2017年11月29日水曜日

七句会 第二十二回目のネット句会 七句会交差点 第03号

 七句会 
 第二十二回ネット句会参加各位
 第二十二回の選句結果を踏まえて、感想や自句自解、等をおよせいただき、
たいへんありがとうございました。
 およせいただいたものを、名前順に、ほぼそのまままとめてお届けすること
にします。今後のやり方に、ご意見、等ありましたら、よろしくお願いします。
 七句会の案内を出した方、全員にご参考までにお送りすることにします。
 七句会のweb  http://nanaku-haiku.blogspot.jp/ にも掲載してあります。
  今後とも、よろしくお願いいたします。
  深瀬 (事務方)


(1) 秋元さんの自句自解
  (054) 紅の山肌隠す白き舞
  2002_11_02_ 根子岳からの下山途中の四阿山での景色です。 (写真添付)

(2) 小野寺さんの自句自解
  皆さまに選んでいただいた、小生の句の自句自解下記致します。
  1 紅葉燃ゆ 古都の甍を雨が打つ
 夕暮れ迫る古都の街角 外は燃えるような紅葉の赤一色ふとその街角で一瞬
雨が降り始め 町屋の甍が黒い点となって変わりゆく、その色彩の対比の妙を
切り取った風景画です。
  2  せせらぎは 底に紅葉を 敷き詰めし
 秋も深い深山の急流に差し掛かった折流れの川底に紅葉が一面に敷き詰めら
れ川面にはまばゆい光が 揺れておりました。
 澄んだ清らかな水はあでやかな紅葉を一層引き立たせて輝きながら流れてお
りました。 
  3  虫時雨 朋逝き夜半の 独り酒
 秋の夜半 虫の合唱は不思議に静けさを感じさせさながら 鎮魂の読経にも
似て酒が好きだった 友人への尽きせぬ想いをこめてしみじみと独り、献杯を
したのでした。
 4 苔むした 古都の小路に 紅葉燃ゆ
 織部色の苔むした古都の小路の向こうに一面に紅い紅葉が燃えているような
輝きをみせ、さながら 一幅の 絵巻物をながめるような光景でした。
 
 5  野辺送り 朋なき空に 赤蜻蛉
 友人を亡くした秋の空に赤蜻蛉が 翔んでいた。
 絵を描く事が好きだった友人は、遥かな空から 赤蜻蛉の様に光溢れる風景
を俯瞰しながら、風になっているのだと思います。
 6 秋蝶は陽だまりの外息を止め
 静かな秋の午後 ふと 眺めた視線の先に 陽だまりを外れた影の中に羽を
たたんだ蝶が動かずにじっとしておりました。
 まるで 息を止めて己の死を見つめている様でもありました。
 ふと 旅立った男の心と重なる想いがしたのです。

(3) 橋本さんの自句自解
  3 点句の評価を頂きました二句について、いきさつ、背景等説明いたします。
  (035) ミサイルに秋刀魚も細る北の海
 今年の秋刀魚は本当にいけません、不漁で型も小さく細い。取り敢えず3回
塩焼きで食しましたが、味は推して知るべし。最近は台湾や中国、韓国の大型
船が三陸沖の公海でごそっと取ってしまい、逃れた秋刀魚に今年は北朝鮮のミ
サイルの追い打ち。何とかしなければいけませんね。
  (038) 北の使者しばし休める刈田かな
 冬が近づくといつものように、北から鳥達( 鴨・雁・白鳥等)が日本に渡っ
て来ます。
 稲刈りの済んだ田圃は、格好の休憩地であり貴重な餌場です。
 住民が不足する餌を与えている所もあるようですが、十分な刈田をいつまで
も残しておきたい。

(4) 豊さんの感想と自句自解
  ○5 点句「紅葉燃ゆ 古都の甍(いらか)を雨が打ち」について
 この句をそのまま読むと、いま雨が降っている、と解釈できてしまうのです
が、間違っているでしょうか。 
 「雨が打ち」を「雨が降った後」と解釈するのはいささか無理があるように
思います。
 もし、いま雨が降っているのであれば紅葉の葉は濡れているはずで、「燃ゆ
」という表現は適当ではないような気がしますが、どうでしょう。
 作者が「雨の後」の紅葉を詠みたかったのであれば、たとえば次のようにし
たほうがわかりやすかったかもしれません。
 「雨晴れて古都の甍に紅葉燃ゆ」
 小野寺さん、すみません。
  ○自句自解「大和路や古寺の鐘聞く秋の旅」
 もちろん「春の旅」でもいいのですが、「春」と「秋」では雰囲気が正反対
です。「春」には明るさと希望がありますが、「秋」には寂しさと失意があり
ます。
 大和路の旅ににどちらの雰囲気を好むかは人によって違うでしょうが、私は
古寺の鐘がもの悲しく響くという趣を選びました。
  ○自句自解「全山は紅葉の中阿弥陀仏」
 寺を包んでいる背景の山は一面紅葉の盛り。その寺の中に金色の阿弥陀仏像
が鎮座している。その対比を詠んだのですが、小野寺さんは「全山紅葉の状態
を阿弥陀仏として眺めた感覚に共鳴します」と書いてくれました。なるほどそ
ういう解釈もあるのか、と感心した次第です。
  ○自句自解「北の海荒れてロシアの島見えず」
 北海道オホーツクの海を思い浮かべて詠んだ句です。晴れていればロシアが
管理している北方四島が見えるはずなのに、海が荒れているのでそれが見えな
い、という情景です。
 わざと季語を入れない、無季の句にしてみました。

(5) 深瀬の感想、自句自解
- 全体的感想
  改めて、秋という季節を噛みしめることができました。
  季節の色としては、春は新緑や桜色、夏は深緑、秋は紅黄色、冬は白 (雪や
寒) という感じだと思いますが、各句に、秋の風景や色彩が印象深く、たのし
めました。
  俳句を作る意味とか、よい俳句とはどのようなものか、といったことを思う
ことがありますが、最近、下記の著書がかなり参考になった気がしました。
  今泉恂之介著 "芭蕉から第二芸術まで  俳句史の真実" NPO 双牛舎刊
  今泉さんは、上智大学柔道部の先輩であり、日経論説委員を勤められ、現在
、俳句の普及を進めるNPO 法人双牛舎の代表理事です。
 双牛舎については、下記のURL から参照できます。
  http://sogyusha.org/blog/
- 自句自解
・渓谷の鉄橋染める紅葉かな
 駅などのポスターを参考に作りました。文字通りポスター俳句。
・ひとえだのもみじ飾りて妻とお茶
  妻については、下記のような句を作ってきました。なにか接点が単純すぎて
空気のような存在になっている感じもしています。
 - 妻ひとつわれもひとつとぶどう食べ
  - 子ら巣立ち妻と二人の秋の暮れ
 - 芋入りのみそ汁妻と湯気をかぐ
  - 寒き夜は妻と二人で鍋かこむ
  - 明け早し妻に淹れし茶冷え置かる
   - 春眠の妻起きたるを遠く聞き
・ゴルフ場ボール浮き立つ紅葉かな
 コースのまんなかに紅葉の木が数本あって、その上を白球が越えていくイメ
ージですが、ラフのなかの紅葉の葉っぱに埋もれているのを探しているのが現
実です。
・裏道をあゆめば紅葉ここにあり
・ビル街にひそり陽あびる紅葉かな
 都会のなかの紅葉も結構目立つと思っています。
・もみじ葉に送られあの世の戸をたたき
・生の意味もみじに問いて答えなし
・終活を主業と決めて秋の声
 やはり70歳が目の前なので、生死のことが気になるようになりました。スム
ースにあの世にいけたらよいと思っています。
・雨音の秋を深める北の宿
・北国のゴルフの空にいわし雲
・北国の赤きリンゴを亡き父母に
・北国を鉄路で行けば秋深し
 両親が秋田県出身であり、私は東京二世です。東北地方に自分のルーツがあ
るような気持ちをいつももっています。ゴルフの句は、10月17日の霞光会のス
パリゾートハワイアンGCでのものです。
・図書室の窓辺に潜む秋の声
・秋の声砂浜ひそり波の音
 秋の気配は、さみしいような、落ち着くような、内省的な気持ちにさせられ
るように感じます。
・とうもろこし回して食べるゲーム感
 とうもろこしというのは、なにか異邦感を感じさせる食べ物だと思います。
・蒼き富士坂から望む秋の暮れ
 目黒駅から自宅に歩く途中、左手に下り坂がありますが、そこから富士山が
見えます。よく写真を撮っている人をみかけます。
・電線をよぎって沈む秋夕陽
  以前、「夕焼けの電線よぎる落ち葉かな」という句を作りましたが、それの
秋版のつもりですが。
・掛け布団重きに秋の深みゆく
 夏の方が、ふとんもなく、ベッドの上で自由に動けてよかったな、という思
いです。年とともに寒さに弱くなっていく感じです。
・雨あがり秋の陽 (ひ) 空に満ちにけり
 雨上がりの空の透明感を詠んだつもりです。
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2017年11月13日月曜日

七句会 第22回 ネット句会の選句結果のご報告です。

 七句会のみなさま
 第二十二回の七句会にご参加いただきたいへんありがとうございました。
今回の選句結果をご報告いたします。
 5 点句
(010) 紅葉燃ゆ 古都の甍(いらか)を雨が打ち         小野寺
 4 点句
(014) せせらぎは 底に紅葉を 敷き詰めし。          小野寺
(046) 虫時雨(むししぐれ)朋逝き夜半の 独り酒        小野寺
(076) 大和路や古寺の鐘聞く秋の旅               豊
 3 点句
(003) ひとえだのもみじ飾りて妻とお茶             深瀬
(015) 山門と 競う紅葉よ 燃えさかる             吉良
(023) 苔むした 古都の小径に 紅葉 燃ゆ。          小野寺
(024) 寒の朝 嵐に耐えた 紅葉 (もみじ) 散る         宮澤
(028) 幼子の 手よりもれ落つ 紅葉かな            吉良
(035) ミサイルに秋刀魚も細る北の海              橋本
(038) 北の使者しばし休める刈田かな              橋本
(066) 野辺送り 朋なき空に 赤蜻蛉              小野寺
 2 点句                               
(012) 紅葉 (こうよう) や 木々で異なる 色変化 (いろへんげ)  宮澤
(020) 紅葉映え白月浮かぶ深き空                橋本
(026) もみじ葉に送られあの世の戸をたたき           深瀬
(030) 北国の 白夜のしとね まどろみぬ            宮澤
(039) 雨音の秋を深める北の宿                 深瀬
(053) 秋蝶は陽だまりの外息を止め。              小野寺
(054) 紅の山肌隠す白き舞                   秋元
(055) 掛け布団重きに秋の深みゆく               深瀬
(060) 逝く友に 夢託されて 秋ふるえ             森杜瑯
(064) 秋桜や小箱近づく無人駅                 治部
(075) 古希過ぎて ふる里目指す 鰯雲             森杜瑯
  下記に、選句表に、各句の右側に作者名、および、その下に選んだ人の名前
とコメント (追番付き、順不同、敬称略。) を付したものを添付します。
  次回については、来年1 月上旬ころにご連絡したいと思っていますので、よ
ろしくお願いいたします。やり方、等について、ご意見がありましたら、ご連
絡をいただきたく、よろしくお願いいたします。
 事務方から、以下、ご連絡、ご依頼です。
(1) 選句参加者
 今回の選句には、下記の14名が参加しました。
  秋岡さん、秋元さん、小野寺さん、吉良さん、齋藤さん、志方さん、治部さ
ん、中津川さん、橋本さん、宮澤さん、森杜瑯さん、柳町さん、豊さん、深瀬。
(2) 今回の句会の結果を踏まえた自句自解、感想、等の募集について
  今回の句会の選句結果を踏まえて、各自、表明しておきたいこともあるので
はないかと思いますので、自句自解、感想、等、なんでも結構ですので、募り
たいと思います。一応、期限としては11月28日とし、事務方にメールでいただ
き、それを七句会の下記のweb に掲載することにしたいと思います。
 http://nanaku-haiku.blogspot.jp/
  これまで、句会の後、勉強会としての集まりを企画していましたが、参加者
が少ないこともあり、改めることにしました。集まっての勉強会も適宜、行い
たいとは思っていますが、よろしくお願いします。
  2017.11.13
      代表   橋口侯之介 (休会中)
      顧問  豊  宣光
      事務方 深瀬久敬
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    1.兼題  紅葉
(001) 紅葉燃え 古都の真昼を 過ぎにけり           小野寺16
(002) 紅葉 (こうよう) の 木漏れ日揺らし ボート漕ぐ     宮澤06
1 深瀬 秋日和に、どこかの湖とか公園の池で、
 岸辺に紅葉が生い茂っているなか、若かりし
 ころの奥さんと一緒にボートを漕いでいる様
 子が目に浮かびました。
(003) ひとえだのもみじ飾りて妻とお茶             深瀬02
1 吉良  さりげない表現の中に日常の家庭の穏
 やかな平安を感じさせてくれる句です。
2 柳町
3 宮澤 紅葉の下で芸者揚げて一献が昔の夢だ
 ったけれど、今は一枝の紅葉とお茶があれば
 幸せ。
(004) デパートに 一畳だけの 紅葉映え            吉良02
(005) ビル街にひそり陽あびる紅葉かな             深瀬05
(006) 満天の 星従えて 紅葉燃ゆ 。             小野寺20
1 森
(007) 全山は紅葉の中阿弥陀仏                 豊01
1 小野寺 全山紅葉の状態を阿弥陀仏として眺
 めた感覚に共鳴します。
(008) ゴルフ場ボール浮き立つ紅葉かな             深瀬03
1 中津川  ラフに打ち込んだボールが行ってみ
 たら紅葉の上に乗っていたのでしょうか。白
 いボールと紅葉の色の対比がおもしろいと思
 いました。
(009) 外苑を 黄金に染めて 紅葉立つ             吉良04
(010) 紅葉燃ゆ 古都の甍(いらか)を雨が打ち         小野寺03
1 柳町
2 中津川
3 宮澤 黒い甍は炭でしょうか、雨に当たると
 燃え上がり紅葉が一層鮮やかに冴えます。
4 秋元
5 治部
(011) 花水木朝日に煌めく濡れ紅葉               橋本02
(012) 紅葉 (こうよう) や 木々で異なる 色変化 (いろへんげ)  宮澤04
1 志方
2 治部
(013) 生の意味もみじに問いて答えなし               深瀬07
1 豊 作者は色づいた紅葉に人生の悲哀を感じ
 ているのでしょう。しかし、紅葉は自然のま
 まに色づき、散っていくだけ。そこには人間
 の俗念が入る余地はありません。ですから、
 紅葉は何も答えないのです。
(014) せせらぎは 底に紅葉を 敷き詰めし。          小野寺19
1 吉良  目を閉じると目の前に深山のせせらぎ
  を思い浮かべられます。
2 中津川  せせらぎの上も底も紅色で囲まれて
  いるようです。
3 秋元
4 治部
(015) 山門と 競う紅葉よ 燃えさかる             吉良01
1 齋藤
2 橋本 鮮やかで力強い紅葉が浮かびます。
3 深瀬 真っ赤に塗られた山門と真っ赤な紅葉
 とが、その色を競うように燃え盛っていると
 いう色彩感覚が印象的です。
(016) 峠路(とうげみち) 風 運びたり 山紅葉        小野寺18
1 志方
(017) 裏道をあゆめば紅葉ここにあり              深瀬04
(018) 黄昏(たそがれ)て永観堂に 紅葉燃ゆ。         小野寺05
1 秋岡  "黄" 昏と "紅" 葉のバランス及び句
 のリズムに共感しました。
(019) 富士の峰 麓は紅葉 (もみじ)  白冴えぬ         宮澤05
(020) 紅葉映え白月浮かぶ深き空                橋本01
1 齋藤
2 小野寺 紅い紅葉の向こうに秋の白い月が浮
 かぶ深き空が効いてます。
(021) 晩年は紅葉のごとく散りゆかむ              豊02
1 志方
(022) 渓谷の鉄橋染める紅葉かな                深瀬01
1 豊 山は一面の紅葉。その渓谷に橋が架かっ
 ています。木の橋でしょうか。鉄橋でしょう
 か。鉄橋ならば、錆び付いた古い橋がいいで
 すね。渓谷美を切り取ったいい風景です。
(023) 苔むした 古都の小径に 紅葉 燃ゆ。          小野寺17
1 柳町
2 橋本
3 秋元
(024) 寒の朝 嵐に耐えた 紅葉 (もみじ) 散る         宮澤03
1 吉良  嵐に耐えた紅葉に対する作者の愛おし
  みを感じます。
2 橋本 風は凌いでもとどめの寒さ、自然の摂
 理。
3 小野寺 嵐でも散らなかった紅葉が寒の朝に
 散っていた、自然の摂理の確かさですね。
(025) 音もなく 紅葉 散りけり 星月夜            小野寺21
(026) もみじ葉に送られあの世の戸をたたき           深瀬06
1 森
2 豊 もしかすると(013) と同じ作者でしょう
 か。すでにこの世からおさらばして、あの世
 へ向かっている。「あの世の戸をたたき」に、
 この世には何の未練もないというサバサバし
 た感じと味わい深いユーモアがあります。
(027) 紅葉散る 音  踏みしだき 百舌鳥(もず)が啼き     小野寺15
1 齋藤
(028) 幼子の 手よりもれ落つ 紅葉かな            吉良03
1 秋元
2 治部
3 小野寺 孫のてからはらりと落ちた紅葉は微
 笑ましい情景です。作者の深い愛情を感じら
 れ好感がもてます。
(029) 渓流に紅葉映して秋が暮れ                秋元02
   2.兼題  北
(030) 北国の 白夜のしとね まどろみぬ            宮澤02
1 吉良  いつ暮れるともない白夜の中で夢をみ
  させてくれます。
2 橋本
(031) 北の海荒れてロシアの島見えず              豊04
(032) 北国のゴルフの空にいわし雲               深瀬09
(033) 北の国 知る人ぞ知る 旨い燗              宮澤01
1 齋藤
(034) 北国を鉄路で行けば秋深し                深瀬11
1 治部
(035) ミサイルに秋刀魚も細る北の海              橋本03
1 中津川  細るという表現が怖さを表している
  ようです。
2 豊 時事川柳として秀逸ではないでしょうか。
 北朝鮮が暴走しないよう、アメリカ追従では
 なく、もっと積極的に日本は独自の外交を進
 めるべきだと思います。
3 秋元
(036) 北国の赤きリンゴを亡き父母に              深瀬10
(037) 北国の便りを運び鳥渡る                 豊03
(038) 北の使者しばし休める刈田かな              橋本04
1 吉良  刈りとった寂しい北の田んぼに、新し
  い住人の活気を感じます。
2 秋岡  丹頂鶴の餌をついばむ姿が自然と想像
  されます。
3 深瀬 渡り鳥が、稲刈りの終わった田んぼに
 舞い降りて、どじょうなどをついばんでいる
 様だと思います。いよいよ冬が近いなという
 様子が活写されていると思います。
(039) 雨音の秋を深める北の宿                 深瀬08
1 志方
2 宮澤 雨音が秋を深め、静かになったら雪。
 冬はもうすぐです。
   3.雑詠
(040) ちんどん屋 奏でる音色に 風哀し            志方02
1 秋岡  季語が無いのかなあと思いながらも、
  全体の哀調に共感しました。
(041) 手強いぞ風雨の後の濡れ落葉               治部05
(042) 雨あがり秋の陽 (ひ) 空に満ちにけり           深瀬19
(043) 百舌鳥(もず)啼きて茜(あかね)の雲に友の 逝き    小野寺06
(044) 注射針刺さるる痛さ秋深む                豊06
1 中津川  インフルエンザ予防接種の季節です。
(045) 朝霧の 流れ梢に 雉がなく               志方04
1 小野寺 朝霧の静寂のなかの木立に雉がない
 ている。しみじみとした静謐な情感を感じか
 もしだしています。
(046) 虫時雨(むししぐれ)朋逝き夜半の 独り酒        小野寺11
1 齋藤
2 吉良  親しい友を偲んで一人酒。我々のこれ
  からの姿でしょうか。
3 橋本
4 宮澤 逝きし友をしのび、読経のごとき虫時
 雨をBGM にしみじみと独り酒。さみしいね。
(047) とうもろこし回して食べるゲーム感            深瀬15
(048) 赤々と むら雲染める 残照が              志方01
(049) 落葉松(からまつ)の 時雨て梢 消えゆけり       小野寺08
1 橋本  山水画の世界を見ているようです。
(050) 秋の声砂浜ひそり波の音                 深瀬14
(051) 故郷(ふるさと)の駅舎の窓を 走り雨          小野寺14
1 柳町
(052) 彷徨 (さまよ) えり 虫の音やみても 夢捨てず      森杜瑯04
1 志方
(053) 秋蝶は陽だまりの外息を止め。              小野寺01
1 秋岡  窓越しに息をひそめて蝶の姿を追いか
  ける作者の様が良くわかります。
2 豊 俳句らしいまとまりがありますね。「息
 を止め」ているのは、もう死にかけているか
 らでしょうか。それとも寒さに震えているか
 らでしょうか。
(054) 紅の山肌隠す白き舞                   秋元01
1 治部
2 小野寺 真っ赤に燃えるような紅葉を覆い隠
 すように白い雪がふってきた。季節の移り変
 わりをとらえて墨絵の趣があります。
(055) 掛け布団重きに秋の深みゆく               深瀬18
1 秋岡  布団の枚数が増えてくるたびの冬が近
  づいてくるを共感します。
2 宮澤 軽い羽根布団は性に合いません。布団
 の重さは寒さと相関します。
(056) 天(空)蒼く 水引き草に 風がたち。          小野寺02
(057) 黒き富士裾で薄が露払い                 治部02
1 中津川  初雪、初冠雪が目前に来ているよう
  です。
(058) 夕の寺迫り来るなり百日紅                橋本05
(059) 風光り 薄(すすき)の原に 曼殊沙華          小野寺12
1 志方
(060) 逝く友に 夢託されて 秋ふるえ             森杜瑯03
1 深瀬 亡くなっていく人から、夢を託される
 というのは、こころに重くひびくものがあり
 ます。なにか世界全体がふるえている感じが
 します。
2 小野寺 夢を託されたほどの友人に先にいか
 れてそれを受け止められずにいる己の心境を
 秋ふるえとした真情は 深い哀しみの共感を
 おぼえます。私もこの夏場に失った友人の意
 思をおもうと自分もまた友人に夢を託してい
 つ逝くともしれず古希とはそういう年齢にさ
 しかかったのですね。明日は我が身なのだと
 おもうと今の命に感謝です。
(061) 日暮れても 金木犀の 残り香が             志方03
(062) 赤ワイン描きし 朋は 旅立ちぬ             小野寺10
(063) 満月に 吠える悲しさ 古希の虎             森杜瑯02
(064) 秋桜や小箱近づく無人駅                 治部03
1 柳町
2 中津川  列車を小箱と表現しているのでしょ
  う。無人駅の様子が浮かびます。
(065) 蒼き富士坂から望む秋の暮れ               深瀬16
(066) 野辺送り 朋なき空に 赤蜻蛉              小野寺09
1 豊 「朋なき」という句がほかにもあります
 が、同じ作者でしょうね。亡くなった方はよ
 ほどの親友だったのでしょう。赤蜻蛉はその
 人の魂かもしれません。
2 深瀬 亡くなった人が、なにかに生まれ変わ
 り、身近にただよっているのではないかとい
 う感覚は、普遍的なものだと思います。夕焼
 け小焼けの赤蜻蛉もなにかさみしい感じです。
3 治部
(067) 虫集く一人深夜の露天風呂                治部04
1 深瀬 深夜の露天風呂に入っていると、ぽつ
 んとついた常夜灯に虫がたくさん集まってい
 る。あまり体験することのない風景でもあり、
 印象的です。
(068) 水澄みて 流転の底に わが生命(いのち)        小野寺04
(069) 黒雲の上は茜の雲の峰                  橋本06
(070) 闇や猫の怪しき気配して                 治部01
1 秋元
(071) 電線をよぎって沈む秋夕陽                深瀬17
1 豊 電線と夕陽の組み合わせに惹かれました。
 秋のもの寂しい夕方の風景をユニークな視点
 でとらえています。
(072) 秋さやか 天まで透けて 渡り鳥             志方06
1 吉良  昔子供の頃は空がきれいで渡り鳥の群
  れをよくみました。懐かしい句です。 
(073) 終活を主業と決めて秋の声                深瀬12
(074) 秋蝶の 羽たたみおり 納屋の屋根            小野寺13
1 齋藤
(075) 古希過ぎて ふる里目指す 鰯雲             森杜瑯01
1 齋藤
2 深瀬 鰯雲というのは、見ていて不思議に思
 います。加藤楸邨の「鰯雲人に告ぐべきこと
 ならず」は有名ですが、鰯雲には、人の心の
 奥底を揺り動かすなにかがあるように感じま
 す。
(076) 大和路や古寺の鐘聞く秋の旅               豊05
1 柳町
2 志方
3 橋本  奈良はやはり秋が似合いますか。
4 秋元
(077) いわし雲 宙(そら)の蒼きに 鳶(とび)が鳴き     小野寺07
(078) 彼岸花 紅に魅かれて 畠中を              志方05
(079) 図書室の窓辺に潜む秋の声                深瀬13
------
 追記
 選句にあたり、下記のコメントが寄せられています。ご参考までに掲載させ
ていただきました。
・下記の7 作を選句しました。楽しませて頂いておりますが、素人である私が
自分の好みのまま皆様の労作から選句させてもらっていることに多少の申し訳
なさを感じております。 (齋藤宏文さん)
・秋の風情が見事に詠み込まれている秀句ばかりで、真に選ぶのに苦労しまし
た。以上ですが、半分以上の句が素晴らしいと思います。 (志方さん)
                                   

2017年8月29日火曜日

七句会 第二十一回目のネット句会 七句会交差点 第02号

 七句会 
 第二十一回ネット句会参加各位
 第二十一回の選句結果を踏まえて、感想や自句自解、等をおよせいただき、
たいへんありがとうございました。
 およせいただいたものを、名前順に、ほぼそのまままとめてお届けすること
にします。今後のやり方に、ご意見、等ありましたら、よろしくお願いします。
 今回は、七句会の案内を出した方、全員にご参考までにお送りすることにし
ました。
 七句会のweb  http://nanaku-haiku.blogspot.jp/ には、掲載したいと思っ
ています。
  今後とも、よろしくお願いいたします。
  深瀬 (事務方)


(1) 小野寺さんの自句自解
078 打ち水を 避けて 町屋は暮れにけり
 豊さんが解説してくださった通り
 京都の町は夏が暑く、打ち水が風物詩です。
 昼間の暑いさかりの 打ち水を避けて 夕暮れが
 迫ってきている。白っぽい暑さが 気がつけば
 夕暮れに変わってきている、長い歴史に裏打ちされた
 京都の町屋は 時間の移ろいとともに絵になる風景でもあります。
090 宵宮に 浴衣のひとの 薄化粧
 
 深瀬さんが的確に解説してくださったとおり
 宵宮は祭りの前夜祭のようなもので氏子は粛々と
 装束を清めております。静粛な佇まいの宵闇が迫る中に
 浴衣の君は 薄化粧なのです。志方さんの想像の通り
 薄化粧が 美しく 蠱惑的なのです。。
054 陽だまりに 影落としけり 夏の蝶
 
  少年の頃 蝶の採集が好きで宝石のような緑シジミや
  ルリタテハ。オオムラサキなどを追いかけておりました。
  夏のひだまりにいた 瑠璃色をしたルリタテハの濃い
  影は今でも蝶を追いかけた日の心象風景です。
058 夕菅や 時雨て荒れ野 夏木立
  学生時代に行った尾瀬の風景です。
  夕菅草が 荒れ野に一面に咲き乱れ
  時雨た荒れ野の向こうに 夏木立がおぼろに見え
  かっこうが啼いておりました。
060 藍染の浴衣着流し 乱れ髪
  
  宵宮に行った浴衣のひとは藍染の浴衣を着流して
  おり、黒髪が風に吹かれてほつれておりました。
  
062   佇めば 闇を蛍が夢をひき
   少年の頃 岩手の釜石の田舎の蛍は平家蛍で小さい光なのですが
   生まれ故郷の母の田舎の福岡の東郷という田舎の蛍は
   源氏蛍で 光がつよく大きいのです。
   まるで夢のなかを ほたるの 強い光が流れていくような
   心躍る 風景でした。蛍の光と夢を引くとしたものです。
066  夕焼けに梅雨あがりたり 草ひばり
   東北の田舎町で梅雨が上がるころ 夕焼けの
   草むらで まるで夏がくるのを告げるように
   草ひばりが啼いていました。
   草ひばりの囀りは梅雨明けの時の自然の声でもありました。
068   夏蝶の 羽たたみおり 石清水
   少年のひ 宝石のように輝くミドリシジミを追って
   クヌギの高い木々をさがしつかれて 石清水のある
   沢の岩陰にたどり着き あのミドリシジミが羽をたたんでいるの
   を見たときの心臓の鼓動は 今でも石清水の冷気と
   ともに強く心を揺さぶります。
   季重なりですが ご容赦。
072 海染めて ゆらりと眩しあかね雲
  雲は光を呼吸する、という詩を作ったほど雲は生きて
  呼吸するように思います。静寂のなかで ゆっくりと
  海一面をあかく染めて落ち行く落日は 大自然がおりなす
  一幅の画でもあります。
074 とほき日の 青き匂ひや 栗の花
  都会育ちの人にはわかりにくいかもしれません。
  蝶を追って山野を駆け巡った少年時代
  一面の栗畑に出くわしたときに かいだ
  栗の花の むせかえるような強烈な匂いは
  男がオスとして人生を生きていくための匂いでもありました。
  東北地方では男の子が生まれると 栗の木を植える
  風習があります。人生の荒波を乗り越えられるように
  との先祖からの贈り物でもありました。
  今万感の想いをこめて 栗の花の句をつくりました、
 
(2) 中津川さんの自句自解、等
私の句が6点句となって驚いています。兼題 汗 への投句が少なかったこと
がこの結果になったのでしょう。
深瀬さんの5点句の 手にもつ鎌に汗ひかり の表現が素晴らしく感心してい
ます。
 背の汗に 峠の風や 富士仰ぐ
 7月の初旬に東海道での左富士で有名なさった峠を歩きました。
坂道を登り切った峠でリュックをおろして小休止した時に、背中にかいた汗が
吹いてきた風にスーッと引いた感じがしました。
 最後の5文字は「左富士」、「富士遥か」、「富士仰ぐ」などいろいろ考え
ましたが、高さ日本一の富士で仰ぐとしました。
 花火に関しては隅田川のような大規模なものから、線香花火の手花火まで、
また景観や見物の人の様子まで幅広く、選句には大変迷いました。

(3) 森杜瑯さんのコメント
深瀬さん
 先週、家内と四国松山に行って来ました。松山は正岡子規の出身地らしく、
俳句を作るのが盛んです。提示してあった俳句の中で、私が気に入った句を一
つ。
「観念の眼を閉じており 春の夢」
俳句仲間は、お互い、80歳の加山雄三を目指して、頑張れる句を創りましょう


(4) 豊さんの自句自解、等
○最高点句「背の汗に 峠の風や 富士仰ぐ」について
 最初にこの句を読んだとき「富士仰ぐ」という表現に引っかかったので、選
びませんでした。
 しかし、選んだ人たちの鑑賞文を読んでいるうちに、なるほどいい句だな、
と思い直しました。
 私の読みの浅さを反省した次第です。
 「富士仰ぐ」という言葉を他の言葉に変えられないかと考えましたが、やは
りこれしかないようです。
○自句自解 「 吊り橋の汗も引っ込む高さかな」
 この句は最初は「吊り橋の冷や汗高所恐怖症」でした。私は高所恐怖症なの
で、深い谷を渡る吊り橋は苦手です。
 吊り橋の下を見ると怖くて、それまで山を歩いてきた汗が引っ込んでしまう
、ということを表現したかったのですが、十分に伝え切れていなかったようで
す。
○自句自解 「紙中より動くものある曝書 (ばくしょ) かな」
 曝書とは、本を虫干しすることです。本棚にしまってあった本を天気のいい
日に虫干ししたら、ページの間から小さな虫が出てきた、という意味です。
 動くものは必ずしも虫とは限りません。かつて愛読していた本の思い出が久
しぶりによみがえってきた、という解釈も成り立ちます。
 選んでくれた方はそれをわかっていただけたたようで、うれしかったです。

(5) 深瀬の自句自解、等
  花火は、身近なようでいて身近でない感じがして、想像で作ったという感じ
です。
  この歳になると、終着に近いこれまでの人生を、一瞬の華やかさの後、闇に
消えていく花火に重ね合わせたりしたくなります。
・ぽとと落ち線香花火や闇の中
・ひゅうどんぱっ来し方見れば花火如
・鎮魂の花火に気持ち重ねけり
・圧巻の花火の後の無の世界
  また、サラリーマン時代に組織の目標管理に追われ、花火どころではなかっ
たことを思い返しました。
・PDCA抜け出し花火しみじみと
 その他、下記のような感じです。
・鉄橋の電車にバンザイ花火かな (多摩川の鉄橋あたりを想像しました。)  
・寝たきりの母花火聞き目は遠く (聴覚は最後まで残るそうです。)
・両国の橋と花火に小舟群れ (浮世絵のポスターを見て。)
・妻とお茶ビルの影から花火咲く (全くの想像です。)
・三歳児花火持つ手の緊張し (孫が三歳。自分の子供のころと重ねて。)
  汗は、暑さから身を守る生理的なものですが、なにかと真剣に向き合う姿勢
を象徴するものにもなっていると思います。そこで、
・落ち武者の汗拭く顔に無念満ち
・老農の手にもつ鎌に汗ひかり
・アマゾンの裸族弓持ち汗耐える
を作りました。
  最近の都心の電車は冷房の効きすぎではと思うこともあります。
・電車乗り突き刺す冷気汗拭う
 雑詠は、下記のような感じです。
・ひしゃく持ち清水に並ぶ山茶会 (山裾の茶会と清水の取り合わせ。)
・煌めいて清水に揺れる雲と山 (こんこんと湧く清水を想像して。)
・枝豆のみどりさやけし茹であがり (茹で上がりの枝豆の美しさ。)
・枝豆のぺしゃんこふっくら指迷ひ (高級品でないためか。)
・囲碁の後酒に枝豆笑顔満ち (囲碁の殺すか殺されるかと後の世界の対比。)
・怪談も加計森友に席ゆずり (いまだに真相はよく分からない感じです。)
  その他
  俳句とtwitter について
  最近、ネット上のtwitter によって短文で言いたいことをきらくに言うとい
う行為が流行しています(*) 。一方、俳句は短文であっても、そこに自分の美
意識や深層記憶を、ある程度普遍化し圧縮凝縮するというプロセスが入ってい
ると思います。
  日本の和歌や俳句は、こうした一種の気持ちの昇華活動が、ことばの選択を
伴いながら、行われてきたのではないかと思います。連句のような世界とは別
に、建設的なコミュニケーション手段としての俳句によるtwitter 的やりとり
とか可能なのか、少し気になります。
  (*) アメリカ大統領は、施政方針をtwitter で表明し、中国では党方針の妨
げとなるtwitter の削除に追われているようです。



2017年8月14日月曜日

七句会 第二十一回ネット句会の結果です。

 七句会のみなさま
 第二十一回の七句会にご参加いただきたいへんありがとうございました。
今回の選句結果をご報告いたします。
  6 点句
(041) 背の汗に 峠の風や 富士仰ぐ            中津川
 5 点句
(048) 老農の手にもつ鎌に汗ひかり             深瀬
 4 点句
(004) 圧巻の花火の後の無の世界              深瀬
(024) 三歳児花火持つ手の緊張し              深瀬
(029) はかなさを 誰と競うか 手花火や          宮澤
(031) 隅田川 時空を超えし 江戸花火           吉良
 3 点句
(013) 五尺玉終の花火か咲きほこる             柳町
(017) ぽとと落ち線香花火や闇の中             深瀬
(032) 寝たきりの母花火聞き目は遠く            深瀬
(078) 打ち水を 避けて 町屋は 暮れにけり        小野寺
(090) 宵宮に 浴衣のひとの 薄化粧            小野寺
 2 点句
(008) 縁台に夜空見上げてかき氷              秋元
(014) 夏の湖 (うみ) 天空の花 舞い落ちる         中津川
(021) 花火舞う 同心円の 点描画             宮澤
(039) 額汗たわわに成りて夏野菜              秋元
(042) 電車乗り突き刺す冷気汗拭う             深瀬
(054) 陽だまりに 影落としけり 夏の蝶          小野寺
(058) 夕菅や 時雨 (しぐれ) て荒れ野 夏木立       小野寺
(060) 藍染の 浴衣着流し 乱れ髪             小野寺
(062) 佇めば 闇を 蛍が夢をひき             小野寺
(066) 夕焼けに 梅雨 (つゆ) あがりたり 草ひばり     小野寺
(068) 夏蝶の 羽たたみおり 岩清水            小野寺
(069) 紙中より動くものある曝書 (ばくしょ) かな      豊
(072) 海染めて ゆらりと眩し あかね雲          小野寺
(074) とほき日の 青き匂ひや 栗の花           小野寺
(083) 酷暑暮れ蜩の声澄み渡る               橋本
  下記に、選句表に、各句の右側に作者名、および、その下に選んだ人の名前
とコメント (追番付き、順不同、敬称略。) を付したものを添付します。
  次回については、10月上旬ころにご連絡したいと思っていますので、よろし
くお願いいたします。やり方、等について、ご意見がありましたら、ご連絡を
いただきたく、よろしくお願いいたします。
 事務方から、以下、ご連絡、ご依頼です。
(1) 選句参加者
 今回の選句には、下記の13名が参加しました。
  秋岡さん、秋元さん、小野寺さん、吉良さん、志方さん、治部さん、中津川
さん、橋本さん、宮澤さん、森杜瑯さん、柳町さん、豊さん、深瀬。
(2) 今回の句会の結果を踏まえた自句自解、感想、等の募集について
  今回の句会の選句結果を踏まえて、各自、表明しておきたいこともあるので
はないかと思いますので、自句自解、感想、等、なんでも結構ですので、募り
たいと思います。一応、期限としては8 月28日とし、事務方にメールでいただ
き、それを七句会の下記のweb に掲載することにしたいと思います。
 http://nanaku-haiku.blogspot.jp/
  これまで、句会の後、勉強会としての集まりを企画していましたが、参加者
が少ないこともあり、改めることにしました。集まっての勉強会も適宜、行い
たいとは思っていますが、よろしくお願いします。
  2017.08.14
      代表   橋口侯之介 (休会中)
      顧問  豊  宣光
      事務方 深瀬久敬


    兼題  花火
(001) 手花火や 星が飛び出す 揺らぐ玉          宮澤03
(002) 船めがけ 襲い落つごと 大花火           中津川04
1 吉良  火の粉が舞い降りる状況が実感され
 ます。
(003) 漆黒に大輪の花儚かなしや              秋元02
(004) 圧巻の花火の後の無の世界              深瀬10
1 森     
2 宮澤    あんまり出来が良いと燃え尽きてし
  まうので、いつも手を抜いています。
3 志方    (029) とともに、花火のあとの虚無
  感が上手く表現されている
4 治部   
(005) 漆黒の 闇を照らすや 大花火            吉良02
1 秋元   
(006) 花火師のまとふ危険に近寄らず            豊02
1 中津川 
(007) 夏花火 夜空に広げし 万華鏡            吉良05
(008) 縁台に夜空見上げてかき氷              秋元03
1 中津川 
2 治部   
(009) 夕食もそこそこ花火に走る子ら            橋本01
(010) ビル街に 音響かせて 花火あげ           吉良04
(011) 鎮魂の花火に気持ち重ねけり             深瀬07
(012) 花火見る娘の瞳に映る華               秋岡02
1 小野寺  娘の瞳に写る花火の華はそのまま大
  切な娘への愛情となって清々しい。
    終活中の我が身をかさねてみました。
(013) 五尺玉終の花火か咲きほこる             柳町02
1 豊      花火大会の最後に五尺玉があがった
 光景でしょうか。「咲きほこる」がいいです
 ね。
2 小野寺  花火は己の人生そのものかもしれま
 せん。古稀にもなればその哀感は共鳴できま
 す。
3 深瀬    終活ということばを使う世代になっ
  たことを改めて思いましたが、これまでの生
  き方を振り返り、静かに納得している雰囲気
  がいいと感じました。
(014) 夏の湖 (うみ) 天空の花 舞い落ちる         中津川02
1 吉良  湖に映る花火が美しく表現されてい
  ます。
2 橋本  絵や写真を超える表現、巧いです
(015) 両国の橋と花火に小舟群れ              深瀬06
1 秋元   
(016) 田舎町花火も間延びして上がり            橋本02
(017) ぽとと落ち線香花火や闇の中             深瀬02
1 吉良  線香花火が落ちる「ぽとと」が効い
  ています。
2 宮澤    僕のはすぐ落ちましたけど、君のは
  最後までよく頑張りました。
3 豊      「ぽと」の擬音語がきいています。
  「落ち」よりも「落つ」のほうがよかったの
  ではないでしょうか。
(018) 花火師の 魂打ち上げ 夏の夜            吉良01
(019) 鉄橋の電車にバンザイ花火かな            深瀬01
(020) 大花火開く下行く屋形船               豊01
(021) 花火舞う 同心円の 点描画             宮澤01
1 柳町   
2 深瀬    同心円の点描画という表現に説得力
  を感じました。花火師のそれなりの工夫のた
  まものなのだと思います。
(022) PDCA抜け出し花火しみじみと           深瀬05
(023) 大輪の花々競う 夏夜空               中津川03
(024) 三歳児花火持つ手の緊張し              深瀬09
1 吉良  初めての花火をもつ子供の様子がか
  わいい。
2 秋岡    情景が浮かんできて思わず微笑んで
  しまう句です。
3 宮澤    火を点ける、おじいちゃんも緊張し
  ています。
4 小野寺  可愛い孫に花火をさせる日常的な何
 気ないまなざしが自然に表れてます。
(025) せがまれて孫の手をとる線香花火           柳町01
(026) 静寂の 夜空を破る  大花火            吉良06
1 豊      まさにその通り。それまで静かだっ
  た空に大花火が開き、やがてまた静寂の空に
  戻る。観客も拍手喝采でしょう。
(027) 妻とお茶ビルの影から花火咲く            深瀬08
(028) 涼しげに遠見花火の夏の夜              秋元01
1 深瀬    かなり季重なりの印象ですが、遠く
  の花火を、ひとりしずかに見入っている雰囲
  気にひかれました。
(029) はかなさを 誰と競うか 手花火や          宮澤04
1 中津川 
2 志方    (004) とともに、花火のあとの虚無
  感が上手く表現されている
3 柳町   
4 小野寺  線香花火のはかなさをじっとみつめ
 る作者の心がゆれております。
(030) 起つ歓声 バケツめがけて 庭花火          中津川01
(031) 隅田川 時空を超えし 江戸花火           吉良03
1 秋岡    伝統の隅田川の花火、江戸時代から
  続いているのですね。東京勤務時代は見るこ
  とがなかったです。
2 秋元   
3 橋本  
4 治部   
(032) 寝たきりの母花火聞き目は遠く            深瀬04
1 吉良  今は花火を見に行く元気はないので
  しょうが、遠い思い出として目の前に花火が
  見えるようです。
2 宮澤    遠い記憶、心眼で壁の向こうを見て
  いるのでしょう。
3 小野寺  寝たきりの母は花火を観ることはか
 なわないけれども音で花火を観ていると老い
 た母への思慕を感じます。
(033) 遠く咲く 花火の輪の後 ドンと鳴る         宮澤02
(034) ひゅうどんぱっ来し方見れば花火如          深瀬03
1 柳町   

   兼題  汗
(035) 吊り橋の汗も引っ込む高さかな            豊04
(036) 一汗に身心軽し散歩かな               橋本03
(037) アマゾンの裸族弓持ち汗耐える            深瀬14
(038) 恥かいて 汗をかきかき 頭掻く           宮澤05
1 治部   
(039) 額汗たわわに成りて夏野菜              秋元04
1 宮澤    よく頑張った。さて誰に配ろうか。
2 柳町   
(040) ロシア行く準備に追われ玉の汗            秋岡01
(041) 背の汗に 峠の風や 富士仰ぐ            中津川06
1 吉良  若い頃の登山を思い出します。
2 森     
3 橋本  癒やされる瞬間、これがあるから登
  る
4 治部   
5 小野寺  峠を越えてきた向こうに富士を仰ぐ
 と上り来た道にも風も風が吹き疲労が視覚へ
 と移ります。
6 深瀬    雄大な夏の景色のなかに、なにか清
  らかな風情と格調が感じられました。
(042) 電車乗り突き刺す冷気汗拭う             深瀬11
1 志方    猛暑の実感
2 柳町   
(043) ほとばしる汗の若さや甲子園             豊03
(044) 落ち武者の汗拭く顔に無念満ち            深瀬12
1 中津川 
(045) 甲子園 ひたむきプレーに 目から汗         宮澤06
(046) 汗と涙と 甲子園遠く チアガール          中津川05
(047) 深いラフ汗かき出すもピン遠く            橋本04
1 秋岡    何かいかにも汗が出てきそうな状況
  ですね、しかもまだピンが遠くに見えるとは
  ・・・お疲れ様です
(048) 老農の手にもつ鎌に汗ひかり             深瀬13
1 秋岡     "鎌に汗ひかり" は何か黙々と野良
  作業に打ち込むきりりとした姿が伝わってき
  ます。
2 中津川 
3 豊      「汗」の句の中で一番ユニークな視
  点がでていました。完成度も高いです。
4 橋本  
5 柳町   

   雑詠、川柳
(049) 白南風 (しらはえ) を孕みて 故郷 (くに) の海ひかり。小野寺09
(050) すさまじき眠気吹き飛ぶ蝉の声            秋岡07
(051) 梅雨空に タイガー吠えて つきを呼び        森01
1 柳町   
(052) 栗の花 匂ひにむせて 夏至が過ぎ          小野寺01
(053) 猛暑日や バテバテ犬の 散歩道           中津川07
1 秋岡    小生も犬の散歩をよくするのですが、
  帰り道は本当に歩きが遅くなり強引に引っ張
  らないと帰り着きません。こちらがバテテし
  まいますが。
(054) 陽だまりに 影落としけり 夏の蝶          小野寺15
1 宮澤    音もなく、陽だまりの譜面に音符が
  舞います。
2 豊      68番にも夏蝶の句がありますが、お
  そらく同じ作者ではないでしょうか。68番も
  きれいな句ですが、惜しむらくは「夏蝶」と
  「岩清水」がともに夏の季語なので、こちら
  を選びました。
(055) 芝刈りを妻と二人で夏の朝              秋岡04
1 豊      何でもない日常を詠んだ句ですが、
  仲の良い夫婦の関係が想像できます。素直な
  作り方がいいと思います。
(056) 水打ちて 静けき街や 石畳             小野寺05
1 秋元   
(057) 薫風 故郷 (ふるさと) 運び 胸ゆする        森03
(058) 夕菅や 時雨 (しぐれ) て荒れ野 夏木立       小野寺20
1 志方    夏木立をうまく表現されていますね。
  しぐれや夕菅は露払いですかね
2 柳町   
(059) 怪談も加計森友に席ゆずり              深瀬20
1 橋本  やはり闇に消えていくのでしょうか
(060) 藍染の 浴衣着流し 乱れ髪             小野寺02
1 秋元   
2 柳町   
(061) あでやかな 君の背中に 花菖蒲           森02
(062) 佇めば 闇を 蛍が夢をひき             小野寺08
1 森     
2 秋元   
   白い三角形の天蓋を額に付けた初老の男が真夜中にな
  ると、麻布十番街を徘徊している
(063) 雷雲に うかぶ天蓋 彷徨 (さまよ) えり       森04
1 深瀬    選句にかなり躊躇しましたが、冥土
  に旅立つときもそう遠くはないという思いが、
  なにか突然身近に現れた異界によって突きつ
  けられた感じがしました。
(064) 水澄みて おの子遊べり 眼にひかり         小野寺12
1 深瀬    水澄むは秋の季語だと思いますが、
  真夏に元気に遊び回る子どもたちの眼の輝き
  もすごいと思います。孫二人が男子のせいか?
(065) 囲碁の後酒に枝豆笑顔満ち              深瀬19
(066) 夕焼けに 梅雨 (つゆ) あがりたり 草ひばり     小野寺13
1 志方   
2 柳町   
(067) 素人の義父が作りし青西瓜              秋岡05
(068) 夏蝶の 羽たたみおり 岩清水            小野寺11
1 吉良  岩陰の清水の涼しさを感じます。
2 中津川 
(069) 紙中より動くものある曝書 (ばくしょ) かな      豊06
1 秋岡    面白い句ですね、不要な本も沢山あ
  りますがたまには虫干しをしないといけませ
  ん。
2 橋本  したことはありませんが、動いたも
  のが気になります
(070) 雷雲に 光りて深し 山の峰             小野寺17
1 橋本  
   こんな人達に負けるわけにはいかないと罵られたこん
  な人々のカウンターパンチ、政権・与党からダウン (支
  持率急低下) を奪う
(071) ダウン取るこんな人達のカウンター          橋本06
(072) 海染めて ゆらりと眩し あかね雲          小野寺04
1 志方   
2 柳町   
(073) ひしゃく持ち清水に並ぶ山茶会            深瀬15
(074) とほき日の 青き匂ひや 栗の花           小野寺21
1 森     
2 豊      栗の花には独特の香りがあります。
  まさに、若かりし自分の10代の男の匂い。
  それを巧みに表現しました。
(075) 枝豆のぺしゃんこふっくら指迷ひ           深瀬18
(076) 氷雨降る 雲の動きや 夏木立            小野寺03
(077) 羅 (うすもの) や女体の形透けて見え         豊05
(078) 打ち水を 避けて 町屋は 暮れにけり        小野寺06
1 秋元   
2 中津川 
3 豊      夏の京都は暑い。打ち水は京都の夏
  の風物詩です。しかし、それを「避けて」町
  屋に「夕暮れ」がくる。時間の経過を見事に
  表現した、風景画のような句です。
(079) 熱き街ビルの頭上に赤き月              秋岡06
(080) 馬鈴薯の 花 けぶらせて 夏の雨          小野寺16
(081) 煌めいて清水に揺れる雲と山             深瀬16
(082) 葉桜の 繁りて 人に 文 (ふみ) を書き       小野寺19
1 柳町   
(083) 酷暑暮れ蜩の声澄み渡る               橋本05
1 秋岡    段々季節の移ろいが早くなっており、
  もう蜩が鳴き出しているのでしょうか。季節
  を先取りした句ですね
2 小野寺  酷暑の中に蜩の声が余韻となって暮
 れてゆく蜩の音に人生の哀歓を重ねきくおも
 いです。
(084) 宵闇を 待宵草に 蛍飛び              小野寺14
(085) 食べたいね土用の鰻妻の言う             秋岡03
1 宮澤    可愛いのか、嫌みなのか、分かりま
  せん。
(086) 日盛りを 山百合の花 匂ひけり。          小野寺10
(087) 炎天下 桜エビうまし 由比の宿 (しゅく)       中津川08
(088) 蝉しぐれ 墓前に咲きし 月見草           小野寺07
(089) 枝豆のみどりさやけし茹であがり           深瀬17
(090) 宵宮に 浴衣のひとの 薄化粧            小野寺18
1 森     
2 志方    色っぽいですね。想像を膨らましま
  すね。
3 深瀬    宵宮は、前夜祭のようなもので、神
  の降臨を仰ぐため、氏子は身や装束をきよめ
  て備えると聞いています。そこに浴衣の薄化
  粧の女性は、やや艶っぽい感じです。


 付記
 選句とともにお寄せいただいたコメントを、ご参考までに貼付します。
・秋岡さん
   "花火" については、美しさに共感するというより何か新鮮な別の視点
でとらえておられる句に共感しました。
   "汗" は中々俳句になりづらい季語だなあと思いながらも選句しました。
・豊さん
 今回は兼題「花火」にいい句が多かったように思います。それに比べて
「汗」は少しむずかしかったようですね。
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2017年5月19日金曜日

七句会 第二十回 ネット句会 七句回交差点 第01号

 七句会                               
 第二十回ネック句会参加各位                     
                                   
 第二十回の選句結果を踏まえて、感想や自句自解、等をおよせいただき、た
いへんありがとうございました。                    
 はじめてのことでもあり、およせいただいたものを、名前順に、ほぼそのま
ままとめてお届けすることにします。今後のやり方に、ご意見、等ありました
ら、よろしくお願いします。                      
 メールでお届けするのは、投句または選句に参加された方に限りました。 
 七句会のweb  http://nanaku-haiku.blogspot.jp/ には、掲載したいと思っ
ています。                              
                                   
  中津川さんのご提案により、当報告名を「七句会交差点」としてお届けする
ことにしました。                           
  ご参考として、作品集として、投句を作者毎にまとめたものも添付しました。                                  
 お届けするのが、やや遅くなり、申し訳ありません。          
  今後とも、よろしくお願いいたします。                
  深瀬 (事務方)                            
                                   
                                   
                                   
○秋岡稔                               
                                   
 小生思わぬ6点句を頂き驚いています。                
 当句は、家の裏に大きな公園があり犬を連れてよく散歩をしますが、春にな
ると急に木々が芽生え、草が育ち始めますがそんな時にスーと出てきた句です。                                  
 実際は名前もあるのでしょうが、可憐な小さな花を咲かせている名前の知ら
ない草が結構あるんですね。                      
 6名の方に共感して頂きよかったです。                
                                   
 2点句で熊本に行ったときの句が2句共感して頂きました。       
 娘が熊本におり、4月に家内と小旅行をした時につくったものです。   
 熊本城の悲惨な状況をどう伝えるのがいいのかちょっと考えましたが、その
ままの風景でした。                          
                                   
 ”春雨や小さき傘にふたりして”は、家内の小さな傘に入って春雨に濡れた
ときの句ですが、色んなことが想像が出来る句(若者から老夫婦まで)になっ
たなあと思った句です。                        
                                   
 黄水仙の句は、水仙の花が本当に笑い顔で自分に微笑んでくれているように
見えたのを自然詠んだものです。                    
 じっくり自然を見ていると色々楽しい風景があるものだと思いました。  
                                   
 ”十八の苦き思いでサクラチル”はこのカタカナの電文の”サクラチル”に
苦さが思い出となって出てくるもので、お一人でも共感して頂ける方がおられ
てよかったです。                           
                                   
 私は、”あたたかさ歩幅も広く上着とり”と”春眠の妻起きたるを遠く聞き
”の2句が春のこの時期の日常を詠んだ句として特に共感しました。    
                                   
                                   
○小野寺健                              
                                   
 5点句                               
 春雷を聞きにし故郷の 駅とほく。                  
                                   
 父の仕事の関係で生まれは九州の八幡ですが育ったのは岩手の釜石 三陸の
田舎町です。                             
 故郷は 二つありますが物心ついてからの町が記憶の原点です。中学で東京
に出るとき丁度春先で俄かに駅舎が暗くなり遠く稲光を観た記憶が下敷きにあ
ります。今横浜で観る春雷は一瞬で、この記憶の時の自分、不安を抱えながら
昏い駅舎でみた稲妻の光景となって鮮明に蘇ります。           
                                   
 4点句                               
 1)漆黒の闇鎮まれり 白牡丹                     
 画を描くので画材として牡丹を育てております。紅色の牡丹よりも白牡丹は
迫力があります。真夜中に 暗闇を圧倒して 白く咲く牡丹は暗闇を睥睨し 
生きている命の力を感じさせてくれます。                
                                   
 2)あぜ道を ゆきし人あり 蓮華草                  
 あぜ道に所せましと咲く 蓮華草ですが一部分轍の跡とともに踏みしだかれ
ていて この畦道を朝もっと早い時間に 人が歩いてとおったのだ、とわかり
ます。少年の頃の田舎のあぜ道の鮮やかな蓮華草の記憶です。       
                                   
 3点句                               
 1)石楠花や 束ねし髪の風に揺れ                   
 学生時代 一緒に山歩きしながら 峠道を登り切った時薄紅の石楠花が見事
な花をつけていてふと振り向くと 一陣の風が吹き、束ねられたみどりの黒髪
が 風にゆれてそれをかき上げた白い指先が美しかった。         
 どれ程自分が駆け寄ってかき上げたいとおもったことか、、、      
 そういう時代がありました。今年咲いてくれた庭の石楠花からの記憶のひと
こまです。                              
                                   
 2)菜の花の 岬遥かに 海の青                    
 三陸のリアス海岸の断崖の前に遅い春を謳歌するように見事な菜の花畑がひ
ろがり、その向こうに かすみながらも群青の蒼い海が見え隠れする、異次元
の絵のような光景でした。                       
 春の頃は 東北の海は寒々として菜の花の黄色が一層記憶の網膜をうづめ尽
くしました。                             
                                   
 2 点句                               
 1)ひかり降る 深山の里にさくら舞う                 
 散る桜の花は滅びゆくものの象徴のようでもありますが自分は生命の輝きを
感じます。                              
 山深い里に散るさくらは さながら光の化身のようでひかりを感じさせる 
自然の力強さを感じました。                      
                                   
 2)海風を 孕みて 浪に桜散る                    
 三陸のリアス海岸の断崖に咲く桜が怒涛の飛沫に光のように溶け合って散っ
てゆく様を 少年時代の心象風景としてもっております。 この感覚は寂寥で
はなく ダイナミックな強い自然の営みであり、海風を孕むとした表現は そ
の思いからです。                           
                                   
 3)深山を夜風 渡りて 山桜                     
 山桜は山奥に人しれずひっそりと咲いており花は皆そうですが 誰の為でも
なく、じっと咲いております。                     
 学生時代によくいった京の鞍馬の山奥に咲く山桜の光景です。光があるわけ
でもないのに 静かに咲いている桜には圧倒されるものがありました。   
                                   
                                   
 投句した俳句は自分の手を離れた作品ですから後はそれを共感する人が作者
の意図とは別に 自由に選句しますら選ぶか選ばないかは その人の感性によ
ります。                               
                                   
 しかし不思議と自分の感覚や想いが込められたものを幾人かの方が選んでく
ださるのは 大変嬉しくもあり俳句の面白さでもあります。        
                                   
 感動を言葉にして普遍性をもたせるという作業は間違いなく普段からものを
観る目を養いますし、日本語の美しさを学べることはありがたいとおもいます。                                  
                                   
                                   
○治部和隆                              
                                   
 作句情況                              
 電車の中で若いお父さんが子供を抱いています。子供はぼんやりと外を見て
います。                               
 春なのに雨が降っていてなんだかつまらなそうです。          
 抱いた子の目にどんよりと春の雨                   
                                   
 きれいな服を着たお母さんと女の子。そうか今日は入園式なんだ。嬉しそう
な二人のほほが桜色に見えました。                   
 入園式色づく母子のほっぺかな                    
                                   
 目黒川にお花見に行ったのですが、平日なのにものすごい人出でした。桜も
八分咲きで見頃です。すでに散り始めているところもあり、川面を見ると綺麗
に花筏ができていました。なんだかこっちも見てよと言っているようです。 
 目黒川川面も見よと花筏                       
                                   
                                   
○中津川公一                             
                                   
 今回私の句が4点句になるなんて初めてびっくりでした。        
 作った状況を下記します。                      
                                   
 あたたかさ 歩幅も広く 上着とり                  
 私は月1回東海道を歩いています。3月に小田原から三島まで32キロを一
泊で歩きましたが、雨も降りガタガタ震えながら歩きました。       
 翌月4月初めは三島から沼津まで歩きましたが同じ雨でも暖かく上着を脱い
で歩きました。                            
 「春」という兼題で桜や春の花あるいは鳥の声など生き物の句が多くなるの
で何とか生き物でない季語を使って作ってみたいと思いこの句となりました。
 投句した中では自分でも気に入っていて、大変うれしく思いました。   
                                   
                                   
○深瀬久敬                              
                                   
・春眠の妻起きたるを遠く聞き                     
・春の陽に保育園児らそぞろ行き                    
  冬の厳しさが弛んでいく春の気配は、齢とともにありがたく感じます。  
                                   
・桜見て生きてる意味をふと思ひ                    
・桜見る今年のわれの違い問ひ                     
・たがために桜咲き散る問ひにけり                   
・花びらの舞い散る景色今年また                    
・満開の桜スマホにとどめけり                     
 咲きだしてから散るまでのほんの僅かな期間の桜の移り変わりに、齢ととも
にやや焦らされる気持ちです。                     
                                   
・花吹雪ゴジラの眼にも涙かな                     
  二物衝撃の句を作ってみよう、と思ったのですが。           
                                   
・桜散る天皇のため虚実あり                      
  この人のためなら死んでも悔いはないとか、そういう心情に憧れもしますが
、むずかしいところだと思います。                   
                                   
・羽田沖機影まばゆき春の空                      
 羽田沖の離着陸する機体を見に、20代のころ、羽田の野原に自転車でよくで
かけました。                             
・遠き日の御殿場合宿春の空                      
 大学1 年の終わりの春休み、柔道部の御殿場合宿がありました。ようやく大
学生活にもなれ、印象に残る合宿でした。                
                                   
・やはらかにひかり湛へし春の雲                    
 あまり深く考えないで作りましたが、別の句会の宗匠から評価していただけ
、また豊さんの選もあり、うれしく感じました。             
                                   
・満を持す冷たき風の木の芽かな                    
・いく億年くり返すかな木の芽吹き                   
 地球上に植物という生命が誕生し、繁栄し続けていることがすごいと思いま
す。                                 
                                   
・雨桜相撲甚句の夜の宴                        
 4月、伊豆の韮山高校で行われた社会人柔道倶楽部の一泊合宿に参加しまし
た。その宴席で、建築会社や信託銀行の人の披露する相撲甚句は、拍子木も入
った本格的なもので、巡業の歌詞とか、感銘を受けました。        
                                   
・駒東の正門想ひ春一句                        
  遅沢先生や大熊先生の車が駐車していました。             
                                   
・エレ内の鏡に頭頂目をそむけ                     
  エレベータの天井につけられた鏡は、頭頂部をよく映します。      
                                   
・葉ざくらに半袖プレイ大厚木                     
・しゃくなげにゴルフ忘れる大厚木                   
 4月の下旬、大厚木CCに行きましたが、その1 ヶ月前のクリアビューGCは凍
える寒さでした。                           
                                   
                                   
○宮澤猛                               
                                   
 始めて4 点句に選ばれたら、その自句自解をということで、戸惑っておりま
す。                                 
《064 》の自句自解としては下記の通りです。              
 川は、切通しと同様に風の通り道になっており、気温、湿度、香りという季
節の雰囲気の変化を運んできます。初春のまだ寒い時でも、ほんの少しの温度
・湿度差と枕丁花等の香りが運ばれて、目に肌に鼻に「もうすぐ春ですよ」と
いう知らせを散歩の途中の目黒川を歩いても教えてくれます。       
 という感じです。                          
                                   
                                   
○豊宣光                               
                                   
 今回の選句結果の感想を送ります。                  
                                   
・最高点句「(033) 野に出でて名もなき草に見入る春」について      
 6人の方が選んでおられるのは、表現されているイメージと作者の心情がわ
かりやすかったからだと思います。もちろん、それはそれですばらしいのです
が、私が選ばなかった理由は最後の「春」という言葉の置き方にやや不満があ
ったからです。このままだと漠然としていて、作者にとってどういう春だった
のかということが伝わってきません。それが表現されていると、なおよかった
のではないでしょうか。                        
 そこで、作者の心情を私なりに解釈して次のように改作してみました。「春
の野にふと見つけたり名無し草」。あくまでも一例です。秋岡さん、すみませ
ん。                                 
                                   
・自句自解「(107) 永遠の熱き魂春の画家」               
 「春の画家」とはどういうことなのか、わかりにくかったかもしれません。
「草間彌生展に寄せて」と前書きがあったら、わかっていただけたことでしょ
う。4月のはじめ、草間彌生展を見にいこうとしたのですが、入場券を買うの
に長蛇の列で、これでは中に入ってもゆっくり見られないだろうと思い、引き
返してきました。もちろん実物を見るのが一番いいのですが、草間彌生の作品
は雑誌やテレビで見ていたので、どういうものかはだいたい知っていました。
今回の展覧会のタイトルは「わが永遠の魂」。その熱い芸術家魂に敬意を表し
て詠んだ句です。                           
 「草間彌生」の文字を入れようとしたのですが、字数が多いのと季語が入れ
られなかったので、こういう形になりました。              
                                   
 以上、長くなってしましました。他の人がどれだけ感想や自句自解を書いて
くれるのかわかりませんが、それを全部WEBにのせるとなると、かなり大変
な作業になるのではないでしょうか。うまく処理する方法を考えたほうがいい
かもしれません。私としては、少なくとも高点句(6点、5点、4点)の人の
自句自解は読みたいのですが。                     
 よろしくお願いします。                       
                                   
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 第二十回  ネット句会  作品集                    
                                   
  秋岡稔                               
・花咲けど無残なるかな天守閣                     
・火の国や城崩れ落ち花風吹                      
・野に出でて名もなき草に見入る春                   
・春の夢うつらうつらと朝寝坊                     
・春雨や小さき傘にふたりして                     
・黄水仙花壇の中の笑い顔                       
・十八の苦き思い出サクラチル                     
                                   
  秋元正宏                              
・店先に春見つけたり菜の花や                     
・満開の花に群れ飛ぶ小鳥たち                     
・満開の梢のメジロ蜜を追う                      
・銀盤の花も散るなり清々し                      
・防災に人集まりて和をつくる                     
                                   
  小野寺健                              
・花吹雪 泣いて故郷をいでにけり。                  
・ひかり降る 深山の里に 桜舞う                   
・夕去りて 白き牡丹の 眠りをり。                  
・薄紅の 牡丹おぼろに 古都は暮れ                  
・春暁や 牡丹の葉裏 ひかり満つ                   
・花筏 泣けとばかりに 春流る。                   
・生命 (いのち) 燃ゆ 古城の堀に 花筏 (いかだ)            
・石楠花 (しゃくなげ) や 束ねし髪の風に揺れ             
・楓萌え 娘の門出 風薫る                      
・春雷を聞きし故郷の 駅とほく                    
・畔路 (あぜみち) を ゆきし人あり 蓮華草              
・花銀杏 けぶりて哀し 夜の雨                    
・芍薬の 芽に朝露の ひかりおり。                  
・菜の花や 群青の海 霞みおり。                   
・菜の花の 岬遥かに 海の青                     
・海風を 孕みて 浪に桜散る                     
・漆黒の 闇鎮まれり 白牡丹                     
・葉桜の 影携えて 月のぼる。                    
・深山 (しんざん) を 夜風わたりて 山櫻               
・暮れてなほ 花新しき 白椿                     
・薔薇の芽の 紅きを洗ふ 雨降りぬ                  
・早暁の 雨にけぶりて 白椿                     
                                   
  小幡敏雄                              
 京都銀閣寺の東山です                        
・樹の中に ウグイスが鳴く 東山                   
・弾む春 古希と遊ぶ 孫娘                      
 奈良吉野です                            
・花吹雪 サクラに溺れる 吉野山                   
                                   
  吉良有二                              
・春を待つ 窓辺に歌う すずめ2 羽                  
・花満ちて フェアウェー芽吹き 春ゴルフ               
・君子蘭 花芽スクスク 春を告ぐ                   
・大都会 屋上集う 春の園                      
・肩車 遠くに見入る 幼き日                     
・成人に タバコくゆらせ 顔染める                  
                                   
  志方洋介                              
・水ぬるみ 花大根に 白き鷺                     
・残雪に 陽ざし残して 影法師                    
・山桜 優しさ同じ 今年また                     
・春霞 思い出枕に さゆり消え                    
・古希迎え 消したい記憶 まだうずく                 
・新緑に 残り桜は 何想う                      
・花散らし 夜来の雨に うぐいすが                  
                                   
 治部和隆                              
・抱いた子の目にどんよりと春の雨                   
・入園式色づく母子のほっぺかな                    
・球児らの悲喜交々と春はゆく                     
・演奏会母校のさくらスウィングす                   
 連チャンで花見をしてきて以上3 句                  
・目黒川かわもも見よと花筏                      
・グローバルな言葉の集い花蓆                     
・集いらの見上ぐる高き山桜                      
                                   
  中津川公一                             
 3月初旬に箱根を歩いて越えました。(2つ)             
・襟すぼめ 箱根路の春 氷点下                    
・湖(みず)ぬるむ 駅伝ゴール 海賊船                
・あたたかさ 歩幅も広く 上着とり                  
・春時雨 湧き水甘し 柿田川                     
 真新しいスーツ姿で親子が入学式                   
・入学式へ スーツ新調 そろい踏み                  
 彼岸に寺にまいり抹茶の接待を受けました               
・草餅におい 父母思う 墓まいり                   
                                   
  野澤宗平                              
・満開を待てぬと出る葉  寒し春                    
・涙目に  くしゃみ鼻水  春一番                    
・春雷に  孫の手をとり  へそ押さえ                  
                                   
  橋本直行                              
・窓開けて春風うたた寝足炬燵                     
・麦畑思い出遠く風渡る                        
・レンギョウの桜に負けじと黄に染まる                 
・喜びが弾ける親子桜咲く                       
・積上げし宮崎の思い出ゴルフ好き                   
                                   
  深瀬久敬                              
・春眠の妻起きたるを遠く聞き                     
・春の陽に保育園児らそぞろ行き                    
・桜見て生きてる意味をふと思ひ                    
・桜見る今年のわれの違い問ひ                     
・羽田沖機影まばゆき春の空                      
・遠き日の御殿場合宿春の空                      
・やはらかにひかり湛へし春の雲                    
・満を持す冷たき風の木の芽かな                    
・いく億年くり返すかな木の芽吹き                   
・満開の桜スマホにとどめけり                     
・雨桜相撲甚句の夜の宴                        
・たがために桜咲き散る問ひにけり                   
・桜散る天皇のため虚実あり                      
・駒東の正門想ひ春一句                        
・花びらの舞い散る景色今年また                    
・花吹雪ゴジラの眼にも涙かな                     
・エレ内の鏡に頭頂目をそむけ                     
・葉ざくらに半袖プレイ大厚木                     
・しゃくなげにゴルフ忘れる大厚木                   
                                   
  藤原徹                               
・ぼんぼりに 夜空に映える 桜花                   
・春うらら 犬もうたたね 無心かな                  
・時めぐり 山々緑に 衣替え                     
・菖蒲畑 命こめ幾有余年 あるじ (主) 待つ              
・モコモコと わきたつ新芽 命の息吹                 
                                   
  宮澤猛                               
・散歩道 川面の風が 春を告げ                    
・薄霞 山の彩り 雉の声                       
・白ワイン 顔も心も 桜色                      
・鶯の 音色いまいち 春はまだ                    
・夢うつつ 入試の苦労で 若返り                   
                                   
 森杜瑯                               
・息子らの 人生道に 春とどけ                    
・困難に 今こそ笑みで 花明けり                   
                                   
  豊宣光                               
・春眠のさめて脳内ほの白し                      
・春の雨汚染土残し流れけり                      
・一〇代の恋の苦さやチューリップ                   
・老害の言い訳ばかり「記憶なし」                   
・永遠の熱き魂春の画家                        
・碁敵と対局終へて桜餅                        
                                   
                                   
                                   
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2017年5月7日日曜日

第二十回 七句会 ネット句会の選句結果のご報告です。

 七句会のみなさま
 第二十回の七句会にご参加いただきたいへんありがとうございました。
今回の選句結果をご報告いたします。
  6 点句
(033) 野に出でて名もなき草に見入る春        秋岡
  5 点句
(013) 春雷を聞きし故郷の 駅とほく         小野寺
  4 点句
(044) あたたかさ 歩幅も広く 上着とり       中津川
(061) 漆黒の 闇鎮まれり 白牡丹          小野寺
(064) 散歩道 川面の風が 春を告げ         宮澤
(068) 畔路 (あぜみち) を ゆきし人あり 蓮華草   小野寺
(094) 古希迎え 消したい記憶 まだうずく      志方
  3 点句
(007) 窓開けて春風うたた寝足炬燵          橋本
(017) 菜の花の 岬遥かに 海の青          小野寺
(045) やはらかにひかり湛へし春の雲         深瀬
(054) 石楠花 (しゃくなげ) や 束ねし髪の風に揺れ  小野寺
(055) 春眠の妻起きたるを遠く聞き          深瀬
  2 点句
(008) ひかり降る 深山の里に 桜舞う        小野寺
(011) 雨桜相撲甚句の夜の宴             深瀬
(016) レンギョウの桜に負けじと黄に染まる      橋本
(018) 桜見て生きてる意味をふと思ひ         深瀬
(025) 水ぬるみ 花大根に 白き鷺          志方
(029) 満を持す冷たき風の木の芽かな         深瀬
(032) 喜びが弾ける親子桜咲く            橋本
(040) 海風を 孕みて 浪に桜散る          小野寺
(046) 時めぐり 山々緑に 衣替え          藤原
(050) 困難に 今こそ笑みで 花明けり        森杜瑯
(052) 花咲けど無残なるかな天守閣          秋岡
(072) 火の国や城崩れ落ち花風吹           秋岡
(081) 深山 (しんざん) を 夜風わたりて 山櫻    小野寺
(088) 抱いた子の目にどんよりと春の雨        治部
(102) 肩車 遠くに見入る 幼き日          吉良
  下記に、選句表に、各句の右側に作者名、および、その下に選んだ人の名前
とコメント (追番付き、順不同、敬称略。) を付したものを添付します。
  次回については、7 月上旬ころにご連絡したいと思っていますので、よろし
くお願いいたします。やり方、等について、ご意見がありましたら、ご連絡を
いただきたく、よろしくお願いいたします。
 事務方から、以下、ご連絡、ご依頼です。
(1) 選句参加者
 今回の選句には、下記の15名が参加しました。
  秋岡さん、秋元さん、小野寺さん、小幡さん、吉良さん、齋藤宏文さん、志
方さん、治部さん、中津川さん、野澤さん、橋本さん、宮澤さん、森杜瑯さん
、豊さん、深瀬。
 齋藤宏文さんは、初参加です。東京工業大学  国際教育推進機構  特任准教
授  博士 (学術) でおられます。科学史、ロシア語を教えられるとともに、柔
道にも励んでおられます。
(2) 今回の句会の結果を踏まえた自句自解、感想、等の募集について
  今回の句会の選句結果を踏まえて、各自、表明しておきたいこともあるので
はないかと思いますので、自句自解、感想、等、なんでも結構ですので、募り
たいと思います。一応、期限としては5 月17日とし、事務方にメールでいただ
き、それを七句会の下記のweb に掲載することにしたいと思います。
 http://nanaku-haiku.blogspot.jp/
  これまで、句会の後、勉強会としての集まりを企画していましたが、参加者
が少ないこともあり、改めることにしました。集まっての勉強会も適宜、行い
たいとは思っていますが、よろしくお願いします。
  2017.05.07
      代表   橋口侯之介 (休会中)
      顧問  豊  宣光
      事務方 深瀬久敬


   1.兼題  春 (春の生活感)
(001) 大都会 屋上集う 春の園           吉良04
(002) 白ワイン 顔も心も 桜色           宮澤03
1 治部
(003) 球児らの悲喜交々と春はゆく          治部03
1 吉良    選抜高校野球は今や春の風物詩とな
 って国民を楽しませてくれます。
(004) 夕去りて 白き牡丹の 眠りをり。       小野寺03
(005) 銀盤の花も散るなり清々し           秋元04
1 治部
(006) 春霞 思い出枕に さゆり消え         志方04
(007) 窓開けて春風うたた寝足炬燵          橋本01
1 秋元
2 齋藤宏 
3 深瀬    火の入っていない(?) 足炬燵でのう
 たた寝というのんびり感が、ひどくなつかし
 く感じられました。
(008) ひかり降る 深山の里に 桜舞う        小野寺02
1 吉良    桜の花びらが光の中で舞い散る様子
 が美しく描かれています。
2 志方    命の息吹きが簡潔に表現されていま
 す。
(009) ぼんぼりに 夜空に映える 桜花        藤原01
1 小幡
(010) 涙目に  くしゃみ鼻水  春一番         野澤02
1 藤原
(011) 雨桜相撲甚句の夜の宴             深瀬11
1 中津川
2 小野寺  雨の夜桜相撲甚句の宴がしみじみと
 味わい深い。
(012) 春の雨汚染土残し流れけり           豊02
1 橋本    福島原発汚染、幸い一部の弱い春の
 雨で済みましたが、、、
(013) 春雷を聞きし故郷の 駅とほく         小野寺10
1 森
2 豊      故郷で聞いた春雷がよほど印象深か
 ったのでしょう。いまは同じ春雷を遠く離れ
 た場所で聞いている、という感慨でしょうか。
3 中津川
4 野澤    東京生まれの東京育ちにとって「故
 郷」は羨ましい響きがする言葉です。
5 齋藤宏 
(014) 息子らの 人生道に 春とどけ         森杜瑯01
(015) 演奏会母校のさくらスウィングす        治部04
(016) レンギョウの桜に負けじと黄に染まる      橋本03
1 吉良    レンギョウが「負けじ」と咲いてい
 る様子が面白いと思います。
2 秋岡    春は桜のピンク色が主役ですが、結
 構レンギョウ等の黄色も目につきます。
(017) 菜の花の 岬遥かに 海の青          小野寺15
1 志方    色彩の鮮やかさが素晴らしい
2 豊      菜の花の咲いている岬の向こうに青
 い海が見える。菜の花の黄色と海の青色の美
 しい取り合わせです。
3 深瀬    菜の花の黄色と海の青色の対比に絵
 画的なインパクトを感じました。
(018) 桜見て生きてる意味をふと思ひ         深瀬03
1 藤原
2 宮澤    潔くない人生を、毎年酒を飲みなが
 ら反省しています。
(019) 薄霞 山の彩り 雉の声            宮澤02
1 小野寺  薄霞の春の彩を切り裂く雉の声が深
 い余韻として耳に残る。
(020) 黄水仙花壇の中の笑い顔            秋岡06
1 豊      黄水仙が花壇の中で笑っているので
 しょうか。それとも、黄水仙が群がって咲い
 ている花壇を眺めている人の笑顔なのでしょ
 うか。
(021) 暮れてなほ 花新しき 白椿          小野寺20
1 齋藤宏 
(022) 春雷に  孫の手をとり  へそ押さえ       野澤03
(023) 店先に春見つけたり菜の花や          秋元01
(024) 花吹雪ゴジラの眼にも涙かな          深瀬16
(025) 水ぬるみ 花大根に 白き鷺          志方01
1 秋元
2 小野寺  紫の大根の花と白鷺の対比が春の佇
 まいを引き立てる。
(026) 春眠のさめて脳内ほの白し           豊01
(027) 葉ざくらに半袖プレイ大厚木          深瀬18
(028) 花銀杏 けぶりて哀し 夜の雨         小野寺12
(029) 満を持す冷たき風の木の芽かな         深瀬08
1 森
2 中津川
(030) 花散らし 夜来の雨に うぐいすが       志方07
(031) 花筏 泣けとばかりに 春流る。        小野寺06
1 秋元
(032) 喜びが弾ける親子桜咲く            橋本04
1 吉良    入学式の日でしょうか、喜びが伝わ
 ります。
2 治部
(033) 野に出でて名もなき草に見入る春        秋岡03
1 橋本
2 藤原
3 野澤    自然を満喫する姿が目に浮かびます。
4 齋藤宏 
5 深瀬    今頃は、街路を歩いていても以外に
 いろいろな草が生えていることに驚きます。
 名もなき草に見入る気持ちのゆとり(?) に共
 感しました。
6 小幡
(034) 新緑に 残り桜は 何想う           志方06
1 野澤    今年は満開時に待ちくたびれたとば
 かりに葉が出て,例年にない光景でした。
(035) たがために桜咲き散る問ひにけり        深瀬12
(036) 薔薇の芽の 紅きを洗ふ 雨降りぬ       小野寺21
(037) 君子蘭 花芽スクスク 春を告ぐ        吉良03
1 治部
(038) 残雪に 陽ざし残して 影法師         志方02
(039) 弾む春 古希と遊ぶ 孫娘           小幡02
(040) 海風を 孕みて 浪に桜散る          小野寺16
1 吉良    海岸の桜の様子が美しく描かれてい
 ます。
2 深瀬    断崖のような海岸に咲いている桜の
 花びらが波に散っているのだと思います。北
 斎の浮世絵をみるような異次元的世界を感じ
 ました。
     奈良吉野です
(041) 花吹雪 サクラに溺れる 吉野山        小幡03
1 志方    中三の修学旅行の時の吉野郷の絶景
 をおもいだしました。
(042) 満開の梢のメジロ蜜を追う           秋元03
(043) 菜の花や 群青の海 霞みおり。        小野寺14
1 吉良    春の景色を描いたキャンバスが目の
 前に浮かびあがります。
(044) あたたかさ 歩幅も広く 上着とり       中津川03
1 秋岡    春になって暖かくなり気持ちも浮き
 浮きする様が出ていていいですね。
2 橋本
3 藤原
4 宮澤    いいですね春は。でも毎年歩幅がせ
 まくなってきているようです。
(045) やはらかにひかり湛へし春の雲         深瀬07
1 豊      春の季節感がよく出ています。俳句
 らしくうまくまとまっています。
2 中津川
3 小野寺  春の雲が光たたえるとしたところに
 風情を感じる。
(046) 時めぐり 山々緑に 衣替え          藤原03
1 野澤    季節の変わり目が実感できます。
2 深瀬    時めぐりという表現に共感しました。
 背後に、自身も含む、年年歳歳人同じからず
 の心情もあるように思いました。
(047) 楓萌え 娘の門出 風薫る           小野寺09
1 森
(048) いく億年くり返すかな木の芽吹き        深瀬09
(049) 芍薬の 芽に朝露の ひかりおり。       小野寺13
1 中津川
(050) 困難に 今こそ笑みで 花明けり        森杜瑯02     
1 橋本    花明けりが一寸解釈に迷いますが
2 藤原
(051) 満開の花に群れ飛ぶ小鳥たち          秋元02
(052) 花咲けど無残なるかな天守閣          秋岡01
1 秋元
2 小幡
(053) 桜散る天皇のため虚実あり           深瀬13
(054) 石楠花 (しゃくなげ) や 束ねし髪の風に揺れ  小野寺08
1 森
2 治部
3 齋藤宏 
(055) 春眠の妻起きたるを遠く聞き          深瀬01
1 秋岡    まさに我が家の状況と同じで、うつ
 らうつらしている間にまた一眠りしてしまい
 ます。
2 橋本
3 藤原
     3月初旬に箱根を歩いて越えました。(2つ) 
(056) 襟すぼめ 箱根路の春 氷点下         中津川01
(057) 湖(みず)ぬるむ 駅伝ゴール 海賊船     中津川02
(058) 葉桜の 影携えて 月のぼる。         小野寺18
(059) モコモコと わきたつ新芽 命の息吹      藤原05
(060) 満開の桜スマホにとどめけり          深瀬10
(061) 漆黒の 闇鎮まれり 白牡丹          小野寺17
1 森
2 吉良    黒と白の対比が面白い俳句です。
3 齋藤宏 
4 宮澤    真っ暗って、本当に何かぼんやり浮
 かんでくるんです。
(062) しゃくなげにゴルフ忘れる大厚木        深瀬19
(063) 花吹雪 泣いて故郷をいでにけり。       小野寺01
1 森
(064) 散歩道 川面の風が 春を告げ         宮澤01
1 志方
2 野澤    頬に触れる風の温暖で季節の移り変
 わりを感じます。
3 深瀬    川面の風に春を感ずるということに、
 身近で新鮮な実感を踏まえた共感を覚えまし
 た。
4 小幡
(065) 春雨や小さき傘にふたりして          秋岡05
1 宮澤    恋成就小さき傘にありがとう
(066) 菖蒲畑 命こめ幾有余年 あるじ (主) 待つ   藤原04
(067) 入園式色づく母子のほっぺかな         治部02
1 橋本
(068) 畔路 (あぜみち) を ゆきし人あり 蓮華草   小野寺11
1 治部
2 志方
3 豊      乾燥した春の田んぼに蓮華が咲いて
 いる。畦道を行く人は、やがてその田んぼで
 田植をする人なのかもしれません。
4 秋元
(069) 花びらの舞い散る景色今年また         深瀬15
1 野澤    毎年の変わらぬ光景に今の平穏無事
 が感じられる。
(070) 春時雨 湧き水甘し 柿田川          中津川04
1 小野寺  柿田川の湧水が春雨の中に甘いと踏
 み込んだ情景が面白い
(071) 春暁や 牡丹の葉裏 ひかり満つ        小野寺05
1 秋元
(072) 火の国や城崩れ落ち花風吹           秋岡02
1 深瀬    地震の被害にあった熊本城に桜の花
 びらが舞っている風景は、やや悲しいですが、
 それを現実として受け入れる気持ちも大切だ
 ろうと思いました。
2 小野寺  熊本の震災に想いを馳せ花吹雪が深
 い感慨を誘う。
(073) 春の陽に保育園児らそぞろ行き         深瀬02
     連チャンで花見をしてきて以下3 句
(074) 目黒川かわもも見よと花筏           治部05
1 秋岡    東京在住の時代に支流の善福寺川に
 桜の花びらが川面一面に散りばめられて美し
 く光っていたのを思い出しました。
(075) グローバルな言葉の集い花蓆          治部06
1 中津川
(076) 集いらの見上ぐる高き山桜           治部07
(077) 早暁の 雨にけぶりて 白椿          小野寺22
(078) 春うらら 犬もうたたね 無心かな       藤原02
(079) 羽田沖機影まばゆき春の空           深瀬05
1 豊      飛行機と春の空。「羽田沖」という
 場所の特定が印象を強くしました。
(080) 鶯の 音色いまいち 春はまだ         宮澤04
(081) 深山 (しんざん) を 夜風わたりて 山櫻    小野寺19
1 中津川
2 秋元
(082) 花満ちて フェアウェー芽吹き 春ゴルフ    吉良02
     京都銀閣寺の東山です
(083) 樹の中に ウグイスが鳴く 東山        小幡01
     真新しいスーツ姿で親子が入学式
(084) 入学式へ スーツ新調 そろい踏み       中津川05
(085) 生命 (いのち) 燃ゆ 古城の堀に 花筏 (いかだ) 小野寺07
1 治部
(086) 満開を待てぬと出る葉  寒し春         野澤01
(087) 山桜 優しさ同じ 今年また          志方03
(088) 抱いた子の目にどんよりと春の雨        治部01
1 藤原
2 小野寺  孫の眼に映る春雨でしょうか。抱い
 た子の眼を通して作者の眼の温もりが伝わり
 ます。
(089) 春を待つ 窓辺に歌う すずめ2 羽       吉良01
(090) 春の夢うつらうつらと朝寝坊          秋岡04
1 小幡
(091) 桜見る今年のわれの違い問ひ          深瀬04
(092) 薄紅の 牡丹おぼろに 古都は暮れ       小野寺04
1 志方    いいですね、古都 (京都? ) の甍の
 先の夕暮れは

     2.兼題  思い出、記憶
(093) 遠き日の御殿場合宿春の空           深瀬06
(094) 古希迎え 消したい記憶 まだうずく      志方05
1 秋岡    やはり誰でも人間長く生きていると
 消したい記憶はあるものなんですね。
2 橋本
3 宮澤    ほんとに未だ半世紀もタイムスリッ
 プした夢を見るのです。
4 小幡
(095) 麦畑思い出遠く風渡る             橋本02
(096) 十八の苦き思い出サクラチル          秋岡07
1 野澤    思い出の中で一番共感できる句。
(097) 成人に タバコくゆらせ 顔染める       吉良06
(098) 一〇代の恋の苦さやチューリップ        豊03
(099) 夢うつつ 入試の苦労で 若返り        宮澤05
     彼岸に寺にまいり抹茶の接待を受けました
(100) 草餅におい 父母思う 墓まいり        中津川06
(101) 老害の言い訳ばかり「記憶なし」        豊04
1 齋藤宏 
(102) 肩車 遠くに見入る 幼き日          吉良05
1 志方    幼児にとって肩車は視界が格段に広
 がった記憶があります。
2 小幡
(103) 駒東の正門想ひ春一句             深瀬14
(104) 積上げし宮崎の思い出ゴルフ好き        橋本05
     
   3.自由題
(105) 碁敵と対局終へて桜餅             豊06
1 秋岡    昨日の敵は今日の友、桜餅が何とも
 美味しそうですね。
(106) エレ内の鏡に頭頂目をそむけ          深瀬17
(107) 永遠の熱き魂春の画家             豊05
(108) 防災に人集まりて和をつくる          秋元05
1 豊      無季の句ですが、雰囲気がよく出て
 います。「和をつくる」がいいですね。

 付記
 選句とともにお寄せいただいたコメントを、ご参考までに貼付します。
・志方さん
 全体にはるの息吹きや生命力あふれる句が多いと感じました。
・中津川さん
 兼題 春はやはり数が多いですね。逆に思い出(記憶)は季語
と結びつきにくいのでしょうか。
・小幡さん
 今回選句基準は 詠んで目に浮かぶ句を選びました。 
・小野寺さん
  今回も 自分の俳句は 投句にあたり、推敲の時間が全くなく
春の花を中心に 心に浮かず心象風景として一気に詠み込んだも
のですが推敲しないほうが 言葉の感覚が 鋭敏に残るような気
がします。
 絵画の創作は試行錯誤の連続で自分の構築した画像を思い切り
壊す勇気が必要ですが、俳句の世界は 普段からの風景や花に対
する感動の情景をどうやって 心象風景として 一瞬のうちに 
結実させるかという 繰り返しのような気もします。
 朝焼けの花や 生命の躍動としての夕闇の白い椿や牡丹など 
息をのむほどの感動を どうやって言葉にするか、できるか と
いうことの訓練でもあるような気がします。
 この世に生きるものすべての人に平等に死はやってきます。春
の移ろいは いつも西行のこの歌が下敷きになっております。
 願はくば 花のしたにて 春死なん、
 その望月の きさらぎの頃
 櫻の花の下で満月の頃 死んでゆきたいという西行の死生観は
そのまま日本人の心の風景でもあるやもしれません。特にこの歌
は 西行がみちのくの旅の途中で詠まれたもので自分が去ってき
た東北の釜石の景色とも重なります。
 句会のおかげで 俳句を通して 日本語の言葉の結実を修練で
き 和歌や 俳句集を身近なものに感じられることを感謝してお
ります。
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2017年2月12日日曜日

七句会 第十九回目のネット句会 選句の結果のご報告です。

 七句会のみなさま
 第十九回の七句会にご参加いただきたいへんありがとうございました。
今回の選句結果をご報告いたします。
 5 点句
(089) 陽だまりに身体膨らせ寒雀           秋岡
 4 点句
(001) 朝冷えで きしむ身体に 古希を知る      志方
(002) 古希迎え我が身に咲いたボケの花        野澤
(053) 凪 (なぎ) の海静かに明けて初日の出      豊
 3 点句
(006) 凍て空に 青春挽歌 古希吠える        杜瑯
(014) 古希迎へはるばる来たり先あおぐ        深瀬
(050) 初春やすれ違ふ人みな笑顔           豊
(064) 蒼鉛の 遥か雲より 冬日射し         小野寺
(078) どんど焼き秘めた願ひの煙追ふ         深瀬
(087) 同居者は猫一匹や冬籠             豊
  下記に、選句表に、各句の右側に作者名、および、その下に選んだ人の名前
とコメント (追番付き、順不同、敬称略。) を付したものを添付します。
  次回については、4 月上旬ころにご連絡したいと思っていますので、よろし
くお願いいたします。やり方、等について、ご意見がありましたら、ご連絡を
いただきたく、よろしくお願いいたします。
 事務方から、以下、ご連絡、ご依頼です。
(1) 選句参加者
 今回の選句には、下記の14名が参加しました。
  秋岡さん、秋元さん、小野寺さん、小幡さん、吉良さん、志方さん、中津川
さん、野澤さん、橋本さん、宮澤さん、森杜瑯さん、柳町さん、豊さん、深瀬。
(2) 今回の句会の結果を踏まえた勉強会について
 3 月下旬ころに予定したいと思っています。
  別途、ご案内しますので、よろしくお願いします。
  2017.02.12
      代表   橋口侯之介 (休会中)
      顧問  豊  宣光
      事務方 深瀬久敬



   1.兼題  古希
(001) 朝冷えで きしむ身体に 古希を知る      志方
1 秋元  共感
2 秋岡  確かに朝起きるときに関節の潤滑油の切れを
  つくづく感じます。
3 宮澤    同感です。朝きしむなら、寝坊すればいいの
  ですが、目が覚めてしまいます。
4 野澤  実感!
(002) 古希迎え我が身に咲いたボケの花        野澤
1 中津川  自分のことを言われたようで思わずニヤッと
  しました
2 豊     思わず笑ってしまいました。ユーモアのセン
  スに拍手。
3 宮澤    夢は古希で開くのでしょうか、ボケの花も綺
  麗な花です。咲いて良かった。
4 小幡
(003) 枯れ葉ごし陽のあたたかき古希の朝       深瀬
1 吉良    古稀を迎え、これからも平穏な日々が続くよ
  うにとの祈りの気持ちが出ています。
2 志方  古希を迎える明るさと穏やかさが滲んでいる
  と思います。
(004) 古希迎え国旗掲げて腰をコキッ         宮澤
1 秋岡  ユーモアがあっていいですね。
(005) 今年より 古希になりて 鏡みる        小幡
(006) 凍て空に 青春挽歌 古希吠える        杜瑯
1 吉良    これからもまだ若者に負けないぞとの気概を
  感じます。
2 深瀬    みなぎる闘争心というのか、気合というのか、
  圧倒されます。喝を入れられた思いです。(095) の心
  境に、拍車がかかった感じです。
3 小野寺  古稀をむかえてある種気概に同感です。
(007) 入園の孫の手を引き古希の春          豊
1 志方  古希を迎える明るさと穏やかさが滲んでいる
  と思います。
(008) 古希なれば 心澄ませよ 人は言う       吉良
1 深瀬    これからなにをすればいいのかとか、ますま
  す迷いを深めています。心澄ませる心境に憧れますが、
  結構、みな同じかなとか、少し安心もしました。
(009) なにをする古希の寒気 (かんき) に答へなく   深瀬
1 橋本  
(010) 古希遠く成人式の晴れ着かな          豊
(011) 古希とても団塊世代溢れけり          深瀬
1 秋岡  古希の希少価値はもうないですね。
(012) 道半ば 古希を迎えて 道半ば         志方
(013) 仙人の 墨絵憧れ 古希臨む          吉良
(014) 古希迎へはるばる来たり先あおぐ        深瀬
1 豊     古希まで生きてきた人生を振り返る。心境、
  よくわかります。「来たり先」は「来たる道」とでも
  したほうがよかったのではないでしょうか。
2 橋本  
3 志方  古希を迎える明るさと穏やかさが滲んでいる
  と思います。
   2.兼題  冬の花
(015) 木枯らしが 枯れ野吹き抜け 黄水仙      志方
(016) 凍て土に 牡丹の赤芽 呼吸 (いき) を吹き   小野寺
1 秋元  庭先の情景を思い浮かべました
(017) 亡き父の育てし花や寒牡丹           豊
1 小幡
2 深瀬    花をみて、既に亡くなった肉親を想う気持ち
  は、心の奥深くに共通するものなのでしょうか。牡丹
  の花は迫力がありますから、余計、印象深いと思いま
  した。
3 小野寺  若い頃には十分に語り合えなかった父と今は
  亡き父が丹精した寒牡丹を通じて哀惜の心が伝わって
  きます。父と息子はこういうものかもしれません。
(018) 紅色に 悲しさ隠す 寒つばき         吉良
1 杜瑯
(019) ビル街の山茶花ひそり人の波          深瀬
1 秋元  都会の隙間にある情景を思い浮かべました
(020) 山茶花の 絨毯映える 老夫婦         吉良
    庭に植えた紅と白の山茶花2句
(021) 山茶花の白清々し文化の日           橋本
(022) 雨洗う山茶花の紅際立ちぬ           橋本
1 中津川
2 小野寺  冬枯れの時雨の景色の中、紅い山茶花は鮮や
  かな対比をみせてひきたちます。
(023) 仏壇のまんりょうの実に遺影笑み        深瀬
1 野澤    詠み手の人柄が感じられます
(024) 山茶花に降り積もる雪しんしんと        秋岡
(025) 白霜の枯野にありて寒椿            秋元
1 志方  冬の山水画のようにすっきりしていると思い
  ます。
(026) 寒い朝 旭に映える 寒椿           小幡
(027) 凍て土に 薔薇一輪の 夜は明け        小野寺
(028) 老年と老人 切り裂く 寒椿          杜瑯
(029) 春暁に 星瞬いて (またたいて)  白椿     小野寺
1 柳町
(030) 色あせてなお咲にけり冬薔薇          秋岡
(031) 凛として佇む椿いとおかし           柳町
1 豊     椿の凛とした姿に感じ入った作者。「おかし」
  だと現代語での意味になってしまいますから「をかし」
  と古語にしたほうがいいでしょう。
(032) 冬萌えの 牡丹は生命 (いのち) 宿しけり。   小野寺
1 杜瑯
(033) まんりょうの実を孫とみる自然園        深瀬
(034) 松に寄せ千両活けたる飾り花          秋元
1 豊     松の緑と千両の赤の取り合わせ。美しさが伝
  わります。「活けたる」だと字余りになるので、「活
  けし」でよかったのでは。
(035) 寒つばき 葉は艶やかに ポツと落つ      吉良
1 橋本  
2 宮澤    寒椿の葉は本当に艶やかな緑です。何十年前
  に緑という名の艶やかな娘が、惚れた何人もの男に花
  を一輪一輪ポチポツと落として行きました。
(036) 初霜を押し上げ咲きし桜草           小野寺
1 小幡
2 深瀬    霜や残雪の間から小さな花がのぞく光景とい
  うのは、生命力の凄さを実感します。子供のころの新
  鮮な体験を思い出しました。
(037) 寒椿 梅に追われて 散り急ぐ         宮澤
1 秋元  春なんですがなんとなく移ろいを感じます
2 吉良    冬といえども色々な花が咲き、目を楽しませ
  てくれます。
3 志方  
(038) 水仙のごとき清しさ聖少女           豊
(039) 冬夜道 月光浴びて 寒椿           小野寺
(040) 寒椿 息吹き伝える 残り雪          志方
1 小野寺  寒さのなかの紅い椿と残り雪の対比が美しい
(041) 寒椿香りを観つつ初詣             柳町
   3.新年
(042) 初詣 孫のお願い なんだろう         志方
(043) 初詣 寒さに耐えて 知恩院          小幡
(044) この春は トランプばかり カルタ無し     宮澤
1 小幡
(045) 初富士が 稜線刻む 薄茜           志方
1 中津川
2 豊     新春のめでたい雰囲気がよく出ています。
  「初富士が稜線を刻む」でもイメージは伝わりますが、
  「初富士や」もしくは「初富士の」ではいけないので
  しょうか。
(046) 初雑煮杵つき餅の味深し            橋本
(047) 初打ちや 土竜の穴へ 大オービー       宮澤
(048) 新年や箱もの寂し新市場            橋本
(049) 七十路 孫にひかれて 初詣          柳町
(050) 初春やすれ違ふ人みな笑顔           豊
1 秋岡  今年は天候にも恵まれ穏やかな新年だったで
  す。
2 橋本  
3 小野寺  初詣の己の心の動きが人の笑顔になって現れ
  てます。
(051) 初日の出 足長おじさん 影法師        宮澤
1 中津川
2 橋本  
(052) お正月透き通る空人眠る            深瀬
(053) 凪 (なぎ) の海静かに明けて初日の出      豊
1 秋元  昔、正月の色紙をみているような気分になり
  ます
2 柳町
3 志方  無駄のない情景表現ですね。
4 野澤    穏やかな新年を迎えられ,心が清められる思
  いがします
   4.雑詠 (含、川柳)
(054) 大晦日世の静けさに物思ひ           深瀬
1 秋岡  大晦日は紅白歌合戦もいいですが、やはり静
  かに何か物思いに耽りたい気分です。
(055) 湯船にて痣の勲章  競う冬           野澤
1 深瀬    若かりしときのスキー場での想い出だと思い
  ます。大胆さを競うことはなくなった感じです。老化
  で転んでできた痣を自慢するようにはなりたくない。
(056) 浪の華 砕けて哀し いのち尽き        小野寺
1 宮澤    浪の華は、大きい強い波ほど美しく綺麗で、
  はかないものです。
(057) 夕日暮れ薄紅 (うすくれない) に映える富士   秋元
(058) 海鳴りや オリオンとほく 浪砕け。      小野寺
1 宮澤    オリオンは本当にに神秘的です。海鳴りとい
  う聴覚にも。砕ける浪という視覚にもぴったりとマッ
  チします。
(059) 冬の午後きょう一日の時流る          深瀬
(060) 冬夜寒  潮の遠鳴り恋しかり。         小野寺
(061) 末法の枯野のドーム夕陽浴び          深瀬
(062) 渺茫と 木枯らし哭きて 原野 (げんや) 暮れ。 小野寺
(063) 寒気 (かんき) 舞ふ空調機音頼りなし      深瀬
(064) 蒼鉛の 遥か雲より 冬日射し         小野寺
1 吉良    ヨーロッパの冬景色の絵画を思い浮かばせる
  句です。
2 中津川
3 柳町
(065) 抱き上げて にっこり眼(まなこ)の 孫愛し  志方
1 小幡
2 野澤    孫の笑顔はまさに天使
(066) 着ぶくれて人待ち顔の女かな          豊
(067) 冬銀河 おもひつる娘の 今はなく       小野寺
1 杜瑯
(068) 枯れ草の夕陽を受けて山遠く          深瀬
(069) まじまじと成人の日の娘見る          秋岡
(070) 大寒の明けゆく空に  ひかり満つ        小野寺
1 杜瑯
2 吉良    冬の明け方の透き通った朝、身が引き締まる
  感じがします。
(071) 暮れ泥 (なず) み青いそ餌に沙魚 (はぜ) を釣る 秋元
(072) 木枯しや猫陽だまりにまるく居り        橋本
1 小幡
2 小野寺  外の木枯らしと暖かい家の陽だまりに猫の対
  比はさながらに作者の温かい心目でしょうか。
(073) 青空のひろがりまぶし冬木立          深瀬
     四国ドライブ一人旅から3句
(074) 鳴門から室戸足摺空海と            橋本
(075) 道後館湯船もうれし掛け流し          橋本
(076) 四万十に生かされ生きる沈下橋         橋本
1 深瀬    沈下橋を改めて確認しました。増水時は沈む
  訳ですから、飾り気のない力強さが強調されている感
  じです。人間の生き方にも通ずるのでしょうか。
(077) 尼寺は 時雨れて 古都の街が暮れ       小野寺
1 宮澤    尼寺と言う言葉でもう駄目。時雨、古都とく
  れば、日本に生まれて本当に良かったです。
(078) どんど焼き秘めた願ひの煙追ふ         深瀬
1 吉良    遠い子供の頃を思い出させてくれました。
2 秋岡  ”秘めた願いの煙追う”はいいですね。
3 豊     「秘めた願い」とは何でしょう。恋の成就か、
  病の治癒か、それとも…。
(079) 川鵜追う小ボラの群れや鷺も待つ        橋本
(080) 筆とれば 小窓の外に 霙 (みぞれ) 落つ    小野寺
1 秋元  切り取られた一瞬のひらめきでしょうか
2 中津川  年賀状、書初めそれとも絵画の筆でしょうか
(081) 風花に空を見上げて深呼吸           秋岡
(082) 夕富士に双発ジェット茜色           橋本
(083) 初場所に日本が湧いた稀勢の里         秋岡
(084) 荒海や 波濤けぶりて 冬銀河         小野寺
1 秋元  月に照らされた凍てつく海と黒い天空でしょ
  うか
(085) 枯れ草の池にとけこむ鷺一羽          深瀬
1 柳町
(086) 底冷えの 京のまちやに 寒の月        小野寺
(087) 同居者は猫一匹や冬籠             豊
1 吉良    猫と日向ぼこをした将来の我々の姿が目に浮
  かびます。
2 秋岡  寂しいけれど、相棒のネコが居れば冬籠りも
  また楽し(?)
3 橋本  
(088) 冬バナナ色とにほひに思ひ馳す         深瀬
(089) 陽だまりに身体膨らせ寒雀           秋岡
1 中津川
2 豊     うまい。まさに俳句らしい句です。欠点がな
  いのが欠点でしょうか。
3 小幡
4 深瀬    冬の雀は、いかにもまるくなって暖をとって
  いる感じがします。ヒートテックの下着やコートのな
  い生き物の摂理がすごいと思います。水墨画的世界の
  ような感じもしました。
5 小野寺  冬の陽だまりに静かに羽を膨らませる雀は居
  心地の良い穏やかな風景です。
(090) 冬の海 鳶一羽 舞ひ 陽はくれぬ。      小野寺
1 橋本  
(091) 早朝の雪道歩む老夫婦             秋岡
(092) 海蒼し 木枯らし騒ぎ 百舌の啼く       小野寺
(093) 枯れ草や池に高層映えわたり          深瀬
(094) 独り往く枯野の路に冬の月             小野寺
1 杜瑯
2 志方  
(095) 夢託す、古希の第二の、船出かな        藤原
(096) 塩香る、パークゴルフの、楽しさや       藤原
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