2020年12月27日日曜日

 

 七句会のみなさま

 

 第三十四回の七句会にご参加いただきたいへんありがとうございました。

今回の選句結果をご報告いたします。

 

5 点句

(099) ふつふつと牡蠣鍋を待つ箸二膳           宮澤

 

4 点句

(010) 白菊を一輪供え別れかな              豊

(020) 老いらくの思いかみしめ落ち葉踏む         宮澤

(024) 三密を逃れてゴルフ天高し             橋本

(042) 役目終へ風に舞ひ散る落ち葉かな          深瀬

 

3 点句

(015) 浪の音恋せし夜の冬銀河              小野寺

(078) ふるさとは港の汽笛夜泣き蕎麦           小野寺

 

2 点句

(005) 潮の香や海底 (うなぞこ) の夢秋の空        深瀬

(008) 月冴えて墨の匂ひに筆を執り            小野寺

(016) 冠雪に薄紅染める朝の富士             志方

(017) 憂国忌白手はち巻きなにを問ひ           深瀬

(019) 良き人の逝きし一年除夜の鐘            豊

(032) 北斗星無窮の闇に傾きて              小野寺

(038) 故郷の夜汽車の汽笛冬近し             小野寺

(041) 都庁までくっきり高尾の紅き秋           治部

(043) 秋高く鳶の眼 (まなこ) は尾根を追い        小野寺

(045) ただ死ぬを待つ身のときの重さかな         深瀬

(047) 七十路に「君といつまでも」聞きひたり       深瀬

(062) 月光を浴びて薄 (すすき) は銀の海         小野寺

(065) 朋去りぬ虫哭き送る独り酒             小野寺

(073) 吐く息や初霜の朝窓曇る              豊

(074) 一輪の白ばら冴えて月夜かな            橋本

(076) 今年また同じ紅葉の花舞台             志方

(082) 小夜時雨京の町屋に灯が燈り            小野寺

(084) 紅葉舞う散りゆく生命 (いのち) 煌めきて      小野寺

(085) 柿干せる母の手細し今は亡き            吉良

(087) 墓碑朽ちて無縁仏に曼珠沙華            小野寺

(090) 郷に入り吾もしてみむと吊るし柿          治部

(095) 古都暮れて路地裏深く紅葉 (もみじ) 踏み      小野寺

(097) 冬晴にタワークレーン富士摘まむ          桑子

(104) 憂国忌激情したたる若気かな            新井

 

  下記に、選句表に、各句の右側に作者名、および、その下に選んだ人の名前

とコメント (追番付き、順不同、敬称略。) を付したものを添付します。

  次回については、来年3 4 月ころにご連絡したいと思っていますので、よ

ろしくお願いいたします。やり方、等について、ご意見がありましたら、ご連

絡をいただきたく、よろしくお願いいたします。

 事務方から、以下、ご連絡、ご依頼です。

 

(1) 選句参加者

 今回の選句には、下記の14名が参加しました。

  秋岡さん、新井さん、小野寺さん、吉良さん、桑子さん、志方さん、治部さ

ん、中津川さん、橋本さん、平島さん、福田さん、藤原さん、宮澤さん、森杜

瑯さん、柳町さん、豊さん、深瀬。

  初参加の、福田さんはゴルフ霞光会メンバー、平島さんは七句会自由連句の

ご指導をしていただいています。

 

(2) 今回の句会の結果を踏まえた自句自解、感想、等の募集について

  今回の句会の選句結果を踏まえて、各自、表明しておきたいこともあるので

はないかと思いますので、自句自解、感想、等、なんでも結構ですので、募り

たいと思います。一応、期限としては来年1 16日とし、事務方にメールでい

ただき、それを七句会の下記のweb に掲載することにしたいと思います。

 http://nanaku-haiku.blogspot.jp/

 

  2020.12.27

      代表   橋口侯之介

      顧問  豊  宣光

      事務方 深瀬久敬

 

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(001) 夕霧が古都の紅葉 (もみじ) も濡らしけり      小野寺07

1 志方    古都の情景が、夕霧を誘っているようです。

(002) トナカイの鈴の音遠き聖夜かな           豊   05

1 新井   今年のコロナ禍のステイホームクリスマスの

        心情をよく表しておられます。

(003) 濡れ落ち葉拾い集めて我を知る           宮澤 05

(004) 紅梅は泪をたたえ君誘う              杜瑯 02

(005) 潮の香や海底 (うなぞこ) の夢秋の空        深瀬  09

1 杜瑯

2 宮澤   

(006) 雨後の蹊雫の出会う十三夜             治部 05

1 中津川  雨上がりで月も美しいのでしょう。

(007) GoToはコロナ微笑む処方箋             橋本 06

1 福田

(008) 月冴えて墨の匂ひに筆を執り            小野寺19

1       冴えた月を見て詩心がわき、墨と筆で紙(で

        きれば和紙がいい)に一句したためた。そんな

        優雅な情景が浮かんできます。

2 藤原   

(009) 風に問うコロナの行くへ秋茜            志方 01

1 橋本    応えない風に問うしかありませんか。

(010) 白菊を一輪供え別れかな              豊   03

1 杜瑯

2 中津川  最近立て続けに友人、後輩が無くなりこの句

    が胸にきました。

3 平島    単純にスッキリとさようなら。

4 新井   最近親せきで不幸があり、心の真ん中に響き

    ました。

(011) 洋館の銀杏のマントはんなりと           新井 08

(012) 宅配のオリーブの実や風光る            吉良 03

   「きんぎょそうの種って、怖いね!」と孫に言われ

   しみじみ見ました。本当にドクロでした

(013) 金魚草ドクロ顔の種哀し               柳町 01

(014) 老ひ深むこころやすらぐ残暑かな          深瀬  13

(015) 浪の音恋せし夜の冬銀河              小野寺17

1 杜瑯

2 吉良    心のときめきのない年寄りに、新しい出会い

    をあこがれさせる句です。

3 橋本    ロマンチックを有り難うございます。

(016) 冠雪に薄紅染める朝の富士             志方 05

1 橋本    写真を見ているようなきれいな句です。

2 藤原   

(017) 憂国忌白手はち巻きなにを問ひ           深瀬  03

1 柳町   

2 桑子    もう50年になり記憶も薄らいでいるが、白手

        はち巻きの映像だけは覚えています。

(018) 天満宮合格祈る神無月               中津川06

(019) 良き人の逝きし一年除夜の鐘            豊   07

1 吉良    除夜の鐘を聞きながら親しかった故人をふり

        かえり、新しい日を迎える夜、前向きに生きよ

        うとする自分の気持ちを詠んだものでしょうか。

2 治部    いいやつばかりが先に逝く、どうでもいい

        のが残される。歌にある通り、毎年の事なので

        すが除夜の鐘をきくと突き刺さりますね。

(020) 老いらくの思いかみしめ落ち葉踏む         宮澤 02

1 杜瑯

2 吉良    老いた自分と落ち葉を重ねたように見えます。

3 治部    この風景、イヤですね。

4 小野寺  落ち葉踏みしめながら思いを馳せるのは過ぎ

        て行った老いらくの恋でしょうか。

(021) 散る銀杏黒き枝えだ天に透き            小野寺22

1 平島    衣を脱ぎ捨て裸で堂々と立つ姿。

(022) 新酒飲み鍋を囲むや家族愛             新井 02

(023) 梟は夜のしじまを偲び啼き             小野寺13

(024) 三密を逃れてゴルフ天高し             橋本 05

1 福田    このコロナ禍の中で唯一のストレス解消です。

2 桑子    同じような考えの人が多いらしくゴルフ場が

        混んでいます。

3 新井   解放感が表れていてナーイスショット!

        と声をかけたくなります。

4 藤原   

(025) すすき原泡立ち草が天下取り            中津川01

(026) 棘隠すバラの花園古女房              志方 02

1 中津川  バラの棘も女房の棘もさされると痛そうです。

(027) ひぐらしや子守の少女空見上げ           深瀬  15

1 橋本    子守の少女、幼き日々の頃の情景かと想像し

        選びました。

(028) 鎌切りに食われし雄の覚悟観る           小野寺03

(029) 球打てばファーを聞くなり秋の空          桑子 01

1 福田

(030) 熱燗も独酌続く胡麻和えと             志方 07

(031) 半袖にダウンベストの小春日や           中津川07

1 深瀬    半袖にダウンベストの服装に、とても都会的

        でおしゃれな雰囲気を感じました。

(032) 北斗星無窮の闇に傾きて              小野寺12

1 柳町   

2 宮澤   

(033) 秋の陽に大島望む城ヶ崎              深瀬  23

1 志方    最近、鎌倉の天園の頂から相模灘の向こうに

        三原山がくっきりと見え、何か感動しました。

(034) 小春日やベンチに並ぶ老夫婦            豊   02

1 秋岡    高齢化社会となっていますが、老夫婦のこの

        様な姿は何かほっとします。

(035) 散り急ぐ紅きもみじに吾重ね            杜瑯 03

1 小野寺  はらはらと散り落ちる紅いもみじをやがてこ

        の世を去る自分の存在に重ねたのでしょうか。

        散り急ぐが効いてます。

(036) 秋雨や川面に隈無く輪の並ぶ            橋本 01

1 宮澤   

(037) あるじ待つあくまで白きとろろ汁          吉良 01

(038) 故郷の夜汽車の汽笛冬近し             小野寺18

1       冬が近いことを感じ、北国の故郷を思い出し

        ている都会生活者でしょうか。「夜汽車の汽笛」

        に昭和の懐かしさがあります。

2 治部    嘗ての交通事情が想い出されますね。冬近し

        で澄んだ汽笛の音を感じます。

(039) ひぐらしや山河にこだま瑞穂国           深瀬  14

(040) 秋の空風を飲み込み芝生触れ            新井 05

(041) 都庁までくっきり高尾の紅き秋           治部 04

1       私も高尾山へは何度も行ったことがあります。

        山の中腹あたりから、天気が良ければ都庁を見

        ることができます。高尾の紅葉の風景を切り取

        った一句ですね。

2 桑子    都庁までくっきり高尾の紅き秋。

(042) 役目終へ風に舞ひ散る落ち葉かな          深瀬  18

1 治部    舞う落ち葉に歴戦の勇士が戦列を退く様が・

    ・やっぱり寂しいです。

2 秋岡    枯れ葉の様を詠んだものでしょうが、サラリ

    ーマン人生を感じさせますね。作者の意図はこ

    ちらでしょうね。

3 桑子    役目終へという表現がステキです。

4 志方    老いは誰にも避けられない自然の摂理、落ち

    葉は土に還る。

(043) 秋高く鳶の眼 (まなこ) は尾根を追い        小野寺01

1 深瀬    少し違いますが、歌川広重の浮世絵・名所江

    戸百景に「深川洲崎十万坪」というのがありま

    す。画面上側に大きく描かれた鷲が、空の上か

    ら深川、筑波山(?) などを見下ろしている風景

    ですが、それに近い広々とした感じを受けまし

    た。

2 志方    昔はとびが、カラス以上にそらをまっていま

        したが、今は眼にする事がなくなりました。

(044) 刈田道活きているごと立つ案山子          中津川02

(045) ただ死ぬを待つ身のときの重さかな         深瀬  04

1       老いの心境をストレートに表現していますね。

        俳句としては直情すぎるかもしれませんが、最

        近は私もこの作者と同じ心境になりつつありま

        す。「ときの重さ」が見事です。

2 橋本    その場面になった人しか詠めない心境の表現

        ですね。

(046) 冬木立掃きたる空の青深し             豊   04

1 小野寺  晴れた日の冬木立の落ち葉掃き、ふと見上げ

        た空は深い青だという気持ちの爽やかさが伝わ

        ります。

(047) 七十路に「君といつまでも」聞きひたり       深瀬  17

1 桑子    いい歌ですね、時々CDで聞いています。

2 新井   なぜだかほのぼのとした温かい余韻が残る一

        句です。

(048) 畦みちに直立不動の彼岸花             志方 06

1 中津川  稲刈りが終わった田んぼの畦に赤い花が目に

        浮かびます。

(049) 破れ寺の紅葉 (もみじ) 踏む音風に消え       小野寺04

1 志方    寅さんの古びた鞄と雪駄をおもいだします。

(050) 色付く葉残し剪定秋惜しむ             橋本 03

1 深瀬    紅葉を残しながら剪定をし、秋の深まりをし

        みじみ感じている落ち着いた雰囲気です。

(051) 太極拳モザイクかかる残暑かな           深瀬  12

(052) 栗飯の甘い匂ひに孫はしゃぎ            小野寺14

(053) 新酒呑みタイムトラベル古老団           深瀬  07

(054) 木枯らしや塵もコロナも知らぬまま         治部 07

(055) 冬来たる富士山頂の薄化粧             豊   01

1 治部    例年だとこれが初冬の風景なのですが、今年

        の富士はなかなか冠雪しません。これも異常気

        象なのでしょうか。

(056) 落栗を踏んで登るや木曽の路            中津川05

(057) 河豚ちりや孫と同じ身摘まみけり          吉良 05

1 秋岡    ほのぼのとして思わず笑みがこぼれます。

(058) 雲速し朋逝きし日に野分荒れ            小野寺08

(059) 来し方の岐路振り返る残暑かな           深瀬  10

1 柳町   

(060) 散髪し襟元抜ける冬の風              宮澤 03

(061) 病む友を励ます文や暮れの秋            治部 01

1 秋岡    最近は文で病床の友を励ます情景が浮かびに

    くくなってきましたが、大切な友にはメール等

    でなく文で見舞うものでしょうか。”秋の暮れ”

    でなく”暮れの秋”にひとひねり?

(062) 月光を浴びて薄 (すすき) は銀の海         小野寺10

1 秋岡    情景がまざまざと浮かんできます。素直に淋

    しくもあり美しくもあり。

2 宮澤   

(063) 紫が天下取りたる秋の庭              桑子 03

(064) 不理解の極みに至る憂国忌             新井 04

1 福田

(065) 朋去りぬ虫哭き送る独り酒             小野寺05

1 平島    いい奴だったなあ しみじみと奴を偲んで。

2 志方    飲みともが去ってしまった寂しさが表現され

    ている。

(066) 落ち葉ごとひそり消えたし老ひの朝         深瀬  21

(067) 民宿の香るどぶろく焼きイワナ           中津川03

(068) 温暖化百鬼夜行の野分かな             深瀬  06

1 橋本    温暖化でますます嵐(台風、 ハリケーン、 サ

    イクロン等)は凶暴化しているようです。

(069) 友の顔浮かべて癒す新酒かな            新井 01

(070) 晩秋の夕暮れ澄みて富士の峰            橋本 04

      A さんの復帰を祝って一句、                      

(071) 柿紅葉 (かきもみじ) 陽に照り映えて朋還る     小野寺23

1 宮澤   

(072) 文化祭笑み笑みあふれ友家族            新井 07

(073) 吐く息や初霜の朝窓曇る              豊   06

1 深瀬    子供のころの懐かしい経験を思い浮かべまし

    た。そこに絵を描いたりして遊んでいました。          

2 藤原   

(074) 一輪の白ばら冴えて月夜かな            橋本 02

1 新井   白いバラが月明かりに照らされて美しく輝く

    …絵画のような作品です。

2 小野寺  真冬の庭に咲く白薔薇は月光の下で淡い光を

    浴びて輝きを増した事でしょう。

(075) 死の形さまざまと問ふ憂国忌            深瀬  01

1 小野寺  あの当時全共闘との討論会の翌年三島由紀夫

    の自決は衝撃でした。今なお日本は尖閣諸島始

    め国防の重要性を問われています。

(076) 今年また同じ紅葉の花舞台             志方 04

1       春の桜と同じように、今年もまた紅葉の美し

    い季節が巡ってきた。自然の移り変わりに思い

    を寄せている作者の詩情が伝わってきます。

2 平島    年々歳々花相似たり 年々歳々人同じからず。

(077) 小春日や木漏れ日まぶし散歩道           桑子 04

(078) ふるさとは港の汽笛夜泣き蕎麦           小野寺21

1 吉良    演歌の場面を彷彿とさせる懐かしい情景が目

    に浮かぶ句です。

2 深瀬    汽笛と夜泣き蕎麦の取り合わせに独自の世界

    を感じます。

3 平島    北国の思い出、視覚聴覚味覚で。

(079) 初登山新蕎麦すする麓茶屋             吉良 02

(079) 1 中津川 

(080) 濡れ落ち葉朝陽に燃えるきよらかさ         深瀬  20

(081) 霜降や日々の河原の草々も             治部 02

(082) 小夜時雨京の町屋に灯が燈り            小野寺02

1 秋岡    冬の京都の町の風情がしみじみ伝わってきま

    す。

2 藤原   

(083) 仏壇の新酒に割れる父母遺影            深瀬  08

(084) 紅葉舞う散りゆく生命 (いのち) 煌めきて      小野寺15

1 杜瑯

2 柳町   

(085) 柿干せる母の手細し今は亡き            吉良 04

1 深瀬    あまり若いころではないようですが、母上の

    イメージが鮮明に切り取られている感じです。

2 小野寺  干し柿をほしていた母上への郷愁が細き手に

    の言葉に詠み込まれてます。

(086) 紅葉は命の光照り返し               杜瑯 01

1 橋本    生命の最後の輝き、一生の生き様の反映かと

    捉えましたが、違いますか。

(087) 墓碑朽ちて無縁仏に曼珠沙華            小野寺09

1 深瀬    朽ちた墓標と曼珠沙華の取り合わせに絵画的

    な鮮明さを感じます。

2 宮澤   

(088) 生きている疑問すらなき時もあり          深瀬  05

(089) 実りたる街の畑に猪 (しし) 出でる         中津川04

1 福田    故郷の田舎を思い出します。最近猿も出たと

    いう話です。

(090) 郷に入り吾もしてみむと吊るし柿          治部 06

1 吉良    田舎に転居して地元の慣習を楽しんでいる様

    が浮かびます。

2 桑子   

(091) ひぐらしや遠き夕陽を呼び起こし          深瀬  16

1 小野寺  かなかなと啼くひぐらしの声が昔日の寂しく

    も儚い日々を思い起こさせたのでしょう か。

(092) 天高く筑波と富士がにらめっこ           桑子 02

1 秋岡    秋の澄み切った大きな大きな天空が見えてき

    ます。”筑波と富士がにらめっこ”はいいです

    ね。

(093) 城ヶ崎岩にくだける秋の波             深瀬  22

1 新井   荒々しい波しぶきが岩に砕けて、夕日に照ら

    される風景が目に浮かび、波音が聞こえてきま

    した。

(094) 秋惜しむ何はなくとも茸鍋             治部 03

(095) 古都暮れて路地裏深く紅葉 (もみじ) 踏み      小野寺11

1 柳町   

2 平島    京の下町を旅人がひとり凄然と。

(096) 赤緑過ぎゆく小道爽やかに             新井 06

(097) 冬晴にタワークレーン富士摘まむ          桑子 05

1 吉良    「クレーンが富士山をつまむ」面白い発想で

    す。

2 中津川  俳句でうまく遠近法を表現しています

(098) 幽谷の村流れゆく霧の音              小野寺06

(099) ふつふつと牡蠣鍋を待つ箸二膳           宮澤 04

1 吉良    「ふつふつ」という擬音語は鍋の煮える状況

    にぴったり。鍋の出来上がるのを今か今かと待

    つ夫婦を「箸二膳」で表現され、ユーモアを感

    じさせます。

2       牡蠣鍋がふつふつと煮立ってきて、そろそろ

    食べごろ。食欲がわいてきます。夫婦でしょう

    か、恋人同士でしょうか、顔を見合わせながら

    語り合っている。「箸二膳」がいいですね。

3 治部    箸二膳は仲の良さ、ふつふつは温かくて旨そ

    うな、いい景色です。

4 桑子    夫婦二人での夕食の光景が目に浮かびます。

5 平島    二膳とは誰と誰?想像が膨らむところが好き

    です。

(100) 金閣寺夕陽に浮かぶ憂国忌             深瀬  02

1 柳町   

(101) 流星群願いをこめて祈る空             柳町 02

1 藤原   

(102) 星冴ゆる沖の漁火窓に揺れ             小野寺16

1 志方    海辺の旅の宿から味わえた光景、いいですね。

(103) 懐かしやコロナ不在の去年の冬           宮澤 01

1 新井   全く同感です

(104) 憂国忌激情したたる若気かな            新井 03

1 柳町   

2 治部    激情したたる若気なのですかね。憂国忌は賛

    否あるでしょうが季語ですよね。

(105) 頭上飛ぶ残暑の機影重たげに            深瀬  11

1 中津川  航路が変わって爆音の飛行機が増えました。

(106) 木漏れ陽と風にゆられて梢かな           志方 03

(107) 雁の声波浪の岬風に消え              小野寺20

(108) ひとひねり蛇口から水手で受ける          深瀬  19

 

 

 

  補足

 

 選句にあたってお寄せいただいたコメントをご紹介します。

 

- 福田さん

  なんとなく共感できる次の5句を選んでみました。

 

- 柳町さん

  今年は三島由紀夫がこの世を去って50年とか。NHK でも特集が組まれ

ていましたね。「憂国忌」を入れ込んだ句に共感を覚えるのは年をとっ

たという事でしょうか??

 

- 秋岡さん

  コロナは神戸も東京ほどではありませんが高止まりしており鬱陶しい

毎日ですが小生は元気にやっております。

 

- 中津川さん

  私も12月9日に大腸ポリープを4個取り一泊入院して、2週間禁運

動、禁酒で過ごしました。幸い良性で良かったです。

 

- 宮澤さん

  コロナで明け暮れた1 年でした。密でない景色の句が目に留まったよ

うです。

                                                 

 

2020年12月17日木曜日

七句会 第三十四回目のネット句会 選句のご依頼です。

  七句会の皆様

 

  コロナ禍が収まることなく師走を迎えてしまいましたが、みなさまお

元気にお過ごしのことと思います。

  七句会としての第三十四回目のネット句会となりますが、今回、下記

108 句の投句がありました。

  つきましては、次の要領で、選句をしていただきたく、よろしくお願

いいたします。

 

- 下記は、今回、投句していただいた全ての句を、作者を伏せ、兼題別

に、ランダムに列挙したものです。表記は、投句されたそのものです。

詞書きがあり、複数の句があるものは、まとめて並べてあります。兼題

句、自由題句、無季語句、川柳的な句、作者の特定が可能な句、等々、

なんでもありとしています。分類については、作者の意図と異なるかも

しれませんが、ご了承のほどお願いいたします。 (今回は分類を省略さ

せていただきました。)

- このなかから、共感する俳句を、最大7 句選び、1227 () まで

に、下記へメールで返信してください。番号表記でも構いません。その

際、選んだ理由を一言、付け加えていただくとなお結構です。全体への

コメントでも結構です。

    hfukase@k03.itscom.net  (事務方  深瀬)

- 蛇足ですが、選句にあたり、自作を選ぶのはご遠慮ください。

- 12月下旬には、選句の結果をまとめ、皆さまにご報告する予定です。

 

  今回の投句者は、新井さん、小野寺さん、吉良さん、桑子さん、志方

さん、治部さん、中津川さん、橋本さん、宮澤さん、森杜瑯さん、柳町

さん、豊さん、深瀬 (以上13) です。

 

 これまでの選句結果は、下記のURL から参照可能です。

 http://nanaku-haiku.blogspot.jp/

 

 以上、よろしくお願いいたします。

 

  送付不要な場合、ご面倒ですがご一報下さい。以後、送付しないよう

にします。

 

        七句会 2020.12.16

          代表  橋口侯之介

     顧問    宣光

          事務  深瀬久敬

   

--------------------------------------------------

 

 

    1.全て (兼題、季語の有無など無関係)

 

(001) 夕霧が古都の紅葉 (もみじ) も濡らしけり

(002) トナカイの鈴の音遠き聖夜かな

(003) 濡れ落ち葉拾い集めて我を知る

(004) 紅梅は泪をたたえ君誘う

(005) 潮の香や海底 (うなぞこ) の夢秋の空

(006) 雨後の蹊雫の出会う十三夜

(007) GoToはコロナ微笑む処方箋

(008) 月冴えて墨の匂ひに筆を執り

(009) 風に問うコロナの行くへ秋茜

(010) 白菊を一輪供え別れかな

(011) 洋館の銀杏のマントはんなりと

(012) 宅配のオリーブの実や風光る

     「きんぎょそうの種って、怖いね!」と孫に言われ

     しみじみ見ました。本当にドクロでした

(013) 金魚草ドクロ顔の種哀し

(014) 老ひ深むこころやすらぐ残暑かな

(015) 浪の音恋せし夜の冬銀河

(016) 冠雪に薄紅染める朝の富士

(017) 憂国忌白手はち巻きなにを問ひ

(018) 天満宮合格祈る神無月

(019) 良き人の逝きし一年除夜の鐘

(020) 老いらくの思いかみしめ落ち葉踏む

(021) 散る銀杏黒き枝えだ天に透き

(022) 新酒飲み鍋を囲むや家族愛

(023) 梟は夜のしじまを偲び啼き

(024) 三密を逃れてゴルフ天高し

(025) すすき原泡立ち草が天下取り

(026) 棘隠すバラの花園古女房

(027) ひぐらしや子守の少女空見上げ

(028) 鎌切りに食われし雄の覚悟観る

(029) 球打てばファーを聞くなり秋の空

(030) 熱燗も独酌続く胡麻和えと

(031) 半袖にダウンベストの小春日や

(032) 北斗星無窮の闇に傾きて

(033) 秋の陽に大島望む城ヶ崎

(034) 小春日やベンチに並ぶ老夫婦

(035) 散り急ぐ紅きもみじに吾重ね

(036) 秋雨や川面に隈無く輪の並ぶ

(037) あるじ待つあくまで白きとろろ汁

(038) 故郷の夜汽車の汽笛冬近し

(039) ひぐらしや山河にこだま瑞穂国

(040) 秋の空風を飲み込み芝生触れ

(041) 都庁までくっきり高尾の紅き秋

(042) 役目終へ風に舞ひ散る落ち葉かな

(043) 秋高く鳶の眼 (まなこ) は尾根を追い

(044) 刈田道活きているごと立つ案山子

(045) ただ死ぬを待つ身のときの重さかな

(046) 冬木立掃きたる空の青深し

(047) 七十路に「君といつまでも」聞きひたり

(048) 畦みちに直立不動の彼岸花

(049) 破れ寺の紅葉 (もみじ) 踏む音風に消え

(050) 色付く葉残し剪定秋惜しむ

(051) 太極拳モザイクかかる残暑かな

(052) 栗飯の甘い匂ひに孫はしゃぎ

(053) 新酒呑みトイムトラベル古老団

(054) 木枯らしや塵もコロナも知らぬまま

(055) 冬来たる富士山頂の薄化粧

(056) 落栗を踏んで登るや木曽の路

(057) 河豚ちりや孫と同じ身摘まみけり

(058) 雲速し朋逝きし日に野分荒れ

(059) 来し方の岐路振り返る残暑かな

(060) 散髪し襟元抜ける冬の風

(061) 病む友を励ます文や暮れの秋

(062) 月光を浴びて薄 (すすき) は銀の海

(063) 紫が天下取りたる秋の庭

(064) 不理解の極みに至る憂国忌

(065) 朋去りぬ虫哭き送る独り酒

(066) 落ち葉ごとひそり消えたし老ひの朝

(067) 民宿の香るどぶろく焼きイワナ

(068) 温暖化百鬼夜行の野分かな

(069) 友の顔浮かべて癒す新酒かな

(070) 晩秋の夕暮れ澄みて富士の峰

      A さんの復帰を祝って一句、

(071) 柿紅葉 (かきもみじ) 陽に照り映えて朋還る

(072) 文化祭笑み笑みあふれ友家族

(073) 吐く息や初霜の朝窓曇る

(074) 一輪の白ばら冴えて月夜かな

(075) 死の形さまざまと問ふ憂国忌

(076) 今年また同じ紅葉の花舞台

(077) 小春日や木漏れ日まぶし散歩道

(078) ふるさとは港の汽笛夜泣き蕎麦

(079) 初登山新蕎麦すする麓茶屋

(080) 濡れ落ち葉朝陽に燃えるきよらかさ

(081) 霜降や日々の河原の草々も

(082) 小夜時雨京の町屋に灯が燈り

(083) 仏壇の新酒に割れる父母遺影

(084) 紅葉舞う散りゆく生命 (いのち) 煌めきて

(085) 柿干せる母の手細し今は亡き

(086) 紅葉は命の光照り返し

(087) 墓碑朽ちて無縁仏に曼珠沙華

(088) 生きている疑問すらなき時もあり

(089) 実りたる街の畑に猪 (しし) 出でる

(090) 郷に入り吾もしてみむと吊るし柿

(091) ひぐらしや遠き夕陽を呼び起こし

(092) 天高く筑波と富士がにらめっこ

(093) 城ヶ崎岩にくだける秋の波

(094) 秋惜しむ何はなくとも茸鍋

(095) 古都暮れて路地裏深く紅葉 (もみじ) 踏み

(096) 赤緑過ぎゆく小道爽やかに

(097) 冬晴にタワークレーン富士摘まむ

(098) 幽谷の村流れゆく霧の音

(099) ふつふつと牡蠣鍋を待つ箸二膳

(100) 金閣寺夕陽に浮かぶ憂国忌

(101) 流星群願いをこめて祈る空

(102) 星冴ゆる沖の漁火窓に揺れ

(103) 懐かしやコロナ不在の去年の冬

(104) 憂国忌激情したたる若気かな

(105) 頭上飛ぶ残暑の機影重たげに

(106) 木漏れ陽と風にゆられて梢かな

(107) 雁の声波浪の岬風に消え

(108) ひとひねり蛇口から水手で受ける

 

 

 --------

 

  今回は、事務方が心筋梗塞を患い、選句表をお届けするのが遅れてし

まい、たいへん申し訳ありませんでした。インペラなどの先端医療技術

をタンミングよく適用していただくことができ、九死に一生を得るとと

もに最小限のダメージで済んだ感じです。

  みなさまからご心配をいただき、たいへんありがとうございました。

 (深瀬)

2020年11月23日月曜日

七句会 第4 回 自由連句 結果

  七句会 第4 回 自由連句  


  第4 回  自由連句は、下記のように満尾しました。

 連衆のみなさま、たいへんありがとうございました。

 今後のことも踏まえ、12月13日をめどに、今回の連句についての感想、コメ

ント、等をお寄せいただけたら幸いです。


 初折表

01 発句  晩夏 鎮魂の読経に和すや蝉時雨          (小野寺) 

02 脇   月     旅人送る十六夜(いざよい)の月     (吉良) 

03  第三    秋    茶をそそぎ車窓のすすき消え去りて         (深瀬) 

04  四句目  雑      稲刈り終えたさびしき案山子      (志方) 

05  月の座 夏  月の夜お化け屋敷はにぎやかに       (豊) 

06  折端  夏    もののけ棲むや青葉づく鳴く      (小野寺) 

 初折裏

07  折立   雑  六本木学術会議智慧問われ          (深瀬) 

08  二句目  恋        揺れて恋道秋空高く                  (新井) 

09  三句目  恋    老いらくの想いはあれど海深く            (志方) 

10 四句目  雑     母見る赤子もみじ手伸ばす        (吉良) 

11  五句目  雑    時翔 (かけ) る孫の明日に夢を置き      (小野寺) 

12 六句目  雑    出口の見えぬトンネルの中       (豊) 

13  月の座  冬月  冬の月明るい未来の道しるべ          (新井) 

14  八句目  冬        熱燗並べDX (ディエクス) 議論    (深瀬) 

15  九句目  雑    横文字と略語が並ぶ危うさよ        (豊) 

16  十句目  雑    お好み焼きかアベノミックスは     (志方) 

17  花の座  花    太閤の花見茶会に貴も賤も         (深瀬) 

18  折端    春        浪花 (なにわ) の春は夢のまた夢    (小野寺) 

  名残表

19  折立    春    送別会幾年先の桜酒            (新井) 

20  二句目  雑     男一人の秘湯巡りよ               (吉良) 

21  三句目  雑   幾山河越え来し峰に風光り              (小野寺) 

22  四句目  雑    セピア調なるモードで撮れば      (豊) 

23 五句目 夏  烏賊 (イカ) 釣火星空ぬぐい釣果待つ    (吉良) 

24  六句目  夏        白装束の滝行の女 (ひと)        (深瀬) 

25  七句目  雑    艶やかな衣装の清く凛と立つ        (新井) 

26  八句目  恋      シラノの想い木漏れびに秘め      (志方) 

27 九句目  恋   十代は武蔵お通に胸おどり         (深瀬) 

28  十句目  雑      散りゆく生命 (いのち) 煌めくや今   (小野寺) 

29  月の座  月  李陵往く月の砂漠に影哀し         (志方) 

30 折端  秋    銀河を見上げ歌口ずさむ        (吉良) 

  名残裏

31  折立    秋   秋高く鳶の眼 (まなこ) は尾根を追い    (小野寺) 

32  二句目  雑    猟師の銃は獲物を狙う         (豊) 

33  三句目  雑  徒競走待てる号砲胸躍る           (吉良) 

34  四句目  雑        大人の散歩気になる歩数        (新井) 

35 花の座  花  西行の旅の終わりは花の下         (豊) 

36  挙句  春     蓮華畑に大地の目覚め         (志方) 


 深瀬 (事務方) 


  補足


・第4 回の実施要領は、下記URL を参照してください。

  http://nanaku-haiku.blogspot.com/2020/10/4.html 


・七句会  第四回自由連句  作成プロセスは、下記URL を参照してください。

  http://nanaku-haiku.blogspot.com/2020/10/blog-post.html 



2020年10月13日火曜日

七句会 第四回 自由連句 作成プロセス

  七句会第四回自由連句作成プロセス

01  鎮魂の読経に和すや蝉時雨      (小野寺 20.08.25)
 災害で亡くなった故人を追悼する盆供養の読経の声が朗々と響く中、寺の外
では蝉時雨がさながら読経に唱和する様に聞こえて、鎮魂への祈りの深さが動
と静に相成り 尚一層深まる想いがしました。              

02 旅人送る十六夜(いざよい)の月   (吉良 20.10.13) 
 鎮魂の発句から旅人を連想:旅立つ旅人の背中を照らす十六夜の月が、旅に
出る旅人と旅人を見送る人の葛藤を表しています。            

03  茶をそそぎ車窓のすすき消え去りて   (深瀬 20.10.14)
  旅人はローカル列車に乗り、お茶を蓋の容器に注いでいます。車窓にすすき
の群れが現れましたが、すっと消えていきました。

04  稲刈り終えたさびしき案山子     (志方  20.10.14) 
  秋の風物詩、すすきの後に、稲刈りをつなげてみました。

05  月の夜お化け屋敷はにぎやかに    (豊    20.10.15) 
  案山子→人形→お化けと連想して、夏の季節感と月を結びつけました。

06  もののけ棲むや青葉づく鳴く     (小野寺 20.10.17)
  お化け屋敷より物の怪を連想。深い薄暗い初夏の木立で鳴くふくろうの青葉
づくの声の響きとしました。

07  六本木学術会議智慧問われ        (深瀬 20.10.18)
 フクロウは、ローマ神話の智恵の女神ミネルヴァを象徴するものとして知ら
れています。昨今の新たな会員任命問題に揺れる六本木にある学術会議に転換
してみました。

08  揺れて恋道秋空高く          (新井 20.10.18)
 学術会議で世間が揺れていて、恋心というものは揺れるという発想をしまし
た。

09  老いらくの想いはあれど海深く      (志方 20.10.18)
  古希過ぎて、世相に品格や衒いがなくなり、発した言葉が簡単に翻る時代、
人への想いだけは大切に護りたいですね。

10 母見る赤子もみじ手伸ばす      (吉良 20.10.19) 
  人間の愛の根源である母子の愛情表現を老いの情愛と対比しました。

11  時翔 (かけ) る孫の明日に夢を置き   (小野寺 20.10.21)
  12年前もみじのような初孫の手に喜びましたが来年は早中学、孫娘も娘と背
丈を並べるまでになり、瞬く間に成長する姿を見て孫娘の未来に幸あれとそっ
と夢を重ねます。

12 出口の見えぬトンネルの中         (豊  20.10.21) 
  今の日本は、出口の見えないトンネルの中にあるようです。私たちの世代が
いなくなった後の世界と日本がどうなっていくのか、孫たちの未来が心配です。

13  冬の月明るい未来の道しるべ       (新井 20.10.24)
  12月会議が終わるころには美しい冬の月が楽しめることでしょう。その頃に
は明るい未来が少しでも見えるといいのに…という願いを込めました。

14  熱燗並べDX (ディエクス) 議論   (深瀬 20.10.25)
  コロナ禍とクラウドなどのIT技術の進歩で、DX(Digital Transformation)の
勢いが続きそうです。20年ほど前、パソコン通信からISDNのインターネットに
移行したころを思うと、これからの未来社会は明るいのか想像を超えます。

15  横文字と略語が並ぶ危うさよ     (豊  20.10.25) 
  深瀬さんの句で初めてDX という言葉を知りました。私が世の中に遅れてい
るのかもしれませんが、文章でも会話でも横文字と略語が多くなって肝心の日
本語が忘れられているような気がします。

16  お好み焼きかアベノミックスは    (志方 20.10.26)
  巷には、高齢者には難解な横文字が溢れ、文言がどういう表現なのか、理解
不能なケースによく遭遇します。近年、最も意味不明なフレーズをお好み焼き
の一種かなと思っておりました。自身の名前を付けて、世界に吹聴していた奥
ゆかしき御仁がいましたが、世界に冠たる借金で、経済対策を行った様ですが、
何でも一番で目標達成で隠居のようです。これぞヤマトダマシいに極みですか
ね。 [美しい日本万歳] 

17  太閤の花見茶会や貴も賤も      (深瀬 20.10.27)
  前政権は、モリカケ問題、桜を見る会などの隠蔽体質が目立ちましたが、や
や無理筋ですが、太閤秀吉の茶会や花見の風流のオープンさを対比しました。

18  浪花 (なにわ) の春は夢のまた夢   (小野寺  20.10.28) 
  権勢を誇った太閤秀吉も病の床の中で五大老の筆頭家康に嫡男秀頼の後事を
頼みますが大阪城は落城、歴史の歯車は浪花から江戸に移っていきます。秀吉
の願った浪花の春は夢の彼方となりました。
  コロナの世界蔓延も誰も予期しなかった事ですが世の中が、変わって行きま
すね。

19  送別会幾年先の桜酒         (新井 20.10.31)
  今年の三月に予定されていた職場の送別会が「延期」とされました。それか
ら、小野寺様の仰る通りこのような事態なるとは思わなくて…、一体いつにな
るのか…桜の咲く季節に美味しいお酒を皆で頂く夢を見るような気持になりま
す。

20  男一人の秘湯巡りよ              (吉良 20.11.02)
  定年退職の送別会も中止になり、妻には友達と旅行したいと断られ、一人で
旅する男の何とも言えない切なさよ。

21 幾山河越え来し峰に風光り           (小野寺  20.11.05) 
 吉良さんの男の哀愁を受けて我々団塊の世代は振り返ると競争の時代でした。
その中で家庭を守り世の荒波を潜り抜けてきたという密かな自負もあります。
さりとてそれが何だと言う一末の諦観もあります。男はやはり独りなのだ、と
ふと思う時があります。昔、男は黙ってトリスを飲む、という宣伝がありまし
たね。

 補。「男は黙って」は、サッポロビールだったと思います。トリスは、柳原
良平氏によるアンクルトリスの絵が懐かしいです。コピーライターは開高健の
ようでした。 (深瀬) 

22  セピア調なるモードで撮れば     (豊  20.11.05) 
 昔の写真はセピア色に変色して残っています。現在のデジタルカメラの写真
も、セピア調モードで撮影すれば古き懐かしい風景になります。

23 烏賊 (イカ) 釣火星空ぬぐい釣果待つ (吉良 20.11.07)
  セピア色は烏賊墨の色。烏賊釣り漁船の漁火の光りの下で大漁を待つ熱気、
夜空の星も拭われたように目立たない光景を読みました。

24  白装束の滝行の女 (ひと)       (深瀬 20.11.08)
  水しぶきをあげる夏の滝に打たれる白装束の女性に転換してみました。

25  艶やかな衣装の清く凛と立つ     (新井 20.11.08)
  滝の修行(?) が終わった後、色鮮やかな洋服に着替えて、かつ心は清らかに
凛として次へ向かう…のイメージで作りました。

26  シラノの想い木漏れびに秘め     (志方 20.11.08)
  何か恋がテーマばかりで、恋愛経験の乏しい爺さんとしては、そんなことあ
ったかなという情景が中々浮かばないですね。映画でシラノドベルジュラック
の最後のシーンを想い、凛としたロクサーヌを胸に焼き付けたか秋の陽ざしの
中で、静かに眠りについた情景を思いだしました。
  こんな献身的な恋に感動した、若き日を思いをよんでみました。気恥ずかし
いですが。。。。。。

27  十代は武蔵お通に胸おどり      (深瀬 20.11.09)
 恋は多様だと思います。十代のころ、吉川英治の小説「宮本武蔵」のなかの
武蔵とお通さんの恋物語に感動していました。

28  散りゆく生命 (いのち) 煌めくや今  (小野寺 20.11.12)
  恋に悩んだ稀代の剣豪にも死は一様に訪れます。時の差こそあれ、人は皆死
から逃れる術はありません。されば、生きている日々の一瞬一瞬を己に誠実に
輝いて生きたいものです。

29  李陵往く月の砂漠に影哀し      (志方 20.11.15)
  未だ見ぬシルクロードへの憧れは消えがたく、李陵という悲劇の漢の武将は
特に脳裡に残ります。はからずも、匈奴の捕虜となった李陵の心象をよんでみ
ました。

30 銀河を見上げ歌口ずさむ       (吉良 20.11.17)
  李陵も望郷の思いで夜空を見上げたのでは。こちらは小学校でならった童謡
「月の砂漠」を懐かしみ思わず口ずさんでしまった老人。

31  秋高く鳶の眼 (まなこ) は尾根を追い   (小野寺 20.11.21)
  吉良さんの月の砂漠の美しい夜のイメージから明るい空に転じました。秋晴
れの空高く天空で輪を描く鳶 (とび) の眼は風に乗り遥か眼下の紅葉の尾根を
追いかけるのでしょうか。

32  猟師の銃は獲物を狙う        (豊 20.11.21)
  上空から地上の餌を狙っている鳶の姿から、人間世界の猟師に場面を変えて
みました。

33  徒競走待てる号砲胸躍る        (吉良 20.11.22)
 銃のパンという音で、小学生の運動会:徒競走の号砲のなる数秒間の何とも
言えない緊張感を思い出させられます。

34  大人の散歩気になる歩数       (新井 20.11.22)
 子供の時はスタートにドキドキしたけれど、大人になった今は、ダイエット
が気がかりです。

35 西行の旅の終わりは花の下      (豊 20.11.22)
 漂泊の歩く旅を重ねた西行は、現在の大阪府南河内郡の弘川寺で没しました。
望みどおりの「花の下」にて。

36  蓮華畑に大地の目覚め        (志方  20.11.23) 
  どんな人にも、等しく終焉は訪れますが、大地は四季の恵みを毎年繰り返し
受けます。幼き頃の記憶ですが、春先に咲き誇る蓮華の光景に何故かワクワク
したものでした。今は、化学肥料や農薬が闊歩し、蓮華畑が余り見あたりませ
ん。こんな時代に西行は何を想うのか? 
    

七句会 第4 回 自由連句について

 新井さん、小野寺さん、吉良さん、志方さん、豊さん

CC  平島さん
CC  秋元さん、新井さん、桑子さん、治部さん、中津川さん、橋本さん、宮澤
さん、柳町さん (一応、ご参考までに継続してお送りする予定です。) 


 七句会 第4 回 自由連句について

  掲記について、今回は、新井さん、小野寺さん、吉良さん、志方さん、豊さ
ん、深瀬の6 名で行うことになりました。

  実施の要領は、下記のようにしたいと思います。
  順番は、とりあえずですが、前回と同じものをベースにして、小野寺さんの
8 句目、吉良さんの13句目、志方さんの19句目、豊かさんの25句目、深瀬の34
句目を、新井さんに担当してもらうことにしました。新井さんは初参加で、や
やご多忙そうなので、5 句としました。
  また、定座の配分を考慮し、初折表の脇と第三の詠み手を入れ替えました。


  尚、新井さんの歓迎会を、小野寺さんと平日の木曜日以外の午後2 時~6 時
ころ、日本橋あたりということで調整しています。新井さんのお仕事のご都合
により、11月以降になる予定です。決まりましたらお知らせしますので、でき
ましたらご参加のほどよろしくお願いします。
 深瀬

  形式 ---- 歌仙 (36句) 。
  発句 ---- 鎮魂の読経に和すや蝉時雨
        (七句会第33回句会最多得点句、作者小野寺さん。) 
  座 ------ 初折表六句
     01 発句   秋   小野寺
     02 脇    月  吉良
     03 第三   秋  深瀬
     04 四句目  雑  志方
     05 月の座  夏  豊
     06 折端   夏  小野寺

      初折裏十二句
     07 折立   雑  深瀬
     08 二句目  恋  新井
     09 三句目  恋  志方
     10 四句目  雑  吉良
     11 五句目  雑  小野寺
     12 六句目  雑  豊
     13 月の座  冬月 新井
     14 八句目  冬  深瀬
     15 九句目  雑  豊
     16 十句目  雑  志方
     17 花の座  花  深瀬
     18 折端   春  小野寺

      名残表十二句
     19 折立   春  新井
     20 二句目  雑  吉良
     21 三句目  雑  小野寺
     22 四句目  雑  豊
     23 五句目  夏  吉良
     24 六句目  夏  深瀬
     25 七句目  雑  新井
     26 八句目  恋  志方
     27 九句目  恋  深瀬
     28 十句目  雑  小野寺
     29 月の座  月  志方
     30 折端   秋  吉良

      名残裏六句
     31 折立   秋  小野寺
     32 二句目  雑  豊
     33 三句目  雑  吉良
     34 四句目  雑  新井
     35 花の座  花  豊
     36 挙句   春  志方

  補足

・付合 ---- 発想の重複、繰り返し、後戻り、等を避け、初折表、初折裏、名
残表、名残裏の各フェーズにおける展開では、起承転結、序破急といったこと
も意識する。詞付け、心付け、匂い付けを基本とする。展開の背景については
簡単にコメントする。次の詠み手に伝えるとともに、前回同様、web に作成プ
ロセスとして残す。

・語句 ---- 先行する句で用いられた語句との重複は避ける。

・平島さんからのコメント
  発句の季語、蝉時雨は晩夏ですが、ま、これはこれでいいかとも思います。
  さらに厳しく言えば表六句は穏やかにで、神祇、釈教、恋、無常は避けた方
が良いことになっています。鎮魂の読経となると少し抵触するかなあという感
じです。まああまり細かいことに捕らわれず伸び伸びとやって下さい。
  何度もやるうちに慣れて来られて本格的なものに近づけるのだと思います。

 二花三月は大事なところです。出来るだけ多くの人に配分されるのが良いと
言われています。深瀬さんに月と花が行っています。吉良さんにはありません
。そこで提案ですが脇の月を吉良さんに譲られてはどうでしょうか? 深瀬さ
んが第三に回られたら配分が均等化すると思います。

  この辺は、適宜、臨機応変に必要に応じて軌道修正をかけていきたいと思い
ます。 (深瀬) 

・参照資料一覧

  七句会第3 回自由連句式目 (ご参考) 20年05月25日現在
  http://nanaku-haiku.blogspot.com/2020/04/3-200415.html

 七句会第三回自由連句作成プロセス
  http://nanaku-haiku.blogspot.com/2020/04/blog-post.html 

 古典解釈シリーズ
  湯沢賢之助著、文法全解  芭蕉名句、旺文社、昭和43年1 月初版
 連句編  1.猿蓑  市中の巻 P,103 ~119 
  http://nanaku-haiku.blogspot.com/2020/04/431-1.html 

 七句会第3 回自由連句結果 (2020年4 月~7 月) 
  http://nanaku-haiku.blogspot.com/2020/07/3-20204-7.html 

 七句会第3 回自由連句感想まとめ
   http://nanaku-haiku.blogspot.com/2020/07/3.html

 一般社団法人日本連句協会
  連句とは
  https://renku-kyokai.net/renku/ 
                                                           

2020年9月22日火曜日

七句会 第三十三回 ネット句会 感想、自句自解

 七句会のみなさま                                                                                                                第三十三回の選句結果を踏まえて、感想や自句自解、等をおよせいただき、                         たいへんありがとうございました。                                             およせいただいたものを、作品集とともに、名前順に、ほぼそのまままとめ                         てお届けします。                                                     今後のやり方に、ご意見、等ありましたら、よろしくお願いします。                             七句会のweb http://nanaku-haiku.blogspot.jp/ にも掲載してあります。                         今後とも、よろしくお願いいたします。                                         深瀬 (事務方)                                                                                                                                                                             1.第32回 ネット句会 作品集                                                                                                          (01)秋元さん                                                      ・大川の川面の揺らぎ蝉の声                                               ・朝顔や夕立ち過ぎて軒すだれ                                              ・蝉時雨風に揺られて小波立つ                                                                                                          (02)新井さん                                                      ・多摩川のかなたに輝く夏の富士                                             ・冷奴もめんのつやに癒されて                                              ・自粛期間小銭が貯まりうな重を                                             ・梅雨明けて二週間後の夕涼み                                              ・夏山の見守る童子の墓掃除                                               ・湯けむりの香りゆらめく夏山よ                                             ・うな重を受け取る手のひら幸満ちる                                           ・帰り道夕飯うなぎ極楽道                                                ・冷奴醤油無くして素の旨み                                                                                                           (03)小野寺さん                                                     ・つばくろ (燕) の囀り高く梅雨払う                                           ・麦秋の風頬に受け朋は逝き                                               ・群青の海の岬に合歓の花                                                ・つばくらめ (燕) 餌求め啼く雨の軒 (のき)                                        ・笛の音に埋み火のごと心揺れ                                              ・海恋し漁火 (いさりび) は哭き波の音                                          ・碧き翅生命 (いのち) の限り蝉生まれ                                          ・雷雲は峰の谷間に風興 (おこ) し                                            ・星の夜半 (よわ) 生まれし蝉のうすみどり                                        ・一陣の風興りきて峠越え                                                ・鎮魂の読経に和すや蝉時雨                                               ・みじか夜に匂い残して百合の花                                             ・墨摺ればひぐらし啼きて風の音                                             ・夏の月原一面を霜に染め                                                ・炎天に陽のにほひしてカンナ咲く                                            ・草いきれ鬨の声聴く衣川                                                ・黒雲に稲妻走り夏来たる                                                ・奥州は夏野の駿馬雲速し                                                ・ひぐらしに魂還帰 (かえ) る杉木立                                           ・谷の闇蛍の乱舞黄泉 (よみ) に棲む                                           ・風蒼し墨のかほりに筆を置く                                              ・花筏木漏れ陽を背に春ながれ                                                                                                          (04)吉良さん                                                      ・梅花藻の清水とたわむる山の宿                                             ・白蓮や頭もたげて朝ひかる                                               ・夏の月灼熱色に染まりあげ                                               ・残像の花火まぶたに夏開き                                               ・屋形船客声静かに川下る                                                                                                            (05)桑子さん                                                      ・傘マーク続き紫陽花心地よし                                              ・年寄りにGOTO冥土令和の夏                                             ・白南風や川面に揺らぐ海猫(ごめ)の群れ                                        ・孫登山ロープウエイで先廻り                                              ・ジージーと蝉か耳鳴り惑う吾れ                                                                                                         (06)志方さん                                                      ・夕凪に水面に映る朱華の雲                                               ・赤々と炎暑に凛と百日紅                                                ・霧流れ晩夏を送る蒼き空                                                ・栂ノ尾の山路登りて涼に触れ                                              ・夕立がゲリラ豪雨に追いやられ                                                                                                         (07)治部さん                                                      ・梅雨出水すべて球磨へと川辺川                                             ・梅雨茸帰国れぬ選手に友の居て                                             ・里山を歩き懐古の水車                                                 ・足早に人波駅へ土用かな                                                ・夏場所や枡一人づつの拍手かな                                             ・弁当の宅配首に扇風機                                                 ・蕎麦待たせ急ぐや奥の院緑                                               ・夏定番帰郷ついでの伊勢参り                                                                                                          (08)中津川さん                                                     ・空に向くすがしき白のムクゲかな                                            ・流れゆく信濃の道にそばの花                                              ・大きさと色競うがごと百日紅                                              ・長崎も心こもらぬ誓いの辞                                               ・経響き先祖迎えるメロンの香                                              ・秋暑し野良猫すずむ車影                                                ・数独や頭へクーラー家ごもり                                                                                                          (09)橋本さん                                                      ・初老吹く尺八若葉の風に乗り                                              ・新緑や木漏れ日水面に万華鏡                                              ・コロナ禍に雨雨雨雨天仰ぐ                                                 初めての糸蜻蛉を2句。庭の菜園の散水時、 か細き                                    物飛ぶ。3cm にも満たない色美しい蜻蛉、 初めて見て                                    感動。 アジアイトトンボらしい。                                            ・茄子の葉に何処から生れし糸蜻蛉                                            ・糸蜻蛉その小ささ美しさ                                                ・聞こえしは機械音ばかり残暑かな                                            ・盆明けて寂しき河原風立ちぬ                                                                                                          (10)宮澤さん                                                      ・梅雨明けた一斉唱歌で蝉知らせ                                             ・家籠り祭りもなしで日は巡り                                              ・角曲がり西日の中に母が待つ                                              ・コロナ禍が廻り続ける走馬燈                                              ・熟れし桃コロナも好物ミツ三っつ                                            ・水を撒くホースの虹に蜻蛉寄り                                                                                                         (11)豊さん                                                       ・眼球の小さな痛み晩夏光                                                ・夏が行くコロナと豪雨の跡残し                                             ・巣ごもりにすっかり慣れて涼新た                                            ・秋霖や相合傘に誘われし                                                ・コスモスや修学旅行の大伽藍                                              ・幼きが敬老の日の慰問かな                                                                                                           (12)深瀬                                                        ・夏山のジャンボ残骸35年                                               ・夏山の満天の星時止まる                                                ・ワンゲルの夏山縦走セピア色                                              ・夏山のヌード写真の陰深く                                               ・夏山の鉄鎖をたぐる修験道                                               ・夏山の小屋の夜に聴くシンフォニア                                           ・夏山の登山の列や雲に消え                                               ・波の音潮のかほりや遠き夏                                               ・気がつけば夏草しげる空き地かな                                            ・太鼓腹ゆかたはみ出す父はるか                                             ・豊満の裸身ゆさぶるカーニバル                                             ・梅雨明けのとなりの部屋に孫の声                                            ・首垂れし倉庫のロボット晩夏の陽                                            ・三密を盥のうなぎ気にもせず                                              ・炎暑日に腰痛かかえ長き道                                               ・目録のできしときには興味失せ                                             ・なって知る他人の苦への鈍感さ                                             ・細き脛いつのまにかと老ひ覚る                                             ・冷蔵庫いっしょにいたね二十年                                             ・見飽きてもつい手にしてるスマホかな                                          ・人類のひかりと闇の走馬灯                                               ・いつまでも人とはなにか問ひつづけ                                           ・生きている起伏のときをいくたびか                                           ・無意識に時の流れるありがたさ                                             ・UFCラウンドガール手を振って                                            ・朝ゲーム記録更新やめられず                                                                                                                                                                      2.第33回 ネット句会 自句自解                                                                                                         ◎ 新井さんの自句自解                                                                                                             七句会の選句結果を拝見し、日常の一コマをその方の個性を混ぜながら語ら                         れたものや、ダイナミックな自然の感じられるものもあり、多種多様さがおも                         しろかったです。                                                                                                                以下の様に自句自解をお伝えします。                                                                                                       ・多摩川のかなたに輝く夏の富士                                              通勤電車で多摩川の上を通りますが、富士山が見えます。冬は白い富士山が                         見えますが、この夏深緑の美しい富士山が見えました。珍しいことですので、                         コロナ自粛で空気が澄んでいるのかもしれません。                                                                                                 ・冷奴もめんのつやに癒されて                                               暑い夏も大好きな冷奴で一瞬酷暑を忘れます。                                                                                                  ・自粛期間小銭が貯まりうな重を                                              自粛期間はあまりお金を使う機会がないので、自然と小銭が貯まりました。                          緊急事態が解除された直後に大好物のうなぎ屋さんへ。躊躇なくうな重を買                         えました。                                                                                                                   ・梅雨明けて二週間後の夕涼み                                               長雨が終わったと思いきや、たった二週間でもう初秋が感じられます。                                                                                       ・夏山の見守る童子の墓掃除                                                小学生の夏休み、兵庫県の田舎に家族で帰省しました。子供たちだけでお墓                         の掃除をしましたが、山々に見守られているようでした。                                                                                              ・湯けむりの香りゆらめく夏山よ                                              真夏に信州に旅行に行った時の事。温泉に入ると、湯煙の向こうに山が見え                         、ほっとし、とても印象に残っています。                                                                                                     ・うな重を受け取る手のひら幸満ちる                                            うなぎが大好物ですので、購入時に受け取ると幸せが広がります。                                                                                         ・帰り道夕飯うなぎ極楽道                                                 何度も書いていると感じますが、うなぎが大好きなので、夕食がうなぎの日                         は、帰り道からうきうきします。                                                                                                         ・冷奴醤油無くして素の旨み                                                お豆腐が大好きですので、しょう油なしでも美味しく頂けます。                                                                                          美味しい食べ物で頭がいっぱいです。先日人間ドックの結果が戻ってきまし                         たが、少しダイエットした方がいいようです。ただ、仕事のストレスなどはア                         イスクリームなどで癒すので、難しそうですが…。                                                                                                                                                             ◎ 小野寺さんの自句自解                                                                                                            ・鎮魂の読経に和すや蝉時雨 (6点句 050)                                          災害で亡くなった故人を追悼する盆供養の読経の声が朗々と響く中、寺の外                         では蝉時雨がさながら読経に唱和する様に聞こえて、鎮魂への祈りの深さが動                         と静に相成り 尚一層深まる想いがしました。                                                                                                   ・星の夜半生まれし蝉のうすみどり (3点句 037)                                       蝉は成虫となり羽化まで土の中で七年の歳月を過ごし地上に出て一週間で生                         命を終えます。星降る夜半に羽化する瞬間は薄いみどりの羽を通して生命の営                         みの輝きを観る想いでした。                                                                                                           ・ひぐらしに魂帰還( かえ) る杉木立 (2点句 030)                                      油蝉やミンミン蝉の盛夏を過ぎて晩夏に鳴くひぐらしのカナカナと鳴く声を                         聴くと、ほの暗い杉木立の中にある魂の故郷に帰って行くのだと思いました。                                                                                     ・一陣の風興りきて峠超え (2点句 063)                                           遥かな峠道を超えてきてふと杣道を振り返ると冷たい一陣の風が吹き身体中                         の汗が爽やかに引いていく想いでした。                                                                                                      ・短か夜に匂い残して百合の花 (2点句 072)                                        真夏の短い夜半、庭に咲くカサブランカは暗闇の中で強くて魅惑の匂いを漂                         わせ、不思議な夜のハーモニーとなりました。                                                                                                   ・炎天に陽のにほひしてカンナ咲く (2点句 097)                                     炎天の強い日差しの中で紅く咲くカンナは生命の炎を燃やして炎暑に負けな                         い力を持った生き物の様にも思いました。                                                                                                     ・谷の闇蛍の乱舞黄泉 (よみ) に棲む (1点句 095)                                     漆黒の深い谷の底での蛍火の光の交錯は魂の乱舞にも似てこの世ではない黄                         泉( よみ) の国に棲む命を眺めている錯覚を観る想いがしたのです。                                                                                         ・墨すればひぐらし啼きて風の音 (1点句 088)                                       手紙をしたためる為に墨を擦っていると仄かな墨の香りの中で、ひぐらしの                         哭くような寂しい声が風に微かに流れて行く気配を感じたことでした。                                                                                        ・つばくらめ (燕) 餌求め啼く雨の軒 (1点句 099)                                      雨の日の軒先、親燕の餌を求めて盛んに啼くヒナ達の甲高い声は自然の中で                         生きぬく生命の強さでもあり応援したい気持ちを掻き立てられます。                                                                                         ・奥州は夏野の駿馬風速し (1点句 022)                                          奥州岩手一関は藤原一門の時代から駿馬の供給地でした。雲が流れる夏の原                         野を駿馬が風の様に駆け抜けて行く様は、祖父の故郷への郷愁でもありました                         。                                                                                                                                                                                   ◎ 桑子さんの自句自解                                                                                                             ・傘マーク続き紫陽花心地よし                                                                                                          ・年寄りにGOTO冥土令和の夏                                              ちょっと皮肉を込めて、GOTOトラベルに対し、年寄りはコロナ・熱中症                         で冥土の旅かなということで詠みました。                                                                                                     ・白南風や川面に揺らぐ海猫 (ごめ) の群れ                                         自宅(荒川区)近くの隅田川のテラスを散歩していたら、川に浮かんでいる                         鳥を発見、最初カモメかなと思いましたが調べたら冬鳥ということで、やっと                         ウミネコにたどり着きました。ただ後で季重なりと気づきました。                                                                                          ・孫登山ロープウエイで先廻り                                               筑波山に行った時、孫は歩いて登り、年寄り夫婦は気力、体力がなくロープ                         ウエイで頂上へ。                                                                                                                ・ジージーと蝉か耳鳴り惑う吾れ                                              これは実感です。最近耳が遠くなり耳鳴りもひどく、気を付けないとセミの                         鳴き声と混同してしまいます。                                                                                                                                                                      ◎ 橋本さんの自句自解                                                                                                             少し涼しくなって来ましたね、助かります。                                       9日に2ヶ月半ぶりに霞台CCの霞光会ゴルフに参加しました。ほぼ猛暑日の                         暑さで、途中からバテて力ばかり入ってトップを多発、何とか最後まで廻って                         良い汗は掻きました。体調を整えてゴルフを楽しみたいと思っています。                           今回4点句と3点句がありましたので、自句自解を送らせていただきました                         。                                                                                                                       ・茄子の葉に何処から生れし糸蜻蛉 ・・・4点句                                                                                                 ・糸蜻蛉その小ささ美しさ ・・・1点句                                          投句の際に、アジアイトトンボらしいと書きましたが、アオモンイトトンボ                         も似ていて判断できず、参考までに写真を添付します。
                                                            ・新緑や木漏れ日水面に万華鏡 ・・・3点句                                        清水公園の緑陰の小川の水面、 新緑からの木漏れ日、 映る青空が万華鏡の様                         に美しい。                                                                                                                   ・コロナ禍に雨雨雨雨天仰ぐ ・・・1点句                                         今年の梅雨は雨の日が多かった、7 月はほぼ毎日、コロナ禍と相まってどう                         にかならないものかと天を仰ぐのみ。                                                                                                       ・聞こえしは機械音ばかり残暑かな                                             猛暑日続く残暑 (酷残暑!) 、人間を初め生物全てが耐えている、外は車と                         飛行機音がするばかり。                                                                                                             ・盆明けて寂しき河原風立ちぬ                                               田舎の少年時代の盆明け、人影が消え一泳ぎ後の河原、水は冷たく初秋の風                         に山際には黄葉も舞う。今では考えられない経験、風景。                                                                                              ・初老吹く尺八若葉の風に乗り                                               市の運動公園散歩中、コロナ禍の密を避けて初老が一人吹く尺八、美しい音                         色が若葉の風に乗り流れる。                                                                                                                                                                       ◎ 宮澤さんの自句自解                                                                                                             ・梅雨明けた一斉唱歌で蝉知らせ                                             今年は7 月まるまる梅雨空で、8 月になったとたんにセミの鳴き声とともに                         、どっと夏がやってきた感じでした。                                                                                                       ・家籠り祭りもなしで日は巡り                                               コロナで人との接触を断たれ、刺激が少ない日々。それでも一日は短く、あ                         っという間に月日は巡り、秋を迎えようとしている印象を強く持ちました。                                                                                      ・角曲がり西日の中に母が待つ                                               少々疲れた仕事帰りの夕方、自宅への帰路で最後の角を曲がると西日が照り                         付け一瞬何も見えなくなります。そのまぶしさの中に玄関前で亡き母が「お帰                         り」と迎えてくれた気がしました。                                                                                                        ・コロナ禍が廻り続ける走馬燈                                               コロナ罹患数の日々の動きは、ぐるぐる回る走馬燈。今日も又繰り返しです                         。                                                                                                                       ・熟れし桃コロナも好物ミツ三っつ                                             桃も品質改良で色々な銘柄があるようですが、目の前の三種の桃は皆甘く水                         蜜がたっぷり。コロナも三密が大好き。どうもくだらないダジャレでした。                                                                                      ・水を撒くホースの虹に蜻蛉寄り                                              水撒きしていると、光の具合で虹が見えます。もっとよく虹が見えるように                         と夢中になって、撒き方や方向を細工していると、いつの間にか、蜻蛉が寄っ                         てきて水を撒く方向の変化に合わせ一緒になって飛んでいる。「久しぶり」、                         懐かしく蜻蛉さんと挨拶を交わしました。                                                                                                                                                                 ◎ 豊さんの感想                                                                                                                 選句結果の感想を送ります。                                               高得点の句は、それぞれ俳句として良くできている作品だと思います。それ                         をきちんと評価して点を入れた皆さんの鑑賞力に感心しました。                                私自身の句は、改めて読み直すと平凡すぎて、強く訴える力がなかったよう                         です。                                                                                                                                                                                 ◎ 深瀬の自句自解                                                                                                               ・気がつけば夏草しげる空き地かな                                             最近、近くのかなり広い敷地の都営住宅が取り壊されました。植物の繁殖能                         力と人間のいろいろな事情とのせめぎ合いを感じました。                                                                                              ・夏山の鉄鎖をたぐる修験道                                               夏山と鉄鎖を詠みたいと思いました。はじめ下五を「谷深く」としたのです                         が、「修験道」の方がおもしろいかと思いました。                                                                                                 ・首垂れし倉庫のロボット晩夏の陽                                             ソフトバンクの店先で見た光景です。下五は少し工夫したつもりです。                                                                                       ・夏山のヌード写真の陰深く                                                昔見た屋外で撮影されたものが印象に残っています。もちろんわたしが撮っ                         た訳ではありません。                                                                                                              ・夏山の満天の星時止まる                                                 以前、大学の同級生と野辺山天文台を見学し、その夜、宿のマイクロバスに                         のって星座見学に参加しました。満天の星空に吸い込まれる感じがしました。                         レーザーポインターでの解説にも驚きました。                                                                                                   ・夏山の小屋の夜に聴くシンフォニア                                            「アルビノーニのアダージョ」をシンフォニアというのだと思い込んでいま                         す。個人的に、Academy of St.Martin in the Fields Orchestraの下記URL の                         ものが好きです。                                                    https://www.youtube.com/watch?v=CuYlw7NzIK8                                                                                                  ・夏山のジャンボ残骸35年                                               この夜、自宅で神父さんとお話しをしていてむし暑い夜でした。                              原因が、後部圧力隔壁破損の修理のやり方にあったというのが重苦しく感じ                         ます。                                                                                                                     ・夏山の登山の列や雲に消え                                                富士山に、友人とはとバスで観光に行ったことがあります。登っていく人た                         ちの長い列が印象に残りました。                                                                                                         ・波の音潮のかほりや遠き夏                                               子どものころ、毎夏行った伊東の海が記憶に焼きついています。波の音や独                         特の潮のかおりが忘れられません。                                                                                                        ・ワンゲルの夏山縦走セピア色                                              わたしはワンゲル部ではありませんでしたが、ワンゲル部の人たちの話しを                         参考にしたりして作りました。                                                                                                          ・細き脛いつのまにかと老ひ覚る                                              もう少し太くてつやがあったのに。そういうものかと納得しています。                                                                                       ・梅雨明けのとなりの部屋に孫の声                                            梅雨が明け、幼稚園も再開され、孫の元気な声を聞き、少し安心です。                                                                                       ・豊満の裸身ゆさぶるカーニバル                                              ユーチューブでみれますが、なにかその解放感と大胆さに圧倒されます。                                                                                      ・三密を盥のうなぎ気にもせず                                              昔、目黒・権之助坂の途中に鰻屋さんがあり、そこでよく目にしました。                                                                                      ・いつまでも人とはなにか問ひつづけ                                           人はどう生きるのがよいのかという問いは、結局、この問いに行き着くよう                         に感じます。                                                                                                                  ・なって知る他人の苦への鈍感さ                                             最近、腰痛から自己流のへんなストレッチをやったせいか、ひどい股関節痛                         になり歩行が困難になりました。改めて杖をついている人が多いことに気がつ                         きました。                                                                                                                   ・目録のできしときには興味失せ                                             蔵書やTV録画の整理は、終活の重要な一部を占めますが、整理が完了してど                         うなるのか心配です。                                                                                                              ・太鼓腹ゆかたはみ出す父はるか                                             戦後、通産省で化学肥料を担当していた父は、毎夜、午前様でしらふで帰宅                         することはありませんでした。60歳前後で体調を崩しほぼ引退しました。                                                                                       ・朝ゲーム記録更新やめられず                                              スマホのブロックパズルというゲームにややはまっています。                                                                                           ・見飽きてもつい手にしてるスマホかな                                          電車の中やベッドの上でつい見てしまいます。電車内もそういう人が多いと                         感じます。                                                                                                                   ・無意識に時の流れるありがたさ                                             うつとか不安神経症になると時間の流れが重苦しくなります。                                                                                           ・冷蔵庫いっしょにいたね二十年                                             朝食や夕食のとき、ずっと隣にあった冷蔵庫のドアの調子が悪くなり取り替                         えました。家内と一緒に記念撮影をして持って行ってもらいました。                                                                                         ・人類のひかりと闇の走馬灯                                               豊さん、過分なコメント、ありがとうございます。                                    コロナ禍、戦争記録映画、米中対立や人種差別や異常気象のニュース、等を                         見る一方、AIや5Gや宇宙探査の成果などを聞いていて、ふとよぎりました。こ                         れからどうなるのかかなり心配です。                                                                                                       ・炎暑日に腰痛かかえ長き道                                                                                                           ・UFCラウンドガール手を振って                                             マイク・タイソンの格闘技をユーチューブで時々みます。電車のなかで手を                         振る女性をみて、どこかで見た光景だなと気になって思い出しました。                                                                                        ・生きている起伏のときをいくたびか                                           人生、いろいろあったなと感ずるような年齢になりました。                                                                                             --------                                                                                                                   追記                                                         近々、七句会第4 回自由連句を前回に引き続き、行いたいと思っています。                         参加を希望される方のご連絡をよろしくお願いします。                                   前回の連句 (歌仙) は、下記URL から参照できます。                                    http://nanaku-haiku.blogspot.com/2020/07/3-20204-7.html