに5 人集まりました。
・朝ホーム退かず避けずの肉バトル
ホームや電車内で、スマホを見ながらの人に張り合っています。
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第二十五回の選句結果を踏まえて、感想や自句自解、等をおよせいただき、
たいへんありがとうございました。
およせいただいたものを、名前順に、ほぼそのまままとめてお届けすること
にします。今後のやり方に、ご意見、等ありましたら、よろしくお願いします。
七句会のweb http://nanaku-haiku.blogspot.jp/ にも掲載してあります。
今後とも、よろしくお願いいたします。
深瀬 (事務方)
1.秋元さんの自句自解
・海風にあたりて凌ぐ暑さかな
ベランダから眺める運河からは清々しい海風が吹き渡るはずでしたが、実は
熱風しか押し寄せないのが今夏で、一時の気晴らしの句でした。
・打ち水に涼を求める猛暑かな
何本かペットボトルに入れた水をベランダに撒いて一時の涼風を巻き起こそ
うとしましたが、あっという間に蒸発してしまい、嫌悪感にも近い儚い夢でし
た。
・熱帯夜今や懐かし死語となり
熱帯夜なんて以前のようにゆったりと構えていた一時的な現象ではなく、今
や、連日連夜のことで、言葉自体が懐かしい今夏でした。
2.小野寺さんの自句自解
・ゆるやかに蛍の生命(いのち)闇流る
蛍の青い光の連続は緩やかに闇の中を流れて、蛍の生命(いのち)の灯(と
もしび)のようにも見えて それは さながら人の命の 儚さのようでもあり
ます。
・炎天に汗したたりて 蝉しぐれ
風の音すらないひたすら暑い夏の日中蝉しぐれが響きわたり、ふと不思議な
涼を感じたのです。季重なりは承知の上で夏の季語を連ねてみました。
・鎮魂の読経の声か 夏の海
震災から早7 年が過ぎましたが被災地はまだ復興の途上にあり東北の閖上(
ゆりあげ)の海は、 潮騒の音がさながら鎮魂の読経の響きがありました。
・亡き友の絵に咲いており夏の薔薇
一緒に絵を描き絵画展も共にした友人が逝って早一年が経ちました。遺され
た絵の中に鮮やかに咲く 薔薇の花は、さながら友人の生命(いのち)の 証
しでもあるのです。
・紫陽花の 露に宿りて 虹光り
紫陽花の露に朝の光が当たり プリズムの様に虹が出現する様はさながら
小宇宙の様で自然の確かな運行に驚かされます。季重なりですが気にせず句と
しました。
・絽に足袋で 打ち水渡り 古都が暮れ
薄絹の黒い絽の着物の人が、 鮮やかな白足袋で、打ち水を渡ると古都の街
に夕暮れの帳(とばり)がそこまで降りてきていました。
・夕闇の殻脱ぎ捨てて 青き蝉
蝉の一生は幼虫で土中に7 年を過ごし蝉としてえ成虫になり2 -3 週間で命
を終えることより儚い生命の代名詞のように言われますが実は土の中で7 年も
生きる長生きの昆虫なのです。蛹から成虫になるのはたいてい夜ですが、長い
闇を殻とともに脱ぎ捨てて薄緑の碧い蝉になったと表現したかったのです。碧
い蝉の誕生はいつみても神秘的です。
3.橋本さんの自句自解
・蚊と暑さ逃れし蚊帳の夜の在りし (5点句)
田舎暮らしの時代は夏は戸を開け放して風を入れ蚊帳の中で眠れたが、最近
は田舎の実家も暑くとても無理
・シュノーケル海の生命 (いのち) の濃さを知り ( 2点句)
H26 年5 月、沖縄の白保の海岸でシュノーケルを初体験したときの海の中の
生命の多様さ、美しさに感動
・千キロの海様々に小笠原 ( 1点句)
東京湾、黒潮本流、小笠原近海と千キロの船旅で、海はいろいろな表情を見
せつつ疲れの中待望の小笠原に着く
・揚羽蝶みかんの幼葉に子を託す (1点句)
ミカンの幼葉・若葉は格好の揚羽蝶の産卵場所、すぐに幼虫が葉を食べ始め
る。私はそれらを邪魔しているが、、、
・政権も猛暑も豪雨も歯止無し
長いほど害ばかりとなる、ほどほどが人の世も自然も難しくなっている
・剪定し程よき木陰芝を刈る
剪定も枝葉をあまり切らずに木陰を作るのが、木にも人にも優しい。芝刈り
の合間に木陰で一休み
・空蝉のがっちり留まる枝葉かな
今年は初めて数匹以上の蝉殻がアメリカ楓の枝葉に見られた、羽化が安全に
行えるようがっちりと脚は枝葉を掴んでいる
4.宮澤さんの自句自解
・窓の外 暑さ溢れて 散歩止め
サァー1 日1 万歩のノルマ達成の散歩に出かけようかと、外を見ると溢れる
熱気が充満しています。その空間へ足を踏み出す勇気が萎えます。「健康のた
めの散歩が、健康を害することになってしまったら意味がない」という言い訳
を、自分に言い聞かせる日が続きました。
・寒さにも 暑さにも負け 年を知る
異常気象のせいでしょうか、例年以上に冬は寒く、夏は暑く感じますが、年
のせいもあるのでしょう。しかし、年を取ると暑さも感じなくなり、エアコン
無しで過ごし、熱中症で亡くなる老人が増えているというニュースも聞きます
。年は知ったが、まだ、老いは知らないということにしたいと思います。
・火の玉が 窓を突き抜け 燃える夏
夏に水を入れたガラスの金魚鉢などを窓辺に置いておくとレンズ効果で焦点
にあるものが燃えることがあるという話を聞きます。今年の夏は、そんなもの
が無くても、勝手に火の玉が家の中に飛び込んできたような感じの暑さでした。
・けだるげに 寄せる波音 夏の海
大海を渡ってきた波が、終着地の海辺で、寄せては返すという言葉に従いま
た、大海に戻ろうと思ったけれど、あまり暑いので、返すのはもういいねと言
っています。「ざぶーん、ざぶーん」という波音はけだるげで投げやりに感じ
ます。
・暑さ溜め 黒く漂う 夜の海
いくらかの涼を求めて、夜の海を眺めていると、暗い海面を撫でてきた風に
まだ昼間の熱気が残っている。自己発熱している漆黒の石炭の山を渡ってくる
生暖かい風の感触を思い出し、何やら重苦しい雰囲気です。今年は、外出せず
、家でエアコンが一番似合う夏で、「海」という兼題もすべて「暑さ」に飲み
込まれてしまいました。
5.豊さんの自句自解
・白き帆の速き滑走夏光る
皆さんから好評をいただき、感謝です。夏の光り輝く青い海と、滑走するヨ
ットの白い帆の鮮やかな色の対象を詠んでみました。
・行く夏を惜しみて海の夕日かな
夏の終わりが近づく夕方の海。まさにいま太陽が沈もうとしています。
「行く夏」を惜しむ主体は、作者でもあり、沈もうとしている太陽でもある
のです。
・灯籠の明かりに揺れる幽霊画
以前盛岡に行ったとき、古いお寺が保存している江戸時代の幽霊画を見たこ
とがあります。いつもは観光客には見せないのですが、夏の一時期だけ開帳す
るのだそうです。その雰囲気を出したかったのですが、平凡な句になってしま
いました。
・絶景をカメラの中へ夏の山
夏山の登山で頂上へ着いた。周囲は360度見渡せる絶景。感激してそれを
カメラに収めた。「カメラの中へ」をもう一工夫すればよかったかもしれませ
ん。
6.深瀬の自句自解
・夏の海夕陽の影絵船の行く
3 点、ありがとうございます。夕陽の煌めいている海を影絵のような船が行
く情景は、月並みとは思うのですが、なにか異次元的な雰囲気も感じます。
・海旅館花火くだけて波しぶき
花火が四方に散って舞落ちる様と波の飛沫を合わせたつもりです。
・夏の海さかなの声に耳澄ます
電車や車で海岸沿いを走っていると、あの海の底には魚たちがたくさん生き
ていることに、ふと思いを馳せることがあります。
・帰る日や散骨されて海の底
海は生命の故郷という意識は、潜在的にあるのだと思います。
・海底 (うなぞこ) に生のふるさと見る車窓
湘南電車の車窓から相模湾を見るとき、ときどきこういう思いになります。
・海ゆかば五十六無念終戦忌
山本五十六氏は、日米開戦に抵抗感をもちながらも、時代の世相の圧力のも
と陣頭指揮をとらざるをえなかったようです。ブーゲンビル島での戦死は、そ
の無念を物語っているように感じます。
・川下り暑さ吹き飛ぶ水飛沫
月並みすぎました。「五月雨をあつめて早し最上川」はすごいと思います。
・アルプスの霊峰仰ぎ暑気払い
イメージ先行で月並みの感じです。
・暑き朝ジョギングびとの口への字
酷暑のなか、なにか苦行僧のように走っていました。
・シェルターに閉じ籠もりたき暑さかな
今年の酷暑には、なにか地球最期の日を感じさせられました。
・十字架の入り江に沈む暑き夕
クリスチャンの家内は、かなり評価してくれました。
・富士を背に土肥まで海路夏合宿
大学1 年の柔道部合宿に参加したときの想い出です。
・波の音抜ける雑踏夏夜店
子供のころ、鎌倉の由比ヶ浜に行ったときの想い出です。
・新築のマンションの窓夏陽受け
最近、目の前に積水ハウスの賃貸マンションが建ちました。
・大阪に震度6弱初夏の朝
台風、地震、酷暑が続きます。東京は大丈夫なのか不安です。
・雨蛙飛び跳ねんとす脚二本
蛙の跳躍する躍動感を表現しようとしたのですが。
・夏めいて老母の脛の細きかな
以前、別の句会で「夏めいて老母気になる痩せ具合」と作ったのですが、そ
こでの批評を参考に作りなおしました。
・虚無感のしじまに軋む夏の夜
かなり力みすぎの俳句だと思います。
・焼け野原空透き通り終戦忌
観念的で、月並みの感じ。
・棺の蓋閉じて釘打つ石の音
棺の釘打ちは亡くなった人の最期の締めくくりを象徴している感じです。人
から聞いた話を参考にしました。
・老化とはかくの如きと少し知り
老化に伴ういろいろな不具合を感じますが、今が入り口みたいです。
・手にもって食事できずば旅立つ日
もはやこれまでと観念する日をいさぎよく迎えたい感じです。
・七十路の微睡 (まどろ) ひの陰つきまとひ
なにか最近ぼんやりしている時間が多くなっている感じがします。
・日本製絶滅危惧種身の回り
アマゾンで家電製品を買おうとして、日本製の存在感が希薄化しつつあるの
を感じました。
・もぎたての野菜で乾杯老仲間
先日、家庭菜園を作っている同級生のところに5 人集まりました。
・朝ホーム退かず避けずの肉バトル
ホームや電車内で、スマホを見ながらの人に張り合っています。
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2018年8月19日日曜日
七句会 第二十五回のネット句会 選句の結果のご報告です。
七句会のみなさま
第二十五回の七句会にご参加いただきたいへんありがとうございました。
今回の選句結果をご報告いたします。
5 点句
(010) 蚊と暑さ逃れし蚊帳の夜の在りし 橋本
4 点句
(033) 白き帆の速き滑走夏光る 豊
(039) 陽(ひ)を沈め 群青の海 燃え上がる 吉良
3 点句
(009) 火の玉が 窓を突き抜け 燃える夏 宮澤
(015) 寒さにも 暑さにも負け 年を知る 宮澤
(044) 夏の海夕陽の影絵船の行く 深瀬
(079) ゆるやかに 蛍の生命 (いのち) 闇流る。 小野寺
(082) 手を広げ 入道雲に 夢と飛ぶ 杜瑯
2 点句
(006) 涼しとはいつの季語かと俳句読む 治部
(011) 老いてなお 暑さ蹴散らせ 道半ば 吉良
(021) 炎天に汗したたりて 蝉しぐれ。 小野寺
(028) シュノーケル海の生命 (いのち) の濃さを知り 橋本
(030) 鎮魂の 読経の声か 夏の海 小野寺
(031) 暑さ溜め 黒く漂う 夜の海 宮澤
(051) 亡き友の 画に咲いており 夏の薔薇 小野寺
(052) 夏めいて老母の脛の細きかな 深瀬
(065) 紫陽花の 露に宿りて 虹光り 小野寺
(070) 絽に足袋で 打ち水渡り 古都は暮れ 小野寺
(091) 暮れなずむ五十路まぶしき浴衣かな 治部
(096) 夕闇の 殻脱ぎ捨てて 青き蝉 小野寺
下記に、選句表に、各句の右側に作者名、および、その下に選んだ人の名前
とコメント (追番付き、順不同、敬称略。) を付したものを添付します。
次回については、今年10月中旬ころにご連絡したいと思っていますので、よ
ろしくお願いいたします。やり方、等について、ご意見がありましたら、ご連
絡をいただきたく、よろしくお願いいたします。
事務方から、以下、ご連絡、ご依頼です。
(1) 選句参加者
今回の選句には、下記の12名が参加しました。
秋元さん、小野寺さん、吉良さん、志方さん、治部さん、中津川さん、橋本
さん、宮澤さん、森杜瑯さん、柳町さん、豊さん、深瀬。
(2) 今回の句会の結果を踏まえた自句自解、感想、等の募集について
今回の句会の選句結果を踏まえて、各自、表明しておきたいこともあるので
はないかと思いますので、自句自解、感想、等、なんでも結構ですので、募り
たいと思います。一応、期限としては9 月9 日とし、事務方にメールでいただ
き、それを七句会の下記のweb に掲載することにしたいと思います。
http://nanaku-haiku.blogspot.jp/
これまで、句会の後、勉強会としての集まりを企画していましたが、参加者
が少ないこともあり、改めることにしました。集まっての勉強会も適宜、行い
たいとは思っていますが、よろしくお願いします。
2018.08.19
代表 橋口侯之介 (休会中)
顧問 豊 宣光
事務方 深瀬久敬
----------------------------------------------------------------------
1.兼題 暑さ
(001) 政権も猛暑も豪雨も歯止無し 橋本
(002) シェルターに閉じ籠もりたき暑さかな 深瀬
(003) コンチキチン 歩む浴衣や 熱帯夜 中津川
(004) 炎天の熱射浴びたる無帽の子 豊
(005) 熱帯夜今や懐かし死語となり 秋元
(006) 涼しとはいつの季語かと俳句読む 治部
1 中津川
2 橋本
(007) 十字架の入り江に沈む暑き夕 深瀬
1 治部 この句は素晴らしいと思います。十字架の入り江に沈
むとはなんと詩的な表現でしょう。天草の世界遺産にある小さ
な教会の向こうに沈んでゆく夕日(沈むとは夕日の事だと勝手
に)がくっきりと見えますね。ここもまた暑い夏なのですね。
隠れキリシタン(潜伏キリシタンではありません)の厳しい夏
もあったことでしょう。十字架の入り江に沈むとは、悲しい歴
史をも想像させる奥の深さを感じます。
(008) 一筋の 汗流れ落つ 大暑かな。 小野寺
1 秋元
(009) 火の玉が 窓を突き抜け 燃える夏 宮澤
1 吉良 今年の夏の異常な暑さが感じられます。
2 治部 火の玉が窓を突き抜けるとはすごい。今年はメチャク
チャ暑い。この句を見て比喩がそのメチャクチャ感をしっかり
表していると思います。よく思いついたと感動しました。
3 深瀬 今夏の暑さは、地球最後の日を想わせる感じがしまし
た。「火の玉が窓を突き抜け」はそれに相応しい感じです。
(010) 蚊と暑さ逃れし蚊帳の夜の在りし 橋本
1 豊 昔は蚊帳は夏の必需品でした。幼いころを思い出しま
す。
2 宮澤 年のせいか足は良くつるようになりましたが、蚊帳は
吊らなくなりました。そういえば、豚の蚊取り線香入れもどこ
へ行ったのでしょう。
3 秋元
4 小野寺 子供の頃の蚊帳は懐かしい夏の風物詩でしたね。暑さ
の記憶のなかに 蚊帳の匂いの夜は確かにありました。
5 深瀬 今の子供に蚊帳は分かるのでしょうか。子供のころ、
蚊帳を吊った中は別世界のように感じられたのがなつかしいで
す。
(011) 老いてなお 暑さ蹴散らせ 道半ば 吉良
1 志方 老いと猛暑に対する気概と自己認識が相対しているよ
うです。
2 柳町
(012) 打ち水も苦しき我が家の戦ぶり 治部
(013) 声がせぬ 学校プール 40度 中津川
1 宮澤 ブロック塀が倒れたり、暑さで中止になったり、学校
のプールから聞こえる子供たちの声を最近聞きません。ラジオ
体操も夏休み前半で終わりのようで、子供たちの姿を見るには
塾へ行くのが一番のようです。
(014) 川下り暑さ吹き飛ぶ水飛沫 深瀬
(015) 寒さにも 暑さにも負け 年を知る 宮澤
1 吉良 年はとっても気持ちが大切です。お互いに頑張りまし
ょう。
2 橋本
3 志方 老いと猛暑に対する気概と自己認識が相対しているよ
うです。
(016) アルプスの霊峰仰ぎ暑気払い 深瀬
(017) 打ち水に涼を求める猛暑かな 秋元
1 小野寺 季重なりの句ですが、猛暑を癒す打ち水は静かで密や
かな涼に違いありません。
(018) 雑草(くさ)むしり 蚊さえ飛べぬ 猛暑かな 中津川
1 橋本
(019) 行水の 盥もお湯に 暑熱かや 柳町
(020) 命懸け 公園目指す 夏吟行 中津川
(021) 炎天に汗したたりて 蝉しぐれ。 小野寺
1 吉良 都会の公園にもセミ時雨が聞かれ、情景が共感できま
す。
2 治部 季語が三つも入っていることに、どうなの?と思いな
がらなぜか素直に暑さを感じてしまう。いい句なんでしょうね。
(022) ニュース見てますます苦しき暑さかな 治部
(023) 暑き朝ジョギングびとの口への字 深瀬
(024) 空の鳥灼かれて墜ちる真昼かな 豊
1 柳町
(025) 海風にあたりて凌ぐ暑さかな 秋元
(026) 窓の外 暑さ溢れて 散歩止め 宮澤
1 橋本
2.兼題 海
(027) 故郷の 海鳴りとほく 風立ちぬ 小野寺
1 森
(028) シュノーケル海の生命 (いのち) の濃さを知り 橋本
1 豊 陸と同じように海の中にも様々な生物がいます。ふだ
んはあまり気にしませんが、潜るとそれがよくわかるのです。
「生命の濃さ」という表現がいいですね。
2 深瀬 上五のシュノーケルによって海底世界に引き込まれ、
色鮮やかな海牛などが目に見える感じです。海は生きものの故
郷を実感しました。
(029) 帰る日や散骨されて海の底 深瀬
1 治部 帰る日の意味がよくわかりませんでした。無季語の句
はもう少しわかりやすい方がいいのかもしれません。
(030) 鎮魂の 読経の声か 夏の海 小野寺
1 中津川
2 柳町
(031) 暑さ溜め 黒く漂う 夜の海 宮澤
1 吉良 夜のは涼しさを感ずるもの。暑さを黒く漂うと表現し
ている点が面白く読みました。
2 小野寺 暑さを溜めた海が黒く漂うという表現が暑い夜の海の
風景画です。
(032) 富士を背に土肥まで海路夏合宿 深瀬
(033) 白き帆の速き滑走夏光る 豊
1 中津川
2 橋本
3 小野寺 夏の海の輝きを白い帆の流れで的確に捉えて軽快なリ
ズムを生み出してます。
4 深瀬 強い陽差しを照り返している夏ならではの海の様子が、
足早に進む白い帆とともに眼に浮かびました。
(034) 海水浴 似合わぬ 老いの腹 中津川
(035) 横浜の港見え消え大花火 治部
(036) けだるげに 寄せる波音 夏の海 宮澤
(037) 海旅館花火くだけて波しぶき 深瀬
(038) 夢一期 銀河の海に 星流れ 小野寺
1 森
(039) 陽(ひ)を沈め 群青の海 燃え上がる 吉良
1 治部 無季語の句が多いと思いますが、句としてはそれぞれ
味わえますね。
2 豊 鮮やかな描写です。作者の情熱を感じます。
3 志方 なつの海の情景描写が秀逸
4 柳町
(040) 居酒屋化 水着はぬれず 海の家 中津川
(041) 夏の海さかなの声に耳澄ます 深瀬
(042) 白南風 (しらはえ) や 紺碧の海 帆が競い 小野寺
1 秋元
(043) 啼く海の 音に震える 宿の夜 柳町
1 治部 無季語の句が多いと思いますが、句としてはそれぞれ
味わえますね。
(044) 夏の海夕陽の影絵船の行く 深瀬
1 吉良 情景が目の前に浮かびます。
2 宮澤 ベトナムの水上人形劇やインドネシアの影絵の劇の世
界を思い出します。
3 志方 なつの海の情景描写が秀逸
(045) 黯き (くらき) 海 稲妻光り 夏来たる。 小野寺
(046) 海ゆかば五十六無念終戦忌 深瀬
1 柳町
(047) 千キロの海様々に小笠原 橋本
1 治部 無季語の句が多いと思いますが、句としてはそれぞれ
味わえますね。
(048) 行く夏を惜しみて海の夕日かな 豊
1 小野寺 海に落ちゆく真っ赤な夕日はそこはかとなく夏の終わ
りを告げる光と感じたのでしょう。
(049) 大花火横浜港の見え消えて 治部
(050) 海底 (うなぞこ) に生のふるさと見る車窓 深瀬
1 治部 無季語の句が多いと思いますが、句としてはそれぞれ
味わえますね。
3.雑詠
(051) 亡き友の 画に咲いており 夏の薔薇 小野寺
1 吉良 人の命は限りあるものですが、芸術作品は作者の亡き
あともを感動を残してくれるのでしょう。
2 深瀬 亡き友の描いた絵と静かに対面している作者の気持ち
の奥深くが伝わってくるように思いました。
(052) 夏めいて老母の脛の細きかな 深瀬
1 豊 かなりレベルの高い句だと思いますが、同じような内
容で誰か俳人がすでに詠んでいたような気がするのですが、誤
解でしょうか。
2 橋本
(053) 百合の花 汗噴く男に 日陰かす 杜瑯
(054) 星月夜 蒼き翅もて 蝉生まる。 小野寺
(055) あらかわい振りむく蜥蜴と目が合って 治部
1 宮澤 可愛いトカゲに「おいで」と言ったら返事は舌出して
「あかんべー」。先日、我が家の玄関先に青大将が現れ、しば
らく見つめあっていましたが、ふいっと何も言わずに自宅に戻
られました。
(056) 絵を描きし 朋去り 夏の独り酒 小野寺
1 志方 朋への追悼の思いの深さが簡潔に表現されているよう
です。
(057) 棺の蓋閉じて釘打つ石の音 深瀬
(058) 灯籠の明かりに揺れる幽霊画 豊
1 中津川
(059) 鶯の 相聞響く 樹陰かな 志方
1 橋本
(060) 老師逝く 故郷 (ふるさと) 遙か 百合の花 小野寺
(東海道七里の渡しで 2句)
(061) 夏の波 ひつまむし食べ 海街道 中津川
(062) 熱田宮 詣でて桑名へ 夏渡し 中津川
1 豊 熱田神宮から桑名へ夏の旅です。「夏渡し」の言葉が
大きな広がりを感じさせてみごとです。
(063) 新築のマンションの窓夏陽受け 深瀬
(064) 七とせの 願い届くか 稲穂かな 志方
(065) 紫陽花の 露に宿りて 虹光り 小野寺
1 宮澤 紫陽花の色が変わるのに、宿った露も負けじと色変化。
きれいですね。
2 秋元
(066) プールの辺 聢と手を添え 孫の肘 柳町
(067) 赤ワイン 友の遺作に 夏めぐる。 小野寺
(068) 虚無感のしじまに軋む夏の夜 深瀬
(069) カサブランカ 男の汗に 花弁燃え 杜瑯
(070) 絽に足袋で 打ち水渡り 古都は暮れ 小野寺
1 中津川
2 柳町
(071) 相馬路の 青田に映る 白き雲 志方
1 深瀬 津波や原発事故に翻弄された相馬の今の状況がしみじ
みと詠まれていると感じました。
(072) 老化とはかくの如きと少し知り 深瀬
(夏の庭3句)
(073) 剪定し程よき木陰芝を刈る 橋本
(074) 空蝉のがっちり留まる枝葉かな 橋本
(075) 揚羽蝶みかんの幼葉に子を託す 橋本
1 中津川
(076) 波の音抜ける雑踏夏夜店 深瀬
(077) 打ち水を 跨げば 髪が風に舞ひ。 小野寺
1 秋元
(078) もぎたての野菜で乾杯老仲間 深瀬
(079) ゆるやかに 蛍の生命 (いのち) 闇流る。 小野寺
1 森
2 吉良 蛍の飛ぶ様子が「ゆるやか」という表現されていると
ころがすばらしい。
3 志方 多分に色っぽい情景かなと思いいたします。
(080) 手にもって食事できずば旅立つ日 深瀬
(081) 幼児(おさなご)の 麦わら帽子に 風が寄せ 志方
(082) 手を広げ 入道雲に 夢と飛ぶ 杜瑯
1 秋元
2 小野寺 我々はいつの歳になっても 積乱雲に諸手をあげて挑
戦する気概と夢を持ち続けたいものです。雄大ないい句です。
3 深瀬 入道雲と夢の取り合わせになにか強い男気を感じます
が、さらに手を広げというのはロマンチックな印象も受けまし
た。
(083) 日本製絶滅危惧種身の回り 深瀬
(084) 汗拭う 読経の外は 蝉しぐれ 小野寺
1 宮澤 心頭滅却して読経していますが大粒の汗。刹那の命の
蝉は大きな声で鳴いても汗一つかきません。まだまだ修行が足
りません。
(085) 雨蛙飛び跳ねんとす脚二本 深瀬
(086) 学生街変わらぬ音やかき氷 治部
1 豊 学生街の喫茶店で恋人同士がかき氷をつつきながら愛
を語り合う。昔も今も変わらない情景です。
(087) 風碧く 古城の堀に 蓮の華 小野寺
1 柳町
(088) 雲流れ 茶臼岳にも 夏空が 志方
(089) 焼け野原空透き通り終戦忌 深瀬
(090) 絶景をカメラの中へ夏の山 豊
(091) 暮れなずむ五十路まぶしき浴衣かな 治部
1 志方 女性へのそこはかとない尊敬?がいいですね。
2 小野寺 夕暮れ時 夏祭りに行く雑踏のなかでふと出会った五
十路の浴衣姿は二十歳や三十路ではないところに艶があります。
(092) 碧空に 風澄みわたり 夏木立 小野寺
1 豊 余計なものを入れずに、夏らしい景色をすっきりと詠
んでいるのがいいですね。
(093) 朝ホーム退かず避けずの肉バトル 深瀬
(094) 峠道 甘き横笛 息鎮め 杜瑯
(095) 今年また ひぐらしがなく 夏も往く 志方
(096) 夕闇の 殻脱ぎ捨てて 青き蝉 小野寺
1 中津川
2 秋元
(097) 大阪に震度6弱初夏の朝 深瀬
(098) 廃屋の 庭を覆うは 夏草や 志方
(099) カサブランカ 熱射に負けず 上を向く 杜瑯
(100) 古希過ぎて 夏雲の群れ 超えんとす。 小野寺
(101) 七十路の微睡 (まどろ) ひの陰つきまとひ 深瀬
----
第二十五回の七句会にご参加いただきたいへんありがとうございました。
今回の選句結果をご報告いたします。
5 点句
(010) 蚊と暑さ逃れし蚊帳の夜の在りし 橋本
4 点句
(033) 白き帆の速き滑走夏光る 豊
(039) 陽(ひ)を沈め 群青の海 燃え上がる 吉良
3 点句
(009) 火の玉が 窓を突き抜け 燃える夏 宮澤
(015) 寒さにも 暑さにも負け 年を知る 宮澤
(044) 夏の海夕陽の影絵船の行く 深瀬
(079) ゆるやかに 蛍の生命 (いのち) 闇流る。 小野寺
(082) 手を広げ 入道雲に 夢と飛ぶ 杜瑯
2 点句
(006) 涼しとはいつの季語かと俳句読む 治部
(011) 老いてなお 暑さ蹴散らせ 道半ば 吉良
(021) 炎天に汗したたりて 蝉しぐれ。 小野寺
(028) シュノーケル海の生命 (いのち) の濃さを知り 橋本
(030) 鎮魂の 読経の声か 夏の海 小野寺
(031) 暑さ溜め 黒く漂う 夜の海 宮澤
(051) 亡き友の 画に咲いており 夏の薔薇 小野寺
(052) 夏めいて老母の脛の細きかな 深瀬
(065) 紫陽花の 露に宿りて 虹光り 小野寺
(070) 絽に足袋で 打ち水渡り 古都は暮れ 小野寺
(091) 暮れなずむ五十路まぶしき浴衣かな 治部
(096) 夕闇の 殻脱ぎ捨てて 青き蝉 小野寺
下記に、選句表に、各句の右側に作者名、および、その下に選んだ人の名前
とコメント (追番付き、順不同、敬称略。) を付したものを添付します。
次回については、今年10月中旬ころにご連絡したいと思っていますので、よ
ろしくお願いいたします。やり方、等について、ご意見がありましたら、ご連
絡をいただきたく、よろしくお願いいたします。
事務方から、以下、ご連絡、ご依頼です。
(1) 選句参加者
今回の選句には、下記の12名が参加しました。
秋元さん、小野寺さん、吉良さん、志方さん、治部さん、中津川さん、橋本
さん、宮澤さん、森杜瑯さん、柳町さん、豊さん、深瀬。
(2) 今回の句会の結果を踏まえた自句自解、感想、等の募集について
今回の句会の選句結果を踏まえて、各自、表明しておきたいこともあるので
はないかと思いますので、自句自解、感想、等、なんでも結構ですので、募り
たいと思います。一応、期限としては9 月9 日とし、事務方にメールでいただ
き、それを七句会の下記のweb に掲載することにしたいと思います。
http://nanaku-haiku.blogspot.jp/
これまで、句会の後、勉強会としての集まりを企画していましたが、参加者
が少ないこともあり、改めることにしました。集まっての勉強会も適宜、行い
たいとは思っていますが、よろしくお願いします。
2018.08.19
代表 橋口侯之介 (休会中)
顧問 豊 宣光
事務方 深瀬久敬
----------------------------------------------------------------------
1.兼題 暑さ
(001) 政権も猛暑も豪雨も歯止無し 橋本
(002) シェルターに閉じ籠もりたき暑さかな 深瀬
(003) コンチキチン 歩む浴衣や 熱帯夜 中津川
(004) 炎天の熱射浴びたる無帽の子 豊
(005) 熱帯夜今や懐かし死語となり 秋元
(006) 涼しとはいつの季語かと俳句読む 治部
1 中津川
2 橋本
(007) 十字架の入り江に沈む暑き夕 深瀬
1 治部 この句は素晴らしいと思います。十字架の入り江に沈
むとはなんと詩的な表現でしょう。天草の世界遺産にある小さ
な教会の向こうに沈んでゆく夕日(沈むとは夕日の事だと勝手
に)がくっきりと見えますね。ここもまた暑い夏なのですね。
隠れキリシタン(潜伏キリシタンではありません)の厳しい夏
もあったことでしょう。十字架の入り江に沈むとは、悲しい歴
史をも想像させる奥の深さを感じます。
(008) 一筋の 汗流れ落つ 大暑かな。 小野寺
1 秋元
(009) 火の玉が 窓を突き抜け 燃える夏 宮澤
1 吉良 今年の夏の異常な暑さが感じられます。
2 治部 火の玉が窓を突き抜けるとはすごい。今年はメチャク
チャ暑い。この句を見て比喩がそのメチャクチャ感をしっかり
表していると思います。よく思いついたと感動しました。
3 深瀬 今夏の暑さは、地球最後の日を想わせる感じがしまし
た。「火の玉が窓を突き抜け」はそれに相応しい感じです。
(010) 蚊と暑さ逃れし蚊帳の夜の在りし 橋本
1 豊 昔は蚊帳は夏の必需品でした。幼いころを思い出しま
す。
2 宮澤 年のせいか足は良くつるようになりましたが、蚊帳は
吊らなくなりました。そういえば、豚の蚊取り線香入れもどこ
へ行ったのでしょう。
3 秋元
4 小野寺 子供の頃の蚊帳は懐かしい夏の風物詩でしたね。暑さ
の記憶のなかに 蚊帳の匂いの夜は確かにありました。
5 深瀬 今の子供に蚊帳は分かるのでしょうか。子供のころ、
蚊帳を吊った中は別世界のように感じられたのがなつかしいで
す。
(011) 老いてなお 暑さ蹴散らせ 道半ば 吉良
1 志方 老いと猛暑に対する気概と自己認識が相対しているよ
うです。
2 柳町
(012) 打ち水も苦しき我が家の戦ぶり 治部
(013) 声がせぬ 学校プール 40度 中津川
1 宮澤 ブロック塀が倒れたり、暑さで中止になったり、学校
のプールから聞こえる子供たちの声を最近聞きません。ラジオ
体操も夏休み前半で終わりのようで、子供たちの姿を見るには
塾へ行くのが一番のようです。
(014) 川下り暑さ吹き飛ぶ水飛沫 深瀬
(015) 寒さにも 暑さにも負け 年を知る 宮澤
1 吉良 年はとっても気持ちが大切です。お互いに頑張りまし
ょう。
2 橋本
3 志方 老いと猛暑に対する気概と自己認識が相対しているよ
うです。
(016) アルプスの霊峰仰ぎ暑気払い 深瀬
(017) 打ち水に涼を求める猛暑かな 秋元
1 小野寺 季重なりの句ですが、猛暑を癒す打ち水は静かで密や
かな涼に違いありません。
(018) 雑草(くさ)むしり 蚊さえ飛べぬ 猛暑かな 中津川
1 橋本
(019) 行水の 盥もお湯に 暑熱かや 柳町
(020) 命懸け 公園目指す 夏吟行 中津川
(021) 炎天に汗したたりて 蝉しぐれ。 小野寺
1 吉良 都会の公園にもセミ時雨が聞かれ、情景が共感できま
す。
2 治部 季語が三つも入っていることに、どうなの?と思いな
がらなぜか素直に暑さを感じてしまう。いい句なんでしょうね。
(022) ニュース見てますます苦しき暑さかな 治部
(023) 暑き朝ジョギングびとの口への字 深瀬
(024) 空の鳥灼かれて墜ちる真昼かな 豊
1 柳町
(025) 海風にあたりて凌ぐ暑さかな 秋元
(026) 窓の外 暑さ溢れて 散歩止め 宮澤
1 橋本
2.兼題 海
(027) 故郷の 海鳴りとほく 風立ちぬ 小野寺
1 森
(028) シュノーケル海の生命 (いのち) の濃さを知り 橋本
1 豊 陸と同じように海の中にも様々な生物がいます。ふだ
んはあまり気にしませんが、潜るとそれがよくわかるのです。
「生命の濃さ」という表現がいいですね。
2 深瀬 上五のシュノーケルによって海底世界に引き込まれ、
色鮮やかな海牛などが目に見える感じです。海は生きものの故
郷を実感しました。
(029) 帰る日や散骨されて海の底 深瀬
1 治部 帰る日の意味がよくわかりませんでした。無季語の句
はもう少しわかりやすい方がいいのかもしれません。
(030) 鎮魂の 読経の声か 夏の海 小野寺
1 中津川
2 柳町
(031) 暑さ溜め 黒く漂う 夜の海 宮澤
1 吉良 夜のは涼しさを感ずるもの。暑さを黒く漂うと表現し
ている点が面白く読みました。
2 小野寺 暑さを溜めた海が黒く漂うという表現が暑い夜の海の
風景画です。
(032) 富士を背に土肥まで海路夏合宿 深瀬
(033) 白き帆の速き滑走夏光る 豊
1 中津川
2 橋本
3 小野寺 夏の海の輝きを白い帆の流れで的確に捉えて軽快なリ
ズムを生み出してます。
4 深瀬 強い陽差しを照り返している夏ならではの海の様子が、
足早に進む白い帆とともに眼に浮かびました。
(034) 海水浴 似合わぬ 老いの腹 中津川
(035) 横浜の港見え消え大花火 治部
(036) けだるげに 寄せる波音 夏の海 宮澤
(037) 海旅館花火くだけて波しぶき 深瀬
(038) 夢一期 銀河の海に 星流れ 小野寺
1 森
(039) 陽(ひ)を沈め 群青の海 燃え上がる 吉良
1 治部 無季語の句が多いと思いますが、句としてはそれぞれ
味わえますね。
2 豊 鮮やかな描写です。作者の情熱を感じます。
3 志方 なつの海の情景描写が秀逸
4 柳町
(040) 居酒屋化 水着はぬれず 海の家 中津川
(041) 夏の海さかなの声に耳澄ます 深瀬
(042) 白南風 (しらはえ) や 紺碧の海 帆が競い 小野寺
1 秋元
(043) 啼く海の 音に震える 宿の夜 柳町
1 治部 無季語の句が多いと思いますが、句としてはそれぞれ
味わえますね。
(044) 夏の海夕陽の影絵船の行く 深瀬
1 吉良 情景が目の前に浮かびます。
2 宮澤 ベトナムの水上人形劇やインドネシアの影絵の劇の世
界を思い出します。
3 志方 なつの海の情景描写が秀逸
(045) 黯き (くらき) 海 稲妻光り 夏来たる。 小野寺
(046) 海ゆかば五十六無念終戦忌 深瀬
1 柳町
(047) 千キロの海様々に小笠原 橋本
1 治部 無季語の句が多いと思いますが、句としてはそれぞれ
味わえますね。
(048) 行く夏を惜しみて海の夕日かな 豊
1 小野寺 海に落ちゆく真っ赤な夕日はそこはかとなく夏の終わ
りを告げる光と感じたのでしょう。
(049) 大花火横浜港の見え消えて 治部
(050) 海底 (うなぞこ) に生のふるさと見る車窓 深瀬
1 治部 無季語の句が多いと思いますが、句としてはそれぞれ
味わえますね。
3.雑詠
(051) 亡き友の 画に咲いており 夏の薔薇 小野寺
1 吉良 人の命は限りあるものですが、芸術作品は作者の亡き
あともを感動を残してくれるのでしょう。
2 深瀬 亡き友の描いた絵と静かに対面している作者の気持ち
の奥深くが伝わってくるように思いました。
(052) 夏めいて老母の脛の細きかな 深瀬
1 豊 かなりレベルの高い句だと思いますが、同じような内
容で誰か俳人がすでに詠んでいたような気がするのですが、誤
解でしょうか。
2 橋本
(053) 百合の花 汗噴く男に 日陰かす 杜瑯
(054) 星月夜 蒼き翅もて 蝉生まる。 小野寺
(055) あらかわい振りむく蜥蜴と目が合って 治部
1 宮澤 可愛いトカゲに「おいで」と言ったら返事は舌出して
「あかんべー」。先日、我が家の玄関先に青大将が現れ、しば
らく見つめあっていましたが、ふいっと何も言わずに自宅に戻
られました。
(056) 絵を描きし 朋去り 夏の独り酒 小野寺
1 志方 朋への追悼の思いの深さが簡潔に表現されているよう
です。
(057) 棺の蓋閉じて釘打つ石の音 深瀬
(058) 灯籠の明かりに揺れる幽霊画 豊
1 中津川
(059) 鶯の 相聞響く 樹陰かな 志方
1 橋本
(060) 老師逝く 故郷 (ふるさと) 遙か 百合の花 小野寺
(東海道七里の渡しで 2句)
(061) 夏の波 ひつまむし食べ 海街道 中津川
(062) 熱田宮 詣でて桑名へ 夏渡し 中津川
1 豊 熱田神宮から桑名へ夏の旅です。「夏渡し」の言葉が
大きな広がりを感じさせてみごとです。
(063) 新築のマンションの窓夏陽受け 深瀬
(064) 七とせの 願い届くか 稲穂かな 志方
(065) 紫陽花の 露に宿りて 虹光り 小野寺
1 宮澤 紫陽花の色が変わるのに、宿った露も負けじと色変化。
きれいですね。
2 秋元
(066) プールの辺 聢と手を添え 孫の肘 柳町
(067) 赤ワイン 友の遺作に 夏めぐる。 小野寺
(068) 虚無感のしじまに軋む夏の夜 深瀬
(069) カサブランカ 男の汗に 花弁燃え 杜瑯
(070) 絽に足袋で 打ち水渡り 古都は暮れ 小野寺
1 中津川
2 柳町
(071) 相馬路の 青田に映る 白き雲 志方
1 深瀬 津波や原発事故に翻弄された相馬の今の状況がしみじ
みと詠まれていると感じました。
(072) 老化とはかくの如きと少し知り 深瀬
(夏の庭3句)
(073) 剪定し程よき木陰芝を刈る 橋本
(074) 空蝉のがっちり留まる枝葉かな 橋本
(075) 揚羽蝶みかんの幼葉に子を託す 橋本
1 中津川
(076) 波の音抜ける雑踏夏夜店 深瀬
(077) 打ち水を 跨げば 髪が風に舞ひ。 小野寺
1 秋元
(078) もぎたての野菜で乾杯老仲間 深瀬
(079) ゆるやかに 蛍の生命 (いのち) 闇流る。 小野寺
1 森
2 吉良 蛍の飛ぶ様子が「ゆるやか」という表現されていると
ころがすばらしい。
3 志方 多分に色っぽい情景かなと思いいたします。
(080) 手にもって食事できずば旅立つ日 深瀬
(081) 幼児(おさなご)の 麦わら帽子に 風が寄せ 志方
(082) 手を広げ 入道雲に 夢と飛ぶ 杜瑯
1 秋元
2 小野寺 我々はいつの歳になっても 積乱雲に諸手をあげて挑
戦する気概と夢を持ち続けたいものです。雄大ないい句です。
3 深瀬 入道雲と夢の取り合わせになにか強い男気を感じます
が、さらに手を広げというのはロマンチックな印象も受けまし
た。
(083) 日本製絶滅危惧種身の回り 深瀬
(084) 汗拭う 読経の外は 蝉しぐれ 小野寺
1 宮澤 心頭滅却して読経していますが大粒の汗。刹那の命の
蝉は大きな声で鳴いても汗一つかきません。まだまだ修行が足
りません。
(085) 雨蛙飛び跳ねんとす脚二本 深瀬
(086) 学生街変わらぬ音やかき氷 治部
1 豊 学生街の喫茶店で恋人同士がかき氷をつつきながら愛
を語り合う。昔も今も変わらない情景です。
(087) 風碧く 古城の堀に 蓮の華 小野寺
1 柳町
(088) 雲流れ 茶臼岳にも 夏空が 志方
(089) 焼け野原空透き通り終戦忌 深瀬
(090) 絶景をカメラの中へ夏の山 豊
(091) 暮れなずむ五十路まぶしき浴衣かな 治部
1 志方 女性へのそこはかとない尊敬?がいいですね。
2 小野寺 夕暮れ時 夏祭りに行く雑踏のなかでふと出会った五
十路の浴衣姿は二十歳や三十路ではないところに艶があります。
(092) 碧空に 風澄みわたり 夏木立 小野寺
1 豊 余計なものを入れずに、夏らしい景色をすっきりと詠
んでいるのがいいですね。
(093) 朝ホーム退かず避けずの肉バトル 深瀬
(094) 峠道 甘き横笛 息鎮め 杜瑯
(095) 今年また ひぐらしがなく 夏も往く 志方
(096) 夕闇の 殻脱ぎ捨てて 青き蝉 小野寺
1 中津川
2 秋元
(097) 大阪に震度6弱初夏の朝 深瀬
(098) 廃屋の 庭を覆うは 夏草や 志方
(099) カサブランカ 熱射に負けず 上を向く 杜瑯
(100) 古希過ぎて 夏雲の群れ 超えんとす。 小野寺
(101) 七十路の微睡 (まどろ) ひの陰つきまとひ 深瀬
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2018年6月10日日曜日
七句会 第二十四回ネット句会 感想、自句自解です。
七句会
第二十四回ネット句会参加各位
第二十四回の選句結果を踏まえて、感想や自句自解、等をおよせいただき、
たいへんありがとうございました。
およせいただいたものを、名前順に、ほぼそのまままとめてお届けすること
にします。今後のやり方に、ご意見、等ありましたら、よろしくお願いします。
七句会のweb http://nanaku-haiku.blogspot.jp/ にも掲載してあります。
今後とも、よろしくお願いいたします。
深瀬 (事務方)
(1) 小野寺さんの自句自解
030 夢一夜越え帰し峰に山桜
長い長い険しい山の尾根を越えてきた、ふと振り向いた峰の遥か向こうの眼
下には満開の山桜が咲いていた。深山にひっそりと咲くのはソメイヨシノでは
なく 山桜でなければならなかったのです。
019 鳥啼きて春愁の湖(うみ)暮れにけり
遠くで鳥の鳴く声がして 春の湖を夜の帳(とばり)が降りてくる 鳥の声
は一瞬 静寂を支配し、春の憂いを誘います。
062 菜の花や群青の海光りをり。
群青色の荒海を背景に 菜の花の黄色がまるで眩い光の様で、群青と美しい
対比をみせ一服の絵のような光景でした。
076 奥津城を風しのび哭き春の月
訪れる人もない山寺の荒れ果てた墓石群を風が偲び泣くように音を立て流れ
そこに春の月があがり、所業無常の響きを発しておりました。
079 花衣 ほつれし髪の風に揺れ
花見のための友禅の和装の人の、黒髪がなまめかしく 風に揺れておりまし
た。志方さんの素直な感想とご理解に 感服です。
104 荒城の堀 埋めつくし花筏
信州の名城 松本城の堀を埋め尽くす花筏が風に揺れて動くさまは息を呑む
光景でした。戦国時代からの名城は深志城とも呼ばれ明治新政府に組みして会
津征伐に向かいました。城の桜は古城の怒涛の時代を生き抜いてきた生き証人
でもあり、花筏は古城の戦乱の歴史を彷彿とさせました。
(2) 中津川さんの感想
今回の「春 愁」は難しい題でした。その中で豊さんの6点句は読み返すと
なるほど素晴らしいと思いました。まさに秋岡さんが書かれている「いつまで
こんな句が読めればいいですね」に同感でした。
私の句では「卒業や はかまの列に 夢が起ち」が3 点をいただきました。
学生さんが学校の門を楽しげに話しながら出てきたのを見ていて、そのまま詠
んだものです。
時事ネタもたまにはチャレンジと思い「アイドルが 夢をこわして 春の終
」「春議会 官僚の雄 夢くづし」を作りましたが、まだまだですね。
(3) 豊さんの自句自解
(023) 頬杖の少女は春の愁ひかな
テーブルの上に頬杖をついて窓の外をぼんやりと眺めている少女。何か悩み
事でもあるのか、それともただの気まぐれな のか。思春期の少女の微妙な心
理と春愁を結びつけた句です。
まさかこんなにたくさん票が入るとは思いませんでした。皆さんまだ純粋な
感性を持っておられるようで、 うれしいです。
(044) 鯉のぼり少年の夢大空へ
鯉のぼりは男の子の節句の象徴。高く泳ぐ鯉のぼりを見上げる少年は、さら
にその上の空高く大きな夢を広げています。秋岡さんの鑑賞は、まさにその通
りです。
(050) 春光や何を夢見る新生児
窓から差し込む春の光が、べービーベッドに眠っている生まれたばかりの赤
ちゃんに注いでいます。まだ汚れのない赤ちゃんは、どんな清らかな夢を見て
いるのでしょうか。
春の光と新生児の清らかさを詠んだのですが、うまく伝わらなかったようで
す。
(068) 風の色青くなりゆく五月かな
五月は新緑の季節です。したがって、この「 青」 は、ブルーではなく、青葉
の青、緑です。新緑の林を吹き抜けてくる風は、きっと若葉の青色に染まって
いるに違いない。5月という季節の新鮮さを表現したつもりだったのですが。
(4) 深瀬の自句自解
・眠れずの老ひの春愁ながき夜
・七十路の朝餉にむせて春愁ふ
・既視感も老ひて違和感春愁ふ
・春愁ふ青さ無縁の老境地
最近、自身の老化の進み具合を実感することがしばしばあります。老化現象
と正面から向き合っているつもりですが、他の人がかなり若々しい句を詠んで
いるので、自分がややおかしいのか、などと不安を感じたりもしています。
・ぼけた夢めざめ安堵の妻ふつう
家内は身近なバロメータです。少し年下なので頼りになる感じです。
・人を見て隠れる夢の胸騒ぎ
無意識になにかよくないことをしているのかもしれないなどと心配になりま
した。
・夢のなかに入りませんかと陽水は
井上揚水の歌の歌詞は、なにか独特な雰囲気があると思います。
・両岸の桜に舟の夢ごこち
目黒川は両岸に桜が満開になります。その間を舟で行ったらどういう風景な
のか想像してみました。
・山桜朝日に映えて夢つづき
本居宣長の和歌を参考に、朝になってもまだ夢の世界のようだ、というつも
りです。
・夢問われ笑ひごまかす老ひの春
本当は、しっかり答えたいところです。
・時ながれ昭和平成夢に消え
天皇の生前退位が話題ですが、年号というのも時代を象徴しているのかもし
れません。
「七十年という時間を生きて」
・七十年ふりかえみれば夢のごと
・七十年夢のまた夢歩みけり
・時奔流先端もがき七十年
・飲み込まる時の津波に追いつかれ
時間というのは、不思議に感じます。重力によって時空が曲がるとか、存在
の根源にあるものなのでしょうか。
・既視感になにか不穏の散り桜
老化のせいか、満開の桜をみても、以前ほど感激しないみたいです。
・花筏笑顔たたえる目黒川
・普段着でベッド寝ころぶ春嬉し
ふとんなどかけずに寝っころがれるというのは、開放的気持ちになれます。
・新緑のひかりまばゆき日比谷かな
日比谷図書館の中からみる日比谷公園の樹木の新緑の輝きはすばらしいです。
・ドア開けて新緑とびこむ朝静か
日当たりのよくないマンションなので、朝、新聞を取り出すためにドアを開
けたときの外の朝日に輝いているさまは、ほんとうに新鮮に感じます。
・懸案の片づき窓に忘れ雪
人生いろいろな課題にぶつかりますが、その一つがやれやれやっと解決した
と思って、窓の外をみたら春の雪が舞っていたという風情です。
・忘れ雪木窓の桟にひかり積む
木製の窓の桟というのにノスタルジーを感じて作ってみました。
・軒先の鉢の草の芽ひかり受け
あまり陽のあたらない軒先に置いてある鉢植えにも、春とともに陽がさして
くるという様子です。
・がん告知帰路に草の芽ひかりおり
終わりかける命とこれからが伸び盛りの命を対比してみました。3 歳の孫を
みているとつくづく感じます。
・草の芽に紅きくちびる女子高生
最近の女子中高生は、かなり口紅を塗っている感じです。それと芽生えたば
かりの草の緑の取り合わせがおもしろいかと思ったのですが。
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第二十四回ネット句会参加各位
第二十四回の選句結果を踏まえて、感想や自句自解、等をおよせいただき、
たいへんありがとうございました。
およせいただいたものを、名前順に、ほぼそのまままとめてお届けすること
にします。今後のやり方に、ご意見、等ありましたら、よろしくお願いします。
七句会のweb http://nanaku-haiku.blogspot.jp/ にも掲載してあります。
今後とも、よろしくお願いいたします。
深瀬 (事務方)
(1) 小野寺さんの自句自解
030 夢一夜越え帰し峰に山桜
長い長い険しい山の尾根を越えてきた、ふと振り向いた峰の遥か向こうの眼
下には満開の山桜が咲いていた。深山にひっそりと咲くのはソメイヨシノでは
なく 山桜でなければならなかったのです。
019 鳥啼きて春愁の湖(うみ)暮れにけり
遠くで鳥の鳴く声がして 春の湖を夜の帳(とばり)が降りてくる 鳥の声
は一瞬 静寂を支配し、春の憂いを誘います。
062 菜の花や群青の海光りをり。
群青色の荒海を背景に 菜の花の黄色がまるで眩い光の様で、群青と美しい
対比をみせ一服の絵のような光景でした。
076 奥津城を風しのび哭き春の月
訪れる人もない山寺の荒れ果てた墓石群を風が偲び泣くように音を立て流れ
そこに春の月があがり、所業無常の響きを発しておりました。
079 花衣 ほつれし髪の風に揺れ
花見のための友禅の和装の人の、黒髪がなまめかしく 風に揺れておりまし
た。志方さんの素直な感想とご理解に 感服です。
104 荒城の堀 埋めつくし花筏
信州の名城 松本城の堀を埋め尽くす花筏が風に揺れて動くさまは息を呑む
光景でした。戦国時代からの名城は深志城とも呼ばれ明治新政府に組みして会
津征伐に向かいました。城の桜は古城の怒涛の時代を生き抜いてきた生き証人
でもあり、花筏は古城の戦乱の歴史を彷彿とさせました。
(2) 中津川さんの感想
今回の「春 愁」は難しい題でした。その中で豊さんの6点句は読み返すと
なるほど素晴らしいと思いました。まさに秋岡さんが書かれている「いつまで
こんな句が読めればいいですね」に同感でした。
私の句では「卒業や はかまの列に 夢が起ち」が3 点をいただきました。
学生さんが学校の門を楽しげに話しながら出てきたのを見ていて、そのまま詠
んだものです。
時事ネタもたまにはチャレンジと思い「アイドルが 夢をこわして 春の終
」「春議会 官僚の雄 夢くづし」を作りましたが、まだまだですね。
(3) 豊さんの自句自解
(023) 頬杖の少女は春の愁ひかな
テーブルの上に頬杖をついて窓の外をぼんやりと眺めている少女。何か悩み
事でもあるのか、それともただの気まぐれな のか。思春期の少女の微妙な心
理と春愁を結びつけた句です。
まさかこんなにたくさん票が入るとは思いませんでした。皆さんまだ純粋な
感性を持っておられるようで、 うれしいです。
(044) 鯉のぼり少年の夢大空へ
鯉のぼりは男の子の節句の象徴。高く泳ぐ鯉のぼりを見上げる少年は、さら
にその上の空高く大きな夢を広げています。秋岡さんの鑑賞は、まさにその通
りです。
(050) 春光や何を夢見る新生児
窓から差し込む春の光が、べービーベッドに眠っている生まれたばかりの赤
ちゃんに注いでいます。まだ汚れのない赤ちゃんは、どんな清らかな夢を見て
いるのでしょうか。
春の光と新生児の清らかさを詠んだのですが、うまく伝わらなかったようで
す。
(068) 風の色青くなりゆく五月かな
五月は新緑の季節です。したがって、この「 青」 は、ブルーではなく、青葉
の青、緑です。新緑の林を吹き抜けてくる風は、きっと若葉の青色に染まって
いるに違いない。5月という季節の新鮮さを表現したつもりだったのですが。
(4) 深瀬の自句自解
・眠れずの老ひの春愁ながき夜
・七十路の朝餉にむせて春愁ふ
・既視感も老ひて違和感春愁ふ
・春愁ふ青さ無縁の老境地
最近、自身の老化の進み具合を実感することがしばしばあります。老化現象
と正面から向き合っているつもりですが、他の人がかなり若々しい句を詠んで
いるので、自分がややおかしいのか、などと不安を感じたりもしています。
・ぼけた夢めざめ安堵の妻ふつう
家内は身近なバロメータです。少し年下なので頼りになる感じです。
・人を見て隠れる夢の胸騒ぎ
無意識になにかよくないことをしているのかもしれないなどと心配になりま
した。
・夢のなかに入りませんかと陽水は
井上揚水の歌の歌詞は、なにか独特な雰囲気があると思います。
・両岸の桜に舟の夢ごこち
目黒川は両岸に桜が満開になります。その間を舟で行ったらどういう風景な
のか想像してみました。
・山桜朝日に映えて夢つづき
本居宣長の和歌を参考に、朝になってもまだ夢の世界のようだ、というつも
りです。
・夢問われ笑ひごまかす老ひの春
本当は、しっかり答えたいところです。
・時ながれ昭和平成夢に消え
天皇の生前退位が話題ですが、年号というのも時代を象徴しているのかもし
れません。
「七十年という時間を生きて」
・七十年ふりかえみれば夢のごと
・七十年夢のまた夢歩みけり
・時奔流先端もがき七十年
・飲み込まる時の津波に追いつかれ
時間というのは、不思議に感じます。重力によって時空が曲がるとか、存在
の根源にあるものなのでしょうか。
・既視感になにか不穏の散り桜
老化のせいか、満開の桜をみても、以前ほど感激しないみたいです。
・花筏笑顔たたえる目黒川
・普段着でベッド寝ころぶ春嬉し
ふとんなどかけずに寝っころがれるというのは、開放的気持ちになれます。
・新緑のひかりまばゆき日比谷かな
日比谷図書館の中からみる日比谷公園の樹木の新緑の輝きはすばらしいです。
・ドア開けて新緑とびこむ朝静か
日当たりのよくないマンションなので、朝、新聞を取り出すためにドアを開
けたときの外の朝日に輝いているさまは、ほんとうに新鮮に感じます。
・懸案の片づき窓に忘れ雪
人生いろいろな課題にぶつかりますが、その一つがやれやれやっと解決した
と思って、窓の外をみたら春の雪が舞っていたという風情です。
・忘れ雪木窓の桟にひかり積む
木製の窓の桟というのにノスタルジーを感じて作ってみました。
・軒先の鉢の草の芽ひかり受け
あまり陽のあたらない軒先に置いてある鉢植えにも、春とともに陽がさして
くるという様子です。
・がん告知帰路に草の芽ひかりおり
終わりかける命とこれからが伸び盛りの命を対比してみました。3 歳の孫を
みているとつくづく感じます。
・草の芽に紅きくちびる女子高生
最近の女子中高生は、かなり口紅を塗っている感じです。それと芽生えたば
かりの草の緑の取り合わせがおもしろいかと思ったのですが。
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2018年5月20日日曜日
七句会 第二十四回ネット句会の選句の結果のご報告です。
七句会のみなさま
第二十四回の七句会にご参加いただきたいへんありがとうございました。
今回の選句結果をご報告いたします。
6 点句
(023) 頬杖の少女は春の愁ひかな 豊
3 点句
(009) 隅田川たゆとう灯春うれい 秋元
(030) 夢一夜 (ひとよ) 超え来し峰に山桜 小野寺
(046) 卒業や はかまの列に 夢が起ち 中津川
(073) 暮れなずみ 香ほのかに 沈丁花 志方
高千穂神社
(086) 雷電に 浮かぶ妖しき 闇神楽 森杜瑯
2 点句
(019) 鳥啼きて春愁の湖 (うみ) 暮れにけり 小野寺
(024) 既視感も老ひて違和感春愁ふ 深瀬
(044) 鯉のぼり少年の夢大空へ 豊
(054) 飲み込まる時の津波に追いつかれ 深瀬
(060) 夢問われ笑ひごまかす老ひの春 深瀬
(062) 菜の花や群青の海光をり 小野寺
(066) 手入れして心和みぬ春の庭 橋本
(076) 奥津城 (おくつき) を風しのび哭き春の月 小野寺
(077) 遠雷が 切り裂く能登の 暗き海 志方
(079) 花衣 (はなごろも) ほつれし髪は風に揺れ 小野寺
(104) 荒城の堀埋めつくし花筏 小野寺
下記に、選句表に、各句の右側に作者名、および、その下に選んだ人の名前
とコメント (追番付き、順不同、敬称略。) を付したものを添付します。
次回については、今年7 月中旬ころにご連絡したいと思っていますので、よ
ろしくお願いいたします。やり方、等について、ご意見がありましたら、ご連
絡をいただきたく、よろしくお願いいたします。
事務方から、以下、ご連絡、ご依頼です。
(1) 選句参加者
今回の選句には、下記の12名が参加しました。
秋岡さん、秋元さん、小野寺さん、吉良さん、志方さん、治部さん、中津川
さん、橋本さん、宮澤さん、柳町さん、豊さん、深瀬。
(2) 今回の句会の結果を踏まえた自句自解、感想、等の募集について
今回の句会の選句結果を踏まえて、各自、表明しておきたいこともあるので
はないかと思いますので、自句自解、感想、等、なんでも結構ですので、募り
たいと思います。一応、期限としては6 月9 日とし、事務方にメールでいただ
き、それを七句会の下記のweb に掲載することにしたいと思います。
http://nanaku-haiku.blogspot.jp/
これまで、句会の後、勉強会としての集まりを企画していましたが、参加者
が少ないこともあり、改めることにしました。集まっての勉強会も適宜、行い
たいとは思っていますが、よろしくお願いします。
2018.05.20
代表 橋口侯之介 (休会中)
顧問 豊 宣光
事務方 深瀬久敬
----------------------------------------------------------------------
1.兼題 春愁
(001) 散り桜 入日に消える 梢かな 志方05
(002) 風止みて川面に映る暑さかな 秋元02
(003) 朋去りて春愁の妻翳りあり。 小野寺12
1 志方 連合いの心情を思いやる気持ちが深く訴えかける。
(004) 春愁ふ青さ無縁の老境地 深瀬04
(005) 春愁や 霞のごとく 我を抱く 宮澤01
1 秋岡 ”我を抱く”とは中々言えない言葉ですが、何となく
分けの判らない春愁の思いが伝わってきます。
(006) 花が散り 思いの筏 うずを巻き 中津川02
1 秋元
(007) 晩鐘に 春の誘い 水ぬるむ 志方01
1 宮澤 ゴーンという音色も何やらまろやかに、そういえば水
もぬるみ、恋の憂いの春がきた・・・ならいいな。
(008) 春愁や木漏れ日の蒼滲みけり 小野寺08
1 深瀬 春愁と木漏れ日の蒼が滲むという情景の取り合わせが、
心象風景として奥深いものがあるように感じました。
(009) 隅田川たゆとう灯春うれい 秋元01
1 豊 隅田川の桜並木でしょうか。夜桜を照らす明かりが揺
れて、作者のうれい心を一層強めます。
2 宮澤 心に浮かぶ憂いのように、川面の灯りがゆれている
3 小野寺 隅田川に揺れる灯が、醸し出す春愁、味わい深いもの
があります
(010) 竹とんぼ 孫の瞳(目)高く 春の夕 志方02
1 柳町
(011) 眠れずの老ひの春愁ながき夜 深瀬01
1 秋岡 15番目の句の”老年のうつ”にもあるように歳をと
ると眠れない春の日がありますね
(012) 日だまりに 土手の土筆や 草いきれ 中津川01
(013) 春愁は土の匂いと白牡丹 小野寺19
(014) 春愁を 肴に一人 酒くらう 吉良01
1 志方 老境のひそかな楽しみと寂しさがしみじみです。
(015) 春愁や老年のうつ始まりぬ 豊 01
(016) 春愁に 水面に映ず 山桜 志方03
(017) 春愁を置き去りし日よ波の音 小野寺07
1 吉良
(018) 春愁や我が身に難し季題なり 橋本01
(019) 鳥啼きて春愁の湖 (うみ) 暮れにけり 小野寺11
1 志方 湖面に暮れゆく様が、鳥の声に伴奏されている。
2 中津川
(020) 七十路の朝餉にむせて春愁ふ 深瀬02
(021) 春愁の畔 (あぜ) の轍 (わだち) に雲雀 (ひばり) 啼く 小野寺15
(022) 皺深し 春愁もはや 逃げ去りぬ 吉良02
1 深瀬 かなりストレートな言い回しですが、なにか素直で磊
落な雰囲気が感じられました。
(023) 頬杖の少女は春の愁ひかな 豊 02
1 柳町
2 橋本
3 秋岡 いつまでもこんな句が詠めればいいですね。
4 秋元
5 宮澤 一丁前に頬杖ついた少女が考え事。君にも悩みはある
のだね。
6 治部
(024) 既視感も老ひて違和感春愁ふ 深瀬03
1 中津川
2 豊 かつては既視感として気分が盛り上がったのに、いま
は年老いて同じ感覚が違和感として感じられる。固い言葉が並
んでいま すが、老境の一端をうまくとらえています。
(025) アン二ュイな嵐の風の残り香が 秋元03
(026) 山路きて 逝く春惜しむ 影法師 志方04
1 治部
(027) 誰が知る 夢追い人の 春愁を 宮澤01
1 小野寺 漢の気概を深い詠嘆てして切ないものを感じます。
2.兼題 夢
(028) ぼけた夢めざめ安堵の妻ふつう 深瀬05
1 宮澤 ウ~っとうなって目が覚めた。隣で妻はスヤスヤ。若
い時と違って、醒めてほしい夢ばかり見ます。
(029) 孫の夢 叶えたくて 小銭もつ 柳町01
(030) 夢一夜 (ひとよ) 超え来し峰に山桜 小野寺21
1 吉良
2 志方 山桜の背景に新緑の出番が待ち受けいる情景が浮かび
ます。
3 秋元
(031) 春風に 夢儚けく 空に舞う 宮澤01
(032) 両岸の桜に舟の夢ごこち 深瀬08
(033) 庭に汽車 夢がかなって 一区切り 柳町02
(034) 時ながれ昭和平成夢に消え 深瀬11
(035) 花盛り 武将が夢の 出世城 中津川07
1 小野寺 桜の花の盛りに、戦国武将がかけた夢の城址、荒城の
月が偲ばれます。
(036) 山桜朝日に映えて夢つづき 深瀬09
1 小野寺 夢の続きはソメイヨシノではなくやはり山桜です。
(037) 鬼八石 夢で貫く 夏の風 森杜瑯02
(038) 七十年ふりかえみれば夢のごと 深瀬12
(039) 𣜿葉 (ゆずりは) は深き翠 (みどり) に夢を追い 小野寺09
1 柳町
(040) 陽だまりに 猫夢見てか 独り言 宮澤01
1 治部
(041) 夢のなかに入りませんかと陽水は 深瀬07
1 豊 無季の句ですが、ヒット曲をうまく取り入れておしゃ
れです。
(042) 若人(わかびと)や 若竹のごと 夢伸ばし 中津川04
(043) 七十年夢のまた夢歩みけり 深瀬13
1 秋岡 人生幾つになっても夢を作り、追いかけ生きて行くも
のですね。
(044) 鯉のぼり少年の夢大空へ 豊 03
1 吉良
2 秋岡 鯉のぼりが風に乗り大空を舞っている。少年の夢が大
きく広がっている。いいですね。
(045) 夢追いし 思いは遠く 春うらら 吉良03
(046) 卒業や はかまの列に 夢が起ち 中津川05
1 柳町
2 豊 卒業式は未来へ旅立つ第一歩。袴姿の女学生たちの胸
に夢が膨らんでいます。
3 橋本
(047) 衣川一期の夢か桜舞う 小野寺16
1 豊 「夏草や兵どもが夢の跡」。芭蕉のこの句も舞台は岩
手・衣川。きっと作者も意識したのでしょう。夏草と桜、季節
は違いますが、思いは一緒です。
ゴルフの句を以下二つ
(048) いつの日か夢はエージシュートなり 橋本02
(049) 鶯とかえるの歌に快ショット 橋本03
(050) 春光や何を夢見る新生児 豊 04
1 宮澤 春の日を浴びスヤスヤ。時々動く手足は、夢の中で何
か面白いこと見つけたのかな。
(051) 人を見て隠れる夢の胸騒ぎ 深瀬06
(052) アイドルが 夢をこわして 春の終 中津川06
1 橋本
(053) 春の夢 行きつ戻りつ 夜明け知り 宮澤01
1 深瀬 夜中になんかいもトイレに起きますが、春めいてくる
とややほっとした気持ちになります。
(054) 飲み込まる時の津波に追いつかれ 深瀬15
1 中津川 無季語ですが切迫感を感じました 悪夢でしょうか
2 秋元
(055) 春霞み 夢見る瞳 輝けり 吉良04
(056) 夢追いて一期の別れ花吹雪 小野寺18
(057) 時奔流先端もがき七十年 深瀬14
1 橋本
(058) 春議会 官僚の雄 夢くずし 中津川03
(059) ドイツのSL 撮って一つの 夢かなう 柳町04
1 治部
(060) 夢問われ笑ひごまかす老ひの春 深瀬10
1 中津川
2 橋本
3.自由題、無季語、川柳
(061) 新緑に 花ダイコンの 重ね刷り 志方10
1 秋元
(062) 菜の花や群青の海光をり 小野寺02
1 吉良
2 志方 菜の花の鮮やかな色彩が上手くうたわれている
(063) 佐保姫が来ているらしき富士の嶺 治部02
(064) 既視感になにか不穏の散り桜 深瀬16
(065) 瀬音食 (は) み風に消ゆるか花筏 小野寺13
1 柳町
(066) 手入れして心和みぬ春の庭 橋本04
1 豊 春は庭の花壇が彩られる季節。丹精込めて育てた花が
咲きそろって、作者の心をさぞいやしてくれたことでしょう。
2 深瀬 部屋のなかも掃除をすると気持ちがかなり変わります。
庭の手入れもたぶん同じだと思います。
(067) 普段着でベッド寝ころぶ春嬉し 深瀬18
1 秋岡 やっと暖かくなった喜びが溢れていていいですね。
(068) 風の色青くなりゆく五月かな 豊 05
1 深瀬 風の色が変わるという表現は、かなり心象的なものだ
と思いますが、同感したい気持ちです。
天岩戸が開く
(069) 手力男 古代のなぞを 開けし夏 森杜瑯03
(070) 北条の定めも載せて花筏 治部03
1 小野寺 北条氏の栄枯盛衰を花筏に観るなかなかの着想です。
(071) 古都の宵すべりてかろき花衣 (はなごろも) 小野寺20
1 中津川
(072) 花の森白き満月昇りたる 橋本05
(073) 暮れなずみ 香ほのかに 沈丁花 志方06
1 吉良
2 橋本
3 秋元
(074) 懸案の片づき窓に忘れ雪 深瀬21
1 中津川
(075) 石垣の残る古城やすみれ草 豊 06
(076) 奥津城 (おくつき) を風しのび哭き春の月 小野寺10
1 柳町
2 志方 月と奥津城の重なる情景が山水画のようですね。
(077) 遠雷が 切り裂く能登の 暗き海 志方07
1 秋元
2 小野寺 遠雷と暗い裏日本の能登の海の一瞬の稲光りの対比が
美しい、
(078) 京想う御室桜のただ一本 治部04
(079) 花衣 (はなごろも) ほつれし髪は風に揺れ 小野寺17
1 志方 実にそこはかとなく色っぽい(半世紀前に置き去った
心象風景がよみがえったような)
2 深瀬 花衣は花見用の華やかな衣裳のことのようですが、女
性の艶やかさが絵画的に切り取られていると感じました。
(080) ドア開けて新緑とびこむ朝静か 深瀬20
(081) 雪嵐 桜吹雪と 言う総理 志方11
(082) 追善の手桶に白き桜舞ひ 小野寺04
1 治部
(083) 夫婦して 我が世の春の 行く先は 志方13
(084) 軒先の鉢の草の芽ひかり受け 深瀬23
(085) こぶし越し 群雲淡き 紅に染む 志方08
高千穂神社
(086) 雷電に 浮かぶ妖しき 闇神楽 森杜瑯04
1 治部
2 深瀬 高千穂神社は、九州の神話時代に遡る史跡だと思いま
す。神話時代の神秘的魔界的雰囲気に引き込まれる感じがしま
した。
3 小野寺 稲妻の光に浮かんだ闇神楽の妖しさ。切り取った風景
が絵の様に浮かびます。
(087) 新緑や門前の空海苔纏う 橋本07
(088) がん告知帰路に草の芽ひかりおり 深瀬24
1 吉良
(089) 薄紅の牡丹ひらきて春の星 小野寺05
(090) 晴天に桜真っ赤な新車来る 治部05
(091) 新緑のひかりまばゆき日比谷かな 深瀬19
(092) 春爛漫 類は類呼ぶ お友達 志方12
(093) 群青を流して岬春霞 小野寺01
1 柳町
(094) 忘れ雪木窓の桟にひかり積む 深瀬22
(095) 瀬を速み伏し目の奥に花筏 小野寺06
(096) 黄砂飛ぶ日和洗濯物たまる 治部01
1 中津川 十七文字に日常感、生活感が表現されています
(097) 草の芽に紅きくちびる女子高生 深瀬25
(098) 物憂くて 孫の添い寝で ひと眠り 柳町03
二百トンの鬼岩
(099) 高千穂の 仙人涼し 岩飛ばす 森杜瑯01
(100) 白梅に 吹く風ぬるむ 散歩道 志方09
(101) 青鷺がカウカウと啼き春暮れぬ。 小野寺03
1 治部
(102) 雨上り春光煌めく水面かな 橋本06
(103) 花筏笑顔たたえる目黒川 深瀬17
(104) 荒城の堀埋めつくし花筏 小野寺14
1 豊 古城、堀、花筏。三つの材料がきれいにそろって、詩
的な風景を描き出しています。完成度の高い作品です。
2 橋本
----------
ご参考 選句におけるコメントです。
・吉良さん ---- 「春愁」の季語が今ひとつ実感できず句作、選句ともに苦
労しました。
・橋本さん ---- いつものことながら、素人には読んですっと入る句ばかり
となりました。
・秋岡さん ---- 今回は投句できませんでしたが、皆さん難しい兼題に対し
て上手に作られているので感心致しました。
・柳町さん ---- 来月の「ななめの会」は、家内とアイルランドへ行く予定
ですので参加できません。さらに、「七夕会」も先約があり参加できません。
とほほっーーーーーです!
第二十四回の七句会にご参加いただきたいへんありがとうございました。
今回の選句結果をご報告いたします。
6 点句
(023) 頬杖の少女は春の愁ひかな 豊
3 点句
(009) 隅田川たゆとう灯春うれい 秋元
(030) 夢一夜 (ひとよ) 超え来し峰に山桜 小野寺
(046) 卒業や はかまの列に 夢が起ち 中津川
(073) 暮れなずみ 香ほのかに 沈丁花 志方
高千穂神社
(086) 雷電に 浮かぶ妖しき 闇神楽 森杜瑯
2 点句
(019) 鳥啼きて春愁の湖 (うみ) 暮れにけり 小野寺
(024) 既視感も老ひて違和感春愁ふ 深瀬
(044) 鯉のぼり少年の夢大空へ 豊
(054) 飲み込まる時の津波に追いつかれ 深瀬
(060) 夢問われ笑ひごまかす老ひの春 深瀬
(062) 菜の花や群青の海光をり 小野寺
(066) 手入れして心和みぬ春の庭 橋本
(076) 奥津城 (おくつき) を風しのび哭き春の月 小野寺
(077) 遠雷が 切り裂く能登の 暗き海 志方
(079) 花衣 (はなごろも) ほつれし髪は風に揺れ 小野寺
(104) 荒城の堀埋めつくし花筏 小野寺
下記に、選句表に、各句の右側に作者名、および、その下に選んだ人の名前
とコメント (追番付き、順不同、敬称略。) を付したものを添付します。
次回については、今年7 月中旬ころにご連絡したいと思っていますので、よ
ろしくお願いいたします。やり方、等について、ご意見がありましたら、ご連
絡をいただきたく、よろしくお願いいたします。
事務方から、以下、ご連絡、ご依頼です。
(1) 選句参加者
今回の選句には、下記の12名が参加しました。
秋岡さん、秋元さん、小野寺さん、吉良さん、志方さん、治部さん、中津川
さん、橋本さん、宮澤さん、柳町さん、豊さん、深瀬。
(2) 今回の句会の結果を踏まえた自句自解、感想、等の募集について
今回の句会の選句結果を踏まえて、各自、表明しておきたいこともあるので
はないかと思いますので、自句自解、感想、等、なんでも結構ですので、募り
たいと思います。一応、期限としては6 月9 日とし、事務方にメールでいただ
き、それを七句会の下記のweb に掲載することにしたいと思います。
http://nanaku-haiku.blogspot.jp/
これまで、句会の後、勉強会としての集まりを企画していましたが、参加者
が少ないこともあり、改めることにしました。集まっての勉強会も適宜、行い
たいとは思っていますが、よろしくお願いします。
2018.05.20
代表 橋口侯之介 (休会中)
顧問 豊 宣光
事務方 深瀬久敬
----------------------------------------------------------------------
1.兼題 春愁
(001) 散り桜 入日に消える 梢かな 志方05
(002) 風止みて川面に映る暑さかな 秋元02
(003) 朋去りて春愁の妻翳りあり。 小野寺12
1 志方 連合いの心情を思いやる気持ちが深く訴えかける。
(004) 春愁ふ青さ無縁の老境地 深瀬04
(005) 春愁や 霞のごとく 我を抱く 宮澤01
1 秋岡 ”我を抱く”とは中々言えない言葉ですが、何となく
分けの判らない春愁の思いが伝わってきます。
(006) 花が散り 思いの筏 うずを巻き 中津川02
1 秋元
(007) 晩鐘に 春の誘い 水ぬるむ 志方01
1 宮澤 ゴーンという音色も何やらまろやかに、そういえば水
もぬるみ、恋の憂いの春がきた・・・ならいいな。
(008) 春愁や木漏れ日の蒼滲みけり 小野寺08
1 深瀬 春愁と木漏れ日の蒼が滲むという情景の取り合わせが、
心象風景として奥深いものがあるように感じました。
(009) 隅田川たゆとう灯春うれい 秋元01
1 豊 隅田川の桜並木でしょうか。夜桜を照らす明かりが揺
れて、作者のうれい心を一層強めます。
2 宮澤 心に浮かぶ憂いのように、川面の灯りがゆれている
3 小野寺 隅田川に揺れる灯が、醸し出す春愁、味わい深いもの
があります
(010) 竹とんぼ 孫の瞳(目)高く 春の夕 志方02
1 柳町
(011) 眠れずの老ひの春愁ながき夜 深瀬01
1 秋岡 15番目の句の”老年のうつ”にもあるように歳をと
ると眠れない春の日がありますね
(012) 日だまりに 土手の土筆や 草いきれ 中津川01
(013) 春愁は土の匂いと白牡丹 小野寺19
(014) 春愁を 肴に一人 酒くらう 吉良01
1 志方 老境のひそかな楽しみと寂しさがしみじみです。
(015) 春愁や老年のうつ始まりぬ 豊 01
(016) 春愁に 水面に映ず 山桜 志方03
(017) 春愁を置き去りし日よ波の音 小野寺07
1 吉良
(018) 春愁や我が身に難し季題なり 橋本01
(019) 鳥啼きて春愁の湖 (うみ) 暮れにけり 小野寺11
1 志方 湖面に暮れゆく様が、鳥の声に伴奏されている。
2 中津川
(020) 七十路の朝餉にむせて春愁ふ 深瀬02
(021) 春愁の畔 (あぜ) の轍 (わだち) に雲雀 (ひばり) 啼く 小野寺15
(022) 皺深し 春愁もはや 逃げ去りぬ 吉良02
1 深瀬 かなりストレートな言い回しですが、なにか素直で磊
落な雰囲気が感じられました。
(023) 頬杖の少女は春の愁ひかな 豊 02
1 柳町
2 橋本
3 秋岡 いつまでもこんな句が詠めればいいですね。
4 秋元
5 宮澤 一丁前に頬杖ついた少女が考え事。君にも悩みはある
のだね。
6 治部
(024) 既視感も老ひて違和感春愁ふ 深瀬03
1 中津川
2 豊 かつては既視感として気分が盛り上がったのに、いま
は年老いて同じ感覚が違和感として感じられる。固い言葉が並
んでいま すが、老境の一端をうまくとらえています。
(025) アン二ュイな嵐の風の残り香が 秋元03
(026) 山路きて 逝く春惜しむ 影法師 志方04
1 治部
(027) 誰が知る 夢追い人の 春愁を 宮澤01
1 小野寺 漢の気概を深い詠嘆てして切ないものを感じます。
2.兼題 夢
(028) ぼけた夢めざめ安堵の妻ふつう 深瀬05
1 宮澤 ウ~っとうなって目が覚めた。隣で妻はスヤスヤ。若
い時と違って、醒めてほしい夢ばかり見ます。
(029) 孫の夢 叶えたくて 小銭もつ 柳町01
(030) 夢一夜 (ひとよ) 超え来し峰に山桜 小野寺21
1 吉良
2 志方 山桜の背景に新緑の出番が待ち受けいる情景が浮かび
ます。
3 秋元
(031) 春風に 夢儚けく 空に舞う 宮澤01
(032) 両岸の桜に舟の夢ごこち 深瀬08
(033) 庭に汽車 夢がかなって 一区切り 柳町02
(034) 時ながれ昭和平成夢に消え 深瀬11
(035) 花盛り 武将が夢の 出世城 中津川07
1 小野寺 桜の花の盛りに、戦国武将がかけた夢の城址、荒城の
月が偲ばれます。
(036) 山桜朝日に映えて夢つづき 深瀬09
1 小野寺 夢の続きはソメイヨシノではなくやはり山桜です。
(037) 鬼八石 夢で貫く 夏の風 森杜瑯02
(038) 七十年ふりかえみれば夢のごと 深瀬12
(039) 𣜿葉 (ゆずりは) は深き翠 (みどり) に夢を追い 小野寺09
1 柳町
(040) 陽だまりに 猫夢見てか 独り言 宮澤01
1 治部
(041) 夢のなかに入りませんかと陽水は 深瀬07
1 豊 無季の句ですが、ヒット曲をうまく取り入れておしゃ
れです。
(042) 若人(わかびと)や 若竹のごと 夢伸ばし 中津川04
(043) 七十年夢のまた夢歩みけり 深瀬13
1 秋岡 人生幾つになっても夢を作り、追いかけ生きて行くも
のですね。
(044) 鯉のぼり少年の夢大空へ 豊 03
1 吉良
2 秋岡 鯉のぼりが風に乗り大空を舞っている。少年の夢が大
きく広がっている。いいですね。
(045) 夢追いし 思いは遠く 春うらら 吉良03
(046) 卒業や はかまの列に 夢が起ち 中津川05
1 柳町
2 豊 卒業式は未来へ旅立つ第一歩。袴姿の女学生たちの胸
に夢が膨らんでいます。
3 橋本
(047) 衣川一期の夢か桜舞う 小野寺16
1 豊 「夏草や兵どもが夢の跡」。芭蕉のこの句も舞台は岩
手・衣川。きっと作者も意識したのでしょう。夏草と桜、季節
は違いますが、思いは一緒です。
ゴルフの句を以下二つ
(048) いつの日か夢はエージシュートなり 橋本02
(049) 鶯とかえるの歌に快ショット 橋本03
(050) 春光や何を夢見る新生児 豊 04
1 宮澤 春の日を浴びスヤスヤ。時々動く手足は、夢の中で何
か面白いこと見つけたのかな。
(051) 人を見て隠れる夢の胸騒ぎ 深瀬06
(052) アイドルが 夢をこわして 春の終 中津川06
1 橋本
(053) 春の夢 行きつ戻りつ 夜明け知り 宮澤01
1 深瀬 夜中になんかいもトイレに起きますが、春めいてくる
とややほっとした気持ちになります。
(054) 飲み込まる時の津波に追いつかれ 深瀬15
1 中津川 無季語ですが切迫感を感じました 悪夢でしょうか
2 秋元
(055) 春霞み 夢見る瞳 輝けり 吉良04
(056) 夢追いて一期の別れ花吹雪 小野寺18
(057) 時奔流先端もがき七十年 深瀬14
1 橋本
(058) 春議会 官僚の雄 夢くずし 中津川03
(059) ドイツのSL 撮って一つの 夢かなう 柳町04
1 治部
(060) 夢問われ笑ひごまかす老ひの春 深瀬10
1 中津川
2 橋本
3.自由題、無季語、川柳
(061) 新緑に 花ダイコンの 重ね刷り 志方10
1 秋元
(062) 菜の花や群青の海光をり 小野寺02
1 吉良
2 志方 菜の花の鮮やかな色彩が上手くうたわれている
(063) 佐保姫が来ているらしき富士の嶺 治部02
(064) 既視感になにか不穏の散り桜 深瀬16
(065) 瀬音食 (は) み風に消ゆるか花筏 小野寺13
1 柳町
(066) 手入れして心和みぬ春の庭 橋本04
1 豊 春は庭の花壇が彩られる季節。丹精込めて育てた花が
咲きそろって、作者の心をさぞいやしてくれたことでしょう。
2 深瀬 部屋のなかも掃除をすると気持ちがかなり変わります。
庭の手入れもたぶん同じだと思います。
(067) 普段着でベッド寝ころぶ春嬉し 深瀬18
1 秋岡 やっと暖かくなった喜びが溢れていていいですね。
(068) 風の色青くなりゆく五月かな 豊 05
1 深瀬 風の色が変わるという表現は、かなり心象的なものだ
と思いますが、同感したい気持ちです。
天岩戸が開く
(069) 手力男 古代のなぞを 開けし夏 森杜瑯03
(070) 北条の定めも載せて花筏 治部03
1 小野寺 北条氏の栄枯盛衰を花筏に観るなかなかの着想です。
(071) 古都の宵すべりてかろき花衣 (はなごろも) 小野寺20
1 中津川
(072) 花の森白き満月昇りたる 橋本05
(073) 暮れなずみ 香ほのかに 沈丁花 志方06
1 吉良
2 橋本
3 秋元
(074) 懸案の片づき窓に忘れ雪 深瀬21
1 中津川
(075) 石垣の残る古城やすみれ草 豊 06
(076) 奥津城 (おくつき) を風しのび哭き春の月 小野寺10
1 柳町
2 志方 月と奥津城の重なる情景が山水画のようですね。
(077) 遠雷が 切り裂く能登の 暗き海 志方07
1 秋元
2 小野寺 遠雷と暗い裏日本の能登の海の一瞬の稲光りの対比が
美しい、
(078) 京想う御室桜のただ一本 治部04
(079) 花衣 (はなごろも) ほつれし髪は風に揺れ 小野寺17
1 志方 実にそこはかとなく色っぽい(半世紀前に置き去った
心象風景がよみがえったような)
2 深瀬 花衣は花見用の華やかな衣裳のことのようですが、女
性の艶やかさが絵画的に切り取られていると感じました。
(080) ドア開けて新緑とびこむ朝静か 深瀬20
(081) 雪嵐 桜吹雪と 言う総理 志方11
(082) 追善の手桶に白き桜舞ひ 小野寺04
1 治部
(083) 夫婦して 我が世の春の 行く先は 志方13
(084) 軒先の鉢の草の芽ひかり受け 深瀬23
(085) こぶし越し 群雲淡き 紅に染む 志方08
高千穂神社
(086) 雷電に 浮かぶ妖しき 闇神楽 森杜瑯04
1 治部
2 深瀬 高千穂神社は、九州の神話時代に遡る史跡だと思いま
す。神話時代の神秘的魔界的雰囲気に引き込まれる感じがしま
した。
3 小野寺 稲妻の光に浮かんだ闇神楽の妖しさ。切り取った風景
が絵の様に浮かびます。
(087) 新緑や門前の空海苔纏う 橋本07
(088) がん告知帰路に草の芽ひかりおり 深瀬24
1 吉良
(089) 薄紅の牡丹ひらきて春の星 小野寺05
(090) 晴天に桜真っ赤な新車来る 治部05
(091) 新緑のひかりまばゆき日比谷かな 深瀬19
(092) 春爛漫 類は類呼ぶ お友達 志方12
(093) 群青を流して岬春霞 小野寺01
1 柳町
(094) 忘れ雪木窓の桟にひかり積む 深瀬22
(095) 瀬を速み伏し目の奥に花筏 小野寺06
(096) 黄砂飛ぶ日和洗濯物たまる 治部01
1 中津川 十七文字に日常感、生活感が表現されています
(097) 草の芽に紅きくちびる女子高生 深瀬25
(098) 物憂くて 孫の添い寝で ひと眠り 柳町03
二百トンの鬼岩
(099) 高千穂の 仙人涼し 岩飛ばす 森杜瑯01
(100) 白梅に 吹く風ぬるむ 散歩道 志方09
(101) 青鷺がカウカウと啼き春暮れぬ。 小野寺03
1 治部
(102) 雨上り春光煌めく水面かな 橋本06
(103) 花筏笑顔たたえる目黒川 深瀬17
(104) 荒城の堀埋めつくし花筏 小野寺14
1 豊 古城、堀、花筏。三つの材料がきれいにそろって、詩
的な風景を描き出しています。完成度の高い作品です。
2 橋本
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ご参考 選句におけるコメントです。
・吉良さん ---- 「春愁」の季語が今ひとつ実感できず句作、選句ともに苦
労しました。
・橋本さん ---- いつものことながら、素人には読んですっと入る句ばかり
となりました。
・秋岡さん ---- 今回は投句できませんでしたが、皆さん難しい兼題に対し
て上手に作られているので感心致しました。
・柳町さん ---- 来月の「ななめの会」は、家内とアイルランドへ行く予定
ですので参加できません。さらに、「七夕会」も先約があり参加できません。
とほほっーーーーーです!
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