2023年9月14日木曜日

七句会 第四十四回目のネット句会 選句結果を踏まえた自句自解です。

  七句会のみなさま

 

 第四十四回の選句結果を踏まえて、感想や自句自解、等をおよせいただき、

たいへんありがとうございました。

 選句結果を踏まえてのお寄せいただいた自句自解をご報告します。今回、作

品集は省略させていただきました。

 

 今後のやり方に、ご意見、等ありましたら、よろしくお願いします。

 七句会のweb  http://nanaku-haiku.blogspot.jp/ にも掲載してあります。

  今後とも、よろしくお願いいたします。

 

  深瀬 (事務方)

 

 

1.44  ネット句会  自句自解

 

◎ 新井桜子さんの感想と自句自解

 

  自句自解を考えながら、投句した日を思いますと、暑さたけなわでしたね。

  今は、朝晩秋が感じられますが、個人的には温かい食事がいいなと思ったり

体調が混乱する感じです。季節の変わり目…みなさんはあまり気にしないです

か?

  振り返ると、やはり投句した盛夏のころとは、心情も目に留まる風景も違い

ますね…。今年は慶応高校の優勝が印象的です。私は翠嵐野球部のマネージャ

ーでしたが、当時はうちと同じ上の下レベルのチームで、練習試合に行ったこ

とがあります。そのころはスカウトとかしていなかったみたいです。

  俳句は自分史というほどではないですが、ミニ日記みたいですね。

 

(058) オレンジのくちばし並ぶ燕の巣

 最寄りの日吉駅構内につばめの巣があるのですが、見上げるとオレンジのか

わいいくちばしが並んでいます。

 

(035) 発車票数字の上に燕の巣

 日吉駅構内に行き、電車に乗るため発車標を見上げると、燕の巣が目に入り

、ユニークな光景を楽しめます.

  (季節のお話:この夏の日吉駅構内。初夏は燕の巣にカメラを向ける人が大

勢いて、燕の声の大合唱を楽しめました。晩夏は慶應が甲子園で優勝したので

、発車標にお祝いのテロップが出ているのをスマホで映す人でごった返してい

ました。優勝してすぐに行きましたが、ちょうど慶応高校の方角に虹が出てい

てお祝いのようでした。)

 

(092) デヴィ夫人滝つぼの中古希迎え。

 タレントのデヴィ夫人が古希のお誕生日に修行で滝に打たれていました。印

象的です。

 

(065) ナイアガラ小舟揺るがす滝の音

 大学生の時にカナダ旅行へ行きました。ナイアガラ大瀑布で遊覧船に乗りま

したが、迫力に驚きました。

 

(011) 蓮の花三渓園の朝に咲く

 初夏の三渓園の朝の一コマです。池に見渡す限り蓮が咲いていました。

 

(039) ミニトマトつるの中から実がのぞく

 自宅近くの家庭菜園でかわいいトマトの実がなっているのを見ました。

 

(074) 夏服の洗濯物の乾きよし

 夏は暑くても、洗濯物がすぐに乾くので楽です。

 

(027) ぼんぼりの朝顔照らす色とりどり

 朝顔祭りの一コマ、夕闇でぼんぼりに照らされる朝顔の幻想的な美しさを思

いました。

 

(046) ほおづき市淡いオレンジ癒されし

 初夏のほおづき市でならぶオレンジ色のほおづきの実を見るとほっとします。

 

(051) 七夕に大雨こぬよう願い事

 私の七夕の願い事です。

 

 

◎ 小野寺さんの自句自解

 

 締め切りを延ばして頂き心に響いた夏の日の記憶の21句のうち15句も皆様の

心に留めて頂き望外の喜びです。

 

(068) 5 点句 朽ち果てし卒塔婆に語る夏の蝶

 朽ち果てて文字さえ定かではない卒塔婆に今を盛りの美しい夏の蝶がとまり

己の命の儚さを語りかけている様でもありました。

 

(049) 4 点句 心澄みやはらかに聴く夏至の雨

 治部さん、吉良さん、平島さんの解釈はありがたいのですが、現実は時間に

追われる多忙な生活で、静かに聴く夏至の雨はやはらかに聴く至福のひととき

でした。心澄む日は私の切なる願望です。

 

(064) 3 点句 ゆふすげは君亡き里の道しるべ

 昔の大切な人が住んでいた里には辺り一面が変わり果て今は夕菅がまるで道

標のように咲き乱れて遥かな郷愁を誘いました。

 

(100) 3 点句 夕日落ち薔薇一輪の赤き色

 夕日が落ち、辺り一面がたそがれの淡い薄紫に包まれる一瞬の静寂の中ただ

一輪の薔薇が見事な真紅を放っておりました。

 

(020) 2 点句 暁にひらきはじめし白牡丹

 暁のぼんやりとほのぐらい光の中で新しく咲き始める牡丹は目の覚める様な

白のハーモニーでした。

 

(030) 2 点句 浜木綿は潮騒聴くや雲の峰

 桜子さんの感想鏑木清方の日本画とは嬉しい限り。入道雲がわく真夏の海辺

浜木綿の白い花は潮騒の海の調べを静かに聴いているのでしょうか。

 

(061) 2 点句 滝近し木立の冷気迷い蝶

 平島さんの見事な感想の通り、この木立の冷気は何処から?  ああ近くにあ

る滝からだ。蝶よおまえも迷い迷いながら、探しているのか?

 

(026) 1 点句 鮎走る暗き深みに腹ひかり

  豊さんの感想、生き生きとした鮎の姿が目に浮かびます。とは嬉しい選句評

です。少年時代祖父や父て鮎の友釣りについていきましたが、瀞の深みに居る

鮎の走りを眺めてらおりました。

 

(053) 1 点句 炎帝の怒りに耐えてカンナ咲き

 灼熱の暑さの中カンナは健気にも紅い花を咲かせて、じっと耐えて炎帝に抵

抗している様でもありました。

 

(076) 1 点句 雲の峰湧きて湖沼に風ひかる

 吉良さんの感想の通り。積乱雲の湧きあがる暑い夏、湖沼を駆け抜ける一陣

の風を感じたのです。

 

(091) 1 点句 胎動を聴きしその日に薔薇を買い

 家内が長女を身籠もった時一時の流産の危機を乗り越えて入院先で胎動を聴

き飛び跳ねて紅い薔薇を買いに行きました。

 

(094) 1 点句 音もなく時過ぎゆくや蛍舞ひ

 平島さんの感想の通り。静かに、穏やかに、迷い無く過ごしている老境の日

(現実は迷いだらけ) 。でも自然の営なみはそこここにあり、蛍も短い命を

懸命に燃やして、生き急いでいるのかなあ? と

 

(008) 1 点句 野仏が着いてきそうな祇園の夜

 中津川さん  祇園祭りの宵山です。まるで笛や太鼓につられて、野仏もつい

てきそうです。

 

(012) 1 点句 御仏の眼が合ひ外は蝉時雨

 山寺の持仏堂で、御仏が生きて眼を合わせてきたと感じたのです。ふと汗を

ぬぐい我に帰ると外は蝉時雨の静寂でした。

 

(034) 1 点句 花菖蒲黒髪香ほり息をのみ

  治部さんに喝破された様にこれは私の投句です。花菖蒲に香る黒髪は、思わ

ず息をのみます。過ぎてきた遠い記憶は時に鮮烈に蘇ります。

 

 

◎ 吉良さんのコメント

 

(024) 望郷や第九奏でる蝉しぐれ

 

      徳島-淡路島ゴルフ旅行にて (7 )

(077) マスクとり口元緩めかき氷

(078) ティーショット瀬戸の夏空突き破る

(079) 向日葵(ヒマワリ)の合唱の指揮は陽の光

(080) 消え隠くる向日葵(ヒマワリ)畑に稚児の顔

(081) 渦潮の大暑のみ込む静けさや

(082) 渦の道水軍走る夏の夢

(083) ほとばしる汗や舞い手の阿波の夜

 

  7 月の連休を利用して初めての徳島、淡路島にゴルフ旅行した時の句です。

  徳島市郊外に小山に囲まれた、第一次世界大戦のドイツ人捕虜収容所跡地が

ドイツ館として保存されています。ここで日本で初めてベートーヴェン第9交

響曲が演奏されたとのことです。周りには蝉の合唱が響いていました。近くに

は陶器の窯元もいくつかあり、ぜひ一度訪れてみてください。

 

 

◎ 豊さんの自句自解

 

(002) 西瓜食う水分補給万全に 

 熱中症予防のためには水分補給が大事です。西瓜には水分がたくさんありま

す。

 

(009) 暑気払いもう一杯の大ジョッキ 

 若いころは仲間とデパートの屋上ビヤガーデンでいつも暑気払いをしていま

した。

 

(013) 子供らが消えた公園油照り

 いつもなら子供たちが遊んでいるのに、今日は猛暑のために外では遊べない

のです。

 

(032) 浦島を乗せた亀去る土用波 

 浦島太郎の物語に引っかけたのですが、土用波との組み合わせがよかったか

どうか。

 

(042) 炎天やかぶるものなき石地蔵

  熱い日を浴びながら、石地蔵は汗ひとつかきません。心頭滅却の悟りの境地

です。

 

(067) 落日やインスタ映えの夏の海 

 夕日が海の沖に沈んでいきます。インスタ映えのその美しさを詠んだのです

が。

 

(098) 大の字に寝ても広々夏座敷 

 障子や襖をあけはなった広い畳の座敷に大の字に寝転ぶのは気持ちがいいも

のです。

 

 

◎ 深瀬の自句自解

 

(066) 七月の木々のゆらめくビル谷間

  ビルの谷間の7 月の清らかな日差しに映える木々に、改めて新鮮なものを感

じたりしています。

 

(018) 病棟の窓の緑や夏陽受け

  恵比寿駅近くの病院に2 日ほど入院したのですが、窓から見る風景との間に

なにか奇妙な隔たりのようなものを感じました。

 

(070) 日傘列弁慶橋に堀の風

  弁慶橋のかかるお掘りにはボートが浮かんだりしていますが、昼時は、若い

近くの会社のOLたちが日傘をさして行き来していました。

 

(097) 夏服にマスクの列の異次元さ

  地下鉄の電車の中からホームを一瞬見たときの光景でしたが、改めて変だな

と感じました。

 

(016) 清水谷ニューオータニに蝉の声

  近くの大学に通っていたころの雰囲気とは異なり、やや場違いな高級感のあ

ふれたしゃれた感じになっています。

 

(041) ビル街にひやし中華のメニューかな

  地下のビル街にレストランが並んでいますが、昼時はひやし中華のメニュー

が目につきました。

 

(086) 夏草の砲弾に飛ぶウクライナ

 今現在、ウクライナでは夏草が砲弾で飛び散っています。ロシアのプーチン

大統領とそれを支持している人達の人間性を思わずにいられません。

 

(062) つばめの子生存枠を競うかな

(028) つばめの子寄り添い眠る夜のとばり

  人間にも多産多死の時代がありましたが、私たち団塊の世代から少産少死に

移行したようです。そうした変化をする生き物は他にあるのでしょうか。

 

(075) 寝静まる枕辺に聞く滝の音

  山間 (やまあい) の旅館にでも宿泊したとき、寝静まった中での聞き慣れな

い音に原始時代に戻ったような錯覚を覚えることがあります。

 

(031) いつの間に滝落ちるごと老い迎え

  ついこの間まで老いを実感するなどということはほとんどなかったのですが

、最近になって、そういう元気だったころはあっという間に過ぎ去ってしまっ

た気持ちを感じたりしています。

 

(054) 滝の水途中で霧消ギアナの地

  エンジェルフォールは滝壺がないことで有名です。ギアナ高地のような自然

ができることに、自然界の前の人間の小ささを実感します。

 

(101) 腰越の囲碁の集いや夏の海

  腰越は、鎌倉と藤沢を結ぶ江ノ電の中間くらいにあります。囲碁の後はみん

なでしらす丼とかを食べて、幸せをかみしめています。

 

(048) 人新世 (ひとしんせい) 夏の猛暑を噛みしめる

  数億年の歳月を経て作られた石炭や石油を、数10年くらいの間にどんどん燃

やしてしまう人類というのは、どういう存在なのか考えさせられます。

 

(014) 夏雲のみおろす大地砲火飛び

  ウクライナの方は平地が広がり、その上に夏雲がくっきりと浮かんでいます

。そうした光景のなかで砲弾を打ち合っているのをみるとなにかやりきれない

気持ちになります。

 

(022) 孫たちを夏合宿に送り出し

  同じマンションの上の階に孫が二人います。こちらは夫婦二人きりですが、

それとは別次元のような生命力の横溢に老いの在り方を考えさせられます。

 

(025) 夏の陽に訃報のはがき身に迫る

  老いの身にとって夏の陽はなにか存在感を否定されているような思いがあり

ます。そういうとき訃報の葉書を受け取ったりするとなにか催促されているよ

うな気持ちを感じたりします。

 

(089) 七月の残り日わずかなにか悔い

  七月にはなにか生命の輝きのようなものがあって、過ぎ去ってしまうときな

にかし忘れていることがあるような後ろ髪をひかれる気持ちを覚えます。

 

(043) つぎつぎの争いごとに昼寝かな

  あまりに社会全般に気になるようなことが多すぎると、もうどうでもいいと

いう気持ちなり、ふて寝をきめこみたくなります。

 

(037) そうめんに大根おろしと揚げ玉を

  昼食に家内がたまに作ってくれるのですが、シンプルで食べやすくて傑作的

な食べ物ではないかと思ったりします。

 

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2023年8月21日月曜日

七句会 第44回句会 選句の結果です。

  七句会のみなさま


 第四十四回の七句会にご参加いただきたいへんありがとうございました。


 今回の選句結果をご報告いたします。


 7 点句

(036) 盆踊り見返り美人の厚化粧           志方  03


 5 点句

(071) すれ違う声は異国の浴衣連れ          桑子  01


 4 点句                          

(049) 心澄みやはらかに聴く夏至の雨         小野寺09

(068) 朽ち果てし卒塔婆 (そとば) に語る夏の蝶    小野寺21

(073) 風鈴の音色が亘る天の川            志方  01

    (注。作者自身の選がありましたが、よしとしました。) 


 3 点句

(018) 病棟の窓の緑や夏陽受け            深瀬  02

(024) 望郷や第九奏でる蝉しぐれ           吉良  08

(042) 炎天やかぶるものなき石地蔵          豊    06

(064) ゆふすげは君亡き里の道しるべ         小野寺19

(100) 夕日落ち薔薇一輪の赤き色           小野寺11


 2 点句

(005) 引き潮に蟹の楽園広々と            志方  04

(009) 暑気払いもう一杯の大ジョッキ         豊    05

(010) 念ずればゴルフ日和の梅雨曇り         桑子  02

(019) 志津川の湾煌めいて船を呑む          橋本  03

(020) 暁にひらきはじめし白牡丹           小野寺17

(030) 浜木綿は潮騒聴くや雲の峰           小野寺13

(031) いつの間に滝落ちるごと老い迎え        深瀬  11

(048) 人新世 (ひとしんせい) 夏の猛暑を噛みしめる  深瀬  14

(056) 飽きもせず素麺2皿昼餉かな          桑子  05

(061) 滝近し木立の冷気迷い蝶            小野寺01

(079) 向日葵(ヒマワリ)の合唱の指揮は陽の光    吉良  03

(083) ほとばしる汗や舞い手の阿波の夜        吉良  07

(089) 七月の残り日わずかなにか悔い         深瀬  18

(098) 大の字に寝ても広々夏座敷           豊    02


  下記に、選句表に、各句の右側に作者名、および、その下に選んだ人の名前

とコメント (追番付き、順不同、敬称略。) を付したものを添付します。

  次回については、今年10月~  11月ころにご連絡したいと思っていますので

、よろしくお願いいたします。やり方、等について、ご意見がありました

ら、ご連絡をいただきたく、よろしくお願いいたします。


 事務方から、以下、ご連絡、ご依頼です。


(1) 選句参加者

 今回の選句には、下記の14名が参加しました。

  桜子さん (新井さん) 、小野寺さん、吉良さん、桑子さん、志方さん、治部

さん、中津川さん、橋本さん、服部さん、平島さん、宮澤さん、柳町さん、豊

さん、深瀬。

  また、七句会第44回句会選者各位の選句結果 (句の作者名付き) を下記URL 

に掲載しておきました。

  http://nanaku-haiku.blogspot.com/2023/05/43.html


(2) 今回の句会の結果を踏まえた自句自解、感想、等の募集について

  今回の句会の選句結果を踏まえて、各自、表明しておきたいこともあるので

はないかと思いますので、自句自解、感想、等、なんでも結構ですので、募り

たいと思います。一応、期限としては  9 月9 日とし、事務方にメールでいた

だき、それを七句会の下記のweb に掲載することにしたいと思います。

 http://nanaku-haiku.blogspot.jp/


  2023.08.21


      代表   橋口侯之介

      顧問  豊  宣光

      事務方 深瀬久敬


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(001) 夏至の日に雲よりこぼれ陽は沈み        小野寺02

(002) 西瓜食う水分補給万全に            豊    07

(003) 彼の国に天災来ぬかと酷暑かな         橋本  06

(004) 紫陽花にふれそに走る銚子電          服部  02

      1 深瀬    銚子電鉄にはヤマサ醤油の工場をみた

              ついでに、似たような感じの江ノ電には

              腰越に囲碁仲間と行ったとき乗りました。

              風情がよくわかります。

(005) 引き潮に蟹の楽園広々と            志方  04

      1 橋本    テレビで見た西表島のマングローブの

              干潟の光景を思い起こしました。

      2 豊      潮が引いて砂浜に蟹の遊び場ができた。

              「 楽園」としたところがうまいですね。

(006) ホトトギス托卵求め夜もすがら         橋本  01

(007) コロナ明け炎天ものかわ同期会         中津川03

(008) 野仏がついて来そうな祇園の夜         小野寺14

      1 中津川  祇園祭の宵山でしょうか?それともこ

              れから一杯?

(009) 暑気払いもう一杯の大ジョッキ         豊    05

      1 治部    ビヤガーデンですかね。いい光景です。

              仲間での盛り上がりが目に浮かびますね。

              しかし、大ジョッキ見なくなりましたよ

              ね。なぜなのでしょう。懐かしいなあ。

      2 桜子    小気味よいリズム感のある、また、真

              夏の暑さが吹き飛ぶような力強さも持ち

              合わせた一句です

(010) 念ずればゴルフ日和の梅雨曇り         桑子  02

      1 服部    

      2 深瀬    やはり上手なゴルファーの心がけは違

              うなと実感しました。

(011) 蓮の花三渓園の朝に咲く            桜子  05

(012) 御仏の眼が合ひ外は蝉時雨           小野寺22

      1 柳町    

(013) 子供らが消えた公園油照り           豊    01

      1 治部    油照りという季語は本当に昔からあっ

              たのですか。最近でこそピタリの季語に

              感じます。感じられる暑さが半端ないよ

              うに伝わります。子供は危険ですよね。

(014) 夏雲のみおろす大地砲火飛び          深瀬  15

      1 志方    青いそら、白い雲、のどかな田園に硝

              煙が舞う悲惨な光景がうまく表現されて

              いる。

(015) 老い杉を陽は移りゆき蝉時雨          小野寺12

(016) 清水谷ニューオータニに蝉の声         深瀬  05

(017) 浴衣着て宵山歩く外国語            中津川01

(018) 病棟の窓の緑や夏陽受け            深瀬  02

      1 治部    入院中なのでしょうか、お見舞いなの

              でしょうか。外の猛暑を涼しいところか

              ら見ている様子。よいのか悪いのか、憂

              鬱を感じます。

      2 平島    病も何とか快方に向かい、窓から見え

              る木々の緑や力強い夏陽に自然の生命力

          営みから元気がもらえて退院も近いかな。

      3 小野寺  闘病の身動きならない病棟、窓から眺

              める強い日差しに輝く緑は、病身の身の

              もどかしさと外界への希望とが、がない

              まぜになった心情を表してます。

(019) 志津川の湾煌めいて船を呑む          橋本  03

      1 宮澤    山の上から湾を眺めた遠景、夏の強い

              陽の光の煌めきに小舟の照り返しが飲み

              込まれ一体となった感じ好きです。

      2 小野寺  志津川河口から煌めく湾の光の海は湾

              に浮かぶ船を光の中に呑み込んで行く様

              です。なかなか素敵な表現です。

(020) 暁にひらきはじめし白牡丹           小野寺17

      1 桜子    何とも言えない情緒あふれる一句です。

      2 豊      暁のぼんやりした明るさと牡丹のすが

(021) 連絡船夕凪瀬戸のざるうどん          中津川07

(022) 孫たちを夏合宿に送り出し           深瀬  16

(023) 夕映えは山の端越えて雲染める         志方  07

      1 小野寺  夕陽が沈みかけながら山の端を越えて

       雲を染めていく様子が時の移り変わりと

              して上手く捉えられてます。

      徳島ドイツ館(俘虜収容所)にて

(024) 望郷や第九奏でる蝉しぐれ           吉良  08

      1 平島    日本で最初の演奏、ドイツ人捕虜には

          民間人もいて地元の人達はチーズ作りな

              ども学びました。もう昔の出来事も遠い

              彼方に。今はただ蝉時雨が聴こえるだけ。

      2 中津川  ドイツ兵は故郷を想い、蝉は何を想っ

              て泣くのでしょうか?

      3 深瀬    第九と蝉しぐれの取り合わせに意表を

              衝かれます。

(025) 夏の陽に訃報のはがき身に迫る         深瀬  17

      1 橋本    

(026) 鮎走る暗き深みに腹ひかり           小野寺08

      1 豊      生き生きとした鮎の姿が目に浮かびま

              す。

(027) ぼんぼりの朝顔照らす色とりどり        桜子  08

(028) つばめの子寄り添い眠る夜のとばり       深瀬  09

(029) オーナーの紹介長し揚げ花火          桑子  04

(030) 浜木綿は潮騒聴くや雲の峰           小野寺13

      1 柳町    

      2 桜子    鏑木清方の日本画を思わせる句です。

(031) いつの間に滝落ちるごと老い迎え        深瀬  11

      1 吉良    いつの間に滝落ちるごと:同館です。

      2 志方    人それぞれに老いの自覚ですが、その

              一瞬がうまく捉えられています。

(032) 浦島を乗せた亀去る土用波           豊    04

      1 桜子    発想が面白くて、最後の言葉が効いて

              います。

(033) 銚子にて入梅イワシの漬け具合         服部  03

(034) 花菖蒲黒髪香ほり息をのみ           小野寺20

      1 治部    花菖蒲に香る黒髪ですか。思わず息を

              のみます。ゴクリと音が聞こえるようで

              すね。何となく作者がわかったような気

              がします。

(035) 発車票数字の上に燕の巣            桜子  02

(036) 盆踊り見返り美人の厚化粧           志方  03

      1 治部    盆踊りを踊る若者が少なくなった気が

              します。古き良き文化は厚化粧の美人た

              ちが継いでゆくのでしょう。何だか時世

              を詠んだ句のようです。

      2 吉良    盆踊りなど何十年も経験ありませんが、

              懐かしく思われます。

      3 桜子    最後の一文で笑ってしまいました。ユ

              ーモアあふれます。

      4 橋本    がっかりでしょうか、それともやはり

              なのか?

      5 服部    日本全国高齢化と感じました?

      6 豊      後ろ姿は美人なのに、振り返ったその

              厚化粧に期待を裏切られた、ということ

              でしょうか。

      7 宮澤    バックシャン見とれていたら振り返り、

              思わぬ厚化粧。惚れ直したのか、がっか

              りしたのかどちらなのでしょうか?

(037) そうめんに大根おろしと揚げ玉を        深瀬  20

(038) 七夕会後期高齢若返り             中津川02

(039) ミニトマトつるの中から実がのぞく       桜子  06

(040) 城跡の名残の堀や花菖蒲            治部  01

      1 小野寺  忘れられた古城の堀に凛として咲く花

              菖蒲は城を枕に討ち死にした将兵の魂魄

              の忘れがたみの様でもあります。芭蕉の

              夏草や兵どもが夢の跡、に通じるものを

              感じます。

(041) ビル街にひやし中華のメニューかな       深瀬  06

(042) 炎天やかぶるものなき石地蔵          豊    06

      1 吉良    暑さに耐えている修行者の様子に思わ

              れます。

      2 中津川  野ざらしのお地蔵様はさぞや暑い事で

              しょう。

      3 宮澤    暑苦しいので帽子嫌いの禿の小生、い

              たく同感です。かぶるものがないと言っ

              ていますが、本心はかぶりたくないので

              す。

(043) つぎつぎの争いごとに昼寝かな         深瀬  19

(044) シジュウカラ雛鳴き騒ぎ虫を待ち        小野寺07

(045) 鴎外忌団子坂から東博へ            桑子  03

      1 豊      団子坂はかつて森鴎外が住んでいた所

              です。そこから上野の東京博物館はそれ

              ほど遠くはありません。

(046) ほおづき市淡いオレンジ癒されし        桜子  09

(047) 孫が待つアイス溶けると急ぐチャリ       中津川05

(048) 人新世 (ひとしんせい) 夏の猛暑を噛みしめる  深瀬  14

      1 柳町    

      2 中津川  なぜ人類は愚かなことを繰り返すのか。

(049) 心澄みやはらかに聴く夏至の雨         小野寺09

      1 治部    随分と心穏やかな様子が伝わります。

              やるべきことを成し遂げた感があります。

              何だか、人生かくあるべしと言われてい

              るような気がします。

      2 吉良    最近の雨は豪雨ばかりですが、雨が柔

              らかに聞こえる落ち着いた心境がうらや

              ましい。

      3 平島    もう老境に差し掛かり世の中の騒然も

          気にかからなくなり夏至に降る雨の音さ

              えも穏やかな純な気持ちで聴けます。「

              やはらかに」がいいなあ!

      4 深瀬    なにか作者の心情が伝わって来るのが

              おもしろいです。

(050) 万緑の溪谷沿って涼運ぶ            志方  06

(051) 七夕に大雨こぬよう願い事           桜子  10

(052) 七夕や元気な友と六十年            治部  04

(053) 炎帝の怒りに耐えてカンナ咲き         小野寺03

      1 服部    

(054) 滝の水途中で霧消ギアナの地          深瀬  12

(055) 力抜け無ダボのラウンド梅雨の効        橋本  04

      1 深瀬    ゴルフは本当に脱力が基本だと思いま

              すが、わたしほど遠い感じです。

(056) 飽きもせず素麺2皿昼餉かな          桑子  05

      1 治部    これよく解ります。素麺大好きです。

              飽きるわけないですよ。これ俳句にする

              のは流石です。

      2 小野寺  いつもの通い慣れた蕎麦屋で定番の素

              麺二皿をたのむ昼餉、何の衒いも気負い

              もない作者の恬淡とした愉快な表情が窺

              えます。

(057) 沖流る黒潮岬合歓の花             小野寺05

(058) オレンジのくちばし並ぶ燕の巣         桜子  01

      1 宮澤    オレンジ色のひし形のくちばしが並ぶ

              様子が目に浮かびます。でも、都会では

              ツバメの定宿の巣も減り、この景色も記

              憶の世界になってしまうのが怖いです。

(059) ファーファーと芝の鹿の子に声かけて      治部  02

(060) 梅雨いずこ今日も朝から青い空         服部  05

(061) 滝近し木立の冷気迷い蝶            小野寺01

      1 吉良    夏の暑いなか滝の冷気にのって飛んで

              いる蝶が目にうかびます。

      2 平島    この木立の冷気はどこから?  ああ近

              くにある滝からだ。蝶よおまえも迷い迷

              いながら探しているのか?

(062) つばめの子生存枠を競うかな          深瀬  08

(063) 釜無川雪解け富士や武田節           中津川06

(064) ゆふすげは君亡き里の道しるべ         小野寺19

      1 橋本    夕菅が道しるべとは、感傷的になりま

              す。

      2 中津川  大切な人が住んでいた所へ行くのでし

              ょうか。

      3 志方    

(065) ナイアガラ小舟揺るがす滝の音         桜子  04

(066) 七月の木々のゆらめくビル谷間         深瀬  01

(067) 落日やインスタ映えの夏の海          豊    03

(068) 朽ち果てし卒塔婆 (そとば) に語る夏の蝶    小野寺21

      1 柳町    

      2 吉良    美しい蝶と卒塔婆の取り合わせが面白

              く感じます。

      3 服部    

      4 宮澤    長い年月をかけ字も消えている卒塔婆、

              短い命を舞う蝶の対比。138 億年を考え

              れば、両者とも小さいことなのでしょう。

(069) 雨上がり水溜まりよけ犬談義          中津川04

(070) 日傘列弁慶橋に堀の風             深瀬  03

(071) すれ違う声は異国の浴衣連れ          桑子  01

      1 平島    浴衣の金髪碧眼が話しているのは何語

              かな?それにしても日本を楽しむ外人が

              増えたなあ。日本の経済も良くなって欲

              しいなあ。

      2 服部    観光地でよく見る景色です。

      3 豊      浅草あたりの花火大会でしょうか。浴

             衣姿の外国人が増えました。

      4 宮澤    アジア系の外人が増え、外見では見分

              けがつかないようになりました。文化共

              有には言葉が大事なのか、感性なのか?

              後者でありたいです。

      5 小野寺  最近は巷に海外の旅行客が増えてきま

              した。京都に限らず横浜あたりでも夕暮

              れ時に異国の浴衣美人に出会うとそこは

              かとない風情があります。

(072) 郭公の呼ぶ声深し霧の森            小野寺16

(073) 風鈴の音色が亘る天の川            志方  01

      1 桜子    風鈴の音色が天に届く…スケールの大

              きなロマンティックな一句だと思います。

      2 橋本    風鈴の音が天の川に響くよう、大きな

              句です。

      3 志方    大パノラマの夜空と市井の珠玉の風鈴

              の対比鮮やか。

      4 小野寺  暑い夏の日差しが過ぎて夜空を眺める

              と軒先の風鈴の涼やかな音は遥かな天の

              川まで伝わってゆくようです。風鈴の音

              色が壮大な視覚の広がりを演出します。

(074) 夏服の洗濯物の乾きよし            桜子  07

(075) 寝静まる枕辺に聞く滝の音           深瀬  10

(076) 雲の峰湧きて湖沼に風ひかる          小野寺10

      1 吉良    暑い夏の日に涼しい一陣の風を感じま

              す。

      徳島-淡路島ゴルフ旅行にて (7 句) 

(077) マスクとり口元緩めかき氷           吉良  01

(078) ティーショット瀬戸の夏空突き破る       吉良  02

(079) 向日葵(ヒマワリ)の合唱の指揮は陽の光    吉良  03

      1 橋本    合唱の指揮が面白いです。

      2 中津川  同じ方向を向く向日葵の合唱いいです

              ね。「合唱の」の「の」は省いてもよい

              のでは?

(080) 消え隠くる向日葵(ヒマワリ)畑に稚児の顔   吉良  04

      1 宮澤    映画ゴッドファーザーで、ドン役のマ

              ーロンブランドが孫と畑(向日葵ではな

              いが)で遊んでいる最中に倒れるシーン

              とラップします。

(081) 渦潮の大暑のみ込む静けさや          吉良  05

      1 深瀬    芭蕉の "暑き日を海にいれたり最上川" 

              を連想しましたが、渦潮の方がダイナミ

              ックな感じがします。

(082) 渦の道水軍走る夏の夢             吉良  06

      1 服部    

(083) ほとばしる汗や舞い手の阿波の夜        吉良  07

      1 中津川  ずい分以前ですが阿波踊りに行った事

              を思い出しました。

      2 服部    

(084) 父の日の届くメロンの甘さかな         服部  01

(085) 幹つたひ白雨音たて流れ落つ          小野寺04

(086) 夏草の砲弾に飛ぶウクライナ          深瀬  07

(087) 夏空や尚エで終わるショウタイム        治部  03

(088) 猛暑かなセミ鳴く音色ゼイゼイと        志方  05

      1 柳町    

(089) 七月の残り日わずかなにか悔い         深瀬  18

      1 治部    これはホントによく解りますよ。ただ、

              七月のみならずですけどね。

      2 平島    人生ももう残り少なくなって来た。残

              日録でも残したいがこのままでは悔いが

              残るなあ。意義ある日常にすべく努力し

              て悔いもない余生にしよう!

(090) 路地裏に涼を彩る朝顔や            志方  02

      1 桜子    ひっそりとした朝顔のけなげな美しさ

              が感じられ、勇気をもらえます。

(091) 胎動を聴きしその日に薔薇を買い        小野寺06

      1 柳町    

(092) デヴィ夫人滝つぼの中古希迎え         桜子  03

(093) 夏富士をめがけて打てばドラコンが       服部  04

(094) 音もなく時過ぎゆくや蛍舞ひ          小野寺15

      1 平島    静かに穏やかに迷い無く過ごしている

              老境の日常。でも自然の営みはそこここ

              にあり蛍も短い命を懸命に燃やして生き

              急いでいるのかなあ?

(095) 梅雨晴間気と青空のしみる朝          橋本  05

      1 志方    

(096) 二丁目を曲がれば闇に藤の花          小野寺18

(097) 夏服にマスクの列の異次元さ          深瀬  04

      1 橋本    こんな異次元さ、この夏までとなるの

              でしょうか、、、

(098) 大の字に寝ても広々夏座敷           豊    02

      1 治部    何だか昔々このような光景を見たよう

              な懐かしい気持ちになりました。夏休み

              に帰った祖父母の家、海の家の大広間、

              真夏に法事をしたお寺の本堂。たくさん

              想い出します。

      2 深瀬    芭蕉の "山も庭も動き入るるや夏座敷" 

              を思い起こしました。

(099) 幼蜘蛛 (くも) の巣に大物の四苦八苦      橋本  02

(100) 夕日落ち薔薇一輪の赤き色           小野寺11

      1 柳町    

      2 志方    

      3 豊      赤のイメージが強烈な一句です。

(101) 腰越の囲碁の集いや夏の海           深瀬  13

      1 志方    大好きな腰越海岸です。

              すがしい白さがいいですね。


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2023年6月8日木曜日

七句会第43回句会自句自解、感想、等

  七句会のみなさま

 

 第四十三回の選句結果を踏まえて、感想や自句自解、等をおよせいただき、

たいへんありがとうございました。

 およせいただいたものを、作品集とともに、名前順に、ほぼそのまままとめ

てお届けします。

 

 今後のやり方に、ご意見、等ありましたら、よろしくお願いします。

 七句会のweb  http://nanaku-haiku.blogspot.jp/ にも掲載してあります。

  今後とも、よろしくお願いいたします。

  小野寺さんの提出を待ちましたので、配布がやや遅れました。

  深瀬 (事務方)

 

 

1.43  ネット句会  作品集

 

(01)  秋元さん

・宵闇に寝息静まり命削ぐ

・雛芥子に問いかけてみる初夏の風

 

(02)  桜子さん

・チューリップガラス細工のつくりもの

・会見場紺のジャージを着た英雄

・新年度朝から晩までごあいさつ

・竹の子の頭飛び出て笑顔の子

・たけのこのかか煮よそってお疲れ様

・聖五月山手の丘からお散歩道

・官邸の脇道飾る紅さつき

・五月から警戒つづけ旅行支援

・筍の足元の春見いつけた

 

(03)  小野寺さん

・雲走る車窓に夏は過ぎさりぬ

・花火待つ山の端に月登りけり

・旅の宿束ねし髪に合歓の花

・木葉木菟 (このはずく) 木々眠らせて地霊呼ぶ

・仏法僧祖霊まします森で哭き

・かきあげし髪に菖蒲湯香ほりけり

・紫陽花の青滴りて古都は雨

・葉桜や湖 (うみ) 煌めきて風わたる

・万緑の空高く鳴き草雲雀 (くさひばり)  

・花冷えの曇天低く燕翔び

・奥津城を訪う人もなく花吹雪

・断崖の海の蒼きに桜散る

・初蝶がとまりて牡丹沈みけり

・生命 (いのち) 継ぐ孫の習字に春香る

・暁闇に牡丹は花芽伸ばしをり

・汐の香にリアスの海辺花筏

・引き波の跡鮮やかに桜貝

・蕗味噌に緑酒あおりて朋送る

・菜の花の沖の黒潮雲を呼び

・若葉萌ゆ阿修羅の瞳愁ひ帯び

・散る桜憂き世の全て眺め来し

・雨やまず若葉に沈む山の寺

 

(04) 吉良さん

・顔老いてポツリと散りし木蓮花

・黄砂降る街角灯す木蓮花

・屏風絵の木蓮描くビルの窓

・君子ラン満開映える金婚日

・金婚日あと幾年の春の旅

 

(05) 桑子さん

・春炬燵うつらうつらの向かい合い

・春は曙バッグ担いでいざ行かん

・カァカァと目覚まし代わり春の朝

・春疾風池ポチャOB(オービー)4(フォー)パット

 

(06)  志方さん

・水ぬるみ池面に映ず若葉かな

・霞む空思いも遠く瀬戸の島

・緑なす風さえ染める青紅葉

・染まりゆく深山幽谷早緑に

・1杯と薫風よせてまた一杯

・国会は悪魔と猿のリングかな

・桜散る後の菜の花藤の棚

 

(07) 治部さん

・いとうまし花なればなり握り飯

 高尾山の神事に行ってきました。

・火渡りや法衣の朱にも風光る

 

(08)  中津川さん

・すわ火事と見紛う煙スギ花粉

・そびえ立ち枝垂れ花散る古刹屋根

・ゴーグルし黄砂を流すボンネット

・土ふりて洗濯くやし二度洗い

・こげうましタケノコ飯や香も馳走

・湯呑手に届く新茶の香を想う

・車停めかるの子の軍団俺らが道

 

(09)  橋本さん

・水温むメダカ捕えて笑む親子

・寝転べば囀りひととき風運ぶ

・満開の常磐満作(トキワマンサク) 花の雪

・初燕帰ってきたよと旋回す

・行く春を惜しむ間もなし温暖化

・新緑やつつじの絨毯引き立てり

・春遠し普遍的価値二十一世紀

 

(10)  服部さん

・満開のまさに満開の桜かな

・黄砂より怖いミサイル飛んでくる

・サクラサク今はスマホで合否知る

・東北道桜吹雪の真っただ中

・弘前城堀うめ尽くす花筏

 

(11)  豊さん

・春が行くもの憂き想い残しつつ

・綿菓子やふわり膨らむ春の雲

・春風に行方定めぬ綿毛かな

・照り返すビルの光や夏来る

・新緑の谷より清き風生まる

・風はらみお産間近の鯉のぼり

・初夏や女子高生の素足伸ぶ

 

(12)  深瀬

・若き日の果てなき春眠なつかしむ

・春眠に少しあやかる老いの朝

・特養に春眠並び波しずか

・昼と夜木の芽育む地の鼓動

・輝きに神妙混ざる木の芽かな

・筍の歯ごたえ喚起原始人

・筍の群れて顔だすリズム感

・母逝きぬ五月の木々に見送られ

・子供らの透き通る声五月の陽

・梅雨の空重たき雲に烏二羽

・長梅雨にクーラー音のたくましく

・梅雨の夜ワイングラスに翳りなく

・梅雨の路保育園児の整然と

・梅雨空に空車タクシー過ぎにけり

・期日前しずかに投票五月晴れ

・だみ声の選挙演説五月晴れ

・五月晴れひとり聞き入るジャズ喫茶

・新緑の香りのなかを柩ゆく

・新緑の香りに老いの明日思う

・新緑の歩道にひびく杖の音

・街花壇つつじの花の咲き誇り

 

 

2.43  ネット句会  感想と自句自解

 

  小野寺さんの自句自解

 

 43回目の駒東七句会では沢山の方々の支持を得て何らかの理由で人様の心に

共感を引き起こしたと思うと望外の喜びです。

 絵画も俳句も共通した感覚が要請され対象の自然例えば桜の木や花、昆虫、

鳥などの生き者の目になりきる感覚が大切ではないか、と思いあたる事が多々

あります。

 

(090) 6 点句 引き波の跡鮮やかに桜貝

      1 秋元

      2 治部    光景がきれいですね。春の穏やかな砂浜の様子

              が見えます。なかなか遭遇しない光景。美しいで

              す。

      3 橋本  きれいな句です。

      4 平島    遠望には青い海原眼を落とせば沖へと引き返す

          白い波更に近間を見れば美しい桜色の貝。青白ピ

          ンク色の配置が美しいなあ。

      5       寄せてきた波が運んできた桜貝が、波が引いた

          浜辺に残された。ロマンチックな夢があります。

      6 深瀬    潮の引いた砂浜に桜貝が光っている光景が目に

          浮かびます。

  平島さんの解説通りです。遠望には青い海原眼を落とせば沖へと引き返す白

い波、近間の足元には、波にあらわれた美しい桜貝、青白薄紅との色の配置の

ハーモニーが目を見張る程鮮やかだったのです。

 

(092) 4 点句 若葉萌ゆ阿修羅の瞳愁ひ帯び

      1 志方

      2 治部    奈良の低山の新緑と阿修羅の表情は、何だか奥

              が深そうです。

      3 服部   

      4 深瀬    阿修羅像のある奈良は新緑に溢れていますが、

          単純には喜べないなにかがあるのでしょう。

 奈良の新緑の華やぎの中で阿修羅像の瞳はこの世の不条理を一身に背負うが

為の愁ひなのだと思いました。

 

(046) 3 点句 奥津城を訪う人もなく花吹雪

      1 志方

      2 平島    田舎はいよいよ過疎が進みひと気が無くなって

          寂しいが自然は巡り春は訪れて桜は花を咲かせ盛

          大に散らせて過ぎ去って行く。静と動。

      3       奥津城とは神道の墓のこと。お寺の墓とは違っ

          た趣で、花吹雪とうまく調和しています。

 過疎の村の忘れさられた様な奥津城( 墓碑) にも春を盛りの桜は咲き風と共

に花吹雪となって散り行く様はこの世の無常の移り変わりです。

 

(054) 3 点句 紫陽花の青滴りて古都は雨

      1 桜子    雨の日の鎌倉明月院を思い浮かべました。古都

          の情緒たっぷりです。

      2 宮澤

      3       言葉の並べ方がうまいですね。雨に濡れた紫陽

          花の美しいイメージが光っています。

 紫陽花に降りしきる雨は紫陽花の青色をを映して青い滴リとなり古都の風景

に鮮やかな風情を添えておりました。

 

(080) 3 点句 かきあげし髪に菖蒲湯香ほりけり

      1 秋元

      2 宮澤

      3       菖蒲湯につかり、髪を洗い終えた女性の艶やか

          な姿が季節感を出しています。

 豊さんの感想の通りです。菖蒲湯に浸り、髪を洗い終えた女性がかきあげた

髪からほのかに薫る爽やかな色香です。

 

(015) 2 点句 生命( いのち) 継ぐ孫の習字に春香る

      1 吉良    若い孫の勢いある字が次の世代の命を感じさせ

          てくれて、老人の安心感を読むことができます。

      2       孫の習字の文字に力強さを感じて、自分の命が

          つながってゆく嬉しさ。作者の気持ちが伝わって

          きます。

 孫娘が書く溌剌とした力強い習字は次の世代に続く己の生命のリレーでもあ

り安堵に続きます。ふと子供の頃習字を褒めてくれた祖父の眼差しを思い出し

ます。

 

(020) 2 点句 菜の花の沖の黒潮雲を呼び

      1 桜子    瀬戸大橋の風景を思い浮かべました。神がかり

          の豪快な感じが出ています。話はそれますが、

          職場では「快速マリンライナーには一度乗ってお

          くべきだ」と話題になっています。

      2 吉良    菜の花の黄色と黒潮の紺色、雲の白の色の対比

          が面白い。

 桜子さんと吉良さんの解釈の通り菜の花の黄色と沖の黒潮の紺色、湧き上が

る雲の白の対比は、神がかり的な豪快な風景でした。

 

(038) 2 点句  万緑の空高く鳴き草雲雀

      1 志方

      2 柳町

 一面の若葉の空で鳴く草雲雀は立原道造の詩 [のちのおもひに] からの着想

です。 (夢はいつもかへつて行つた 山の麓のさびしい村に  水引草に風が立

  草ひばりのうたひやまない  しづまりかへつた午さがりの林道を、、)

 

(084) 2 点句  初蝶がとまりて牡丹沈みけり

      1 平島    季語が重なっていますが、軽い蝶に沈む牡丹と

          いうのが目新しく目の付け所に感心しています。

      2 柳町

 平島さんのご指摘通り季重なりですが、軽い蝶がふわりととまり白い牡丹が

かすかに沈んだと驚きの発見をしたのです。

 

(095) 2 点句  旅の宿束ねし髪に合歓の花

      1 桑子    合歓の花の花言葉は「胸のときめき」、想像を

              搔き立てられます。

      2 柳町

  桑子さんの解釈  合歓の花の花言葉 [胸のときめき] その通りです。赤い合

歓の花の遠い記憶がよみがえります。

 

(001) 1 点句 木葉木菟( このはずく) 木々眠らせて地霊呼ぶ

      1 中津川  仏法僧と鳴いています。昔訪れた鳳来寺山を想

              い出しました。

  仏法僧と鳴く木葉木菟は鎮守の森の守り神でした。木々を眠らせて森の守り

神の地霊を呼ぶのでしょうか。

 

(007) 1 点句 汐の香にリアスの海辺花筏

      1 深瀬    津波被害からの復興も進み、穏やかな風景を感

          じます。

  深瀬さんのご了解通りです。大震災の跡復興が進み何事も無かった様にリア

ス海岸にも穏やかな花筏の風景が戻ってきました。

 

(029) 1 点句 花冷えの曇天低く燕翔び

      1 宮澤

 花冷えの曇天低く虫を咥えた燕の飛翔が戻ってきて、燕の巣作りが今年も見

られると思うと心が弾みます。

 

(033) I 点句  雨やまず若葉に沈む山の寺

      1 志方

 降りしきる雨に若葉が茂り山寺は緑一色に埋もれて時と共に緑に沈み行くの

だと感じたのです。

 

(043) 1 点句 雲走る車窓に夏は過ぎ去りぬ

      1 柳町

 帰省の列車から、ふと車窓を眺めると雲は次々と後方に流れて走り短い帰省

の日々も雲とともに流れ去り夏も終わるのだと言う感慨に浸ったものでした。

 

(050) 1 点句 仏法僧祖霊まします森で哭き

      1 柳町

  木葉木菟はブッポーソーと鳴きますが鬱蒼と茂る故郷の森の祖霊と語り合い

ながら寂しく哭いているのだなと感じたのです。

 

(062) 1 点句 散る桜この世の全て眺め来し、

      1 服部   

 人は桜をみてさまざまな感慨に浸りまなわすが秀吉が愛でた醍醐の桜は何世

期にもわたり人の世の変遷を眺めてきたはずです。桜の目に映った人の世の転

変の歴史は如何許りだったでしょうか。

 

 

◎ 中津川さんの感想、自句自解

 

 いつも選句結果の発表は皆さんの鑑賞(感想)文を楽しく拝見しています。

 

(023) こげうましタケノコ飯や香も馳走

      1 桜子    おいしい時の満足感でいっぱいです。

      2 桑子    たけのこご飯の美味しさをうまく伝えています。

      3 志方

      4 治部    タケノコ飯タケノコご飯のおこげの香りはたま

              りません。「こげうましで」よだれです。お見事

              です。

      5 橋本  田舎で食べたタケノコご飯を思い出します、上

          手く表現されています。

      6 服部   

      7 深瀬    実感がリアルに伝わってきます。

 まさかの7点句でした。ビックリです。

  知人からいつもより多めの筍をいただきました。何年か振りで炊き込みご飯

を作ったのが思いのほか上手に出来て、妻からもおほめの言葉がありました。

 

(004) そびえ立ち枝垂れ花散る古刹屋根(1点句)

      1 桑子    田舎のお寺の閑散とした佇まいが目に浮かびま

              す。枝垂れからの軽快なリズムがいいです。

  長野県の円空仏がある古いお寺に非常に高い桜があり、寺の屋根の上にそび

え立っていたのが印象に残っています。

 

(035) 土ふりて洗濯くやし二度洗い

(085) ゴーグルし黄砂を流すボンネット

 この二句は黄砂が降って来た日に大丈夫と思い朝早くに干した洗濯物が昼前

には汚れ、結果的に二度洗い。車の上も全体に黄色い砂がいっぱい。花粉も混

ざりゴーグル・マスクで洗車せざるを得ませんでした。

 

(040) 湯呑手に届く新茶の香を想う(一点句)

      1 深瀬    お茶好きのわくわくした気持ちが伝わってきま

          す。

 お茶を牧之原から取り寄せているのですが、新茶を注文して届くまでが待ち

遠しいです。

 

 

◎ 豊さんの自句自解

 

(003) 春風に行方定めぬ綿毛かな 

   1 吉良    タンポポの綿毛がどこに行くともなく漂い、春

       ののんびりした様子が感じられます。

   2 治部    ふわりふわりと本当に春らしい光景です。行方

           定めぬがいいですね。

   3 服部   

   4 宮澤

 吉良さん、治部さんの鑑賞のとおりです。わかりやすい句だったと思います。

 

(010) 新緑の谷より清き風生まる

      1 小野寺  清き風生まる、とはジブリの風の谷のナウシカ

              を想起します。

 新緑が鮮やかな深い谷の底から風が湧きあがってきた、そのさわやかな感じ

を詠みました。

 

(052) 春が行くもの憂き想い残しつつ 

      1 服部   

 「春愁」という言葉がありますが、その憂いが消えないうちに春が過ぎてし

まったのです。 

 

(032) 風はらみお産間近の鯉のぼり

      1 吉良    5 月の爽やかで豊かな風を感じることができま

          す。

      2 桑子    「お産間近」の比喩・表現がいいです。

 桑子さん、「お産間近」の表現を評価していただいてありがとうございます

。作者としては「どうかな」という不安があったのですが。

 

(088) 初夏や女子高生の素足伸ぶ

      1 桑子

 初夏になって靴下を脱ぎ、スカートを短くした素足の女子高生にほのかな色

気を感じました。

 

(079) 照り返すビルの光や夏来る

      1 宮澤

 夏が近づいて日差しがだんだん強くなります。その日差しがビルの壁や窓に

反射して、「ああ、夏が来たな」と思わされるのです。

 

(091) 綿菓子やふわり膨らむ春の雲 

      1 桜子    空をご覧になりながら思い浮かべたのかと思い

          ますが、素朴で素敵な表現です。

      2 志方    ただこの句は綿菓子より綿帽子の方がぴったり

              かな。

 「綿菓子よりも綿帽子のほうがいい」という志方さんのご指摘ですが、「綿

帽子」だと「膨らむ」という表現にはならないと思いますが、どうでしょう。

 

 

◎ 深瀬の自句自解

                                   

  最近、老化のせいか感性の劣化を日々自覚しています。

 

(002) 母逝きぬ五月の木々に見送られ

   1 小野寺  多分大往生だったと思われますが青葉繁る中で

           の最愛の母上への哀惜の念が現れてます。

 母は約15年前の5 月に逝きましたが、葬儀場の新緑が焼きついています。 

 

(009) 筍の歯ごたえ喚起原始人

  最近は、原始人のたくましさのようなものに憧れます。

 

(014) 春眠に少しあやかる老いの朝

      1 服部   

 朝ゆっくり眠れた日は、体調もよくいろいろ捗ります。

 

(016) 梅雨の路保育園児の整然と

 最近、保育士に先導された保育園児の列をよくみかけます。

 

(018) 梅雨の空重たき雲に烏二羽

 蕪村的な雰囲気を狙ったのですが。

 

(024) 輝きに神妙混ざる木の芽かな

      1 平島    春の訪れが嬉しいがそれにしても不可思議な形、

          色、匂いだなあ。神妙が絶妙です。

 「神妙に」に共感いただき、たいへんありがとうございます。

 

(031) 新緑の香りに老いの明日思う

 老人は早く退出すべきか、経験知を大いに活かすべきか。

 

(036) 五月晴れひとり聞き入るジャズ喫茶

      1 桜子    独特の小粋な雰囲気が出ています。

      2 治部    五月晴れの明とジャズ喫茶の暗の対比がいいで

              すね。「ひとり」には外は大勢、内は一人、そん

              な対比も感じます。いい句だと思います。

 目黒区のボランティアの集まりに88歳の方が来ます。ときどきジャズ喫茶に

いき聞き入るのだそうです。ジャズ喫茶では会話は御法度だそうです。

 

(041) 梅雨空に空車タクシー過ぎにけり

      1 中津川  乗れずに残念。これからはタクシーアプリのご

              利用を。

      2 宮澤

 最近はスマホでタクシーを呼ぶのが主流なのでしょうか。

 

(045) 筍の群れて顔だすリズム感

      1 桜子    リズムが本当に感じられます。

      2 中津川  雨後の筍でしょうか、リズム感という表現がい

              きいきと伝えています。

 やや無理があるかなと思いましたが、ありがとうございます。

 

(051) 新緑の歩道にひびく杖の音

 老と若の対比ですが、老の社会の中での在り方は微妙です。

 

(055) だみ声の選挙演説五月晴れ

  だみ声で同じようなことを何度も叫んでいる候補者がいました。

 

(060) 若き日の果てなき春眠なつかしむ

      1 秋元

      2 橋本  本当にいつまでも眠れた若き日がありました。

 よく眠れるというのは若さの特権なのだと思います。

 

(065) 子供らの透き通る声五月の陽

 子供の声が聞こえると、なにかうれしくなる昨今です。

 

(067) 長梅雨にクーラー音のたくましく

 都会では空調機なしの生活は不可能になったと思います。

 

(071) 昼と夜木の芽育む地の鼓動

 昼と夜という地球の自転のもたらすリズムはすごいと思います。

 

(076) 新緑の香りのなかを柩ゆく

      1 小野寺  新緑の青葉の中をおくる柩の葬列は哀しみの葬

              送を自然の中に帰って行くのだと己に言い聞かせ

              ている作者の切々と心情を現わしております。

      2 吉良    生命の誕生と生命の終焉が同時にさりげなく表

          現されています。

      3 柳町

 「自然の中に帰って行くのだ」というご指摘に同感しました。

 

(081) 期日前しずかに投票五月晴れ

 この数年、選挙では期日前投票に行くことにしています。

 

(086) 特養に春眠並び波しずか

 海の見える老人ホームに少し憧れますが・・・。

 

(093) 梅雨の夜ワイングラスに翳りなく

 やや上級のワインを磨き抜かれたワイングラスで、はいかがですか。

 

(097) 街花壇つつじの花の咲き誇り

  目黒通りと山手通りの交差する大鳥神社近辺での景です。

 

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