2018年3月10日土曜日

七句会 第二十三回目のネット句会 七句会交差点 第04号

 七句会 
 第二十三回ネット句会参加各位
 第二十三回の選句結果を踏まえて、感想や自句自解、等をおよせいただき、
たいへんありがとうございました。
 およせいただいたものを、名前順に、ほぼそのまままとめてお届けすること
にします。今後のやり方に、ご意見、等ありましたら、よろしくお願いします。
 七句会のweb  http://nanaku-haiku.blogspot.jp/ にも掲載してあります。
  今後とも、よろしくお願いいたします。
  深瀬 (事務方)


(1) 小野寺さんの自句自解
1   001)氷雪の 彼方を 北斗 回りけり。
 凍てついた雪の 厳冬の原野の夜空を 北斗七星が正確に回りゆく、壮大な
大自然の運行に身が引き締まる思いで心打たれます。
 豊さんのこの句の感想に大変エンカレッジされました。
2  009降る雪を耐えて生命(いのち)の紅き薔薇
 降り積もる雪をものともせず、凜として健気に咲く 深紅の薔薇は燃える生
命の輝きそのものです。
 秋岡さんの評伝の様に期せずして白い雪と紅い薔薇は寒さに耐えて咲く生命
の不思議なコントラストになりました。
3  011  見送りの駅舎の祖父に 雪は降り
 13歳で故郷三陸の釜石を後にしました。
 旧い田舎の駅舎の片隅で見送りの祖父は手をふり、粉雪が舞っておりました
。走りゆく列車の窓から涙にくれながら手を振りましたがそれが祖父との今生
の別れとなりました。
 吉良さんのご指摘通り、自分も又これが大好きだった祖父との最後の姿と予
感して泣いたのだと思います。
4 036)雪止みぬ 古都眠らせて 寒の月
 夜半に降りやんだ雪は静寂の中で古都を眠らせ中天には煌々と白い月が輝い
ておりました。
 秋元さんのご指摘の様に雪の静寂を表現したかったのは確かですがが。
5 038)降る雪や 泣いて故郷を出でにけり
 降りしきる雪を眺めるとふと突然に13の歳に泣いて故郷を離れた折の涙でゆ
がんだ列車の窓をよぎる雪景色が鮮烈に蘇ってきます。
 豊さんの感想は正にその通りで感服です。
6  040雪の原 凍鶴(いてづる)啼きて夕日落つ
 雪原の夕暮れ時 一面の白い雪と丹頂鶴の赤のコントラストが美しく鶴が一
声 啼き やがて荘厳な落日は 一切を包み込み 息を呑む風景でした。
 吉良さんの感想のとおりです。
7   048 選に掲載されてませんでしたがこれは橋本さんと深瀬さんが選んでく
れた二点句でした。
 星月夜 板戸の街は 雪の中
 降り続いた雪がやみ 海沿いの板戸の旧い街はすっぽりと雪に覆われ不思議
な静寂の中で 深い夜空には月も星も輝いておりました。
 これは全く深瀬さんの読みの通りで感服しました。
8  No.5 群青に 粉雪舞ひて 海は暮れ
  この句は柳町さんから賛同をいただきましたが小生の長い付き合いの友人か
ら一番いいといっていただき自分でも想いがあったもので自解します。
  これは 少年のころの三陸釜石の海の冬の景色です。
  群青色の蒼い海のいろを残したまま、鉛色の重い空は夕焼けさえも通さずに
 群青の蒼と粉雪の白がまじりあったまま、やがて夜の帳のなかに昏くなって
ゆきます。
  釜石を思いだすとき 不思議に寂しい重い雪雲の心象風景となります。
 万感の少年時代の原風景を想いを込めて切りとったもので気負いもてらいも
感傷もなく、ふと出てきたおもいを淡々と紡いでみたものです。
9  夜明け前 漢(おとこ)の夢に 雪は積む。
 この2年の間に大切な友人達を3人癌で失いました。
 自分自身も昨年偶然から前立腺の癌が発見され一時は動揺しましたが、家族
と友人、信頼の医師達によって手術が成功し復帰できました。
 復帰してみて 自分は生かされているとおもいました。
 人の生命を分けるものは 運命ではないかと思うようにもなりました。
 雪の中で深紅の薔薇に己の命を重ねあわせたり大雪の日に 田舎で手を振っ
て送り出してくれた祖父の想いに心をはせるのは 亡くなっていった友人達の
無念の想いに 寄り添おうという無意識の行動かもしれません。
 釜石の片田舎の駅舎から私を送り出してくれた祖父はわずか一年後に危篤の
知らせをうけましたが勉学を頑張れ帰るに及ばずという手紙を残してこの世を
さりました。
 この句は自分自身へ夢をもっていきるという矜持でもあります。
 無作為に選句してくださるなかで群馬の森さんが、009 降る雪を耐えて生命
の紅き薔薇とこの句を選んでくださった事が素直に嬉しいとおもいました。
 森さんからいただいたメールに男は夢とチャレンジという言葉をいただきま
したが 私も全く同感です。
 この歳になってなお 日夜海外の鉄鋼業務に従事し絵画と 俳句に没頭でき
ることの幸せを感じております。
  077 夢に向け 初の日の出を 飲み干して
という森さんの豪快な句に 乾杯です。
  以上 多少自句自解から逸脱したところもありますがご容赦ください。
    句の会を通じて、語りあえる友人ができましたことも感謝しておりま
      す。

(2) 森さん
 医師が、癌などの不治の病になってしまうほど、落胆することはありません
。予後、すなわち、後どのくらい現世にいられるのか、を知っているからです
。先月も、非常に優秀な肺癌専門医師が50歳で、膵臓癌のために逝去しました
。また、私の2年上の脳腫瘍専門医師が肺癌で逝去しました。
 天命がいつ各個人にくだるかは、判りません。 天命が下るまで、「夢とch
allenge 」と「若手の育成」の精神を持って生きていきたいものです。
 その意味で、私の俳句には「夢」などの言葉が多く出てくるのです。

(3) 豊さんの自句自解その他
○降る雪や肩を寄せ合ひ二人酒                     
 こたつの中で恋人と肩を寄せ合いながら雪見酒を楽しんでいる。その艶っぽ
さを読んだのですが、うまく伝わらなかったようです。
○手袋をスマートホンの指が脱ぎ
 手袋をしたままではスマートホンの操作はしにくい。そこで手袋を脱いでL
INEの文字を打ったけれど、寒さで指がかじかんでうまく打てない。最近の
若者の姿を皮肉ったのですが、やはりわかりにくかったですね。
 今回の選句を見て、皆さんがどういう句を好むのかわかったような気がしま
した。イメージが具体的で、言葉使いが素直なもの、ということでしょうか。
 また、吉良さん宮澤さんなど、皆さんの鑑賞文もなかなか深いものがあって
、よかったです。

(4) 深瀬の自句自解
・雪積みし汽車ほえきたり上野駅
  子供のころ、両親の故郷である秋田から親戚の人が上京してきたとき、上野
駅に出迎えに行きました。上野駅はかつては東北地方の玄関口でした。
・しんしんと降り積む雪夜ひとり酒
  雪の降る夜の静けさは、神秘的に感じます。
・雪の朝救急車の音ひとりお茶
  救急車の音には、やや胸騒ぎを覚えますが、いつまで他人事で済ませられる
か、気になることがあります。
・雪帽子すましほほえむ地蔵かな
  お地蔵さんはかつては身近にあったように思います。いろいろな表情の顔が
あるのがおもしろいと感じます。
・雪原を狩人と犬獲物追ひ
  ブリューゲルの絵「雪中の狩人」をイメージして作りました。
・雪原の鉄路消えゆく地平線
  テレビで見た北海道の雪の原野を走る線路を思い出して。北海道の鉄道の存
続もたいへんそうです。
・夜空から湧き出る雪に吸い込まれ
  夜空から雪が舞い降りてくるのを見上げたときの印象です。
・山や河降り積む雪の静かさや
  雪景色の静けさを思って作りました。蕪村の絵も少し参考になった感じです

・雪解けの陽やまぶしけりビルの窓
・残雪に街路まぶしき日本橋
   (上2 句) 東京に雪が降った日の翌日に日本橋で見た光景です。
・残雪にしかばねの山夕陽燃え
  ノルマンディー上陸作戦のドキュメンタリーを見ていたので、作って見まし
た。203 高地とかインパール作戦とか、兵士は消耗品のようです。どうしてこ
ういう悲惨が繰り返されるのか不思議です。
・雪が降るアダモの歌や耳の奥
  「想い出の小川」とか、なつかしく想いだします。
・いらだてる心の隅にのこり雪
  最近、団塊の世代で切れる人が多いそうです。自戒も込めて作りました。
・吹雪くなか犬ぞり吠えてひた走る
  グリーンランド犬は、どんな吹雪の中でも走ることが使命みたいです。
・天国の入試気になる老いの冬
・入試落ち駅のベンチに佇めり
・受験終え母とフルーツセピア色
   (上3 句) 受験、入試を俳句に読むのは難しいと感じました。
・一月も終わり消えゆく去年の日々
  一月は、年が改まったという新鮮さがありますが、すぐに消えます。
・静かさや時間の止まる三が日
・三が日ひかりも音も別世界
・木立越しスーパームーンの三が日
・七十路の自転車漕ぎし三が日
   (上4 句) 今年のお正月三が日の実感です。日本の三が日はよいと思います
。自転車で北品川の方まで行きました。本当は羽田まで行きたかったのですが
、年のせいか残念でした。
・熊撃ちて猟師合掌陽のひかり
  命の循環のような感じです。作りすぎの感じもします。
・風呂出ればテレビに笑ふ妻の声
  私は録画したドキュメンタリーのようなものしか見ないので、うらやましい
とも感じます。
・笛ひびく工事現場の時雨れかな
  工事現場の緊張感のようなものを感じてもらえたらと思いました。
・時雨れ聞き老後のゆとり妻に問ひ
  妻になんとかなるとか言われると安心します。
・柵越しに手をふる園児母を待ち
 近くの保育園の前を通ったとき手を振られました。夕方だったので、なにか
さみしい気持ちになりました。自分の子供のころの体験とも重なりました。

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2018年2月21日水曜日

七句会 第23回ネット句会 選句結果のご報告です。

 七句会のみなさま
 第二十三回の七句会にご参加いただきたいへんありがとうございました。
今回の選句結果をご報告いたします。
 6 点句
(092) 堂々と孫の筆先初日の出                治部
 5 点句
(047) 雪帽子すましほほえむ地蔵かな             深瀬
 4 点句
(018) 雪積みし汽車ほえきたり上野駅             深瀬
 3 点句
(055) 雪やみて 太古の世界 都市黙す            吉良
(064) いらだてる心の隅にのこり雪              深瀬
(070) 天国の入試気になる老いの冬              深瀬
 2 点句 
(001) 氷雪の 彼方を 北斗 回りけり            小野寺
(002) 静寂に眠れぬ夜の雪の声                秋岡
(006) 雪の朝救急車の音ひとりお茶              深瀬
(009) 降る雪を耐えて生命 (いのち) の紅き薔薇        小野寺
(011) 見送りの駅舎の祖父に 雪は降り            小野寺
(016) 雪原の鉄路消えゆく地平線               深瀬
(027) 陽だまりにサクサクきらり霜の華            志方
(036) 雪止みぬ 古都眠らせて 寒の月            小野寺
(040) 雪の原 凍鶴 (いてづる) 啼きて 夕日落つ       小野寺
(041) 雪解けの陽やまぶしけりビルの窓            深瀬
(050) 日だまりや雪掻きもせず眺めおり            橋本
(052) 風花の儚き命雲間より                 秋岡
(061) 雪ダルマ 溶けて凍って 涙顔             宮澤
(077) 夢に向け 初の日の出を 飲みほして          森杜瑯
(080) 元旦の若き山茶花初めじろ               橋本
(096) 飾焚く海にわき立つ狼煙かな              治部
(097) 一月も終わり消えゆく去年の日々            深瀬
  下記に、選句表に、各句の右側に作者名、および、その下に選んだ人の名前
とコメント (追番付き、順不同、敬称略。) を付したものを添付します。
  次回については、今年4 月中旬ころにご連絡したいと思っていますので、よ
ろしくお願いいたします。やり方、等について、ご意見がありましたら、ご連
絡をいただきたく、よろしくお願いいたします。
 事務方から、以下、ご連絡、ご依頼です。
(1) 選句参加者
 今回の選句には、下記の13名が参加しました。
  秋岡さん、秋元さん、小野寺さん、吉良さん、志方さん、治部さん、中津川
さん、橋本さん、宮澤さん、森杜瑯さん、柳町さん、豊さん、深瀬。
 齋藤宏文さん。私の誤りで、投句依頼のメールをお送りしませんでした。た
いへん申し訳なく、失礼しました。
(2) 今回の句会の結果を踏まえた自句自解、感想、等の募集について
  今回の句会の選句結果を踏まえて、各自、表明しておきたいこともあるので
はないかと思いますので、自句自解、感想、等、なんでも結構ですので、募り
たいと思います。一応、期限としては3 月9 日とし、事務方にメールでいただ
き、それを七句会の下記のweb に掲載することにしたいと思います。
 http://nanaku-haiku.blogspot.jp/
  これまで、句会の後、勉強会としての集まりを企画していましたが、参加者
が少ないこともあり、改めることにしました。集まっての勉強会も適宜、行い
たいとは思っていますが、よろしくお願いします。
  2018.02.21
      代表   橋口侯之介 (休会中)
      顧問  豊  宣光
      事務方 深瀬久敬
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   兼題  雪
(001) 氷雪の 彼方を 北斗 回りけり            小野寺15
1 豊  雪の大地と夜空が合体した世界が目に浮
 かびます。スケールの大きな発想に感心しま
 した。
2 治部
(002) 静寂に眠れぬ夜の雪の声                秋岡05
1 森
2 深瀬  雪の降る夜、いつもと違い静かすぎで
 眠れないというのは、人間の微妙な心理だと
 感じます。
(003) バケツ湯で フロントガラス 雪融かし         中津川01
(004) 残雪にしかばねの山夕陽燃え              深瀬11
1 森
(005) 群青に 粉雪舞ひて 海は暮れ             小野寺17
1 柳町
(006) 雪の朝救急車の音ひとりお茶              深瀬03
1 吉良 救急車の音とお茶を飲んでいる静けさ
 のコントラストが印象的。お茶を飲みながら
 何を感じているのでしょうか。
2 宮澤  他人事ながらこんな日に大変だな。無
 事が一番と言い聞かせお茶を飲む老境の身。
 お茶にむせないよう気を付けましょう。
(007) 東雲 (しののめ) に雪煌めきて (きらめきて) 寒椿    小野寺21
(008) 深雪に足下とられ急ぐ街                秋元01
(009) 降る雪を耐えて生命 (いのち) の紅き薔薇        小野寺03
1 森
2 秋岡  白い雪と赤いバラのコントラストが耐
 えて生命という言葉で巧くつながっていると
 思います
(010) 膝に置く 黒い鞄に 雪二つ              宮澤01
1 橋本
(011) 見送りの駅舎の祖父に 雪は降り            小野寺05
1 吉良 田舎の祖父に会いに行ったのでしょう
 か。もしかしたらもう会えないかも知れない
 という予感が「雪は降り」に表されている気
 がします。
2 宮澤  しんしんと降る雪は、後悔、わだかま
 り、何もかも包み込んで絵にしてしまいます。
(012) 見る間にも降り積む港午後の雪             治部04
(013) 残り雪沈丁花が顔をだし                志方02
1 治部  
(014) 雪が降るアダモの歌や耳の奥              深瀬12
1 中津川 私の耳にも聞こえてきました
(015) 夜明け前 漢 (おとこ) の夢に 雪は積む        小野寺12
1 森
(016) 雪原の鉄路消えゆく地平線               深瀬06
1 柳町
2 吉良 北国の冬景色が目の前に浮かびあがる
 句です。
(017) 奥津城 (おくつき) に雪降り積もり 時空 (とき) が逝く 小野寺18
1 中津川 積もった雪がご先祖とのタイムマシ
 ンでしょうか
(018) 雪積みし汽車ほえきたり上野駅             深瀬01
1 橋本  雪の中を走り切ってたどり着いた終着
 上野駅、吠える(SL ですね) がいいです、懐
 かしい
2 宮澤  東京の皆さん、大変な思いで走ってき
 ました、雪国のお土産だよ、ポッポー。
3 秋岡   "汽車ほえきたり" はいいですね。東
 北本線の終着駅の上野駅のイメージそのもの
 です。
4 小野寺  イメージとして集団就職の時代を彷
 彿とさせます。
(019) 凍てついた噴水池に雪ダルマ              秋元02
(020) 凍蝶 (いてちょう) は 蛹となりて 雪の納屋      小野寺10
1 秋元  言葉のカッコよさと情景を感じられて、
(021) 六甲山朝日を浴びて光る雪               秋岡04
(022) 漁火に雪降りやまぬ暗き海               志方03
1 小野寺  寒い北の海の厳しい冬の漁場が切な
 く映ります
(023) 雪残り川を頼りて鳥来たる               橋本02
(024) 鈍色 (にびいろ) の宙 (そら) より雪の 光舞ひ     小野寺07
1 秋元  言葉のカッコよさと情景を感じられて、
(025) 敵味方 かまわず雪は 降り積もり           森杜瑯04
1 深瀬  敵味方というのは、穏やかではありま
 せんが、降る雪を見ながら秘めた闘志を確認
 するというのは新鮮な感じです。
(026) 老いてなお 思い出紡ぐ 峰の雪            吉良04
1 橋本 
(027) 陽だまりにサクサクきらり霜の華            志方01
1 秋岡  今年は公園での犬の散歩時にはこの光
  景をよく見ますが "サクサクきらり" ですね。
2 治部  
(028) 底冷えの 雪の夜路に 月のあり。           小野寺02
(029) 雪原を狩人と犬獲物追ひ                深瀬05
(030) 落日の 雪降る天 (そら) を雁 (かり) 渡る       小野寺13
1 志方 
(031) 雪道を滑りながらの犬散歩               秋岡01
(032) 湧き出ずる 闇夜の雪よ 顔を打つ           吉良02
1 橋本  暗闇の中、足下は照らしても舞う雪に
 はなすがまま、巧いです
(033) 山や河降り積む雪の静かさや              深瀬08
1 秋元  雪の静寂さを感じられて、
(034) 荒海や 昏き波濤に雪の華               小野寺09
(035) 蒼き鷺雪の白さに何想う                志方04
(036) 雪止みぬ 古都眠らせて 寒の月            小野寺20
1 秋元  雪の静寂さを感じられて、
2 治部  
(037) 雪景色 どこか見慣れた 江戸の朝           宮澤03
(038) 降る雪や 泣いて故郷を出でにけり。          小野寺06
1 豊  いま降っている雪を見て、かつて泣く泣
 く故郷をあとに上京してきたことを思い出し
 ているのでしょうか。それとも、雪の降る故
 郷をあとにしたいま、寂しさで涙が出ている
 のでしょうか。
(039) 吹雪くなか犬ぞり吠えてひた走る            深瀬14
(040) 雪の原 凍鶴 (いてづる) 啼きて 夕日落つ       小野寺08
1 柳町
2 吉良 鶴と雪の白色が夕日の中で溶け合って
 美しい情景を作り出しています。
(041) 雪解けの陽やまぶしけりビルの窓            深瀬09
1 中津川 都会の雪解けの様子が浮かびます
2 秋元  現代の街の情景を感じられて
(042)  (白根山噴火して) 逃げ惑う ゲレンデに跳ね 雪しぶき 中津川03
(043) しんしんと降り積む雪夜ひとり酒            深瀬02
1 小野寺  独り酒を飲みながらら更けゆく雪の
 夜の哀感がうかがわれます。
(044) 冬薔薇 (ふゆそうび) 生命 (いのち) 紡ぎて 雪の朝   小野寺01
(045) 風花に大口開けて舞う児らよ              秋岡02
1 吉良 子供の頃の自分を思い出させてくれま
 す。
(046) 降る雪や肩を寄せ合ひ二人酒              豊01
(047) 雪帽子すましほほえむ地蔵かな             深瀬04
1 吉良 この頃はあまりお地蔵様を見ることは
 ありませんが、昔の田舎の情景が思い出され
 ます。
2 志方  特に、最高ですね。
3 豊  道ばたにたたずむ石地蔵の頭に雪が積も
 っている。帽子ほどですから、薄くもなく高
 くもなくといった感じでしょうか。白い雪、
 地蔵の赤い頭巾とよだれかけ。色の対比もき
 れいです。
4 治部  
5 小野寺  雪のなかにたたずむ地蔵の帽子にか
 かる雪は心を温かくしそうです。
(048) 星月夜 板戸の街は 雪の中              小野寺16
1 橋本  似た句に036 がありますが、こちらを
 採りました
2 深瀬  降り続いた雪がやみ、古都の街はすっ
 ぽりと雪に覆われ、夜空には月や星が輝いて
 いるという様は、なにか蕪村的で印象に残り
 ます。
(049) 雪だるま 子供集いて 競いおり            吉良01
(050) 日だまりや雪掻きもせず眺めおり            橋本01
1 中津川 私も何もせず眺めていました
2 秋岡  今年は東京も雪かきが大変みたいでし
  たが、雪景色を楽しんでる余裕がいいですね。
(051) 粉雪を払わで越えし 峠路               小野寺04
(052) 風花の儚き命雲間より                 秋岡06
1 森
2 志方
(053) 夜空から湧き出る雪に吸い込まれ            深瀬07
1 宮澤  雪を街頭の下から見上げると、雪は降
 っているのか、雪が吸い込まれいるのか、不
 思議で神秘的な光景です
(054) 雪道に上弦の月寒々と                 秋岡03
(055) 雪やみて 太古の世界 都市黙す            吉良03
1 秋元  雪の静寂さを感じられて、
2 深瀬  都会がすっぽり大雪に覆われ、都市機
 能が麻痺して太古のようだというのは、風刺
 的な感じもします。
3 小野寺  降る雪の風景を 太古の世界から都
 市も黙らせるとした対比がにくい句です。
(056) 百舌鳥 (もず) 啼きて 静寂 (しじま) の底に 雪明かり 小野寺19
1 志方
(057) 残雪に街路まぶしき日本橋               深瀬10
1 志方
(058) 雪景色朝の光に清められ                豊02
(059) 孫はしゃぎ 小雪だるま 門前に置き          中津川02
1 柳町
(060) 葬列の 雪踏みしめて 風が泣き            小野寺14
(061) 雪ダルマ 溶けて凍って 涙顔             宮澤02
1 秋岡  情景が目に浮かび面白くて楽しい句で
  すね
2 深瀬  子供のころによく見た光景のように感
 じられ、なつかしい。
(062) 静かなり物音包み雪が降る               橋本03
1 宮澤  雪は、色彩、音を吸収し何もかもモノ
 トーンしてしまう。
(063) 吹雪越え 眼下に 峠ひかりおり。           小野寺22
(064) いらだてる心の隅にのこり雪              深瀬13
1 秋元  何やら謎のある感じがして
2 橋本 
3 豊  何かいらだつ出来事があった。それが後
 悔として心に残っている。心情を雪に託した
 見事な作品です。
(065) 月一輪 雪の鉄路を照らしけり             小野寺11
1 治部  


   兼題  受験
(066) インフル恐れ マスク並ぶ 模擬試験          中津川06
(067) 志望校落ちて身にしむ寒さかな             豊04
(068) 朝冷えを 受験に急ぐ 白い息             宮澤04
(069) 冬晴れや 合格祈願 寺社めぐり            中津川05
(070) 天国の入試気になる老いの冬              深瀬15
1 柳町
2 中津川 終活が天国への受験準備ですね
3 豊  天国に入るのにも入試があるとは驚きで
 す。天国に行くか地獄に落ちるかは生きてい
 る間の成績次第ですから、そうなのかもしれ
 ません。ユーモアと皮肉が効いています。
(071) 初詣大吉引いた受験生                 豊03
(072) 受験終え母とフルーツセピア色             深瀬17
(073) 絵馬重ね 梅の社や 受験生              中津川04
1 柳町
(074) 入試落ち駅のベンチに佇めり                深瀬16
1 秋岡  受験は人生の最初の試練ですね。受験
  生はこのベンチから立ち上がる力で頑張って
  欲しいものです。
(075) 受験生 滑らぬように 凍てる道            中津川07


   雑詠、無季語
(076) 笛ひびく工事現場の時雨れかな             深瀬25
(077) 夢に向け 初の日の出を 飲みほして          森杜瑯01
1 中津川
2 橋本  なんとも豪快です
(078) 皸 (あかぎれ) や手をかざし見る痛さかな        治部05
(079) 時雨れ聞き老後のゆとり妻に問ひ            深瀬26
(080) 元旦の若き山茶花初めじろ               橋本04
1 志方
2 小野寺  なんだか元旦から、若き山茶花と初
 メジロで映像が冴えいい事がありそうな気分
 になります。
(081) 熊撃ちて猟師合掌陽のひかり              深瀬23
1 吉良  最近は熊が町に出没するようになり、
 やむを得ず撃ち殺されたのでしょうか。合掌
 している背中に陽の光が仏様の光背のように
 見えたのでしょうか。
(082) 初日の出 夢にきらめく 天の竜            森杜瑯02
1 深瀬  初日の出のきらめきが、天に昇る竜の
 ようだという心象風景は、スケールが大きい
 と感じます。
(083) 手袋をスマートホンの指が脱ぎ             豊06
(084) 七十路の自転車漕ぎし三が日              深瀬22
(085) 男らの裸祭や寒の入                  豊05
(086) 風呂出ればテレビに笑ふ妻の声             深瀬24
(087) 残照に頭上の紅葉輝けり                橋本06
(088) 白き朝行く手を望む新成人               治部03
(089) 三が日ひかりも音も別世界               深瀬20
1 豊  正月三が日は、日本列島全体が活動を休
 む祝日。まさに光も音もいつもと違います。
 正月の風景を巧みに象徴しました。
(090) 初富士を眺める坂や日向ぼこ              橋本05
(091) 静かさや時間の止まる三が日              深瀬19
(092) 堂々と孫の筆先初日の出                治部01
1 森
2 柳町
3 中津川 立派な書初めができたのがよくわか
 ります
4 豊  「初日の出」は書き初めで必ず書かされ
 る文字です。小学生でしょうか中学生でしょ
 うか、お孫さんがしっかりとした筆さばきで
 書いた。それを喜んでいるおじいさん、おば
 あさんの顔が目に浮かびます。
5 秋岡  いつもながら孫がかわいくて仕方がな
  いという句ですね。
6 深瀬  お孫さんがいつのまにかこんなに逞し
 くなったかという感慨が伝わってきます。
(093) 柵越しに手をふる園児母を待ち             深瀬27
1 志方
(094) 凧揚げて 向かう行方は まだ知らず          森杜瑯03
(095) 木立越しスーパームーンの三が日            深瀬21
1 治部
(096) 飾焚く海にわき立つ狼煙かな              治部02
1 柳町
2 小野寺  焚いた正月飾りの煙を海の狼煙と見
 立てたところに切々とした情感を感じます。
(097) 一月も終わり消えゆく去年の日々            深瀬18
1 森
2 宮澤  引きずっていた去年のわだかまりも、
 年が明け1 か月でゆっくりと消えていく。時
 間が必要です。

  追記 
  選句にあたって、次のようなコメントがありました。ご参考までです。
- 各人のレベルが上がっていますね。 (森杜瑯さん)
- 本日までICELAND に行ってまして。投句のことを全く忘れていました。 (柳
町さん)
- 「雪」については数も多く、また力作く多く迷いました。 (中津川さん)
- もう23回目とは月日の過ぎる早さに驚きます。 (吉良さん)
- 私同様、「受験」の句は少なかったようですね。 (橋本さん)
- 今回は「雪」の句に詩情あふれるいい作品が多かったように思います。それ
に対して「受験」は少し難しかったのでしょうか。 (豊さん)
- いつものように選句の理由ではなく、こんなイメージが湧いたので選句しま
したということを記しました。 (宮澤さん)
 
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2017年11月29日水曜日

七句会 第二十二回目のネット句会 七句会交差点 第03号

 七句会 
 第二十二回ネット句会参加各位
 第二十二回の選句結果を踏まえて、感想や自句自解、等をおよせいただき、
たいへんありがとうございました。
 およせいただいたものを、名前順に、ほぼそのまままとめてお届けすること
にします。今後のやり方に、ご意見、等ありましたら、よろしくお願いします。
 七句会の案内を出した方、全員にご参考までにお送りすることにします。
 七句会のweb  http://nanaku-haiku.blogspot.jp/ にも掲載してあります。
  今後とも、よろしくお願いいたします。
  深瀬 (事務方)


(1) 秋元さんの自句自解
  (054) 紅の山肌隠す白き舞
  2002_11_02_ 根子岳からの下山途中の四阿山での景色です。 (写真添付)

(2) 小野寺さんの自句自解
  皆さまに選んでいただいた、小生の句の自句自解下記致します。
  1 紅葉燃ゆ 古都の甍を雨が打つ
 夕暮れ迫る古都の街角 外は燃えるような紅葉の赤一色ふとその街角で一瞬
雨が降り始め 町屋の甍が黒い点となって変わりゆく、その色彩の対比の妙を
切り取った風景画です。
  2  せせらぎは 底に紅葉を 敷き詰めし
 秋も深い深山の急流に差し掛かった折流れの川底に紅葉が一面に敷き詰めら
れ川面にはまばゆい光が 揺れておりました。
 澄んだ清らかな水はあでやかな紅葉を一層引き立たせて輝きながら流れてお
りました。 
  3  虫時雨 朋逝き夜半の 独り酒
 秋の夜半 虫の合唱は不思議に静けさを感じさせさながら 鎮魂の読経にも
似て酒が好きだった 友人への尽きせぬ想いをこめてしみじみと独り、献杯を
したのでした。
 4 苔むした 古都の小路に 紅葉燃ゆ
 織部色の苔むした古都の小路の向こうに一面に紅い紅葉が燃えているような
輝きをみせ、さながら 一幅の 絵巻物をながめるような光景でした。
 
 5  野辺送り 朋なき空に 赤蜻蛉
 友人を亡くした秋の空に赤蜻蛉が 翔んでいた。
 絵を描く事が好きだった友人は、遥かな空から 赤蜻蛉の様に光溢れる風景
を俯瞰しながら、風になっているのだと思います。
 6 秋蝶は陽だまりの外息を止め
 静かな秋の午後 ふと 眺めた視線の先に 陽だまりを外れた影の中に羽を
たたんだ蝶が動かずにじっとしておりました。
 まるで 息を止めて己の死を見つめている様でもありました。
 ふと 旅立った男の心と重なる想いがしたのです。

(3) 橋本さんの自句自解
  3 点句の評価を頂きました二句について、いきさつ、背景等説明いたします。
  (035) ミサイルに秋刀魚も細る北の海
 今年の秋刀魚は本当にいけません、不漁で型も小さく細い。取り敢えず3回
塩焼きで食しましたが、味は推して知るべし。最近は台湾や中国、韓国の大型
船が三陸沖の公海でごそっと取ってしまい、逃れた秋刀魚に今年は北朝鮮のミ
サイルの追い打ち。何とかしなければいけませんね。
  (038) 北の使者しばし休める刈田かな
 冬が近づくといつものように、北から鳥達( 鴨・雁・白鳥等)が日本に渡っ
て来ます。
 稲刈りの済んだ田圃は、格好の休憩地であり貴重な餌場です。
 住民が不足する餌を与えている所もあるようですが、十分な刈田をいつまで
も残しておきたい。

(4) 豊さんの感想と自句自解
  ○5 点句「紅葉燃ゆ 古都の甍(いらか)を雨が打ち」について
 この句をそのまま読むと、いま雨が降っている、と解釈できてしまうのです
が、間違っているでしょうか。 
 「雨が打ち」を「雨が降った後」と解釈するのはいささか無理があるように
思います。
 もし、いま雨が降っているのであれば紅葉の葉は濡れているはずで、「燃ゆ
」という表現は適当ではないような気がしますが、どうでしょう。
 作者が「雨の後」の紅葉を詠みたかったのであれば、たとえば次のようにし
たほうがわかりやすかったかもしれません。
 「雨晴れて古都の甍に紅葉燃ゆ」
 小野寺さん、すみません。
  ○自句自解「大和路や古寺の鐘聞く秋の旅」
 もちろん「春の旅」でもいいのですが、「春」と「秋」では雰囲気が正反対
です。「春」には明るさと希望がありますが、「秋」には寂しさと失意があり
ます。
 大和路の旅ににどちらの雰囲気を好むかは人によって違うでしょうが、私は
古寺の鐘がもの悲しく響くという趣を選びました。
  ○自句自解「全山は紅葉の中阿弥陀仏」
 寺を包んでいる背景の山は一面紅葉の盛り。その寺の中に金色の阿弥陀仏像
が鎮座している。その対比を詠んだのですが、小野寺さんは「全山紅葉の状態
を阿弥陀仏として眺めた感覚に共鳴します」と書いてくれました。なるほどそ
ういう解釈もあるのか、と感心した次第です。
  ○自句自解「北の海荒れてロシアの島見えず」
 北海道オホーツクの海を思い浮かべて詠んだ句です。晴れていればロシアが
管理している北方四島が見えるはずなのに、海が荒れているのでそれが見えな
い、という情景です。
 わざと季語を入れない、無季の句にしてみました。

(5) 深瀬の感想、自句自解
- 全体的感想
  改めて、秋という季節を噛みしめることができました。
  季節の色としては、春は新緑や桜色、夏は深緑、秋は紅黄色、冬は白 (雪や
寒) という感じだと思いますが、各句に、秋の風景や色彩が印象深く、たのし
めました。
  俳句を作る意味とか、よい俳句とはどのようなものか、といったことを思う
ことがありますが、最近、下記の著書がかなり参考になった気がしました。
  今泉恂之介著 "芭蕉から第二芸術まで  俳句史の真実" NPO 双牛舎刊
  今泉さんは、上智大学柔道部の先輩であり、日経論説委員を勤められ、現在
、俳句の普及を進めるNPO 法人双牛舎の代表理事です。
 双牛舎については、下記のURL から参照できます。
  http://sogyusha.org/blog/
- 自句自解
・渓谷の鉄橋染める紅葉かな
 駅などのポスターを参考に作りました。文字通りポスター俳句。
・ひとえだのもみじ飾りて妻とお茶
  妻については、下記のような句を作ってきました。なにか接点が単純すぎて
空気のような存在になっている感じもしています。
 - 妻ひとつわれもひとつとぶどう食べ
  - 子ら巣立ち妻と二人の秋の暮れ
 - 芋入りのみそ汁妻と湯気をかぐ
  - 寒き夜は妻と二人で鍋かこむ
  - 明け早し妻に淹れし茶冷え置かる
   - 春眠の妻起きたるを遠く聞き
・ゴルフ場ボール浮き立つ紅葉かな
 コースのまんなかに紅葉の木が数本あって、その上を白球が越えていくイメ
ージですが、ラフのなかの紅葉の葉っぱに埋もれているのを探しているのが現
実です。
・裏道をあゆめば紅葉ここにあり
・ビル街にひそり陽あびる紅葉かな
 都会のなかの紅葉も結構目立つと思っています。
・もみじ葉に送られあの世の戸をたたき
・生の意味もみじに問いて答えなし
・終活を主業と決めて秋の声
 やはり70歳が目の前なので、生死のことが気になるようになりました。スム
ースにあの世にいけたらよいと思っています。
・雨音の秋を深める北の宿
・北国のゴルフの空にいわし雲
・北国の赤きリンゴを亡き父母に
・北国を鉄路で行けば秋深し
 両親が秋田県出身であり、私は東京二世です。東北地方に自分のルーツがあ
るような気持ちをいつももっています。ゴルフの句は、10月17日の霞光会のス
パリゾートハワイアンGCでのものです。
・図書室の窓辺に潜む秋の声
・秋の声砂浜ひそり波の音
 秋の気配は、さみしいような、落ち着くような、内省的な気持ちにさせられ
るように感じます。
・とうもろこし回して食べるゲーム感
 とうもろこしというのは、なにか異邦感を感じさせる食べ物だと思います。
・蒼き富士坂から望む秋の暮れ
 目黒駅から自宅に歩く途中、左手に下り坂がありますが、そこから富士山が
見えます。よく写真を撮っている人をみかけます。
・電線をよぎって沈む秋夕陽
  以前、「夕焼けの電線よぎる落ち葉かな」という句を作りましたが、それの
秋版のつもりですが。
・掛け布団重きに秋の深みゆく
 夏の方が、ふとんもなく、ベッドの上で自由に動けてよかったな、という思
いです。年とともに寒さに弱くなっていく感じです。
・雨あがり秋の陽 (ひ) 空に満ちにけり
 雨上がりの空の透明感を詠んだつもりです。
  ------

2017年11月13日月曜日

七句会 第22回 ネット句会の選句結果のご報告です。

 七句会のみなさま
 第二十二回の七句会にご参加いただきたいへんありがとうございました。
今回の選句結果をご報告いたします。
 5 点句
(010) 紅葉燃ゆ 古都の甍(いらか)を雨が打ち         小野寺
 4 点句
(014) せせらぎは 底に紅葉を 敷き詰めし。          小野寺
(046) 虫時雨(むししぐれ)朋逝き夜半の 独り酒        小野寺
(076) 大和路や古寺の鐘聞く秋の旅               豊
 3 点句
(003) ひとえだのもみじ飾りて妻とお茶             深瀬
(015) 山門と 競う紅葉よ 燃えさかる             吉良
(023) 苔むした 古都の小径に 紅葉 燃ゆ。          小野寺
(024) 寒の朝 嵐に耐えた 紅葉 (もみじ) 散る         宮澤
(028) 幼子の 手よりもれ落つ 紅葉かな            吉良
(035) ミサイルに秋刀魚も細る北の海              橋本
(038) 北の使者しばし休める刈田かな              橋本
(066) 野辺送り 朋なき空に 赤蜻蛉              小野寺
 2 点句                               
(012) 紅葉 (こうよう) や 木々で異なる 色変化 (いろへんげ)  宮澤
(020) 紅葉映え白月浮かぶ深き空                橋本
(026) もみじ葉に送られあの世の戸をたたき           深瀬
(030) 北国の 白夜のしとね まどろみぬ            宮澤
(039) 雨音の秋を深める北の宿                 深瀬
(053) 秋蝶は陽だまりの外息を止め。              小野寺
(054) 紅の山肌隠す白き舞                   秋元
(055) 掛け布団重きに秋の深みゆく               深瀬
(060) 逝く友に 夢託されて 秋ふるえ             森杜瑯
(064) 秋桜や小箱近づく無人駅                 治部
(075) 古希過ぎて ふる里目指す 鰯雲             森杜瑯
  下記に、選句表に、各句の右側に作者名、および、その下に選んだ人の名前
とコメント (追番付き、順不同、敬称略。) を付したものを添付します。
  次回については、来年1 月上旬ころにご連絡したいと思っていますので、よ
ろしくお願いいたします。やり方、等について、ご意見がありましたら、ご連
絡をいただきたく、よろしくお願いいたします。
 事務方から、以下、ご連絡、ご依頼です。
(1) 選句参加者
 今回の選句には、下記の14名が参加しました。
  秋岡さん、秋元さん、小野寺さん、吉良さん、齋藤さん、志方さん、治部さ
ん、中津川さん、橋本さん、宮澤さん、森杜瑯さん、柳町さん、豊さん、深瀬。
(2) 今回の句会の結果を踏まえた自句自解、感想、等の募集について
  今回の句会の選句結果を踏まえて、各自、表明しておきたいこともあるので
はないかと思いますので、自句自解、感想、等、なんでも結構ですので、募り
たいと思います。一応、期限としては11月28日とし、事務方にメールでいただ
き、それを七句会の下記のweb に掲載することにしたいと思います。
 http://nanaku-haiku.blogspot.jp/
  これまで、句会の後、勉強会としての集まりを企画していましたが、参加者
が少ないこともあり、改めることにしました。集まっての勉強会も適宜、行い
たいとは思っていますが、よろしくお願いします。
  2017.11.13
      代表   橋口侯之介 (休会中)
      顧問  豊  宣光
      事務方 深瀬久敬
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    1.兼題  紅葉
(001) 紅葉燃え 古都の真昼を 過ぎにけり           小野寺16
(002) 紅葉 (こうよう) の 木漏れ日揺らし ボート漕ぐ     宮澤06
1 深瀬 秋日和に、どこかの湖とか公園の池で、
 岸辺に紅葉が生い茂っているなか、若かりし
 ころの奥さんと一緒にボートを漕いでいる様
 子が目に浮かびました。
(003) ひとえだのもみじ飾りて妻とお茶             深瀬02
1 吉良  さりげない表現の中に日常の家庭の穏
 やかな平安を感じさせてくれる句です。
2 柳町
3 宮澤 紅葉の下で芸者揚げて一献が昔の夢だ
 ったけれど、今は一枝の紅葉とお茶があれば
 幸せ。
(004) デパートに 一畳だけの 紅葉映え            吉良02
(005) ビル街にひそり陽あびる紅葉かな             深瀬05
(006) 満天の 星従えて 紅葉燃ゆ 。             小野寺20
1 森
(007) 全山は紅葉の中阿弥陀仏                 豊01
1 小野寺 全山紅葉の状態を阿弥陀仏として眺
 めた感覚に共鳴します。
(008) ゴルフ場ボール浮き立つ紅葉かな             深瀬03
1 中津川  ラフに打ち込んだボールが行ってみ
 たら紅葉の上に乗っていたのでしょうか。白
 いボールと紅葉の色の対比がおもしろいと思
 いました。
(009) 外苑を 黄金に染めて 紅葉立つ             吉良04
(010) 紅葉燃ゆ 古都の甍(いらか)を雨が打ち         小野寺03
1 柳町
2 中津川
3 宮澤 黒い甍は炭でしょうか、雨に当たると
 燃え上がり紅葉が一層鮮やかに冴えます。
4 秋元
5 治部
(011) 花水木朝日に煌めく濡れ紅葉               橋本02
(012) 紅葉 (こうよう) や 木々で異なる 色変化 (いろへんげ)  宮澤04
1 志方
2 治部
(013) 生の意味もみじに問いて答えなし               深瀬07
1 豊 作者は色づいた紅葉に人生の悲哀を感じ
 ているのでしょう。しかし、紅葉は自然のま
 まに色づき、散っていくだけ。そこには人間
 の俗念が入る余地はありません。ですから、
 紅葉は何も答えないのです。
(014) せせらぎは 底に紅葉を 敷き詰めし。          小野寺19
1 吉良  目を閉じると目の前に深山のせせらぎ
  を思い浮かべられます。
2 中津川  せせらぎの上も底も紅色で囲まれて
  いるようです。
3 秋元
4 治部
(015) 山門と 競う紅葉よ 燃えさかる             吉良01
1 齋藤
2 橋本 鮮やかで力強い紅葉が浮かびます。
3 深瀬 真っ赤に塗られた山門と真っ赤な紅葉
 とが、その色を競うように燃え盛っていると
 いう色彩感覚が印象的です。
(016) 峠路(とうげみち) 風 運びたり 山紅葉        小野寺18
1 志方
(017) 裏道をあゆめば紅葉ここにあり              深瀬04
(018) 黄昏(たそがれ)て永観堂に 紅葉燃ゆ。         小野寺05
1 秋岡  "黄" 昏と "紅" 葉のバランス及び句
 のリズムに共感しました。
(019) 富士の峰 麓は紅葉 (もみじ)  白冴えぬ         宮澤05
(020) 紅葉映え白月浮かぶ深き空                橋本01
1 齋藤
2 小野寺 紅い紅葉の向こうに秋の白い月が浮
 かぶ深き空が効いてます。
(021) 晩年は紅葉のごとく散りゆかむ              豊02
1 志方
(022) 渓谷の鉄橋染める紅葉かな                深瀬01
1 豊 山は一面の紅葉。その渓谷に橋が架かっ
 ています。木の橋でしょうか。鉄橋でしょう
 か。鉄橋ならば、錆び付いた古い橋がいいで
 すね。渓谷美を切り取ったいい風景です。
(023) 苔むした 古都の小径に 紅葉 燃ゆ。          小野寺17
1 柳町
2 橋本
3 秋元
(024) 寒の朝 嵐に耐えた 紅葉 (もみじ) 散る         宮澤03
1 吉良  嵐に耐えた紅葉に対する作者の愛おし
  みを感じます。
2 橋本 風は凌いでもとどめの寒さ、自然の摂
 理。
3 小野寺 嵐でも散らなかった紅葉が寒の朝に
 散っていた、自然の摂理の確かさですね。
(025) 音もなく 紅葉 散りけり 星月夜            小野寺21
(026) もみじ葉に送られあの世の戸をたたき           深瀬06
1 森
2 豊 もしかすると(013) と同じ作者でしょう
 か。すでにこの世からおさらばして、あの世
 へ向かっている。「あの世の戸をたたき」に、
 この世には何の未練もないというサバサバし
 た感じと味わい深いユーモアがあります。
(027) 紅葉散る 音  踏みしだき 百舌鳥(もず)が啼き     小野寺15
1 齋藤
(028) 幼子の 手よりもれ落つ 紅葉かな            吉良03
1 秋元
2 治部
3 小野寺 孫のてからはらりと落ちた紅葉は微
 笑ましい情景です。作者の深い愛情を感じら
 れ好感がもてます。
(029) 渓流に紅葉映して秋が暮れ                秋元02
   2.兼題  北
(030) 北国の 白夜のしとね まどろみぬ            宮澤02
1 吉良  いつ暮れるともない白夜の中で夢をみ
  させてくれます。
2 橋本
(031) 北の海荒れてロシアの島見えず              豊04
(032) 北国のゴルフの空にいわし雲               深瀬09
(033) 北の国 知る人ぞ知る 旨い燗              宮澤01
1 齋藤
(034) 北国を鉄路で行けば秋深し                深瀬11
1 治部
(035) ミサイルに秋刀魚も細る北の海              橋本03
1 中津川  細るという表現が怖さを表している
  ようです。
2 豊 時事川柳として秀逸ではないでしょうか。
 北朝鮮が暴走しないよう、アメリカ追従では
 なく、もっと積極的に日本は独自の外交を進
 めるべきだと思います。
3 秋元
(036) 北国の赤きリンゴを亡き父母に              深瀬10
(037) 北国の便りを運び鳥渡る                 豊03
(038) 北の使者しばし休める刈田かな              橋本04
1 吉良  刈りとった寂しい北の田んぼに、新し
  い住人の活気を感じます。
2 秋岡  丹頂鶴の餌をついばむ姿が自然と想像
  されます。
3 深瀬 渡り鳥が、稲刈りの終わった田んぼに
 舞い降りて、どじょうなどをついばんでいる
 様だと思います。いよいよ冬が近いなという
 様子が活写されていると思います。
(039) 雨音の秋を深める北の宿                 深瀬08
1 志方
2 宮澤 雨音が秋を深め、静かになったら雪。
 冬はもうすぐです。
   3.雑詠
(040) ちんどん屋 奏でる音色に 風哀し            志方02
1 秋岡  季語が無いのかなあと思いながらも、
  全体の哀調に共感しました。
(041) 手強いぞ風雨の後の濡れ落葉               治部05
(042) 雨あがり秋の陽 (ひ) 空に満ちにけり           深瀬19
(043) 百舌鳥(もず)啼きて茜(あかね)の雲に友の 逝き    小野寺06
(044) 注射針刺さるる痛さ秋深む                豊06
1 中津川  インフルエンザ予防接種の季節です。
(045) 朝霧の 流れ梢に 雉がなく               志方04
1 小野寺 朝霧の静寂のなかの木立に雉がない
 ている。しみじみとした静謐な情感を感じか
 もしだしています。
(046) 虫時雨(むししぐれ)朋逝き夜半の 独り酒        小野寺11
1 齋藤
2 吉良  親しい友を偲んで一人酒。我々のこれ
  からの姿でしょうか。
3 橋本
4 宮澤 逝きし友をしのび、読経のごとき虫時
 雨をBGM にしみじみと独り酒。さみしいね。
(047) とうもろこし回して食べるゲーム感            深瀬15
(048) 赤々と むら雲染める 残照が              志方01
(049) 落葉松(からまつ)の 時雨て梢 消えゆけり       小野寺08
1 橋本  山水画の世界を見ているようです。
(050) 秋の声砂浜ひそり波の音                 深瀬14
(051) 故郷(ふるさと)の駅舎の窓を 走り雨          小野寺14
1 柳町
(052) 彷徨 (さまよ) えり 虫の音やみても 夢捨てず      森杜瑯04
1 志方
(053) 秋蝶は陽だまりの外息を止め。              小野寺01
1 秋岡  窓越しに息をひそめて蝶の姿を追いか
  ける作者の様が良くわかります。
2 豊 俳句らしいまとまりがありますね。「息
 を止め」ているのは、もう死にかけているか
 らでしょうか。それとも寒さに震えているか
 らでしょうか。
(054) 紅の山肌隠す白き舞                   秋元01
1 治部
2 小野寺 真っ赤に燃えるような紅葉を覆い隠
 すように白い雪がふってきた。季節の移り変
 わりをとらえて墨絵の趣があります。
(055) 掛け布団重きに秋の深みゆく               深瀬18
1 秋岡  布団の枚数が増えてくるたびの冬が近
  づいてくるを共感します。
2 宮澤 軽い羽根布団は性に合いません。布団
 の重さは寒さと相関します。
(056) 天(空)蒼く 水引き草に 風がたち。          小野寺02
(057) 黒き富士裾で薄が露払い                 治部02
1 中津川  初雪、初冠雪が目前に来ているよう
  です。
(058) 夕の寺迫り来るなり百日紅                橋本05
(059) 風光り 薄(すすき)の原に 曼殊沙華          小野寺12
1 志方
(060) 逝く友に 夢託されて 秋ふるえ             森杜瑯03
1 深瀬 亡くなっていく人から、夢を託される
 というのは、こころに重くひびくものがあり
 ます。なにか世界全体がふるえている感じが
 します。
2 小野寺 夢を託されたほどの友人に先にいか
 れてそれを受け止められずにいる己の心境を
 秋ふるえとした真情は 深い哀しみの共感を
 おぼえます。私もこの夏場に失った友人の意
 思をおもうと自分もまた友人に夢を託してい
 つ逝くともしれず古希とはそういう年齢にさ
 しかかったのですね。明日は我が身なのだと
 おもうと今の命に感謝です。
(061) 日暮れても 金木犀の 残り香が             志方03
(062) 赤ワイン描きし 朋は 旅立ちぬ             小野寺10
(063) 満月に 吠える悲しさ 古希の虎             森杜瑯02
(064) 秋桜や小箱近づく無人駅                 治部03
1 柳町
2 中津川  列車を小箱と表現しているのでしょ
  う。無人駅の様子が浮かびます。
(065) 蒼き富士坂から望む秋の暮れ               深瀬16
(066) 野辺送り 朋なき空に 赤蜻蛉              小野寺09
1 豊 「朋なき」という句がほかにもあります
 が、同じ作者でしょうね。亡くなった方はよ
 ほどの親友だったのでしょう。赤蜻蛉はその
 人の魂かもしれません。
2 深瀬 亡くなった人が、なにかに生まれ変わ
 り、身近にただよっているのではないかとい
 う感覚は、普遍的なものだと思います。夕焼
 け小焼けの赤蜻蛉もなにかさみしい感じです。
3 治部
(067) 虫集く一人深夜の露天風呂                治部04
1 深瀬 深夜の露天風呂に入っていると、ぽつ
 んとついた常夜灯に虫がたくさん集まってい
 る。あまり体験することのない風景でもあり、
 印象的です。
(068) 水澄みて 流転の底に わが生命(いのち)        小野寺04
(069) 黒雲の上は茜の雲の峰                  橋本06
(070) 闇や猫の怪しき気配して                 治部01
1 秋元
(071) 電線をよぎって沈む秋夕陽                深瀬17
1 豊 電線と夕陽の組み合わせに惹かれました。
 秋のもの寂しい夕方の風景をユニークな視点
 でとらえています。
(072) 秋さやか 天まで透けて 渡り鳥             志方06
1 吉良  昔子供の頃は空がきれいで渡り鳥の群
  れをよくみました。懐かしい句です。 
(073) 終活を主業と決めて秋の声                深瀬12
(074) 秋蝶の 羽たたみおり 納屋の屋根            小野寺13
1 齋藤
(075) 古希過ぎて ふる里目指す 鰯雲             森杜瑯01
1 齋藤
2 深瀬 鰯雲というのは、見ていて不思議に思
 います。加藤楸邨の「鰯雲人に告ぐべきこと
 ならず」は有名ですが、鰯雲には、人の心の
 奥底を揺り動かすなにかがあるように感じま
 す。
(076) 大和路や古寺の鐘聞く秋の旅               豊05
1 柳町
2 志方
3 橋本  奈良はやはり秋が似合いますか。
4 秋元
(077) いわし雲 宙(そら)の蒼きに 鳶(とび)が鳴き     小野寺07
(078) 彼岸花 紅に魅かれて 畠中を              志方05
(079) 図書室の窓辺に潜む秋の声                深瀬13
------
 追記
 選句にあたり、下記のコメントが寄せられています。ご参考までに掲載させ
ていただきました。
・下記の7 作を選句しました。楽しませて頂いておりますが、素人である私が
自分の好みのまま皆様の労作から選句させてもらっていることに多少の申し訳
なさを感じております。 (齋藤宏文さん)
・秋の風情が見事に詠み込まれている秀句ばかりで、真に選ぶのに苦労しまし
た。以上ですが、半分以上の句が素晴らしいと思います。 (志方さん)
                                   

2017年8月29日火曜日

七句会 第二十一回目のネット句会 七句会交差点 第02号

 七句会 
 第二十一回ネット句会参加各位
 第二十一回の選句結果を踏まえて、感想や自句自解、等をおよせいただき、
たいへんありがとうございました。
 およせいただいたものを、名前順に、ほぼそのまままとめてお届けすること
にします。今後のやり方に、ご意見、等ありましたら、よろしくお願いします。
 今回は、七句会の案内を出した方、全員にご参考までにお送りすることにし
ました。
 七句会のweb  http://nanaku-haiku.blogspot.jp/ には、掲載したいと思っ
ています。
  今後とも、よろしくお願いいたします。
  深瀬 (事務方)


(1) 小野寺さんの自句自解
078 打ち水を 避けて 町屋は暮れにけり
 豊さんが解説してくださった通り
 京都の町は夏が暑く、打ち水が風物詩です。
 昼間の暑いさかりの 打ち水を避けて 夕暮れが
 迫ってきている。白っぽい暑さが 気がつけば
 夕暮れに変わってきている、長い歴史に裏打ちされた
 京都の町屋は 時間の移ろいとともに絵になる風景でもあります。
090 宵宮に 浴衣のひとの 薄化粧
 
 深瀬さんが的確に解説してくださったとおり
 宵宮は祭りの前夜祭のようなもので氏子は粛々と
 装束を清めております。静粛な佇まいの宵闇が迫る中に
 浴衣の君は 薄化粧なのです。志方さんの想像の通り
 薄化粧が 美しく 蠱惑的なのです。。
054 陽だまりに 影落としけり 夏の蝶
 
  少年の頃 蝶の採集が好きで宝石のような緑シジミや
  ルリタテハ。オオムラサキなどを追いかけておりました。
  夏のひだまりにいた 瑠璃色をしたルリタテハの濃い
  影は今でも蝶を追いかけた日の心象風景です。
058 夕菅や 時雨て荒れ野 夏木立
  学生時代に行った尾瀬の風景です。
  夕菅草が 荒れ野に一面に咲き乱れ
  時雨た荒れ野の向こうに 夏木立がおぼろに見え
  かっこうが啼いておりました。
060 藍染の浴衣着流し 乱れ髪
  
  宵宮に行った浴衣のひとは藍染の浴衣を着流して
  おり、黒髪が風に吹かれてほつれておりました。
  
062   佇めば 闇を蛍が夢をひき
   少年の頃 岩手の釜石の田舎の蛍は平家蛍で小さい光なのですが
   生まれ故郷の母の田舎の福岡の東郷という田舎の蛍は
   源氏蛍で 光がつよく大きいのです。
   まるで夢のなかを ほたるの 強い光が流れていくような
   心躍る 風景でした。蛍の光と夢を引くとしたものです。
066  夕焼けに梅雨あがりたり 草ひばり
   東北の田舎町で梅雨が上がるころ 夕焼けの
   草むらで まるで夏がくるのを告げるように
   草ひばりが啼いていました。
   草ひばりの囀りは梅雨明けの時の自然の声でもありました。
068   夏蝶の 羽たたみおり 石清水
   少年のひ 宝石のように輝くミドリシジミを追って
   クヌギの高い木々をさがしつかれて 石清水のある
   沢の岩陰にたどり着き あのミドリシジミが羽をたたんでいるの
   を見たときの心臓の鼓動は 今でも石清水の冷気と
   ともに強く心を揺さぶります。
   季重なりですが ご容赦。
072 海染めて ゆらりと眩しあかね雲
  雲は光を呼吸する、という詩を作ったほど雲は生きて
  呼吸するように思います。静寂のなかで ゆっくりと
  海一面をあかく染めて落ち行く落日は 大自然がおりなす
  一幅の画でもあります。
074 とほき日の 青き匂ひや 栗の花
  都会育ちの人にはわかりにくいかもしれません。
  蝶を追って山野を駆け巡った少年時代
  一面の栗畑に出くわしたときに かいだ
  栗の花の むせかえるような強烈な匂いは
  男がオスとして人生を生きていくための匂いでもありました。
  東北地方では男の子が生まれると 栗の木を植える
  風習があります。人生の荒波を乗り越えられるように
  との先祖からの贈り物でもありました。
  今万感の想いをこめて 栗の花の句をつくりました、
 
(2) 中津川さんの自句自解、等
私の句が6点句となって驚いています。兼題 汗 への投句が少なかったこと
がこの結果になったのでしょう。
深瀬さんの5点句の 手にもつ鎌に汗ひかり の表現が素晴らしく感心してい
ます。
 背の汗に 峠の風や 富士仰ぐ
 7月の初旬に東海道での左富士で有名なさった峠を歩きました。
坂道を登り切った峠でリュックをおろして小休止した時に、背中にかいた汗が
吹いてきた風にスーッと引いた感じがしました。
 最後の5文字は「左富士」、「富士遥か」、「富士仰ぐ」などいろいろ考え
ましたが、高さ日本一の富士で仰ぐとしました。
 花火に関しては隅田川のような大規模なものから、線香花火の手花火まで、
また景観や見物の人の様子まで幅広く、選句には大変迷いました。

(3) 森杜瑯さんのコメント
深瀬さん
 先週、家内と四国松山に行って来ました。松山は正岡子規の出身地らしく、
俳句を作るのが盛んです。提示してあった俳句の中で、私が気に入った句を一
つ。
「観念の眼を閉じており 春の夢」
俳句仲間は、お互い、80歳の加山雄三を目指して、頑張れる句を創りましょう


(4) 豊さんの自句自解、等
○最高点句「背の汗に 峠の風や 富士仰ぐ」について
 最初にこの句を読んだとき「富士仰ぐ」という表現に引っかかったので、選
びませんでした。
 しかし、選んだ人たちの鑑賞文を読んでいるうちに、なるほどいい句だな、
と思い直しました。
 私の読みの浅さを反省した次第です。
 「富士仰ぐ」という言葉を他の言葉に変えられないかと考えましたが、やは
りこれしかないようです。
○自句自解 「 吊り橋の汗も引っ込む高さかな」
 この句は最初は「吊り橋の冷や汗高所恐怖症」でした。私は高所恐怖症なの
で、深い谷を渡る吊り橋は苦手です。
 吊り橋の下を見ると怖くて、それまで山を歩いてきた汗が引っ込んでしまう
、ということを表現したかったのですが、十分に伝え切れていなかったようで
す。
○自句自解 「紙中より動くものある曝書 (ばくしょ) かな」
 曝書とは、本を虫干しすることです。本棚にしまってあった本を天気のいい
日に虫干ししたら、ページの間から小さな虫が出てきた、という意味です。
 動くものは必ずしも虫とは限りません。かつて愛読していた本の思い出が久
しぶりによみがえってきた、という解釈も成り立ちます。
 選んでくれた方はそれをわかっていただけたたようで、うれしかったです。

(5) 深瀬の自句自解、等
  花火は、身近なようでいて身近でない感じがして、想像で作ったという感じ
です。
  この歳になると、終着に近いこれまでの人生を、一瞬の華やかさの後、闇に
消えていく花火に重ね合わせたりしたくなります。
・ぽとと落ち線香花火や闇の中
・ひゅうどんぱっ来し方見れば花火如
・鎮魂の花火に気持ち重ねけり
・圧巻の花火の後の無の世界
  また、サラリーマン時代に組織の目標管理に追われ、花火どころではなかっ
たことを思い返しました。
・PDCA抜け出し花火しみじみと
 その他、下記のような感じです。
・鉄橋の電車にバンザイ花火かな (多摩川の鉄橋あたりを想像しました。)  
・寝たきりの母花火聞き目は遠く (聴覚は最後まで残るそうです。)
・両国の橋と花火に小舟群れ (浮世絵のポスターを見て。)
・妻とお茶ビルの影から花火咲く (全くの想像です。)
・三歳児花火持つ手の緊張し (孫が三歳。自分の子供のころと重ねて。)
  汗は、暑さから身を守る生理的なものですが、なにかと真剣に向き合う姿勢
を象徴するものにもなっていると思います。そこで、
・落ち武者の汗拭く顔に無念満ち
・老農の手にもつ鎌に汗ひかり
・アマゾンの裸族弓持ち汗耐える
を作りました。
  最近の都心の電車は冷房の効きすぎではと思うこともあります。
・電車乗り突き刺す冷気汗拭う
 雑詠は、下記のような感じです。
・ひしゃく持ち清水に並ぶ山茶会 (山裾の茶会と清水の取り合わせ。)
・煌めいて清水に揺れる雲と山 (こんこんと湧く清水を想像して。)
・枝豆のみどりさやけし茹であがり (茹で上がりの枝豆の美しさ。)
・枝豆のぺしゃんこふっくら指迷ひ (高級品でないためか。)
・囲碁の後酒に枝豆笑顔満ち (囲碁の殺すか殺されるかと後の世界の対比。)
・怪談も加計森友に席ゆずり (いまだに真相はよく分からない感じです。)
  その他
  俳句とtwitter について
  最近、ネット上のtwitter によって短文で言いたいことをきらくに言うとい
う行為が流行しています(*) 。一方、俳句は短文であっても、そこに自分の美
意識や深層記憶を、ある程度普遍化し圧縮凝縮するというプロセスが入ってい
ると思います。
  日本の和歌や俳句は、こうした一種の気持ちの昇華活動が、ことばの選択を
伴いながら、行われてきたのではないかと思います。連句のような世界とは別
に、建設的なコミュニケーション手段としての俳句によるtwitter 的やりとり
とか可能なのか、少し気になります。
  (*) アメリカ大統領は、施政方針をtwitter で表明し、中国では党方針の妨
げとなるtwitter の削除に追われているようです。



2017年8月14日月曜日

七句会 第二十一回ネット句会の結果です。

 七句会のみなさま
 第二十一回の七句会にご参加いただきたいへんありがとうございました。
今回の選句結果をご報告いたします。
  6 点句
(041) 背の汗に 峠の風や 富士仰ぐ            中津川
 5 点句
(048) 老農の手にもつ鎌に汗ひかり             深瀬
 4 点句
(004) 圧巻の花火の後の無の世界              深瀬
(024) 三歳児花火持つ手の緊張し              深瀬
(029) はかなさを 誰と競うか 手花火や          宮澤
(031) 隅田川 時空を超えし 江戸花火           吉良
 3 点句
(013) 五尺玉終の花火か咲きほこる             柳町
(017) ぽとと落ち線香花火や闇の中             深瀬
(032) 寝たきりの母花火聞き目は遠く            深瀬
(078) 打ち水を 避けて 町屋は 暮れにけり        小野寺
(090) 宵宮に 浴衣のひとの 薄化粧            小野寺
 2 点句
(008) 縁台に夜空見上げてかき氷              秋元
(014) 夏の湖 (うみ) 天空の花 舞い落ちる         中津川
(021) 花火舞う 同心円の 点描画             宮澤
(039) 額汗たわわに成りて夏野菜              秋元
(042) 電車乗り突き刺す冷気汗拭う             深瀬
(054) 陽だまりに 影落としけり 夏の蝶          小野寺
(058) 夕菅や 時雨 (しぐれ) て荒れ野 夏木立       小野寺
(060) 藍染の 浴衣着流し 乱れ髪             小野寺
(062) 佇めば 闇を 蛍が夢をひき             小野寺
(066) 夕焼けに 梅雨 (つゆ) あがりたり 草ひばり     小野寺
(068) 夏蝶の 羽たたみおり 岩清水            小野寺
(069) 紙中より動くものある曝書 (ばくしょ) かな      豊
(072) 海染めて ゆらりと眩し あかね雲          小野寺
(074) とほき日の 青き匂ひや 栗の花           小野寺
(083) 酷暑暮れ蜩の声澄み渡る               橋本
  下記に、選句表に、各句の右側に作者名、および、その下に選んだ人の名前
とコメント (追番付き、順不同、敬称略。) を付したものを添付します。
  次回については、10月上旬ころにご連絡したいと思っていますので、よろし
くお願いいたします。やり方、等について、ご意見がありましたら、ご連絡を
いただきたく、よろしくお願いいたします。
 事務方から、以下、ご連絡、ご依頼です。
(1) 選句参加者
 今回の選句には、下記の13名が参加しました。
  秋岡さん、秋元さん、小野寺さん、吉良さん、志方さん、治部さん、中津川
さん、橋本さん、宮澤さん、森杜瑯さん、柳町さん、豊さん、深瀬。
(2) 今回の句会の結果を踏まえた自句自解、感想、等の募集について
  今回の句会の選句結果を踏まえて、各自、表明しておきたいこともあるので
はないかと思いますので、自句自解、感想、等、なんでも結構ですので、募り
たいと思います。一応、期限としては8 月28日とし、事務方にメールでいただ
き、それを七句会の下記のweb に掲載することにしたいと思います。
 http://nanaku-haiku.blogspot.jp/
  これまで、句会の後、勉強会としての集まりを企画していましたが、参加者
が少ないこともあり、改めることにしました。集まっての勉強会も適宜、行い
たいとは思っていますが、よろしくお願いします。
  2017.08.14
      代表   橋口侯之介 (休会中)
      顧問  豊  宣光
      事務方 深瀬久敬


    兼題  花火
(001) 手花火や 星が飛び出す 揺らぐ玉          宮澤03
(002) 船めがけ 襲い落つごと 大花火           中津川04
1 吉良  火の粉が舞い降りる状況が実感され
 ます。
(003) 漆黒に大輪の花儚かなしや              秋元02
(004) 圧巻の花火の後の無の世界              深瀬10
1 森     
2 宮澤    あんまり出来が良いと燃え尽きてし
  まうので、いつも手を抜いています。
3 志方    (029) とともに、花火のあとの虚無
  感が上手く表現されている
4 治部   
(005) 漆黒の 闇を照らすや 大花火            吉良02
1 秋元   
(006) 花火師のまとふ危険に近寄らず            豊02
1 中津川 
(007) 夏花火 夜空に広げし 万華鏡            吉良05
(008) 縁台に夜空見上げてかき氷              秋元03
1 中津川 
2 治部   
(009) 夕食もそこそこ花火に走る子ら            橋本01
(010) ビル街に 音響かせて 花火あげ           吉良04
(011) 鎮魂の花火に気持ち重ねけり             深瀬07
(012) 花火見る娘の瞳に映る華               秋岡02
1 小野寺  娘の瞳に写る花火の華はそのまま大
  切な娘への愛情となって清々しい。
    終活中の我が身をかさねてみました。
(013) 五尺玉終の花火か咲きほこる             柳町02
1 豊      花火大会の最後に五尺玉があがった
 光景でしょうか。「咲きほこる」がいいです
 ね。
2 小野寺  花火は己の人生そのものかもしれま
 せん。古稀にもなればその哀感は共鳴できま
 す。
3 深瀬    終活ということばを使う世代になっ
  たことを改めて思いましたが、これまでの生
  き方を振り返り、静かに納得している雰囲気
  がいいと感じました。
(014) 夏の湖 (うみ) 天空の花 舞い落ちる         中津川02
1 吉良  湖に映る花火が美しく表現されてい
  ます。
2 橋本  絵や写真を超える表現、巧いです
(015) 両国の橋と花火に小舟群れ              深瀬06
1 秋元   
(016) 田舎町花火も間延びして上がり            橋本02
(017) ぽとと落ち線香花火や闇の中             深瀬02
1 吉良  線香花火が落ちる「ぽとと」が効い
  ています。
2 宮澤    僕のはすぐ落ちましたけど、君のは
  最後までよく頑張りました。
3 豊      「ぽと」の擬音語がきいています。
  「落ち」よりも「落つ」のほうがよかったの
  ではないでしょうか。
(018) 花火師の 魂打ち上げ 夏の夜            吉良01
(019) 鉄橋の電車にバンザイ花火かな            深瀬01
(020) 大花火開く下行く屋形船               豊01
(021) 花火舞う 同心円の 点描画             宮澤01
1 柳町   
2 深瀬    同心円の点描画という表現に説得力
  を感じました。花火師のそれなりの工夫のた
  まものなのだと思います。
(022) PDCA抜け出し花火しみじみと           深瀬05
(023) 大輪の花々競う 夏夜空               中津川03
(024) 三歳児花火持つ手の緊張し              深瀬09
1 吉良  初めての花火をもつ子供の様子がか
  わいい。
2 秋岡    情景が浮かんできて思わず微笑んで
  しまう句です。
3 宮澤    火を点ける、おじいちゃんも緊張し
  ています。
4 小野寺  可愛い孫に花火をさせる日常的な何
 気ないまなざしが自然に表れてます。
(025) せがまれて孫の手をとる線香花火           柳町01
(026) 静寂の 夜空を破る  大花火            吉良06
1 豊      まさにその通り。それまで静かだっ
  た空に大花火が開き、やがてまた静寂の空に
  戻る。観客も拍手喝采でしょう。
(027) 妻とお茶ビルの影から花火咲く            深瀬08
(028) 涼しげに遠見花火の夏の夜              秋元01
1 深瀬    かなり季重なりの印象ですが、遠く
  の花火を、ひとりしずかに見入っている雰囲
  気にひかれました。
(029) はかなさを 誰と競うか 手花火や          宮澤04
1 中津川 
2 志方    (004) とともに、花火のあとの虚無
  感が上手く表現されている
3 柳町   
4 小野寺  線香花火のはかなさをじっとみつめ
 る作者の心がゆれております。
(030) 起つ歓声 バケツめがけて 庭花火          中津川01
(031) 隅田川 時空を超えし 江戸花火           吉良03
1 秋岡    伝統の隅田川の花火、江戸時代から
  続いているのですね。東京勤務時代は見るこ
  とがなかったです。
2 秋元   
3 橋本  
4 治部   
(032) 寝たきりの母花火聞き目は遠く            深瀬04
1 吉良  今は花火を見に行く元気はないので
  しょうが、遠い思い出として目の前に花火が
  見えるようです。
2 宮澤    遠い記憶、心眼で壁の向こうを見て
  いるのでしょう。
3 小野寺  寝たきりの母は花火を観ることはか
 なわないけれども音で花火を観ていると老い
 た母への思慕を感じます。
(033) 遠く咲く 花火の輪の後 ドンと鳴る         宮澤02
(034) ひゅうどんぱっ来し方見れば花火如          深瀬03
1 柳町   

   兼題  汗
(035) 吊り橋の汗も引っ込む高さかな            豊04
(036) 一汗に身心軽し散歩かな               橋本03
(037) アマゾンの裸族弓持ち汗耐える            深瀬14
(038) 恥かいて 汗をかきかき 頭掻く           宮澤05
1 治部   
(039) 額汗たわわに成りて夏野菜              秋元04
1 宮澤    よく頑張った。さて誰に配ろうか。
2 柳町   
(040) ロシア行く準備に追われ玉の汗            秋岡01
(041) 背の汗に 峠の風や 富士仰ぐ            中津川06
1 吉良  若い頃の登山を思い出します。
2 森     
3 橋本  癒やされる瞬間、これがあるから登
  る
4 治部   
5 小野寺  峠を越えてきた向こうに富士を仰ぐ
 と上り来た道にも風も風が吹き疲労が視覚へ
 と移ります。
6 深瀬    雄大な夏の景色のなかに、なにか清
  らかな風情と格調が感じられました。
(042) 電車乗り突き刺す冷気汗拭う             深瀬11
1 志方    猛暑の実感
2 柳町   
(043) ほとばしる汗の若さや甲子園             豊03
(044) 落ち武者の汗拭く顔に無念満ち            深瀬12
1 中津川 
(045) 甲子園 ひたむきプレーに 目から汗         宮澤06
(046) 汗と涙と 甲子園遠く チアガール          中津川05
(047) 深いラフ汗かき出すもピン遠く            橋本04
1 秋岡    何かいかにも汗が出てきそうな状況
  ですね、しかもまだピンが遠くに見えるとは
  ・・・お疲れ様です
(048) 老農の手にもつ鎌に汗ひかり             深瀬13
1 秋岡     "鎌に汗ひかり" は何か黙々と野良
  作業に打ち込むきりりとした姿が伝わってき
  ます。
2 中津川 
3 豊      「汗」の句の中で一番ユニークな視
  点がでていました。完成度も高いです。
4 橋本  
5 柳町   

   雑詠、川柳
(049) 白南風 (しらはえ) を孕みて 故郷 (くに) の海ひかり。小野寺09
(050) すさまじき眠気吹き飛ぶ蝉の声            秋岡07
(051) 梅雨空に タイガー吠えて つきを呼び        森01
1 柳町   
(052) 栗の花 匂ひにむせて 夏至が過ぎ          小野寺01
(053) 猛暑日や バテバテ犬の 散歩道           中津川07
1 秋岡    小生も犬の散歩をよくするのですが、
  帰り道は本当に歩きが遅くなり強引に引っ張
  らないと帰り着きません。こちらがバテテし
  まいますが。
(054) 陽だまりに 影落としけり 夏の蝶          小野寺15
1 宮澤    音もなく、陽だまりの譜面に音符が
  舞います。
2 豊      68番にも夏蝶の句がありますが、お
  そらく同じ作者ではないでしょうか。68番も
  きれいな句ですが、惜しむらくは「夏蝶」と
  「岩清水」がともに夏の季語なので、こちら
  を選びました。
(055) 芝刈りを妻と二人で夏の朝              秋岡04
1 豊      何でもない日常を詠んだ句ですが、
  仲の良い夫婦の関係が想像できます。素直な
  作り方がいいと思います。
(056) 水打ちて 静けき街や 石畳             小野寺05
1 秋元   
(057) 薫風 故郷 (ふるさと) 運び 胸ゆする        森03
(058) 夕菅や 時雨 (しぐれ) て荒れ野 夏木立       小野寺20
1 志方    夏木立をうまく表現されていますね。
  しぐれや夕菅は露払いですかね
2 柳町   
(059) 怪談も加計森友に席ゆずり              深瀬20
1 橋本  やはり闇に消えていくのでしょうか
(060) 藍染の 浴衣着流し 乱れ髪             小野寺02
1 秋元   
2 柳町   
(061) あでやかな 君の背中に 花菖蒲           森02
(062) 佇めば 闇を 蛍が夢をひき             小野寺08
1 森     
2 秋元   
   白い三角形の天蓋を額に付けた初老の男が真夜中にな
  ると、麻布十番街を徘徊している
(063) 雷雲に うかぶ天蓋 彷徨 (さまよ) えり       森04
1 深瀬    選句にかなり躊躇しましたが、冥土
  に旅立つときもそう遠くはないという思いが、
  なにか突然身近に現れた異界によって突きつ
  けられた感じがしました。
(064) 水澄みて おの子遊べり 眼にひかり         小野寺12
1 深瀬    水澄むは秋の季語だと思いますが、
  真夏に元気に遊び回る子どもたちの眼の輝き
  もすごいと思います。孫二人が男子のせいか?
(065) 囲碁の後酒に枝豆笑顔満ち              深瀬19
(066) 夕焼けに 梅雨 (つゆ) あがりたり 草ひばり     小野寺13
1 志方   
2 柳町   
(067) 素人の義父が作りし青西瓜              秋岡05
(068) 夏蝶の 羽たたみおり 岩清水            小野寺11
1 吉良  岩陰の清水の涼しさを感じます。
2 中津川 
(069) 紙中より動くものある曝書 (ばくしょ) かな      豊06
1 秋岡    面白い句ですね、不要な本も沢山あ
  りますがたまには虫干しをしないといけませ
  ん。
2 橋本  したことはありませんが、動いたも
  のが気になります
(070) 雷雲に 光りて深し 山の峰             小野寺17
1 橋本  
   こんな人達に負けるわけにはいかないと罵られたこん
  な人々のカウンターパンチ、政権・与党からダウン (支
  持率急低下) を奪う
(071) ダウン取るこんな人達のカウンター          橋本06
(072) 海染めて ゆらりと眩し あかね雲          小野寺04
1 志方   
2 柳町   
(073) ひしゃく持ち清水に並ぶ山茶会            深瀬15
(074) とほき日の 青き匂ひや 栗の花           小野寺21
1 森     
2 豊      栗の花には独特の香りがあります。
  まさに、若かりし自分の10代の男の匂い。
  それを巧みに表現しました。
(075) 枝豆のぺしゃんこふっくら指迷ひ           深瀬18
(076) 氷雨降る 雲の動きや 夏木立            小野寺03
(077) 羅 (うすもの) や女体の形透けて見え         豊05
(078) 打ち水を 避けて 町屋は 暮れにけり        小野寺06
1 秋元   
2 中津川 
3 豊      夏の京都は暑い。打ち水は京都の夏
  の風物詩です。しかし、それを「避けて」町
  屋に「夕暮れ」がくる。時間の経過を見事に
  表現した、風景画のような句です。
(079) 熱き街ビルの頭上に赤き月              秋岡06
(080) 馬鈴薯の 花 けぶらせて 夏の雨          小野寺16
(081) 煌めいて清水に揺れる雲と山             深瀬16
(082) 葉桜の 繁りて 人に 文 (ふみ) を書き       小野寺19
1 柳町   
(083) 酷暑暮れ蜩の声澄み渡る               橋本05
1 秋岡    段々季節の移ろいが早くなっており、
  もう蜩が鳴き出しているのでしょうか。季節
  を先取りした句ですね
2 小野寺  酷暑の中に蜩の声が余韻となって暮
 れてゆく蜩の音に人生の哀歓を重ねきくおも
 いです。
(084) 宵闇を 待宵草に 蛍飛び              小野寺14
(085) 食べたいね土用の鰻妻の言う             秋岡03
1 宮澤    可愛いのか、嫌みなのか、分かりま
  せん。
(086) 日盛りを 山百合の花 匂ひけり。          小野寺10
(087) 炎天下 桜エビうまし 由比の宿 (しゅく)       中津川08
(088) 蝉しぐれ 墓前に咲きし 月見草           小野寺07
(089) 枝豆のみどりさやけし茹であがり           深瀬17
(090) 宵宮に 浴衣のひとの 薄化粧            小野寺18
1 森     
2 志方    色っぽいですね。想像を膨らましま
  すね。
3 深瀬    宵宮は、前夜祭のようなもので、神
  の降臨を仰ぐため、氏子は身や装束をきよめ
  て備えると聞いています。そこに浴衣の薄化
  粧の女性は、やや艶っぽい感じです。


 付記
 選句とともにお寄せいただいたコメントを、ご参考までに貼付します。
・秋岡さん
   "花火" については、美しさに共感するというより何か新鮮な別の視点
でとらえておられる句に共感しました。
   "汗" は中々俳句になりづらい季語だなあと思いながらも選句しました。
・豊さん
 今回は兼題「花火」にいい句が多かったように思います。それに比べて
「汗」は少しむずかしかったようですね。
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2017年5月19日金曜日

七句会 第二十回 ネット句会 七句回交差点 第01号

 七句会                               
 第二十回ネック句会参加各位                     
                                   
 第二十回の選句結果を踏まえて、感想や自句自解、等をおよせいただき、た
いへんありがとうございました。                    
 はじめてのことでもあり、およせいただいたものを、名前順に、ほぼそのま
ままとめてお届けすることにします。今後のやり方に、ご意見、等ありました
ら、よろしくお願いします。                      
 メールでお届けするのは、投句または選句に参加された方に限りました。 
 七句会のweb  http://nanaku-haiku.blogspot.jp/ には、掲載したいと思っ
ています。                              
                                   
  中津川さんのご提案により、当報告名を「七句会交差点」としてお届けする
ことにしました。                           
  ご参考として、作品集として、投句を作者毎にまとめたものも添付しました。                                  
 お届けするのが、やや遅くなり、申し訳ありません。          
  今後とも、よろしくお願いいたします。                
  深瀬 (事務方)                            
                                   
                                   
                                   
○秋岡稔                               
                                   
 小生思わぬ6点句を頂き驚いています。                
 当句は、家の裏に大きな公園があり犬を連れてよく散歩をしますが、春にな
ると急に木々が芽生え、草が育ち始めますがそんな時にスーと出てきた句です。                                  
 実際は名前もあるのでしょうが、可憐な小さな花を咲かせている名前の知ら
ない草が結構あるんですね。                      
 6名の方に共感して頂きよかったです。                
                                   
 2点句で熊本に行ったときの句が2句共感して頂きました。       
 娘が熊本におり、4月に家内と小旅行をした時につくったものです。   
 熊本城の悲惨な状況をどう伝えるのがいいのかちょっと考えましたが、その
ままの風景でした。                          
                                   
 ”春雨や小さき傘にふたりして”は、家内の小さな傘に入って春雨に濡れた
ときの句ですが、色んなことが想像が出来る句(若者から老夫婦まで)になっ
たなあと思った句です。                        
                                   
 黄水仙の句は、水仙の花が本当に笑い顔で自分に微笑んでくれているように
見えたのを自然詠んだものです。                    
 じっくり自然を見ていると色々楽しい風景があるものだと思いました。  
                                   
 ”十八の苦き思いでサクラチル”はこのカタカナの電文の”サクラチル”に
苦さが思い出となって出てくるもので、お一人でも共感して頂ける方がおられ
てよかったです。                           
                                   
 私は、”あたたかさ歩幅も広く上着とり”と”春眠の妻起きたるを遠く聞き
”の2句が春のこの時期の日常を詠んだ句として特に共感しました。    
                                   
                                   
○小野寺健                              
                                   
 5点句                               
 春雷を聞きにし故郷の 駅とほく。                  
                                   
 父の仕事の関係で生まれは九州の八幡ですが育ったのは岩手の釜石 三陸の
田舎町です。                             
 故郷は 二つありますが物心ついてからの町が記憶の原点です。中学で東京
に出るとき丁度春先で俄かに駅舎が暗くなり遠く稲光を観た記憶が下敷きにあ
ります。今横浜で観る春雷は一瞬で、この記憶の時の自分、不安を抱えながら
昏い駅舎でみた稲妻の光景となって鮮明に蘇ります。           
                                   
 4点句                               
 1)漆黒の闇鎮まれり 白牡丹                     
 画を描くので画材として牡丹を育てております。紅色の牡丹よりも白牡丹は
迫力があります。真夜中に 暗闇を圧倒して 白く咲く牡丹は暗闇を睥睨し 
生きている命の力を感じさせてくれます。                
                                   
 2)あぜ道を ゆきし人あり 蓮華草                  
 あぜ道に所せましと咲く 蓮華草ですが一部分轍の跡とともに踏みしだかれ
ていて この畦道を朝もっと早い時間に 人が歩いてとおったのだ、とわかり
ます。少年の頃の田舎のあぜ道の鮮やかな蓮華草の記憶です。       
                                   
 3点句                               
 1)石楠花や 束ねし髪の風に揺れ                   
 学生時代 一緒に山歩きしながら 峠道を登り切った時薄紅の石楠花が見事
な花をつけていてふと振り向くと 一陣の風が吹き、束ねられたみどりの黒髪
が 風にゆれてそれをかき上げた白い指先が美しかった。         
 どれ程自分が駆け寄ってかき上げたいとおもったことか、、、      
 そういう時代がありました。今年咲いてくれた庭の石楠花からの記憶のひと
こまです。                              
                                   
 2)菜の花の 岬遥かに 海の青                    
 三陸のリアス海岸の断崖の前に遅い春を謳歌するように見事な菜の花畑がひ
ろがり、その向こうに かすみながらも群青の蒼い海が見え隠れする、異次元
の絵のような光景でした。                       
 春の頃は 東北の海は寒々として菜の花の黄色が一層記憶の網膜をうづめ尽
くしました。                             
                                   
 2 点句                               
 1)ひかり降る 深山の里にさくら舞う                 
 散る桜の花は滅びゆくものの象徴のようでもありますが自分は生命の輝きを
感じます。                              
 山深い里に散るさくらは さながら光の化身のようでひかりを感じさせる 
自然の力強さを感じました。                      
                                   
 2)海風を 孕みて 浪に桜散る                    
 三陸のリアス海岸の断崖に咲く桜が怒涛の飛沫に光のように溶け合って散っ
てゆく様を 少年時代の心象風景としてもっております。 この感覚は寂寥で
はなく ダイナミックな強い自然の営みであり、海風を孕むとした表現は そ
の思いからです。                           
                                   
 3)深山を夜風 渡りて 山桜                     
 山桜は山奥に人しれずひっそりと咲いており花は皆そうですが 誰の為でも
なく、じっと咲いております。                     
 学生時代によくいった京の鞍馬の山奥に咲く山桜の光景です。光があるわけ
でもないのに 静かに咲いている桜には圧倒されるものがありました。   
                                   
                                   
 投句した俳句は自分の手を離れた作品ですから後はそれを共感する人が作者
の意図とは別に 自由に選句しますら選ぶか選ばないかは その人の感性によ
ります。                               
                                   
 しかし不思議と自分の感覚や想いが込められたものを幾人かの方が選んでく
ださるのは 大変嬉しくもあり俳句の面白さでもあります。        
                                   
 感動を言葉にして普遍性をもたせるという作業は間違いなく普段からものを
観る目を養いますし、日本語の美しさを学べることはありがたいとおもいます。                                  
                                   
                                   
○治部和隆                              
                                   
 作句情況                              
 電車の中で若いお父さんが子供を抱いています。子供はぼんやりと外を見て
います。                               
 春なのに雨が降っていてなんだかつまらなそうです。          
 抱いた子の目にどんよりと春の雨                   
                                   
 きれいな服を着たお母さんと女の子。そうか今日は入園式なんだ。嬉しそう
な二人のほほが桜色に見えました。                   
 入園式色づく母子のほっぺかな                    
                                   
 目黒川にお花見に行ったのですが、平日なのにものすごい人出でした。桜も
八分咲きで見頃です。すでに散り始めているところもあり、川面を見ると綺麗
に花筏ができていました。なんだかこっちも見てよと言っているようです。 
 目黒川川面も見よと花筏                       
                                   
                                   
○中津川公一                             
                                   
 今回私の句が4点句になるなんて初めてびっくりでした。        
 作った状況を下記します。                      
                                   
 あたたかさ 歩幅も広く 上着とり                  
 私は月1回東海道を歩いています。3月に小田原から三島まで32キロを一
泊で歩きましたが、雨も降りガタガタ震えながら歩きました。       
 翌月4月初めは三島から沼津まで歩きましたが同じ雨でも暖かく上着を脱い
で歩きました。                            
 「春」という兼題で桜や春の花あるいは鳥の声など生き物の句が多くなるの
で何とか生き物でない季語を使って作ってみたいと思いこの句となりました。
 投句した中では自分でも気に入っていて、大変うれしく思いました。   
                                   
                                   
○深瀬久敬                              
                                   
・春眠の妻起きたるを遠く聞き                     
・春の陽に保育園児らそぞろ行き                    
  冬の厳しさが弛んでいく春の気配は、齢とともにありがたく感じます。  
                                   
・桜見て生きてる意味をふと思ひ                    
・桜見る今年のわれの違い問ひ                     
・たがために桜咲き散る問ひにけり                   
・花びらの舞い散る景色今年また                    
・満開の桜スマホにとどめけり                     
 咲きだしてから散るまでのほんの僅かな期間の桜の移り変わりに、齢ととも
にやや焦らされる気持ちです。                     
                                   
・花吹雪ゴジラの眼にも涙かな                     
  二物衝撃の句を作ってみよう、と思ったのですが。           
                                   
・桜散る天皇のため虚実あり                      
  この人のためなら死んでも悔いはないとか、そういう心情に憧れもしますが
、むずかしいところだと思います。                   
                                   
・羽田沖機影まばゆき春の空                      
 羽田沖の離着陸する機体を見に、20代のころ、羽田の野原に自転車でよくで
かけました。                             
・遠き日の御殿場合宿春の空                      
 大学1 年の終わりの春休み、柔道部の御殿場合宿がありました。ようやく大
学生活にもなれ、印象に残る合宿でした。                
                                   
・やはらかにひかり湛へし春の雲                    
 あまり深く考えないで作りましたが、別の句会の宗匠から評価していただけ
、また豊さんの選もあり、うれしく感じました。             
                                   
・満を持す冷たき風の木の芽かな                    
・いく億年くり返すかな木の芽吹き                   
 地球上に植物という生命が誕生し、繁栄し続けていることがすごいと思いま
す。                                 
                                   
・雨桜相撲甚句の夜の宴                        
 4月、伊豆の韮山高校で行われた社会人柔道倶楽部の一泊合宿に参加しまし
た。その宴席で、建築会社や信託銀行の人の披露する相撲甚句は、拍子木も入
った本格的なもので、巡業の歌詞とか、感銘を受けました。        
                                   
・駒東の正門想ひ春一句                        
  遅沢先生や大熊先生の車が駐車していました。             
                                   
・エレ内の鏡に頭頂目をそむけ                     
  エレベータの天井につけられた鏡は、頭頂部をよく映します。      
                                   
・葉ざくらに半袖プレイ大厚木                     
・しゃくなげにゴルフ忘れる大厚木                   
 4月の下旬、大厚木CCに行きましたが、その1 ヶ月前のクリアビューGCは凍
える寒さでした。                           
                                   
                                   
○宮澤猛                               
                                   
 始めて4 点句に選ばれたら、その自句自解をということで、戸惑っておりま
す。                                 
《064 》の自句自解としては下記の通りです。              
 川は、切通しと同様に風の通り道になっており、気温、湿度、香りという季
節の雰囲気の変化を運んできます。初春のまだ寒い時でも、ほんの少しの温度
・湿度差と枕丁花等の香りが運ばれて、目に肌に鼻に「もうすぐ春ですよ」と
いう知らせを散歩の途中の目黒川を歩いても教えてくれます。       
 という感じです。                          
                                   
                                   
○豊宣光                               
                                   
 今回の選句結果の感想を送ります。                  
                                   
・最高点句「(033) 野に出でて名もなき草に見入る春」について      
 6人の方が選んでおられるのは、表現されているイメージと作者の心情がわ
かりやすかったからだと思います。もちろん、それはそれですばらしいのです
が、私が選ばなかった理由は最後の「春」という言葉の置き方にやや不満があ
ったからです。このままだと漠然としていて、作者にとってどういう春だった
のかということが伝わってきません。それが表現されていると、なおよかった
のではないでしょうか。                        
 そこで、作者の心情を私なりに解釈して次のように改作してみました。「春
の野にふと見つけたり名無し草」。あくまでも一例です。秋岡さん、すみませ
ん。                                 
                                   
・自句自解「(107) 永遠の熱き魂春の画家」               
 「春の画家」とはどういうことなのか、わかりにくかったかもしれません。
「草間彌生展に寄せて」と前書きがあったら、わかっていただけたことでしょ
う。4月のはじめ、草間彌生展を見にいこうとしたのですが、入場券を買うの
に長蛇の列で、これでは中に入ってもゆっくり見られないだろうと思い、引き
返してきました。もちろん実物を見るのが一番いいのですが、草間彌生の作品
は雑誌やテレビで見ていたので、どういうものかはだいたい知っていました。
今回の展覧会のタイトルは「わが永遠の魂」。その熱い芸術家魂に敬意を表し
て詠んだ句です。                           
 「草間彌生」の文字を入れようとしたのですが、字数が多いのと季語が入れ
られなかったので、こういう形になりました。              
                                   
 以上、長くなってしましました。他の人がどれだけ感想や自句自解を書いて
くれるのかわかりませんが、それを全部WEBにのせるとなると、かなり大変
な作業になるのではないでしょうか。うまく処理する方法を考えたほうがいい
かもしれません。私としては、少なくとも高点句(6点、5点、4点)の人の
自句自解は読みたいのですが。                     
 よろしくお願いします。                       
                                   
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 第二十回  ネット句会  作品集                    
                                   
  秋岡稔                               
・花咲けど無残なるかな天守閣                     
・火の国や城崩れ落ち花風吹                      
・野に出でて名もなき草に見入る春                   
・春の夢うつらうつらと朝寝坊                     
・春雨や小さき傘にふたりして                     
・黄水仙花壇の中の笑い顔                       
・十八の苦き思い出サクラチル                     
                                   
  秋元正宏                              
・店先に春見つけたり菜の花や                     
・満開の花に群れ飛ぶ小鳥たち                     
・満開の梢のメジロ蜜を追う                      
・銀盤の花も散るなり清々し                      
・防災に人集まりて和をつくる                     
                                   
  小野寺健                              
・花吹雪 泣いて故郷をいでにけり。                  
・ひかり降る 深山の里に 桜舞う                   
・夕去りて 白き牡丹の 眠りをり。                  
・薄紅の 牡丹おぼろに 古都は暮れ                  
・春暁や 牡丹の葉裏 ひかり満つ                   
・花筏 泣けとばかりに 春流る。                   
・生命 (いのち) 燃ゆ 古城の堀に 花筏 (いかだ)            
・石楠花 (しゃくなげ) や 束ねし髪の風に揺れ             
・楓萌え 娘の門出 風薫る                      
・春雷を聞きし故郷の 駅とほく                    
・畔路 (あぜみち) を ゆきし人あり 蓮華草              
・花銀杏 けぶりて哀し 夜の雨                    
・芍薬の 芽に朝露の ひかりおり。                  
・菜の花や 群青の海 霞みおり。                   
・菜の花の 岬遥かに 海の青                     
・海風を 孕みて 浪に桜散る                     
・漆黒の 闇鎮まれり 白牡丹                     
・葉桜の 影携えて 月のぼる。                    
・深山 (しんざん) を 夜風わたりて 山櫻               
・暮れてなほ 花新しき 白椿                     
・薔薇の芽の 紅きを洗ふ 雨降りぬ                  
・早暁の 雨にけぶりて 白椿                     
                                   
  小幡敏雄                              
 京都銀閣寺の東山です                        
・樹の中に ウグイスが鳴く 東山                   
・弾む春 古希と遊ぶ 孫娘                      
 奈良吉野です                            
・花吹雪 サクラに溺れる 吉野山                   
                                   
  吉良有二                              
・春を待つ 窓辺に歌う すずめ2 羽                  
・花満ちて フェアウェー芽吹き 春ゴルフ               
・君子蘭 花芽スクスク 春を告ぐ                   
・大都会 屋上集う 春の園                      
・肩車 遠くに見入る 幼き日                     
・成人に タバコくゆらせ 顔染める                  
                                   
  志方洋介                              
・水ぬるみ 花大根に 白き鷺                     
・残雪に 陽ざし残して 影法師                    
・山桜 優しさ同じ 今年また                     
・春霞 思い出枕に さゆり消え                    
・古希迎え 消したい記憶 まだうずく                 
・新緑に 残り桜は 何想う                      
・花散らし 夜来の雨に うぐいすが                  
                                   
 治部和隆                              
・抱いた子の目にどんよりと春の雨                   
・入園式色づく母子のほっぺかな                    
・球児らの悲喜交々と春はゆく                     
・演奏会母校のさくらスウィングす                   
 連チャンで花見をしてきて以上3 句                  
・目黒川かわもも見よと花筏                      
・グローバルな言葉の集い花蓆                     
・集いらの見上ぐる高き山桜                      
                                   
  中津川公一                             
 3月初旬に箱根を歩いて越えました。(2つ)             
・襟すぼめ 箱根路の春 氷点下                    
・湖(みず)ぬるむ 駅伝ゴール 海賊船                
・あたたかさ 歩幅も広く 上着とり                  
・春時雨 湧き水甘し 柿田川                     
 真新しいスーツ姿で親子が入学式                   
・入学式へ スーツ新調 そろい踏み                  
 彼岸に寺にまいり抹茶の接待を受けました               
・草餅におい 父母思う 墓まいり                   
                                   
  野澤宗平                              
・満開を待てぬと出る葉  寒し春                    
・涙目に  くしゃみ鼻水  春一番                    
・春雷に  孫の手をとり  へそ押さえ                  
                                   
  橋本直行                              
・窓開けて春風うたた寝足炬燵                     
・麦畑思い出遠く風渡る                        
・レンギョウの桜に負けじと黄に染まる                 
・喜びが弾ける親子桜咲く                       
・積上げし宮崎の思い出ゴルフ好き                   
                                   
  深瀬久敬                              
・春眠の妻起きたるを遠く聞き                     
・春の陽に保育園児らそぞろ行き                    
・桜見て生きてる意味をふと思ひ                    
・桜見る今年のわれの違い問ひ                     
・羽田沖機影まばゆき春の空                      
・遠き日の御殿場合宿春の空                      
・やはらかにひかり湛へし春の雲                    
・満を持す冷たき風の木の芽かな                    
・いく億年くり返すかな木の芽吹き                   
・満開の桜スマホにとどめけり                     
・雨桜相撲甚句の夜の宴                        
・たがために桜咲き散る問ひにけり                   
・桜散る天皇のため虚実あり                      
・駒東の正門想ひ春一句                        
・花びらの舞い散る景色今年また                    
・花吹雪ゴジラの眼にも涙かな                     
・エレ内の鏡に頭頂目をそむけ                     
・葉ざくらに半袖プレイ大厚木                     
・しゃくなげにゴルフ忘れる大厚木                   
                                   
  藤原徹                               
・ぼんぼりに 夜空に映える 桜花                   
・春うらら 犬もうたたね 無心かな                  
・時めぐり 山々緑に 衣替え                     
・菖蒲畑 命こめ幾有余年 あるじ (主) 待つ              
・モコモコと わきたつ新芽 命の息吹                 
                                   
  宮澤猛                               
・散歩道 川面の風が 春を告げ                    
・薄霞 山の彩り 雉の声                       
・白ワイン 顔も心も 桜色                      
・鶯の 音色いまいち 春はまだ                    
・夢うつつ 入試の苦労で 若返り                   
                                   
 森杜瑯                               
・息子らの 人生道に 春とどけ                    
・困難に 今こそ笑みで 花明けり                   
                                   
  豊宣光                               
・春眠のさめて脳内ほの白し                      
・春の雨汚染土残し流れけり                      
・一〇代の恋の苦さやチューリップ                   
・老害の言い訳ばかり「記憶なし」                   
・永遠の熱き魂春の画家                        
・碁敵と対局終へて桜餅                        
                                   
                                   
                                   
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