2020年4月19日日曜日

七句会 第三回 自由連句 作成プロセス

   七句会  第三回  自由連句  作成プロセス

01  朱け染めし雪一面に寒椿     (小野寺  20.02.17)
 雪の日の払暁、かすかに朱けた光が白い雪の原に差し始め一面に咲く寒椿の
紅い色と美しいハーモニーをなして息をのむような風景でした。

02     息のむ子らのみひらく瞳   (深瀬  20.04.12)
  脇句は、発句と同季、同場、同時であり、体言止めがよいということを意識
しました。
 「朱染めし」は「明け初めし」のようにも思いましたが、朝の空が朱に染ま
って行く様子と白雪と寒椿の紅が呼応しているのが、発句の印象的なところで
あり、納得しました。

03  風薫る父母の手に汗初土俵   (吉良  20.04.13)
  「子が息をのみ瞳を開いて」を緊張している様子ととり、5 月場所の初土俵
に立つ本人とその息子を見ている父母の緊張した様子を読みました。

04     目指せ金星座布団乱舞    (志方  20.04.15)
  コロナ感染の拡大が、社会全体に重苦しい雰囲気に包まれているようですね
。こんな時に、未来ある子供の成長を願わずにいられない両親の心情を受けて
以下の句にしてみました。
  相撲界も無観客興業の春場所が終わり、日本の文化、伝統からすると相当違
和感覚えております。こんな社会情勢の中で、初土俵を踏んだ息子さんの頑張
りが、来年の春場所には、満員御礼の中で、横綱の対戦できる番付に昇進し、
金星をあげ、コロナに打ち勝った証として、座布団乱舞の状況が観られること
を願っています。

05  髪油匂う女が月見上げ     (豊  20.04.16)
  前句の力士のびんつけ油から連想して、髪油としました。さらに、定座の月
を入れて、和服姿の日本髪の女性が窓辺に座って月を見ている、やや古風な日
本画的なイメージを詠んでみました。

06    落ちゆく雁の啼くぞ哀しき  (小野寺  20.05.08)
  五句豊さんの句、髪油匂う女が月見上げ、と定座の月を眺めて嘆息する髪の
匂いのうら若き女をイメージし秋の定座を入れて詠みました。
 平島さんの連句 (注) にインスパイアされました。
 
 (注) 平島さんの独吟連句は、下段の通りです。今後の連句のお手本にさせて
いただきたいと思います。 (深瀬)

07 笛の音の里にしみいる秋まつり  (深瀬  20.05.12)
  気持ち的にも、登場するものにも、なにかさみしい感じがありましたので、
ややにぎわいのある広々として空間に転換したつもりです。
  なにか平凡すぎる感じもありますが。

08    埋み火のごとこころ騒ぎて   (小野寺 20.05.15)
  恋の句への展開は、前句の秋のしっとりとした秋の情景を生かし詠みました。
  秋祭りの笛の音は遠い昔に置き去りにしてきた、あの日のかなわぬ想いが埋
み火となって、湧き上がっきた。そのような心情を描いてみました。

09  寅さんの風を背に受け思い秘め  (志方 20.05.16)
  寅さん映画がテレビで毎週放映され、惚れっぽい寅さんの心模様が何かもの
哀しく、だけどホッとする結末がお決まりです。
  江戸川土手を去っていく姿を詠んでみました。

10    乙女恥じらい団子頬張る    (吉良 20.05.18))
 寅さんと言えば柴又参道の団子屋のシーンが欠かせませんね。団子の美味し
さに我慢できず、憧れの彼女もムシャムシャと食べてしまった。

11  来し方を脇目もふらず明日に賭け  (小野寺 20.05.21)
  柴又の寅さんはいつも一心不乱に人の世話を焼きますが、ほのかな恋はいつ
も実らず、失敗しても陰で泣いて平気を装い、又明日を向く。我々団塊世代の
心のよりどころでしたね。

12       雲のさえぎる日の光にて     (豊 20.05.21)
 だれでも人生に夢や希望を持っていますが、思いどおりにならないことがた
くさんあります。しかし、たとえ一時は雲にさえぎられても、やがて雲は流れ
て再び日の光が差してくるのです。

13  漁火と競うがごとし夏の月     (吉良 20.05.23)
  昼間の重苦しい曇り空もすっかり晴れて、夕闇に赤々とした夏の月が海に登
る情景を読みました。

14       浜辺に二三線香花火        (深瀬 20.05.24)
  漁火と月という海と空の広大な景色がでましたので、場面を浜辺に転じまし
た。
                                   
15  夢覚めてたちまち消える面影よ   (豊 20.05.25)
 前句の線香花火から連想して「たちまち消える」の言葉が浮かびました。夢
の中に懐かしい人が出てきたのですが、覚めたとたんに消えてしまい、誰だっ
たのだろうと思い返しているのです。

16     セピア色したアルバム残る    (志方  20.05.26)
  消したくなるのか、消えてほしくないのか、心の中は割り切れない。古希過
ぎると、10代の頃のでき事、かえってほろ苦く思いだされることがあります。
押入れの奥にしまっている旧きアルバムを取り出して観ることを思い出します。

17  人絶えし苔むす寺に花の散り     (深瀬  20.05.27)
 セピア色から苔に転じました。詞付けのつもりです。

18        木洩れ陽を瀬に春出帆す     (小野寺 20.5.30)
  桜の花は既に散り青葉となった逆光の木洩れ陽の中を春は過ぎ往く。との表
現を船出していったとしました。越路吹雪のシャンソン人生は過ぎゆく、La 
vi sen  vaの哀愁のメロディが流れてゆきます。

19  霞立つ瀬戸の島影墨絵かな      (志方 20.06.01)
  春というイメージで春霞を思い浮かべました。最初は 霞立つ霞が関はいつ
晴れる  としたかったのですが、少し露骨かなと思い、30数年年前の瀬戸大
橋開通間際の橋上から眺めた早朝の瀬戸内のしまなみの薄墨色の静止画を思い
出し表現いたしました。

20       仙人詩い酒酌み交わす      (吉良  20.06.03)                                        俗世界を離れた山紫水明の地で仙人が詩を読みながら、酒宴を開いている
墨 絵の一コマです。

21 刻 (とき) を越えこの矢当たれと弓を引き  (小野寺 20.06.13)
  吉良さんの仙人の酒盛りから久米の仙人を連想し展開しようて思いましたが、
高校時代古文の先生が解説した日本語の言霊 (ことだま) について発想を変え
ました。
  源平合戦の折、屋島の戦いの舞台で海に逃れた平家軍から挑発の為に出され
た小舟に掲げられた撃ち落とせるもなら落としてみよと波間に動く日の丸の扇
を、源氏の若武者那須の与一が失敗すれば腹切る覚悟で臨んだ舞台で波打ち際
に馬で乗り込み、我を生かし賜わんと欲するなら、この矢あたれー。と放つた
鏑矢は40間75米をとび、見事扇の要を射抜き日の丸の扇は夕日の中を舞った。
この一本の矢の成功は与一の言霊に込められたものだったとまるで絵巻物を観
る思いで聞いた授業でした。
  言葉の持つ霊力を思うとあだやおろそかに言葉を発してはならないと思うよ
うになりました。長じて洋の東西を問わず人の心にはいり人を動かすものは言
葉だと思うようになりました。

22       未来明るき大吉の運          (豊 20.06.14)
  那須の与一の成功を踏まえて、おみくじで大吉を引いた幸運を詠んでみまし
た。前句と少しつきすぎているかもしれませんが。

23 憂きことも今年かぎりぞ除夜の鐘      (吉良 20.06.15)
  今年はオリンピックも中止となり、コロナウィルス感染症に世界中が苦しめ
られています。除夜の鐘の音で煩悩とともに憂い事が去ってほしいものです。
大吉が来年に正夢になるよう期待した句です。


24       南天の実を妻孫見つめ             (深瀬 20.06.16)
 年が明け、お正月の飾りの南天の赤い実を、妻と孫が綺麗だねと一緒に見つ
めている様です。南天は「難を転ずる」としてめでたいとも言われているよう
です。


25  コロナ禍で延期されたる結婚式       (豊 20.06.16)
 めでたい結婚式がコロナ禍で延期になった。しかし、延期のおかげで、その
難を転じたよりめでたい式にすることができるでしょう。
 
26        梅雨にウグイス鳴く声哀し       (志方 20.06.19)

  コロナの納まりも見えず、梅雨のうっとおしい季節です。
  先日、深大寺の植物園(水生)を4 ~5 名の駒東悪友とあやめの鑑賞を兼ね
て、昼下がりに深大寺蕎麦を肴にちょいと一杯です。大変楽しいひと時を過ご
しました。特に紫陽花の季節、様々な色彩の花ぶりになくうぐいすの鳴き声が
聞こえておりました。その鳴き声が妙に切なく聴こえ、皐月の空に相手を見つ
けられなかった鶯に、ものの哀れを感じました。
  鯉幟はウグイスにとって恋昇りで相方を見つけて,子づくりに励むころです
が、見つけられなかったオスの鶯。その鶯の心情に思いを馳せてみました。
 

27  太陽の季節はるけき古稀の夏        (深瀬 20.06.19)
 梅雨に入っても相手を見つけることのできなかった鶯から、70歳過ぎの我が
身に転じ、石原慎太郎の「太陽の季節」なんていう小説があったなと回顧して
いる様です。季節は、梅雨から夏に進展させたつもりです。

28      潮鳴りとほく漁火は哭き     (小野寺 20.06.23)
  前句の古希にして太陽の季節への回顧を下敷きに名残表、雑は少年時代の三
陸の暗い海への懐旧です。もう戻し様もない、寂しい、夏の夜の海には遥か遠
くに消え消えに漁火( いさりび) が輝いていました。
 越えてきた幾つもの波頭遥かに泣けとばかりに潮騒の記憶があり、耳殻の底
に、漁火は哭くかの如く蘇ります。

29  名残花月に白雲梔子と            (志方 20.06.27)
  先日、陽が暮れて紀尾井坂を四谷駅に向かってあるいておりました。40年
ぐらい昔、この坂の道路脇には、延々と梔子 (くちなし) の植栽が連なってお
り梅雨時の夕暮れに、何とも言えない芳しい薫りをはなっておりました。
  今はつつじばかりですが、梅雨時には珍しく、月が煌々と輝き、ゆっくり流
れる白雲を照らして、その光景が過ぎ去った日々、咲き誇る梔子の白さを思い
出させてくれました。

30       とろろ汁擦り夕餉の支度        (吉良 20.06.28)
 月の光、白い雲、くちなしの花の白から秋の味覚とろろ汁が連想されました。

31  麦秋の風頬に受け朋は逝き         (小野寺 20.07.01)
  つい4 日前ほぼ52年の歳月を北米の駐在を含め家族で共にした学生時代から
の友人の死に立ち合いました。
  吉良さんの秋の味覚から発想を得て秋の句を作ろうと思いましたが、初夏を
迎える事なく逝ってしまった友人の死を悼み、風に吹かれるようにいつも飄飄
としていた、友人の風貌より季語が違いますが、麦秋 (ばくしゅう) の明かる
い風に吹かれて荒れ野に旅立った友の颯爽とした旅立ちを見送りました。

32        空へ流れる煙ひとすじ         (豊  20.07.03)
 前の句を踏まえ、火葬場の風景になぞらえて、人生の無常感を詠んでみまし
た。大げさすぎたでしょうか。
                  
33  人は去り紅葉に隠る炭の窯         (吉良 20.07.04)
  「空に流れる煙ひとすじ」から山道で出会った炭窯を思いだしました。すで
に炭を焼く人もなく、紅葉場に埋もれ美しいながらも朽ち果てようとしていま
した。

34      ニュータウンには四葉クローバ      (深瀬 20.07.05)
  都会に転じました。起伏の多い郊外型ニュータウンでは人口減少と高齢化が
進み、四葉クローバ (季語ではないつもり) マークを付けた車が目立っていま
す。もみじマークは枯葉のようだとのことで廃止されたそうです。

35  年輪を重ねて老いの花が咲き        (豊 20.07.06)
 前句の「高齢者」のイメージに「花の座」を関連付けました。

36        春の訪ないあと幾たびか        (志方 20.07.08)
  花といえば、太閤晩年の醍醐寺三宝院の壮大な花見を想起しました。この半
年後に秀吉は、遂に帰らぬ人となりました。
  昨年の5 月に、久しぶり醍醐寺三宝院の庭園の見学に参った時に桜散った後
の新緑に、秀吉の胸に何が去来したのか、老いの無常を感じました。
 

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独吟連句ポルトガル縛り「チンタディキャンタの巻」令和二年四月

      初折りの表  
01 香り立つチンタディキャンタ春今宵    春
02   ナイチンゲール鳴く音軽やか     春
03 客人が褒めるアスパラその食味      春
04   妻が急かせる歯科医の予約      雑
05 外つ国で仰ぐ名月幾たびぞ        秋の月
06   団子に代えて供ふマジパン      秋

     初折りの裏
07 落ち葉踏みファドの夕べの教会へ     秋
08   黒衣老女の哀歌切々         恋
09 ままならぬ倫ならぬ恋果てしなく     恋
10   手拍子ブラボー出るお国柄      雑
11 テージョ川渡り来る風頬に受け      雑
12   洗濯物見て下りるアルファマ     雑
13 夕月夜浴衣の金髪団扇手に        夏の月
14   炭火鰯の列に加わる         夏
15 少年使節立ち寄りし跡この辺り      雑
16   探し当てれど今修理中        雑
17 記念写真花吹雪の下皆笑顔        花
18   送辞の言葉ふと口に出て       春

    名残の表
19 リスボアは坂多き街東風吹いて      春
20   小さい虹のかかる噴水        雑
21 自由という名を冠したる大通り      雑
22   土産物屋の店主黒人         雑
23 コルクの木皮を剥がれて寒々と      冬
24   どんぐりのみを食べる黒豚      冬
25 長身の旅人誰も無口にて         雑
26   胸に秘めたる憧れの君        恋
27 流麗な筆の恋文祖父仕込み        恋
28   義父の形見は「楽分」の額      雑
29 上げ潮に望月登るアルガルベ       秋の月
30   ヴィーノヴェルデで祝う豊漁     秋

      名残の裏
31 ベレンの塔秋の夕陽に包まれて      秋
32   こんなところに種子島銃       雑
33 落日を拾いに行かんロカ岬        雑
34   親も自慢の記念スタンプ       雑
35 アーモンド桜の花と見まごうて      花
36   散るはなびらの色も形も       春

    湘風道人識

  脚注:あまり気乗りはしないのですが、初心者及びポルトガルに馴染みのな
い方の為に説明文を入れておきます。それに目障りですが下に季題配置も。 

01.チンタ:ポルトガル語で赤ワインはVHINO TINTOで明治大正の
ころまでは詩歌にはチンタと昔の発音で出て来ます。

02.ディキャンタ:古い良い(高価な)ワインを別の器に移すことですが、私
達の毎日飲んでいる安いワインはやっても味は変わりません。

03.マジパン:ハンザ同盟の都市リューベックが、元祖と名乗りを挙げていま
す。ポルトガルでもポピュラーで甘い菓子類の代表格です。

04.ファド:アマリア ロドリゲスは別格の歌手。最近ではマリザも聞かせま
す。ブラジルからの民謡風でもあり、その元には奴隷のアフリカ土着の悲しい
メロディもあるという。

05.女性の歌手にはブラバーが正しいのですが、ブラボーが飛び交います。

06.アルファマ:1755年の大地震でも岩盤のため打撃を受けず、昔の佇ま
いを残しています。洗濯物は「ポルトガルの洗濯女」の歌のとおりで至る所に
ぶら下がっています。

07.天正の少年使節の訪問先はいろいろありますが、リスボン市内にもあって
ガイドブックにも載っています。でもちょっとわかり難い所ですが。

08  リスボア:英語名リスボン。フェニキア人が付けたオリシポ(良い港)が
元。因みにポルトガルはポルタスガレ伯領(Portus Gale  穏やかな港)から
来ています。

09.リベルタ―デ大通り:フランスが革命で勝ち取った自由・平等・博愛の自
由を名前に。シャンジェリジェ通りがお手本とか。日本語のみですがリスボン
に来られた人には判ると思います。

10.黒人:植民地にはアンゴラ・モザンビークがあり最大最古はブラジル。大
半が出稼ぎの労働者ですが、お金を儲けた成功組もいます。

11.コルク:一度皮を剥ぐと北の地方では9 年、南でも7 年は待たねばなりま
せん。昔は世界の60%のシェアを持つ輸出アイテムでもありました。

12.黒豚:スペインのイベリコ豚と同じです。ハムは美味。

13.「楽分」:分を楽しめ。上を見て羨ましがったり、下を見て偉そうにする
な!穏やかな分相応の日常の暮らしをと。東大寺館長清水公照筆。私事。

14.アルガルベ:アラビア語で西の果ての国。イスラムがここらを征服した時
の名残り。女子サッカーのアルガルベ杯の会場は家から車で10分足らずで行け
ます。なでしこジャパンは最後独逸に負け準優勝でしたが応援に行きました。
ここの海岸線は遠浅で、大型貨物船が接岸出来る港は無く、工業に代わりゴル
フ場と別荘地が開発され、ヨーロッパの避寒の地として今はこれ等が大きな収
入源となっています。

15.豊漁:大西洋に面した港町も沢山ありTAVIRAにはマグロ博物館があります
。輸出先は日本でした。OLHAO には日葡合弁のマグロの畜養会社もあります。
これは余談:QUARTEIRA という漁港は車で5 分もかからず魚市場の人達とは顔
見知りで女房は漁師からクレディットででも買えるのが自慢です。タコイカア
ンコウサバイワシアジタイスズキボラエビカニなど日本人に馴染みのものが豊
富です。

16.VHINO VERDE (緑酒)は北の地方のブドウでとれる発砲酒です。出たばか
りのが新酒として人気があります。第一高等学校寮歌の緑酒は違うと思います
がこれだとロマンが感じられます。

17.ベレンの塔:大航海時代の船乗りがこれが見えるとああ故郷に戻ったと思
えたとか。地下には牢屋もあって、見たほど優雅でなないのですが・・・・

18. 種子島銃:火縄銃を改良して元のものよりも立派なものをすぐに作り、半
世紀もたたぬ内に、もう大きな輸出品となっていたとか。ジェロニモス修道院
に隣接する海洋博物館に陳列されており、ああこれがあの有名な鉄砲かと感慨
深いものがありました。

19.落日を拾いに行かん海の果て 檀一雄の碑が有名です。パクリです。

20.ロカ岬:ユーラシア大陸の最西端:観光客用に大きな記念のスタンプを押
して売り出し市の大きな収入源となっているそうです。その昔両親が訪れて子
供達に行ったら是非もらって来いと進めるとか。日本人では我々の親の年代は
海外旅行も裕福でないと中々行けなかった。

21.アーモンド:もう一月には花が開きます。実は薬として昔から効用がある
と言われ、今でも農家は生産に注力しています。焙ればワインのおつまみにも
最適。


            脚注補遺 2020.05.11

・ナイチンゲール :西洋ウグイスとも。小夜鳴き鳥。人名のナイチンゲール
方が馴染みがあると思います。英国の首相ボリス ジョンソン氏がコロナに罹
り入院治療されのがナイチンゲール セント トーマス病院で、ここでなかっ
たら助からなかったかもとも言われています。

・アスパラ :ポルトガル産は細く野生に近いので輸入物よりは少し硬く茹で
加減が微妙に難しいこともあります。これが判るのはまあ食通です。

・幾年ぞ:小生1992年に日本を出てアフリカ11年、定年退職した2003年に半年
間11月末まで日本に暮らした後、ポルトガルに流れ着いてずっと住んでいます。
まだ旅の途次という感じです。やはり故郷は日本ですから。

・哀歌切々:ポルトガル人はこの歌はサウダーデだ、とよく使い、これは「孤
愁」等とも翻訳されています。新田次郎・藤原正彦と親子でモラエスの伝記を
執筆され本の題名がこれになっています。失って取り戻せない大事なものを思
う心とか、失恋したが憎めないあいつとか、怨歌との訳もあり。

・少年使節:天正少年使節の本としては比較的あたらしいものとして若菜みど
り著「クアトロ・ラガッツィ」集英社があります。550頁の大作で読みごた
えのある傑作です。

・送辞の言葉:小学校5 年生の時に「花笑い鳥歌ううららかな春が訪れて参り
ましたこの時に当たり六年生の皆さまは無事六か年の学業を終えられ・・」と
読んだ言葉が何故か突然出てきたものです。 

・筆の恋文:小野寺さんをイメージ。祖父文之進さんから子供のころにお習字
を厳しく指導され、今でも巻紙に書けるほどかなりの腕前と聞いています。

・アルガルベ :随筆的案内書「ポルトガル物語ー漁師町の春夏秋冬ー」青目
海著ポルトガルと日本との合弁のマグロ畜養会社で働くご主人との20年以上に
わたるここでの生活が女性の目で活写されています。
 九州にある出版社名は書肆侃々房。OLHAO には今は外人が急に増えてフラン
ス語イタリア語が、市場で飛び交っています。

・落日の句碑  :檀一雄が住んだSANTA  CRUZに碑があります。そこの隣町
で高倉健主演の「昔男ありき」というドキュメンタリー映画を見に行ったです
が、大西洋からの風が吹き荒れてる寂れた街でした。

・湘風道人  :生意気にも号を持っています。其の昔高校時代の恩師達と小
学校中学校・高校まで一緒の友人と四人で連句を始めて合計で二十数巻歌仙を
巻きました。瀟湘湖南の地茅ケ崎に居を卜する風狂の道を極めんとする仙人を
目指すという欲張った号なのです。今では小生一人が何とかまだ頑張っている
という状況です。








2020年4月15日水曜日

七句会 第3 回 自由連句 式目 (ご参考) 20年05月25日現在

  七句会  第3 回  自由連句  式目 (ご参考)
  七句会の第3 回目の自由連句の参考としての式目は、以下の通りです。
  実際は、各自の適宜のご理解によるものとします。
  よろしくお願いします。
  深瀬

(1) 進め方
・歌仙形式36句を下記の順番で詠む。 (敬称略)
 表六句     1 小野寺2 深瀬  3 吉良  4 志方  5 豊    6 小野寺
 裏十二句     7 深瀬  8 小野寺9 志方  10吉良  11小野寺12豊
         13吉良 14深瀬 15豊   16志方 17深瀬 18小野寺
 名残の表十二句 19志方 20吉良 21小野寺22豊   23吉良 24深瀬
         25豊   26志方 27深瀬 28小野寺29志方 30吉良
 名残の裏六句  31小野寺32豊   33吉良 34深瀬 35豊   36志方
 注。表六句の最後は、発句を詠んだ小野寺さんにお願いします。
・定座、季節
 表六句     1 春    2 春    3 春    4 雑    5 月    6 秋
 裏十二句     7 秋    8 恋    9 恋    10雑    11雑    12雑
         13夏月 14夏   15雑    16雑    17花   18春
 名残の表十二句 19春    20雑    21雑    22雑    23冬   24冬
         25雑    26恋   27恋   28雑    29月   30秋
 名残の裏六句  31秋    32雑    33雑    34雑    35花   36春
・発句は、前回の句会で選句の多かった小野寺さんの下記の句です。
  朱染めし雪一面に寒椿  
・心がける点としては、①2 ~3 日を目処に詠み、1 週間以上かかる場合には
みなさんに連絡する。②次にあげる式目をある程度参考にして、各自、自由に
詠む。③前句をどのように踏まえ、どのように転じたか、できればコメントを
加える (必須ではない) 。

(2) 式目 (ご参考。吉良さんのまとめを踏まえました。)
・脇句は、発句に寄り添い援助する内容の句で、季節も同じ内容とする。
・第三は、前句から出来るだけ違った発想で読む (転ずる) 。
・句を作るときは打越し (前の前の句) から出来るだけ転ずる。
・五七五、七七のいずれもそれ自身で単独で意味として完結している。前句が
なければ理解できないのは良くない。
・原則として同じ言葉は繰り返し使わない。同字は三句去り。
・付合は、下記の三通りとし、前句を受けながらも打越以前からは離れた句を
作る。
 ①詞付け:前句の言葉から連想される言葉で付ける。
 ②心付け:意味 (内容) で付ける。前句 (原因) =付け句 (結果) 。
 ③匂い付け:前句の雰囲気をもとに付ける。
・打越、前句、付句の内容、発想が続く三句がらみは避ける。
・観音開きと言われる、打越の句と似た内容になっている、又は、打越と前句
の付け、前句と付句の付けの発想が同じような内容になっていることは避ける。
・定座として、5,13,29 句目は月、17,35 句目は花 (、8,26句目は恋) 。「引
き上げる」、「こぼす」もある。
・春と秋の句は3 ~5 句、夏と冬は1 ~3 句、恋は2 ~5 句、続ける。同じ季
節の間は5 句以上あける。

・ご参考    歌仙の巻き方は、初折表、初折裏、名残表、名残裏と下記のよう
に進行しますが、平島さんから、この辺は漢詩の模倣であり、起承転結の展開
を目論んでいるとも言われるとの助言がありました。よろしくお願いします。
 起承転結や序破急など、全体の流れを意識するのは、かなり高度な技術が必
要な感じがしています。
01 初折表  発句   春     19 名残表  折立   春
02     脇    春     20     二句目  雑
03     第三   春     21     三句目  雑
04     四句目  雑     22     四句目  雑
05     月の座  月     23     五句目  冬
06     折端   秋     24     六句目  冬
                 25     七句目  雑
07 初折裏  折立   秋     26     八句目  恋
08     二句目  恋     27     九句目  恋
09     三句目  恋     28     十句目  雑
10     四句目  雑     29     月の座  月
11     五句目  雑     30     折端   秋
12     六句目  雑     
13     月の座  夏月    31 名残裏  折立   秋
14     八句目  夏     32     二句目  雑
15     九句目  雑     33     三句目  雑
16     十句目  雑     34     四句目  雑
17     花の座  花     35     花の座  花
18     折端   春     36     挙句   春

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  ご参考
・日本連句協会  連句とは
  https://renku-kyokai.net/renku/
・古典解釈シリーズ
  湯沢賢之助著、文法全解  芭蕉名句、旺文社、昭和43年1 月初版
 連句編  1.猿蓑  市中の巻 P,103 ~119
  http://nanaku-haiku.blogspot.com/2020/04/431-1.html

2020年4月12日日曜日

  古典解釈シリーズ
  湯沢賢之助著、文法全解  芭蕉名句、旺文社、昭和43年1 月初版
 連句編  1.猿蓑  市中の巻 P,103 ~119

  猿蓑読解 (前半のみ)
  芭蕉七部集の五番目。元禄三年四月ころから約一年かけてできた。
①連句
  初表 (表六句)
01 市中 (いちなか) は物のにほひや夏の月 凡兆(夏の月・夏)
02  あつしあつしと門 (かど) 々の声 芭蕉(あつし・夏)
03  二番草取りも果さず穂に出でて 去来(二番草・夏)
04  灰うちたたくうるめ一枚 凡兆(雑)
05  この筋は銀も見しらず不自由さよ 芭蕉(雑)
06  たゞとひゃうしに長き脇指 去来(雑)
  初裏 (ここから二の折の表半分までは変わった句も変化もつけてよい。)
07  草村に蛙 (かはず) こはがる夕まぐれ 凡兆(蛙・春)
08  蕗 (ふき) の芽とりに行燈 (あんど) ゆり消す 芭蕉(蕗の芽・春)
09  道心のおこりは花のつぼむ時 去来(花・春)
10  能登の七尾の冬は住みうき 凡兆(冬・冬)
11 魚の骨しはぶるまでの老いを見て 芭蕉(雑)
12 待人 (まちびと) 入れし小御門 (こみかど) の鎰 (かぎ)  去来(雑・恋)
13 立ちかかり屏風を倒す女子 (をなご) ども 凡兆(雑)
14 湯殿は竹の簀子 (すのこ) わびしき 芭蕉(雑)
15 茴香 (うゐきやう) の実を吹き落とす夕嵐 去来(茴香の実・秋)
16  僧ややさむく寺にかへるか 凡兆(ややさむ・秋)
17  さる引の猿と世を経る秋の月 芭蕉(秋の月・秋)
18  年に一斗の地子 (ぢし) はかるなり 去来(雑)
  名残ノ表
19  五六本生木つけたる潴 (みずたまり)  凡兆(雑)
20  足袋ふみよごす黒ぼこの道 芭蕉(雑)
21  追っ立てて早き御馬の刀持 去来(雑)
22 でっちが荷 (にな) ふ水こぼしたり 凡兆(雑)
23 戸障子もむしろがこひの売屋敷 芭蕉(雑)
24 てんじゃうまもりいつか色づく  去来(てんじゃうまもり・秋)
25 こそこと草鞋を作る月夜ざし 凡兆(月・秋)
26  蚤をふるひに起きし初秋 芭蕉(初秋・秋)
27  そのままにころび落ちたる升落し 去来(雑)
28  ゆがみて蓋のあはぬ半櫃 (びつ)  凡兆(雑)
29  草庵にしばらく居ては打ちやぶり 芭蕉(雑)
30  いのち嬉しき撰集の沙汰 去来(雑)
  名残ノ裏
31  さまざまに品かはりたる恋をして 凡兆(雑・恋)
32  浮世の果は皆小町なり 芭蕉(雑)
33  なに故ぞ粥すするにも涙ぐみ 去来(雑)
34  御留守となれば広き板敷  凡兆(雑)
35  手のひらに虱這はする花のかげ 芭蕉(花・春)
36  かすみ動かぬ昼のねむたさ 去来(かすみ・春)


②通釈・付合
01通釈  昼間の暑さはないが、物のにおいがたちこめ、涼しそうな月がでてい
る。
02付合  暑さに耐えきれず、夕涼みをしている人々の情景に。
  脇句は発句によく応じて詠む。体言止めが原則。
03付合  農家に転じ例年にない暑さのため稲の生育が早いという会話に。
  第三句目は大きく情景を転ずる。「て、に、にて、らん」止め。
04通釈  炉端で焼いているうるめ (ひもの) 鰯。
  付合  農繁期の農家の食事の様子に。
  四句目からは平句となり軽く受けてよい。
05付合  粗末な食事から山国の風景に。村人は銀貨をしらないので旅行者がな
げいている。03、04が農家の風景なので、片田舎に来た都会の人を登場させ変
化させた。
  月の定座だが発句にあるので詠んでいない。
06付合  前句の人を突拍子もなく長い脇差しをさした博徒とした。  
  脇差は武士以外でも一本させた。長脇差は町奴、博徒の異称。
07通釈  長い脇差しをさしているが臆病な奴なのだ。
08付合  蛙をこわがる人を若い女性とみ、日暮れころにこわがった拍子に行燈
を消してしまった。
09付合  蕗の芽をとりに出た女性を僧庵の尼とみ、ぱっと消えた行燈のように
世の無常を悟って発心したのは若い時のことだ。
  花の座。花の定座は前へ引き上げることはできる。
10付合  前句をある僧侶の物語りとみ、かつて住んだ七尾の寒さを振り返る。
  月の十日間は能登で修行した「撰集抄」にある見仏上人を想定している。
11付合  前句をさびしい漁村とみ、そこに老いをむさぼる人物がいるとした。
  前句の衰退の余情から衰老と移った。
  例外的に、春から冬に転じた。
12通釈  門番が通ってきた恋人を入れた。
  付合  前句の老人を「源氏物語」の「末摘花」の巻の門守りの翁というよう
に連想した。俤 (おもかげ) 付。
13通釈  さびれた屋敷内に招き入れられた待人をみようとする女中たちのはし
たない行動を詠んだ。恋の句。
14付合  前句の屏風を湯殿の囲いとみ、前句の御殿の世界を場末の旅宿に転換
した。
  前句の浮き立ったところを巧妙に抑えた。
15付合  湯殿の近くの茴香の実が秋の夕風にこぼれ散るわびしい風景。
  これまでは人間世界の人事を詠んできたが、ここでは景色を詠んでいる。
16付合  前句の蕭条たる気分をみ、その夕景に僧衣をひるがえしとぼとぼ歩く
僧侶をみた。
17付合  前句とは独立した句。二句あわせて世相を述べた。前から秋の句が三
つ出たので月を出した。
18付合  猿回しの貧しい生活でも一年の一斗の年貢は納めて正直に生きている
のだ。